説明

カーテンウォール

【課題】 部品点数を増やすことなく、カーテンウォールの耐風圧荷重を向上させるとともに、施工性にも優れたカーテンウォールを提供する。
【解決手段】 建物の外壁をなす外装材としての複数のサッシ12.12・・と、建物の構造部材である上下の梁20と、コンクリート基礎21との間に立設されるバックマリオン材14と、該バックマリオン材14と、外装材であるサッシ12,12・・の背面側を連結するブラケット18とを具備して構成されるカーテンウォール10において、バックマリオン材に張力を加える張力調節手段16が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンウォールに係わり、特に、カーテンウォールを支持するバックマリオン材の構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
建物の外壁面をガラス貼りとしたり、金属パネル貼りにするなどの場合に、用いられるカーテンウォール工法は、軽量化、断熱性の向上、現場作業の削減(工期の短縮)が可能になる等の様々な利点を有する工法である。カーテンウォールは、ガラスや金属パネルなどの外装材と、建物躯体の構造部材との間に、ガラスや、金属パネルを支持するマリオン材を、鉄骨などの構造部材に取り付けることにより、外壁面を構成している。つまり、ガラスや金属パネルの外装材は、マリオン材を介して躯体の構造部材に取り付けられている。
【0003】
特開平9-4104号公報は、従来のカーテンウォールの公知例を示している。同公報記載の発明は、外装材を支持する方立を、躯体に対し結合金具を用いて結合し、この結合金具はボルト・ナットを使用することなく、躯体に接合されるため、外観を損なうことなく、カーテンウォールの施工を可能ならしめると言った発明である。このため、従来必要だった金具類(ボルト・ナット等を含む)を覆うカバーが不要となり、且つアングル材を用いていないので部品点数が削減されるとともに、位置調整が容易となる長所を有するとされている。
【特許文献1】特開平9-4104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した特開平9-4104号公報記載のカーテンウォールとその施工方法に関する発明は、結合金具のカバー、ボルト・ナット等が不要となる利点はあるものの、外装材の風圧に対する対策が何ら施されていないため、強風への対応策としては、外装材と方立とを連結する結合金具の数を多くすることで対処せざるを得ないという課題がある。結合金具の数を多くすることは、全体としてのコスト高を招くとともに、部品点数の削減と言う目的と相反する課題が依然として残ることを意味する。また、外装材としてガラスを使用した場合、多くの結合金具が外部から目視できるため、やはり外観を損なうと言う課題がある。
【0005】
本発明は、このような諸事情に対処するために提案されたものであって、部品点数を増やすことなく、カーテンウォールを支持するマリオン材の風圧荷重による撓みを少なくするとともに、施工性にも優れたカーテンウォールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、建物の外壁をなす外装材と、建物の上下の構造部材の間に立設されるバックマリオン材と、該バックマリオン材と、前記外装材の背面側を該バックマリオン材に連結するブラケットとを具備して構成されるカーテンウォールにおいて、前記バックマリオン材に張力を加える張力調節手段が設けられていることを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、請求項1において、前記張力調節手段は、前記バックマリオン材を建物の構造部材へ取り付ける際に、該バックマリオン材及び構造部材間の取付位置を調節する連結部材を具備していることを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2において、前記張力調節手段は、ボルト及びナットを備え、該ボルト及びナットの締め付け力により張力を調節することを特徴とする。
【0009】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3において、前記バックマリオン材の下部は、建物の基礎部分に打ち込まれていることを特徴とする。
【0010】
請求項5記載の発明は、請求項1〜3において、前記建物の構造部材は梁であり、建物の梁の間に、前記バックマリオン材の上下の少なくとも一方側が前記張力調節手段を介して立設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
上述のように、請求項1乃至5記載の発明によれば、バックマリオン材に張力を加える張力調節手段が設けているので、建物の外装材に内外から生じる略横方向の荷重が、ブラケットを介して伝達される際に、バックマリオン材のたわみ量を少なくすることが可能となる。これにより、従来、利用されていなかったバックマリオン材が本来有する引っ張りに対する耐力を十分に生かすことができるので、外装材とバックマリオン材とを連結するブラケットの数を少なくすることができるなど、部品点数を削減することが可能となる。また、耐風圧荷重を高めることができる。さらに、バックマリオン材の断面積を小さくした場合でも強度を保持することができる。
