説明

カルボキシル基含有ポリビニルアルコール系樹脂

【課題】 ケン化度が高く、かつ白色度に優れたカルボキシル基含有ポリビニルアルコール系樹脂を提供する。
【解決手段】 ケン化度が98%よりも大きく、下記式(1)を満足するカルボキシル基含有ポリビニルアルコール系樹脂を提供する。
Y≦−0.5X+38 …(1)
[ここで、Yは粒径150〜850μmにおけるYI値、Xは4重量%水溶液の20℃における粘度(mPa・s)を示す]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カルボキシル基含有ポリビニルアルコール系樹脂(以下、カルボキシル基含有PVA系樹脂と略す)に関し、さらに詳しくは、ケン化度が高いにもかかわらず、白色度に優れたカルボキシル基含有PVA系樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紙に強度や耐水性、光沢、感熱性等を付与するための加工剤として、紙との親和性と取り扱いに優れたPVA系樹脂が広く用いられてきた。例えば感熱材料の分散剤や、コート紙のコート剤としてカルボキシル基を含有するPVA系樹脂を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1および2)。近年では、カルボキシル基含有PVA系樹脂に顔料およびアルミニウム化合物を含有してなる水性塗工液を紙の表面に塗布することで、耐水性、耐変色性、Z軸強度、光沢性等に優れた紙を得る技術や(例えば、特許文献3)、カルボキシル基含有PVA系樹脂、アセトアセチル基含有PVA系樹脂、ポリアルキレンイミンを含有してなる紙用サイジング剤を塗布することで、バリアー性の高い紙を生産性よく得る技術等が提案されている(例えば、特許文献4)。
【特許文献1】特開平7−112580号公報
【特許文献2】特開平10−280297号公報
【特許文献3】特開2000−008295号公報
【特許文献4】特開2005−060884号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
カルボキシル基含有PVA系樹脂は、一般的にカルボキシル基含有モノマーとビニルエステル系モノマーを共重合させた後にケン化して製造される。前記用途ではケン化度が高いものほど紙の表面強度が高くなるため好ましいとされているが、ケン化度が高いものほど白色度が低下するという問題があった。
カルボキシル基含有PVA系樹脂の白色度が低下する理由として、(1)カルボキシル基のα位の水素が遊離し、β位のヒドロキシル基と共に水として脱離することにより共役二重結合構造が生成し、着色する(2)活性の低いカルボキシル基含有モノマーを用いるため重合触媒を多量に使用する必要があり、重合終了後に触媒が活性を有したまま残存し、これが生成したポリマーを変性させる(3)同様に、重合終了後に添加される重合禁止剤が多量に必要となり、これが変性して着色する(4)ケン化工程にて使用する触媒が変性し、または生成したポリマーを変性させて着色する等が挙げられる。
また、重合度が低いカルボキシル基含有PVA系樹脂は、ポリマーの末端構造の影響が大きく、かかる末端は上述の変性を受けやすいため白色度が低下する傾向があり、さらに高ケン化度のカルボキシル基含有PVA系樹脂は、ケン化触媒を多量に用いるため同様に白色度が低下するという問題があり、これらは、より白色度の高い紙が求められている現状において特に重大な問題であるため、ケン化度が高く、かつ白色度の優れたカルボキシル基含有PVA系樹脂が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者等は、上記事情に鑑み種々検討を行った結果、重合する際の重合条件およびケン化の条件を制約することにより、高ケン化度品であっても、従来得ることができなかった白色度の高いカルボキシル基含有PVA系樹脂を得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0005】
すなわち、本発明の要旨は、ケン化度が98%よりも大きく、下記式(1)を満足するカルボキシル基含有ポリビニルアルコール系樹脂に存する。
Y≦−0.5X+38 …(1)
[ここで、Yは粒径150〜850μmにおけるYI値、Xは4重量%水溶液の20℃における粘度(mPa・s)を示す]
【発明の効果】
【0006】
本発明による、ケン化度が高く、かつ白色度に優れたカルボキシル基含有PVA系樹脂は紙の表面サイジング剤に代表される紙加工剤として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、これらの内容に特定されるものではない。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0008】
(カルボキシル基含有PVA系樹脂の説明)
本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂は、通常、カルボキシル基含有モノマーと、ビニルエステル系モノマーとを共重合させた後、これをケン化して得られるものであり、分子中に少なくとも1個のカルボキシル基と、ビニルアルコール構造単位と若干量のビニルエステル構造単位からなるものである。
【0009】
