説明

カーテンウォールユニット、及びカーテンウォール

【課題】ショートサーキットを防止することができるとともに、外観にも優れたカーテンウォールユニット、及び該ユニットを備えるカーテンウォールを提供する。
【解決手段】カーテンウォールユニット10Aであって、横枠40、50、60及び縦枠20A、30Aにより形成される枠体15と、枠体により区画される枠内に配置される第一のガラスパネル70と、第一のガラスパネルと所定の間隔を有し、該第一のガラスパネルの一方の面に面を対向させて配置され、枠体により区画される枠内に具備される第二のガラスパネル75と、を備え、枠体、第一のガラスパネル、及び第二のガラスパネルにより囲まれる中空層Pが形成され、枠体の縦枠の一方の該縦枠には、中空層に通じる第一の流通口20Aaが1つ設けられ、縦枠の他方の該縦枠には、中空層に通じるとともに、第一の流通口より高い位置に第二の流通口30Aaが1つ設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物外周に並列されるカーテンウォールユニット、及び該カーテンウォールユニットを備えるカーテンウォールに関し、詳しくはダブルスキンカーテンウォールユニット、及びカーテンウォールに関する。
【背景技術】
【0002】
カーテンウォールは、予め組み立てておいたカーテンウォールユニットを建物躯体に金具により取り付けるだけでよいため、施工性に優れることに加え、近年におけるガラス基調の外観への要望にも対応できることから、新築及び建て替えビル等に採用されることが増えてきている。
【0003】
カーテンウォールユニットは、1枚のガラスパネルにより室内外を区切るシングルスキンカーテンウォール、及び室内外に所定の間隙を有して並列された複数(通常は2枚)のガラスパネルにより室内外を区切るダブルスキンカーテンウォールがある。このダブルスキンカーテンウォールでは、室外側に配置されるガラスパネルと室内側に配置されるガラスパネルとの間に中空層が形成される。このような中空層により、冬季等の寒い時期には、これが断熱層として機能し、室内側の暖房効率を向上させることができる。一方、夏季等の暑い時期には、中空層内の空気を換気することにより、直射日光により暖められたガラスパネルや中空層内に配置されたブラインド等の温度上昇を緩和することができ、これらの熱が室内へ流れることを抑制することが可能となることから、室内側の冷房効率を向上させることができる。
【0004】
近年における地球温暖化抑止の必要性に対応して、温室効果ガスの排出量を削減するための省エネルギーを実現する観点からも、上記したような冷暖房効率の向上を可能とするカーテンウォールユニットの構造が以前にも増して重要となっている。
【0005】
ところで、ダブルスキンカーテンウォールユニットでは、ガラスパネルを室内外方向に並列させるので、どうしても室内側にスペースを割く必要がある。従って、設置空間を可能な限り薄くすることが望ましい。しかし、このように薄型化をすると、中空層が狭くなり、通風量の減少や通風抵抗の増大により上記した換気の効率が悪くなる傾向にある。
【0006】
中空層を換気する手段として特許文献1が開示されている。特許文献1に記載のカーテンウォールでは、枠体を形成する下の横枠及び上の横枠に中空層に連通する換気口を設け、当該上下の換気口間で空気を流通させることができる。
【0007】
また、特許文献2に記載のカーテンウォールユニット(二重窓ユニット)では、枠体の縦枠に沿って中空層に連通する複数の孔を設け、これにより中空層内を換気することが可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4325806号公報
【特許文献2】特開2006−2395号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載のカーテンウォールでは、あるカーテンウォールユニットの上横枠に配置されている換気口と、その上に隣接するカーテンウォールの下横枠に配置されている換気口と、が上下に隣接して並列する。従って、下側のカーテンウォールユニットから流出した空気が再び上側のカーテンウォールユニットに流入するといういわゆるショートサーキットが起こり易く、換気の効率が低減してしまう。また、換気口を有する上下横枠が重なるため、カーテンウォールとして形成した際に横枠部分が厚くなり、外観上好ましくなかった。
【0010】
一方、特許文献2に記載されているカーテンウォールでは、複数の換気口のいずれもが縦枠に形成されているので、横枠が厚くなることを防止することができ、複数の孔が設けられて、ショートサーキットを低減することが可能とされている。しかしながら、空気の流れが縦方向に概ね同じライン上にあるため、依然としてショートサーキットの問題があった。
