説明

カルボニル化処理の流れからの過マンガン酸塩還元化合物及びアルキルヨウ化物の除去

【課題】高純度の酢酸を製造する方法を提供する。
【解決手段】メタノールのカルボニル化による生成物の精製工程の中間流の軽質相から過マンガン酸塩還元化合物、例えば、アセトアルデヒド、アルキルヨウ化物等不純物を除去することにより、高純度酢酸を得ることが出来る。具体的には、軽沸相を蒸留してアセトアルデヒド等を濃縮し、これを第2蒸留塔に導き、さらに蒸留により得た軽沸分を溶媒抽出して、アセトアルデヒド等を除去することが出来る。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、VIII族金属カルボニル化触媒の存在下におけるメタノールのカルボニル化により形成される過マンガン酸塩還元化合物(permanganate reducing compound)及びアルキルヨウ化物を除去するための新規方法に関する。特には、本発明は、前記カルボニル化処理により酢酸を形成する間に中間流から過マンガン酸塩還元化資物及びアルキルヨウ化物を減少させ、及び/又は除去するための新規方法に関する。
【0002】
発明の背景
現在用いられている酢酸の合成方法のうち、商業的に最も有用なものの1つは、1973年10月30日にPaulikらに対して発行された米国特許第3,769,329号に教示されるもののような一酸化炭素を用いるメタノールの触媒カルボニル化である。このカルボニル化触媒は、液体反応媒体中に溶解しているか、もしくは他の方法で分散され、さもなければ不活性固体で支持されているロジウムを、ヨウ化メチルで例示される触媒促進剤を含むハロゲンと共に含む。このロジウムは多くの形態のうちのいずれの形態ででも反応系に導入することができ、それは、実際にそれが可能であるとして、活性触媒複合体内でのロジウム部分の正確な性質を確認することとは関連しない。同様に、ハロゲン化物促進剤の性質は重要ではない。この特許権者は非常に多くの好適な促進剤を開示しており、その大部分は有機ヨウ化物である。この反応は、液体反応媒体中に溶解している触媒を用いて行い、それを通して一酸化炭素ガスを連続的に泡立てることが最も典型的であり、かつ有用である。
【0003】
ロジウム触媒の存在下においてアルコールをカルボニル化してそのアルコールよりも炭素原子が1つ多いカルボン酸を生成するための従来技術の方法における改善が、共通して譲渡されている1991年3月19日発行の米国特許第5,001,259号;1991年6月25日発行の第5,026,908号及び1992年9月1日発行の第5,144,068号並びに1992年7月1日公開の欧州特許第161,874B2号に開示されている。これらに開示されるように、酢酸は、酢酸メチル、ハロゲン化メチル、特にはヨウ化メチル、及び触媒的に有効な濃度で存在するロジウムを含む反応媒体中でメタノールから生成される。これらに記載される発明は、主として、(一般的な産業上の実務では約14wt%もしくは15wt%の水を維持するにも関わらず)反応媒体中の非常に低い水濃度、すなわち4重量(wt)%以下でさえも、その反応媒体において、触媒的に有効な量のロジウム、少なくとも限定された濃度の水、酢酸メチル及びヨウ化メチルと共に、ヨウ化メチルもしくは他の有機ヨウ化物として存在するヨウ化物含量を上回る特定の濃度のヨウ素イオンを維持することにより、触媒の安定性及びカルボニル化反応器の生産性を驚くほど高い水準で維持することができるという発見にある。このヨウ素イオンは単純な塩として存在し、ヨウ化リチウムが好ましい。これらの特許は、酢酸メチル及びヨウ化物塩の濃度が、特に低い反応器水濃度での、酢酸を生成するためのメタノールのカルボニル化の速度に影響を与える重要なパラメータであることを教示する。比較的高濃度の酢酸メチル及びヨウ化物塩を用いることにより、液体反応媒体が、単純に“限定濃度”の水と広範に定義することができるほど低い、約0.1wt%という低い濃度で水を含む場合、驚くべき程度の触媒安定性及び反応器生産性が得られる。さらに、用いられるこの反応媒体は、特には酢酸生成物を回収するための蒸留がこの反応溶液内で維持される環境においてはロジウムに対する安定化効果を有するリガンドである一酸化炭素をこの触媒から除去する傾向にあるこのプロセスの生成物回収工程の間、ロジウム触媒の安定性、すなわち、触媒の沈殿に対する耐性を改善する。米国特許第5,001,259号;第5,026,908号及び第5,144,068号は参照することによりここに組み込まれる。
【0004】
酢酸を生成するための低水量カルボニル化プロセスは二酸化炭素及びプロピオン酸のような副生物を減少させる。しかしながら、一般に痕跡量で存在する他の不純物の量も増加し、触媒を改善することにより、又は反応条件を修正することにより生成速度を高めようとする試みがなされた場合、しばしば酢酸の質が損なわれる。これらの痕跡量の不純物は、特にそれらがその反応プロセスを通して再循環される場合、酢酸の質に影響を与える。酢酸の過マンガン酸塩時間(permanganate time)を減少させる不純物のうちにあるのはカルボニル化合物、木飽和カルボニル化合物、及び有機ヨウ化物である。ここで用いられる場合、“カルボニル”という句はアルデヒドもしくはケトン官能基を有する化合物を意味することが意図されており、これらの化合物は不飽和を有していてもいなくてもよい。
【0005】
本発明は、不飽和アルデヒド及び他のカルボニル不純物、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、及び2−エチルブチルアルデヒド等、並びにそれらのアルドール縮合生成物の形成につながる過マンガン酸塩還元化合物(PRC)、例えば、アセトアルデヒドの除去に向けられている。他のPRCとしてはアルキルヨウ化物、例えば、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ペンチル、ヨウ化ヘキシル等が挙げられる。さらに別のPRCとしてはプロピオシ酸、この酢酸プロセスの副生物、が挙げられる。
