説明

カーテンエアバッグ装置

【課題】収容時におけるエアバッグの太さを減少させるカーテンエアバッグ装置を提供する。
【解決手段】膨張ガスを発生するガス発生器16と;収容状態において長尺ロール状に巻回され、前記ガス発生器16から供給されるガスによって展開するエアバッグ12とを備える。前記エアバッグは12、前記ガスによって膨張して乗員を保護する乗員保護領域と;巻き取り用のバー34を挿入するためのバー挿入領域32とを有する。そして、平面状に広げた前記エアバッグ12の前記バー挿入領域32に前記バー34を挿入して、当該バー34を上縁側に巻き上げることによって当該エアバッグ12を長尺ロール状にし、その後当該バー34を抜き取ることによってロール状の収容形態とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内側部に取り付けられたエアバッグが車両衝突時に、車体側壁と乗員の間に展開して乗員を保護する所謂カーテンエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアバッグ装置には、ステアリングホイール内部に収容される運転席用エアバッグ装置や、窓枠の上縁部に沿って配置されるカーテンエアバッグ装置や、インストルメントパネル(インパネ)の内部に配置される助手席用エアバッグ装置等、種々のタイプがある。
【0003】
一般にカーテンエアバッグ装置は、膨張ガスを発生するガス発生器と;収容状態において長尺状に折り畳まれ、ガス発生器から供給されるガスによって展開するエアバッグとを備えている。エアバッグは、ガスによって膨張するエアバッグ本体部と;当該エアバッグ本体部の上縁部に設けられ、車両に対して固定される複数の取り付けタブとを備えている。
【0004】
上記のような構造のカーテンエアバッグ装置において、エアバッグ(クッション)を圧縮する際に、平面的に広げたエアバッグの下縁部を2本のバーで表裏側から挟み、その状態で2本のバーをエアバッグの上縁側に向かって巻き上げていく方法がある。エアバッグの上縁部まで巻き上げた後は、2本のバーを抜いて、インフレータを取り付ける。インフレータを取り付けた圧縮状態(折り畳み状態)のエアバッグは、車両のAピラーから窓枠上部に渡って配置される。
【0005】
ところで、カーテンエアバッグを装備する車両は、Aピラーや窓枠上部にエアバッグを収容する空間が必要になるため、当該空間を小さくするためにエアバッグの小型が要請されている。特に、Aピラー部分の空間が大きくなると、Aピラーが必然的に太くなり、運転手(乗員)の視認性を低下させることになり、安全面においても大きな課題となっている。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来の課題に鑑みてなされたものであり、収容時におけるエアバッグの太さを減少させることを目的とする。
【0007】
また、組み立て作業性の向上に寄与するカーテンエアバッグ装置を提供することを他の目的とする。

【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るカーテンエアバッグ装置は、膨張ガスを発生するガス発生器と;収容状態において長尺ロール状に巻回され、前記ガス発生器から供給されるガスによって展開するエアバッグとを備える。前記エアバッグは、前記ガスによって膨張して乗員を保護する乗員保護領域と;巻き取り用のバーを挿入するためのバー挿入領域とを有する。そして、平面状に広げた前記エアバッグの前記バー挿入領域に前記バーを挿入して、当該バーを上縁側に巻き上げることによって当該エアバッグを長尺ロール状にし、その後当該バーを抜き取ることによってロール状の収容形態とする。
【0009】
前記バー挿入領域は、前記エアバッグの下縁部に筒状に成形することができる。ここで、「下縁部」とは、下端部(最も下の縁部分)の他に下端部よりも若干上の領域も含む概念である。
【0010】
あるいは、少なくとも前記バー挿入領域の一部は、前記エアバッグの一面側の表面長手方向に所定の間隔で複数形成されたバー通し部材によって成形されることができる。この時、前記バー通し部材は、前記エアバッグの下縁部に沿って長手方向に形成し、又は、前記エアバッグの上縁部と下縁部との中間付近に形成することができる。ここで、「中間付近」とは厳密な中間(中央)部に限定されず、上下にずれて配置することもできる意味である。

