説明

カルボキシル基含有樹脂及びソルダーレジスト用樹脂組成物

【課題】本発明は、ゲル化が生じにくく、且つ電気絶縁性の高いソルダーレジスト層を形成し得るカルボキシル基含有樹脂を提供する。
【解決手段】本発明に係るカルボキシル基含有樹脂は、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂の有するエポキシ基のうちの少なくとも一部に多塩基酸が付加した構造を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板におけるソルダーレジスト層を形成するためのカルボキシル基含有樹脂及びソルダーレジスト用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント配線板におけるソルダーレジスト層を形成するため、従来、種々の感光性の樹脂組成物及び熱硬化性の樹脂組成物が使用されている。
【0003】
近年、エレクトロニクス機器の軽薄短小化に伴い、プリント配線板が高密度化されており、これに対応してソルダーレジスト層の高性能化が要求されている。すなわち、ソルダーレジスト層を形成するための樹脂組成物に、ゲル化することなく、現像性に優れ、またこの樹脂組成物から硬度、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、可撓性、強靭性等の特性を充分に満足する優れたソルダーレジスト層が形成されることが、要求されている。
【0004】
そこで、本出願人は、特許文献1に示されるように、(A)1分子中に2個以上のエポキシ基を有する樹脂(a)のエポキシ基に、エポキシ基1当量に対して、1種又は2種以上のモノカルボン酸(b)を合計で0.3〜0.9モルの割合で反応させ、得られた反応生成物(c)のエポキシ基に、エポキシ基1当量に対して、多塩基酸(d)を1.0〜5.0モルの割合で反応させて得られる、酸価20〜200mgKOH/g、且つ有機溶剤に可溶であることを特徴とするカルボキシル基含有樹脂、(B)カルボキシル基含有化合物、(C)感光性(メタ)アクリレート化合物、及び(D)光重合開始剤を含有するアルカリ現像可能な硬化性組成物を、提案している。特許文献1に示される発明によれば、プリント配線板の高密度化に対応可能な硬化性組成物に要求される現像性を充分に満足し、且つ、硬度、はんだ耐熱性、耐薬品性、密着性、PCT耐性、無電解金めっき耐性、白化耐性、電気絶縁性、可撓性などに優れた硬化膜が得られる硬化性組成物を提供することができる。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の組成物であっても、製造時の原料の選択の仕方、反応条件の設定の仕方などによっては、硬化性組成物がゲル化することがあるという問題があった。また、近年のプリント配線板の更なる高密度化に伴い、ソルダーレジスト層の電気絶縁性の更なる向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−31072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、ゲル化が生じにくく、且つ電気絶縁性の高いソルダーレジスト層を形成し得るカルボキシル基含有樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るカルボキシル基含有樹脂は、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂の有するエポキシ基のうちの少なくとも一部に多塩基酸が付加した構造を有する。
【0009】
本発明に係るカルボキシル基含有樹脂は、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂の有するエポキシ基のうち、一部にモノカルボン酸が付加し、別の一部に多塩基酸が付加した構造を有してもよい。
【0010】
本発明に係るカルボキシル基含有樹脂において、前記モノカルボン酸にエチレン性不飽和基含有モノカルボン酸が含まれてもよい。
【0011】
本発明に係るソルダーレジスト用樹脂組成物は、前記カルボキシル基含有樹脂を含有する。
【0012】
本発明に係るソルダーレジスト用樹脂組成物は、光重合開始剤を更に含有してもよい。
【0013】
本発明に係るソルダーレジスト用樹脂組成物は、光重合性を有するモノマー及びプレポリマーから選択される少なくとも一種の光重合性化合物を更に含有してもよい。
【0014】
本発明に係るソルダーレジスト用樹脂組成物は、一分子中に少なくとも二個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を更に含有してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ゲル化が生じにくく、且つ電気絶縁性の高いソルダーレジスト層を形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(1)カルボキシル基含有樹脂
本実施形態におけるソルダーレジスト組成物は、次に示すカルボキシル基含有樹脂を、必須成分として含有する。
【0017】
カルボキシル基含有樹脂は、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂の有するエポキシ基のうちの少なくとも一部に、多塩基酸が付加した構造を有する。
【0018】
カルボキシル基含有樹脂は、更にビフェニルノボラック型エポキシ樹脂の有するエポキシ基の一部に、モノカルボン酸が付加した構造を有してもよい。すなわち、カルボキシル基含有樹脂は、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂の有するエポキシ基のうち、一部にモノカルボン酸が付加し、別の一部に多塩基酸が付加した構造を有してもよい。
【0019】
このようなカルボキシル基含有樹脂としては、(1)ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂の有するエポキシ基の全てに多塩基酸が付加した構造を有する樹脂、(2)ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂の有するエポキシ基のうちの、一部に多塩基酸が付加し、残り全てが未反応のまま残存する構造を有する樹脂、(3)ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂の有するエポキシ基のうちの、一部にモノカルボン酸が付加し、別の一部に多塩基酸が付加し、且つ未反応のエポキシ基が残存しない構造を有する樹脂、及び(4)ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂の有するエポキシ基のうちの、一部にモノカルボン酸が付加し、別の一部に多塩基酸が付加し、且つ未反応のエポキシ基が残存する構造を有する樹脂が、挙げられる。
【0020】
ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂は、例えば下記[化1]に示される構造を有する。
【0021】
【化1】

【0022】
この[化1]に示される構造を有するビフェニルノボラック型エポキシ樹脂が使用される場合、カルボキシル基含有樹脂が有し得る構成単位としては、例えば下記一般式(1)、(2)、及び(3)で示される構造単位が挙げられる。
【0023】
【化2】

【0024】
【化3】

【0025】
【化4】

【0026】
式中、Xはモノカルボン酸残基を示し、Yは多塩基酸残基を示す。
【0027】
カルボキシル基含有樹脂は、構造式(1)に示す単位構造を有する。また、カルボキシル基含有樹脂は、構造式(2)に示す単位構造と、構造式(3)に示す単位構造のうちの、一方又は両方を更に有してもよい。
【0028】
カルボキシル基含有樹脂は、多塩基酸残基を一種のみ有していてもよく、二種以上有していてもよい。
【0029】
また、カルボキシル基含有樹脂がモノカルボン酸残基を有する場合、カルボキシル基含有樹脂はモノカルボン酸残基を一種のみ有してもよく、二種以上有してもよい。
【0030】
カルボキシル基含有樹脂がモノカルボン酸残基を有する場合、モノカルボン酸残基は、エチレン性不飽和基を有していてもよく、有していなくてもよい。すなわち、カルボキシル基含有樹脂を得るために用いられるモノカルボン酸は、エチレン性不飽和基を有していてもよく、有していなくてもよい。特に、カルボキシル基含有樹脂がエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸残基を有する場合、すなわちカルボキシル基含有樹脂を得るにあたってエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸が使用される場合には、カルボキシル基含有樹脂を含有するソルダーレジスト用樹脂組成物が感光性(光硬化性)を発揮し得るようになる。
【0031】
カルボキシル基含有樹脂の合成方法の例として、次の四つの態様が挙げられる。これらの態様によりカルボキシル基含有樹脂が合成されると、生成するカルボキシル基含有樹脂が特にゲル化しにくい。尚、カルボキシル基含有樹脂の合成方法は、これらの態様には限られない。