【0006】
PRCは、典型的には、ヨウ化物触媒促進剤(例えば、MeI)に非常に近い沸点を有し、アルキルヨウ化物を十分に除去することは困難である。アルキルヨウ化物は反応生成物から除去することが望ましく、これは、(酢酸生成物中の)痕跡量のこれらの不純物が酢酸ビニル、最も一般的には酢酸から製造される生成物、の製造において用いられる触媒を無力化する傾向にあるためである。したがって、本発明は、アルキルヨウ化物、特にはC1−12アルキルヨウ化物化合物の除去にも向けられている。これらのカルボニル不純物はヨウ化物触媒促進剤とさらに反応して多炭素アルキルヨウ化物、例えば、ヨウ化エチル、ヨウ化ブチル、ヨウ化ヘキシル等を形成することもある。多くの不純物はアセトアルデヒドを起源とするため、第1の目的はこの反応系におけるアセトアルデヒド及びアルキルヨウ化物を除去し、又はその含量を減少させることにある。
【0007】
不純物を除去する従来の技術としては酸化剤、オゾン、水、メタノール、活性化炭素、アミン等での酢酸の処理が挙げられ、この処理は酢酸の蒸留と組み合わせても組み合わせなくてもよい。最も典型的な精製処理としては最終生成物の一連の蒸留が挙げられる。カルボニル化合物と反応してオキシムを形成するヒドロキシルアミンのようなアミン化合物で有機物の流れを処理し、次いで蒸留して精製有機生成物をオキシム反応生成物から分離することにより、有機物の流れからカルボニル不純物を除去することが知られている。しかしながら、この最終生成物の追加処理はそのプロセスかかる費用を上積みし、処理した酢酸生成物の蒸留はさらなる不純物の形成を生じる可能性があることが見出されている。
【0008】
比較的高純度の酢酸を得ることは可能であるが、上述の低水量カルボニル化プロセス及び精製処理により形成される酢酸生成物は、しばしば、過マンガン酸塩時間に関して不十分のままである。これは、そこに小率の残留不純物が存在するためである。十分な過マンガン酸塩時間は多くの用途に対して酸生成物が満たさなければならない重要な商業的試験であるため、過マンガン酸塩時間を減少させるそのような不純物の存在は問題である。従来の処理及び蒸留技術により少量のこれらの不純物を酢酸から除去することは、それらの不純物が酢酸生成物に近い沸点を有するため、蒸留によっては経済的もしくは商業的に実現できるものではない。
【0009】
カルボニル化プロセスのどこで不純物を除去することができるのかを決定することが重要である。また、どのような経済的に実現可能なプロセスによって、最終生成物に対するさらなる汚染又は不必要な追加費用の危険性なしに不純物を除去することができるのかを決定することも重要である。
【0010】
日本国特許出願5-169205号には、反応溶液のアセトアルデヒド濃度を1500ppm未満に調整することにより高緯度酢酸を製造する方法が開示されている。反応溶液中のアセトアルデヒド濃度を1500ppm未満に維持することにより、不純物の形成を抑制し、かつ形成された粗製酢酸の精製の間に基本的な蒸留操作のみを行うことで高純度の酢酸を製造することが可能であることが述べられている。
【0011】
1995年4月12日公開のEP 487,284,B1号には、酢酸生成物中に存在するカルボニル不純物が、一般に、軽留カラム(light ends column)からのオーバーヘッド内に濃縮することが述べられている。したがって、軽留カラム・オーバーヘッドをアミン化合物、すなわち、カルボニル化合物と反応するヒドロキシルアミンで処理して蒸留によりそのようなカルボニルを残りのオーバーヘッドから分離することを可能にし、過マンガン酸塩時間が改善された酢酸生成物を生成させる。
【0012】
EP 0 687 662 A2号では、一段階もしくは多段階蒸留プロセスを用いてアセトアルデヒドを除去することにより400ppm以下のアセトアルデヒド濃度を維持する高純度酢酸の製造プロセスが開示されている。アセトアルデヒドを除去するための処理について示唆される流れには、主として水、酢酸及び酢酸メチルを含む軽質相(light phase);主としてヨウ化メチル、酢酸メチル及び酢酸を含む重質相(heavy phasg);主としてヨウ化メチル及び酢酸メチルを含むオーバーヘッド流;又は軽質相及び重資相を合わせて含む再循環流が含まれる。4種類の流れが処理について示唆されているが、この参考文献は重質相の使用を教示し、例示している。どの流れ(1つもしくは複数)が最大濃度のアセトアルデヒドを含んでいるかに関する教示又は示唆はなされていない。
【0013】
反応器内でのアセトアルデヒドの形成を制御するための反応条件の管理もEP'662号に開示されている。アセトアルデヒドの形成を制御することにより、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒド、及びヨウ化アルキルのような副生物の減少が減少することが述べられている。しかしながら、反応条件の管理が“プロピオン酸の副生津度を増加させる欠点を有する”ことが指摘されており、これはプロピオン酸が'662号の開示されるプロセスに関する問題であることを示す。
【0014】
したがって、EP'662号には、反応器内で形成される400ppmの濃度を上回るアセトアルデヒドの除去に加えて、アセトアルデヒドの形成を回避するための反応条件の最適化が記載される。
【0015】
