説明

カーテンエアバッグ装置

【課題】エアバッグが第1及び第2の展開部を含む構成において、ロールオーバに対する乗員の保護性能を確保しながら、エアバッグの容量を小さく抑えることができるカーテンエアバッグ装置を得る。
【解決手段】カーテンエアバッグ装置10は、ルーフサイド部18に折り畳み状態で収納され該ルーフサイド部18に沿って展開されるガス供給通路35と、ガス供給通路35を通じてガス供給を受けることで側面衝突及び車両のロールオーバの際にガス供給通路35の下側で膨張、展開される後側主チャンバ36Rと、ガス供給通路35又は後側主チャンバ36Rを通じてガス供給を受けることで少なくともロールオーバの際に後側主チャンバ36Rの前方で展開される後側副チャンバ42と、側面視における後側副チャンバ42内又は該後側副チャンバ42とガス供給通路35との間の一部が三角シーム66にて展開が規制されることで形成される凹状展開部70と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテンエアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
乗員の着座位置に設けた主膨張部と、主膨張部に縮径部を介して常時連通されると共に乗員の着座位置から外した位置に設けた副膨張部とを備えるカーテンエアバッグ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。さらに、カーテンエアバッグにおいて、乗員の着座位置を除く箇所にベルトラインよりも下方へ延出する第2の展開部を設ける技術が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−161163号公報
【特許文献2】特開2007−161167号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、カーテンエアバッグにてロールオーバに対し乗員を保護する際の反力を十分に確保するためには、カーテンエアバッグの厚みを増すこととなる。このため、上記の如き構成では、カーテンエアバッグすなわちインフレータの容量が大きくなる。
【0005】
本発明は、エアバッグが第1及び第2の展開部を含む構成において、ロールオーバに対する乗員の保護性能を確保しながら、エアバッグの容量を小さく抑えることができるカーテンエアバッグ装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、車体におけるサイドウインドウガラス配設部位の上縁部に折り畳み状態で収納され、車両の前記サイドウインドウガラス配設部位の上縁部に沿って展開されるガス供給通路と、前記ガス供給通路を通じてガス供給を受けることで、車両の側面衝突の際及び車両のロールオーバの際にガス供給通路の下側で膨張、展開される第1の展開部と、前記ガス供給通路又は前記第1の展開部を通じてガス供給を受けることで、少なくとも車両のロールオーバの際に、前記第1の展開部に対する車両前方で展開される第2の展開部と、側面視における前記第2の展開部内又は該第2の展開部と前記ガス供給通路との間の一部が、環状の縫製部により展開が規制されることで形成される凹状展開部と、を備えている。
【0007】
請求項1記載のカーテンエアバッグ装置では、車両の側面衝突の際には、少なくとも第1の展開部がガス供給を受けて展開され、該第1の展開部により乗員の頭部が側面衝突に対し保護される。一方、車両のロールオーバの際には、第1の展開部及び第2の展開部が展開され、該第1及び第2の展開部にて車両前後方向の広い範囲に亘って、乗員頭部の車幅方向外側への移動を制限することができる。すなわち、乗員頭部が保護される。
【0008】
ここで、本カーテンエアバッグ装置では、第2の展開部内又は第2の展開部とガス供給通路との間に凹状展開部が形成されている。凹状展開部は、凹状展開部がないものと比べて、その凹面に乗員頭部が接触するために該乗員頭部との接触面積が大きい。このため、乗員頭部との摩擦力が大きくなり、該摩擦力により該乗員頭部の車幅方向外側への移動が抑制される。
【0009】
このように、請求項1記載のカーテンエアバッグ装置では、ロールオーバに対する乗員の保護性能を確保しながら、エアバッグの容量を小さく抑えることができる。特に、ロールオーバの際に乗員頭部が当たりやすい位置に凹状展開部を配置することが有効である。
【0010】
請求項2記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、請求項1記載のカーテンエアバッグ装置において、前記凹状展開部は、側面視で三角形状の前記縫製部によって、側面視における前記第2の展開部内又は該第2の展開部と前記ガス供給通路との間の一部の展開が規制されることで形成される。