【0032】
第一の態様では、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂と多塩基酸との付加反応によって、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基のうちの少なくとも一部に多塩基酸が付加することで、カルボキシル基含有樹脂が生成する。
【0033】
第二の態様では、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂とモノカルボン酸との付加反応によって、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基のうちの一部にモノカルボン酸が付加することで、付加生成物(第一の中間体)が生成する。この第一の中間体と多塩基酸との付加反応によって、第一の中間体中に残存するエポキシ基の少なくとも一部に多塩基酸が付加することで、カルボキシル基含有樹脂が生成する。
【0034】
第三の態様では、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂とモノカルボン酸との付加反応によって、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基のうちの一部にモノカルボン酸が付加することで、付加生成物(第二の中間体)が生成する。この第二の中間体とモノカルボン酸及び多塩基酸との付加反応によって、第二の中間体中に残存するエポキシ基の少なくとも一部にモノカルボン酸及び多塩基酸が付加することで、カルボキシル基含有樹脂が生成する。
【0035】
第四の態様では、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂とモノカルボン酸との付加反応によって、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基のうちの一部にモノカルボン酸が付加することで、付加生成物(第三の中間体)が生成する。この第三の中間体と多塩基酸との付加反応によって、第三の中間体中に残存するエポキシ基の一部に多塩基酸が付加することで、第四の中間体が生成する。更に、この第四の中間体とモノカルボン酸との付加反応によって、第四の中間体中に残存するエポキシ基の少なくとも一部にモノカルボン酸が付加することで、カルボキシル基含有樹脂が生成する。
【0036】
このカルボキシル基含有樹脂の側鎖に2級のアルコール性の水酸基が存在するため、ソルダーレジスト用樹脂組成物は、アルカリ性溶液が現像液として用いられた場合に優れた現像性を発揮し得る。更にこのカルボキシル基含有樹脂の側鎖の末端にカルボキシル基が存在するため、カルボキシル基含有樹脂は反応性に優れる。また、カルボキシル基含有樹脂がエチレン性不飽和基を有するモノカルボン酸残基を有する場合には、カルボキシル基含有樹脂の側鎖の末端にエチレン性不飽和基が存在するため、カルボキシル基含有樹脂は反応性に優れる。
【0037】
カルボキシル基含有樹脂を得るために使用されるモノカルボン酸の代表例としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、桂皮酸、α−シアノ桂皮酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトンモノアクリレートなどの不飽和基含有モノカルボン酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ酪酸、バレリアン酸、トリメチル酢酸、カプロン酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸などの飽和脂肪族モノカルボン酸、安息香酸、アルキル安息香酸、アルキルアミノ安息香酸、ハロゲン化安息香酸、フェニル酢酸、アニス酸、ベンゾイル安息香酸、ナフトエ酸などの芳香族モノカルボン酸などが挙げられる。これらモノカルボン酸は、単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。ここで特に好ましいのはアクリル酸、メタクリル酸、及び酢酸である。
【0038】
カルボキシル基含有樹脂を得るために使用される多塩基酸の代表例としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メタントリカルボン酸、トリカルバリル酸、ベンゼントリカルボン酸、ベンゼンテトラカルボン酸等が挙げられる。これらの化合物のうち1種又は2種以上を使用することができる。ここで好ましいのは、反応溶媒に可溶及び/又は反応温度で溶媒中に溶けるジカルボン酸であり、より好ましいのは、マロン酸、グルタル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸及びフタル酸、特に好ましいのは、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸及びフタル酸である。
【0039】
第一の態様において、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂と多塩基酸との付加反応は、溶媒中で、重合禁止剤及び触媒の存在下でおこなわれることが好ましい。この場合、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対する反応系に供給される多塩基酸の割合は0.15〜3.0モルであることが好ましく、0.4〜1.5モルであれば更に好ましい。この場合、カルボキシル基含有樹脂の合成時にゲル化が更に生じにくくなると共に、ソルダーレジスト用樹脂組成物が感光性を有する場合にはその現像性が特に高くなる。反応温度は好ましくは50〜150℃、より好ましくは70〜120℃である。
【0040】
付加反応において使用される溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤のうち一種のみが使用されても、2種類以上が併用されてもよい。
【0041】
触媒としては、例えば、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、ナフテン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸やオクトエン酸のリチウム、クロム、ジルコニウム、カリウム、ナトリウム等の有機酸の金属塩などが挙げられるが、これらに限られるものではない。これらの触媒のうち一種のみが用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0042】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどが挙げられるが、これらに限られるものではない。これらの重合禁止剤のうち一種のみが使用されても二種以上が併用されてもよい。
【0043】
第二から第四の態様において、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂とモノカルボン酸との付加反応は、溶媒中で、重合禁止剤及び触媒の存在下でおこなわれることが好ましい。この場合、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対する反応系に供給されるモノカルボン酸の割合は0.05〜1.5モルの範囲であることが好ましく、0.1〜0.7モルの範囲であれば更に好ましい。この場合、カルボキシル基含有樹脂の合成時にゲル化が更に生じにくくなると共に、ソルダーレジスト用樹脂組成物が感光性を有する場合にはその現像性が特に高くなる。尚、このモノカルボン酸の割合は、エポキシ基と実際に反応するモノカルボン酸の割合ではなく、反応系に供給されるモノカルボン酸の割合であるため、この割合の値が1以上になることもあり得る。反応温度は好ましくは50〜150℃、より好ましくは70〜120℃である。
【0044】
付加反応において使用される溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤などが挙げられる。これらの有機溶剤のうち一種のみが使用されても、2種類以上が併用されてもよい。
【0045】
触媒としては、例えば、トリエチルアミン等の三級アミン、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物、トリフェニルホスフィン等のリン化合物、ナフテン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸やオクトエン酸のリチウム、クロム、ジルコニウム、カリウム、ナトリウム等の有機酸の金属塩などが挙げられるが、これらに限られるものではない。これらの触媒のうち一種のみが用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0046】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、カテコール、ピロガロール、フェノチアジンなどが挙げられるが、これらに限られるものではない。これらの重合禁止剤のうち一種のみが使用されても二種以上が併用されてもよい。