【発明の効果】
【0011】
本発明のエアバッグ装置によれば、エアバッグの一部にバー挿入領域を形成しているため、1本のバーでエアバッグを巻き取ることができ、圧縮されたエアバッグの太さを従来よりも細くできるという効果がある。その結果、車両におけるエアバッグの設置容積を小さくでき、車室内空間の拡張等の車両設計上の自由度が増すというメリットがある。特に、Aピラーを細くできるため、斜め前方の視認性が向上するという安全上のメリットも大きい。
【0012】
バー挿入領域を、エアバッグの下縁部に連続筒状に成形した場合には、乗員保護領域と一体的に、例えば縫製によって当該バー挿入領域を形成することができ、製造工程の増加を最小限に抑えることができる。
【0013】
バー挿入領域を、エアバッグの一面側の表面長手方向に所定の間隔で複数形成されたバー通し部材を含む構造とした場合には、当該バー通し部材はズボンのベルト通しの様に機能する。バー挿入領域を筒状にする場合に比べ、バー通し部材はエアバッグの表面に後から縫製、接着等によって設けることができる等、形成位置の自由度が高いというメリットがある。また、エアバッグを巻き上げて、バーを抜くときの摩擦が小さくなり、バーが抜きやすいというメリットもある。
【0014】
更に、バー通し部材を、エアバッグの上縁部と下縁部との中間付近に形成すれば、エアバッグが二重に巻き取られることになり、巻き取り回数が減少して、作業工程の短縮につながる。

【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施例に係るカーテンエアバッグ装置を備えた車両の車室部分の断面図であり、展開前の状態を示す。
【図2】図2は、本発明の実施例に係るカーテンエアバッグ装置を備えた車両の車室部分の断面図であり、展開後の状態を示す。
【図3】図3は、本発明の実施例に係るカーテンエアバッグ装置に使用されるエアバッグの構造(展開状態/非折り畳み状態)を示す平面図である。
【図4】図4は、本発明の実施例に係るカーテンエアバッグ装置に使用されるエアバッグの構造(折り畳み/折り畳み状態)を示す説明図である。
【図5】図5は、実施例に係るエアバッグ装置の取り付け状態を示す断面図である。
【図6】図6は、実施例に係るエアバッグ装置の巻き取り工程を示す平面図であり、巻き取り前の状態を示す。
【図7】図7は、図6のA−A‘方向の断面図である。
【図8】図8は、実施例に係るエアバッグ装置の巻き取り工程を示す平面図であり、ロール状に巻き取られた状態を示す。
【図9】図9は、本発明の他の実施例に係るカーテンエアバッグ装置に使用されるエアバッグの構造(展開状態/非折り畳み状態)を示す平面図である。
【図10】図10は、本発明の更に他の実施例に係るカーテンエアバッグ装置に使用されるエアバッグの構造(展開状態/非折り畳み状態)を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。図1及び図2は、本発明に係るカーテンエアバッグ装置10を備えた自動車の車室部分の断面図であり、各々展開前の状態及び展開後の状態を示す。図1及び図2に示すように、車室側方の窓ガラスの上部には、ヘッドライニング(46:図5参照)に覆われたインナーパネル(42:図5参照)には、カーテンエアバッグ装置10が取付タブ14を用いてボルト(44:図5参照)によって固定される。なお、符号15はAピラーを示す。
【0017】
図3及び図4は、本発明に係るカーテンエアバッグ装置10の構造を示す平面図であり、各々、展開状態(折り畳み前の状態)及び折り畳み状態(設置直前の状態)を示している。図5は、エアバッグ装置10の取り付け状態を示す断面図である。
【0018】
カーテンエアバッグ装置10は、長尺状に畳まれ、車両の窓上縁に配置されたヘッドライニング(46:図5)に覆われた状態で収容され、作動時にヘッドライニングとインナーパネル(42:図5)との隙間から下方に向かって膨張展開することで車両内の乗員を保護するエアバッグ12と;エアバッグ12に膨張ガスを供給するガス供給装置(インフレータ)16とを備えている。
【0019】
エアバッグ12は、ガスによって膨張して乗員を保護する乗員保護領域30と;巻き取り用のバー34を挿入するためのバー挿入領域32とを備えている。また、エアバッグ12の上縁部には、車両に対して固定される複数の取り付けタブ14が設けられている。