上記プロセスはカルボニル化系からのカルボニル不純物の除去、並びに、大体において、最終酢酸生成物におけるアセトアルデヒド濃度及び過マンガン酸塩時間の問題の制御において成功しているが、さらなる改善を行うことができる。このカルボニル化プロセスのどこで過マンガン酸塩還元化合物、特にはアセトアルデヒド、及びアルキルヨウ化物が最も濃縮し、したがって、一貫した純度の生成物を保証するために除去するごとができるのかを決定する必要性が残っている。同時に、カルボニル化プロセスの生産性を犠牲にすることなく、又は実質的な追加稼働費用を要することなく、そのようなカルボニル物質及びヨウ化物化合物を除去するための方法を提供する必要性が残っている。
【0016】
発明の要約
軽留蒸留カラムからの軽留相が過マンガン酸塩還元化合物、特にはアセトアルデヒドを含むカルボニルを含有することが発見されており、これはさらに濃縮してこのプロセスから除去することができる。本発明の一側面においては、これらの軽留相を2回蒸留し、一度は蒸留器カラムを通すもので、これはアセトアルデヒド、ヨウ化メチル、及び酢酸メチルを酢酸及び水から分離する役目を果たす。第2の蒸留カラムはアセトアルデヒドをヨウ化メチル及び酢酸メチルから分離する役目を果たし、本質的には、アセトアルデヒドを濃縮してそれをプロセスから除去する役目を果たす。本発明の別の側面においては、この第2の蒸留から生じる蒸留物を抽出器に導いて濃縮アセトアルデヒドを分別し、残留飽和有機ヨウ化物溶液をカルボニル化反応器に戻すことができる。
【0017】
本発明の別の側面においては、アルキルヨウ化物化合物、特にはC1−12を、記載される二段階蒸留プロセスを用いて除去し、又は大幅に減少させることができる。
このカルボニル化系、特にはこの方法において用いられる蒸留カラムを停止したとき、アセトアルデヒドのポリマーが形成され、第2カラムの基底部に集積する傾向にあることが見出されている。本発明の別の側面ではこの問題を取り扱う方法が記載される。第2蒸留カラム内の流れと内部流(例えば、酢酸又は酢酸メチルを大きな割合で含むもの)との接触を維持するための溶媒の一定の流れにより、そのユニットを停止した際にポリマーを含まないカラム基底部が生じることが見出されている。基底部にポリマーを集積させないことで、比較的問題なく、効率的に、かつ高い対費用効果でカラムを停止させ、続いて始動させることができる。
【0018】
本発明は、PRC及びアルキルヨウ化物化合物を除去するのに、(EP'662に示唆されるもののような)重質相の代わりに、これらのプロセスにおける内部中間流である軽質相を用いる。当該技術分では、伝統的に、カルボニル不純物の処理又は除去、特にはアセトアルデヒドの除去に重質相が用いられている。現在まで、当該技術分野では、アセトアルデヒドを濃縮して除去するのに重質相と比較して軽質相がより良好な選択肢であることが知られていなかった。第2蒸留カラムにおいて、構造化充填物が棚よりもカルボニル不純物をより多く分離することが見出された。一般に、当該技術分野では、第2蒸留の前に抽出器が用いられる;第2蒸留の後に抽出器を用いることでアセトアルデヒドがより多く除去されることが見出されている。また、抽出器と組み合わせた二段階蒸留プロセスにより、本質的にヨウ化メチルがこのプロセスから除去されず、処理/処置に対してごく少量(335gpmメタノール単位に対して0.42gpm)の水性廃棄物流が生じる(2wt%のMeI、25wt%の水、73wt%のアセトアルデヒド)ことも見出されている。第2カラム内でのメタ及びパラアルデヒドの形成を、約70wt%の水及び30wt%の酢酸を含む内部流を用いることにより阻止もしくは抑制できることが見出されている。この流れは内部のものであるため、このプロセスに水の負荷を加えることがない。さらに、第1カラム残滓の軽留カラムデカンターへの再循環を用いて重質相から軽質相により多くのアセトアルデヒドを抽出することが可能であり、したがって、このプロセスからの全体的なアセトアルデヒド及びアルキルヨウ化物の除去が改善されることが見出されている。
【0019】
本発明の好ましい態様は、メタノールから酢酸生成物へのカルボニル化において形成される過マンガン酸塩還元化合物及びC1−12アルキルヨウ化物化合物を減少及び/又は除去するための方法であって、該メタノールはVIII族金属触媒、有機ヨウ化物及びヨウ化物塩触媒促進剤を含む好適な液相反応媒体中でカルボニル化し;該カルボ干ル化の該生成物は生成物を含む揮発性相とVIII族金属触媒、酢酸、及びヨウ化物触媒促進剤を含む揮発性に劣る相とに分離し;該生成物相は蒸留塔において蒸留して精製生成物並びに有機ヨウ化物、酢酸メチル、水、酢酸、及び未反応メタノールを含むオーバーヘッドを得、該オーバーヘッドの少なくとも一部はオーバーヘッド受容器デカンターに導き、該オーバーヘッド受容器デカンターは該オーバーヘッドを酢酸及び水を含む軽質相と酢酸メチル及び有機ヨウ化物を含む重質相とに分離し;かつ、該重質相はカルボニル化反応器に再循環させる方法であって、以下を含む改善:
(a)酢酸及び水を含む軽質相を蒸留器に導き、該蒸留器は該混合物を、水及び酢酸を含む残滓流(1)並びにヨウ化メチル、酢酸メチル、メタノール、C1−12アルキルヨウ化物、及び過マンガン酸塩還元化合物(PRC)を含むオーバーヘッド流(2)の2つの流れに分離するものであり;
(b)工程(a)の流れ(1)を該反応器に戻し、及び工程(a)の流れ(2)を第2蒸留器に導き、該第2蒸留器はPRC及びアルキルヨウ化物を該混合物から除去する役目を果たすものであり;
(c)工程(b)の除去した混合物は抽出器に導いてそこから有機ヨウ化物化合物を除去してもよく;かつ
(d)濃縮したPRC及びアルキルヨウ化物を廃棄のために分別し、(c)の有機ヨウ化物相を、PRC及びC1−12アルキルヨウ化物の含有割合が低い流れとしてカルボニル化反応器に戻す、
を特徴とする方法に向けられている。
【0020】
軽質相からのオーバーヘッドのバルクは反応器に再循環させる。したがって、本発明によると、アセトアルデヒド及びアルキルヨウ化物を含むPRCの存在量がこの多段階蒸留に加えて任意の抽出プロセスにより大きく減少し、同時に、実質的に製造コストを増加させることなくそのような生成物の質が獲得される。