【0011】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、ショートサーキットを防止することができるとともに、外観にも優れたカーテンウォールユニット、及び該ユニットを備えるカーテンウォールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【0013】
請求項1に記載の発明は、建物の外周部に配置されるカーテンウォールユニット(10A、10B)であって、横枠(40、50、60)及び縦枠(20A、30A、20B、30B)により形成される枠体(15)と、枠体により区画される枠内に配置される第一のガラスパネル(70)と、第一のガラスパネルと所定の間隔を有し、該第一のガラスパネルの一方の面に面を対向させて配置され、枠体により区画される枠内に具備される第二のガラスパネル(75)と、を備え、枠体、第一のガラスパネル、及び第二のガラスパネルにより囲まれる中空層(P)が形成され、枠体の縦枠の一方の該縦枠には、中空層に通じる第一の流通口(20Aa、30Ba)が1つ設けられ、縦枠の他方の該縦枠には、中空層に通じるとともに、第一の流通口より高い位置に第二の流通口(30Aa、20Ba)が1つ設けられる、カーテンウォールユニットである。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のカーテンウォールユニット(10A、10B)において、縦枠(20A、30A、20B、30B)には、中空層(P)内への水の侵入を防止する水侵入防止手段(90、190、290、390)が具備されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のカーテンウォールユニット(10A、10B)を建物外周に沿って上下左右に並列して形成されるカーテンウォールであって、左右に配置されるカーテンウォールユニット間では、第一の流通口(20Aa、30Ba)が設けられた縦枠(20A、30B)が組み合わされるとともに、第二の流通口(30Aa、20Ba)が設けられた縦枠(30A、20B)が組み合わされることを特徴とする、カーテンウォールである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカーテンウォールユニット、及びカーテンウォールによれば、中空層内の換気に関して、ショートサーキットを防止することができ、中空層内の温度上昇を低く抑えることができる。これにより省エネルギーに貢献することが可能となる。
また、その外観に関しては、横枠が太くなることを抑制することができ、外観に優れたカーテンウォールユニット、及びカーテンウォールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】1つの実施形態に係るカーテンウォールの室外視正面図である。
【図2】水平に隣接する2つのカーテンウォールユニットに注目した図である。
【図3】図2にIII-IIIで示した矢視断面図である。
【図4】図2にIV-IVで示した矢視断面図である。
【図5】図2にV-Vで示した矢視断面図である。
【図6】図2にVI-VIで示した矢視断面図である。
【図7】図2にVII-VIIで示した矢視断面図である。
【図8】図2にVIII-VIIIで示した矢視断面図である。
【図9】水侵入防止手段に注目した図である。
【図10】水侵入防止手段190に注目した図である。
【図11】水侵入防止手段290に注目した図である。
【図12】水侵入防止手段390に注目した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の上記した作用及び利得は、次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。以下本発明を図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0019】
図1に1つの実施形態に係るカーテンウォールが構成された建物の外観の一部を示した。図1からわかるように、建物外壁の一態様であるカーテンウォールは、複数のカーテンウォールユニット10A、10A、…、10B、10B、…が建物躯体に上下左右に並列されて取り付けられることにより形成される。本実施形態では、図1からわかるように、カーテンウォールユニット10Aとカーテンウォールユニット10Bとが交互に水平方向に並列され、上下方向にはカーテンウォールユニット10A、10A、…又はカーテンウォールユニット10B、10B、…が並列されている。
【0020】
