説明

カンナビノイド免疫検定に用いる改良試薬

【課題】マリファナの活性成分THCの主要代謝生成物をできるだけ多く認識し、広い特異性を有する抗カンナビノイド抗体を含む免疫検定用試薬を提供する。
【解決手段】タンパク質との接合を容易にする化学リンカーを具えた下式(1)


(式中、R1はアルキル基、R2およびR3はそれぞれ置換基を有していてもよい低級炭化水素基、a,bおよびcはそれぞれ単結合または二重結合。)
の新規ベンゾピラン誘導体を合成し、これをタンパク質担体と接合せしめて免疫原を調製し、この免疫原を動物に投与し、免疫処置動物の脾細胞から主要THC代謝物のすべてに対して少なくとも約80%の平均交差反応性を有する抗カンナビノイド抗体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規ベンゾピラン誘導体ならびにこれら誘導体を抗カンナビノイド抗体の製造に使用する方法および生物学的液体試料中のテトラヒドロカンナビノール代謝生成物に対する改良免疫検定法の試薬としてこれら抗体を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マリファナの使用が増大するにつれて、マリファナ植物の主要活性成分であるΔ9−テトラヒドロカンナビノール(THC)、更に詳しく言えば尿および血液試料中のTHC代謝生成物、を検出する検定法の開発がなされて来た。最も普通の商業的検定法は、標識したカンナビノイド誘導体を薬物の代謝産物に対する抗体と共に使用する方法を用いている。
【0003】
実際には、テトラヒドロカンナビノール代謝生成物(グルクロニドおよび他の抱合生成物を含む)を含むと思われる血液または尿試料を、標識カンナビノイド誘導体の存在下に抗体と接触させる。試料中にテトラヒドロカンナビノール代謝物が存在する程度により、抗体の結合部位に対する結合の競合があり、結合したまま残る標識誘導体の量は、試料中のテトラヒドロカンナビノール代謝物との競合の度合に応じて減少するであろう。
【0004】
幾つかの代表的免疫検定法がO'Connor等、J.Anal. Toxicol.5、168(1981)、Law等、J.Anal. Taxical.8、14(1984),Childs等、J.Anal. Toxicol.8、220(1984)、および米国特許第4,833,073号明細書に記載されている。これら参考文献のすべてに記載されている検定法の基礎は、標識カンナビノイド誘導体の若干を検定試料中の代謝生成物により置き換えることである。標識誘導体が抗体により特異的に認識され、かつテトラヒドロカンナビノール代謝の種々な生成物によって容易に置き換えられるとき最良の検定結果が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テトラヒドロカンナビノール代謝物に対して広い特異性をもつ抗カンナビノイド抗体がこれら免疫検定法への使用にきわめて望ましい。この抗体はできるだけ多くの主要代謝生成物を認識できなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は式、
【化1】


式中、R1は1から9炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ直鎖または分枝低級炭化水素基で、この基は1個以上の下記官能基、
-OH,-COR4,-NR56,-SH,-C(=NH)-OR7,-CHO,または=O
により置換しうるが、ただしR2またはR3の少なくとも一つは上記官能基の少なくとも一つにより置換されることを条件とし、R4は−OHまたは脱離基であり、R5およびR6はそれぞれHおよび直鎖または分枝低級炭化水素基からなる群から選ばれ、R7は直鎖または分枝低級炭化水素基であり、a、b、およびcはそれぞれ単結合または二重結合であるが、ただしbが二重結合であるときaとcは二重結合でないことを条件とする、
を有する新規ベンゾピラン誘導体に関する。
【0007】
更に本発明は上記化合物をテトラヒドロカンナビノール代謝物に対する新規抗体の製造に使用する方法ならびにこれら新規抗体を血液または尿試料中のテトラヒドロカンナビノール代謝物の検出のための免疫検定に使用する方法、および新規抗体の製造法に関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
単一のTHC免疫原を利用する従来の免疫化研究法は、その交差反応性に一層選択的な抗体を生ずる傾向がある。一般にこのような研究法は、より重要な代謝生成物、即ちΔ9−11−ノル−9−カルボキシ−THC(Δ9−THC酸)、
【化2】


の検出に向けられる。
【0009】
THC代謝生成物の検出により広い交差反応性が望まれる場合、例えば免疫検定に使用するための場合においては、このようなより広い交差反応性を達成する伝統的方法は、動物で単一免疫原に対するポリクローナル応答を発生させることであった。しかし、このような方法は、可能性の問題として広く交差反応する抗体を得るには至らず、単にこのような抗体を得る機会を増加させただけである。
【0010】
ポリクローナル抗体とは対象的に、モノクローナル抗体はそれらの分子(抗原)認識において非常に特異的となる傾向がある。モノクローナル抗体のこの特性は、例えばTHC代謝物の検出の場合のように、広範囲の同様な、しかし同一ではない化合物を認識しうるモノクローナル抗体をつくり出したい場合に困難を生ずる。本発明は、就中、THCの主要代謝物を認識するモノクローナル抗体を提供することによってこの問題を解決するものである。
【0011】
本発明は下記の図を参照すると一層理解し易いであろう。
【0012】
図1は、特に適当な化合物1−〔3−(5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)−1−オキソプロポキシ〕−2,5−ピロリジンジオン(化合物X)、ならびに化合物XVの合成に関与する出発物質と中間体の式を示す。
【0013】
図2は、特に適当な化合物1−〔3−(3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)−1−オキソプロポキシ〕−2,5−ピロリジンジオン(化合物XII)、ならびに化合物XVIの合成に含まれる出発物質と中間体の式を示す。
【0014】
後に更に詳しく説明する通り、本明細書に教示された新規免疫原および連続免疫処置を用いることにより、通常の期待とは著しく違って、本発明者等は抗カンナビノイドモノクローナルおよびポリクローナル抗体をつくることができた。これら抗体は大抵の重要なTHC代謝生成物(式II)に対してだけでなく、またTHCの他の主要な代謝生成物に対してもきわめて交差反応性に富んでいる。このことは、本発明者等が以前にポリクローナル抗体について達成されたよりもすべての主要THC代謝物に対し広い交差反応性を有する個々のモノクローナル抗体を誘導するようにマウスのポリクローナル応答を操作した点で予想外のことである。また本発明者等はTHC代謝物に対し以前に開示されたものよりも良い交差反応性を有するポリクローナル抗体を得た。
【0015】
本明細書中に開示された新規抗体の活性と優秀さは、THC代謝物に対する商業的免疫検定法(表2)ならびに臨床標品(表3)を用いて試験することにより証明された。
【0016】
本明細書に記載された新規免疫処置法は、構造的に関連した多重エピトープに対する交差反応性の増加を望む場合に抗体の開発に広く適用できる。
【0017】
本明細書中で用いた「低級炭化水素基」とは、直鎖または分枝鎖の飽和または不飽和C1〜C6炭化水素基、とりわけC1〜C6アルキルまたはC1〜C6アルケニル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、エテニルおよびプロペニル、を意味する。
【0018】
「脱離基」は例えば適当な求核試薬によって置換あるいは開裂しうる基である。このような脱離基およびそれらの置換条件は当業者にとって公知である〔例えば、J. March, 「Advanced OrganicChemistry」、179頁および310〜316頁(1985)参照〕。一般に本発明において興味をもたれる脱離基R4は官能基−COR4のカルボニルへの付着点がヘテロ原子、例えばO,NまたはSを介するものである。適当な求核試薬により容易に置換される脱離基の例はN−オキシスクシンイミド、N−オキシ(スルホスクシンイミド)、イミダリル、ペンタフルオロフェノキシ、N−オキシベンゾトリアゾール、およびチオ(オキソ)チアゾリジニルである。更にまた、本発明の教示に包含される脱離基はOR8(式中、R8は直鎖または分枝低級炭化水素基である)(これらは普通アルキルエステルとして知られている)があり、その置換あるいは開裂は、すぐ上に述べた脱離基よりも幾分か厳しい条件により行なわれる。これら厳しい条件は当業者にとって公知である。(例えば、上記参考文献 J. March参照)。
【0019】
Δ9−THC酸(II)の外のTHCの主要代謝物は次の通りである:
【化3】