【0047】
第二の態様における付加反応生成物(第一の中間体)と多塩基酸との付加反応は、溶媒中で、重合禁止剤及び触媒の存在下でおこなわれることが好ましい。この場合、付加反応生成物中に残存するエポキシ基1当量に対する反応系に供給される多塩基酸の割合は0.15〜3.0モルであることが好ましく、0.5〜1.5モルであれば更に好ましい。この場合、付加反応生成物間の架橋が抑制されることでカルボキシル基含有樹脂のゲル化が抑制されると共に未反応の多塩基酸の残存も抑制される。反応温度は好ましくは50〜150℃、より好ましくは70〜120℃である。付加反応生成物と多塩基酸との付加反応における重合禁止剤及び触媒の具体例としては、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂とモノカルボン酸との付加反応における重合禁止剤及び触媒の具体例と同じものが、それぞれ挙げられる。
【0048】
第三の態様における付加反応生成物(第二の中間体)とモノカルボン酸及び多塩基酸との付加反応は、溶媒中で、重合禁止剤及び触媒の存在下でおこなわれることが好ましい。この場合、付加反応生成物中に残存するエポキシ基1当量に対する反応系に供給されるモノカルボン酸の割合は0.15〜5.0モルであることが好ましく、0.5〜2.0モルであれば更に好ましい。また、付加反応生成物中に残存するエポキシ基1当量に対する反応系に供給される多塩基酸の割合は0.15〜3.0モルであることが好ましく、0.5〜1.5モルであれば更に好ましい。この場合、付加反応生成物間の架橋が抑制されることでカルボキシル基含有樹脂のゲル化が抑制されると共に未反応の多塩基酸の残存も抑制される。反応温度は好ましくは50〜150℃、より好ましくは70〜120℃である。付加反応生成物と多塩基酸との付加反応における重合禁止剤及び触媒の具体例としては、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂とモノカルボン酸との付加反応における重合禁止剤及び触媒の具体例と同じものが、それぞれ挙げられる。
【0049】
第四の態様における付加反応生成物(第三の中間体)と多塩基酸との付加反応は、溶媒中で、重合禁止剤及び触媒の存在下でおこなわれることが好ましい。この場合、付加反応生成物中に残存するエポキシ基1当量に対する反応系に供給される多塩基酸の割合は0.15〜0.95モルであることが好ましく、0.5〜0.9モルであれば更に好ましい。更に、第四の態様における第四の中間体とモノカルボン酸との付加反応は、溶媒中で、重合禁止剤及び触媒の存在下でおこなわれることが好ましい。この場合、第四の中間体中に残存するエポキシ基1当量に対する反応系に供給されるモノカルボン酸の割合は1.0〜5.0モルであることが好ましく、1.01〜2.0モルであれば更に好ましい。この場合、付加反応生成物間の架橋が抑制されることでカルボキシル基含有樹脂のゲル化が抑制されると共に未反応の多塩基酸の残存も抑制される。反応温度は好ましくは50〜150℃、より好ましくは70〜120℃である。付加反応生成物と多塩基酸との付加反応における重合禁止剤及び触媒の具体例としては、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂とモノカルボン酸との付加反応における重合禁止剤及び触媒の具体例と同じものが、それぞれ挙げられる。
【0050】
カルボキシル基含有樹脂の酸価は、20〜200mgKOH/gの範囲であることが好ましく、33〜150mgKOH/gであれば更に好ましい。この場合、現像性のみならず、他の諸特性においても優れた特性を有するカルボキシル基含有樹脂が得られる。
【0051】
また、カルボキシル基含有樹脂の分子量は特に制限されないが、その重量平均分子量が2000〜15000の範囲であることが好ましい。尚、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィにより、次の条件で測定される。
GPC装置:昭和電工社製 SHODEX SYSTEM 11
カラム:SHODEX KF−800P,KF−005,KF−003,KF−001の4本直列
移動相:THF
流量:1ml/分
カラム温度:45℃
検出器:RI
換算:ポリスチレン
このようなカルボキシル基含有樹脂は、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、モノカルボン酸、多塩基酸などから合成される際に、ゲル化しにくくなる。このため、ソルダーレジスト用樹脂組成物のゲル化も抑制される。
【0052】
また、このようなカルボキシル基含有樹脂が用いられることで、ソルダーレジスト用樹脂組成物から形成されるソルダーレジスト層の電気絶縁性が向上する。その理由は明確ではないが、カルボキシル基含有樹脂にビフェニルノボラック構造が含まれることでソルダーレジスト層の耐水性が向上することが関係していると推察される。
【0053】
また、ソルダーレジスト用樹脂組成物が感光性を有する場合、このようなカルボキシル基含有樹脂が用いられることでソルダーレジスト用樹脂組成物の解像性が向上し、このため微細なパターン形状を有するソルダーレジスト層が容易に形成される。その理由は明確ではないが、ビフェニル骨格自身が紫外線等の光を吸収することで、ソルダーレジスト層が形成される際の露光時の光の散乱が抑制されるためであると考えられる。
【0054】
(2)エポキシ化合物
ソルダーレジスト用樹脂組成物が、1分子中に少なくとも2個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を含有することが好ましい。この場合、ソルダーレジスト用樹脂組成物に熱硬化性が付与され得る。このエポキシ化合物は、溶剤難溶性エポキシ化合物であってもよく、汎用の溶剤可溶性エポキシ化合物等であってもよい。エポキシ化合物の種類は特に限定されないが、特にフェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−695)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールA−ノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N−865)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA−1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX4000)、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC−3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鐵化学株式会社製の品番ST−4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP−4032、EPICLON HP−4700、EPICLON HP−4770)、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175−500、及びYL7175−1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR−960、EPICLON TER−601、EPICLON TSR−250−80BX、EPICLON 1650−75MPX、EPICLON EXA−4850、EPICLON EXA−4816、EPICLON EXA−4822、及びEPICLON EXA−9726;新日鐵化学株式会社製の品番YSLV−120TE)、及び前記以外のビスフェノール系エポキシ樹脂が望ましい。トリグリシジルイソシアヌレートとしては、特にS−トリアジン環骨格面に対し3個のエポキシ基が同一方向に結合した構造をもつβ体が好ましく、或いはこのβ体と、S−トリアジン環骨格面に対し1個のエポキシ基が他の2個のエポキシ基と異なる方向に結合した構造をもつα体との混合物が好ましい。
【0055】
エポキシ化合物にリン含有エポキシ樹脂が含まれていることも好ましい。この場合、ソルダーレジスト用樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有エポキシ樹脂としては、リン酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICRON EXA−9726、及びEPICLON EXA−9710)、新日鐵化学株式会社製の品番エポトートFX−305等が挙げられる。
【0056】
ソルダーレジスト用樹脂組成物中のエポキシ化合物の割合は特に制限されないが、ソルダーレジスト用樹脂組成物が感光性及び熱硬化性を有する場合は、ソルダーレジスト用樹脂組成物の固形分全量に対してエポキシ化合物全量の割合が0.1〜50質量%の範囲であることが好ましい。ソルダーレジスト用樹脂組成物が熱硬化性を有すると共に感光性を有しない場合は、ソルダーレジスト用樹脂組成物の固形分全量に対してエポキシ化合物の割合が0.1〜70質量%の範囲であることが好ましい。
【0057】