図2には水平方向に隣接する2つのカーテンウォールユニット10A、10Bに注目した外観視正面図を示した。
図3には図2にIII-IIIで示した矢視断面図、図4には図2にIV-IVで示した矢視断面図、図5には図2にV-Vで示した矢視断面図、図6には図2にVI-VIで示した矢視断面図、図7には図2にVII-VIIで示した矢視断面図、及び図8には図2にVIII-VIIIで示した矢視断面図をそれぞれ表わした。図3、図5では紙面左が室外側、紙面右が室内側である。図4、図6では紙面右が室外側、紙面左が室内側である。また、図7、図8では、紙面の下が室外側、紙面の上が室内側である。
図2〜図8及び適宜示す図を参照しつつカーテンウォールユニット10A、10Bについて説明する。
【0021】
カーテンウォールユニット10Aとカーテンウォールユニット10Bとは、縦枠20A、30A、20B、30Bにおける流通口としてのスリット20Aa、30Aa、20Ba、30Baの位置が異なるのみで、それ以外の形状(例えば断面形状等)は共通である。従って、はじめにスリット20Aa、30Aa、20Ba、30Ba以外の部位のカーテンウォールユニット10A、10Bの形態をカーテンウォールユニット10Aに代表させて説明する。そして、その後にスリット20Aa、30Aa、20Ba、30Baの態様について説明する。
【0022】
カーテンウォールユニット10Aは、図2からわかるように、枠体15、及び該枠体15により区画された枠内に配置される室外側ガラスパネル70、室内側ガラスパネル75(図3、図4参照)、スパンドレル部ガラスパネル80、ボード85(図3、図4参照)を備えている。
【0023】
枠体15は、縦枠20A、縦枠30A、及び横枠である上横枠40、下横枠50、中間横枠60が矩形枠状に組み合わせられて構成されている。ここでカーテンウォールユニット10Bでは縦枠20Bが縦枠20Aに相当し、縦枠30Bが縦枠30Aに相当する。
図2からよくわかるように、縦枠20A、30A、上横枠40、下横枠50により枠状が形成され、上横枠40と下横枠50との間に中間横枠60が縦枠20A、30A間を渡して区切るように配置される。これにより、縦枠20A、30A、中間横枠60、下横枠50により区画される第一区画部11、及び縦枠20A、30A、上横枠40、中間横枠60により区画される第二区画部12が形成される。第一区画部11は、建物の居住空間の建物外周部に対応する部位に配置され、第二区画部12は、各階の天井及び床に対応する部位に配置され、スパンドレル部と呼ばれることもある。
【0024】
上横枠40は、図3、図4にその断面が表れているように(ただし、この上横枠40は図2に実線で示したカーテンウォール10Aの下に配置されるカーテンウォール10Aの上横枠40である。断面は同一であり、説明のし易さからこれにより説明する。)、室内外方向(見込み方向)に延在する片41を有している。また、片41の室外側にはスパンドレル部ガラスパネル80の上端部を受け入れるガラスパネル取り付け部42が備えられ、室内側には、ボード85の上端部を受け入れるボード取り付け部43が具備される。また、片41の上面側には上に隣接するカーテンウォールユニット10Aの下横枠50の凸部54が係合する被係合部44を有している。
【0025】
下横枠50は、図3、図4にその断面が表れているように、室内外方向(見込み方向)に延在する片51を有している。片51の室外側には室外側ガラスパネル70の下端部を受け入れるガラスパネル取り付け部52が備えられ、室内側には、室内側ガラスパネル75の下端部を受け入れるガラスパネル取り付け部53が具備される。
また、片51の下面側には、下に隣接するカーテンウォールユニット10Aの上横枠40の被係合部44に係合する凸部54を有している。
【0026】
中間横枠60は、図3、図4にその断面が表れているように、室内外方向(見込み方向)に延在する片61を有している。片61の室外側には室外側ガラスパネル70の上端部を受け入れるガラスパネル取り付け部62が備えられ、室内側には、室内側ガラスパネル75の上端部を受け入れるガラスパネル取り付け部63が具備される。また、片61の下面にはブラインド13が垂下するように取り付けられている。
さらに、片61の室外側にはスパンドレル部ガラスパネル80の下端部を受け入れるガラスパネル取り付け部64を備え、室内側には、ボード85の下端部を受け入れるボード取り付け部65を具備する。
【0027】
縦枠20Aは、図7にその断面が表れているように、室内外方向(見込み方向)に延在する片21を有している。片21の室外側には室外側ガラスパネル70の側端部を受け入れるガラスパネル取り付け部22が備えられ、室内側には、室内側ガラスパネル75の側端部を受け入れるガラスパネル取り付け部23が具備される。