本発明では、前記PVA系樹脂として、従来から白色度の低い製品となる高ケン化度のものを対象としており、そのケン化度(JIS K 6726準拠)は98モル%より大きく、好ましくは98.5〜99.8モル%、特に好ましくは99.0〜99.8モル%である。本発明においては前記PVA系樹脂の白色度(YI値にて示す)を樹脂粘度(重合度)との関係で特定した点が特徴である。要するに、下記式(1)を満足することを必須要件とするものである。
Y≦−0.5X+38 …(1)
好ましくは、 Y≦−0.5X+37 …(2)
特に好ましくは、Y≦−0.5X+36 …(3)
[ここで、Yは粒径150〜850μmにおけるYI値、Xは4重量%水溶液の20℃における粘度(mPa・s)を示す]
【0010】
かかるYI値とは、樹脂の白色度であり、YI値が低いほど白色度が優れていることを示す。得られた樹脂は通常粉体状態であるが、必要に応じて粉砕およびにて粒度分別し、その粒度150〜850μmの範囲のものを、測色色差計(「日本電色工業」製、”Spectro Color Meter 2000”)にて計測した値である。本発明における前記YI値としては、通常30以下、特に25以下のものが好ましい。
【0011】
一方、粘度とは、ヘプラー粘度計(4重量%水溶液、20℃)にて測定した粘度(mPa・s)であり、粘度が高いほど樹脂の重合度が高く、粘度が低いほど樹脂の重合度が低くなることを示し、重合度と対応した傾向をとる。例えば、粘度やケン化度によって一概には言えないが、通常粘度30mPa・sは重合度1700〜1800に対応し、粘度16mPa・sは重合度1200〜1300に対応する。本発明における前記粘度としては、通常、1〜40mPa・s、特に15〜30mPa・sの比較的低重合度のものが好ましい。
【0012】
上記式(1)は後述する実施例および比較例の実験データに基づき、従来品のカルボキシル基含有PVA系樹脂が示すYI値と、本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂が示すYI値の最大値との差を区別する形で、この中点を通る直線を算出したものであり、本発明では、従来得ることができなかった高ケン化度かつ白色度に優れるカルボキシル基含有PVA系樹脂を規定したものである。
【0013】
(カルボキシル基含有モノマーの説明)
本発明で得られるカルボキシル基含有PVA系樹脂は、カルボキシル基含有モノマーとビニルエステル系モノマーを重合触媒を用いて共重合させた後、ケン化して得ることができる。カルボキシル基含有モノマーとしては、特に制限されることなく、ビニル基の横に直接カルボキシル基を持つものであり、単独で、もしくは複数種を同時に用いても良く、具体的にはアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有不飽和化合物、およびこれらのカルボキシル基が、アルカリ化合物(例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等)等の塩基によって、全体的あるいは部分的に中和されたもの、あるいはアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、フマル酸モノメチル、マレイン酸モノメチル等の上記カルボキシル基含有不飽和化合物のモノアルキルエステル、フマル酸ジエチル、マレイン酸ジエチル等、上記カルボキシル基含有不飽和化合物のジアルキルエステルが挙げられる。これらのエステルの炭素数は、経済性と実用性の点から通常炭素数1〜20、さらには炭素数1〜10が好ましく、特には炭素数1〜4が好ましい。
【0014】
(ビニルエステル系モノマーの説明)
本発明に用いられるビニルエステル系モノマーとしては、特に制限されることなく、経済的な点から、通常炭素数3〜15、さらには3〜10が好ましく、特には4〜6が好ましく、殊には炭素数4の酢酸ビニルが好ましく用いられる。具体的にはギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪族炭化水素ビニルエステル、安息香酸ビニル等の芳香族炭化水素ビニルエステル、バーサチック酸ビニル等が挙げられ、これらは単独で、もしくは複数種を同時に用いてもよい。
【0015】
(モノマーの共重合割合)
ビニルエステル系モノマーに対するカルボキシル基含有モノマーの共重合割合は、ビニルエステル系モノマー1モルに対して通常0.5〜20モル%であり、さらには0.5〜10モル%が好ましく、特には0.5〜5モル%であり、後述するような所望の変性度になるように仕込めばよい。かかる割合が大きすぎた場合、重合触媒が大量に必要となり、白色度が悪化する傾向があり、小さすぎた場合、色調は改善するが、前述したようなカルボキシル基含有PVA系樹脂としての特長が低下し、溶解性や架橋剤等との反応性が低下する傾向がある。
【0016】