【0021】
本発明の方法を用いることで、PRC、特にはアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、及び2−エチルクロトンアルデヒド、並びにアルキルヨウ化物、特にはヨウ化ヘキシルが少なくとも50%、通常はそれを上回って減少することが見出されている。加えて、プロピオン酸が約2のファクター、通常は20%を上回って、最も頻繁には30及び40%を上回って減少しており、総ヨウ化物は約3のファクター又は約50%の減少パーセンテージ、最も頻累には60%を上回って減少している。過マンガン酸塩時間は、本発明の方法を用いて、約8のファクター又は約50%のパーセンテージ、通常は70%を上回って増加することが観察されている。
【0022】
ひとたび本発明の方法が稼働状態となって進行中の系が停止されると、アセトアルデヒドのポリマーが第2カラム内に集積してカラムを塞ぐ傾向にあることが発見された。この問題は、第2蒸留カラムを通過する流れを約1gpmの溶媒流と、アルドール縮合ポリマー形成を回避し、すなわちアセトアルデヒドのポリマーの形成を回避するのに十分な量及び十分な流速で接触させることにより回避できることが見出された。この溶媒は酢酸、酢酸メチル、メタノール、水、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド等又はそれらの組み合わせから選択することができ、多量の内部流が用いられるという点からは酢酸が好ましい。一般には、アルドール縮合反応が生じるのを回避するのに十分な量は0.25-5ガロン毎分(gpm)、好ましくは約0.5-2gpmの割合であり、最も好ましい割合は約1gpmである。過剰の溶媒を用いることは、これが過剰の溶媒を再処理するのに大きな負荷を系に課するため、望ましいものではない。様々な溶姪の導入位置が許容されるが、溶媒を第2蒸留カラム内においてそのカラムの基底部で流れと接触させることが好ましい。
【0023】
発明の詳細な説明
本発明の精製方法は、VIII族金属触媒、例えば、ロジウム及びヨウ化物促進剤の存在下においてメタノールを酢酸にカルボニル化するのに用いられるあらゆるプロセスにおいて有用である。特に有用なプロセスは、前述の米国特許第5,001,259号に例示されるもののようなメタノールから酢酸への低水量ロジウム触媒カルボニル化である。一般に、この触媒系のロジウム成今はロジウムとハロゲン成分との配位化合物の形態で存在するものと考えられており、このハロゲン成分はこのような配位化合物の少なくとも1つの配位子をもたらす。ロジウムとハロゲンとの配位に加えて、一酸化炭素がロジウムと配位するものとも考えられている。この触媒系のロジウム成分は、ロジウム金属、ロジウム塩、例えば酸化物、酢酸塩、ヨウ化物等、又はロジウムの他の配位化合物等を反応域に導入することにより得ることができる。
【0024】
この触媒系のハロゲン促進成分は有機ハロゲン化物を含むハロゲン化合物からなる。したがって、アルキル、アリール、及び置換アルキル文はアリールハロゲン化物を用いることができる。好ましくは、このハロゲン化促進剤は、アルキル基がカルボニル化される供給アルコールのアルキル基に相当するアルキルハロゲン化物の形態で存在する。したがって、メタノールから酢酸へのカルボニル化においては、ハロゲン化物プロモーターはハロゲン化メチル、より好ましくはヨウ化メチルを含む。
【0025】
用いられる液体反応媒体としてはこの触媒系と適合するあらゆる溶媒が挙げられ、純粋なアルコール、アルコール原料及び/又は所望のカルボン酸及び/又はこれらの2種類の化合物のエステルが挙げられてもよい。低水量カルボニル化プロセスの好ましい溶媒及び液体反応媒体にはカルボン酸生成物が含まれる。したがって、メタノールから酢酸へのカルボニル化においては、好ましい溶媒は酢酸である。
【0026】
この反応媒体中は水を含有するが、その濃度はこれまで十分な反応速度を得るのに実用的であると考えられていたものを大きく下回る。従来は、本発明において述べられる型のロジウム触媒カルボニル化反応においては、水の添加が反応速度に対して有益な効果を発揮するものと教示されている(米国特許第3,769,229号)。このため、大部分の商用操業は少なくとも約14wt%の水濃度で稼働している。したがって、そのような高水準の水濃度で得られる反応速度と実質的に同等以上の反応速度が14wt%未満の、及び約0.1wt%という低い水濃度で達成できるということは全く予想外である。
【0027】
酢酸の製造に最も有用な本発明によるカルボニル化プロセスによると、反応媒体中に酢酸メチル、及び触媒促進剤、例えば、ヨウ化メチル又は他の有機ヨウ化物として存在するヨウ化物を上回る追加ヨウ化物イオンを含めることにより、低水濃度であっても所望の反応速度が得られる。この追加ヨウ化物促進剤はヨウ化物塩であり、ヨウ化リチウムが好ましい。低水濃度の下では、酢酸メチル及びヨウ化リチウムが、これらの成分の各々が比較的高濃度で存在する場合にのみ速度促進剤として作用し、これらの成分の両者が同時に存在する場合にその促進が高度であることが見出されている(米国特許第5,061,259号)。好ましいカルボニル化反応系の反応媒体において用いられるヨウ化リチウムの濃度は、この種の反応系においてハロゲン化物塩の使用を扱う従来技術がほとんどないことと比較して非常に高いものと考えられる。ヨウ化物イオン含有物の絶対的な濃度は本発明の有用性に対する制限ではない。
【0028】
