説明

カーテン布の成形方法及びカーテン布

【課題】 カーテンの上縁部を除いた必要部位のみにプリーツを形成する方法と、プリーツを有するカーテンを提供する。
【解決手段】 プリーツを形成する方法は、(1)上下左右の縁部に対する所要の縫製を完了したカーテン布1を用意する工程、(2)上記カーテン布1の上端から所定幅の上縁部2以外の任意部位を圧縮状態で固定することにより、当該部位に不規則形状の皺5を形成する工程、(3)上縁部2以外の任意部位を圧縮固定された上記カーテン布1を成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、上縁部以外の任意部位に不規則な皺のプリーツを熱プレス成形する工程からなる。上記方法は、カーテン布1を縦方向に紙管4内に引き込んで上縁部2を露出させ、紙管4内で多数の不規則な皺を圧縮形成する工程と、このカーテン布1を紙管4もろとも、成形釜内装入する工程とにより実施できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フックを装着する上端から所定幅の上縁部分以外の部分に不規則形状のプリーツを熱プレス成形する方法と、それによって製作されるカーテン布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばカーテン生地へのプリーツの加工方法として、特許文献1に記載されるものか知られている。このプリーツ加工方法は、互いに平行な複数の折り目線の間に湾曲した山形形状部を有するプリーツ加工用の特殊機能紙からなる2枚の型紙間に、カーテン生地を挟み込んで固定し、2枚の型紙に挟持されたカーテン生地を、蒸気により加圧加熱して、型紙の形状に対応するプリーツを形成するものである。
また、一般に、布に対するプリーツの加工は、大型の加熱釜を用い、生地の状態で一時に大量に処理する方法で行われている。
【特許文献1】特開平6−315429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来のプリーツ形成方法では、縫製前のカーテン生地にプリーツを加熱プレス成形するため、生地の全面に一様にプリーツが形成されることになる。しかしながら、特にカーテンの上縁部となる部位にプリーツが形成されると、後のヒダ縫い加工のような縫製工程のじゃまになるし、縫製されたカーテンとしても美感に欠けるものとなる。
したがって、この発明は、カーテンの上縁部を除いた必要部位のみにプリーツを形成する方法と、この方法により制作されるプリーツを有するカーテンを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この出願に係る発明においては、上記課題を解決するため、以下の工程を包含する方法を採用する。すなわち、(1)上下左右の縁部に対する所要の縫製を完了したカーテン布を用意する工程、(2)上記カーテン布の上端から所定幅の上縁部以外の任意部位を圧縮状態で固定することにより、当該部位に不規則形状の皺を形成する工程、(3)上縁部以外の任意部位を圧縮固定された上記カーテン布を成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、上縁部以外の任意部位に不規則な皺のプリーツを熱プレス成形する工程である。
この出願に係る発明は、上記方法において、カーテン布の上縁部以外の任意部位を縦方向に紙管内に引き込むことにより、紙管内で当該任意部位に多数の不規則な皺を圧縮形成する工程と、圧縮して紙管に挿通されたカーテン布を、成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、上縁部以外の任意部位に不規則な皺のプリーツを熱プレス成形する工程によりカーテン布を成形する。
また、この出願に係る発明は、上記方法において、カーテン布の上縁部以外の任意部位を上下方向及び横方向に任意に圧縮した状態で紙容器内に圧入することにより、紙容器内で当該任意部位に多数の不規則な皺を形成する工程と、紙容器内に圧入されたカーテン布を成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、上縁部以外の任意部位に不規則な皺のプリーツを熱プレス成形する工程とによりカーテン布を成形する。