【化4】

【0020】
これら代謝生成物の構造によって示されるように、親分子の代謝の大部分は8位で、あるいは9位に付くメチル基のところで起こる。また別の代謝もベンゼン環に付くn−ペンチル鎖上で起こる。THCの代謝は分子のベンゾピラン様の中心部分では殆ど起こらず、これは主要THC代謝物のすべてに共通している。更にTHC代謝物の多くはグルクロニドとして排泄され、1位(フェノール性の位置)で、あるいは8位か9位で(特に代謝物IIの場合)結合したとき特にそうである。1位にグルクロニドをもつ代謝物は1位で代謝されたとして分類される。
【0021】
免疫原をつくる目的でカンナビノイド化合物を担体タンパク質に共有結合で接合するとき、担体タンパク質へのカンナビノイド分子上の結合部位は、その結果生ずる抗体の特異性を決定する。担体がカンナビノイド化合物への薬物の9位を経て結合されると、その位置に存在するエピトープは免疫系による検出から遮断されるであろう。9位で代謝された代謝物に対する抗体は発生しないようである。それは免疫系のB細胞(その抗原特異的受容体はさもなければカンナビノイド分子のこの部分によって刺激されることになるであろう)がこの位置での立体障害によってその刺激が妨げられるからである。1位エピトープは免疫系により認識されることができるようになり、代謝物の1位亜群に対する抗体が生成されるであろう。
【0022】
同様に、担体を薬物へ1位を経て結合させると、1位に存在するエピトープは上記と同じ理由で免疫系により認識されることができない。1位に関連する代謝物に対する抗体は1位カンナビノイド接合免疫原から発生することはないようである。更にまた、9位エピトープは免疫系により認識されることができるようになり、代謝物の9位亜群に対する抗体が発生するようである。
【0023】
本発明の一具体例において、本発明者等はカンナビノイド/THC分子のベンゾピラン中心を保有している新規THC誘導体を開発した。次にこれら基本分子を用いて免疫原をつくり出し、次にこの免疫原を用いてTHCの主要代謝物のすべてに対して高い親和性をもつ交差反応性抗体を発生させる。
【0024】
本発明に係るベンゾピラン誘導体は上に定義された式(I)を有する。
【0025】
特に適当な具体例においては、R1は直鎖または分枝C3〜C6であり、R2は−CH3であり、R3は官能基−OH、−COR4および−NR56の1個以上により置換された直鎖または分枝低級炭化水素基であり、R4は−OHまたは脱離基で、このものはN−オキシスクシンイミド、N−オキシ(スルホ−スクシンイミド)、イミダゾリル、ペンタフルオロフェノキシ、N−オキシベンゾトリアゾール、チオ(オキソ)チアゾリジニル、および−OR8から選ばれ、R5およびR6はそれぞれHまたは低級炭化水素基で、−CH3または−CH2CH3が最も好ましく、R8は直鎖または分枝低級炭化水素基であり、aおよびcは単結合である。
【0026】
最も好ましくは、R1は直鎖C3〜C6であり、R2は−CH3であり、R3は1個以上の−OHまたは−COR4により置換された直鎖低級炭化水素基であり、R4は−OH、N−オキシスクシンイミドおよび−OR8からなる群から選ばれ、各R7およびR8はそれぞれ−CH3および−CH2CH3から選ばれ、aとcは単結合である。
【0027】
式Iを有する最も好ましい化合物は
【化5】


を包含する。
【0028】
式Iを有する化合物は、化学合成の分野でよく知られた方法により製造できる。これらは、例えば適当な5−アルキル置換1,3−ジヒドロキシベンゼンを、適当に更に官能基化した、あるいは適当に更に置換した3−ケトアルカノエートエステル、例えばFahrenholtz 等によりJ. Amer. Chem.Soc.,1967、89、5934〜5941に、あるいはArcher等によりJ. Org. Chem.,1977、42、2277〜2284に例示された2−アセチルアルカンジオエートと最初に縮合させてクマリンを得、次にこのクマリンをそのエステル官能基のところで更に変換し(例えば酸への加水分解又はアルコールへの還元など)、そしてクマリン核のところで、置換ベンゾピランを得る。上記のこれら方法は前記Fahrenholtzによりまた前記Archerにより例示される。次に酸をこの分野でよく知られた方法により、活性化されたエステル、例えばN−ヒドロキシスクシンイミドエステルを含めてエステルに、あるいはアミド、例えばイミダゾリルアミド、に変換できる。このような縮合、例えばFahrenholtz(前記)により、またArcher(前記)により記述された一般的方法に、種々な5−置換1,3−ジヒドロキシベンゼンおよび更に置換された、あるいは官能基化された3−ケトアルカノエートを使用できる。この方法は後述の例1、例2、例7、例8および例9に詳しく示されている。
【0029】
更に、式Iの化合物はクロマノン類、例えば適当に置換された3−クロマノン(3,4−ジヒドロ−2H−1−ベンゾピラン−3−オン)または適当に置換された4−クロマノン(2,3−ジヒドロ−4H−1−ベンゾピラン−4−オン)、からこの分野で公知の方法により得られる。3−クロマノン類および4−クロマノン類の合成は、有機合成分野で公知であり、それらの合成に対して種々な一般的方法が知られている。例えば、Lockhart I.M. 「Chromenes, Chromanones, and Chromones,」The Chemistry of Heterocyclic Compounds,31巻、Ellis, G.P.(編)、John Wiley &Sons, Inc., 1977, Chapters III, IV およびV参照。代表例として、適当な4−クロマノン、例えば
下記構造(Ib):
【化6】


式中、R1は上に定義したものと同じ意味を有する(例えば、Fahrenholtz 等、上記;Arnoldi, Synthesis, 1984,856−859;Arnoldi 等, J. Med. Chem., 1990,33,2865〜2869)またフェノール性ヒドロキシを、例えばシリル化またはエーテル化により適当に保護する、
を有する2,2−ジメチル−5−ヒドロキシ−7−R1−1−ベンゾピラン−4−オンを、この分野でよく知られた方法により、その3位のところで適当な置換または非置換アルキル試薬でアルキル化し、続いてその4−ケト基のところで適当なWittig試薬を用いて、これもまたこの分野でよく知られた方法により、Wittig反応を行なうことにより、保護基の除去後4位にexo二重結合をもつ、即ち式Iにおけるcが二重結合である式Iの化合物を得ることができる。
【0030】
もう一つの代表例として、フェノール性ヒドロキシを先ず保護した化合物(Ib)を、この分野でよく知られた方法により、アルキル鎖上に更に保護置換基をもつ適当なアルキルアルデヒドと縮合させることにより3位に二重結合を経て置換アルキル基をもつ4−クロマノンを得ることができる。この結果得られる化合物を、次に4−ケト基のところで適当なWittig試薬と反応させることにより、保護基の除去後に、3位および4位両方にexo二重結合を有する、即ち式I中のaとcが二重結合である、式Iのベンゾピランを得ることができる。
【0031】
更にもう一つの例として、適当な4−クロマノン、例えば上記式(Ib)の化合物(式中、フェノール性ヒドロキシは適当に保護されている)を、この分野で公知の条件下で、その4−ケト基のところで適当なアルキル有機金属試薬、例えばメチルリチウムなどと反応させることにより、第三級アルコールを得、次にこれをこの分野で公知の方法により対応する3,4−デヒドロ化合物へ脱水することができる。次に、得られた化合物を、この分野で公知の方法により、その3,4−二重結合のところでエポキシ化し、そのエポキシドを適当なLewis 酸、例えば三フッ化ホウ素エーテレートなどによる触媒作用の下で転位させることにより4位アルキル基をもつ対応する3−クロマノンを得ることができる。この化合物を次に3−ケト基のところで適当なWittig試薬と反応させ、続いて保護基を除去することにより、3位にexo二重結合を有する、即ち式I中のaが二重結合である、式Iの化合物を得ることができる。
【0032】
上記の例は例示に過ぎず、適当な3−クロマノンおよび4−クロマノン、ならびにクマリン類を合成する他の別法も有機合成の当業者の頭に浮ぶであろう。
【0033】
更に、該化合物のC−3またはC−4のところの置換基上にアミノ官能基をもつクマリン類(従って、ベンゾピラン類)も、対応するアミノ置換3−ケトアルカノエート(そのアミノ官能基は適当な基または基群により、例えば環状ビス−シリル化により、あるいは適当なカルバメートまたはアミドまたはフタルイミドに変換することにより保護できる)を用いることにより得られる。アミノ官能基をクマリンあるいはベンゾピランのC−3またはC−4におけるアルキル置換基上に、例えばヒドロキシアルキルクマリンまたはペンゾピランのアミン求核試薬による求核置換によって(アルキルヒドロキシを、例えばトシルまたはメシル基に変換することにより脱離基に変えて活性化する)導入する他の別法は当業者にとって自明である。
【0034】
クマリンからベンゾピランへの変換も当業者にとって公知の方法により達成される。これらの方法は後述の図1および図2に例示されている。
【0035】
ベンゾピランのC−3またはC−4のところのアルキル基置換上にアルデヒド(−CHO)またはケト(−C(=O)−)官能基を有するベンゾピラン類は、対応するヒドロキシ化合物から、適当な試薬、例えば二クロム酸ピリジニウムまたはクロロクロム酸ピリジニウムを用いて適当な溶媒、例えばジクロロメタン、中で酸化することにより得られるが、この場合ベンゾピランのフェノール性ヒドロキシを先ず適当な保護基により、例えば立体障害をもつシリル基、例えばtert−ブチルジフェニルシリル基、でシリル化することにより保護する。
【0036】
更にまた、C−3またはC−4の置換基上にチオール(−SH)官能基をもつベンゾピラン類は、対応するヒドロキシアルキル化合物から、この分野で公知の方法により、例えばチオ尿素と反応させ続いて加水分解するか、またはヒドロキシ基をトシレートまたはメシレート基に変えて活性化し、続いて適当なチオール求核試薬、例えばチオ酢酸、と反応させ続いて加水分解することにより得られる。
【0037】
C−3またはC−4における置換基上に−C(=NH)−OCH3または−C(=NH)−OCH2CH3といったイミデート官能基をもつベンゾピラン類は、対応するニトリル(シアノ)化合物を適当なアルコール、例えばメタノールまたはエタノール、中HClで処理することにより得られる。かわって、このようなニトリルは対応するヒドロキシアルキル化合物から、この分野で公知の方法により、例えば活性化剤、例えばトリフェニルホスフィン、の存在下シアン化物、例えばシアン化ナトリウム、との反応により、あるいはヒドロキシをトシレートまたはメシレートに変えて活性化し、続いてDMSOまたはDMFといった適当な溶媒中シアン化ナトリウムとの反応により得ることができる。−SHまたは−CN〔従って、−C(=NH)−OCH3または−C(=NH)−OCH2CH3〕基を導入する他の方法、例えば対応するハロゲン化物(−Cl、または−Br、または−I)化合物の求核置換反応による方法、ならびにこのような官能基間の相互変換は化学合成の当業者にとって明白であろう。
【0038】
抗体を誘発するために免疫原として使用する場合、式Iの化合物は任意に結合基を介して、R2またはR3のいずれかを介して、担体成分と結合させホストへの免疫原の供給を助ける。
【0039】
本発明に係る特に適当な免疫原は下記の式(Ia)、
【化7】