メタノールから酢酸生成物へのカルボニル化反応は、液相の形態にあるメタノール供給物を、ロジウム触媒、ヨウ化メチル促進剤、酢酸メチル、及び追加の可溶性ヨウ化物塩を含む液体酢酸溶媒反応媒体を通して泡立てた気体状一酸化炭素と、カルボニル化生成物の形成に適する温度及び圧力の条件で接触させることにより行うことができる。一般に、重要なのは触媒系におけるヨウ化物イオンの濃度であってそのヨウ化物と会合するカチオンではなく、ヨウ化物の所定のモル濃度ではカチオンの性質はヨウ化物濃度の効果ほど重要ではないことが認められる。あらゆる金属ヨウ化物イオン、又はあらゆる有機カチオン、もしくは四級カチオン、例えば四級アミン、もしくはホスフィン、もしくは無機カチオンのあらゆるヨウ化物塩が、その塩が反応媒体中で所望の濃度のヨウ化物をもたらすのに十分に可溶性であるのであれば、用いることができる。ヨウ化物を金属塩として添加する場合、それは、好ましくは、“Handbook of Chemistry and Physics”CRC Press発行,Cleveland, Ohio, 1975-76(第56版)に述べられているような周期律表のIA族及びIIA族の金属からなる群の構成要素のヨウ化物塩である。特には、アルカリ金属ヨウ化物が有用であり、ヨウ化リチウムが好ましい。本発明において最も有用な低水量カルボニル化プロセスにおいては、有機ヨウ化物促進剤を上回る追加のヨウ化物が触媒溶液中に約2ないし約20wt%の量存在し、酢酸メチルが約0.5ないし約30wt%の量存在し、かつヨウ化メチルが約5ないし約20wt%の量存在する。ロジウム触媒は約200ないし約1000百万分率(ppm)の量で存在する。
【0029】
カルボニル化の典型的な反応温度は約150ないし約250℃であり、約180ないし約220℃の温度範囲が好ましい範囲である。反応器内の一酸化炭素分圧は広範囲に変化し得るが、典型的には約2ないし約30気圧であり、好ましくは約3ないし約10気圧である。副生物の分圧及び収容される液体の蒸気圧のため、反応器の全圧は約15ないし約40気圧の範囲をとる。
【0030】
メタノールから酢酸へのヨウ化物促進ロジウム触媒カルボニル化に用いられる典型的な反応及び酢酸回収系が図1に示されており、これは液相カルボニル化反応器、フラッシャー、及びヨウ化メチル酢酸軽留カラム14を具備し、このカラムは酢酸側流17を有し、この側流はさらなる精製に進む。反応器及びフラッシャーは図1には示されない。これらは、カルボニル化処理の技術分野において現在公知の標準的な設備と考えられる。カルボニル化反応器は、典型的には、反応する液体内容物が自動的に一定の濃度に維持される攪拌容器である。この反応器内に新鮮なメタノール、一酸化炭素、必要に応じて反応媒体中の少なくとも限定濃度の水を維持するのに十分な水、フラッシャー基底部からの再循環触媒溶液、再循環ヨウ化メチル及び酢酸メチル相、及びヨウ化メチル酢酸軽留分、すなわちスプリッターカラム14のオーバーヘッド受容器デカンターからの再循環水性酢酸相を連続的に導入する。粗製酢酸を回収し、並びに触媒溶液、ヨウ化メチル、及び酢酸エチルを反応器に再循環する手段を提供する蒸留系を用いる。好ましいプロセスにおいては、内容物の攪拌に用いられる攪拌器の直下に一酸化炭素をカルボニル化反応器内に連続的に導入する。この攪拌手段により、気体状の供給物を反応する液体全体に完全に分散させる。気体状パージ流は、気体状副生物の集積を防止し、所定の反応器全圧での一酸化炭素分圧の設定を維持するため、反応器から排出する。反応器の温度を倒御し、所望の反応器全庄を維持するのに十分な速度で一酸化炭素供給物を導入する。
【0031】
液体生成物をカルボニル化反応器から、その内部の一定濃度を維持するのに十分な速度で抜き取り、フラッシャーに導入する。フラッシャー内では、触媒溶液を基底流(主として、ロジウム及びヨウ化物塩をより少量の酢酸メチル、ヨウ化メチル、及び水と共に含む酢酸)として回収し、これに対してフラッシャーの蒸気オーバーヘッド流は主として生成物である酢酸をヨウ化メチル、酢酸メチル、及び水と共に含む。側流として反応器から流出してフラッシャーに流入する溶解気体は気体状副生物、例えば、メタン、水素、及び二酸化炭素と共に一酸化炭素の一部からなり、これはオーバーヘッド流としてフラッシャーを流出し、流れ26として軽留、すなわちスプリッターカラム14に導かれる。
【0032】
カラム14を流出する重質相流よりも高い濃度、約3倍のPRC、特にはアセトアルデヒド含有物が軽質相内に存在することが発見されている。したがって、本発明によると、PRCを含む流れ28をオーバーヘッド受容器デカンター16に導き、このデカンター16では軽畜相、流れ30が蒸留カラム18に導かれる。
【0033】
本発明は、広範には、蒸気相酢酸流からのPRC、主としてアルデヒド及びアルキルヨウ化物の蒸留として考えることができる。この蒸気相流を2回蒸留し、任意に抽出してPRCを除去する。第1の蒸気相酢酸流からアルデヒド及びアルキルヨウ化物を除去し、かつプロピオン酸の濃度を減少させる方法であって、
a)第1濃縮器内で該第1蒸気相酢酸流を濃縮し、かつそれを二相性に分離して第1重質液相生成物及び第1軽質液相生成物を形成し、ここで該第1重質液相は該第1軽質液相生成物よりも高い割合の触媒成分を含み;
b)該軽質液相生成物を第1蒸留カラムにおいて蒸留し、該蒸留は該第1蒸気相酢酸流に対してアルデヒド及びアルキルヨウ化物に富む第2蒸気相酢酸生成物流を形成するのに有効なものであり;
c)該第2蒸気相流を第2濃縮器内で濃縮し、かつそれを二相性に分離して第2重質液相生成物及び第2軽質液相生成物を形成し、ここで該第2重質液相生成物は該第2軽質液相生成物よりも高い割合の触媒成分を含み;及び
d)該第2軽質液相生成物を第2蒸留カラムにおいて蒸留し、ここで該処理は華第1蒸気相酢酸流中の少なくとも50%のアルキルヨウ作物及びアルデヒド不純物並びに少なくとも20%のプロピオン酸不純物をアルデヒド及びアルキルヨウ化物廃棄物流に除去するの有効なものである、
ことを包含する方法が開示される。
【0034】
