説明

カーテンウォール構造

【課題】ガラス面の外側に防火用水膜を形成できながら、カーテンウォールの外観の意匠性を向上させることができる。
【解決手段】形成するカーテンウォールWの壁面に沿って上下左右に並設される複数のカーテンウォール用板ガラス4と、カーテンウォール用板ガラス4を建物に支持させる支持部材5と、カーテンウォールWの外面に沿って防火用水膜を形成可能な水吐出手段6とが設けられ、水吐出手段6の水吐出部は、カーテンウォールWを貫通して外面に臨む状態に設けてあり、その水吐出部の壁厚み方向での外方に、目隠し部材7が設置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下左右に複数のカーテンウォール用板ガラスを並設して構成してあるカーテンウォール構造であって、隣接建物の火災がこちらの建物に延焼するのを防止するために、ガラス面の外側に防火用水膜を形成できるようにドレンチャーヘッドを設けてあるカーテンウォール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のカーテンウォール構造としては、前記カーテンウォール用板ガラスに沿って防火用水膜を形成可能な水吐出手段を、前記板ガラスの室内側に設けてあった(例えば、特許文献1参照)。
しかし、隣接建物の火災に対する延焼防止効果を考慮すると、前記水吐出手段は、前記板ガラスの室外側に設けてあることが好ましく、この事は、前記特許文献1にも文章のみで記載されている。
このような状況を考慮すると、前記水吐出手段を構成する水配管や、その水配管の先端に取り付くドレンチャーヘッドは、建物の外壁に沿わせて配置することが考えられる。
【0003】
【特許文献1】特開2007−181555号公報(段落番号〔0038〕〜〔0039〕、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来のカーテンウォール構造によれば、水吐出手段(水配管やドレンチャーヘッド)がカーテンウォール外面に露出した状態となり、本来、板ガラスを使用した美観性の高い外観を備えたカーテンウォールと対照的であり、外観の意匠性に欠けやすい問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、ガラス面の外側に防火用水膜を形成できながら、カーテンウォールの外観の意匠性を向上させることができるカーテンウォール構造を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の特徴構成は、形成するカーテンウォールの壁面に沿って上下左右に並設される複数のカーテンウォール用板ガラスと、前記カーテンウォール用板ガラスを建物に支持させる支持部材と、前記カーテンウォールの外面に沿って防火用水膜を形成可能な水吐出手段とが設けられ、前記水吐出手段の水吐出部は、前記カーテンウォールを貫通して外面に臨む状態に設けてあり、その水吐出部の壁厚み方向での外方に、目隠し部材が設置してあるところにある。
【0007】
本発明の第1の特徴構成によれば、前記カーテンウォールの外面に沿って防火用水膜を形成可能な水吐出手段が設けられ、前記水吐出手段の水吐出部は、前記カーテンウォールを貫通して外面に臨む状態に設けてあるから、前記水吐出部から吐出させた水膜は、カーテンウォールの外側ガラス面に沿わせて形成され、延焼防止効果をより高く維持することが可能となる。
また、前記水吐出部に水を送る水配管は、カーテンウォールの壁裏面側に設置することができ、壁表面側の露出部材を少なくできる。更には、前記目隠し部材で、水吐出部を目隠しすることができので、カーテンウォール表面側の意匠性をより向上させることができる。
【0008】
本発明の第2の特徴構成は、前記水吐出部は、ドレンチャーヘッドであり、前記支持部材は、方立と無目とを備えて構成してあり、前記水吐出部は、前記無目を貫通する状態に設けてあるところにある。
【0009】
本発明の第2の特徴構成によれば、各カーテンウォール用板ガラスは、方立てと無目とから構成される縦・横の支持部材によって、バランスの良い状態に取り付けられる。
