説明

カーテン、ブラインド

【課題】太陽光などによる光、熱を反射、遮断し、紫外線遮蔽性、遮熱性、保温性、ミラー効果によって外部から内部が見えにくい機能、を安価に実現させるカーテン、ブラインドを提供する。
【解決手段】鎖編みした複数列の経糸の編み目をくぐって、フイルムに金属を蒸着させた後、金属の防錆、或いは金属の剥離防止、金属部輝度の調節を目的とした樹脂コーティングを施した金属フイルム部材を糸状に細長く裁断した金属フイルム糸を編み糸として使用し、1列またはそれ以上に渡って左右に振って編みこみ、金属フイルム糸によって編まれた光沢を有する編地部側と通常の編み糸によって編まれた編地部側を有することを手段とする、カーテン、ブラインド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は家屋の窓等でその屋内側に使用したりあるいは屋内で間仕切りに使用したりする、カーテン、ブラインドに関する。
【背景技術】
【0002】
一般の家屋で使用するカーテン、ブラインドは、近年、太陽光線を反射あるいは遮断させるためにカーテン、ブラインド用生地の窓側に光沢を有するアルミニウムを蒸着させたり、あるいはステンレスをスパッタリング加工したりして、夏場は金属皮膜によって太陽光中の紫外線を遮蔽し、また近赤外線および遠赤外線からなる熱線を効果的に反射して室内の温度上昇を抑制し、冬場は、カーテン、ブラインドが本来有する保温効果と併せて前記金属皮膜層が室内の物体および暖気から放出される遠赤外線を反射し、熱放射による冷却を制御する効果によって室内を効率的に保温することにより、エアコンの使用時間を少なくして節電効果を高めるものが使用されるようになってきた。また金属が光を反射するミラー効果により外部からは内部が見え難い機能も有するものとしている。これを便宜上従来技術1とする。しかしそのような従来技術1のカーテン、ブラインドは一般に製作費が高価となり、また、加工するとき生地の幅、長さに制限の生ずる問題があった。本発明はこの問題を解決し、更に同分類のカーテン、ブラインドには無い多様性を有しながら美観の向上をも図ろうとするものである。
【0003】
また従来技術2として次のようなものがある。
実開平6−77670
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術1は、図9に示すような織物あるいは編物のベタ生地を用いその片側に光沢を有するアルミニウムを蒸着させたり、あるいはステンレスをスパッタリング加工したりして、夏場は金属皮膜によって太陽光中の紫外線を遮蔽し、また近赤外線および遠赤外線からなる熱線を効果的に反射して室内の温度上昇を抑制し、冬場は、カーテン、ブラインドが本来有する保温効果と併せて前記金属皮膜層が室内の物体および暖気から放出される遠赤外線を反射し、熱放射による冷却を制御する効果によって室内を効率的に保温することにより、エアコンの使用時間を少なくして節電効果を高め、また金属皮膜が光を反射するミラー効果によって外部から内部が見えにくい機能を有するものである。
しかしアルミ等の金属の蒸着法では布地片側全体に金属が蒸着されるために、金属材が多く使用され、また布地が大きくなるとその装置も高価になることで一般に製品が高価であり、更に経時変化が発生して初期には光沢があった金属部が酸化されて黒ずみ、窓の結露に反応して黒い水滴が床を汚す等の問題があった。また布地片面にステンレス材のスパッタリング加工する従来技術1はカーテン、ブラインドのような大きな布地を加工するには装置が大掛かりになり加工費が高価になる問題があった。更にアルミ等の金属蒸着法、あるいはステンレス材のスパッタリング加工は金属が裏面だけでなく、表面にも一部付着するため、室内側の布地に金属のグレイッシュな色が残り美観を損ねる問題があった。
また従来技術2としての引用文献の実開平6−77670にはフイルムに金属を蒸着後、細く裁断して金属蒸着フイルム糸としてレース編成時に引用文献の請求項3及び4ページの最後の行に記載の如くレースの地糸の一部に使用する点は本発明と類似しているが、金属の防錆、および耐水性、金属の剥離防止、金属部輝度の調節についての開示はない。本発明はこれらの問題を解決することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明を実現するには以下の手段による。