尚、ソルダーレジスト用樹脂組成物が感光性を有する場合において、このソルダーレジスト用樹脂組成物が熱硬化性を有さなくてもよく、この場合、ソルダーレジスト用樹脂組成物はエポキシ化合物を含有しなくてもよい。
【0058】
(3)光重合開始剤
ソルダーレジスト用樹脂組成物は光重合開始剤を含有してもよい。ソルダーレジスト用樹脂組成物が光重合開始剤を含有する場合、ソルダーレジスト用樹脂組成物には感光性が付与され得る。またソルダーレジスト用樹脂組成物がエポキシ化合物と光重合開始剤とを含有すると、ソルダーレジスト用樹脂組成物が熱硬化性と感光性とを兼ね備えるようになる。
【0059】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルスルフィド等のベンゾフェノン類;2,4−ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン等のα−ヒドロキシケトン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン等の窒素原子を含む化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(DAROCUR TPO)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−エチル−フェニル−フォスフィネート(SPEEDCURE TPO−L)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(IRGACURE 819)、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフォスフィンオキサイド(CGI 403)等のアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤;1,2−オクタンジオン,1−[4−(フェニチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)](IRGACURE OXE 01)、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(0−アセチルオキシム)(IRGACURE OXE 02)等のオキシムエステル化合物等が挙げられる。光重合開始剤と共に、p−ジメチル安息香酸エチルエステル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2−ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系等の公知の光重合促進剤や増感剤等が使用されてもよい。可視光露光用や近赤外線露光用等の光重合開始剤も必要に応じて使用される。これらの光重合開始剤は一種単独で使用され、或いは複数種が併用される。また、光重合開始剤と共に、レーザ露光法用増感剤として7−ジエチルアミノ−4−メチルクマリン等のクマリン誘導体、その他カルボシアニン色素系、キサンテン色素系等が併用されてもよい。
【0060】
光重合開始剤がアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む場合には、光重合開始剤が更にα−ヒドロキシアセトフェノンを含むことも好ましい。α−ヒドロキシアセトフェノンはアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤よりも酸素障害を受けにくく、且つ熱により変色しにくい。このため、α−ヒドロキシアセトフェノンが使用される場合には、ソルダーレジスト用樹脂組成物の露光時における表層の硬化性が特に高くなる。α−ヒドロキシアセトフェノンの具体例としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン(IRGACURE 184)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(DAROCUR 1173)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE 2959)などが挙げられる。
【0061】
ソルダーレジスト用樹脂組成物がアシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤とα−ヒドロキシアセトフェノンとを含有する場合には、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤の含有量は0.1〜20質量%の範囲、α−ヒドロキシアセトフェノンの含有量は0.1〜20質量%の範囲であることが好ましい。この場合、ソルダーレジスト用樹脂組成物の感光性が充分に維持されると共に、硬化物の硬度が更に向上し、且つ、硬化物の耐現像液性が向上する。またこのため、特に硬化物の耐無電解Niめっき性が向上する。
【0062】
ソルダーレジスト用樹脂組成物中における光重合開始剤の含有量は、ソルダーレジスト用樹脂組成物の感光性と、このソルダーレジスト用樹脂組成物から形成される硬化物の物性とのバランスを考慮して適宜設定されることが好ましく、特にソルダーレジスト用樹脂組成物の固形分全量に対して0.1〜30質量%の範囲であることが望ましい。
【0063】
尚、ソルダーレジスト用樹脂組成物が熱硬化性を有する場合において、このソルダーレジスト用樹脂組成物が感光性を有さなくてもよく、この場合、ソルダーレジスト用樹脂組成物は光重合開始剤を含有しなくてもよい。
【0064】
(4)光重合性化合物
ソルダーレジスト用樹脂組成物が光重合開始剤を含有する場合において、ソルダーレジスト用樹脂組成物がカルボキシル基含有樹脂以外の光重合性化合物を更に含有することも好ましい。
【0065】
光重合性化合物は、光重合性を有するモノマー及びプレポリマーから選択される。この光重合性化合物は、例えばソルダーレジスト用樹脂組成物の希釈、粘度調整、酸価の調整、光重合性の調整などの目的で使用される。
【0066】
この光重合性化合物としては、光重合性を有する適宜のポリマー或いはプレポリマーが挙げられる。光重合性化合物の具体例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート等の単官能アクリレート;ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε―カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートなどが挙げられる。このような化合物のうち一種のみが用いられても、複数種が併用されてもよい。
【0067】
この光重合性化合物に、リン含有化合物(リン含有光重合性化合物)が含まれていることも好ましい。この場合、ソルダーレジスト用樹脂組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有光重合性化合物としては、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトエステルP−1M、及びライトエステルP−2M)、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート(具体例として共栄社化学株式会社製の品番ライトアクリレートP−1A)、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート(具体例として大八工業株式会社製の品番MR−260)、昭和高分子株式会社製のHFAシリーズ(具体例としてジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー6003、及びHFA−6007、カプロラクトン変性ジペンタエリストールヘキサアクリレートとHCAとの付加反応物である品番HFAー3003、及びHFA−6127等)等が挙げられる。
【0068】
光重合性化合物が使用される場合、ソルダーレジスト用樹脂組成物中への光重合性化合物の含有量はソルダーレジスト用樹脂組成物全量に対して0.05〜40質量%の範囲であることが好ましい。更にこの含有量はソルダーレジスト用樹脂組成物の固形分全量に対して50質量%以下であることが望ましい。光重合性化合物の含有量がこのような範囲であると、ソルダーレジスト用樹脂組成物から形成される乾燥膜の表面粘着性が強くなり過ぎることが抑制される。
【0069】
(5)有機溶剤
ソルダーレジスト用樹脂組成物は必要に応じて有機溶剤を含有してもよい。有機溶剤は、例えばソルダーレジスト用樹脂組成物の液状化又はワニス化、粘度調整、塗布性の調整、造膜性の調整などの目的で使用される。有機溶剤の具体例としては、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ヘキサノール、エチレングリコール等の直鎖、分岐、2級或いは多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;プロピレングリコールメチルエーテル等のプロピレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等の酢酸エステル類;ジアルキルグリコールエーテル類などが挙げられる。これらの有機溶剤のうち一種のみが用いられても複数種が併用されてもよい。