式中、R1は上記の意味をもち、R2′は直鎖または分枝低級炭化水素基であり、R3′は直鎖または分枝低級炭化水素基で、このものは−O−、−CO−、−NR5−、−NR6−、−S−、−C(=NH)−、−CH=、−CH2−によって置換され、R5およびR6は上記の意味を有し、Yは結合基または結合であり、Zは担体であり、a、b、およびcは上記の意味をもつ、
の構造を有する。
【0040】
本明細書中で用いた「担体」という用語はホスト動物における免疫原応答を独立的に誘発する性質を有し、かつ式(I)の上記ベンゾピラン誘導体(「ハプテン」)へ共有結合で結合させうる物質を包含する。適当な担体物質は、例えばタンパク質、天然または合成重合体化合物、例えばポリペプチド、例えばポリリジンまたは他のアミノ酸の共重合体、多糖類などである。特に適当な担体物質はタンパク質およびポリペプチドであり、特にタンパク質がよい。
【0041】
本発明に係る免疫原の調製に利用されるタンパク質材料の実体に特に制限はない。本発明の実施に有用な適当なタンパク質の例は哺乳動物血清タンパク質、例えばチログロブリン、血清アルブミン、グロブリンおよびヘモシアニン、例えばヒトガンマ−グロブリン、ヒト血清アルブミン、ヒトIgGおよびIgA、牛チログロブリン(BTG)、牛血清アルブミン(BSA)、メチル化牛血清アルブミン、家兎血清アルブミンおよび牛ガンマ−グロブリンである。他のタンパク質生成物も当業者に示唆されるだろう。一般に、カンナビノイド代謝生成物あるいは誘導体に対する抗体を誘発させようとする動物ホストにとって異質のタンパク質を利用するのがよいが、必ずしも必要でない。
【0042】
「担体」が一般に使用されるのは低分子量化合物(この場合ハプテン)をそれ自身で投与したとき普通は免疫原性でないからである。担体をハプテンに接合し、その接合体を免疫原として用いる場合、ハプテン単独による免疫処理によってはつくり出すことのできないそのハプテンに対する抗体を発生させることができる。これは「担体効果」として知られている。
【0043】
「結合基」はこの分野で公知であり、ハプテンと担体分子との間に更に間隔をとるために常用される。結合基の使用は特定のハプテンと担体の対によって有利であることもあるいは必要であることもあればそうでないこともあり、適当な結合基の選択は当業者の裁量にある。例えば、米国特許第5,144,030号明細書(コラム16、1行以下)および米国特許第5,237,057号明細書(コラム2)参照。典型的結合基は1から20炭素原子および0〜10ヘテロ原子(例えば、NH,O,S)を有し、直鎖でも分枝鎖でもよい。化学的に融和しうる原子の組み合わせだけが結合基となることができる、例えば担体およびハプテンと共有結合形成を可能にすることは当業者にとって公知である。
【0044】
式Iaの免疫原は式Iの化合物からこの分野で公知の技術により担体へ共有結合カップリングによりつくられ、その正しい選択はベンゾピラン誘導体中のまた担体分子中の、カップリングに利用できる官能基の性質によって決まるであろう。タンパク質性担体に及ぼす有害な影響を最小にするように温和な条件下で、ハプテン(式Iの化合物)の十分な度合のカップリングを確保するためには、カップリングに先立ち、R3が酸基で終る式Iの化合物(「ハプテン」)(式XVおよびXVIの化合物)を単離可能な活性形に変換することが望ましい場合が多い。ハプテン遊離酸の一つの特に適当な単離できる活性形はN−ヒドロキシスクシンイミドエステル(例えば、式XおよびXII の化合物)である。米国特許第4,329,281号明細書(コラム2〜3)参照。
【0045】
更にまた、式Iのハプテンと担体との反応はカルボジイミドのようなカップリング剤を用いて行なうこともできる。例えば、カルボキシ置換基を有するハプテン(例えば、式XVおよびXVIの化合物)は、カルボジイミドの存在下でリジン残基のε−アミノ基のようなアルキルアミノ基をもつタンパク質と結合させることができる。このときカルボジイミドはこのようなハプテンのカルボキシ基を活性化し、それによってタンパク質のアミノ基と反応できるようにする働きがある。
【0046】
別法として、この分野で周知の一代表例として、活性化されたカルボキシ基をもつハプテン、例えば、N−オキシスクシンイミジルカルボキシレート(これに限定しないが)をチログロブリンのようなタンパク質のリジン残基のε−アミノ基と反応させることができる。
【0047】
更にまた、これも当分野で周知の手順により、イミデート基をもつハプテンをこのようなタンパク質のリジン残基のε−アミノ基と反応させることができる。
【0048】
アルデヒド基をもつハプテンはリジン残基のε−アミノ基に直接結合させることによりイミン結合を形成させることができ、そしてこの結合は水素化シアノホウ素ナトリウムのような適当なボロハイドライドで対応するアルキルアミンへ還元することにより安定化できる。他方、アルデヒド基またはケト基を有するハプテンは結合基、例えばカルボキシメトキシルアミンのような適当なアルコキシアミンと結合させて対応するカルボキシ官能基をもつオキシムをつくり、これを例えばN−ヒドロキシスクシンイミドエステルに変換することにより活性化し、次いでこのものをタンパク質にカップリングさせることができる。上記化学過程は化学合成の分野においてもよく認識されている。
【0049】
チオール官能基をもつハプテンはマレイミド基のようなチオール反応性基をもつタンパク質と反応させることができ、そしてこれは米国特許第5,237,057号明細書に例示されている通りである。
【0050】
上記説明は単なる例示であり、このほかにハプテンをタンパク質またはポリペプチドへカップリングさせる種々な方法は当業者にとって公知である。例えば、米国特許第5,144,030号明細書(コラム16)参照。
【0051】
本発明のもう一つの具体例によると、式Iの化合物の少なくとも一つから誘導される免疫原を用いることにより、ホスト動物においてテトラヒドロカンナビノール代謝物に対し特異的な抗体の生成を誘導する(「誘発する」)。
【0052】
抗体を誘発させるための種々な方法がこの分野で知られている。このような抗体を発生させる免疫原の合成に関する議論および手順が、例えば米国特許第5,144,030号、米国特許第4,438,207号、米国特許第4,833,073号および米国特許第5,223,441号明細書に記載されている。例えば、なるべくはフロイント完全アジュバントまたは不完全アジュバントなどといった通常の補助剤を使用してホスト動物に免疫原を注射する。この目的に適したホスト動物として、例えば家兎、ウマ、ヤギ、モルモット、ラット、ウシおよびヒツジといった哺乳動物があげられる。この結果得られた抗血清は抗カンナビノイド抗体と呼ばれる抗体を含み、このものはテトラヒドロ−カンナビノール代謝生成物を選択的に複合体を形成するであろう。その抗血清が免疫検定に使用するのに適当かどうかは日常的実験の実施によって迅速に確かめることができる。
【0053】
本発明による特に適当な具体例においては、各ホストを3種の異なる免疫原で連続的に免疫処置する。各免疫原はTHCの異なる「代謝生成物」に相当している。重要なことは、動物の免疫系が1位または9位カンナビノイド、あるいはベンゾピラン様誘導体に各サイクルで1回以上暴露されないように、3種の選ばれた異なる免疫原(例えば、下記の式VIII、IX、およびIa、とりわけXaまたはXIIaの化合物)、
【化8】


で動物を連続して免疫化することにより、動物の免疫応答をすべての主要なTHC代謝生成物に共通の非代謝ベンゾピラン様領域に集中できることである。この連続的免疫処置により、高い交差反応性をもつモノクローナル抗体の製造をきわめて順調に行なうことのできるハイブリドーマ融合物が得られる。この研究法を後の例17で実証する。
【0054】
同様にして、ポリクローナル抗体も式Iの化合物を含む免疫原を用いることにより順調に誘発させることができる。選ばれた免疫原を用いるポリクローナル抗体の発生はこの分野で公知である〔例えば、Chase, M.W. The Production of Antiserum, Methodsin Immunology and Immunochemistry, 1巻、197〜209(1967)参照〕。
【0055】
式Iの新規化合物を含むここに記載の新規免疫原を用いることにより、本発明者等は以前に報告されたより主要THC代謝物に対し高度の交差反応性を有する抗体を一貫して製造できた。本発明者等は、式Iのベンゾピラン芯化合物を含む新規「切頭形カンナビノイド」免疫原、例えばベンゾピラン含有免疫原XaおよびXIIa、を含めることが、生ずる抗体の特異性をカンナビノイドの芯ベンゾピラン部分に向かって方向づけすることにより、これら抗体がすべての主要THC代謝物に対して広い交差反応性を確実にもつように作用することを示した。
【0056】
本発明に係る抗体は、ELISA検定で測定したとき(代謝生成物IIの交差反応性を100%の値とするよう定義する)6個すべての主要THC代謝生成物(即ち、代謝生成物II, III, IV,V, VIおよびVII)、併合(各個の代謝生成物と対照的に)、に対し少なくとも約80%の平均交差反応性を有する。
【0057】
本発明の特に適当な一具体例においては、代謝物IIが抗体に対し100%の交差反応性をもっと定義して、この抗体は与えられたTHC代謝物の各々に対し代謝物IIと比較して下記の交差反応性を有する。
[表1]
代謝生成物 CR %
III 少なくとも約85%
IV 少なくとも約100%
V 少なくとも約98%
VI 少なくとも約91%
VII 少なくとも約98%