図1を参照して、第1蒸気相酢酸流(28)はヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド及び他のカルボニル成分を含む。次に、この流れを濃縮及び分離し(容器16内)、より高い割合の触媒成分を含む重質相生成物(これは反応器に再循環される)、並びにアセトアルデヒド、水、及び酢酸を含む軽質相(30)を分離するための第1蒸気相流を形成する。続いて、この軽質相を2回蒸留してこの流れのPRC、主としてアセトアルデヒドを除去する。この軽質相(30)を、流れ28に対してアルデヒド及びアルキルヨウ化物に富む第2蒸気相(36)を形成する役目を果たすカラム18に導く。流れ36を濃縮し(容器20)、二相性に分離して第2重質液相生成物及び第2軽質海相生成物を形成する。この第2重質液相は第2軽質渡相よりも高い割合の触媒性成分を含み、続いて反応器に再循環される。アセトアルデヒド、ヨウ化メチル、メタノール、及び酢酸メチルを含む第2軽質液相(40)を第2蒸留カラム(22)に導き、ここでアセ、トアルデヒドを他の成分から分離する。触媒性成分としてはヨウ化メチル、酢酸メチル、メタノール、及び水が挙げもれる。本発明の方法は酢酸流中に見出されるアルキルヨウ化物及びアセトアルデヒド不純物の少なくとも50%を除去することが見出されている。アセトアルデヒドは少なくとも50%、最も頻繁には60%を上回って除去されることが示されている。
【0035】
本発明の好ましい態様が図1に示される;軽留、すなわちスプリッターカラム14の頂部から流れ28を介して気体を除去し、濃縮し、16に導く。これらの気体を、濃縮して濃縮可能なヨウ化メチル、酢酸メチル、アセトアルデヒド及び他のカルボニル成分と水とを2層に分離するのに十分な温度に冷却する。軽質相を蒸留カラム18に導く。カラム18は流れ32中のアセトアルデヒドを濃縮する役目を果たす。流れ30の一部は、流れ34として、軽留カラム14に還流物として戻す。流れ28の一部は濃縮不可能の気体、例えば、二酸化炭素、水素等を含み、図1で流れ29に示されるように排出することができる。図1には示されていないが、流れ28の重質相もオーバーヘッド受容器デカンター16を離れる。通常、この重質相は反応器に再循環される。しかしながら、本発明の別の側面においては、細流、一般にはこの重質相の少量、例えば25体積%、好ましくは約20体積%未満を本発明のカルボニル処理プロセスに導き、残部を反応器に再循環させる。この重質相の細流は、カルボニル不純物をさらに蒸留して抽出するため、個別に、又は軽質相、流れ30と組み合わせて処理することができる。
【0036】
流れ30は流れ32としてカラム18に、このカラムの中央部付近から流入する。カラム18は、水及び酢酸を分離することにより流れ32のアルデヒド成分を濃縮する役目を果たす。本発明の好ましい方法においては流れ32を18内で蒸留するが、ここで18は約40の棚を有し、その内部の温度はカラムの底部での約283°F(139.4℃)から頂部での約191°F(88.3℃)までの範囲をとる。18の頂部からは、PRC、特にはアセトアルデヒド、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及びメタノール、並びにアルキルヨウ化物を含む流れ36が流出する。18の底部からは、約70%の水及び30%の酢酸を含む流れ38が流出する。流れ38は熱交換器を用いて冷却し、最終的に反応器に再循環させる。流れ36は、力ラム16を通して再循環した後に約7倍多いアルデヒド含量を有することが見出されている。16を通して戻される、流れ46として識別される流れ38の一部の再循環が本発明の方法の効率を高め、それによってより多くのアセトアルデヒドが軽質相、流れ32中に存在するものと見込まれることが見出されている。流れ36は、次に、冷却して存在する濃縮可能な気体を濃縮した後、オーバーヘッド受容器20に導かれる。
【0037】
アセトアルデヒド、ヨウ化メチル、酢酸メチル、及びメタノールを含む流れ40が20を流出する。流れ40の一部、すなわち、側流42は還流物として18に戻る。流れ40は蒸留カラム22に、カラムの底部付近から流入する。カラム22は大部分のアセトアルデヒドを流れ40中のヨウ化メチル、酢酸メチル、及びメタノールから分離する役目を果たす。一態様において、カラム22は約100の棚を有し、底部での約224°F(106.6℃)から頂部での約175°F(79.4℃)までの範囲の温度で稼働させる。代わりの態様においては、22は棚の代わりに構造化充填物を有する。好ましい充填物は、約65ft2/ft3の界面面積を有する、好ましくは、それらの組成と適合するのであれば、2205のような金属合金又は他の同様の充填物材料で製造された構造化充填物である。実験の間、良好な分離に必要とされる均一なカラム添加が棚よりも構造化充填物で良好であることが観察された。22の残滓、流れ44は塔の底部から流出し、カルボニル化プロセスに再循環される。
【0038】
アセトアルデヒドはヨウ化メチルの存在下で重合してメタアルデヒド及びパラアルデヒドを形成する。したがって、これらの不純物、すなわちメタアルデヒド及びパラアルデヒドの形成を減少させるため、好ましくは塔22内に、抑制剤が必要である。抑制剤は、一般には、C1−10アルカノール、好ましくはメタノール、水、酢酸等からなり、これらは個別に、又は互いに、もしくは1種類以上の他の抑制剤と組み合わせて用いられる。カラム18の残滓の一部であり、かつ流れ38の側流である流れ46は水及び酢酸を含み、したがって抑制剤として機能し得る。図1に示される流れ46は分岐して流れ48及び50を形成する。流れ50は、メタアルデヒド及びパラアルデヒド不純物の形成を抑制するためにカラム22に加えられる。22の残津は反応器に再循環されるため、添加される抑制剤はその反応の化学に適合しなければならない。少量の水、メタノール、酢酸、又はそれらの組み合わせはその反応の化学を妨害することがなく、メタアルデヒド及びパラアルデヒドの形成を実用的に排除することが見出されている。また、流れ50も、この物質が反応器の水量バランスを変化させることがないため、抑制剤として好ましく用いられる。抑制剤としての水は好ましさに最も劣る抑制の溶媒である。これは、有効な抑制剤であるためには一般に多くの量を必要とし、それ自体が多量のアセトアルデヒドを抽出する傾向にあって、それがカラム22から流出する流れ52の純度を低下させるためである。