【0070】
ソルダーレジスト用樹脂組成物中の有機溶剤の含有量は適宜設定される。この含有量は、ソルダーレジスト用樹脂組成物から形成される塗膜の仮乾燥時に有機溶剤が速やかに揮散するように、すなわち有機溶剤が乾燥膜に残存しないように、調整されることが好ましい。この有機溶剤の含有量は、特にソルダーレジスト用樹脂組成物全量に対して5〜99.5重量%の範囲であることが好ましく、この場合、ソルダーレジスト用樹脂組成物の良好な塗布性、ビアホール等への充填性が維持される。尚、有機溶剤の好適な含有量は塗布方法、充填方法などにより異なるので、塗布方法、充填方法に応じて含有量が適宜調節されることが好ましい。
【0071】
(6)他の樹脂
本発明の主旨を逸脱しない限りにおいて、ソルダーレジスト用樹脂組成物は、上述のカルボキシル基含有樹脂及びエポキシ化合物以外の樹脂を含有してもよい。たとえばソルダーレジスト用樹脂組成物は、更に例えばカプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート、モルホリンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート、及びメラミン、n−ブチル化メラミン樹脂、イソブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、ブチル化メラミン尿素共縮合樹脂、ベンゾグアナミン系共縮合樹脂等のアミノ樹脂等の熱硬化成分;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型エポキシ樹脂等に(メタ)アクリル酸を付加したもの;ジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物などを含有してもよい。
【0072】
(7)充填材
ソルダーレジスト用樹脂組成物は充填材を含有することも好ましい。充填材としては例えば硫酸バリウム、結晶性シリカ、ナノシリカ、酸化チタン、カーボンナノチューブ、タルク、ベントナイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機フィラーが挙げられる。このような充填材を含有すると、ソルダーレジスト用樹脂組成物から形成される塗膜の硬化収縮が低減する。ソルダーレジスト用樹脂組成物中の充填材の割合は適宜設定されるが、10〜50質量%の範囲であることが好ましく、この場合、ソルダーレジスト用樹脂組成物の固形分の割合が増大し、このためソルダーレジスト用樹脂組成物が加熱乾燥される際の体積変化が抑制され、このため硬化物のクラック耐性が更に向上する。
【0073】
(8)その他
ソルダーレジスト用樹脂組成物は、必要に応じて、エポキシ化合物を硬化させるための硬化剤;硬化促進剤;顔料等の着色剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;シランカップリング剤等の密着性付与剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;高分子分散剤;などを含有してもよい。
【0074】
[ソルダーレジスト用樹脂組成物の調製]
上記のような原料成分が配合され、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる公知の混練方法によって混練されることにより、ソルダーレジスト用樹脂組成物が調製され得る。その場合に、上記各成分のうち一部、例えば光重合性化合物及び有機溶剤の一部及びエポキシ樹脂を予め混合して分散させておき、これとは別に残りの成分を予め混合して分散させておき、使用時に両者を混合してソルダーレジスト用樹脂組成物を調製してもよい。
【0075】
[ソルダーレジスト層の形成]
本実施形態によるソルダーレジスト用樹脂組成物は、プリント配線板にソルダーレジスト層を形成するために適用され得る。
【0076】
以下に、本実施形態によるソルダーレジスト用樹脂組成物を用いてプリント配線板にソルダーレジスト層を形成する方法の第一の態様を示す。本態様では、感光性と熱硬化性とを兼ね備えるソルダーレジスト用樹脂組成物でプリント配線板の表面上にソルダーレジスト層を形成する。
【0077】
まず、プリント配線板を用意する。このプリント配線板の厚み方向の第一の表面上にソルダーレジスト用樹脂組成物を塗布し、続いてプリント配線板の第一の表面とは反対側の第二の表面上にもソルダーレジスト用樹脂組成物を塗布する。この場合のソルダーレジスト用樹脂組成物を塗布する方法としては、浸漬法、スプレー、スピンコート、ロールコート、カーテンコート、スクリーン印刷等の適宜の手法が採用され得る。続いて、ソルダーレジスト用樹脂組成物中の有機溶剤を揮発させるために例えば60〜120℃で予備乾燥を行うことで、プリント配線板の第一の表面上及び第二の表面上のソルダーレジスト用樹脂組成物を乾燥させる。
【0078】
続いて、第一の表面上及び第二の表面上のソルダーレジスト用樹脂組成物に、パターンが描かれたネガマスクを乾燥膜の表面に直接又は間接的に当てがい、活性エネルギー線を照射することにより、ネガマスクを介してソルダーレジスト用樹脂組成物を露光する。ネガマスクとしては、ソルダーレジスト層のパターン形状が活性エネルギー線を透過させる露光部として描画されると共に他の部分が活性エネルギー線を遮蔽する非露光部として形成された、マスクフィルムや乾板等のフォトツールなどが用いられる。また活性エネルギー線としては、ソルダーレジスト用樹脂組成物の組成に応じ、紫外線、可視光、近赤外線等などの適宜の活性エネルギー線が挙げられる。例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ又はメタルハライドランプ等の光源から紫外線等を照射する。
【0079】
尚、露光の手法は、上記のようなネガマスクを用いる方法に限られず、適宜の手法が採用され得る。例えばレーザ露光等による直接描画法等が採用されてもよい。
【0080】
露光後のプリント配線板からネガマスクを取り外し、現像処理することにより、ソルダーレジスト用樹脂組成物の非露光部分を除去する。プリント配線板の第一の表面上及び第二の表面上に残存するソルダーレジスト用樹脂組成物の露光部分にてソルダーレジスト層が形成される。
【0081】
現像処理では、ソルダーレジスト用樹脂組成物の種類に応じた適宜の現像液を使用することができる。現像液の具体例としては例えば炭酸ナトリウム水溶液、炭酸カリウム水溶液、炭酸アンモニウム水溶液、炭酸水素ナトリウム水溶、炭酸水素カリウム水溶液、炭酸水素アンモニウム水溶液、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化アンモニウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などのアルカリ溶液を例示することができる。また、前記アルカリ溶液以外でもモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機アミンを使用することができ、これらは、一種単独で用いられても、複数種が組み合わされて用いられてもよい。このアルカリ溶液の溶媒としては、水単独のみならず、例えば水と低級アルコール類等の親水性のある有機溶媒の混合物を用いることも可能である。
【0082】
更に、ソルダーレジスト層及びスルーホール内の硬化物に例えば120〜180℃で30〜90分程度の条件で加熱処理を施すことで、ソルダーレジスト層の熱硬化反応を進行させる。これにより、ソルダーレジスト層の強度、硬度、耐薬品性等が向上する。
【0083】
尚、本態様ではソルダーレジスト用樹脂組成物を第一の表面及び第二の表面に塗布してから、第一の表面上及び第二の表面上のソルダーレジスト用樹脂組成物を一括して露光・現像しているが、ソルダーレジスト用樹脂組成物を露光・現像するタイミングはこれに限られない。例えば、第一の表面上にソルダーレジスト用樹脂組成物を塗布し、続いて第二の表面上にソルダーレジスト用樹脂組成物を塗布する前に第一の表面上のソルダーレジスト用樹脂組成物を露光・現像し、続いて第二の表面上にソルダーレジスト用樹脂組成物を塗布し、このソルダーレジスト用樹脂組成物を露光・現像してもよい。
【0084】
次に、プリント配線板にソルダーレジスト層を形成する方法の、第二の態様を示す。本態様では、熱硬化性を備えるソルダーレジスト用樹脂組成物でプリント配線板の表面上にソルダーレジスト層を形成する。
【0085】
まず、プリント配線板を用意する。このプリント配線板の厚み方向の第一の表面上にソルダーレジスト用樹脂組成物をパターン状に塗布し、続いてプリント配線板の第一の表面とは反対側の第二の表面上にもソルダーレジスト用樹脂組成物をパターン状に塗布する。この場合のソルダーレジスト用樹脂組成物を塗布する方法としては、スクリーン印刷等の適宜の手法が採用され得る。
【0086】
続いて、ソルダーレジスト用樹脂組成物中の有機溶剤を揮発させるために例えば60〜120℃で予備乾燥を行うことで、プリント配線板の第一の表面上、及び第二の表面上のソルダーレジスト用樹脂組成物を乾燥させる。
【0087】