【0012】
特に、請求項2記載の発明によれば、張力調節手段にはバックマリオン材を建物に取り付ける際に、バックマリオン材及び構造部材間の取付位置を調節する連結部材が備えられているので、建物の構造部材、バックマリオン材に製造上不可避的に生じる誤差を吸収することができ、バックマリオン材の建物に対する位置合わせが容易になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る粒状物の搬送装置の好適な実施形態について添付図面を参照して説明する。
【0014】
図1は本発明の一実施形態に係るカーテンウォールによって構成された外装材を示す正面図、図2はカーテンウォールの全体構成の概略を示した概略断面図である。図1及び図2に示されるように、本実施形態のカーテンウォール10は、鉄骨を構造部材(建築構造体)とする建物の外装材に適用した場合であり、外装材として複数のサッシ12,12・・で構成されたガラス貼りのカーテンウォールを想定している。
【0015】
図2に示されるように、カーテンウォール10は、外装材をなすガラスが入った複数のサッシ12,12・・の他、バックマリオン材14と、張力調節手段16と、ブラケット18等とから構成されている。各サッシ12,12・・は、その側部のフレーム17,17、並びに上部、下部が、躯体の上部及び下部の巾木フレーム19A.19Bに、挿し込まれて支持されているとともに、各サッシとフレームとの間にはコーキング剤などによる防水処理が施されている。また、サッシ12,12・・の背面側は、ブラケット18を介して後述するバックマリオン材14によって支持されている。バックマリオン材14の上部は、張力調節手段16を介して、建物の梁20に取り付けられているとともに、下部は、基礎コンクリート21に固定されている。
【0016】
図3はバックマリオン材14と建物の構造部材とを連結している張力調節手段16の詳細を示す詳細断面図、図4は図3をIV方向から視た詳細断面図である。
図2及び図3に示されるように、バックマリオン材14は、H形鋼又はビルドアップI形鋼を利用して製作された上下方向に延出する鋼材であり、その上部が張力調節手段16を介して建物の構造部材の梁20に取り付けられている。
【0017】
張力調節手段16は、H形鋼又はビルドアップI形鋼のバックマリオン材14の上部を覆うようにして取り付けられたカバー22と、固定ボルト24と、ナット26A,26Bと、連結部材28等とを備えている。図3に示されるようにカバー22はコ字状に形成され、その垂直部22A,22Aがバックマリオン材14上部の側面部14Aに対して溶接接合されている。
一方、バックマリオン材14の中央部の一部を切断し、その切断された部分に固定ボルト24が溶接によって取り付けられている。固定ボルト24の上部は、カバー22の水平部22Bの中央に穿設された図示しない貫通孔から上方へ向かって突き出た状態となっている。
【0018】
図3及び図4に示されるように、カバー22の上部には、連結部材28が位置しているが、この連結部材28はH形鋼又はビルドアップI形鋼の一部を切り欠くことによって作業用孔28Aが形成されており、この作業用孔28Aからトルクレンチを挿入し、固定ボルト24の上端部に対し、ナット26A,26Bを螺合させることができるようになっている。図3に示されるように、連結部材28の下面には、L字型の接続金具(アングル材)30,30の水平部30Aが溶接接合されている。
【0019】
図4に示されるように、接続金具30の鉛直部30Bには、4個の長孔30Cが穿設されており、これらの長孔30C、カバー22の垂直部22Aに穿設されているボルト孔22Cに対して、ワッシャを備えたボルト・ナット32を挿入し、カバー22と接続金具30同士がボルト・ナット32によって締め付け固定されている。接続金具30の長孔30Cは、縦方向に延びるようにして穿設されているため、梁20に対してバックマリオン材14を、連結部材28を介して取り付ける際に、位置調節が可能であり、例えば、連結部材28や、接合部材34に製造上、不可避的に生じる縦方向の寸法誤差を長孔30Cによって吸収することができるようになっている。
【0020】
連結部材28の上部には、コ字状の接合部材34の水平部34Aが、ボルト・ナット36によって接続されているとともに、梁20に対しては、立上り部34B,34Bが、梁20の側面部20A,20Aに穿設されたボルト孔を利用してボルト・ナット38によって接続されている。なお、連結部材28と、接合部材34とを接続する際に使用されるトルシア型のボルト・ナット36のボルト孔のうち、連結部材28に穿設されるボルト孔28Bは、横長の長孔となっているため、前述した接続金具30の長孔30Cの場合と同様に、連結部材28及び接合部材34間に生じる横方向の取付位置のずれを吸収して、両者の接合位置の調節が可能になっている。