また、本発明では、上記成分以外にも共重合可能な不飽和モノマーを本発明の趣旨を阻害しない範囲、例えばビニルエステル系モノマーに対して通常20モル%以下、好ましくは10モル%以下の割合で共重合していてもよく、具体的にはエチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等のオレフィン類、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアン化ビニル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアクリルアミド類、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド等のモノあるいはジアルキル置換アクリルアミド類、アクリルアミドアルカンスルホン酸類あるいはその塩、2−メタクリルアミドアルカンスルホン酸類あるいはその塩、アクリルアミドアルキルアミン類、メタクリルアミドアルキルアミン類のあるいはその酸塩あるいはN−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、2−アクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−メタクリロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、3−ブテントリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ジエチルジアリルアンモニウムクロライド等その4級塩類またはカチオン基含有不飽和化合物類などのアクリルアミド誘導体またはメタクリルアミド誘導体、N−ビニルピロリドン等の環状ビニルアミド類、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド等のN−ビニルアミド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸類あるいはその塩、アルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテル等のビニルエーテル類、ジメチルアリルビニルケトン、酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコール等のアリル化合物類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニル等のハロゲン化ビニル類、ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテル等のポリオキシアルキレンビニルエーテル類、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテル等のポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル類、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート類、ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド類、またはポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル等これらのエステル類、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン当のポリオキシアルキレンビニルアミン類、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、等のポリオキシアルキレンアリルアミン類、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド等のカチオン基含有不飽和化合物類、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメトキシラウリロキシシラン等のケイ素含有不飽和化合物類、3,4−ジアシロキシ−1−ブテン等のアセトアセチル基含有不飽和化合物類、エチレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート等の不飽和カーボネート類、2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン等のヘテロ元素含有不飽和環状化合物等が挙げられ、これらは単独でもしくは複数種を同時に用いても良い。これらは生産効率および生成物の安定性の点から、通常炭素数2〜30であり、さらには炭素数2〜15が好ましく、特には2〜10が好ましい。
【0017】
(重合方法)
かかるカルボキシル基含有モノマーとビニルエステル系モノマーとを共重合するに当たっては、特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、分散重合、または乳化重合等の公知の方法を採用することができるが、通常は溶液重合が行われる。
【0018】
重合で用いられる溶媒としては、通常、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロパノール、ブタノール等の炭素数1〜5の脂肪族アルコールやアセトン、メチルエチルケトン等の炭素数1〜5のケトン類等が挙げられ、工業的には、メタノールが好適に使用される。
【0019】
本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂を得るためには、溶媒中の重合触媒や重合禁止剤、溶媒の変性物(アルデヒド等)などの不純物が無いことが好ましく、溶媒は精製されたものであることが好ましい。かかる溶媒は、一旦使用した溶媒をろ別したり、重合容器に蒸留装置を設けて重合中の蒸気を集める等して回収し、再度同様の重合の溶媒として用いることもできる。かかる際は前述した理由より、1〜複数回蒸留する等して精製することが好ましい。