また、この出願に係る発明は、上記方法において、カーテン布の上縁部以外の任意部位を縦方向の軸に沿って多数回捻ることにより、当該任意部位に圧縮された捻り皺を形成する工程と、当該捻られた任意部位を圧縮状態で固定する工程と、捻られたカーテン布を成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、上縁部以外の任意部位に捻り皺のプリーツを熱プレス成形する工程とによりカーテン布を成形する。
また、この出願に係る発明は、上記方法において、カーテン布の上縁部以外の任意部位を複数の任意の位置で摘んで圧縮した状態で緊縛することにより、当該緊縛部位に圧縮皺を形成する工程と、このカーテン布を成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、上縁部以外の任意部位に圧縮皺のプリーツを熱プレス成形する工程とによりカーテン布を成形する。
また、この出願に係る発明は、上記方法において、カーテン布の上縁部以外の任意部位を任意形状に折り畳むことにより折り皺を形成する工程と、折り畳まれたカーテン布の上縁部以外の任意部位を、任意の一軸に沿って多数回捻ることにより、当該任意部位に圧縮された捻り皺を形成する工程と、当該捻られた任意部位を圧縮状態で固定する工程と、このカーテン布を成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、上縁部以外の任意部位に折り皺と捻り皺が合成されたプリーツを熱プレス成形する工程とによりカーテン布を成形する。
さらに、この出願に係る発明は、上記方法において、熱プレス成形する工程の前に、カーテン布の上縁部を気密性の被覆部材で被覆する工程を付加することによりカーテン布を成形する。
そして、この出願に係る発明は、上端から所定幅の上縁部以外の任意部位に、熱プレス成形によるプリーツが形成されているカーテン布を提供する。
【発明の効果】
【0005】
この出願に係る発明によれば、上下左右の縁部に対する所要の縫製を完了したカーテン布に、後処理で不規則形状のプリーツを形成するため、プリーツが縫製工程の障害とならず、したがって、特殊技能がなくても効率的に縫製を行うことができる。上縁部には、プリーツが形成されないため、外観の美しいカーテン布が得られる。小規模の設備で、カーテン布1枚毎の小ロット処理が可能で、安価なプリーツカーテンを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1ないし図4はそれぞれ本発明に係るプリーツ形成方法示す説明図、図5は本発明に係るプリーツ形成方法により製作されたカーテンの一例を示す正面図である。
【0007】
この発明においては、上下左右の縁部に対する所要の縫製を完了したカーテン布1の上下左右縁部(中間部位)に、不規則形状のプリーツを形成するために、当該部位を圧縮状態で固定して、不規則形状の皺を形成する。次いで、任意部位を圧縮固定されたカーテン布1を成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間(例えば95℃、35分)置いて、任意部位に不規則な皺のプリーツを熱プレス成形する。
【0008】
さらに具体的には、図1(a)に示すように、上下左右縁部に対する所要の縫製を完了したカーテン布1を用意する。カーテン布1の上端から所定幅の上縁部2及び下端から所定幅の下縁部3以外の中間部位に不規則形状のプリーツを形成するために、当該カーテン布1を縦方向に紙管4内に引き込む。図1(b)に示すように、カーテン布1の上縁部2及び下縁部3を紙管4から出して自由にし、紙管4内で中間部位に多数の不規則な皺5を圧縮形成する。紙管4から出た上縁部2及び下縁部3には、合成樹脂製の気密な袋のような被覆部材6を被せ、密封する。このカーテン布1を、紙管4もろとも成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、中間部位に不規則な皺のプリーツを熱プレス成形する。このカーテン布1を乾燥させて紙管4から取り出し、展開すれば、図5に示すように、上端から所定幅の上縁部2及び下端から所定幅の下縁部3以外の部位に、熱プレス成形によるプリーツ7が形成されたカーテンとなる。
【0009】
なお、デザイン上の必要に応じ、下縁部3にはプリーツを形成することができる。この場合には、下縁部3は被覆部材6で被覆せず、紙管4内に圧入する。そして、上端から所定幅の上縁部2以外の下方部位の全面に、熱プレス成形によるプリーツを形成することができる。
【0010】
