カートリッジヒーター
【課題】ヒーターケースの端壁とボビンとの間に絶縁部材を介在させなくとも温度センサーを前記端壁と非接触の状態に取り付けることが可能なカートリッジヒーターを得る。
【解決手段】ヒーター線5と温度センサー6とを取り付けてヒーターケース7の内部に収容されるボビン4を、前記ヒーター線5が巻かれたボビン本体10と、該ボビン本体10と別体に形成されて該ボビン本体10の先端に取り付けられたボビン受け11とにより形成し、該ボビン受け11に、仕切壁16で前記ボビン本体の先端から隔てられた収容部14を形成し、該収容部14内に前記温度センサー6の温度検出部6aを非突出状態に収容する。
【解決手段】ヒーター線5と温度センサー6とを取り付けてヒーターケース7の内部に収容されるボビン4を、前記ヒーター線5が巻かれたボビン本体10と、該ボビン本体10と別体に形成されて該ボビン本体10の先端に取り付けられたボビン受け11とにより形成し、該ボビン受け11に、仕切壁16で前記ボビン本体の先端から隔てられた収容部14を形成し、該収容部14内に前記温度センサー6の温度検出部6aを非突出状態に収容する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒーター線と温度センサーとを取り付けたボビンをヒーターケースの内部に収容して形成されるカートリッジヒーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体チップ等の電子部品のはんだ付けを自動はんだ付け装置や手動のはんだ付け装置を用いて行う場合、カートリッジヒーターを内蔵したはんだ鏝が使用される。このはんだ鏝は、前記カートリッジヒーターによって鏝先を加熱し、該鏝先によりはんだを溶融させてはんだ付けを行うもので、前記カートリッジヒーターとして、通常、特許文献1や特許文献2に開示されているようなものが使用されている。
【0003】
図11には、前記特許文献1に開示されたカートリッジヒーターが記載されている。このカートリッジヒーターは、電気絶縁性を有するボビン30に、ニクロム線のような電気抵抗発熱式のヒーター線31を巻き付けると共に、熱電対などからなる温度センサー32を取り付け、前記ボビン30を、伝熱性の良い金属からなる筒状のヒーターケース33の内部に、前記ヒーター線31及び温度センサー32が該ヒーターケース33と接触しないように電気絶縁性の充填物34を介して収容したものである。また、前記温度センサー32がボビン30の先端から前方に突出しているため、この温度センサー32が前記ヒーターケース33の端壁33aと接触するのを防止する目的で、該端壁33aと温度センサー32との間にシート状の絶縁部材35を介在させている。
【0004】
ところが、前記絶縁部材35は、非常に小さくて軽くかつ薄い部材であるため、このような部材を細長い前記ヒーターケース33の内部に挿入し、折れ曲がったり傾いたりしないよう正しい姿勢を保ったままヒーターケース33の奥まで移動させ、該ヒーターケース33の端壁33aに正確に接触させるのは非常に面倒で難しい作業である。しかも、ボビン30を前記ヒーターケース33の奥まで挿入した場合、該ボビン30によって前記温度センサー32が前記絶縁部材35に強く押し付けられ、該温度センサー32及び絶縁部材35が変形したり破損したりするおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−88684号公報
【特許文献2】実開昭47−29838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ヒーターケースとボビンとの間に前述したような絶縁部材を介在させることなく、温度センサーを該ヒーターケースと非接触の状態に簡単かつ確実に取り付けることができるカートリッジヒーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明のカートリッジヒーターは、電気絶縁性のボビンにヒーター線及び温度センサーを取り付け、該ボビンを先端側から筒状のヒーターケースの内部に収容すると共に、該ヒーターケースの内部に電気絶縁性の充填材を充填することにより形成され、前記ボビンは、前記ヒーター線が巻かれたボビン本体と、該ボビン本体と別体に形成されて該ボビン本体の先端部に取り付けられたボビン受けとからなり、前記ボビン受けは、仕切壁で前記ボビン本体の先端部と隔てられた収容部を有し、該収容部内に前記温度センサーの温度検出部が非突出状態に収容されていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記ボビン受けは中空状をなし、内部に前記仕切壁を有すると共に、該仕切壁で隔てられた第1凹部及び第2凹部を有し、前記第1凹部内に前記ボビン本体の先端部が嵌合し、前記第2凹部で前記収容部が形成されていることが望ましい。
また、前記ボビン受けは、側面の相対する位置に該ボビン受けの全長に渡って延在するスリットを有していても良い。