また、水吐出部は、無目を貫通する状態に設けてあるから、水吐出部のみならず水配管も含めた水吐出部手段も、安定した状態に支持させることができ、ドレンチャーヘッドの位置保持をより確実なものとしている。
よって、火災時の水膜形成による延焼防止を、より確実に行うことができる。
【0010】
本発明の第3の特徴構成は、前記目隠し部材は、前記ドレンチャーヘッドに対するディフューザの機能を備えさせてあるところにある。
【0011】
本発明の第3の特徴構成によれば、目隠し部材でありながら、吐出される水を水膜となり易い状態に誘導するディフューザとしての機能を併せもつことで、水吐出部周りの納まりをより簡単な構造にでき、ガラス面からの突出寸法を小さくして、よりシンプルな外観にできることで意匠性の向上を図ることができる。
また、水平方向に延伸される目隠し兼ディフューザ部材を使用すれば、広い幅にわたって均質な水膜を形成でき、より確実に延焼防止を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明のカーテンウォール構造を採用した建物Bを示すものである。
前記建物Bは、複数階層で構成されている。
前記建物Bの躯体は、各階層とも、柱1、梁2、床板3を備えて構成されている。
また、建物Bの壁面には、複数のカーテンウォール用板ガラス4が、壁面に沿って上下左右に並設してあり、それら複数の板ガラス4によってカーテンウォールWが構成されている。
【0014】
因みに、建物Bの躯体の壁側開口部には、壁面に沿って各階層にわたる状態で、且つ、横に間隔をあけた状態に複数の方立5Aが固定してあると共に、横方向に隣接する方立5Aにわたって無目5Bが取り付けてある。
また、上下一対の方立5Aと、左右一対の無目5Bとで構成される矩形フレームの空間に、前記板ガラス4がシール部を介して壁表裏の密閉を図れる状態に取り付けられている。
即ち、前記方立5Aと無目5Bとによって前記板ガラス4が建物に支持されており、これら、方立5Aと無目5Bとで、支持部材5が構成されている。
支持部材5は、金属で構成してあり、例えば、押出成形等によって形成してある。
【0015】
当該カーテンウォールWには、その外面に沿って防火用水膜を形成可能な水吐出手段6が設けられている。
水吐出手段6は、図2に示すように、水配管6Aと、その水配管6Aの先端に取り付くドレンチャーヘッド(水吐出部に相当)6Bとを備えて構成してある。
水配管6Aは、室内の配管スペースから、天井裏空間を通して、先端側が前記無目5Bを貫通する状態に設置されている。
無目5Bの貫通位置は、無目5Bのスパンのほぼ中央部分に設定してある(図1参照)。
また、前記ドレンチャーヘッド6Bは、図3に示すように、無目5Bの貫通した位置で頭部が外方に突出する状態に取り付けられている。ドレンチャーヘッド6Bの周面の内、下方の周面には、水を膜状に吹き出す為のスリットSが形成してあり、前記水配管6Aから送られる水を、このスリットSを通過させることで、図に示すように、板ガラス4のほぼ前面に拡がる水膜として吐出することができる。
ドレンチャーヘッド6Bは、各無目5Bに取り付けてあり、カーテンウォールWの表面のほぼ全域にわたって水膜を形成することで、隣接建物からの火炎や火の粉の悪影響を緩和でき、延焼防止を図ることができる。
【0016】
また、図3に示すように、ドレンチャーヘッド6Bの前面側には、無目5Bの上縁から垂下したカバー部(目隠し部材の一例)7が被さる状態に配置されている。
カバー部7は、無目5Bの全長にわたって形成されており(図1参照)、カーテンウォールWの正面からは、前記水吐出手段6の存在が判らないように形成してある。
【0017】
尚、図には示さないが、当該水吐出手段6からの水の吐出を制御するのは、例えば、カーテンウォールWの外面に火災センサー等の検知手段を設置しておき、その検出結果をもとに水吐出指令を発令するように制御手段を形成するものであったり、まったくの手動操作によって水吐出を実行するものであってもよい。
【0018】
当該実施形態のカーテンウォール構造によれば、カーテンウォール表面側への水吐出手段6の露出を、前記カバー部7によって防止でき、カーテンウォール表面の意匠性の低下を防止できながら、前記ドレンチャーヘッド6Bから吐出させた水膜によって、延焼防止効果をより高く維持することが可能となる。