【0011】
請求項2記載のカーテンエアバッグ装置では、凹状展開部が側面視で略三角形状を成すため、該凹状展開部の周縁部における展開部(第2の展開部やガス供給通路)の展開厚みを確保しやすい。
【0012】
請求項3記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、請求項2記載のカーテンエアバッグ装置において、前記第2の展開部は、側面視で前記ガス供給通路の下側で展開されると共に、前後に並んだ2つのセルを含んで構成されており、前記凹状展開部は、前記ガス供給通路の下縁と前記前後に並んだセルの上端側とを区画する側面視で三角形状の前記縫製部によって、側面視における前記第2の展開部内又は該第2の展開部と前記ガス供給通路との間の一部の展開が規制されることで形成される。
【0013】
請求項3記載のカーテンエアバッグ装置では、ガス供給通路と前後セルとの隙を有効に利用して凹状展開部が形成される。
【0014】
請求項4記載の発明に係るカーテンエアバッグ装置は、請求項1〜請求項3の何れか1項記載のカーテンエアバッグ装置において、前記第2の展開部は、下端が前記ベルトラインよりも下方に至るように展開される。
【0015】
請求項4記載のカーテンエアバッグ装置では、第2の展開部による乗員頭部の保護の際の反力が、該第2の展開部の下端側がベルトライン下方でサイドドアと係合しつつ良好に支持される。これにより、前席乗員の頭部の保護性能が向上する。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように本発明に係るカーテンエアバッグ装置は、ロールオーバに対する乗員の保護性能を確保しながら、エアバッグの容量を小さく抑えることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るカーテンエアバッグ装置の概略全体構成を示す車室内から見た側面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るカーテンエアバッグ装置を示す、図1の2−2線に沿った拡大断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係るカーテンエアバッグ装置の後側副チャンバによるロールオーバ試験の過程を模式的に示す拡大断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係るカーテンエアバッグ装置の凹状展開部の上下限寸法を設定するための顔のモデルを示す模式図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係るカーテンエアバッグ装置の概略全体構成を示す車室内から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態に係るカーテンエアバッグ装置10について図1〜図4に基づいて説明する。なお、各図に適宜記す矢印FR、矢印UP、矢印IN、矢印OUTは、それぞれカーテンエアバッグ装置10が適用された自動車Vの前方向(進行方向)、上方向、車幅方向内側、及び外側を示している。以下、単に前後、上下の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下を示すものとする。
【0019】
(カーテンエアバッグ装置の全体構成)
図1には、カーテンエアバッグ装置10が適用された自動車Vの車室内から見た側面図が示されている。この図に示される如く、カーテンエアバッグ装置10は、エアバッグとしてのカーテンエアバッグ12を備えている。カーテンエアバッグ12は、車室内側部としてのサイドウインドウガラス14、センタピラー(Bピラー)15に沿ってカーテン状に展開するように形成されている。この実施形態では、カーテンエアバッグ12は、前席及び後席の側方に位置する前後のサイドウインドウガラス14を覆うように構成されている。
【0020】
図示は省略するが、カーテンエアバッグ12は、例えばロール折り又は蛇腹折りされて長尺状にされた上で、フロントピラー(Aピラー)16からルーフサイド部18に亘ってリヤピラー20の近傍まで収納されており、後述する所定の場合に図1に示される如く前後のサイドウインドウガラス14、センタピラー15に沿って展開して前席、後席の乗員の頭部を保護するようになっている。なお、この実施形態におけるルーフサイド部18は、該ルーフサイド部18とフロントピラー16とセンタピラー15とリヤピラー20とで囲まれた乗降用の開口部としての前後のドアオープニング22、24の上縁を成している。カーテンエアバッグ12は、ルーフサイド部18を成すルーフサイドレールとルーフヘッドライニングとの間に収容されている。