片21の面のうち、水平方向に隣接するカーテンウォールユニット10Bと組み合わされたときに、該隣接するカーテンウォールユニット10Bに面する面からは、見付方向に延在する片24、及び該片24より室内側に配置される片25を有している。
【0028】
縦枠30Aは、図8にその断面が表れているように、室内外方向(見込み方向)に延在する片31を有している。片31の室外側には室外側ガラスパネル70の側端部を受け入れるガラスパネル取り付け部32が備えられ、室内側には、室内側ガラスパネル75の側端部を受け入れるガラスパネル取り付け部33が具備される。
片31の面のうち、隣接するカーテンウォールユニット10Bと組み合わされたときに、該隣接するカーテンウォールユニット10Bに面する面からは、見付方向に延在する片34、及び該片34より室内側に配置される片35を有している。片34、片35の先端にはそれぞれパッキンが備えられている。
【0029】
室外側ガラスパネル70は、図2〜図8からわかるように、上記枠体15の第一区画部11のうち、室外側に配置される第一のガラスパネルである。従って、その4辺が縦枠20A、縦枠30A、下横枠50、及び中間横枠60のそれぞれのガラスパネル取り付け部22、32、52、62にパッキン材とともに水密気密が確保されて取り付けられている。
【0030】
室内側ガラスパネル75は、図3〜図8からわかるように、上記枠体15の第一区画部11のうち、室内側に配置される第二のガラスパネルであり、複層ガラスパネルである。従って、室外側ガラスパネル70と室内側ガラスパネル75とは室内外に所定の間隔を有して並列される。室内側ガラスパネル75の4辺は縦枠20A、縦枠30A、下横枠50、及び中間横枠60のそれぞれのガラスパネル取り付け部23、33、53、63にパッキン材とともに水密気密が確保されて取り付けられている。
【0031】
スパンドレル部ガラスパネル80は、図2〜図8からわかるように、上記枠体15の第二区画部12のうち、室外側に配置されるガラスパネルである。従って、その4辺が縦枠20A、縦枠30A、上横枠40、及び中間横枠60のそれぞれのガラスパネル取り付け部22、32、42、64にパッキン材とともに水密気密が確保されて取り付けられている。
【0032】
ボード85は、図3〜図8からわかるように、上記枠体15の第二区画部12のうち、室内側に配置され、その内側を室外視から隠蔽する板状部材である。従って、スパンドレル部ガラスパネル80とボード85とは室内外に所定の間隔を有して並列される。ボード85の4辺は縦枠20A、縦枠30A、上横枠40、及び中間横枠60のそれぞれにパッキン材とともに水密気密が確保されて取り付けられている。
【0033】
以上のように組み合わされたカーテンウォールユニット10Aでは、図3〜図8からわかるように、第一区画部11において、その四方を縦枠20A、縦枠30A、中間横枠60、及び下横枠50で囲まれ、その室内外面を室外側ガラスパネル70及び室内側ガラスパネル75で閉鎖された中空層Pが形成される。
【0034】
次に流通口としてのスリット20Aa、30Aa、20Ba、30Baについて説明する。
スリット20Aaは、図2、図4からわかるように、縦枠20Aのうちカーテンウォールユニット10Aの中空層Pに面する部位で、該中空層Pの下部に配置される第一の流通口である。スリット20Aaは片21を貫通し、カーテンウォールユニット10Aの中空層P内と外部とを連通している。
スリット30Aaは、図2、図3からわかるように、縦枠30Aのうちカーテンウォールユニット10Aの中空層Pに面する部位で、該中空層Pの上部に配置される第二の流通口である。スリット20Aaは片31を貫通し、カーテンウォールユニット10Aの中空層P内と外部とを連通している。
ここで、スリット30Aaは、スリット20Aaよりも高い位置に配置される。スリット20Aaとスリット30Aaとの高低差は特に限定されるものではないが、後述するように、空気の密度低下による浮力で空気をスリット30Aaから流出させるので、できるだけ大きい高低差があることが好ましい。
【0035】
また、スリット20Aa、30Aaの開口面積は空気の流入・流出が円滑に行われる観点から決められる。当該開口面積を決める1つの例として相当開口面積による考えから開口面積の大きさ等を得ることも可能である。相当開口面積とは、換気に有効な面積を意味するもので、αA(cm)で表され、次式(1)から求められる。
αA=2.78(γ/2g)1/2・Q・(Δp)(1/n−0.5) (1)
ここで、γは空気の密度(kg/m)、Qは内外差圧Δp=1mmAq(9.8Pa)の時の漏気量Q(m/h)、gは重力加速度(m/s)、nは隙間特性を表す係数(層流時は1、乱流時は2の値をとる。)、及びαは流量係数を意味する。