「手段1」
鎖編みした複数列の経糸の編み目をくぐって、太陽光などによる光、熱を反射、遮断し、紫外線遮蔽性、遮熱性、保温性、ミラー効果によって外部から内部が見えにくい機能、を有するアルミ、錫、銀等の金属を、フイルムの片面或いは両面に蒸着した金属フイルム部材、または、片面金属蒸着面をフイルムでサンドイッチ状に挟んだ金属フイルム部材に、片面あるいは、両面に、難燃性を有する樹脂あるいは通常の樹脂によるコーティングを施し、糸状に細長く裁断した金属フイルム糸を編み糸として使用し、鎖編みした複数列の経糸の1列分に相当する1針間またはそれ以上に渡って同列数分あるいは異列数分、左右に振って編み込み、あるいはそれらの組み合わせによって編み込むことを手段とする、カーテン、ブラインド。
「手段2」
手段1で使用されるフイルムの一方あるいは両方が難燃性を有する素材を用いた金属フイルム糸であることを手段とする、カーテン、ブラインド。
「手段3」
手段1から2において、更に金属フイルム糸以外の通常の編み糸を使用し、編み立て用治具である別筬で同時に編み込むことによって、金属フイルム糸によって編まれた光沢を有する編地部側と通常の編み糸によって編まれた編地部側を構成させることを手段とする、カーテン、ブラインド。
「手段4」
手段1から3において、柄出し用の治具であるジャカード用の柄筬を使用し、金属フイルム糸以外の通常の編み糸でジャカード柄を編成し生地の表面を構成させること、および緯糸挿入機を用いて、金属フイルム糸以外の通常の編み糸である緯糸が生地の表面を構成することを手段とする、カーテン、ブラインド。
「手段5」
手段1から4において使用される金属フイルム糸に他の糸を撚り合わせ、あるいは襷状に絡めた糸、を使用することを手段とする、カーテン、ブラインド。
【発明の効果】
【0006】
上記の手段を実施することによって、本発明は以下の効果を有する。
1)フイルムに金属を蒸着させた金属フイルム部材に樹脂コーティングをした金属フィル ム部材を糸状に細長く裁断した金属フイルム糸によって編まれた編地部側を窓側に使 用することにより、生地に金属皮膜層を施した従来品と同等の太陽光などによる光、 熱を反射、遮断し紫外線遮蔽性、遮熱性、保温性、ミラー効果によって外部から内部 が見えにくい機能、を有することができる。また、樹脂コーティングされた金属フイ ルム糸を編み込むことにより、金属特有のぎらつきを抑制することでカーテン、ブラ インドの美観を向上することができる。
2)鎖編みした複数列の経糸の編み目をくぐって、金属フイルム糸を編み糸として使用し その経糸の1列分に相当する1針間またはそれ以上に渡って同列数分あるいは異列数 分、左右に振って編み込み、あるいはそれらの組み合わせによって編み込むことで後 加工が不要となり、従来技術の問題であった装置が大掛かりなために加工費が高価と なる事が解決され安価となる。また自由な幅、長さができるため、従来不可能だった 大きな布地の、カーテン、ブラインドを作ることができる。
3)通常の編み糸を別筬に使用し編み込むことによって金属フイルム糸によって編まれた 光沢を有する編地部側と通常の編み糸によって編まれた編地部側を構成させることに より、布地に金属加工する従来技術は表面にも金属の一部が付着してグレィッシュに なっていたものが、表裏がはっきり分離され、表面である室内側の装飾性が高まる。
4)ジャカードによる柄筬を表面側に追加し、通常の糸で編むことで、柄模様の入った編 地を作ることができる。
5)緯糸挿入機を用いて表面側に意匠性の高い糸を編み込むことで上質な編み地を作るこ とができる。
6)金属フイルム糸に他の糸を撚り合わせ、あるいは襷状に絡めた糸、を使用することにより、金属フイルム糸の伸びを防止することで編成しやすくなり、多種類の編み機で使用でき、商品構成が豊富になる。
7)地糸に樹脂コーティングを施さない通常の金属フイルム糸を使用した場合は金属の防 錆や金属の剥離防止、及び金属部輝度の調節に問題があったが、本発明の樹脂コーテ ィングによりこの問題も解決され、また、金属特有のぎらつきが抑制され、品質の向 上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明による金属フイルム糸によって編まれた、生地の裏面に相当する光沢を有する編地部側から見た組織図