【0021】
また、カーテンエアバッグ装置10は、カーテンエアバッグ12内にガスを供給するためのガス発生手段としてのインフレータ25を備えている。インフレータ25は、燃焼式又はコールドガス式のものが採用され、作動されることで発生したガスをカーテンエアバッグ12内に供給するようになっている。インフレータ25のガス噴出口は、カーテンエアバッグ12の内部と連通されている。この実施形態では、インフレータ25はルーフサイド部18に配設されている。カーテンエアバッグ12の展開形状及びインフレータ25の配置については、後述する。
【0022】
以上説明したカーテンエアバッグ12、インフレータ25は、自動車Vの車幅方向両側にそれぞれ設けられている。すなわち、カーテンエアバッグ装置10は、左右一対のカーテンエアバッグ12、インフレータ25を備えて構成されている。さらに、カーテンエアバッグ装置10は、図1に示される如く、側突センサ30及びロールオーバセンサ32のそれぞれと電気的に接続されたエアバッグECU34を備えている。側突センサ30は、自動車Vの側面衝突(の不可避)を予測又は検出してエアバッグECU34に側突検出信号を出力するように構成されている。ロールオーバセンサ32は、自動車Vのロールオーバ(の不可避)を予測又は検出してエアバッグECU34にロールオーバ検出信号(以下、R/O検出信号という)を出力するように構成されている。
【0023】
エアバッグECU34は、左右のインフレータ25にそれぞれ電気的に接続されており(図1では、一方のインフレータ25との接続のみを示している)、側突検出信号が入力されると、側面衝突側(ニアサイド)のインフレータ25を作動する構成とされている。したがって、自動車Vに側面衝突が生じると、ニアサイドのカーテンエアバッグ12がガス供給を受けて膨張し、展開されるようになっている。また、エアバッグECU34は、R/O検出信号が入力されると、車幅方向両側のインフレータ25を作動する構成とされている。なお、エアバッグECU34は、側面衝突後にR/O検出信号が入力されると、すでに作動されている側面衝突側とは反対側のインフレータ25を作動するようになっている。
【0024】
(カーテンエアバッグの構成)
以下、カーテンエアバッグ12の具体的な構成を説明する。なお、特に断りのない場合、カーテンエアバッグ12の膨張、展開状態の構成(形状)を説明するものとする。図1に示される如く、カーテンエアバッグ12は、ガス供給通路35と、第1の展開部としての主チャンバ36と、主チャンバ36に連通された第2の展開部としての前側副チャンバ40及び後側副チャンバ42とを備えている。
【0025】
ガス供給通路35は、ルーフサイド部18に沿って前後方向に延びる筒状に展開されるようになっており、前後方向の中間部にインフレータ25がガス供給可能に接続されている。これにより、ガス供給通路35は、インフレータ25からのガスを前後に分配しつつカーテンエアバッグ12の各部に供給する構成とされている。なお、インフレータ25は、センタピラー15やリヤピラー20(CピラーやDピラー)に配設されても良い。
【0026】
主チャンバ36は、側面衝突に対する頭部保護エリア(図1に示す領域B参照)で膨張、展開されるようになっている。より具体的には、第1の展開部としての主チャンバ36は、前席用の側面衝突に対する頭部保護エリアBfを含んで膨張展開される前席用展開部としての前側主チャンバ36Fと、後席用の側面衝突に対する頭部保護エリアBrを含んで膨張展開される後席用展開部としての後側主チャンバ36Rと、を含んで構成されている。前側主チャンバ36Fと前側主チャンバ36Fとは、それぞれガス供給通路35を介してインフレータ25ガスが供給されるように、該ガス供給通路35を通じて互いに連通されている。
【0027】
前側副チャンバ40は、前側主チャンバ36Fの前方で展開されてカーテンエアバッグ12の前端部分を構成し、ロールオーバの際に前席乗員の頭部を前席の前側で保護するようになっている。前側副チャンバ40は、側面視で、その上端側がフロントピラー16にオーバラップされると共に、その下端側がベルトラインBL下方に位置してサイドドアとしてのフロントサイドドア26の前部にオーバラップされる構成である。
【0028】
この実施形態では、前側副チャンバ40は、その上部において、カーテンエアバッグ12のガス流路38を介して、ルーフサイド部18に沿って展開されるガス供給通路35の前端に連通されている。図示は省略するが、前側副チャンバ40は、上下方向に中心軸を有する(縦長の)略筒状に展開されるようになっている。この前側副チャンバ40へは、ガス供給通路35、前側主チャンバ36Fを経由してインフレータ25からのガスが供給されるようになっている。なお、ガス供給通路35内を通したインナチューブ等によって、前側主チャンバ36Fは独立して(並列に)前側副チャンバ40にインフレータ25からのガスを供給する構成としても良い。
