説明

カーテン開閉用ドラム及びカーテン開閉用装置

【目的】極めて簡易な構成により、簡単に温室に保温用等の温室用カーテンを開閉できるようにするとともに、低コストのカーテン開閉用装置及びそれに用いるカーテン開閉用ドラムを提供すること。
【構成】カーテン開閉用ドラムを、カーテン開閉用ワイヤの一端を巻取り巻戻す第1のドラムと、前記カーテン開閉用ワイヤの他端を巻取り巻戻す第1のドラムとは別体の第2のドラムと、駆動軸に固着具によって固着可能とされ、第1のドラム及び第2のドラムとそれぞれ個別に結合・離脱可能とされ、第1のドラムに対応して形成した結合・離脱機構を備えた第1のクラッチ部と、第2のドラムに対応して形成した結合・離脱機構を備えた第2のクラッチ部と、を備える一個のクラッチ部材から成るクラッチとから構成して、前記クラッチが離脱したドラムは前記駆動軸に対して回動自在となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーテン開閉用ドラム及びカーテン開閉用装置に関する。より詳しくは、例えば温室の保温、遮光、吸湿等を目的として、薄膜状のカーテンを開閉しているが、本発明は、カーテン開閉用ドラム及びそれを用いたカーテン開閉用装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薄膜状のカーテンを地上2.3〜2.4m程度の高さ位置に、水平状あるいは棟部を頂点とする山形状に、保温、遮光、吸湿用のカーテンを開閉している。
これらのカーテンを開閉するためのカーテン開閉用装置は、多くの場合図1に示されるように、カーテンの一端付近に設けた駆動ドラムと他端付近に設けた滑車との間にカーテン開閉用ワイヤを無端環状に掛け廻し、駆動ドラムの回転に伴って巻取りと巻戻し方向に相対向して移動するカーテン開閉用ワイヤにカーテンの開閉端を固定して、カーテンを開閉している。このカーテンは相当の重量があるため、これを牽引するカーテン開閉用ワイヤは、それ自体経年変化で伸びることから、駆動ドラム付近のカーテン開閉用ワイヤに弛みやゆるみが生じる。
また、カーテンの荷重、作物の先端部を上方に引っ張るための作物誘引ワイヤの荷重、風の影響、地震力等によって、温室谷部に位置する柱の上部が温室の棟方向に引き寄せられるため生じる温室の枠組みの変形等の原因により、同じく駆動ドラム付近のカーテン開閉用ワイヤに弛みやゆるみが生じることがある。
【0003】
このため、実開昭63−101058号公報に記載された駆動ドラム61は、図4に示されるように、その両端に形成されたフランジ62に複数のカーテン開閉用ワイヤ64の一端を固定するための複数の貫通孔63を穿設し、上述の理由により駆動ドラム61付近のカーテン開閉用ワイヤに弛みやゆるみが生じたとき、巻取り回数の少ない側のワイヤ先端の固定を外し、ワイヤ64を緊張させた後に再度その先端を複数の貫通孔63に挿通して固定している。このようなワイヤ64に弛みやゆるみが生じたときの補正作業は効率が悪く、面倒なものである。また、ワイヤ64に付与される緊張度は、特別の器具も無く人力によってのみ与えられるので、所定の緊張度に到達させることが容易でない。
【特許文献1】実開昭63−101058号公報
【0004】
以上のことから、カーテン開閉用ワイヤ自体の経年変化による伸びや温室の枠組みの変形等を原因とするワイヤに弛みやゆるみが生じたときの補正作業を不要とするべく、ワイヤ緊張度を自動的に所定の緊張度に保つ装置として張力保持部材を設ける発明が実開昭59−36961号公報に提案されている。
図5、6を参照して、この張力保持部材70は、温室の骨組材等に取り付けられた支持腕部材71に固定されるシリンダー部72内に上下動自在にピストン部73が収納され、該ピストン部73に一端が固定された棒状部74が前記シリンダー部72の一端から外部に突出して、二個一対の滑車82、82が一体に固定されるとともに、前記シリンダー部72の一端の底部76とピストン部73の間に引張弾力が付勢されたばね部材77が弾圧収納され、棒状部74に引張弾力が付与された構成からなっている。
このシリンダー部72の端部78は、温室の骨組材等に固定される支持腕材71に固定され、前記棒状部74の下端部には支持枠79が設けられており、てこ支点軸80によって揺動自在にてこ支持杵81が連結されている。てこ支持杵81の両端部には、二個一対の滑車82の支持部材83が支軸84、84によって夫々揺動自在に連結されている。