【0058】
本明細書中に教示された手順により得られる抗体が、ELISA(酵素結合イムノソルベント検定)ミクロタイタープレートにより検定したとき、主要THC代謝生成物に対して高い交差反応性をもつという事実を下記の表1で実証する。
【0059】
表1中、「CR%」は一つの交差反応体(即ち、薬物)が他の交差反応体と比較して、96−穴ミクロタイタープレートに固定された抗体を置換する能力の尺度である。CR%は例17dに示したようにして計算した。「D%」は抗体がミクロタイター穴に結合するのを追い出す薬物の能力の直接の尺度である。
【0060】
下記表1に示すように、本発明に係る2種の新規ベンゾピラン免疫原XaとXIIaにより、単独で(表のセクション1、方法A)あるいは本発明に係る他の免疫原と共に(表のセクション3、方法B)誘発された抗体は、一つの「完全三環式カンナビノイダル」免疫原(例えば、免疫原XIII、表のセクション2)で誘発された抗体あるいは2個の「完全三環式カンナビノイダル」免疫原(IXおよびVIII、表のセクション4)によって誘発された抗体よりも一貫して良いCR%およびD%値を示している。
【0061】
表1の一番下(セクション5)に、単一「完全三環式カンナビノイダル」免疫原、即ち免疫原VIIIを用いてマウスを免疫化したときの最良の結果を含めてある。上記の通り、方法A、1個の免疫原で多重追加免疫を用いて誘発させた抗カンナビノイドモノクローナル抗体により示された交差反応性は、新規ベンゾピラン免疫原を用いる本明細書中に記載の多重免疫原媒介エピトープ選択法(方法B)から誘導された表1に示すクローンにより実証された反応性よりも劣る。
【0062】
抗体プールをスクリーニングする際、主要THC代謝物(式IIの化合物)に対する交差反応性を第一の選択基準とした。
【0063】
連続免疫処理スキームにおいて、「完全三環式カンナビノイダル」免疫原(IX)および(VIII)二つだけを用いても、種々な代謝生成物に対し求める交差反応性の体制を有する対カンナビノイドモノクローナル抗体を生じなかった。二つの最も良いクローンを表1、セクション4に示す(クローン17−4F12と17−5G12)。これら二つのクローンは主要代謝生成物(II)に対し良好な交差反応性を示すが、他の代謝生成物に対しては中程度ないし弱い交差反応性を示すに過ぎない。下記表1セクション4参照。
【0064】
更にまた、標準多重追加免疫による免疫化プログラムにおいて、ベンゾピラン免疫原(Xa)または(XIIa)いずれか単独での使用は、すべてのTHC主要代謝物に対し非常に良い、交差反応性を示すポリクローナル抗血清を与えることが注目される。表1、セクション1参照。これら結果は、ベンゾピランの「芯」をもつ化合物(即ち、代謝物IIから代謝物VII)の認識が、ここに開示された新規免疫原を用いる本発明方法に従いつくられる新規抗体に実際に誘発されつつあることを確証している。
【0065】
本発明方法に従いつくり出された抗カンナビノイド抗体は、種々な免疫検定法においてテトラヒドロカンナビノール代謝物の検出に使用できる。このような免疫検定法は遊離溶液または固体相いずれかの放射線免疫検定法の形式をとることができるであろう。別法として、酵素免疫検定法を実施することもできるが、この場合にも遊離溶液または固体相いずれかの形式をとるであろう。固体相検定法は、抗体またはカンナビノイド標識いずれかを固定した膜または粒子のような固体支持体を用いて実施できる。そのように被覆できる粒子は、例えばラテックスビーズ、リポソーム、赤血球、ポリアクリルアミドビーズ、ポリスチレンビーズあるいは幾つかの他の適当な重合体のいずれかから作られたビーズを包含する。免疫検証は抗カンナビノイド抗体に対して方向づけられた第二の抗体を適用して、直接的でも間接的でもよい。
【0066】
THCに対する免疫検定法は一般にある限られた量の抗体に対し標識薬物および未標識薬物および臨床試料からの代謝生成物の間の競合的結合に基づいている。臨床試料からの遊離薬物または代謝物は抗体に対する標識薬物の結合を阻害するであろう。抗体に対する標識薬物の結合を臨床試料が阻害する程度は臨床試料中に存在する薬物の量の直接の測定値となる。
【0067】
本発明の特に適当な一具体例においては、THCあるいはその代謝物を含むと思われる試料を、抗体存在下ラテックス微粒子上に固定された既知量のカンナビノイド化合物と混合する。ラテックスが抗体により橋かけされる度合は臨床試料中に存在する薬物または代謝物の量に逆比例する。薬物または代謝物が多く存在する程起こる橋かけは少ない。標品を標準曲線との比較により定量的に陽性と確認することができる。
【0068】
下記の表2は、本明細書に記載された三重連続免疫化法を用いることにより誘導された新規クローン(MoAb 11A6)がいかにカンナビノイドに対する実際の商業的検定法、ABUSCREENTM 100 TEST ONLINETM Kit (Roche Diagnostics Systems Inc., ブランクブルグ、ニュージャージー州、USA)でよく働いているかを説明している。例20はRocheの商業的 ABUSCREENTM 100 TEST ONLINETM Kitに含まれる試薬を記述したものであるが、ただしその抗体を本発明に係る新規抗体により置き換えてある。Roche Diagnostic Systemsの現行の標識した微粒子を使用する検定で、幾つかの主要THC代謝物に対して得られた「実際の」交差反応性は表2に示す通りであるが、一方臨床試料の読み(そのすべてはGC/MSによりΔ9−THC酸に対し陽性であった)は表3に示す。両方の表はまた単一免疫原(免疫原(VIII))による免疫化から誘導されたモノクローナル抗体(MoAb 11E.2)を用いた対応する結果も報告している。
【0069】
表2中、MoAb 11E.2はIgA(二量体)抗体であり、他方MoAb 11A6はIgG(単量体)抗体である。MoAb 11A6を用いる場合現行の商業的検定法に含まれる微粒子を凝集させるためには、抗IgG抗体(例えば、Biodesign Int., Kennebunk, メイン州 04043,USAから市販されている)を含めることが必要である。
【0070】
表2中のデータは、実際の商業的検定法において、幾つかの主要THC代謝物に対する新規MoAb 11A6の交差反応性が現在の商業的MoAb 11E.2により示される反応性よりもかなり高いことを示している。同様に、表3中の臨床結果は、MoAb 11A6を使用した場合試料中の検出されるカンナビノイドの相対的濃度がすべてにおいて高いことを示しているが、ただし本質的に濃度が同じである一つのケースは除外してのことである。平均値(即ち、検定法の「感度」)もMoAb 11A6を用いた場合により高かった。これらの高い数値が重要なのは、新しい抗体がカンナビノイドの検定において陽性試料の「ピック・アップ・レート」を増加させる(即ち、より多数の陽性試料を正確に検出する)ことを意味するからである。
【0071】
本明細書中に開示された抗体および新規化合物は、一つのキットの同じ容器あるいは異なる容器中の単独で、あるいは他の試薬と一緒に包装するのが便利である。例えば、キットは本発明に係る抗体、標識THC試薬あるいは標識THC代謝物試薬、および既知量のΔ9−THC酸を含むことができる。
【表2】


【表3】


*定義により、
§(VIII)単独による免疫処置から得る。これはIgAである。
¶(VII), (IX), および(Xa)による「三重連続免疫処置」から得る。これは
IgG。
【表4】