【図2】通常の編み糸によって編まれた、生地の表面に相当する編地部側から見た組織図
【図3】フイルムに金属を蒸着した図
【図4】図3を糸状に裁断し、金属フイルム糸とした図
【図5】フイルムに金属を蒸着し、さらにフイルムを重ねた図
【図6】図5を糸状に裁断し、金属フイルム糸とした図
【図7】金属フイルム糸に他の糸を襷状に絡めた図
【図8】金属フイルム糸に他の糸を撚り合わせた図
【図9】従来技術1の図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下図面によって説明する。
【実施例】
図1は本発明を実施して実際の編み機上で編み上げる金属フイルム糸によって編まれた光沢を有する編地部側から見た組織図の一例である。図2は通常の編み糸によって編まれた図1の裏面に相当する編地部側から見た組織図である。▲1▼はポリエステル素材等による鎖編み糸であり、複数の縦の列を形成している。▲2▼は本発明を実現する金属フイルム糸である。例えば複数列の鎖編み糸の編み目をくぐって、1針間あるいはそれ以上にわたって左右に編み込む。▲3▼は金属フイルム糸以外の通常の糸であり、ポリエステル素材を使用することが多い。▲3▼は▲2▼と同様、鎖編み糸の編み目をくぐって編み込まれる。▲2▼、▲3▼とも編み糸の振り方に制限はなく、鎖編みした複数列の経糸の1列分に相当する1針間またはそれ以上に渡って同列数分あるいは異列数分、左右に振って編み込み、あるいはそれらの組み合わせによって編み込むこともある。ここで同列数分左右に振って編み込むとは、例えば2列分であれば2列分の経糸に渡って右方向に編み、次は2列分の経糸に渡って左方向に編むことを繰り返す。また異列数分左右に振って編み込むとは、例えば2列分の経糸に渡って右方向に編み、次は3列分の経糸に渡って左方向に編み、次は5列分に渡って右方向に編み、次は2列分に渡って左方向に編み込む如く、編む経糸列数が異なる編み方式を意味するものである。図1では金属フイルム糸である編み糸▲2▼が、編地表面側を構成するが、生地表面からみた図2においては編み糸▲2▼は編地裏面側を構成するため、生地の表面は通常の糸で構成され、裏面は金属フイルム糸で構成されるために輝度を有することになる。
また、鎖編みした経糸の編み目をくぐらずに、左右に振ることなく、金属フイルム糸又はフイルム糸を縦に挿入することも可能であるが、この場合は、求める機能を実現するためには、挿入する糸が経糸間の空間を埋めるだけの太さ、幅が必要となり、そのような糸を編み込むことは困難であり、また、編まれた場合、生地として風合い、装飾性に欠ける。
【0009】
図1で示した▲2▼なる金属フイルム糸はアルミ、錫、銀等などを使用するが、これらの金属部が直接表面に露出していると、金属の酸化、水分に反応などが生じ、また、金属のギラギラした光が装飾性を損なうため、図3の金属蒸着部の上に、樹脂コーティングを施すか、図5の様にさらにフイルムを重ねて、金属部をフイルムでサンドイッチ状にし、必要に応じてさらにその上に樹脂コーティングを施しても良い。また、フイルムには難燃性を有する物を使用する場合もあり、また樹脂コーティング剤に難燃性を有する原料を使用することもある。こうして出来た金属蒸着フイルム部材を図4、図6の如く糸状に細かく裁断する。裁断する幅は通常一寸(3.3cm)を80〜200に分割した値とする。
この場合、裁断された側面に金属蒸着部が一部露出するが、フイルムや樹脂が接触している金属部分に比べて、その露出部分は極めて僅かであるので、酸化の影響はほとんど受けない。また、太陽光などによる光、熱は、フイルム層または樹脂層を透過して金属皮膜部により反射、遮断されるため、紫外線遮蔽性、遮熱性、保温性、ミラー効果によって外部から内部が見えにくい機能、を有することになる。
【0010】
図7、図8は本発明に使用する金属フイルム糸に関するものであり、図4、図6で示した糸状に細かく裁断された金属フイルム糸▲4▼に、図7の如く▲5▼の糸を襷状に絡ませたり、図8の如く▲6▼の糸を撚り合わせて編み糸を構成して使用するものである。このようにすることで、フイルムだけでは伸びてしまう糸が安定し、編成が容易になり編地が丈夫になり、安価で品質の良いものとなる。