【0005】
図5に示されるように、一端と他端を逆巻状にカーテン開閉用ドラム61に固定されたカーテン開閉用ワイヤ64は、温室の一側壁部、中央部、他側壁部にそれぞれ固定された滑車85a、86a、87、86b、85bに順に掛け廻されて、無端循環するよう配設されており、また、2枚の温室用カーテン用の開閉装置においては、その基端は温室の両側壁部に、その先端はそれぞれA方向、B方向に無端循環移動するワイヤ64に固定されている。
【特許文献2】実開昭59−36961号公報
【0006】
しかしながら、ワイヤ緊張度を自動的に所定の範囲に保つ装置としての前記張力保持部材70のばね部材77には、弾性変形の範囲に限界があることから、その範囲を超えるワイヤの弛みやゆるみに対しては調整不能となる。これに対応するため、長期間に亘って使用されても伸びにくい材質のワイヤを選択使用したり、温室の骨組みの変形を起こしにくい高品質の材料を選択して使用したり、骨組み強度を増大しようとすると、コストアップを免れない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、温室においてカーテンを開閉するためにカーテン開閉装置を設置した場合、ワイヤに弛みやゆるみが生じたときの補正作業は効率が悪く、面倒なものであり、また、所定のワイヤ緊張度に達することが手作業では容易でない。
また、ワイヤ緊張度を自動的に所定の緊張度に保つ装置を導入した場合であっても、張力保持部材のばね部材の弾性変形の範囲を超えるワイヤの弛みやゆるみに対しては調整不能となる。このため、高品質のワイヤを選択使用したり、温室の骨組みの変形が起こりにくい品質の材料を選択したり、骨組み強度を向上しようとすると、高コストとなることを避けられない。
【0008】
以上の実状に鑑み、本発明は前記従来技術の欠点を克服することを目的とするものであり、極めて簡易な構成により、簡単に温室に保温用等の温室用カーテンを開閉できるようにするとともに、低コストのカーテン開閉用装置及びそれに用いるカーテン開閉用ドラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、請求項1に係る発明は、カーテン開閉用ドラムを、カーテン開閉用ワイヤの一端を巻取り巻戻す第1のドラムと、前記カーテン開閉用ワイヤの他端を巻取り巻戻す第1のドラムとは別体の第2のドラムと、駆動軸に固着具によって固着可能とされ、前記第1のドラム及び前記第2のドラムとそれぞれ個別に結合・離脱可能とされたクラッチとから構成して、前記クラッチが離脱したドラムは前記駆動軸に対して回動自在となるようにした。
【0010】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたカーテン開閉用ドラムにおいて、前記第1のドラムと前記第2のドラムとを円筒スリーブから構成し、前記クラッチを備えない開放端部には、前記駆動軸に回動不能に挿通された閉鎖部材により閉鎖することを特徴としている。
【0011】
さらに、請求項3に係る発明は、請求項1乃至請求項2のいずれかに記載されたカーテン開閉用ドラムにおいて、前記クラッチを、前記第1のドラムに対応して形成した結合・離脱機構を備えた第1のクラッチ部材と、該クラッチ部材とは独立した別個の前記第2のドラムに対応して形成した結合・離脱機構を備えた第2のクラッチ部材とから構成したことを特徴としている。
【0012】
さらに、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項2のいずれかに記載されたカーテン開閉用ドラムにおいて、前記クラッチを、前記第1のドラムに対応して形成した結合・離脱機構を備えた第1のクラッチ部と、前記第2のドラムに対応して形成した結合・離脱機構を備えた第2のクラッチ部と、を備える一個のクラッチ部材から構成したことを特徴としている。
【0013】
さらに、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載されたカーテン開閉用ドラムにおいて、前記第1のロールと前記第2のロール及び前記クラッチを含むカーテン開閉用ドラム全体を、該ドラムの軸を含む面において複数個に分割したことを特徴としている。
【0014】