【0020】
エアバッグ12は、複数枚(例えば、2枚又は3枚)のシートを重ね合わせて縫合、接着又は溶着により袋状にしたもの、または、一枚織りで袋部が形成されたものを採用することができる。エアバッグ12は、インフレータ16から供給されるガスを内部に導くガス導入管24と;ガスによって膨張する複数のチャンバー20と;ガス導入管24から導入されたガスを各チャンバー20に導くダクト18とを備えている。チャンバー20は、非膨張領域22によって区画形成される。
【0021】
図4に示すように、エアバッグ12は、収容時にロール状に巻き取られ略棒状のロール体を形成している。本実施例においては、平面状に広げたエアバッグ12のバー挿入領域32にバー34を挿入して、当該バー34を上縁側に巻き上げることによって当該エアバッグ12を長尺状に圧縮し、その後当該バー34を抜き取ることによって収容形態とする。バー挿入領域32は、エアバッグ12の下縁部に連続筒状に成形されている。ここで、「下縁部」とは、下端部(最も下の縁部分)の他に下端部よりも若干上の領域も含む概念である。なお、バー挿入領域32は連続的でなく、不連続とすることもできる。
【0022】
バー挿入領域32は、チャンバー20の形成と同時に又は別工程で2本の縫製によってチューブ状に成形され、内部を巻き取りバー34(図6)が貫通するようになっている。本実施例では、バー挿入領域32は、エアバッグ12の下縁全域(左端から右端)に渡って形成されているが、縫製によって間欠的に形成することもできる。すなわち、巻き取りバー34(図6)がスムーズに挿入され、エアバッグ12を巻き取れる構造であれば、その他の形態を採用可能である。
【0023】
図5に示すように、組み立てられたエアバッグ装置10を設置する際には、取り付けタブ14の穴14aにボルト44を通してインナーパネル32に対して固定する。
【0024】
次に、エアバッグ12をロール状に巻く方法について説明する。図6は、エアバッグ12の巻き取り前の状態を示す。図7は、図6のA−A‘方向の断面図である。図8は、エアバッグ12をロール状に巻き取った状態を示す。まず、図6に示すように、バー挿入領域32の内部に巻き取りバー34を挿入する。巻き取りバー34としては、例えば、断面が矩形のものを使用することが出来る。
【0025】
次に、巻き取りバー34を回転させながらエアバッグ12を上方に向かって巻き上げる(図8)。その後、巻き取りバー34をバー挿入領域32から抜き取ると図4の状態となる。ロール状のエアバッグ12を、図1に示すように車両に対して取り付ける。
【0026】
本実施例に係るエアバッグ装置10によれば、エアバッグ12の一部にバー挿入領域32を形成しているため、1本のバー34でエアバッグ12を巻き取ることができ、圧縮されたエアバッグ12の太さを従来よりも細くできるという効果がある。その結果、車両におけるエアバッグ12の設置容積を小さくでき、車室内空間の拡張等の車両設計上の自由度が増すというメリットがある。特に、Aピラーを細くできるため、斜め前方の視認性が向上ずるという安全上のメリットも大きい。
【0027】
また、バー挿入領域32を、エアバッグ12の下縁部に連続筒状に成形した場合には、乗員保護領域30と一体的に(同一工程で)、例えば縫製によって当該バー挿入領域32を形成することができ、製造工程の増加を最小限に抑えることができる。
【0028】
次に、本実施例にかかるエアバッグ装置の動作について簡単に説明する。車両走行中に、ロールオーバ、側面衝突、横転等の非常事態が発生すると、車両に備えられたセンサがその異常な振動をキャッチして、その信号を基に発火信号を図示せぬインフレータ16に送る。インフレータ16内部には、センサからの発火信号を受けてインフレータ16を駆動させるプロペラントが備えられている。
【0029】
インフレータ16の作動によって、ガス導入管24を介してエアバッグ本体部12のダクト18に膨張ガスが流れ込む。この時、エアバッグ本体部12は、窓に沿うように下側に向かって展開、膨張する。
【0030】
図9及び図10は、本発明の他の実施例に係るカーテンエアバッグ装置に使用されるエアバッグの構造(展開状態/非折り畳み状態)を示す平面図である。なお、図9及び図10において上記実施例と同一又は対応する構成要素については、同一の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0031】