また、ドレンチャーヘッド6Bは、建物躯体に取り付けられた無目を貫通する状態に設けてあるから、安定した状態に支持させることができ、ドレンチャーヘッドの位置保持をより確実なものとすることによって、火災時の水膜形成、及び、延焼防止を、より確実に行うことができる。
【0019】
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
【0020】
〈1〉 カーテンウォール用板ガラスの固定形式は、先の実施形態で説明し方立5Aと無目5Bとからなる支持部材5によって取り付けられるものに限るものではなく、例えば、板ガラス4に設けたボルト穴に固定用ボルトを挿通して固定する形式(所謂「DPG構法」)や、板ガラス4のコーナーやエッジの目地部分を通して固定用挟持部材を取り付けて固定する形式(所謂「EPG構法」、「PFG構法」)等であってもよい。
従って、支持部材5も、先の実施形態で説明した方立5Aと無目5Bに限るものではなく、板ガラスの固定形式の変更に応じて、自由に変更することができる。
〈2〉 水吐出部6Bは、先の実施形態で説明した無目5Bを貫通する状態に設けてあるものに限るものではなく、例えば、無目5B以外の支持部材5を貫通する状態や、板ガラス4そのものを貫通する状態や、板ガラス4どうしの目地部を貫通する状態に設けてあってもよい。要するに、カーテンウォールWを貫通して外面に臨む状態に設けてあればよい。
〈3〉 水吐出部6Bを目隠しする目隠し部材7は、先の実施形態で説明した無目5Bに一体に形成されたカバー部に限るものではなく、単独の部材で構成してあってもよい。形状も、帯状に限らず、自由に設定することができる。
〈4〉 前記目隠し部材7は、先の実施形態で説明したように、単に、ドレンチャーヘッドを目隠しする機能のみを備えたものに限らず、例えば、図4に示すように、前記ドレンチャーヘッドに対するディフューザの機能を備えさせてあるものであってもよい。
即ち、ドレンチャーヘッドから吐出された水を、カーテンウォールWの表面に沿った水膜となるように誘導する誘導面7aを、目隠し部材7の裏面部分に形成しておき、ドレンチャーヘッドに対する目隠し作用を発揮しながら、ディフューザとしての水誘導作用をも発揮できるように構成してあってもよい。
【0021】
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】カーテンウォールの正面図
【図2】水吐出手段の設置状況を示す要部断面図
【図3】水吐出手段の設置状況を示す要部断面図
【図4】別実施形態のカーテンウォールの要部断面図
【符号の説明】
【0023】
4 カーテンウォール用板ガラス
5 支持部材
5A 方立
5B 無目
6 水吐出手段
6B ドレンチャーヘッド(水吐出部に相当)
7 カバー部(目隠し部材の一例)
W カーテンウォール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
形成するカーテンウォールの壁面に沿って上下左右に並設される複数のカーテンウォール用板ガラスと、
前記カーテンウォール用板ガラスを建物に支持させる支持部材と、
前記カーテンウォールの外面に沿って防火用水膜を形成可能な水吐出手段とが設けられ、
前記水吐出手段の水吐出部は、前記カーテンウォールを貫通して外面に臨む状態に設けてあり、その水吐出部の壁厚み方向での外方に、目隠し部材が設置してあるカーテンウォール構造。
【請求項2】
前記水吐出部は、ドレンチャーヘッドであり、前記支持部材は、方立と無目とを備えて構成してあり、前記水吐出部は、前記無目を貫通する状態に設けてある請求項1に記載のカーテンウォール構造。
【請求項3】
前記目隠し部材は、前記ドレンチャーヘッドに対するディフューザの機能を備えさせてある請求項1又は2に記載のカーテンウォール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−59735(P2010−59735A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228411(P2008−228411)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】