【0039】
PRCを含む流れ52が22の頂部から流出する。流れ52は濃縮器、次いでオーバーヘッド受容器24に導く。濃縮の後、濃縮不可能な物質は受容器24から排出する。流れ54が24から流出する。流れ56、流れ54の側流は還流物として22に用いる。ヨウ化メチル、メタノール、酢酸メチル、メタノール及び水を含む流れ44が22の底部から流出する。この流れは流れ66と組み合わせて反応器に導く。
【0040】
抽出機構にとっては、22の頂部流を冷却したままにし、一般には約13℃の温度に止めることが重要である。この流れは、約13℃で、当業者に公知の通常の技術により、又は当該産業によって一般に許容される機構により得ることができ、又は維持することができる。
【0041】
本発明の好ましい態様においては、24から流出したら直ちに、流れ54/58を濃縮器/冷却器を通して(既に流れ62)抽出器27に送り、その水性PRC流から少量のヨウ化メチルを除去して再循環する。濃縮不可能の気体は24の頂部から排出する。抽出器27においては、PRC及びアルキルヨウ化物を水で、好ましくは、反応系内り水量バランスが維持されるように内部流からの水で抽出する。この抽出の結果として、ヨウ化メチルが水性PCR及びアルキルヨウ化物相から分離する。好ましい態様においては、水量対供給量比が2であるミキサー−沈降タンクが用いられる。
【0042】
ヨウ化メチルを含む流れ66がこの抽出器を流出し、これは反応器に再循環させる。64の水性流は抽出器の頂部から流出する。このPRCに富む、特にはアセトアルデヒドに富む水性相は廃棄物処理に導く。
【0043】
軽質相から除去された流れのPRC及びアルキルヨウ化物に富む相を抽出器に導いてそこから有機ヨウ化物化合物を除去することがセきる。本発明の方法は、反応器に再循環させるためにヨウ化メチルをアセトアルデヒドから単離することが見出されている。加えて、ヨウ化ヘキシルのようなアルキルヨウ化物が、ここに開示される二段階蒸留プロセスにより大きく減少する。ヨウ化ヘキシルは約7のファクターで、又は約50%、通常は70%を上回る減少パーセント減少する。さらに、クロトンアルデヒド、2−エチルクロトンアルデヒドのような不純物が大きく減少し、又はこのプロセスから完全に除去されることが見出されている。クロトンアルデヒド及びエチルクロトンアルデヒドは少なくとも50%、最も頻繁には75%を上回って、時には100%減少することが見出されている。プロピオン酸濃度は、容器14から除去された最初の流れ(処理なし)と比較した場合、約2のファクターで、又は少なくとも20%、通常は約30もしくは40%を上回る減少パーセント減少することが見出されている。全ヨウ化物は約3のファクターで、又は少なくとも50%、通常は約60%を上回る減少パーセント減少することが見出された。
【0044】
開示される方法により一度処理された酢酸生成物流に見出される過マンガン酸塩時間は、ここに記載される通りに処理されていない生成物流の約8倍、又は約50%から75%もしくは85%を上回って増加した。データでは、50及び35秒の時間がそれぞれ6及び5分に増加することが示される。
【0045】
本発明をカラム14の軽留相を用いて一般的に記載したが、高濃度のPRC及びアルキルヨウ化物を含むカルボニル化プロセスのあらゆる流れを本発明に従って処理することができる。
【0046】
図1に示されていない本発明の説明のための代替態様には:
a)軽質相有機物質:を含む容器16からのオーバーヘッド流をカラム18に導き、上述の通りに処理すること;
b)容器16からの重質相有機物質を含む残津流をカラム18に導き、上述の通り処理すること;
c)軽留容器排出デカンターからの流れ、好ましくは残滓流を流れ29を用いて導き、上述の通り処理すること;
d)軽留排出ストリッパーカラムからの流れを導き、上述の通り処理すること;
e)高濃度のPRC、プロピオン酸及びアルキルヨウ化物不純物を含む上記流れ(a−d)のあらゆる組み合わせ、
が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0047】
代わりの流れを用いた場合の本発明の方法の最適化には、カルボニル化プロセスからのPRC及びアルキルヨウ化物除去の最大効率を達成するために設備の変更が必要となることがある。例えば、記載される好ましい流れ(すなわち、流れ28の使用)と同じ設備を代わりの流れに用いる場合、除去の最大効率を達成するのにより高い蒸留カラム18が必要となることがある。重質相成分を含む流れを本発明の方法において用いる場合、アセトアルデヒドの除去は、忠実に軽質相流からアセトアルデヒドを除去する場合ほど効率的ではない可能性がある。
【0048】
カルボニル化系、特には本発明の方法において用いられる蒸留カラムを停止した場合、アセトアルデヒドのポリマーが形成され、第2カラムの基底部に集積する傾向にあることが見出されている。これはカラム内に存在するアセトアルデヒドとHIとの反応によるものであり、温度が約102℃である場合に反応するものと見られている。本発明のさらに別の側面においては、第2蒸留カラム内の流れと内部流(例えば、高い割合の酢酸又は酢酸メチルを含むもの)からの溶媒との接触を維持する溶媒の一定の流れが、カラム又はPRC/アルキルヨウ化物除去プロセスを停止している間、ポリマーを含まないカラム基底部を生じることが見出されている。基底部にポリマーを集積させないことで、比較的問題なく、効率的に、かつ高い対費用効果でカラムを停止させ、続いて始動させることができる。