続いて、プリント配線板の第一の表面上、及び第二の表面上のソルダーレジスト用樹脂組成物に例えば120〜180℃で30〜90分程度の条件で加熱処理を施すことで、ソルダーレジスト用樹脂組成物の熱硬化反応を進行させる。これにより、プリント配線板の第一の表面上及び第二の表面上でソルダーレジスト用樹脂組成物が硬化することでソルダーレジスト層が形成される。
【0088】
尚、本態様ではソルダーレジスト用樹脂組成物を第一の表面及び第二の表面に塗布してから、第一の表面上及び第二の表面上のソルダーレジスト用樹脂組成物を一括して加熱することで硬化しているが、ソルダーレジスト用樹脂組成物を加熱するタイミングはこれに限られない。例えば第一の表面上にソルダーレジスト用樹脂組成物を塗布し、続いて第二の表面上にソルダーレジスト用樹脂組成物を塗布する前に第一の表面上のソルダーレジスト用樹脂組成物を加熱し、続いて第二の表面上にソルダーレジスト用樹脂組成物を塗布し、この第二の表面上のソルダーレジスト用樹脂組成物を加熱してもよい。
【実施例】
【0089】
[合成例A−1]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四ツ口フラスコ内に、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、品番NC−3000−H、エポキシ当量288)288質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート155質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸22.0質量部、及びトリフェニルホスフィン3質量部を投入して混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で100℃で3時間加熱した。
【0090】
続いて、フラスコ内の混合物に、テトラヒドロフタル酸119質量部、メチルハイドロキノン0.3質量部及び、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.2質量部を加え、続いてこの混合物を90℃で10時間加熱した。
【0091】
これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(A−1)を得た。このカルボキシル基含有樹脂の酸価は67mgKOH/g、エポキシ当量は約7700g/eq.、重量平均分子量は約8000であった。
【0092】
[合成例A−2]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四ツ口フラスコ内に、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、品番NC−3000、エポキシ当量276)276質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート155質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸22.0質量部、及びトリフェニルホスフィン3質量部を投入して混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で100℃で3時間加熱した。
【0093】
続いて、フラスコ内の混合物に、テトラヒドロフタル酸119質量部、メチルハイドロキノン0.3質量部及び、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート71.4質量部を加え、続いてこの混合物を、90℃で17時間加熱した。
【0094】
これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(A−2)を得た。このカルボキシル基含有樹脂の酸価は70mgKOH/g、エポキシ当量は約15200g/eq.、重量平均分子量は約4600であった。
【0095】
[合成例A−3]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四ツ口フラスコ内に、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、品番NC−3000、エポキシ当量276)276質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート155質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸22.0質量部、トリフェニルホスフィン3質量部を投入して混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で100℃で3時間加熱した。
【0096】
続いて、フラスコ内の混合物に、テトラヒドロフタル酸59.5質量部、マレイン酸34.8質量部、メチルハイドロキノン0.3質量部及び、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート58.1質量部を加え、続いてこの混合物を、90℃で17時間加熱した。
【0097】
これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(A−3)を得た。このカルボキシル基含有樹脂の酸価は85mgKOH/g、エポキシ当量は約18000g/eq.、重量平均分子量は約4000であった。
【0098】
[合成例A−4]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四ツ口フラスコ内に、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、品番NC−3000、エポキシ当量276)276質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート155質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸14.7質量部、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート(東亞合成株式会社製、商品名アロニックスM−5300、数平均分子量290)30質量部、及びトリフェニルホスフィン3質量部を加えて混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で100℃で3時間加熱した。
【0099】
続いて、フラスコ内の混合物にテトラヒドロフタル酸119質量部、メチルハイドロキノン0.3質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート83.6質量部を加え、続いてこの混合物を、90℃で10時間加熱した。
【0100】
これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(A−4)を得た。このカルボキシル基含有樹脂の酸価は68mgKOH/g、エポキシ当量は約5300g/eq.、重量平均分子量は約4300であった。
【0101】
[合成例A−5]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四ツ口フラスコ内に、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、品番NC−3000、エポキシ当量276)276質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート155質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、酢酸18質量部、トリフェニルホスフィン3質量部を加えて混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で100℃で3時間加熱した。
【0102】
続いて、フラスコ内の混合物にテトラヒドロフタル酸119質量部、メチルハイドロキノン0.3質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート69.3質量部を加え、続いてこの混合物を90℃で15時間加熱した。
【0103】
これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(A−5)を得た。このカルボキシル基含有樹脂の酸価は68mgKOH/g、エポキシ当量は約8100g/eq.、重量平均分子量は約7800であった。
【0104】
[合成例A−6]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四ツ口フラスコ内に、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬株式会社製、品番NC−3000、エポキシ当量276)276質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート242質量部、メチルハイドロキノン0.5質量部、トリフェニルホスフィン3質量部、及びテトラヒドロフタル酸170質量部を加えて混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で90℃で10時間加熱した。