【0029】
ここで、図1に細い実線にて示す領域Aは、ロールオーバ試験(FMVSS226規格)での前席において乗員頭部に相当するインパクタI(図3参照)を当てる試験ポイント(インパクタ打撃点又は打点)を表している。カーテンエアバッグ12では、前側副チャンバ40により、上記ロールオーバ試験における最も前の試験ポイント(図1に示す打点A1)がカバーされている。なお、上記ロールオーバ試験における前席乗員に対する他の試験ポイント(図1に示す打点A2〜A4)は、前側主チャンバ36Fにてカバーされている。
【0030】
後側副チャンバ42は、後側主チャンバ36Rの前方で展開されて、該後側主チャンバ36Rと前側主チャンバ36Fの間の部分を構成する。この実施形態では、後側副チャンバ42は、その下端側の一部において、ガス通路44を介して、後側主チャンバ36Rの前下部に連通されている。また、この実施形態における後側副チャンバ42の前端は、前側主チャンバ36Fの後端部とは後述するシーム64にて区画されている。
【0031】
さらに、後側副チャンバ42は、その上端側がガス供給通路35の下縁部に後述するシーム60を介して連結(接続)されると共に、下端側がリヤサイドドア28にオーバラップして展開されるようになっている。そして、この後側副チャンバ42は、ロールオーバの際に後席乗員の頭部を後席の前側で保護するようになっている。
【0032】
具体的には、図1に細い実線にて示す領域Cは、ロールオーバ試験(FMVSS226規格)での後席においてインパクタIを当てる試験ポイント(打点)を表している。カーテンエアバッグ12では、後側副チャンバ42により、上記ロールオーバ試験での後席における最も前側の試験ポイント(打点C1)がカバーされている。この最も前側の試験ポイントにおいては、上端がガス供給通路35に連結された後側副チャンバ42の下端側がリヤサイドドア28に係合(当接)することで、ロールオーバ時に乗員頭部の車幅方向外側への変位を抑制する構成とされている。なお、上記ロールオーバ試験における後席乗員に対する最も後側の試験ポイント(図1では中間の試験ポイントについて図示を省略している)は、後側主チャンバ36R及び後側副チャンバ42にてカバーされている。
【0033】
また、図1に示される如く、カーテンエアバッグ12には、その上縁に沿って複数の取付片46が設けられている。カーテンエアバッグ12の取付片46は、それぞれを貫通したクリップやボルト・ナット等である固定具48によって、車体骨格(フロントピラー16、ルーフサイド部18、リヤピラー20)に固定されている。
【0034】
以上説明したカーテンエアバッグ12の前端すなわち前側副チャンバ40は、側面視略三角形状の支持布(テンションクロス)50を介してフロントピラー16の下部に支持されている。また、カーテンエアバッグ12の後端すなわち後側主チャンバ36Rは、支持 布52を介してリヤピラー20に支持されている。
【0035】
また、カーテンエアバッグ12のうち、少なくとも前側副チャンバ40を構成する基布の表面にはシリコンコート等の織り目シール加工が施されており、内圧が保持されやすい構成とされている。この実施形態では、前側副チャンバ40及び後側副チャンバ42を構成する基布の表面にシリコンコートが施されている。
【0036】
以上説明したカーテンエアバッグ12を構成する前側主チャンバ36Fは、ベルトラインBLに対する上側で前後方向に延びる筒状に展開されるようになっている。具体的には、図1に示される如く、前側主チャンバ36Fは、ルーフサイド部18に沿って延び前側副チャンバ40に至るガス供給通路35の下方に配置されている。前側主チャンバ36Fは、その前後方向の略中間部に位置するガス通路54を通じて、ガス供給通路35からガス供給を受ける構成とされている。ガス通路54に対する前後においては、ガス供給通路35と前側主チャンバ36Fとは、シーム56、58にて区画され(仕切られ)ている。
【0037】
後側のシーム56は、ガス供給通路35と後側副チャンバ42とを区画するシーム60、後側主チャンバ36Rと後側副チャンバ42を区画するシーム62、後側副チャンバ42における後述する前側セル42Fと後側セル42Rとを区画するシーム63、及び後側副チャンバ42と前側主チャンバ36Fとを区画するシーム64に連続している。一方、前側のシーム58は、前側副チャンバ40と前側主チャンバ36Fとを区画するシーム65の上端及びシーム56の前端との間で、これらシーム65、56と離間して配置されている。すなわち、シーム58は、浮島状に形成(配置)されている。