【0020】
溶媒の使用量は、目的とする共重合体の重合度に合わせて、溶媒の連鎖移動定数を考慮して適宜選択すればよく、例えば、溶媒がメタノールの時は、S(溶媒)/M(モノマー)が通常0〜20(重量比)、好ましくは0.01〜10(重量比)程度の範囲から選択される。
【0021】
本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂を得るためには、半減期の短い重合触媒を用いることが好ましい。かかる半減期の短い重合触媒とは、重合触媒の半減期が1時間になる温度が、通常10〜90℃、好ましくは30〜80℃、特に好ましくは40〜70℃のものである。かかる温度が高すぎた場合は、触媒の活性が低いために多量に用いる必要があり樹脂のYI値が高くなる傾向にあり、低すぎた場合は生産性が低下する傾向がある。
かかる触媒の半減期が1分になる温度は通常80〜130℃であり、半減期が10時間になる温度通常30〜65℃である。また、活性化エネルギーは通常25000〜32000kcalである。
かかる半減期および半減期温度は、還元剤としてヨウ化物を用いるヨード滴定法で測定した値である。
【0022】
具体的には、t−ブチルパーオキシネオデカノエート(半減期が一時間になる温度が65℃)、α,α’ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート(半減期が一時間になる温度が56℃)、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(半減期が一時間になる温度が59℃)、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート(半減期が一時間になる温度が63℃)、3−ヒドロキシ−1,1−ジメチルブチルパーオキシデカノエート(半減期が一時間になる温度が54℃)、tert−アミルパーオキシデカノエート(半減期が一時間になる温度が64℃)、tert−ブチルパーオキシネオヘプタノエート(半減期が一時間になる温度が68℃)、tert−ヘキシルパーオキシピバレート(半減期が一時間になる温度が71℃)、tert−ブチルパーオキシネオヘプタノエート(半減期が一時間になる温度が72℃)、tert−アミルパーオキシピバレート(半減期が一時間になる温度が74℃)、tert−ブチルパーオキシピバート(半減期が一時間になる温度が74℃)等のパーオキシエステル類や、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(半減期が一時間になる温度が58℃)、ジ−iso−プロピルパーオキシジカーボネート(半減期が一時間になる温度が59℃)、ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート(半減期が一時間になる温度が63℃)、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート(半減期が一時間になる温度が58℃)、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート(半減期が一時間になる温度が60℃)、ジ−3−メトキシブチルパーオキシジカーボネート(半減期が一時間になる温度が57℃)、ジ(3−メチル−3−メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート、ジブチルパーオキシ字カーボネート(半減期が一時間になる温度が65℃)等のパーオキシジカーボネート類、ジイソブチリルパーオキシド(半減期が一時間になる温度が51℃)、ジラウリルパーオキシド(半減期が一時間になる温度が80℃)、ジイソノナニルパーオキシド(半減期が一時間になる温度が78℃)、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキシド(半減期が一時間になる温度が78℃)、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド(半減期が一時間になる温度が77℃)等のジアシルパーオキシド類等の過酸化物系ラジカル重合触媒等が挙げられる。これらの化合物は、化薬アクゾ社、日本油脂社、アルケマ吉富社等から市販品として入手できる。
【0023】
本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂を得るためには、重合触媒量を減らし、反応時間を増やすことが好ましい。かかる触媒の使用量は、コモノマーの種類や触媒の種類により異なり一概には決められないが、重合速度に応じて任意に選択され、ビニルエステル系モノマーに対して通常0.01〜0.5モル%、さらには0.01〜0.1モル%が好ましく、特には0.01〜0.05モル%が好ましい。かかる量が少なすぎた場合には重合速度が低下したり、重合が停止することにより生産性が悪化する傾向があり、多すぎた場合には白色度が悪化し、重合の暴走などの危険性がある。
【0024】
(製造条件)
重合時の温度は、通常、30〜200℃、好ましくは35〜150℃、特には40〜80℃の範囲で行われ、かかる温度が低すぎる場合には重合が良好に進行せず生産性が低下する傾向があり、一方、高すぎる場合には重合度が上がりにくい傾向がある。