【0105】
これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(A−6)を得た。このカルボキシル基含有樹脂の酸価は81mgKOH/g、エポキシ当量は約7000g/eq.、重量平均分子量は約5600であった。
【0106】
[合成例B−1]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四ツ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製、品番YDCN−700−5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート153.2質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸43.2質量部、及びトリフェニルホスフィン3質量部を加えて混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で100℃で3時間加熱した。
【0107】
続いて、フラスコ内の混合物に、マレイン酸34.8質量部、及びメチルハイドロキノン0.3質量部を加え、続いてこの混合物を100℃で6時間加熱した。その結果、混合物はゲル化した。
【0108】
これにより、ゲル状の混合物(B−1)を得た。
【0109】
[合成例B−2]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四ツ口フラスコ内に、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(DIC株式会社製、品番EPICLON N−775、エポキシ当量188)188質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート194.7質量部、メチルハイドロキノン0.5質量部、トリフェニルホスフィン3質量部、及びテトラヒドロフタル酸170質量部を加えて混合物を調製した。この混合物を100℃で6時間加熱した。その結果、混合物はゲル化した。
【0110】
これにより、ゲル状の混合物(B−2)を得た。
【0111】
[合成例B−3]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四ツ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製、品番YDCN−700−5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート160.1質量部、メチルハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸36質量部、及びトリフェニルホスフィン3質量部を加えて混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で100℃で3時間加熱した。
【0112】
続いて、フラスコ内の混合物にマレイン酸46.4質量部、及びメチルハイドロキノン0.3質量部を加え、続いてこの混合物を100℃で2時間加熱した。続いてこの混合物に酢酸8.4質量部を加え、続いてこの混合物を100℃で4時間加熱した。
【0113】
これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(B−3)を得た。このカルボキシル基含有樹脂のエポキシ当量は約9800g/eq.であった。
【0114】
[合成例B−4]
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四ツ口フラスコ内に、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(新日鐵化学株式会社製、品番YDCN−700−5、エポキシ当量203)203質量部、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート103質量部、ハイドロキノン0.2質量部、アクリル酸72.7質量部、及びジメチルベンジルアミン0.6質量部を加えて混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で110℃で10時間加熱した。
【0115】
続いて、フラスコ内の混合物にテトラヒドロ無水フタル酸60.8質量部、及びジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート78.9質量部を加え、続いてこの混合物を81℃で3時間加熱した。
【0116】
これにより、カルボキシル基含有樹脂の65質量%溶液(B−4)を得た。
【0117】
[ソルダーレジスト用樹脂組成物の調製]
各実施例及び比較例において、後掲の表に示す原料を配合し、これにより得られた混合物を3本ロールで混練することで、ソルダーレジスト用樹脂組成物を得た。
【0118】
表中に表示されている樹脂溶液A−1からA−6、並びに樹脂溶液B−3,B−4は、それぞれ合成例A−1からA−6、並びに合成例B−3,B−4で得られた、カルボキシル基含有樹脂の溶液である。尚、合成例B−1,B−2で得られた混合物については、ゲル化してしまったため、ソルダーレジスト用樹脂組成物の調製に使用しなかった。
【0119】
また、表中に表示されている成分の詳細は、次の通りである。
・エポキシ化合物A:ビフェニル型エポキシ樹脂、三菱化学株式会社製、品番YX4000。
・エポキシ化合物B:ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、日本化薬株式会社製、品番NC−3000−H。
・光重合性モノマー:1分子あたり2個のカプロラクトンにより変性されたジペンタエリストールヘキサアクリレート、日本化薬株式会社製、品番DPCA−20。
・光重合開始剤A:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、BASF社製、品番ルシリンTPO。
・光重合開始剤B:1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、チバ・ジャパン株式会社製、品番IRGACURE 184。
・光重合開始剤C:エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、チバ・ジャパン株式会社製、品番IRGACURE OXE02。
・充填材A:硫酸バリウム、堺化学工業株式会社製、品番バリエースB30。
・充填材B:タルク、日本タルク株式会社製、品番SG−2000。
・メラミン樹脂:日産化学工業株式会社製、品番メラミンHM。
・消泡剤:シメチコン(ジメチコンとケイ酸の混合物)、信越シリコーン株式会社製、品番KS−66。
・着色剤:フタロシアニングリーン。
・有機溶剤:ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート。
【0120】
[評価試験]
(実施例1〜6及び比較例1,2におけるテストピースの作製)
まず、厚み35μmの銅箔を備えるガラス基材エポキシ樹脂銅張積層板にエッチング処理を施すことで銅箔をパターニングし、これによりプリント配線基板を得た。このプリント配線板上にソルダーレジスト用樹脂組成物をスクリーン印刷法により全面塗布することで、プリント配線板上に湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を80℃で20分加熱することで予備乾燥し、これにより厚み20μmの乾燥塗膜を形成した。この乾燥塗膜の表面上にネガマスクを直接当てがうとともにソルダーレジスト用樹脂組成物における最適露光量の紫外線を照射することで、乾燥塗膜を選択的に露光した。露光後の乾燥塗膜に対し、炭酸ナトリウム水溶液を用いて現像処理を施すことで、乾燥塗膜のうち露光により硬化した部分(硬化膜)をプリント配線板上に残存させた。この硬化膜を更に150℃で60分間加熱して熱硬化させ、続いてこの硬化膜に1000mJ/cm2の紫外線を照射した。これにより、プリント配線板上にソルダーレジスト層を形成し、このソルダーレジスト層を備えるプリント配線板をテストピースとした。
【0121】
(実施例7〜9及び比較例3,4におけるテストピースの作製)
まず、厚み35μmの銅箔を備えるガラス基材エポキシ樹脂銅張積層板にエッチング処理を施すことで銅箔をパターニングし、これによりプリント配線基板を得た。このプリント配線板上にソルダーレジスト用樹脂組成物をスクリーン印刷法によりパターン状に塗布することで、プリント配線板上に厚み30μmのパターン状の湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を80℃で20分加熱することで予備乾燥し、続いて150℃で60分間加熱することで熱硬化させた。これにより、プリント配線板上にソルダーレジスト層を形成し、このソルダーレジスト層を備えるプリント配線板をテストピースとした。
【0122】
(耐酸性)