【0038】
以上により、前側主チャンバ36Fは、ガス供給通路35すなわちシーム56、58の下方で前後方向に長い筒状に展開される構成とされている。この前側主チャンバ36Fの後端側は、側面視でセンタピラー15にオーバラップするピラーラップ部36FPとされている。
【0039】
(後側副チャンバの構成)
この実施形態におけるカーテンエアバッグ12は、後側副チャンバ42が上下方向に延びるシーム63によって、セルとしての前側セル42Fと後側セル42Rとに区画されている。このシーム63は、上端部で二股に分かれている。具体的には、後側副チャンバ42の前側セル42Fの後上縁を成すように前方に湾曲する前側シーム63Fと、後側副チャンバ42の後側セル42Rの前上縁を成すように後方に湾曲する後側シーム63Rとに、シーム63の上端が分かれている。
【0040】
前側シーム63F、後側シーム63Rは、それぞれ後側副チャンバ42とガス供給通路35とを区画するシーム60に連続している。これらのシーム60の一部60Aと前側シーム63Fと後側シーム63Rとは、側面視で略三角形状を成す環状の縫製部としての三角シーム66を成している。この三角シーム66にて囲まれた部分は、カーテンエアバッグ12における非膨張部68とされる。
【0041】
これにより、図2にも示される如く、膨張、展開状態のカーテンエアバッグ12には、非膨張部68を底とする凹状展開部70が形成(展開)される構成である。凹状展開部70は、ガス供給通路35、後側副チャンバ42の前側セル42F及び後側セル42Rにおける凹状展開部70に臨む部分を凹壁と形成される凹みとして形成される。図1に示される如く、凹状展開部70は、後側副チャンバ42における上記ロールオーバ試験における試験ポイント(打点C1)に対応して配置されている。この実施形態では、側面視における凹状展開部70の中心と打点C1とが略一致する構成とされている。すなわち、カーテンエアバッグ装置10では、凹状展開部70が後側副チャンバ42におけるロールオーバの際に乗員頭部が当たりやすい位置に配置されている。
【0042】
凹状展開部70は、前後方向に沿った幅Wの最大値及び上下方向に沿った高さHの最大値(以下、単に幅W、高さHという。また、何れも図示は省略)のそれぞれが所要の上下限の間に入る設定とされている。具体的には、幅Wの下限値は図4に示される乗員の顔Fにおける鼻Nの幅に相当するWnwとされ、幅Wの上限値は、乗員の顔Fにおけるほお骨Cnの中央間の間隔に相当するWcnとされている。すなわち、
Wnw ≦ W ≦ Wcn
とされる。
【0043】
また、高さHの下限値は乗員の顔Fにおける鼻Nの上下の方向の長さに相当するHnlとされ、高さHの上限値は、乗員の顔Fにおける額Fhの中央と顎Jの中央との間隔に相当するHfjとされている。すなわち、
Hnl ≦ H ≦ Hfj
とされる。
【0044】
以上により、凹状展開部70は、乗員の頭部(インパクタ)が領域Cに当たった場合に、該頭部の一部が入り込んで、上記凹壁(後側副チャンバ42の前側セル42F及び後側セル42Rにおける凹状展開部70に臨む部分)に接触する構成とされている。すなわち、凹状展開部70は、後側副チャンバ42における乗員の頭部との接触面積を増すための接触面積拡大手段として捉えることができる。
【0045】
次に、第1の実施形態の作用を説明する。
【0046】
上記構成のカーテンエアバッグ装置10では、適用された自動車Vに側面衝突が生じた場合、側突センサ30から側突検出信号を受けたエアバッグECU34は、側面衝突が生じた側のインフレータ25を作動させる。すると、カーテンエアバッグ12がインフレータ25からガス供給を受けて膨張され、該カーテンエアバッグ12の主チャンバ36、すなわち前側主チャンバ36F、後側主チャンバ36Rが展開される。これにより、側面衝突側の前席乗員は、頭部が前側主チャンバ36Fにて保護され、側面衝突側の後席乗員は頭部が後側主チャンバ36Rにて保護される。
【0047】
また、側面衝突に続いて自動車Vにロールオーバが生じた場合には、ロールオーバセンサ32からR/O検出信号を受けたエアバッグECU34は、反側突側のインフレータ25を作動させる。一方、側面衝突とは独立して自動車Vにロールオーバが生じた場合には、ロールオーバセンサ32からR/O検出信号を受けたエアバッグECU34は、左右両側のインフレータ25を作動させる。これらにより、車幅方向の両側でカーテンエアバッグ12が展開され、乗員の頭部がロールオーバに対し保護される。
【0048】