さらに、請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載されたカーテン開閉用ドラムにおいて、前記ドラムにドラム回転工具を連結する工具連結部を具備させたことを特徴としている。
【0015】
さらにまた、請求項7に係る発明は、温室のカーテン開閉装置を、一端及び他端が駆動原により正逆回転するカーテン開閉用ドラムに捲回固定され、中間部が温室の構造部材に固定された軌道変換器に巻き掛けられて、無端環状軌道を往復動するカーテン開閉用ワイヤと、一端が温室の構造部材に固定され、他端が前記カーテン開閉用ワイヤに固定具により固定された少なくとも温室上方を開閉するカーテンとから構成するとともに、前記カーテン開閉用ドラムを、カーテン開閉用ワイヤの一端を巻取り巻戻す第1のロールと、前記カーテン開閉用ワイヤの他端を巻取り巻戻す第1のロールとは別体の第2のロールと、駆動軸に固着具によって固着可能とされ、前記第1のロール及び前記第2のロールとそれぞれ個別に結合・離脱可能とされたクラッチとから構成して、前記クラッチが離脱したロールは前記駆動軸に対して回動自在となるようにした。
【0016】
さらに、請求項8に係る発明は、請求項7に記載された温室のカーテン開閉装置において、前記カーテン開閉用ドラムを、温室の棟方向に延設されて駆動モータによって回転される駆動軸に固定するとともに、前記軌道変換器を、温室の一側壁上部の構造部材に固定した往・復路用の二個一対の滑車と、温室の他側壁上部の構造部材に固定した往復路反転用の一個の滑車とから構成することを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に係る発明によれば、カーテン開閉用ドラムを、それぞれ別体とした第1のドラムと第2のドラムとから構成して、クラッチがそれぞれ個別に結合・離脱可能とされているので、クラッチが離脱したドラムは駆動軸に対して回動自在となるから、カーテン開閉用ドラム付近のカーテン開閉用ワイヤに弛みやゆるみが生じたときは、ワイヤ先端の固定を外してワイヤを緊張させた後に再度その先端を複数の貫通孔に挿通して固定する作業に代えて、クラッチを離脱させてドラムをカーテン開閉用ワイヤの巻取り方向へ回転させるだけでワイヤの緊張度を高めることができるので、ワイヤに弛み等が生じたときの補正作業の効率を格段に向上することができる。また、ワイヤに付与される緊張度は、駆動軸に対してフリーとなっているドラムの回転トルクを利用してワイヤを巻き取ることで容易に所定の緊張度を付与することができる。
さらに、ワイヤが弛めば限度無く更なる巻取りが可能となって、材料コストを低減しつつ簡便にワイヤの弛み等を調整することができる。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、第1のドラムと第2のドラムとを円筒スリーブから構成し、クラッチを備えない開放端部には、駆動軸に回動不能に挿通された閉鎖部材を設けることにより閉鎖しているので、第1のドラムと第2のドラムを簡易な構造で安価に提供することができる。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、クラッチを、第1のドラムに対応して形成した結合・離脱機構を備えた第1のクラッチ部材と、該クラッチ部材とは独立した別個の、第2のドラムに対応して形成した結合・離脱機構を備えた第2のクラッチ部材とから構成したので、第1及び第2のクラッチ部材を対称形とすることにより、部品点数を少なくした鋳型を1種類としつつ小型化することができるから、製造コストを低減できる。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、クラッチを、第1のドラムに対応して形成した結合・離脱機構を備えた第1のクラッチ部と、第2のドラムに対応して形成した結合・離脱機構を備えた第2のクラッチ部と、を備える一個のクラッチ部材から構成したので、高コストの主要部品の点数を削減することができる。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、前記第1のロールと前記第2のロール及び前記クラッチを含むカーテン開閉用ドラム全体を、該ドラムの軸を含む面において複数個に分割しているので、カーテン開閉用ドラムを駆動軸の端部にて挿通した後取付け位置まで移動させることなく、所定の取付け位置に容易に取付けることができる。