図9及び図10に示す実施例においては、バー挿入領域として、エアバッグ12の一面側(表面側又は裏面側)の長手方向に所定の間隔で複数形成されたバー通し部材132,232を採用している。
【0032】
図9の実施例では、バー通し部材132は、エアバッグ12の下縁部に沿って長手方向に形成されている。一方、図10の実施例では、バー通し部材232は、エアバッグ12の上縁部と下縁部との中間付近に形成されている。ここで、「中間付近」とは厳密な中間(中央)部に限定されず、上下にずれて配置することもできる意味である。
【0033】
図9及び図10の実施例を解り易く言うと、バー通し部材132,232はズボンのベルト通しの様に機能する。バー挿入領域を筒状(32)にする場合に比べ、バー通し部材132,232はエアバッグ12の表面に後から縫製、接着等によって設けることができる等、形成位置の自由度が高いというメリットがある。また、エアバッグ12を巻き上げて、バー34を抜くときの摩擦が小さくなり、バー34が抜きやすいというメリットもある。
【0034】
更に、図10に示す例のように、バー通し部材232を、エアバッグ12の上縁部と下縁部との中間付近に形成すれば、エアバッグ12が二重に巻き取られることになり、巻き取り回数が減少して、作業工程の短縮につながる。
【0035】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想を逸脱しない範囲で種々の設計変更等が可能である。なお、何れの実施例においても、バー挿入領域は直線状であることが望ましい。

【符号の説明】
【0036】
10:カーテンエアバッグ装置
12:エアバッグ
14:取り付けタブ
16:インフレータ
32,132,232:バー挿入領域
34:巻き取りバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内の側部にてカーテン状に展開し、当該車両内の乗員を保護するカーテンエアバッグ装置において、
膨張ガスを発生するガス発生器と;
収容状態において長尺ロール状に巻回され、前記ガス発生器から供給されるガスによって展開するエアバッグとを備え、
前記エアバッグは、前記ガスによって膨張して乗員を保護する乗員保護領域と;巻き取り用のバーを挿入するためのバー挿入領域とを有し、
平面状に広げた前記エアバッグの前記バー挿入領域に前記バーを挿入して、当該バーを上縁側に巻き上げることによって当該エアバッグを長尺ロール状にし、その後当該バーを抜き取ることによってロール状の収容形態とすることを特徴とするカーテンエアバッグ装置。
【請求項2】
前記バー挿入領域は、前記エアバッグの下縁部に筒状に成形されることを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項3】
少なくとも前記バー挿入領域の一部は、前記エアバッグの一面側の表面長手方向に所定の間隔で複数形成されたバー通し部材によって成形されることを特徴とする請求項1に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項4】
前記バー通し部材は、前記エアバッグの下縁部に沿って長手方向に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項5】
前記バー通し部材は、前記エアバッグの上縁部と下縁部との中間に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のカーテンエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−98676(P2011−98676A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255573(P2009−255573)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(503358097)オートリブ ディベロップメント エービー (402)
【復代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
【Fターム(参考)】