ロールオーバの際に前席乗員の頭部が前側副チャンバ40にて保護される場合、上端側がフロントピラー16にオーバラップすると共に下端側がフロントサイドドア26にオーバラップする前側副チャンバ40は、上下端をフロントピラー16、フロントサイドドア26に係合(当接)させつつ前席乗員の頭部(インパクタI)の車幅方向外側への変位を抑制する。
【0049】
ロールオーバの際に前席乗員の頭部が前側主チャンバ36Fにて保護される場合、該前側主チャンバ36Fが後端側にピラーラップ部36FPを有する前後方向に長い筒状を成しているため、ロールオーバの際に前席乗員の頭部の車幅方向外側への移動が効果的に抑制される。また、カーテンエアバッグ装置10では、前側副チャンバ40が上下方向に長い筒状を成しているため、該前側副チャンバ40がフロントピラー16及びフロントサイドドア26に係合されつつ、ロールオーバの際に車室前端側(打点A1を含む部分)で前席乗員の車幅方向外向きの移動が効果的に抑制される。
【0050】
そして、ロールオーバの際に後席乗員の頭部が後側副チャンバ42にて保護される場合、図3に示される如く、上端がガス供給通路35を介してルーフサイド部18に連結された後側副チャンバ42の下端側が側面視でリヤサイドドア28とオーバラップするように展開される。この後側副チャンバ42によって、後席乗員の頭部(インパクタI)の車幅方向外側への変位が抑制される。
【0051】
ここで、カーテンエアバッグ装置10では、後側副チャンバ42に凹状展開部70が設けられている。このため、ロールオーバの際に後席乗員の頭部が後側副チャンバ42の領域C付近の部分にて保護される場合に、乗員の頭部の一部が凹状展開部70に入り込み、該凹状展開部70の凹壁(各チャンバ、通路)との接触面積が増す。
【0052】
例えば凹状展開部70が設けられていない比較例に係るカーテンエアバッグでは、乗員頭部とチャンバ表面との接触面積が小さい。このため、本比較例では、カーテンエアバッグと乗員頭部との相対変位に伴う摩擦力、すなわち乗員の頭部が車幅方向に移動する力が小さい。この対策として本比較例では、カーテンエアバッグの内圧を高くしたり、後側副チャンバに相当する部分のリヤサイドドア28とのオーバラップ量を増したりする等の対策が要求される。これらの対策は、何れもエアバッグの容量すなわちインフレータ25の容量の増大に繋がる。
【0053】
これに対してカーテンエアバッグ装置10では、上記の通り凹状展開部70を設けた構成によって、後側副チャンバ42と乗員頭部との接触面積が上記比較例として比べて大きくなる。この摩擦力によって乗員頭部が車幅方向外側に移動するのを抑制することができる。すなわち、図3に示される如く凹状展開部70の中央(打点C1)にインパクタIが衝突する例で説明すると、インパクタIと後側副チャンバ42との間には矢印Ffにて示される摩擦力が生じ、インパクタIの車幅方向外側への移動を規制する。より具体的には、摩擦力Ffの車幅方向内向きの分力Ffiが、インパクタIを車幅方向外側に移動させる慣性力に抗することにより、乗員頭部が車幅方向外側に移動することが抑制される。
【0054】
そして、カーテンエアバッグ12に凹状展開部70を設定する構成では、上記比較例の如くカーテンエアバッグ12の内圧を増したりリヤサイドドア28との係合部位を増したりすることなく、所要の頭部保護性能を得ることができる。このため、比較例に対しインフレータ25の容量を小さく抑えることができる。
【0055】
このように、本実施形態に係るカーテンエアバッグ装置10では、ロールオーバに対する乗員の保護性能を確保しながら、カーテンエアバッグ12の容量を小さく抑えることができる。
【0056】
また、凹状展開部70を成す三角シーム66が側面視で略三角形状をしている。このため、非膨張部68の面積あたりの周長が長く、カーテンエアバッグ12における凹状展開部70の凹壁を成す部分、すなわちガス供給通路35、後側副チャンバ42の前側セル42F、後側セル42Rの展開厚みを確保しやすい。これにより、カーテンエアバッグ12の展開により凹状展開部70が形成される構成において、後側副チャンバ42の厚みを確保して乗員頭部の緩衝ストロークを大きく設定することができる。
【0057】
さらに、ガス供給通路35と後側副チャンバ42の前側セル42F、後側セル42Rとの間に凹状展開部70が設定されている。すなわち、凹状展開部70は、ガス供給通路35と後側副チャンバ42との隙を有効に利用し形成されている。この実施形態では、ガス供給通路35と後側副チャンバ42とを区画するシーム60と、及び後側副チャンバ42の前側セル42Fと後側セル42Rとを区画するシーム63との接続部(合流部)を有効に利用することで、凹状展開部が形成される。