また、各請求項に係るカーテン開閉用ドラムは、クラッチ、ドラム、閉鎖部材等の数個の部品を現場で手順にしたがって組み立てながら取付けるものであるから、該部品の挿通手順を間違えたときは、今後組立てる予定の部品を全て駆動軸から外して必要な部品を挿通し直す必要があるが、この発明によればその必要がない。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、前記ドラムにドラム回転工具を連結する工具連結部を具備させているので、付属ドラム回転工具を用いることができるから、ドラムを直接手で回転させるのに比べ小さな力で回転させ得る。
また、カーテン開閉用ワイヤのテンションをドラムの回転数と回転角度により数値的、視覚的に正確に調整し得て、微妙な調整も可能となる。
【0023】
請求項7に係る発明によれば、温室のカーテン開閉装置を、一端及び他端が駆動原により正逆回転するカーテン開閉用ドラムに捲回固定され、中間部が温室の構造部材に固定された軌道変換器に巻き掛けられて、無端環状軌道を往復動するカーテン開閉用ワイヤと、一端が温室の構造部材に固定され、他端が前記カーテン開閉用ワイヤに固定具により固定された少なくとも温室上方を開閉するカーテンとから構成するとともに、前記カーテン開閉用ドラムを、請求項1に係るものとしたので、ワイヤが弛んだときの高所における作業を容易可能、簡素化でき、ひいてはその作業の安全性を高めることができる。
【0024】
請求項8に係る発明によれば、請求項5に記載された温室のカーテン開閉装置において、前記カーテン開閉用ドラムを、温室の棟方向に延設されて駆動モータによって回転される駆動軸に固定するとともに、軌道変換器を、温室の一側壁上部の構造部材に固定した往・復路用の二個一対の滑車と、温室の他側壁上部の構造部材に固定した往復路反転用の一個の滑車とから構成したので、駆動軸を棟木と直交する方向に設けたものに比し、ワイヤの長さを短くすることにより、ワイヤ自体の伸び量を小さくして、ワイヤの弛み等が発生し難くすることができる。
【実施例】
【0025】
図1は、カーテン開閉装置を装備した温室の一部を仮想的に示す温室の斜視図、図2は、本発明に係るカーテン開閉用ドラムの実施例の斜視図、図3ABは、本発明に係るカーテン開閉用ドラムの分解正面図、同左側面図、図4は、従来のカーテン開閉用ドラムの斜視図、図5は、その他の従来のカーテン開閉装置を備えた温室の正面図、図6は、その張力保持部材の一部縦断側面図である。
【0026】
図1乃至図3Cを参照して、本発明に係るカーテン開閉装置とそれに用いるカーテン開閉用ドラムについて詳細に説明する。
1は本発明のカーテン開閉装置を適用する温室を概略的に示すものであり、2は柱、2’は温室の棟木、桁、梁、合掌等の構造部材を仮想的に示す。
カーテン開閉装置3は、カーテン開閉用ドラム6と、温室内に架設された複数の滑車27、28に掛け廻されて無端循環するカーテン開閉用ワイヤ10と、開閉端をこのワイヤ10に固定されて温室内の上部と側部を被覆し開放するカーテン8とから構成されている。
【0027】
カーテン開閉用ドラム6は、減速装置を設ける等により減速機能を有する正逆回転可能な駆動モータ4によって正逆回転駆動される駆動軸5に固定されている。駆動軸5は、桁材の高さよりも高い位置で合掌、垂木、母屋等の部材に吊り下げられた軸受9に支持され、温室1の棟方向に延設されて駆動モータ4によって正逆回転される。
7はカーテン保持用のワイヤである。
【0028】
カーテン開閉用ワイヤ10は、一端及び他端が、駆動原である駆動モータ4により正逆回転するカーテン開閉用ドラム6に捲回固定され、温室1の一側壁上部の構造部材2’等に固定した往・復路用の二個一対の滑車27,27と、温室の他側壁上部の構造部材2’等に固定した軌道変換器である、往復路反転用の一個の滑車28に掛け廻されて無限帯とされている。
【0029】
図2、図3A乃至図3Cを参照して、カーテン開閉用ドラム6の構造について詳述する。
カーテン開閉用ドラム6は、主として2個の円筒スリーブ15、16と、これら円筒スリーブの間に内嵌されて両者を回動自在に閉鎖する閉鎖部材20と、連結された円筒スリーブ15、16の両端部に設けられるクラッチ部材11、11とから構成されている。
【0030】