【0049】
好ましい溶媒としては、主として酢酸、酢酸メチル、メタノール、水、酢酸メチル、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド、又はそれらの組み合わせを含む内部流からのものが挙げられる。系内の内部バランスを維持するためには内部流を用いることが好ましいが、外部の源からの溶媒を用いることもできる。酢酸は沸点が高いため、アセトアルデヒドオーバーヘッドの除去を補助する。しかしながら、ヨウ化メチルの沸点以上の通常沸点を有するあらゆる非反応性溶媒を許容することができる。この溶媒は、残津を回収装置(例えば、ストリッパー、デカンター、又は隔膜)に送ることにより回収することができる。一般には、溶媒はアルドール縮合反応の発生を回避するのに十分な量接触させ、約2時間未満の滞留時間が得られる速度で添加する。さらに、この溶媒は、0.25-5gpmの範囲を用いることができるものの、好ましくは約1ガロン毎分(gpm)の流速で接触させる。この溶媒の流入は蒸留カラム全体を通していずれの位置でもよいが、カラムの基底部から流入させることが好ましい。
【0050】
上述の方法を用いて観察される他の利点には以下のものが含まれる:
1.より少ないプロピオン酸;
2.より少量のRhをカルボニル化反応に用いることができる;
3.生成物酢酸中のより少ない全ヨウ化物;
4.より低濃度のPRC;
5.過マンガン酸塩時間試験値の増加。
【0051】
下記表1は、本発明の方法を用いる前後の様々なPRC及び過マンガン酸塩時間のデータを示す。このデータは、反応器を定常状態条件で一度稼働させた反応器流から得た。
【0052】
【表1】

【0053】
本発明とEP'662との2、3の相違:
1.EP'662は重質相を用いる;軽質相が示唆されてはいるが、その使用についての教示は示されていない;それは、3つの他の可能な流れと共にそれを用いることを示唆するにすぎない;
2.EP'662は、反応条件を最適化して反応器内で400ppmのアルデヒドという目的を達成しようと試みている。反応条件を最適化することにより、カルボニル不純物は形成しないものと考えられる。本発明の方法は条件の最適化は行わず、むしろ形成された不純物を蒸留除去する。本発明の方法は存在する不純物の取り扱いに向けられており、カルボニル含有不純物/化合物の形成の回避には向けられていない。
3.本発明者らは、第2蒸留塔を停止することによるアセトアルデヒドの重合の問題を発見している。この問題はEP'662においては認識されていなかった。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】図1は、カルボニル化反応により酢酸を生成するためのカルボニル化プロセスの中間流からカルボニル不純物を除去するための好ましい態様を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールから酢酸生成物へのカルボニル化において用いられる塔におけるアセトアルデヒドの、該塔を停止させる間の重合を抑制する方法であって、該メタノールはVIII族金属触媒、有機ヨウ化物及びヨウ化物塩触媒促進剤を含む好適な液相反応媒体中でカルボニル化し;該カルボニル化の生成物は生成物を含む揮発性相とVIII族金属触媒、酢酸、及びヨウ化物触媒促進剤を含む揮発性に劣る相とに分離し;該生成物相は蒸留塔において蒸留して精製生成物並びに有機ヨウ化物、酢酸メチル、水、酢酸、及び未反応メタノールを含むオーバーヘッドを得、該オーバーヘッドの少なくとも一部はオーバーヘッド受容器デカンターに導き、該オーバーヘッド受容器デカンターは該オーバーヘッドを酢酸及び水を含む軽質相と酢酸メチル及び有機ヨウ化物を含む重質相とに分離し;かつ、該重質相をカルボニル化反応器に再循環させる方法であって、以下を含む改善:
(a)該軽質相を蒸留器に導き、該蒸留器は該混合物を、水及び酢酸を含む残滓流(1)並びにヨウ化メチル、酢酸メチル、メタノール、C2−12アルキルヨウ化物、及びアセトアルデヒドを含むオーバーヘッド流(2)の2つの流れに分離するものであり;
(b)工程(a)の流れ(1)を該反応器に戻し、及び工程(a)の流れ(2)を第2蒸留器に導き、該第2蒸留器はアセトアルデヒドを該混合物から除去する役目を果たすものであり;
(c)工程(b)の流れ(2)を、酢酸、酢酸メチル、メタノール、水、酢酸メチル、ヨウ化メチル、アセトアルデヒド又はそれらの組み合わせの群から選択される溶媒を含む流れと、アセトアルデヒドのポリマーの形成を回避するのに十分な量接触させ;
(d)濃縮したアセトアルデヒドを廃棄のために分別し、有機ヨウ化物相をカルボニル化反応器に戻す、
を特徴とする方法。
【請求項2】
溶媒が主として酢酸である、請求項1の方法。
【請求項3】
溶媒を約0.25−5ガロン毎分(gpm)の速度で流れ2bと接触させる、請求項1の方法。
【請求項4】
溶媒を約0.5−2gpmの間の速度で接触させる、請求項3の方法。
【請求項5】
溶媒をカラムの基底部で流れ2bと接触させる、請求項4の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2007−224040(P2007−224040A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−108250(P2007−108250)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【分割の表示】特願平10−519494の分割
【原出願日】平成9年10月17日(1997.10.17)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】