【0058】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る車両用エアバッグ装置80について、図5に基づいて説明する。なお、上記第1の形態の構成と基本的に同様の構成については、上記第1の形態の構成と同一の符号を付して、その説明、図示を省略する場合がある。
【0059】
図5には、第2の実施形態に係る車両用エアバッグ装置80が図1に対応する側面図にて示されている。この図に示される如く、車両用エアバッグ装置80は、例えばSUV等の大型車両に適用され、フロントピラー16から荷室(第3列シート)の側方にかけて膨張、展開されるカーテンエアバッグ82を備えている。すなわち、カーテンエアバッグ82は、フロントピラー(Aピラー)16からCピラー84、Dピラー86まで至る構成とされている。
【0060】
このカーテンエアバッグ82は、第1の展開部としての第1列主チャンバ88、第2列主チャンバ90、及び第3列主チャンバ92と、第2の展開部としての第1列副チャンバ94、及び第2列副チャンバ96を有する。また、カーテンエアバッグ82は、第1列主チャンバ88、第2列主チャンバ90、第2列副チャンバ96にガスを供給するガス供給通路としての前側ガス供給通路98と、第3列主チャンバ92にガスを供給する後側ガス供給通路100とを有する。前側ガス供給通路98は、第1列主チャンバ88、第2列主チャンバ90、及び第2列副チャンバ96の上側でルーフサイド部18に沿って展開される構成とされている。図5において、前後方向に沿って3枚のサイドウインドウガラス14が設けられており、最後方(図示最右側)のサイドウインドウガラス14は固定式となっている。
【0061】
さらに、カーテンエアバッグ82は、略全長に亘ってベルトラインBLの下側に突出してフロントサイドドア26、リヤサイドドア28とオーバラップするドアラップ部102を有する。ドアラップ部102は、第1列主チャンバ88(第1列副チャンバ94)、第2列主チャンバ90(第2列副チャンバ96)、第3列主チャンバ92の各下部を連通する機能も有している。
【0062】
以上説明したカーテンエアバッグ82では、各チャンバ88〜96、通路98、100が適宜シーム106によって区画されている。また、インフレータ25は、カーテンエアバッグ装置10におけるインフレータ25よりも大容量とされ、側面視で横臥した「H」字状を成すディフューザ104によって、前側ガス供給通路98、後側ガス供給通路100のそれぞれにガスを供給する構成とされている。
【0063】
そして、車両用エアバッグ装置80では、第2列副チャンバ96内に凹状展開部110が設けられている。凹状展開部110は、環状の縫製部としての円環状シーム108によって形成された非膨張部112を底として形成されている。この実施形態では、円環状シーム108すなわち非膨張部112の周縁は円形又は上下に長い楕円形状とされており、側面視で略円形又は楕円形の凹状展開部110が形成される構成とされている。
【0064】
また、この実施形態では、円環状シーム108は、シーム106における第2列副チャンバ96と前側ガス供給通路98、ドアラップ部102とを区画する上下一対の浮島状シーム部106Iに連続されている。車両用エアバッグ装置80における他の構成は、カーテンエアバッグ装置10における対応する構成と同様に構成されている。
【0065】
したがって、第2の実施形態に係る車両用エアバッグ装置80によっても、ガス供給通路35と後側副チャンバ42との間に凹状展開部70が配置されたことによる作用効果を除いて、基本的に第1の実施形態に係る構成と同様の作用によって同様の効果を得ることができる。
【0066】
なお、上記した各実施形態では、三角シーム66、円環状シーム108が他のシーム60、63、106に連続している例を示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、独立した環状のシームを形成することで凹状展開部等が形成(展開)される構成としても良い。
【0067】
また、上記した各実施形態では、各チャンバや通路がインフレータ25からのガス供給を受けて側面衝突時及びロールオーバ時に展開される例を示したが、例えば、前側副チャンバ40、後側副チャンバ42、第1列副チャンバ94、第2列副チャンバ96の少なくとも一部を他の部分よりも遅れて展開されるディレイチャンバとして構成しても良い。ディレイチャンバは、例えば内径が40mm〜70mmの絞り通路を介してガスが供給されるようにすることで構成することができる。
【0068】