図2に示す実施形態においては、上下左右縁部に対する所要の縫製を完了したカーテン布1を用意し、このカーテン布1の所定幅の上縁部2及び下縁部3以外の部位を上下方向及び横方向に任意に圧縮した状態で紙容器7内に圧入する。カーテン布1の中間部には、紙容器8内において、多数の不規則な皺5が形成される。紙容器8には通気用の開口8aを設けておく。このカーテン布1を、同様に紙容器7もろとも成形釜内に入れて、加熱蒸気雰囲気に所定時間置くことで、上縁部2及び下縁部3以外の部位に不規則な皺のプリーツを熱プレス成形する。
【0011】
先の実施形態のように、紙容器8から出た上縁部2及び下縁部3に被覆部材6で被覆すれば当該部位の保護が補完されるが、カーテン布1の素材の性質等、種々の条件により被覆を要しない場合もある。
【0012】
図3の実施形態においては、上下左右縁部に対する所要の縫製を完了したカーテン布1を用意し、このカーテン布1を、図3(a)に示すように、例えばフック装着間隔に合わせた折り幅で蛇腹式に多重折りする。次いで、図3(b)に示すように、所定幅の上縁部2及び下縁部3以外の部位を縦方向の軸に沿って多数回捻ることにより、中間部位に圧縮された捻り皺5を形成する。次いで、図3(c)に示すように、カーテン布1の捻られた部位を圧縮状態で紐9等により固定する。このカーテン布1を成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、中間部位に捻り皺のプリーツを熱プレス成形する。
【0013】
なお、カーテン布1を折る工程では、デザインに応じ、縦方向、横方向、所望の方向に折って任意の折り皺を形成することができる。折り皺は、公知のシャワー加工によって形成することもできる。この折り皺と捻り皺とが複合して不規則形状のプリーツが形成される。また、図示しないが、折り皺を形成せずに、ランダムに手繰り寄せた後に、任意方向の軸に沿って捻って固定することにより、捻り皺のみの不規則形状のプリーツを形成することもできる。
【0014】
図4の実施形態においては、上下左右縁部に対する所要の縫製を完了したカーテン布1を用意し、このカーテン布1を、図4(b)に示すように、所定幅の上縁部2及び下縁部3以外の部位を複数の任意の位置で摘んで圧縮し、紐等で緊縛する。形成された複数の緊縛部位10に圧縮皺を形成する。このカーテン布1を成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、上縁部2及び下縁部3以外の部位に圧縮皺のプリーツを熱プレス成形する。
【0015】
なお、いずれの実施形態の場合も、下縁部3にはプリーツを形成することができる。また、プリーツを形成しない上縁部2又は下縁部3を、熱プレス成形する工程の前に、気密性の被覆部材6で被覆して保護することができる。
【0016】
いずれの実施形態の場合にも、プリーツを形成する工程の前に、カーテン布の上下左右縁部に所要の縫製が施されているから、どのようなプリーツが形成されても、縫製作業の障害となることがない。カーテン布1をレールに吊ることにより、プリーツを形成しない上縁部2(一般にここには芯地が縫い込まれる。)は、整然とした美しいウェーブを形成し、下方の不規則形状のプリーツと相まって独特の美感を呈するものとなる。下縁部3にプリーツを形成しなければ、当該部位のフラット性を維持することもできる。完成又は半完成のカーテン布1を個別に加工するので、大きな設備を要さず、また生地の無駄も生じないので、低コストで美しいプリーツ加工を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
この発明は、フックを装着する上端から所定幅の上縁部分以外の部分に不規則形状のプリーツを熱プレス成形する方法として利用される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るプリーツ形成方法示す説明図である。
【図2】プリーツ形成方法の他の実施形態を示す説明図である。
【図3】プリーツ形成方法の他の実施形態を示す説明図である。
【図4】プリーツ形成方法の他の実施形態を示す説明図である。
【図5】本発明に係るプリーツ形成方法により製作されたカーテンの一例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 カーテン布
2 上縁部
3 下縁部
4 紙筒
5 皺
6 被覆部材
7 プリーツ
8 紙容器