【0036】
一方、カーテンウォールユニット10Bの方に具備されるスリット20Baは、図2、図6からわかるように、縦枠20Bのうちカーテンウォールユニット10Bの中空層Pに面する部位で、該中空層Pの上部に配置される第二の流通口である。スリット20Baは片21を貫通し、カーテンウォールユニット10Bの中空層P内と外部とを連通している。
スリット30Baは、図2、図5からわかるように、縦枠30Bのうちカーテンウォールユニット10Bの中空層Pに面する部位で、該中空層Pの下部に配置される第一の流通口である。スリット20Baは片31を貫通し、カーテンウォールユニット10Bの中空層P内と外部とを連通している。
ここで、スリット20Baは、スリット30Baよりも高い位置に配置される。スリット20Baとスリット30Baとの高低差は特に限定されるものではないが、後述するように、空気の密度低下による浮力で空気をスリット20Baから流出させるので、できるだけ大きい高低差があることが好ましい。
スリット20Ba、30Baの開口の大きさについては上記したスリット20Aa、20Baと共通するので説明を省略する。
【0037】
本実施形態では、中間横枠60が室外側に露出する位置まで達することにより、第一区画部11と第二区画部12とでは異なるガラスパネル(室外側ガラスパネル70及びスパンドレル部ガラスパネル80)とを配置した。しかし、これに限定されるものでなく、例えば第一区画部と第二区画部とで水密気密が取られれば中間横枠は室外側に露出せず、第一区画部と第二区画部とが共通の1枚の室外側のガラスパネルを有していてもよい。
【0038】
上記したカーテンウォールユニット10A、10Bが他のカーテンウォールユニット10A、10Bと組み合わされる際には、次のようになされる。
あるカーテンウォールユニット10Aと、この下方に隣接して組み合わされるカーテンウォールユニット10Aとは、図3、図4によく表れている。すなわち、上側に配置されるカーテンウォールユニット10Aの下横枠50に具備される凸部54が、下側に配置されるカーテンウォールユニット10Aの上横枠40に具備される被係合部44に係合する。同様に、図5、図6によく表れているように、上側に配置されるカーテンウォールユニット10Bの下横枠50に具備される凸部54が、下側に配置されるカーテンウォールユニット10Bの上横枠40に具備される被係合部44に係合する。
【0039】
一方、水平方向に隣接するカーテンウォールユニット10A、10Bの組み合わせは、図7に表れているように、次のようなものとなる。すなわち、カーテンウォール10Aの縦枠20Aの片24に、これに隣接するカーテンウォールユニット10Bの縦枠30Bの片34がパッキンを介して密着される。同様に、縦枠20Aの片25に、これに隣接するカーテンウォールユニット10Bの縦枠30Bの片35がパッキンを介して密着される。また、ガラスパネル取り付け部23と、これに隣接するカーテンウォールユニット10Bの縦枠30Bのガラスパネル取り付け部33とがパッキンを介して密着される。
この際には縦枠20Aと縦枠30Bとの間に中空層P、P、スリット20Aa、30Ba、及び室外を通じる流通路が形成される。
【0040】
同様に、図8に表れているように、カーテンウォール10Bの縦枠20Bの片24に、これに隣接するカーテンウォールユニット10Aの縦枠30Aの片34がパッキンを介して密着される。また、縦枠20Bの片25に、これに隣接するカーテンウォールユニット10Aの縦枠30Aの片35がパッキンを介して密着される。ガラスパネル取り付け部23と、これに隣接するカーテンウォールユニット10Bの縦枠30Bのガラスパネル取り付け部33とがパッキンを介して密着される。
この際には縦枠20Bと縦枠30Aとの間に中空層P、P、スリット20Ba、30Aa、及び室外を通じる流通路が形成される。
【0041】
カーテンウォール10A、10Bの上記した組み合わせ、及び具備されるスリット20Aa、30Aa、20Ba、30Baにより、図2に示したように、中空層Pの低い位置に配置された第一の流通口であるスリット20Aa及び30Baは、互いに向き合って組み合わされた縦枠20A、30Bに具備される。一方、中空層Pの高い位置に配置された第二の流通口であるスリット30Aa、20Baは、互いに向き合って組み合わされた縦枠30A、20Bに具備される。
【0042】
以上のようなカーテンウォールユニット10A、10B、…により建物に形成されたカーテンウォールによれば、空気の流入通路、及び流出通路が縦枠に配置されているので、横枠が太くなることを抑制することができる。従って、外観にも優れたカーテンウォールを構成することが可能となる。