さらに、上記した実施形態では、凹状展開部70、110の底を非膨張部68、112が成す例を示したが本発明はこれに限定されず、例えば、非膨張部68、112に代えて、周囲よりも薄く展開される展開厚み規制部が形成される構成としても良い。また、本発明における環状の縫製部は、連続環状である構成には限られず、断続的に環状を成すものであっても良い。
【0069】
またさらに、上記した実施形態では、前側副チャンバ40がロール折り等されてフロントピラー16内に収納された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ロール折り等された前側副チャンバ40を主チャンバ36の前端側に折り返して該主チャンバ36と共にルーフサイド部18内に収納しても良く、ロール折り等された前側副チャンバ40をルーフ前縁に沿ってルーフ内に配置しても良い。すなわち、本発明におけるエアバッグは、全体としてルーフサイド部18に収納される構成には限られず、少なくとも主チャンバ36がルーフサイド部18に収納される構成であれば良い。
【0070】
また、上記した実施形態では、後席及びリヤサイドドア28を備えた自動車Vに本発明が適用された例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、リヤサイドドア28を備えない2ドア自動車、後席を備えない2座の自動車等に本発明を適用することが可能である。
【0071】
その他、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で各種変形して実施可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0072】
10 カーテンエアバッグ装置
12 カーテンエアバッグ
14 サイドウインドウガラス
16 フロントピラー(乗降用の開口部の上縁部)
18 ルーフサイド部(乗降用の開口部の上縁部)
22・24 ドアオープニング(乗降用の開口部)
25 インフレータ
35 ガス供給通路
36F 前側主チャンバ(第1の展開部)
36R 後側主チャンバ(第1の展開部)
40 前側副チャンバ(第2の展開部)
42 後側副チャンバ(第2の展開部)
42F 前側セル(セル)
42R 後側セル(セル)
66 三角シーム(環状の縫製部)
70 凹状展開部
80 車両用エアバッグ装置
82 カーテンエアバッグ
88 第1列主チャンバ(第1の展開部)
90 第2列主チャンバ(第1の展開部)
92 第3列主チャンバ(第1の展開部)
94 第1列副チャンバ(第2の展開部)
96 第2列副チャンバ(第2の展開部)
98 前側ガス供給通路(ガス供給通路)
108 円環状シーム(環状の縫製部)
110 凹状展開部
BL ベルトライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体におけるサイドウインドウガラス配設部位の上縁部に折り畳み状態で収納され、車両の前記サイドウインドウガラス配設部位の上縁部に沿って展開されるガス供給通路と、
前記ガス供給通路を通じてガス供給を受けることで、車両の側面衝突の際及び車両のロールオーバの際にガス供給通路の下側で膨張、展開される第1の展開部と、
前記ガス供給通路又は前記第1の展開部を通じてガス供給を受けることで、少なくとも車両のロールオーバの際に、前記第1の展開部に対する車両前方で展開される第2の展開部と、
側面視における前記第2の展開部内又は該第2の展開部と前記ガス供給通路との間の一部が、環状の縫製部により展開が規制されることで形成される凹状展開部と、
を備えたカーテンエアバッグ装置。
【請求項2】
前記凹状展開部は、側面視で三角形状の前記縫製部によって、側面視における前記第2の展開部内又は該第2の展開部と前記ガス供給通路との間の一部の展開が規制されることで形成される請求項1記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項3】
前記第2の展開部は、側面視で前記ガス供給通路の下側で展開されると共に、前後に並んだ2つのセルを含んで構成されており、
前記凹状展開部は、前記ガス供給通路の下縁と前記前後に並んだセルの上端側とを区画する側面視で三角形状の前記縫製部によって、側面視における前記第2の展開部内又は該第2の展開部と前記ガス供給通路との間の一部の展開が規制されることで形成される請求項2記載のカーテンエアバッグ装置。
【請求項4】
前記第2の展開部は、下端が前記ベルトラインよりも下方に至るように展開される請求項1〜請求項3の何れか1項記載のカーテンエアバッグ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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