このとき、用いられる溶媒の沸点温度で行うことも、重合反応熱が溶媒の気化熱により適度に抑えられるため好ましい。重合温度は重合終了まで必ずしも一定に保つ必要はなく、重合の進行とともに変動してもかまわない。
【0025】
また、重合時間は、用いる重合触媒の種類や量により異なるが、通常1〜10時間、更には5〜8時間が好ましく、該重合時間が短すぎた場合には残触媒量が増加するため白色度が悪化し、重合の暴走などの危険性が高くなり、長すぎた場合には生産性が低下する傾向がある。
【0026】
重合圧力は、通常、常圧で行われるが、加圧下で行っても良い。重合率は、通常40〜99%、好ましくは50〜90%、特に好ましくは60〜90%の範囲で行われる。
【0027】
重合方式は公知の方法のいずれでもよく、例えば、[1]重合缶にカルボキシル基含有モノマー及びビニルエステル系モノマー、重合触媒及び溶媒を仕込みこれを昇温させて重合を行う方法(一括仕込み法)、[2]重合缶に両モノマー及び溶媒を仕込み、重合温度に昇温した後、これに重合触媒を供給し重合を行う方法(一括仕込み法)、[3]重合缶に重合触媒及び溶媒を仕込み、これに重合条件下、両モノマーを別々または一緒に(滴下)供給して重合を行う方法(分割供給法)、[4]重合缶に溶媒と重合触媒および一方のモノマーを仕込み、重合条件下、これに他方のモノマーを滴下供給して重合する方法、又は、この際、溶媒の一部及び/又は重合触媒を他方のモノマーと一緒に供給する方法(分割供給法)など、上記手法を組み合わせてもよい。
【0028】
望む重合率まで反応が進行した後、重合禁止剤を含有させる。かかる重合禁止剤としては、4−メトキシフェノール、ベンゾキノンなどのキノン誘導体、m−ジニトロベンゼン等のニトロ基含有化合物、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル等のピペリジン誘導体、ソルビン酸等の不飽和カルボン酸誘導体等が挙げられる。
【0029】
本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂を得るためには、用いる重合禁止剤の量が少ないことが好ましい。かかる重合禁止剤の使用量は、触媒の種類により異なるが、重合終了時の総量に対して通常1〜200ppm、好ましくは10〜100ppm、特に好ましくは10〜90ppmである。かかる量が少なすぎた場合には後重合し製品に不純物が混入する危険性があり、多すぎた場合にはケン化工程での色調悪化の原因となる傾向がある。
【0030】
また、かかる重合禁止剤は、液体状態でも固体状態でもよく、適当な溶媒で希釈して使用してもよい。希釈用の溶媒は、重合禁止剤の種類により適宜選択するが、例えばメタノール、エタノール、tert−ブタノール等の炭素数1〜4の脂肪族アルコール、へキサン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、ジメチルフタレート等の芳香族炭化水素類があり、これらは混合して用いてもよい。
【0031】
本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂を得るためには、上述のようにして得られた共重合体中における残存活性重合触媒量が少ないことが好ましい。かかる残存活性重合触媒量は、重合終了時の総量に対して通常0.1〜40ppm、好ましくは0.1〜30ppm、特に好ましくは0.1〜10ppmである。かかる量が多すぎた場合にはケン化反応時に色調が悪化する傾向がある。
【0032】
(ケン化)
得られた共重合体は次いでケン化されるのであるが、かかるケン化にあたっては上記で得られた共重合体をアルコール等の溶媒に溶解し、アルカリ触媒又は酸触媒を用いて行われる。代表的な溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等の炭素数1〜4のアルコールが挙げられるが、メタノールが特に好ましく用いられる。アルコール中の共重合体の濃度は系の粘度により適宜選択されるが、通常は5〜60重量%の範囲から選ばれる。ケン化に使用される触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、ナトリウムメチラート、ナトリウムエチラート、カリウムメチラート、リチウムメチラート等のアルカリ金属アルコキシド類の如きアルカリ触媒、硫酸、塩酸、硝酸等の無機酸類、メタスルフォン酸等のスルフォン酸類、ゼオライト、カチオン交換樹脂等の酸触媒が挙げられ、好適にはアルカリ金属の水酸化物が用いられる。
【0033】
本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂を得るためには、ケン化触媒の量が少ないことが好ましい。かかるケン化触媒の使用量については、ケン化方法、ケン化条件(ケン化温度、ケン化樹脂分)、目標とするケン化度等により適宜選択されるが、通常、ビニルエステル系モノマーのアシル基1モルに対して通常0.1〜200ミリモル、好ましくは10〜100ミリモルの割合が適当である。かかる量が多すぎた場合には色調が悪化する傾向があり、少なすぎた場合には高ケン化度のものが得られにくい傾向がある。また、ケン化反応の反応温度は特に限定されないが、10〜60℃が好ましく、より好ましくは20〜50℃である。