例えば、1つの建物において外壁が面している方角により、シングルスキンカーテンウォールとダブルスキンカーテンウォールとを使い分ける場合に、その外観を統一しするに際し、横枠が太すぎることのない好ましい態様で統一することができる。
また、枠が太くなることが抑制されることによって、その汚れも少なく、また目立たなくなる。特に、給排気のための露出した大型水返し部材(いわゆるガラリ)が必要ないので、その汚れによる外観の不具合を防止することができる。これに加えて、部材や通気口の構成が簡素化され、カーテンウォールを安価に提供することが可能となった。
【0043】
カーテンウォールユニット10A、10B、…を備えるカーテンウォールによれば、中空層P内の空気は次のように換気される。図1〜図8を参照しつつ説明する。
はじめに、日射等により室外側ガラスパネル70、室内側ガラスパネル75、ブラインド13等が暖められ、中空層P内の空気が加熱されるので、中空層P内の空気は暖められるとともに、その密度が小さくなる。
このように密度の小さくなった空気は上昇し、縦枠20B、30Aの第二の流通口であるスリット20Ba、30Aaから順次空気を押し出すように中空層P内の空気が外に流出される。このとき、空気は図1、図3、図6、図8にQ、Q、…で示したように、中空層Pから室外へ流れる。
【0044】
一方、中空層Pからの空気の流出にともない、縦枠20A、30Bの第一の流通口であるスリット20Aa、30Baからは中空層P内に吸い込まれるように空気が流入する。この空気は図1、図4、図5、及び図7にR、R、…で示したように室外から中空層P、Pに流入する。流入される空気は外気であり、少なくとも中空層P、Pで暖められた空気よりは低い温度であるから、これにより室外側ガラスパネル70、室内側ガラスパネル75、ブラインド13等が冷却される。
【0045】
以上のような日射による加熱及び空気の移動が繰り返し連続的におこなわれることにより、中空層P、P、…内が、空気の移動がない場合に比べて低い温度で安定し、室内側の冷房効率の低下を抑制することが可能となる。
【0046】
ここでカーテンウォールユニット10A、10B、…によるカーテンウォールでは、空気が流入するための流通路と、空気が流出するための流通路と、が鉛直方向(上下方向)の同じライン上に存しないので、中空層Pから流出した空気が再び中空層P内に流入することがない。これによりショートサーキットを防止することができ、中空層P内の空気をより低い温度で安定させることが可能となる。
また、同じライン上の存する流通路同士についても、上下に隣接するカーテンウォールにおいて、第一区画部間に第二区画部(スパンドレル部)が配置されるので十分な距離が確保され、ショートサーキットを防止することができる。
【0047】
また、本実施形態のカーテンウォールユニット10A、10B、…では、スリット20Aa、30Aa、20Ba、30Baから中空層P、P、…内へ雨水が侵入することを防止するため、水侵入防止手段90が備えられる。図9により説明する。図9は図7のうち、縦枠20A、30Bの部分に注目して拡大した図である。
【0048】
水侵入防止手段90は、第一部材91及び第二部材92を備えている。第一部材91は、図9からわかるようにその断面が略L字状を有する部材である。第一部材91のL字状の一方の片である片91a側の端部には該片91aに直交するように取り付け片91bが設けられている。またL字状の他方の片である片91c側には、その面に複数の突起91d、91d、…が立設されている。また、当該片91cの端部91eは、片91a側と同じ方向に曲げられている。
【0049】
一方、第二部材92は、その断面において折れ線状に形成された3つの片92a、92b、92cを備えている。
【0050】
第一部材91及び第二部材92は、図9からわかるように、カーテンウォールユニット10A、10Bが組み合わされたときに、片21、片31、片24、34、及びガラスパネル取り付け部22、32により囲まれる空間内に配置される。より詳しくは次の通りである。
第一部材91は縦枠30Bに取り付けられ、その際には片91aが見込み方向に延在し、片91cが隣接するカーテンウォールユニット10Aの縦枠20Aの方向に延在する向きとされる。そして、片91cの突起91d、91d、…はガラスパネル取り付け部22、32が配置される側に向けられる。図9からわかるように、片91cは、ガラスパネル取り付け部22、32間の間隙の見込み方向室内側を横切るように形成されている。
【0051】