【0021】
図3及び図4に示されるように、ブラケット18は、側面視、横長の直角三角形状に形成され、ブラケット18の外装材側18Aが、サッシ12の枠に取り付けられた支持金具40に取り付けられている。一方、図4に示されるように、ブラケット18の後部側は、バックマリオン材14の側面部14Aにボルト・ナット42,42・・によって4箇所で固定されている。
従って、複数のサッシ12に生じる略横方向の荷重は、複数のブラケット18を介してバックマリオン材14に伝達され、その荷重はバックマリオン材14によって受け止められ、支持される。後述するように、バックマリオン材14には、張力が加えられているため、外装材を構成するサッシ12から、横方向の荷重が伝達された場合に、バックマリオン材14の撓みを少なくすることが可能となる。その結果、複数のサッシ12で構成されたカーテンウォール10全体の耐風圧荷重を向上させることができる。
【0022】
図5はバックマリオン材14の建物の基礎部分の構造の詳細を示す詳細断面図、図6は図5をVI方向から視た詳細断面図である。図5に示されるように、コンクリート基礎21には、バックマリオン材14が支持されるアンカー44,44が予め埋設されている。バックマリオン材14の側面部14Aの下部は、当て板46に対して溶接接合されている。バックマリオン材14の下部は、アンカー44,44に対して、当て板46,46片側につき、計6本のボルト・ナット48によって固定されている。これにより、バックマリオン材14は、上部が梁20に固定され、下部が基礎コンクリート21に固定されている。
【0023】
バックマリオン材14は、張力調節手段16により張力が加えられているが、張力を加える場合は、以下のように行なう。
まず、チェーンブロック、クレーンなどを使用してバックマリオン材14を立設した後、バックマリオン材14の上部を、梁20に対して、連結部材28、接続金具30、接合部材34によって取り付けるとともに、バックマリオン材14の下部をコンクリート基礎21に固定する。コンクリート基礎21が硬化し、一定期間の養生後、図3に示される張力調節手段16によってバックマリオン材14に張力をかけていく。その際、まず、連結部材28の作業用孔28Aから固定ボルト24に対し、ワッシャ25を嵌めこむとともに、ナット26Aを最初は緩く螺合させた後、やはり作業用孔28Aからトルクレンチを挿入し、所定のトルクでナット26Aを締め付ける。その後、回り止めであるナット26Bを固定ボルト24に螺合させることによってバックマリオン材14に張力を加える作業が終了する。その結果、バックマリオン材14に、所望の張力を付与した状態で、梁20とコンクリート基礎21との間に固定することができる。
【0024】
図7は本実施形態に係るカーテンウォールについて模式的な試験を行った場合の説明図であり、具体的には、試験体50に両端から張力を加えながら試験体50の中央部に荷重をかけた場合の影響を試験したものである。図8は図7で示した模式的な試験の結果を示したグラフであり、荷重と試験体50に生じるたわみ量との関係を示したグラフで、縦軸が試験体50の中央部に加えられる荷重を示しており、横軸がたわみ量を示している。
【0025】
図7に示されるように、試験体50としては、長さ1000m/m、直径10m/mの性能SS400ニュートン丸鋼を用い、試験体50の両端を支持した両端支持梁を使用している。試験方法としては、試験体50の中央部にかける荷重を、5kgf〜50kgfの範囲で、連続的に変化させて試験を行うとともに、試験体50の張力を、0ニュートンから200ニュートン、400ニュートン、600ニュートンと4通り変化させた状態で試験を行った。
【0026】
図8に示されるように、試験体50にかける張力を0ニュートンから600ニュートンへ増加させるにしたがって、例えば、荷重10kgfのときは、試験体50に生じるたわみ量がそれぞれ、5.0m/m、1.85m/m、1.25m/m、1.05m/mと少なくなっていることが理解される。要するに、試験体50に張力を加えることで、試験体50に鉛直方向から荷重が加わった場合、そのたわみ量は、張力を増加させるほど、少なくなることが、この試験により実証された。
【0027】
つまり、前述した試験を、本実施形態のカーテンウォール10に当てはめた場合、試験体50がバックマリオン材14に相当すると考えると、外装材であるサッシ12,12・・からブラケット18を介して内外から伝達される略横方向の荷重によるバックマリオン材14のたわみ量は、バックマリオン材14に予め張力を加えることによって減少することが理解される。従って、バックマリオン材14には、建物の構造部材に影響を与えない範囲内で、張力を予め付与しておくことで、ブラケット18を介して内外から伝達される略横方向の荷重に対する耐力を増加させることができる。この結果、ブラケット18の数を増やすことなく、カーテンウォール10の耐風圧荷重を向上させることが可能となったのである。
【0028】