【0034】
上記の如きケン化を行うに当たっては、連続式でもバッチ式でも行うことができ、かかるバッチ式のケン化装置としては、ニーダー、リボンブレンダー等を挙げることができる。
【0035】
(回収法)
ケン化反応後の反応混合物は、通常、公知の方法に従って、目的の共重合体を固液分離し、次いで乾燥することにより回収される。
【0036】
(洗浄法)
本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂を得るためには、得られたカルボキシル基含有PVA系樹脂はさらに洗浄することが好ましい。これは、上述したように残存する活性重合触媒、重合禁止剤、ケン化触媒の量が少ないことが好ましいためである。
洗浄に用いる溶媒は、水、およびメタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブタノール等の炭素数1〜5のアルコール、または酢酸メチル、酢酸エチル等の炭素数3〜10のエステルが挙げられ、洗浄方法としては特に限定せず、カルボキシル基含有PVA系樹脂をかかる溶媒中に浸漬させたり、樹脂に溶媒を噴霧、かけ流しをしたりするなど、公知の方法を採用することができる
【0037】
(白色度向上法)
カルボキシル基含有PVA系樹脂の白色度を向上させるためには、上述した製造工程において、例えば(1)樹脂中に残存する活性重合触媒の量を減らす、具体的には、使用する重合触媒の量を減らし重合時間を長くする、重合終了後に重合禁止剤を含有させて重合触媒の活性を失わせる、半減期の短い重合触媒を用いる等である。さらに、(2)溶媒をよく精製し、溶媒の変性物や不純物を取り除く、(3)樹脂中に残存する重合禁止剤の量を減らすために、使用する重合触媒の量を減らす、また、(4)樹脂中に残存するケン化触媒の量を減らすために、使用するケン化触媒量を減らしてケン化時間を長くする、そして(5)樹脂をよく精製し、活性重合触媒、重合禁止剤、ケン化触媒を取り除く等の方法がある。これらの手法はそれぞれを組み合わせて採用することが可能であり、なかでも、生産効率、経済性の点から、半減期の短い重合触媒を用いることが好ましい。
【0038】
(カルボキシル基含有量)
かくして本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂が得られるが、本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂における、カルボキシル基含有量は、酢酸ナトリウムを抽出した試料を灰化し、この重さから算出した。本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂における、カルボキシル基含有量は、ビニルアルコール由来の構造単位1モルに対して通常0.1〜20モル%、好ましくは0.5〜10モル%であり、特に好ましくは0.5〜5%である。
【0039】
かくして本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂は、公知の方法にてヒドロキシアルキルエーテル化、ホルマール化、アセタール化、ブチラール化、ウレタン化、アセト酢酸エステル化、スルホン化、カルボキシル化等の後反応を行っても良い。
【0040】
本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂を各種用途に用いるときには、求められる性質に合わせて、ケン化度、重合度、カルボキシル基含有量、また、塩基によりカルボキシル基が中和されたものの中和度等、条件が異なるものを混合して用いても良い。
【0041】
本発明ではさらに、樹脂の基本物性を損なわない範囲、通常15重量%以下、特に10重量%以下にて、他の樹脂と配合して用いても良い。例えばデンプン、セルロース等の多糖類、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリン、水溶性ポリアミド、水溶性ポリエステル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、本発明のカルボニル基含有PVA系樹脂とは異なるPVA系樹脂、等の水溶性樹脂である。なお、本発明で用いるカルボニル基変性PVA系樹脂と異なるPVA系樹脂としては、未変性PVAや前述の各種不飽和モノマーを共重合した変性PVA系樹脂を挙げることができる。
【0042】
また、必要に応じて塗工液の粘度特性改善や塗工液の白色度向上のために顔料や発色感度向上のための各種熱可塑性物質、消泡剤、分散剤等、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸アミド、ステアリン酸カルシウム、パラフィンワックス等の滑剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、蛍光染料、剥離剤、酸化防止剤等の添加剤を加えることができる。
かかる顔料としては、炭酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、タルク、カオリン、クレー等の無機顔料、ナイロン樹脂フィラー、尿素・ホルマリン樹脂フィラー、澱粉粒子等の有機顔料が挙げられる。
【0043】