室温下でテストピースを10%の硫酸に30分間浸漬した後、ソルダーレジスト層の外観を目視で観察した。その結果を、次の評価基準により評価した。
◎:異常が認められない。
○:極僅かに変化が認められる。
△:少し変化が認められる。
×:ソルダーレジスト層の剥離等の大きな変化が認められる。
【0123】
(耐アルカリ性)
室温下でテストピースを10%の水酸化ナトリウムに1時間浸漬した後、ソルダーレジスト層の外観を目視で観察した。その結果を、次の評価基準により評価した。
◎:異常が認められない。
○:極僅かに変化が認められる。
△:少し変化が認められる。
×:ソルダーレジスト層の剥離等の大きな変化が認められる。
【0124】
(密着性)
JIS D0202の試験方法に従って、テストピースのソルダーレジスト層に碁盤目状にクロスカットを入れ、次いでセロハン粘着テープによるピーリング試験を実施した。続いて、ソルダーレジスト層の剥離の状態を目視により観察し、その結果を次の評価基準により評価した。
◎:100個のクロスカット部分のうちの全てに全く変化が認められない。
○:100個のクロスカット部分のうち1箇所に僅かに浮き上がりが認められる。
△:100個のクロスカット部分のうち2〜10箇所に剥離が認められる。
×:100個のクロスカット部分のうち11〜100箇所に剥離が認められる。
【0125】
(耐メッキ性)
市販品の無電解ニッケルメッキ浴及び無電解金メッキ浴を用いて、テストピースにめっきを施した。メッキの状態を観察した。更に、メッキ後のソルダーレジスト層に対してセロハン粘着テープ剥離試験をおこなった。その結果を次の評価基準により評価した。
◎:ソルダーレジスト層に、メッキによる外観変化、テープ剥離試験による剥離、メッキの潜り込みの、いずれも認められない。
○:ソルダーレジスト層にメッキによる外観変化は認められず、テープ剥離試験による剥離も認められないが、ソルダーレジスト層の末端部分において極めてわずかながらメッキの潜り込みが認められる。
△:ソルダーレジスト層にメッキによる外観変化は認められないが、テープ剥離試験による剥離が一部認められる。
×:ソルダーレジスト層にメッキによる浮き上がりが認められ、テープ剥離試験による剥離も認められる。
【0126】
(はんだ耐熱性)
テストピースに水溶性フラックス(ロンドンケミカル社製、品番LONCO 3355−11)を塗布し、続いてこのテストピースを260℃の溶融はんだ浴に10秒間浸漬し、続いてこれを水洗した。この一連の操作を3回繰り返した後のテストピースにおけるソルダーレジスト層の外観を観察し、次の評価基準により評価した。
◎:異常が認められない。
○:極僅かに変化が認められる。
△:少し変化が認められる。
×:ソルダーレジスト層の剥離等の大きな変化が認められる。
【0127】
(鉛筆硬度)
テストピースにおけるソルダーレジスト層の鉛筆硬度を、三菱ハイユニ(三菱鉛筆社製)を用いて、JIS K5400に準拠して測定して評価した。
【0128】
(可撓性)
実施例1〜6及び比較例1,2では、ポリエステルフィルム上にソルダーレジスト用樹脂組成物をスクリーン印刷法により全面塗布することで、ポリエステルフィルム上に湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を80℃で20分加熱することで予備乾燥し、これにより厚み20μmの乾燥塗膜を形成した。この乾燥塗膜全体にソルダーレジスト用樹脂組成物における最適露光量の紫外線を照射することで、乾燥塗膜全体を露光し、これにより硬化膜を形成した。この硬化膜を更に150℃で60分間加熱して熱硬化させ、続いてこの硬化膜に1000mJ/cm2の紫外線を照射した。続いて、このポリエステルフィルムから硬化膜を剥離した。
【0129】
実施例7〜9及び比較例3,4では、ポリエステルフィルム上にソルダーレジスト用樹脂組成物をスクリーン印刷法により全面塗布することで、ポリエステルフィルム上に厚み30μmの湿潤塗膜を形成した。この湿潤塗膜を80℃で20分加熱することで予備乾燥し、続いて150℃で60分間加熱することで熱硬化させた。これにより、ポリエステルフィルム上に硬化膜を形成した。続いて、このポリエステルフィルムから硬化膜を剥離した。
【0130】
各実施例及び比較例において得られた硬化膜をから平面視5cm×2cmのサンプルを切り出した。このサンプルを160°、165°、及び170°の角度で折り曲げてから、その外観を観察し、その結果を次の評価基準により評価した。
◎:170°の角度で折り曲げても割れが認められない。
〇:170°の角度で折り曲げると割れが認められるが、165°の角度で折り曲げると割が認められない。
△:165°の角度で折り曲げると割れが認められるが、160°の角度で折り曲げると割が認められない。
×:160°の角度で折り曲げると割れが認められる。
【0131】
(PCT耐性)
テストピースを、121℃、97%R.H.の雰囲気中に100時間曝露し、続いてこのテストピースの外観を観察した。その結果を次の評価基準により評価した。
◎:ソルダーレジスト層に膨れ、剥離、及び変色が認められない。
〇:ソルダーレジスト層に膨れ、及び剥離は認められないが、若干の変色が認められる。
△:ソルダーレジスト層に膨れ、剥離、及び変色が、若干認められる。
×:ソルダーレジスト層に膨れ、剥離、及び変色が、認められる。
【0132】
(電気絶縁性)
銅張積層板(FR−4)に、ライン幅/スペース幅が100μm/100μmであるくし型電極を形成することで、評価用のプリント配線板を得た。このプリント配線板上に、テストピースを作製する場合と同じ方法及び条件で、ソルダーレジスト層を形成した。続いて、くし型電極にDC30Vのバイアス電圧を印加しながら、プリント配線板を121℃、97%R.H.の試験環境下に200時間曝露した。この試験環境下におけるソルダーレジスト層の電気抵抗値を常時測定し、その結果を次の評価基準により評価した。
◎:試験開始時から200時間経過するまでの間、電気抵抗値が常に106Ω以上を維持した。
〇:試験開始時からの経過時間が150時間以上200時間未満で、電気抵抗値が106Ω未満となったが、それまでは電気抵抗値が106Ω以上を維持した。
△:試験開始時からの経過時間が100時間以上150時間未満で、電気抵抗値が106Ω未満となったが、それまでは電気抵抗値が106Ω以上を維持した。
△:試験開始時からの経過時間が100時間未満で、電気抵抗値が106Ω未満となった。
【0133】
(解像性)
実施例1〜6及び比較例1,2においてテストピースを作製する際、開口径60μm、70μm、80μm、及び90μmの開口のネガパターンを有するネガマスクを用いることで、ソルダーレジスト層に開口径60μm、70μm、80μm、及び90μmの開口を形成することを試みた。
【0134】
このソルダーレジスト層を観察し、その結果を次の評価基準で評価した。
◎:開口径60〜90μmの全て開口が形成される。
○:開口径70〜90μmの開口は形成されるが、開口径60μmの開口は形成されない。
△:開口径80μm及び90μmの開口は形成されるが、開口径70μm以下の開口は形成されない。
×:開口径80μm以下の開口が形成されない。
【0135】
【表1】

【0136】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂の有するエポキシ基のうちの少なくとも一部に多塩基酸が付加した構造を有するカルボキシル基含有樹脂。
【請求項2】
ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂の有するエポキシ基のうち、一部にモノカルボン酸が付加し、別の一部に多塩基酸が付加した構造を有するカルボキシル基含有樹脂。
【請求項3】
前記モノカルボン酸にエチレン性不飽和基含有モノカルボン酸が含まれる請求項2に記載のカルボキシル基含有樹脂。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のカルボキシル基含有樹脂を含有するソルダーレジスト用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項3に記載のカルボキシル基含有樹脂を含有するソルダーレジスト用樹脂組成物。
【請求項6】
光重合開始剤を更に含有する請求項5に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物。
【請求項7】
光重合性を有するモノマー及びプレポリマーから選択される少なくとも一種の光重合性化合物を更に含有する請求項5又は6に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物。
【請求項8】
一分子中に少なくとも二個のエポキシ基を有するエポキシ化合物を更に含有する請求項4乃至7のいずれか一項に記載のソルダーレジスト用樹脂組成物。

【公開番号】特開2013−104013(P2013−104013A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−249746(P2011−249746)
【出願日】平成23年11月15日(2011.11.15)
【出願人】(000166683)互応化学工業株式会社 (57)
【Fターム(参考)】