以上説明したように、本実施形態のカーテンウォールによれば、外装材の略横方向の荷重を支えるバックマリオン材14に張力を付与することによって、バックマリオン材14が本来有する耐力を十分に発揮させ、バックマリオン材14に生じるたわみ量を減少させるようにしている。このため、カーテンウォール10の耐風圧荷重を向上させることができる。
また、例えば、外装材としてガラスを使用した場合には、ブラケット18の数が少なくてすむようになるため、スケルトン構造の場合、目視可能な内部空間がすっきりし、美観が向上するとともに、外装材とバックマリオン材とで囲まれたスペースが小さくて済み、建物空間を無駄なく使用することが可能となる。
【0029】
なお、本実施形態では、バックマリオン材14の下部は、コンクリート基礎21に支持させているが、例えば、3階建て以上の建物などの場合には、下層階の梁にバックマリオン材14の下部を固定するようにすることも可能である。また、ブラケット18の形状は、これに限らず、外装材とバックマリオン材とを連結でき、且つ所定の荷重を支持することができれば、どのような形状でもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明したように、本発明によれば、バックマリオン材に張力を付与することにより、外装材から伝達される略横方向の荷重によってバックマリオン材に生じるたわみ量を低減している。これにより、外装材の耐風圧荷重が向上し、カーテンウォールの強度アップを図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係るカーテンウォールによって構成された外装材を示す正面図である。
【図2】同じく、本実施形態に係るカーテンウォールの全体構成の概略を示した概略断面図である。
【図3】同じく、本実施形態における要部であるバックマリオン材と建物の構造部材とを連結している張力調節手段の詳細を示す詳細断面図である。
【図4】図3をIV方向から視た詳細断面図である。
【図5】同じく、本実施形態における要部であるバックマリオン材の建物の基礎部分の構造の詳細を示す詳細断面図である。
【図6】図5をVI方向から視た詳細断面図である。
【図7】本実施形態に係るカーテンウォールについて、模式的な試験を行った場合を示した説明図である。
【図8】図7で示した模式的な試験の結果を示したグラフである。
【符号の説明】
【0032】
10 カーテンウォール
12 サッシ
14 バックマリオン材
14A 側面部
16 張力調節手段
17 フレーム
18 ブラケット
19A 19B 巾木フレーム
20 梁(建築構造体)
20A 側面部
21 コンクリート基礎
22 カバー
22A 垂直部
22B 水平部
22C ボルト孔
24 固定ボルト
25 ワッシャ
26A 26B ナット
28 連結部材
28A 作業用孔
30 接続金具(アングル材)
30A 水平部
30B 鉛直部
30C 長孔
32 ボルト・ナット
34 接合部材
34A 水平部
34B 立上り部
36 ボルト・ナット(トルシア型)
38 ボルト・ナット
40 支持金具
42 ボルト・ナット
44 アンカー
46 当て板
48 ボルト・ナット
50 試験体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の外壁をなす外装材と、建物の上下の構造部材の間に立設されるバックマリオン材と、前記外装材の背面側を該バックマリオン材に連結するブラケットとを具備して構成されるカーテンウォールにおいて、
前記バックマリオン材に張力を加える張力調節手段が設けられていることを特徴とするカーテンウォール。
【請求項2】
前記張力調節手段は、前記バックマリオン材を建物の構造部材へ取り付ける際に、該バックマリオン材及び構造部材間の取付位置を調節する連結部材を具備していることを特徴とする請求項1に記載のカーテンウォール。
【請求項3】
前記張力調節手段は、ボルト及びナットを備え、該ボルト及びナットの締め付け力により張力を調節することを特徴とする請求項1又は2に記載のカーテンウォール。
【請求項4】
前記バックマリオン材の下部は、建物の基礎部分に打ち込まれていることを特徴とする請求項1〜3に記載のカーテンウォール。
【請求項5】
前記建物の構造部材は梁であり、建物の梁の間に、前記バックマリオン材の上下の少なくとも一方側が前記張力調節手段を介して立設されていることを特徴とする請求項1〜3に記載のカーテンウォール。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−16497(P2007−16497A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−199599(P2005−199599)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【特許番号】特許第3781426号(P3781426)
【特許公報発行日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(505260589)イー・アイ工業有限会社 (1)
【Fターム(参考)】