§(VIII)単独による免疫処置から得る。これはIgAである。
¶(VIII), (IX),および(Xa)による「三重連続免疫処置」から得る。これは
IgGである。
@ 主要代謝物(標準)D9−11−ノル−9−カルボキシ−THC(II)に対
する値。
【実施例】
【0072】
下記の例は、本発明に係る幾つかの新規ベンゾピラン誘導体の合成法、これら化合物を新規免疫原の発生に使用する方法、およびこれら免疫原をTHC検出検定に有用な新規抗体の発生に使用する方法を例示するものであるがこれらに限定されることはない。
【0073】
一般的実験
下記の例に使用する無水テトラヒドロフラン(THF)およびジエチルエーテル(Et2O)は、アルゴン下でナトリウム−ベンゾフェノンケタールからの蒸留により得た。
【0074】
無水塩化メチレン(CH2Cl2)はアルゴン下で水素化カルシウムからの蒸留により得た。
【0075】
分取用層クロマトグラフィー(PLC)シリカゲルプレート、薄層クロマトグラフィー(TLC)シリカゲルプレート、およびフラッシュ等級シリカゲルはEM Science から得た。
【0076】
例 1
5−ヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシプロピル)−4−メチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンの合成
5−ヒドロキシ−4−メチル−2−オキソ−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパン酸(Fahrenheltz 等、1967,J. Amer.Chem. Soc., 89,5934−5941)30g(94.2ミリモル)を無水THF600mlに溶かした溶液をアルゴン下氷−塩浴中で−10℃に冷却した。かきまぜた溶液へ、BH3.THF(Albrich)のIM溶液210ml(2.2当量)を、反応温度を約−6℃に保ちながら滴加した。添加終了時、反応物を冷却しつつ4時間かきまぜ、次に温度を0℃未満に保ちながら氷冷した2N HCl水溶液900mlで失活させた。得られた混合物をEtOAcで抽出し、有機相を半飽和食塩水で2回、続いて飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で蒸発させた。得られた固体をEt2Oとすりまぜ、濾過して18.8g(65%)の5−ヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシプロピル)−4−メチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンを灰色固体として得た。HR EI MS:計算値M+,304.1675;実測値,304.1675。
【0077】
例 2
5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパノールの合成
i)無水THF20ml中5−ヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシプロピル)−4−メチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン 200mg(0.66ミリモル)の溶液へ、アルゴン下で還流しつつ、Et2O中臭化メチルマグネシウム(MeMgBr)(Aldrich)の3M溶液(無水Et2Oで20mlに希釈)1.0ml(〜4.5当量)を約20分にわたり滴加し、反応物を還流煮沸した。無水Et2O 8mlおよび無水THF 10mlで希釈したMeMgBr(Aldrich)の3M溶液更に2ml滴加し、反応物をアルゴン下で2時間還流煮沸した。加熱を止め、反応物を室温(RT)まで冷却し、過剰の冷IN HClで失活させ、混合物をEtOAcで抽出した。有機相を減圧下で蒸発させ、残留物を50%EtOAc−ヘキサンで溶離するPLCに付し、回収された出発物質85mg(42.5%)および極性の小さい生成物帯からの求める生成物42mg(15%)を得た。この物質を1:1 CHCl3−EtOAcで溶離するPLCに再びかけて32mgのきれいな5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパノールを得た。HR EIMS:計算値M+、318.2195;実測値、318.2191。
【0078】
ii)別法による合成
無水Et2O 60mlおよび無水THF 15mlで希釈したMeMgBr(Aldrich)の1M溶液15mlをアルゴン下で還流下に煮沸させた。次に、乾燥THF 60ml中5−ヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシプロピル)−4−メチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン 1.0gの溶液をこの反応混合物へ1時間にわたり滴加し、煮沸を計4時間続けた。反応混合物を室温に一晩冷却し、沸騰状態に戻し、煮沸を更に2時間続けた。次に加熱を止め、反応物を室温まで、次に氷浴中で冷却し、激しくかきまぜながら、氷冷1N HCl 120mlを注意深く加えることにより失活させた。反応物は黄色に変化し、次に紫色がかって多量の固体沈殿を生じ、その後再び黄色に変り、溶液は澄んだ。次に氷冷6N HCl 40mlを加え、混合物を氷浴中で15分かきまぜた。次に冷却を止め、絶えずかきまぜながら混合物を室温に到達せしめ、生じた深黄色溶液をEtOAc(1×200ml、1×100ml)で抽出した。合わせた有機層を半飽和NaCl水溶液(3×100ml)、飽和NaCl水溶液(1×100ml)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で蒸発させることにより着色シロップを得た。残留物をEtOAc約20mlとかきまわして灰色固体を含む透明な、うすく着色した溶液を得た。混合物を濾過して274mgの回収出発物質を得、濾液から溶媒を減圧下で除いて760mgの生成物含有物質を得た。この物質を再び少量のEtOAcとすりまぜ、再び濾過して更に159mgの回収出発物質を固体として得た。濾液から溶媒を除いて600mgの残留物を得、これを1:1 CHCl3−EtOAcで溶離するPLCにかけた。プレートのおよそ中間の生成物帯を単離し、シリカを10%MeOH/EtOAcで洗浄し、洗液を減圧下で蒸発させることにより243mgの求める生成物、即ち5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパノール、を得た。
【0079】
例 3
5−(メトキシメトキシ)−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパノールの製造
無水DMF(Aldrich)10ml中5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパノール 1.96g(6.16ミリモル)の溶液へ、アルゴン下室温において、水素化ナトリウムの60%分散液(Aldrich)260mg(〜1.05当量)を加え、混合物をアルゴン下室温において発泡が止み、溶液が透明な黒ずんだ着色溶液となるまでかきまぜた。このかきまぜた溶液へ0.55ml(〜1当量)のメトキシメチルクロリド(Aldrich, 85%純度のテクニカル品等)を、注射器により針先を溶液の表面下に入れて直接溶液中に加えた。反応混合物の色が消え、1分以内に沈殿を生じた。かきまぜを0.5時間続けた。次に溶液の半分を他の反応に使用するため注射器で抜いた。残り半分を飽和NaHCO3水溶液50mlとEtOAc 100mlとの混合物中に注入し、混合物をよく振りまぜ、十分量の水を加えて生じた固体を溶かし、透明な2相が得られるようにした。相を分離し、有機相を半飽和NaCl水溶液(2×50ml)、飽和NaCl水溶液(1×50ml)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で蒸発させ、残留物を高真空下で乾燥することにより、1.05g(〜94%)の求める生成物5−(メトキシメトキシ)−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパノールを油状物として得た。このものは1H−NMRにより高純度であることが示された。
【0080】
もう一つの反応から採取された物質を30%EtOAc−ヘキサンで溶離するPLCにより更に再精製して5−(メトキシメトキシ)−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパノールを得た。このものはすぐ前のパラグラフで述べたように単離された物質のスペクトルと同じNMRスペクトルを有し、またHR EI MS:計算値M+、362.2457;実測値、362.2441を有した。
【0081】
例 4
5−(メトキシメトキシ)−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパン酸の製造
例3で注射器により抜き取った5−(メトキシメトキシ)−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパノールを含む最終反応混合物の半分(フラスコに入っている)へ、更に20mlの無水DMF(Aldrich)を加えた。このかきまぜた溶液へ4.0gの二クロム酸ピリジニウム(Aldrich)を一時に加え、黒ずんだ色の溶液をアルゴン下室温で約14時間かきまぜた。次に反応混合物を200mlの水で希釈し、かきまぜ、そしてEtOAc(1×150ml、1×50ml)で抽出した。合わせた有機相を水(2×50ml)、半飽和NaCl水溶液(2×50ml)、飽和NaCl水溶液(1×50ml)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下に蒸発させ、残留物を高真空下で乾燥し約0.9gの褐色を帯びたシロップを得た。この物質をフラッシュ等級シリカゲル上でカラムクロマトグラフィーにかけ、先ずCHCl3で、次に5%MeOH/CHCl3で溶離した。生成物を含むフラクションを単離することにより、フラクションの主カットから、溶媒の蒸発と高真空下での乾燥の後に、232mgの求める生成物5−(メトキシメトキシ)−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパン酸を得た。生成物フラクションの主カットの先行フラクションから溶媒を除去し、残留物を5%MeOH/CHCl3で溶離するPLCにより更に精製し、その生成物帯から更に32mgの求める生成物5−(メトキシメトキシ)−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパン酸を得た。HR EI MS:計算値M+、376.2250、実測値、376.2246。
【0082】
例 5
5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパン酸の製造
アルゴン下tert−ブチルアルコール(MCB Chem.Co.)60ml中5−(メトキシメトキシ)−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパン酸 0.55g(1.65ミリモル)の溶液へ、パラ−トルエンスルホン酸ピリジニウム(Aldrich)4.16g(10当量)を加え、反応混合物を1時間還流煮沸した。反応混合物を氷−水浴で冷却し、次にEtOAc 500mlと水100mlとの間に分配した。相を分離し、有機相を水(5×100ml)、半飽和NaCl水溶液(1×100ml)、飽和NaCl水溶液(1×100ml)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で蒸発させ、残留物を高真空下で乾燥することにより着色固体を得た。この固体を再溶解させ、10%MeOH/CHCl3で溶離するフラッシュ等級シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーにかけた。生成物を含むフラクションを合わせ、溶媒を減圧下で除き、高真空下で乾燥後、143mgの5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロバン酸をガラス/無定形固体として得た。HR EI MS:計算値M+、332.1988;実測値、332.1985。
【0083】
例 6
ハプテン1−〔3−(5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)−1−オキソプロポキシ〕−2,5−ピロリジンジオン(X)の製造
i)アルゴン下無水塩化メチレン中酸5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパン酸6mg(0.018ミリモル)の溶液へ、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(Aldrich)10.3mg(5当量)を、続いて1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC.HCl)(Sigma)8.6mg(2.5当量)を加えた。アルゴン下に室温で4時間かきまぜた後のTLCはごく痕跡量の出発物質が残存することを示した。反応混合物を50%EtOAc−ヘキサンで溶離するシリカゲル板上のクロマトグラフィーに直接かけた。生成物帯を単離し、少量のEtOAcで洗浄し、洗液から減圧下に溶媒を除き、残留物を高真空下で乾燥させることにより5mg(65%)の1−〔3−(5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)−1−オキソプロポキシ〕−2,5−ピロリジンジオンをフォームとして得た。HR(+)FAB MS:計算値(M+H)、430.2230;実測値、430.2266。
【0084】
ii)別の合成法
アルゴン下氷水浴中で冷却した無水THF15ml中酸5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパン酸100mg(0.30ミリモル)の溶液へ、カルボニルジイミダゾール(CDI)(Fluka)150mg(3当量)を固体のまま一時に加えた。反応物を約0℃で約1時間かきまぜた。氷浴を除き、かきまぜた反応物を1.5時間にわたり室温まで温めた。次に反応物へ345mg(10当量)のN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)(Aldrich)を固体のまま一時に加え、反応物をアルゴン下室温で18時間かきまぜた。次に反応混合物を減圧下で蒸発させ、残留物をEtOAc100mlと0.1N HCl水溶液30mlとの間に分配した。相を分離し、有機層を0.1N HCl(2×30ml)、水(1×30ml)、50mMリン酸塩緩衝液pH8(3×30ml)、飽和NaCl水溶液(1×30ml)で洗浄し、乾燥し(Na2SO4)、減圧下で蒸発させ、残留物を高真空下で乾燥した。次にこの残留物を50%EtOAc/CH2Cl2で溶離するPLCにかけた。上方の生成物帯を単離し、シリカをEtOAcで洗浄した。洗液を減圧下で蒸発させ、高真空下で乾燥することにより44mgの求める生成物1−〔3−(5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)−1−オキソプロポキシ〕−2,5−ピロリジンジオンをガラス/無定形固体として得た。
【0085】
例 7
3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシプロピル)−4−メチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンの製造
アルゴン下蒸留(マグネシウムメトキシドから)メタノール500ml中5−ヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシプロピル)−4−メチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン 4.0g(13.14ミリモル)の溶液へ、12.8g(525.6ミリモル)のマグネシウム削り片を加えた。混合物を加温して反応を開始させた。次に反応物を一晩還流煮沸した。混合物を氷浴中で約0℃に冷却し、氷冷6N HCl水溶液300mlを用いて注意深く失活させた。メタノールを減圧下で除去し、残留物をEtOAcで抽出した。有機相を飽和NaCl水溶液で洗浄し、乾燥し、減圧下で蒸留させた。得られた固体を、30%EtOAc/ヘキサンから50%EtOAc/ヘキサンまでの勾配で溶離するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、生成物を含むフラクションから3.06g(76%)の3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシプロピル)−4−メチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オンを固体として得た。HR EI MS:計算値M+、306.1831;実測値、306.1829。1H−NMRにより示される cis/trans比は1:2であった。
【0086】
例 8
5−ペンチル−2−〔1−(テトラヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ピラン−3−イル)エチル〕−1,3−ベンゼンジオール
アルゴン下無水Et2O 160mlに溶かした臭化メチルマグネシウム(Et2O中3M)(Aldrich)19.6ml(5.87ミリモル)の沸騰溶液へ、3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−3−(3−ヒドロキシプロピル)−4−メチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−2−オン4.5g(14.69ミリモル)の溶液を滴加し、反応物を一晩還流温度に保った。反応物を氷浴中で0℃に冷却し、2N HCl水溶液で注意深く失活させた。次に混合物をEt2Oで抽出し、合わせた有機相を半飽和NaCl水溶液(×2)、飽和NaCl水溶液(×1)で洗浄し、乾燥し、減圧下で蒸発させることにより、4.5gの5−ペンチル−2−〔1−(テトラヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ピラン−3−イル)エチル〕−1,3−ベンゼンジオールを得、これをそれ以上精製することなく次の工程で使用した。試料を精製し次の数値を示す物質を得た。HR EI MS:計算値M+、320.2351;実測値、320.2348。
【0087】
例 9
rac−3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパノール
触媒量のパラ−トルエンスルホン酸ピリジニウム(Aldrich)を含むトルエン400ml中5−ペンチル−2−〔1−(テトラヒドロ−2,2−ジメチル−2H−ピラン−3−イル)エチル〕−1,3−ベンゼンジオール9.4gの溶液をアルゴン下60℃に2時間加熱した。反応物を室温まで冷却し、EtOAcで希釈し、0.1N HCl水溶液(×2)、水(×2)、飽和NaHCO3水溶液で洗浄し、乾燥し、減圧下で蒸発させた。得られた物質を大規模(extensive)クロマトグラフィーにより精製し、3.4g(35%)のrac−3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパノールを淡黄色無定形固体として得た。HR EI MS:計算値M+、320.2351。実測値、320.2377。1H−NMRにより示されるジアステレオ異性体の比は3:1であった。
【0088】
例 10
5−〔〔(1,1−ジメチルエチル)ジフェニルシリル〕オキシ〕−3,4−ジヒドロ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパノールの製造
無水DMF(Aldrich)60ml中rac−3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパノール 3.17g(8.78ミリモル)の溶液を、無水DMF(Aldrich)20ml中水素化ナトリウム(Aldrich)383mg(1当量)の懸濁液へ加え、混合物をアルゴン下室温で0.5時間かきまぜた。次に2.28ml(1当量)のtert−ブチルクロロジフェニルシラン(Aldrich)を注射器により加えた。室温で2時間かきまぜた後、反応混合物をEtOAcで希釈し、0.1N HCl水溶液、水、飽和NaCl水溶液で洗浄し、乾燥し、減圧下で蒸発させた。残留物を30%EtOAc/ヘキサンで溶離するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物を含むフラクションを合わせ、減圧下で蒸発させることにより2.23g(45%)の5−〔〔(1,1−ジメチルエチル)ジフェニルシリル〕オキシ〕−3,4−ジヒドロ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパノールを淡黄色油状物として得た。HR EI MS:計算値M+、558.3530;実測値、558.3516。
【0089】
例 11
5−〔〔(1,1−ジメチルエチル)ジフェニルシリル〕オキシ〕−3,4−ジヒドロ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパン酸の製造
無水DMF(Aldrich)中5−〔〔(1,1−ジメチルエチル)ジフェニルシリル〕オキシ〕−3,4−ジヒドロ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパノール2.2g(3.97ミリモル)と二クロム酸ピリジニウム(Aldrich)7.47g(19.86ミリモル)との混合物をアルゴン下室温で20時間かきまぜた。反応物を水で希釈し、EtOAcで抽出した。有機相を乾燥し、溶媒を減圧下で除いた。次に残留物をシリカゲル上のクロマトグラフィーの繰り返しにより精製し、1.1g(48%)の5−〔〔(1,1−ジメチルエチル)ジフェニルシリル〕オキシ〕−3,4−ジヒドロ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパン酸を淡黄色発泡体として得た。HR EI MS:計算値M+、572.3322;実測値、572.3315。1H−NMRにより示されるジアステレオ異性体比は8:1であった。
【0090】
例 12
3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパン酸の製造
無水THF中5−〔〔(1,1−ジメチルエチル)ジフェニルシリル〕オキシ〕−3,4−ジヒドロ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパン酸1.0g(1.75ミリモル)の溶液を、アルゴン下THF(Aldrich)中フッ化テトラブチルアンモニウムの1M溶液2.09ml(2.09ミリモル)で処理した。室温で1時間かきまぜ後反応物を減圧下で蒸発させ、残留物を5%MeOH/CHCl3で溶離するフラッシュ等級シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィーにかけた。生成物を含むフラクションを合わせ、減圧下で蒸発させて395mg(67%)の3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパン酸を黄褐色発泡体として得た。MA:C20304・0.2H2Oに対する計算値:C,71.06;H,9.06;O,19.29。実測値:C,70.93;H,8.95;O,19.27。
【0091】
例 13
ハプテン1−〔3−(3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)−1−オキソプロポキシ〕−2,5−ピロリジンジオン(XII)の製造
無水CH2Cl220ml中3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−プロパン酸297mg(0.88ミリモル)の溶液へ、アルゴン下N−ヒドロキシスクシンイミド(Aldrich)246mg(2.14ミリモル)を加え、反応物を15分かきまぜた。次に1−エチル−3−(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(Sigma)408mg(2.14ミリモル)を加え、反応物を室温で3時間かきまぜた。反応混合物をCH2Cl2でその体積の5倍に希釈し、NaClで飽和した。0.1N HCl水溶液で、次に飽和NaCl水溶液、続いて飽和NaHCO3水溶液(×3)により洗浄し、乾燥し、減圧下で蒸発させた。残留物を1:1 EtOAc/CH2Cl2で溶離するシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーにより精製した。生成物フラクションを合わせ、減圧下で蒸発させ、高真空で乾燥させることにより、297mg(78%)の1−〔3−(3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)−1−オキソプロポキシ〕−2,5−ピロリジンジオンを白色発泡体として得た。HR(+)FAB MS:計算値(M+H),432.2386;実測値,432.2413。
【0092】
例 14
免疫原3−(5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)−1−オキソプロピル−〔牛チログロブリン〕(Xa)の製造
氷浴中で冷却した50mMリン酸カリウム緩衝液(KPi)pH7.5 10.0ml中精製牛チログロブリン(BTG)478mgの溶液へ、絶えずかきまぜながらジメチルスルホキシド(DMSO)30mlを約30〜40分間にわたりゆっくり加え(滴下ロート)、75% DMSO/50mMリン酸塩緩衝液中のタンパク質溶液を得た。得られた溶液から、溶液のうち3.2mlを取り除き、対照試料として保存した。約440mgのBTGを含む残りの溶液へ、DMSO約3ml中1−〔3−(5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)−1−オキソプロポキシ〕−2,5−ピロリジンジオン 44mgの溶液を一時に加えた。反応混合物をかきまぜながら一晩室温まで加温した。幾分混濁した反応溶液を透析管(SpectraPor 7; 分子量カットオフ 50,000)に移した。BTG対照も透析管に移した。両溶液を室温で各2lの75%DMSO/50mM KPi pH7.5;50%DMSO/50mM KPi pH7.5;25% DMSO/50mM KPi pH7.5;および50mM KPi pH7.5に対して順次透析した後、4℃で6×4lの50mM KPi pH7.5に対して透析した。この結果得られた保持液(retentate)を0.8μmフィルターユニットに通して別々に濾過した。75mlの接合体(免疫原)Xaが50mM KPi pH7.5中の溶液として得られた。そのタンパク質濃度を標準としてBTG対照を用いて測定したところ(Coomassie Blue)タンパク質 4.6mg/mlであった。有効リジン修飾の程度は、BTG対照に対して測定したとき約69%であると測定された(トリニトロベンゼンスルホン酸〔TNBS〕法による)。
【0093】
例 15
免疫原3−(3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)−1−オキソプロピル−〔牛チログロブリン〕(XIIa)の製造
上記例14に示した免疫(Xa)の製造と同様にして、50mM KPi pH7.5(24ml)中精製BTG700mgの溶液を氷浴中で冷却し、72mlのDMSOで約1.33時間にわたりゆっくり希釈することによって75%DMSO/50mM KPi pH7.5中のタンパク質溶液を得た。同様にして、少量のBTGを用いてBTG対照を調製した。次にDMSO約3ml中ハプテン1−〔3−(3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)−1−オキソプロポキシ〕−2,5−ピロリジンジオン70mgの溶液をタンパク質700mgへ一時に加え、反応物をかきまぜながら一晩室温まで加温した。次に例14で述べた方法と同様にして、接合体およびBTG両方の透析を行なった。次に最終接合体保持液を濾過して50mM KPi pH7.5中免疫原(XIIa)の溶液115mlを得た。標準としてBTG対照を用いてタンパク質濃度を測定したところ(Coomassie Blue)3.8mg/mlであった。有効リジン修飾の程度は、BTG対照に対して測定したとき約88%であると測定された(TNBS法による)。
【0094】
例 16
「完全三環式カンナビノイダル」免疫原(VIII)、(IX)、および(XIII)の調製
a.免疫原(VIII):〔9R,S−(6aa,10ab)〕−〔5−(6a,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロ−1−ヒドロキシ−6,6−ジメチル−3−ペンチル−6H−ジベンゾ〔b,d〕−ピラン−9−イル)−1−オキソペンチル〕−〔牛チログロブリン〕
50mM NaHCO3(pH 8.0)22mlおよびDMSO 66ml中牛チログロブリン(BTG)1.10gの溶液へ室温で、DMSO 14ml中、式、
【化9】