第二部材92は縦枠20Aに取り付けられ、その際には、片92aがガラスパネル取り付け部22の室内側面に固定される。また、片92bは、隣接するカーテンウォールユニット10Bの縦枠30Bの方向で、室内側に傾くように延在する。片92cは、片92bの先端からさらに縦枠30Bの方向に延在する。第二部材92では、片92b、片92cによりガラスパネル取り付け部22、32間の間隙の見込み方向室内側を横切るように形成されている。
【0052】
上記した水侵入防止手段90によれば、図9にTで示した方向から雨水がガラスパネル取り付け部22、32間に侵入しても、第二部材92により雨水のこれ以上の侵入が抑制される。さらには、第一部材91によってもこれ以上の雨水の侵入が抑制され、スリット20Aa、30Baから中空層P、Pへの雨水の侵入が防止される。
【0053】
ここで、第二部材91の片91cには突起91d、91d、…が設けられ、端部91eも具備されているので、ここで雨水の移動が妨害され、効果的にその侵入を防止している。
【0054】
ここでは、縦枠20Aと縦枠30Bとの間に配置される水侵入防止手段について説明したが、縦枠30Aと縦枠20Bとの間にも当該水侵入防止手段が配置され、同様に水の侵入を防いでいる。
水侵入防止手段90は、スリット20Aa、30Baが具備される位置付近に設置されていればよい。従って、縦枠20A、30Bの全長に亘って延在している必要はなく、スリットの縦枠20A、30Bの長手方向に沿った方向の大きさと同じ程度乃至100mm長いくらいがよい。これにより、長手方向全長に亘って延在する場合に比べ、コストを抑え、通気抵抗を低く抑えることもできる。
【0055】
図10〜図12は、他の形態の水侵入防止手段190、290、390のそれぞれを説明するための図である。図10〜図12は、図9に相当する図である。
【0056】
図10に表わした水侵入防止手段190は、第一部材191及び第二部材192を備えている。第一部材191と第二部材192とは、対称の形状を有しているので、ここでは第一部材191のみについて説明する。
第一部材191は、図10からわかるように、見付方向に短い片191a、及び見込み方向に長い片191bである断面略L字状を有する部材である。片191aは、室外側ガラスパネル70の側端部の室外側面を押さえる片も兼ねている。
一方、片191bは、片191aの端部から、片21、片31、片24、34、及びガラスパネル取り付け部22、32により囲まれる空間内にまで室内側に延在する。ここで、片191bの室内側端部は、片21側とは反対側に向かって見付方向に曲げられている。また、片191bの面のうち、片21と対向する側とは反対側の面からは、見込み方向に並列された複数の突起191c、191c、…が設けられている。
【0057】
上記した水侵入防止手段190によれば、図10にUで示した方向から雨水がガラスパネル取り付け部22、32間に侵入しても、第一部材191と第二部材192との間の狭い空間が長く形成されているので、流路抵抗が大きいことから雨水のこれ以上の侵入が抑制される。さらには、突起191c、191c、…、192c、192c、…により室内側への水の流動が妨害され、効果的に水の侵入を防止している。一方、図10から明らかなように、空気の流通路は確保されているので、中空層P、Pを介しての空気の移動が阻害されることはない。
【0058】
水侵入防止手段190は、スリット20Aa、30Baが具備される位置付近に設置されていればよい。従って、縦枠20A、30Bの全長に亘って延在している必要はなく、スリット20Aa、30Baの縦枠20A、30Bの長手方向に沿った方向の大きさと同じ程度乃至100mm長いくらいがよい。これにより、長手方向全長に亘って延在する場合に対し、コストを抑え、通気抵抗を低く抑えることもできる。
【0059】
図11に表わした水侵入防止手段290は、第一部材291及び第二部材292を備えている。第一部材291と第二部材292とは、対称の形状を有しているので、ここでは第一部材291のみについて説明する。
第一部材291は、図11からわかるように、ガラスパネル取り付け部22の室内側角部に設けられ、室内側に延在する片である。ここで、第一部材291の室内側端部は、片21側とは反対側に向かって見付方向に曲げられている。
【0060】
上記した水侵入防止手段290によれば、図11にVで示した方向から雨水がガラスパネル取り付け部22、32間に侵入しても、第一部材291と第二部材292との間の狭い空間が長く形成されているので、流路抵抗が大きいことから雨水のこれ以上の侵入が抑制される。一方、図11から明らかなように、空気の流通路は確保されているので、中空層P、Pを介しての空気の移動が阻害されることはない。
【0061】