また、同様に各種添加剤として、可塑剤、酸化防止剤、着色剤、充填剤、帯電防止剤、熱安定化剤、消臭剤、抗菌剤、酸素吸収剤、防黴剤、防腐剤、アンチブロッキング剤、レベリング剤、架橋剤等を含有させることができる。
【0044】
架橋剤の具体例としては、例えば、例えばホルムアルデヒド,アセトアルデヒド等のモノアルデヒド化合物、グリオキザール,グルタルアルデヒド,ジアルデヒド澱粉等の多価アルデヒド化合物などのアルデヒド化合物、メタキシレンジアミン、ノルボルナンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、ビスアミノプロピルピペラジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジエチルジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルフォン、1,2−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,4−フェニレンジアミン、3−メチル−1,2−フェニレンジアミン、4−メチル−1,2−フェニレンジアミン、2−メチル−1,3−フェニレンジアミン、4−メチル−1,3−フェニレンジアミン、2−メチル−4,6−ジエチル−1,3−フェニレンジアミン、2,4−ジエチル−6−メチル−1,3−フェニレンジアミン、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジアミン、2−クロロ−1,4−フェニレンジアミン等のアミン系化合物、メチロール化尿素、メチロール化メラミンなどのメチロール化合物、ヘキサメチレンテトラミン等のアンモニアとホルムアルデヒドとの反応物、ホウ酸、ホウ砂などのホウ素化合物、塩基性塩化ジルコニル、硝酸ジルコニル、酢酸ジルコニウムアンモニウムなどのジルコニウム化合物、テトラメチルチタネートのようなチタンオルソエステル類、チタンエチルアセトアセトナートのようなチタンキレート類、ポリヒドロキシチタンステアレートのようなチタンアシレート類などのチタン化合物、アルミニウムアセチルアセトナートのようなアルミニウム有機酸キレート類などのアルミニウム化合物、シランカップリング剤などの有機反応性基を有するオルガノアルコキシシラン化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多価エポキシ化合物、各種イソシアネート系化合物などが挙げられる。
【0045】
本発明のカルボキシル基含有PVA系樹脂は、ケン化度が高く、かつ白色度に優れることから、紙のクリアコーティング剤、紙の顔料コーティング剤や、特に紙のサイジング剤等の用途に好適である。
【実施例】
【0046】
実施例1
還流冷却器、滴下漏斗、撹拌機を備えた反応缶に、酢酸ビニル100部、メタノール26部、マレイン酸モノメチル0.1部を仕込み、撹拌しながら窒素気流下で60℃まで上昇させてから、重合触媒としてt−ブチルパーオキシネオデカノエート(半減期が1時間になる温度が65℃)を0.001モル%(酢酸ビニル総量に対して)投入し、重合を開始した。重合開始直後にマレイン酸モノメチル2.2部(酢酸ビニル総量に対して2モル%)、t−ブチルパーオキシネオデカノエート0.008モル%(酢酸ビニル総量に対して)を重合速度に合わせて連続追加し、酢酸ビニルの重合率が73%となった時点で、4−メトキシフェノールを0.01部及び希釈・冷却用メタノールを58部添加して重合を終了した。重合終了時における残存活性触媒量は、反応液総量に対して2ppmであった。
続いて、メタノール蒸気を吹き込む方法により未反応の酢酸ビニルモノマーを系外に除去し共重合体のメタノール溶液を得た。
【0047】
次いで、該溶液をメタノールで希釈して濃度40%に調整して水酸化ナトリウムの4%メタノール溶液を共重合体中の酢酸ビニル構造単位1モルに対して50ミリモルとなる割合で混合し、温度を40〜50℃にて25分間ケン化反応を行った。ケン化反応により固化した樹脂をカットし、PVA系樹脂を得た。
【0048】
得られたPVA系樹脂について、以下のように評価した。
ケン化度は、残存酢酸ビニルの加水分解に要するアルカリ消費量で分析を行った。また、カルボキシル基の含有量は灰化法により灰分を測定し、残留したナトリウム分から算出した。このとき、マレイン酸は2つのカルボキシル基を持っており、ラクトンを形成するのは片方のみでもう一方はカルボン酸Naとなるため、そのNa分から変性度を算出した。得られた樹脂の変性度は2モル%であった。
YI値は、得られたカルボキシル基含有PVA系樹脂を、粉体状態にて粒度分別し、その粒度150〜850μmの範囲のものを、測色色差計(「日本電色工業」製、”Spectro Color Meter 2000”)にて計測した。得られた樹脂のYI値は20.9であった。
また、粘度はヘプラー粘度計(4重量%水溶液、20℃)にて測定した。得られた樹脂の粘度は29.5mPa・sであった。
【0049】
実施例2