を有するカンナビノイド誘導体〔9R,S−(6aa,10ab)〕−1−〔5−(6a,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロ−1−ヒドロキシ−6,6−ジメチル−3−ペンチル−6H−ジベンゾ〔b,d〕−ピラン−9−イル)−1−オキソペンチルオキシ〕−2,5−ピロリジンジオン(米国特許第4,833,073号明細書も参照)1.00gの溶液6.8mlを加えた。この溶液を室温で一晩かきまぜた。得られた溶液を透析管に移し、DMSO量を次第に減らしながら6回液を取り替えてDMSO/50mM KPi pH7.5に対して順次透析した後、50mM KPi pH7.5に対して、液を5回取り替えて透析した。同様にしてBTG対照を処理した。次に、複合体の透析から得られた保持液を遠心して少量の固体物質を除去し、上澄をデカンテーションして50mM KPi pH7.5中の免疫原(VIII)の溶液を得た。そのタンパク質濃度は約4.7mg/mlであると測定された(Bio-Rad Coomassie Blue タンパク質検定)。有効リジン修飾の程度は、BTG対照に対して測定したとき、約98%であると決定された(TNBS法)。
【0095】
b.免疫原(IX):(6aR−trans)−4−〔(6a,7,10,10a−テトラヒドロ−6,6,9−トリメチル−3−ペンチル−6H−ジベンゾ〔b,d〕ピラン−1−イル)オキシ〕−1−オキソブチル〕−〔牛チログロブリン〕
氷−水浴中で冷却した50mM KPi pH7.5 13.3mlおよびDMSO39.8ml中牛チログロブリン700mgの溶液へ、DMSO2.5ml中、式、
【化10】