水侵入防止手段290は、スリット20Aa、30Baが具備される位置付近に設置されていればよい。従って、縦枠20A、30Bの全長に亘って延在している必要はなく、スリットの縦枠20A、30Bの長手方向に沿った方向の大きさと同じ程度乃至100mm長いくらいがよい。これにより、長手方向全長に亘って延在する場合に比べ、コストを抑え、通気抵抗を低く抑えることもできる。
【0062】
図12に表わした水侵入防止手段390は、片391と片392とを備えている。片391は、図12からわかるように、ガラスパネル取り付け部32の室外側角部に設けられ、室外側に延在する片である。そして片392は、片391の室外側先端部から見付方向に延在する片である。ここで、片392は、ガラスパネル取り付け部22と32との間の見込み方向室外側を横切るように設けられる。従って、水侵入防止手段390によれば、図12にWで示した方向からの雨水は、片392に当たり、ガラスパネル取り付け部22、32間に侵入することができない。一方、図12から明らかなように、空気の流通路は確保されているので、中空層P、Pを介しての空気の移動が阻害されることはない。
【0063】
水侵入防止手段390は、スリット20Aa、30Baが具備される位置付近に設置されていればよい。従って、縦枠20A、30Bの全長に亘って延在している必要はなく、スリットの縦枠20A、30Bの長手方向に沿った方向の大きさと同じ程度乃至100mm長いくらいがよい。これにより、長手方向全長に亘って延在する場合に比べ、コストを抑え、通気抵抗を低く抑えることもできる。
ただし、水侵入防止手段390は室外に露出して表れることから、外観の観点から、水侵入防止手段390が縦枠20A、30Bの長手方向に沿って長く延在してもよい。これによっても水侵入防止手段390としての機能は有する。
【0064】
以上、現時点において、実践的でありかつ好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は、本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うカーテンウォールユニット及び該カーテンウォールユニットが配置されたカーテンウォールもまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
【符号の説明】
【0065】
10A、10B カーテンウォールユニット
15 枠体
20A、30A、20B、30B 縦枠
20Aa スリット(第一の流通口)
20Ba スリット(第二の流通口)
30Aa スリット(第二の流通口)
30Ba スリット(第一の流通口)
40 上横枠(横枠)
50 下横枠(横枠)
60 中間横枠(横枠)
70 室外側ガラスパネル(第一のガラスパネル)
75 室内側ガラスパネル(第二のガラスパネル)
90、190、290、390 水侵入防止手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外周部に配置されるカーテンウォールユニットであって、
横枠及び縦枠により形成される枠体と、
前記枠体により区画される枠内に配置される第一のガラスパネルと、
前記第一のガラスパネルと所定の間隔を有し、該第一のガラスパネルの一方の面に面を対向させて配置され、前記枠体により区画される枠内に具備される第二のガラスパネルと、を備え、
前記枠体、前記第一のガラスパネル、及び前記第二のガラスパネルにより囲まれる中空層が形成され、
前記枠体の前記縦枠の一方の該縦枠には、前記中空層に通じる第一の流通口が1つ設けられ、前記縦枠の他方の該縦枠には、前記中空層に通じるとともに、前記第一の流通口より高い位置に第二の流通口が1つ設けられる、カーテンウォールユニット。
【請求項2】
前記縦枠には、前記中空層内への水の侵入を防止する水侵入防止手段が具備されていることを特徴とする請求項1に記載のカーテンウォールユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカーテンウォールユニットを建物外周に沿って上下左右に並列して形成されるカーテンウォールであって、
左右に配置される前記カーテンウォールユニット間では、前記第一の流通口が設けられた前記縦枠が組み合わされるとともに、前記第二の流通口が設けられた前記縦枠が組み合わされることを特徴とする、カーテンウォール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−111833(P2011−111833A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−270584(P2009−270584)
【出願日】平成21年11月27日(2009.11.27)
【出願人】(302045705)トステム株式会社 (949)
【Fターム(参考)】