実施例1において、酢酸ビニル100部のうち15部を初期に仕込み、メタノール仕込み量を26部に変えて15部仕込み、撹拌しながら重合触媒としてt−ブチルパーオキシネオデカノエートを0.001モル%(酢酸ビニル総量に対して)投入し、重合を開始した。重合開始直後に酢酸ビニル85部、マレイン酸モノメチル2.4部(酢酸ビニル総量に対して2モル%)、重合触媒であるt−ブチルパーオキシネオデカノエート0.024モル%(酢酸ビニル総量に対して)を重合速度に合わせて連続追加し、酢酸ビニルの重合率が85%となった時点で、4−メトキシフェノールを0.01部及び希釈・冷却用メタノールを50部添加して重合を終了した。重合終了時における残存活性触媒量は、反応液総量に対して5ppmであった。得られた樹脂の変性度は2モル%、YI値は26.6、粘度は16.0であった。
【0050】
実施例3
実施例1において、重合触媒をt−ブチルパーオキシネオデカノエートにかえてジ-n−プロピルパーオキシジカーボネート(半減期が一時間になる温度が58℃)を重合開始時に0.001モル%、重合開始後に0.005モル%用いて反応を行い、同様の評価を行った。重合終了時における残存活性触媒量は、反応液総量に対して2ppmであった。
【0051】
実施例4
実施例2において、重合触媒をt−ブチルパーオキシネオデカノエートにかえてジ-n−プロピルパーオキシジカーボネート(半減期が一時間になる温度が58℃)重合開始時に0.001モル%、重合開始後に0.017モル%を用いて反応を行い、同様の評価を行った。重合終了時における残存活性触媒量は、反応液総量に対して3ppmであった。
【0052】
実施例5
実施例1において、重合触媒をt−ブチルパーオキシネオデカノエートにかえて1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(半減期が一時間になる温度が59℃)を重合開始時に0.001モル%、重合開始後に0.004モル%用いて反応を行い、同様の評価を行った。重合終了時における残存活性触媒量は、反応液総量に対して1ppmであった。
【0053】
実施例6
実施例2において、重合触媒をt−ブチルパーオキシネオデカノエートにかえて1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート(半減期が一時間になる温度が59℃)重合開始時に0.001モル%、重合開始後に0.015モル%を用いて反応を行い、同様の評価を行った。重合終了時における残存活性触媒量は、反応液総量に対して2ppmであった。
【0054】
比較例1
実施例1において、重合触媒をt−ブチルパーオキシネオデカノエートにかえてアセチルパーオキシド(半減期が一時間になる温度が92℃)を重合開始時に0.028モル%用い、重合開始後に0.010モル%用いて反応を行い、同様の評価を行った。重合終了時における残存活性触媒量は、反応液総量に対して42ppmであった。
【0055】
比較例2
実施例2において、重合触媒をt−ブチルパーオキシネオデカノエートにかえてアセチルパーオキシド(半減期が一時間になる温度が92℃)重合開始時に0.042モル%、重合開始後に0.021モル%を用いて反応を行い、同様の評価を行った。重合終了時における残存活性触媒量は、反応液総量に対して75ppmであった。
【0056】
これら実施例、比較例の条件を表1に、および結果を表2に示す。
【表1】

【0057】
【表2】

【0058】
以上の結果より、半減期が1時間になる温度が10〜90℃の触媒を用いることで、加える重合禁止剤の量が少ない場合でも残存活性触媒量が少なくなり、ケン化度が高くかつ白色度に優れた(YI値の低い)カルボキシル基含有PVA系樹脂を得ることが可能となることが示された。
一方、半減期が一時間になる温度が92℃であるアセチルパーオキシドを用いた比較例では、触媒の活性が低いため、実施例にて得た樹脂と同様の樹脂を得るためには多量の触媒を用いる必要があった。そして同時に残存活性触媒量が多く必要となったため、ケン化度が高くかつ白色度に優れた(YI値の低い)カルボキシル基含有PVA系樹脂は得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の樹脂組成物は、ケン化度が高くかつ白色度に優れており、特に紙加工剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明における実施例、比較例及び特許請求の範囲を示す式を表したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケン化度が98%よりも大きく、下記式(1)を満足するカルボキシル基含有ポリビニルアルコール系樹脂。
Y≦−0.5X+38 …(1)
[ここで、Yは粒径150〜850μmにおけるYI値、Xは4重量%水溶液の20℃における粘度(mPa・s)を示す]
【請求項2】
粒径150〜850μmにおけるYI値が30以下であることを特徴とする請求項1記載のカルボキシル基含有ポリビニルアルコール系樹脂。
【請求項3】
4重量%水溶液の20℃における粘度が、10〜40mPa・sであることを特徴とする請求項1記載のカルボキシル基含有ポリビニルアルコール系樹脂。

【図1】
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【公開番号】特開2008−143961(P2008−143961A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−330121(P2006−330121)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】