を有するカンナビノイド誘導体(6aR−trans)−1−〔4−〔(6a,7,10,10a−テトラヒドロ−6,6,9−トリメチル−3−ペンチル−6H−ジベンゾ〔b,d〕ピラン−1−イル)オキシ〕−1−オキソブトキシ〕−2,5−ピロリジンシオン 90mgの溶液を加えた。反応物をかきまぜながら一晩室温まで加温した。次に例14記載の方法と同様に接合体の透析を行なった。次に最終接合体保持液を濾過し、50mM KPi pH7.5中免疫原(IX)の溶液118mlを得た。標準としてBTGの対照試料を使用してタンパク質濃度を測定したところ(Coomassie Blue)5.0mg/mlであった。タンパク質に上の有効リジン修飾の程度(TNBS法)は、BTG対照に対して測定したとき約95%であると測定された。
【0096】
c.免疫原(XIII):〔9R,S−(6aa,10ab)〕−〔〔(6a,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロ−1−ヒドロキシ−6,6−ジメチル−3−ペンチル−6H−ジベンゾ〔b,d〕−ピラン−9−イル)メチル〕カルボニル〕−〔牛チログロブリン〕
50mM NaHCO3 pH8.0 28ml中牛チログロブリン(BTG)1.40gの氷浴で冷却した溶液へ、DMSO 84mlをゆっくり加えて75%DMSO−50mM NaHCO3 pH8.0中BTGの溶液を得、溶液を室温まで温めた。このタンパク質溶液へ、式、
【化11】


を有するカンナビノイド誘導体〔9R,S−(6aa,10ab)〕−1−〔2−(6a,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロ−1−ヒドロキシ−6,6−ジメチル−3−ペンチル−6H−ジベンゾ〔b,d〕−ピラン−9−イル)−1−オキソエチルオキシ〕−2,5−ピロリジンジオン1073mgのDMSO 16ml中の溶液4.5mlを加え、溶液を一晩かきまぜた。得られた溶液を透析管に移し、DMSO量を次第に減らしつつDMSO/50mM KPi pH7.5に対して順次透析した後(液を6回交換)、50mM KPi pH7.5に対し液を5回取り替えて透析した。次に接合体の透析から得た保持液を遠心して少量の固体物質を除去し、上澄をデカンテーションして50mM KPi pH7.5中免疫原(XIII)の溶液を得た。そのタンパク質濃度は約3mg/mlであると測定された(Bio-Rad Coomassie Blue タンパク検定法)。BTG対照に対して測定したとき、有効リジンの修飾の程度は約98%であると決定された(TNBS法)。
【0097】
例 17
モノクローナル抗体の調製手順
a)免疫処置手順
8から10週齢Balb/cマウス(Jackson Laboratories)に一連の3種の免疫原を連続して腹腔内に注射した。先ず、0日目に、比1:1で完全フロイントアジュバント(CFA)中に乳化した9位結合カンナビノイド牛チログロブリン(BTG)接合体、免疫原(VIII)、100mgをマウスに注射した。25日目に、1:1の比で不完全フロイントアジュバント中に乳化した1位結合カンナビノイド−BTG接合体、免疫体(IX)、100mgで追加免疫した。細胞融合に先立ち、PBS中に希釈したベンゾピラン−BTG免疫原(Xa)400mg、200mg、および200mgを用いて、それぞれ72時間、48時間および24時間で最終追加免疫系列を投与した。
【0098】
b)融合法
免疫処置マウスから脾細胞を単離し、Fazekas de Groth およびScheideggerの手順により(F. de St. Groth 等、1980、J.Immunological Methods,35,1−21およびG.Kohler等、1975、Noture(ロンドン)、256、495〜97頁)50%ポリエチレングリコールを使用して4:1の比でNSOミエローマ細胞に融合させた。NSO細胞を250,000細胞/mlで96穴ミクロタイタープレートに塗布し、9%CO2インキュベーター中37℃でクローンが選別するのに十分な大きさになるまでインキュベーションした。
【0099】
c)ハイブリドーマのELISA分析
96穴ミクロタイタープレートをPBS中に希釈したカンナビノイド−牛血清アルブミン(BSA)接合体(XIV)5mg/ml 50mlで被覆し、室温で2時間インキュベーションした。軽く叩いて液体を流しにあけることによりプレートから液体を除き、プレートを吸収紙上にふき取った。{PBS/アジ化物}中1% BSA100マイクロリットルを各穴の中に分配し、プレートを室温で1時間インキュベーションした。インキュベーション後、プレートを{PBS/.01%TWEEN 20}で3回洗浄した。各プレートの穴に1%BSA25マイクロリットルを加え、続いて細胞融合の各穴からの細胞上澄25mlを加えた。プレートにカバーを施し、37℃で1時間インキュベーションした。{PBS/TWEEN 20}を用いてプレートをプレートウォッシャーで3回洗浄し、各穴にアルカリ性ホスファターゼに接合された抗マウス抗体50mlを加えた。プレートを37℃で1時間インキュベーションし、次に上記のように洗浄した。pH9.8のジエタノールアミン緩衝液に溶かしたパラ−ニトロフェノールホスフェート1mg/mlを加えることにより検定物を発色させた。この基質含有プレートを室温で30分インキュベーションした。3M NaOH 50mlをウェルに加え、酵素反応を停止させた。直ちにプレートを405nmで読んだ。
【0100】
d)競合検定および交差反応性の分析
上記のように、ただし抗体を含む細胞上澄液の存在下に遊離薬物をプレートに加える点を除いて、競合検定を設定した。下記の式を用いて交差反応性を計算した。すべての計算は最大O.D.(光学密度)結合点の50%における結合と置換に基いた。
[数1]
CR%=(交差反応体(即ち、薬物)欠如下のO.D.−交差反応体薬物存在下
のO.D.)×(100/C.F)