クラッチ部材11、11のスリーブ軸心には、図3Bに示されるように、駆動軸5を挿通する角孔18が形成されており、駆動軸5を挿通した後ネジ孔13にボルト(図示省略)を螺合することにより、クラッチ部材11は軸方向への移動を規制されて駆動軸5と一体化される。
【0031】
クラッチのスリーブ周表面には、蝶ネジ22や6角ボルト21の先端部を受け入れるための陥凹部12が周方向に多数形成されている。14はフランジで、その外周面は円筒スリーブ15,16の外周面と面一である。
クラッチ部材11のスリーブは、前記円筒スリーブ15,16に内嵌され、先ず蝶ネジ22にて仮止めし、その位置でよければ6角ボルト21にて本止めして該スリーブと一体化される。
クラッチ部材のスリーブと円筒スリーブを一体化し、また別体化することが、クラッチの結合・離脱機構を構成している。
クラッチ11,11が離脱した円筒スリーブ15、16は前記駆動軸に対して回動自在となる。
【0032】
円筒スリーブ15は、カーテン開閉用ワイヤ10の一端を、円筒スリーブに設けた切込みを引き上げ形成したワイヤ端部固定片17に結び付ける等して固定し、正回転にて巻取り、逆回転にて巻戻す第1のドラムである。
円筒スリーブ16は、カーテン開閉用ワイヤ10の他端を、同様のワイヤ端部固定片17に結び付ける等して固定し、正回転にて巻戻し、逆回転にて巻取る第2のドラムである。
第1のドラム15と第2のドラム16とで、カーテン開閉用ドラム6が構成される。
【0033】
閉鎖部材20は、その軸心に、クラッチ部材11と同様の角孔が形成されていて、駆動軸5に対して回動不能であるが軸方向には移動自在である。また、周面は平滑に形成されているから、第1、第2のドラムである円筒スリーブ15,16とは常時回動自在であり、軸方向には該スリーブ15、16を環状凸部24にて規制するものである。環状凸部24の周表面は、円筒スリーブ15,16の外周面と面一である。
【0034】
この実施例においては、クラッチ11、11を別体のものとして2個の部材から構成しているが、フランジ14を挟んでその両側にスリーブを設けた単体のものであってもよい。この構造のクラッチ11は、この実施例の閉鎖部材20の位置、すなわち、前記第1のドラムである円筒スリーブ15と前記第2のドラムである円筒スリーブ16の間に取り付けられ、一方閉鎖部材20はフランジ24の片側にスリーブが形成された2つの部材からなり、クラッチを介して連結された両スリーブ15、16の外端部に取り付けられることとなる。勿論このように構成しても、クラッチとしての機能に変化はない。
【0035】
またこの実施例では、第1のドラム15、第2のドラム16、クラッチ11及び閉鎖部材20の部品からなるカーテン開閉用ドラム6は、周方向において分割されていないが、カーテン開閉用ドラムをその軸を含む面で2以上の複数個のピースに分割してもよい。
これらピース同士を接合する構造としては、図示を省略するがピースの軸方向・周方向端部、例えば2分割ピースの4隅部、に接合用突部を形成し、一方のピースの突部と対応するピースの突部を対向させてボルト・ナット等の緊締具にて緊締すればよい。
カーテン開閉用ドラムを2分割した場合は、一方の分割部をヒンジ構造とすることもできる。
【0036】
次いで、温室用カーテンについて説明する。
このカーテン8は、水平状に展開して温室内上部を被覆する水平被覆部と、この被覆部から延伸して垂直状に展開して温室妻面を被覆する妻面被覆部とを有している。
棟方向に延びるカーテン8の基部は、温室の棟方向の構造部材2’に固定されている。26は、カーテン8の先端部を止着された案内桿25に取り付けられ、前記カーテン開閉用ワイヤ10をクリップするカーテンクリップである。
7はカーテンの自重を支持する棚線である。
【0037】
2枚張りカーテンの開閉装置3は、案内桿25を二本一対備え両者にカーテンクリップ26を設けているが、一方の案内桿25用のクリップ26を固定クリップとし、他方のカーテンクリップ26を所定値以上の負荷がかかったとき開閉用ワイヤ10をスリップさせて、カーテン開閉装置の破損を防止することができるアンチブロッキングシステムを採用したものとしてもよい。
この実施例のカーテン開閉装置3は、水平方向に開閉するものとしているが、棟木下方を高くした山形状に開閉する形式としてもよい。また、4枚のカーテンを開閉する4枚張りカーテンの開閉装置としてもよい。このとき案内桿25は4本設けられ、カーテンの基端は、温室中央部にも固定される。要は温室上面を完全に被覆し、完全に開放できればよい。