8a 通気開口
9 紐
10 緊縛部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下左右の縁部に対する所要の縫製を完了したカーテン布を用意する工程と、
前記カーテン布の上端から所定幅の上縁部以外の任意部位に、不規則形状のプリーツを形成するために、当該部位を圧縮状態で固定することにより、不規則形状の皺を形成する工程と、
前記任意部位を圧縮固定された前記カーテン布を成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、任意部位に不規則な皺のプリーツを熱プレス成形する工程と、を含むことを特徴とするカーテン布の成形方法。
【請求項2】
上下左右縁部に対する所要の縫製を完了したカーテン布を用意する工程と、
前記カーテン布の上端から所定幅の上縁部以外の任意部位に不規則形状のプリーツを形成するために、当該カーテン布の上縁部以外の部位を縦方向に紙管内に引き込むことにより、紙管内で任意部位に多数の不規則な皺を圧縮形成する工程と、
任意部位が圧縮されて紙管に挿通された前記カーテン布を、成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、任意部位に不規則な皺のプリーツを熱プレス成形する工程と、を含むことを特徴とするカーテン布の成形方法。
【請求項3】
上下左右縁部に対する所要の縫製を完了したカーテン布を用意する工程と、
前記カーテン布の上端から所定幅の上縁部以外の任意部位を上下方向及び横方向に任意に圧縮した状態で紙容器内に圧入することにより、紙容器内で当該任意部位に多数の不規則な皺を形成する工程と、
前記任意部位が前記紙容器内に圧入された前記カーテン布を成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、前記上縁部以外の任意部位に不規則な皺のプリーツを熱プレス成形する工程と、を含むことを特徴とするカーテン布の成形方法。
【請求項4】
上下左右縁部に対する所要の縫製を完了したカーテン布を用意する工程と、
前記カーテン布の上端から所定幅の上縁部以外の任意部位を縦方向の軸に沿って多数回捻ることにより、当該任意部位に圧縮された捻り皺を形成する工程と、
前記カーテン布の捻られた任意部位を圧縮状態で固定する工程と、
任意部位を捻られた前記カーテン布を成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、当該任意部位に捻り皺のプリーツを熱プレス成形する工程と、を含むことを特徴とするカーテン布の成形方法。
【請求項5】
上下左右縁部に対する所要の縫製を完了したカーテン布を用意する工程と、
前記カーテン布の上端から所定幅の上縁部以外の部位を複数の任意の位置で摘んで圧縮した状態で緊縛することにより、当該緊縛部位に圧縮皺を形成する工程と、
前記カーテン布を成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、上縁部以外の部位に圧縮皺のプリーツを熱プレス成形する工程と、を含むことを特徴とするカーテン布の成形方法。
【請求項6】
上下左右縁部に対する所要の縫製を完了したカーテン布を用意する工程と、
前記カーテン布の上端から所定幅の上縁部以外の任意部位を任意形状に折り畳むことにより折り皺を形成する工程と、
折り畳まれた前記カーテン布の上縁部以外の部位を、任意の一軸に沿って多数回捻ることにより、当該任意部位に圧縮された捻り皺を形成する工程と、
前記カーテン布の捻られた任意部位を圧縮状態で固定する工程と、
前記カーテン布を成形釜内の加熱蒸気雰囲気に所定時間置いて、前記任意部位に折り皺と捻り皺が合成されたプリーツを熱プレス成形する工程と、を含むことを特徴とするカーテン布の成形方法。
【請求項7】
前記熱プレス成形する工程の前に、前記カーテン布の上縁部を気密性の被覆部材で被覆する工程を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のカーテン布の成形方法。
【請求項8】
上端から所定幅の上縁部以外の任意部位に、熱プレス成形によるプリーツが形成されていることを特徴とするカーテン布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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