(9−THC酸欠如のO.D.−D9−THC酸存在のO.D.)
式中、C.F.は検定に用いる交差反応体の異なる濃度を考慮するために用いた補正因子である。C.F.=交差反応体ng/D9−THC酸ng。「薬物」という用語は検定系に適用される交差反応体として定義される。
【0101】
e)腹水発生
8から10週齢Balb/C雌マウスを、腹水に対する細胞の注射の7〜14日前にプリスタン0.5mlで初回抗原刺激を与えた。この分野でよく知られた方法により腹水を採取した(例えば、N.Hoogenraad, T.Helman, and J.Hoogenraad, 1983 J.Immunological Methods,61,317−320頁参照)。
【0102】
例 18
カンナビノイド−BSA接合体(XIV):〔9R,S−(6aa,10ab)〕−〔5−(6a,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロ−1−ヒドロキシ−6,6−ジメチル−3−ペンチル−6H−ジベンゾ〔b,d〕ピラン−9−イル)−1−オキソペンチル〕−〔牛血清アルブミン〕
氷−水浴中で冷却した〔50mM KPi pH7.5〕5mlおよびDMSO 14ml中牛血清アルブミン(BSA)250mgの溶液へ、式、
【化12】


を有する〔9R,S−(6aa,10ab)〕−1−〔5−(6a,7,8,9,10,10a−ヘキサヒドロ−1−ヒドロキシ−6,6−ジメチル−3−ペンチル−6H−ジベンゾ〔b,d〕ピラン−9−イル)−1−オキソペンチルオキシ〕−2,5−ピロリジンジオン3.6mgのDMSO 1ml中の溶液を加えた。また米国特許第4,833,073号明細書を参照。溶液を室温で一晩かきまぜてから透析管に移し(分子量カットオフ10,000)、例14記載の方法と同様にして透析した。次に最後の接合体保持液を濾過して50mM KPi pH7.5中接合体(XIV)の溶液45mlを得た。BSAの標準試料に対して測定したとき、タンパク質濃度は4.9mg/mlであると測定された(Coomassie Blue タンパク質検定)。
【化13】

【0103】
例 19
ポリクローナル抗血清の調製法
生後6ヶ月から1年のヤギとヒツジを完全フロイントアジュバント中に乳化した免疫原接合体3mgで0日目に免疫化した。その後の免疫処置は、不完全フロイント アジュバント中で乳化した免疫原接合体1〜3mgを4週間毎に与えることにより行なった。次にこの分野で公知の方法に従い(例えば、E.Harlow and D.Lane「Antibodies : A Laboratory Manual」、Cold SpringHarbor, 1988, 92〜114頁参照)、動物から血液を採り抗血清を調製した。
【0104】
用いた免疫原は表1に記載のものである。プレート被覆物はカンナビノイド−牛血清アルブミン(BSA)接合体(XIV)である。
【0105】
例 20
本例はカンナビノイドの市販試験キットABUSCREENTM 100 TEST ONLINETM(Roche Diagnostics SystemsInc., Branchburg, ニュージャージー州,USA)に含まれる試薬を説明するものである。
【0106】
検定試薬
1.抗体試薬:検定カットオフ付近に望む使用特性をもつ最良の動的標準曲線を与えるように濃度を調節した二次抗体を含むカンナビノイド単クローン抗体(IgG)。この抗体を50mM HEPES、0.1%BSA、0.5%塩化ナトリウム、0.09%アジ化ナトリウムを含み、pH6.5に調節した抗体希釈剤で希釈する。
【0107】
2.微粒子試薬:10mM KPi pH7.5および0.09%アジ化ナトリウムを含む緩衝液中の接合カンナビノイド誘導体微粒子(キットで供給される)。
【0108】
3.試料希釈剤:50mM PIPES pH7.0、2.5%PVP、2.0%塩化ナトリウムおよび0.09%アジ化ナトリウムを含む緩衝液(キットで供給される)。
【0109】
その他の試薬
ABUSCREENTM ONLINETM カンナビノイド校正パック。
上記試薬を使用する検定法は、ABUSCREENTM 100 TEST ONLINETMの包装差込みビラに述べられた注意書に従って行う。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】特に適当な化合物1−〔3−(5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)−1−オキソプロポキシ〕−2,5−ピロリジンジオン(化合物X)、ならびに化合物XVの合成に関与する出発物質と中間体の式を示す。
【図2】特に適当な化合物1−〔3−(3,4−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−2,2,4−トリメチル−7−ペンチル−2H−1−ベンゾピラン−3−イル)−1−オキソプロポキシ〕−2,5−ピロリジンジオン(化合物XII)、ならびに化合物XVIの合成に含まれる出発物質と中間体の式を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式、
【化1】


式中、R1は1から9炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル基であり、R2およびR3はそれぞれ直鎖または分枝低級炭化水素基から選ばれ、そして該炭化水素基は一つ以上の下記官能基、
-OH,-COR4,-NR56,-SH,-C(=NH)-OR7,-CHO,または=O
により置換することができるが、ただしR2またはR3の少なくとも一つは上記官能基の少なくとも一つによって置換されることを条件とし、R4は−OHまたは脱離基であり、R5およびR6はそれぞれHおよび直鎖または分枝低級炭化水素基からなる群から選ばれ、R7は直鎖または分枝低級炭化水素基であり、a、b、およびcはそれぞれ単結合または二重結合であるが、ただしbが二重結合のときはaおよびcは二重結合でないことを条件とする、
を有する化合物。
【請求項2】
1は直鎖または分枝C3〜C6であり、R2は−CH3であり、R3は1個以上の官能基−OH,−COR4および−NR56により置換された直鎖または分枝低級炭化水素基であり、R4は−OHまたは脱離基で、後者はN−オキシスクシンイミド、N−オキシ(スルホスクシンイミド)、イミダゾリル、ペンタフルオロフェノキシ、N−オキシベンゾトリアゾール、チオ(オキソ)チアゾリジニル、およびOR8から選ばれ、R5およびR6はそれぞれHまたは低級炭化水素基であり、R8は直鎖または分枝低級炭化水素基であり、aおよびcは単結合である、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
3は1個以上の−OHまたは−COR4により置換された直鎖低級炭化水素基であり、R4は−OH、N−オキシスクシンイミドおよびOR8からなる群から選ばれ、R8は−CH3および−CH2CH3から選ばれる、請求項2記載の化合物。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の少なくとも1種の化合物から誘導される免疫原。
【請求項5】
タンパク質性担体を更に含有する、請求項4記載の免疫原。
【請求項6】
タンパク質性担体はチログロブリン、血清アルブミン、グロブリンおよびヘモシアニンから選ばれる、請求項5記載の免疫原。
【請求項7】
タンパク質性担体は牛チログロブリン(BTG)および牛血清アルブミン(BSA)から選ばれる、請求項6記載の免疫原。
【請求項8】
式Iの化合物とタンパク質性担体との間の化学リンカーを更に含有する、請求項6記載の免疫原。
【請求項9】
ELISA検定法で置換により測定したとき、下記THC代謝物:
【化2】


のすべてに対して少なくとも約80%の平均交差反応性(併合)を有する抗体。
【請求項10】
下記THC代謝生成物:
[表1]
代謝生成物 CR %
III 少なくとも約85%
IV 少なくとも約100%
V 少なくとも約98%
VI 少なくとも約91%
VII 少なくとも約98%
に対し代謝生成物IIと比較して上記交差反応性を有する、請求項9記載の抗体。
【請求項11】
モノクローナル抗体である、請求項9または請求項10記載の抗体。
【請求項12】
ポリクローナルである、請求項9または請求項10記載の抗体。
【請求項13】
カンナビノイドに対するモノクローナルまたはポリクローナル抗体の製造法において、請求項1から請求項3のいずれかに記載の化合物から誘導される少なくとも1種の免疫原を用いてホストを免疫処置することからなる上記方法。
【請求項14】

【化3】


式中、R1は1から9炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル基であり、R2′は直鎖または分枝低級炭化水素基であり、R3′は直鎖または分枝低級炭化水素基で、−O−、−CO−、−NR5−、−NR6−、−S−、−C(=NH)−、−CH=、−CH2−により置換され、R5およびR6はそれぞれHおよび直鎖または分枝低級炭化水素基からなる群から選ばれ、Yは結合基または結合であり、Zは担体であり、a、b、およびcはそれぞれ単結合または二重結合であるが、ただしbが二重結合であるときaとcは二重結合でないことを条件とする、
を有する少なくとも1種の化合物を用いてホストを免疫処置する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
式(Ia)の化合物は、
【化4】


および
【化5】


から選ばれる、請求項14記載の方法。
【請求項16】
カンナビノイドに対するモノクローナル抗体の製造法において、3種の異なるカンナビノイド関連免疫原でホストを順次免疫処置することからなる上記方法。
【請求項17】
3種の異なる免疫原は
【化6】


および
【化7】


式中、R1は1から9炭素原子を有する直鎖または分枝アルキル基であり、R2′は直鎖または分枝低級炭素水素基であり、R3′は直鎖または分枝低級炭化水素基で、この基は−O−、−CO−、−NR5−、−NR6−、−S−、−C(=NH)−、−CH=、−CH2−により置換され、R5およびR6はそれぞれHおよび直鎖または分枝低級炭化水素基からなる群から選ばれ、Yは結合基または結合であり、Zは担体であり、a、bおよびcはそれぞ単結合または二重結合であるが、ただしbが二重結合であるときaとcは二重結合でないことを条件とする、である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
免疫原(Ia)は
【化8】


および
【化9】


から選ばれる、請求項17記載の方法。
【請求項19】
生物学的試料中のテトラヒドロカンナビノール代謝物を検出するための試験キットにおいて、請求項9から請求項12のいずれかに記載の抗体を含む前記キット。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−51839(P2009−51839A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−217504(P2008−217504)
【出願日】平成20年8月27日(2008.8.27)
【分割の表示】特願平8−84331の分割
【原出願日】平成8年4月5日(1996.4.5)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】