【0038】
カーテン開閉用ワイヤ10は、その一端が、減速装置を付設した駆動モータ4の正回転によって巻取り、逆回転によって巻戻す第1のドラム15のワイヤ端部固定片17に結び付けて固定され、また他端は、駆動モータ4の正回転によって巻戻し、逆回転によって巻取る第2のドラム16のワイヤ端部固定片17に固定されている。
そして、無端状の開閉用ワイヤ10の途中は、温室の一側壁上部の構造部材2’に固定された、ワイヤの軌道を折り返し変換するための往路用と復路用の二個一対の滑車27、27に掛け廻され、その先で温室の他側壁上部の構造部材2’に固定された往復路反転用の単一の滑車28に掛け廻され、無端循環路を形成している。案内桿25、25はこの無端環状軌道を往復動するワイヤ10の適宜箇所に固定されて、棚線7上を移動してカーテン8を開閉する。
【0039】
本発明のカーテン開閉装置3を温室内に新規に設置する場合の、カーテン開閉用ワイヤ10を初期に張設するときや、既設のワイヤが弛んだりゆるんだときは、カーテン開閉用ワイヤ10の巻取数の少ない方の円筒スリーブ15の6角ボルト21と蝶ネジ22を緩めてその先端部の陥凹部12との係合を外し、クラッチ部材11と円筒スリーブ15の結合を解除してクラッチ11を離脱させる。
図3Aのドラムに形成された孔30は、図3Cに示されたドラム回転工具29を連結するための、請求項6に係る発明の工具連結部を構成している。
この工具連結部30は、ドラム回転工具29をドラムに連結可能なものであれば、ドラム表面から突出する構造のものであってもよいが、巻き取られるワイヤの邪魔にならないように、図示したような孔や陥凹部のような構造のものが好ましい。
そして、このフリーとなったスリーブ15の孔30にドラム回転工具29の先端を挿入した状態でドラムを回動させて、開閉用ワイヤ10の巻取りを行い、ワイヤ10に所定の緊張感が出た段階で、蝶ネジ22の仮止めを経た6角ボルト21による本止めにより、陥凹部12に係合させてクラッチ11をスリーブ15に結合させる。このような簡単な操作によってカーテン開閉用ワイヤ10を新規に張設したり、ワイヤの弛みやゆるみを修復することができる。
【0040】
このように、カーテン開閉用ドラム6に工具連結部30を形成し、付属するドラム回転工具29を用いれば、ドラムを直接手で回転させるのに比べ小さな力で回転させ得る。
また、図4に示される従来のドラム61の場合、作業者がワイヤを手で手繰り寄せながら、その張り具合を作業者自身の経験と勘によって決定して、その端部をドラムの孔63に固定していた。さらに、図1に示されるように、温室の間口部には通常、垂直方向に垂れ下がる垂下部が存在してカーテン開放時の抵抗が強いため、この垂下部の存在する温室の間口部に位置するカーテンのカーテン開閉用ワイヤ10のテンションは、その他のワイヤのそれより微妙に強く調整する必要がある。
しかし、上述したドラムの工具連結部と付属工具のコンビネーションにより、ワイヤのテンションをドラムの回転数と回転角度により数値的、視覚的に正確に調整し得て、微妙な調整も可能となる。
なお、ドラムに工具連結部を備えず、ドラム回転工具を付属しないカーテン開閉用ドラムにあっては、作業者がドラムを手で直接回動する。
【0041】
クラッチ部材11または閉鎖部材20に刻印された目印19は、クラッチ部材11のネジ孔13の周方向位置を指示するものである。そこで、クラッチ部材11と駆動軸5との結合を外すときは、円筒スリーブ15に穿設された孔23を目印19の位置に合わせれば、ボルト(図示省略)のヘッドが孔23に出現する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係るカーテン開閉装置を装備した温室の一部を仮想的に示す温室の斜視図である。
【図2】本発明に係るカーテン開閉用ドラムの実施例の斜視図である。
【図3A】図3Aは、本発明に係るカーテン開閉用ドラムの分解正面図である。
【図3B】図3Bは、本発明に係るカーテン開閉用ドラムの分解左側面図である。
【図3C】図3Cは、本発明に係るドラム回転工具である。
【図4】従来のカーテン開閉用ドラムの斜視図である。
【図5】その他の従来のカーテン開閉装置を備えた温室の正面図である。