【0011】
以上の如き構成で出来上がった本発明の、カーテン、ブラインド生地は金属フイルム糸で編まれた編地部側を窓側に、通常の糸で編まれた編地部側を室内側にしてカーテン、ブラインドとして使用すれば太陽光などによる光、熱を反射、遮断し、紫外線遮蔽性、遮熱性、保温性、ミラー効果によって外部から内部が見えにくい機能、を得られて、その目的を達成できる。
また従来技術1と比較して、多種類の編み機で編み上げる事が出来るため、商品の多様性が向上し、機能を発揮する窓側面と装飾性が求められる室内側面がはっきり分離されるので、実用的で優美性があり、更に後処理不要なためトータル的に見て安価で付加価値の高いものとなる。また従来技術2と比較して、金属の防錆効果および、耐水性に優れ、金属の剥離を防ぎ、また金属の輝度を容易に調整できるものとなる。
【0012】
図9は従来技術1を示ものであり、ベタ生地▲7▼の片面にアルミ蒸着あるいはステンレスのスパッタリング加工により、光沢を有する金属皮膜部▲8▼を設け、窓側に金属皮膜側が来るようにして太陽光などによる光、熱を反射、遮断し、紫外線遮断性、遮熱性、保温性、ミラー効果によって外部から内部が見えにくい機能、を有するカーテン、ブラインドを実現させていたものである。
【産業上の利用可能性】
【0013】
本発明により作られる太陽光などによる光、熱を反射、遮断し、紫外線遮断性、遮熱性、保温性、ミラー効果によって外部から内部が見えにくい機能、を有するカーテン、ブラインドは通常の編み機で製作でき後処理不要で、防錆、耐水にも優れ、剥離に対しても強く、安価で、実用性、優美性、品質の均一性を備えたものであるので、工業的に大きな貢献が期待される。
【符号の説明】
【0014】
▲1▼鎖編み糸部、▲2▼編み糸部(金属フイルム糸)、▲3▼編み糸部(通常糸)、▲4▼金属フイルム糸部、▲5▼襷糸部、▲6▼撚り糸部、▲7▼ベタ生地部、▲8▼金属皮膜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鎖編みした複数列の経糸の編み目をくぐって、太陽光などによる光、熱を反射、遮断し、紫外線遮蔽性、遮熱性、保温性、ミラー効果によって外部から内部が見えにくい機能、を有するアルミ、錫、銀等の金属を、フイルムの片面或いは両面に蒸着した金属フイルム部材、または、片面金属蒸着面をフイルムでサンドイッチ状に挟んだ金属フイルム部材に、片面あるいは、両面に、難燃性を有する樹脂あるいは通常の樹脂によるコーティングを施し、糸状に細長く裁断した金属フイルム糸を編み糸として使用し、鎖編みした複数列の経糸の1列分に相当する1針間またはそれ以上に渡って同列数分あるいは異列数分、左右に振って編み込み、あるいはそれらの組み合わせによって編み込むことを特徴とする、カーテン、ブラインド。
【請求項2】
請求項1で使用されるフイルムの一方あるいは両方が難燃性を有する素材を用いた金属フイルム糸であることを特徴とする、カーテン、ブラインド。
【請求項3】
請求項1から2において、更に金属フイルム糸以外の通常の編み糸を使用し、編み立て用治具である別筬で同時に編み込むことによって、金属フイルム糸によって編まれた光沢を有する編地部側と通常の編み糸によって編まれた編地部側を構成させることを特徴とする、カーテン、ブラインド。
【請求項4】
請求項1から3において、柄出し用の治具であるジャカード用の柄筬を使用し、金属フイルム糸以外の通常の編み糸でジャカード柄を編成し生地の表面を構成させること、および緯糸挿入機を用いて、金属フイルム糸以外の通常の編み糸である緯糸が生地の表面を構成することを特徴とする、カーテン、ブラインド。
【請求項5】
請求項1から4において使用される金属フイルム糸に他の糸を撚り合わせ、あるいは襷状に絡めた糸、を使用することを特徴とする、カーテン、ブラインド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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