【図6】図5示された張力保持部材の一部縦断側面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 温室
2 構造部材
3 カーテン開閉装置
4 駆動モータ
5 駆動軸
6 カーテン開閉用ドラム
8 カーテン
10 カーテン開閉用ワイヤ
11 クラッチ部材
15 第1のドラム
16 第2のドラム
61 従来例のカーテン開閉用ドラム
70 従来例の張力保持部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーテン開閉用ワイヤの一端を巻取り巻戻す第1のロールと、
前記カーテン開閉用ワイヤの他端を巻取り巻戻す第1のロールとは別体の第2のロールと、
駆動軸に固着具によって固着可能とされ、前記第1のロール及び前記第2のロールとそれぞれ個別に結合・離脱可能とされたクラッチとから構成され、
前記クラッチが離脱したロールは前記駆動軸に対して回動自在となるカーテン開閉用ドラム。
【請求項2】
前記第1のロールと前記第2のロールは円筒スリーブからなり、前記クラッチを備えない開放端部には、前記駆動軸に回動不能に挿通された閉鎖部材により閉鎖されていることを特徴とする請求項1に記載されたカーテン開閉用ドラム。
【請求項3】
前記クラッチは、前記第1のロールに対応して形成された結合・離脱機構を備えた第1のクラッチ部材と、該クラッチ部材とは独立した別個の前記第2のロールに対応して形成された結合・離脱機構を備えた第2のクラッチ部材とから構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載されたカーテン開閉用ドラム。
【請求項4】
前記クラッチは、前記第1のロールに対応して形成された結合・離脱機構を備えた第1のクラッチ部と、前記第2のロールに対応して形成された結合・離脱機構を備えた第2のクラッチ部と、を備える一個のクラッチ部材から構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項2のいずれかに記載されたカーテン開閉用ドラム。
【請求項5】
前記第1のロールと前記第2のロール及び前記クラッチを含むカーテン開閉用ドラム全体が、該ドラムの軸を含む面において複数個に分割されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4に係るカーテン開閉用ドラム。
【請求項6】
前記ドラムは、ドラム回転工具を連結する工具連結部を具備することを特徴とする請求項1乃至請求項5に係るカーテン開閉用ドラム。
【請求項7】
一端及び他端が駆動原により正逆回転するカーテン開閉用ドラムに捲回固定され、中間部が温室の構造部材に固定された軌道変換器に巻き掛けられて、無端環状軌道を往復動するカーテン開閉用ワイヤと、
一端が温室の構造部材に固定され、他端が前記カーテン開閉用ワイヤに固定具により固定された少なくとも温室上方を開閉するカーテンとから構成される温室のカーテン開閉装置において、
前記カーテン開閉用ドラムは、カーテン開閉用ワイヤの一端を巻取り巻戻す第1のロールと、前記カーテン開閉用ワイヤの他端を巻取り巻戻す第1のロールとは別体の第2のロールと、駆動軸に固着具によって固着可能とされ、前記第1のロール及び前記第2のロールとそれぞれ個別に結合・離脱可能とされたクラッチとから構成され、
前記クラッチが離脱したロールは前記駆動軸に対して回動自在とされたことを特徴とする温室のカーテン開閉装置。
【請求項8】
前記カーテン開閉用ドラムは、温室の棟方向に延設されて駆動モータによって回転される駆動軸に固定され、
前記軌道変換器は、温室の一側壁上部の構造部材に固定された往・復路用の二個一対の滑車と、温室の他側壁上部の構造部材に固定された往復路反転用の一個の滑車とからなることを特徴とする請求項7に記載された温室のカーテン開閉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−252201(P2007−252201A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−76668(P2006−76668)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(000218362)渡辺パイプ株式会社 (20)
【Fターム(参考)】