更に、前記ヒーター線は、該ヒーター線の一部を予め螺旋状に巻いて形成された螺線部と、該螺線部の両端に連なる導線部とを有し、前記螺線部の中にボビン本体を挿入して該ボビン本体に前記ボビン受けを取り付けることにより、前記ヒーター線が前記ボビンに装着されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ボビンを、ヒーター線を装着するためのボビン本体と、温度センサーを取り付けるためのボビン受けとに分けて形成し、該ボビン受けに形成した収容部内に前記温度センサーの温度検出部を非突出状態に収容したことにより、該ボビンとヒーターケースとの間に従来のような絶縁部材を介在させることなく、前記温度センサーをヒーターケースと非接触の状態に簡単かつ確実に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るはんだ鏝用ヒーターをはんだ鏝の内部に収容した状態の要部断面図である。
【図2】前記ヒーターの断面図である。
【図3】前記ヒーターの分解斜視図である。
【図4】ボビン本体の側面図である。
【図5】図4の右側面である。
【図6】図4におけるVI−VI線での断面図である。
【図7】ボビン受けの側面図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線での断面図である。
【図9】図8におけるIX−IX線での断面図である。
【図10】ヒーター線の側面図である。
【図11】従来のヒーターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1には本発明に係るカートリッジヒーターを内蔵したはんだ鏝の先端の一部が示されている。このはんだ鏝は、自動はんだ付け装置(はんだ付けロボット)のハンドに取り付けられるはんだ鏝であっても、手動操作式のはんだ付け装置で使用される手持ちのはんだ鏝であっても良い。
【0012】
前記はんだ鏝は、ステンレス等の金属からなるパイプで形成された鏝胴部1と、該鏝胴部1の先端に取り付けられた銅−鉄メッキ製あるいは銅−鉄合金製の鏝先2と、前記鏝胴部1の内部に収容されたカートリッジヒーター3とを有し、該カートリッジヒーター3の先端は、前記鏝先2に形成されたヒーター取付孔2a孔内に嵌合して該鏝先2と接触し、該カートリッジヒーター3からの熱で前記鏝先2が加熱されるように構成されている。
【0013】
前記カートリッジヒーター3は、図2及び図3から分かるように、電気絶縁性のボビン4と、該ボビン4に巻かれたヒーター線5と、前記ボビン4に取り付けられた温度センサー6と、前記ボビン4が収容された筒状のヒーターケース7とからなり、該ヒーターケース7の内部に、前記ボビン4の回りの隙間を埋めるようにマグネシアやアルミナ等からなる粉末状又はセメント状をした電気絶縁性の充填材8が充填されると共に、前記ボビン4の後端部の位置で前記ヒーターケース7を封止する電気絶縁性の封止材9が設けられている。
【0014】
前記ボビン4は、マグネシアやアルミナ等の粉末を焼き固めることにより形成されたボビン本体10と、同様の粉末素材を焼き固めることによって該ボビン本体10と別体に形成され、該ボビン本体10に取り付けられたボビン受け11とで形成されている。
【0015】
前記ボビン本体10は、図3−図6から明らかなように、前記ヒーター線5が外周に巻かれている丸棒状の主体部10aと、該主体部10aの軸線L方向の一端即ち基端部に形成されたフランジ部10bとを有し、該主体部10aの軸線L方向の他端即ち先端部10cは均一径のまま終わっており、該先端部10cに前記ボビン受け11が取り付けられている。
【0016】
前記フランジ部10bは、円形の一部を互いに平行な2つの平面に沿って切除したような形をしていて、相対する2つの円弧状部10d,10dと、該円弧状部10d,10dの間の相対する2つの平坦部10e,10eとを有し、前記2つの円弧状部10d,10dの曲率半径は前記主体部10aの半径より大きく、前記2つの平坦部10e,10e間の間隔は、前記主体部10aの直径とほぼ同程度に形成されている。
【0017】
前記ボビン本体10の基端部側の端面には、図5から分かるように、前記軸線Lを取り囲むように位置する4つの孔12a−12dが形成されている。
前記4つの孔12a−12dのうち、図の左右に位置する第1の孔12a及び第2の孔12bは、前記温度センサー6を形成する2本の金属線6b及び6cを挿通するためのもので、軸線Lと平行に延びて前記ボビン本体10を貫通し、前記主体部10aの先端面に開口している。また、図の上下に位置する第3の孔12c及び第4の孔12dは、前記ヒーター線5を挿通するためのもので、図2、図6からも明らかなように、上方に位置する第3の孔12cは、軸線Lと平行に延びて前記ボビン本体10を貫通し、前記主体部10aの先端部10cの端面と側面とに開口しており、下方に位置する第4の孔12dは、軸線Lに対して斜めに延び、前記主体部10aとフランジ部10bとの境目の位置でボビン本体10の側面に開口している。
【0018】
前記ボビン受け11は、図7−図9からも分かるように、前記ボビン本体10の主体部10aより大径をなすと共に前記フランジ部10bと同径か又はそれより大径をなす中空部材のような形に形成され、軸線L方向の一側に、該主体部10aの先端に取り付けるための取付部13を有し、他側に、前記温度センサー6の温度検出部6aを非突出状態に収容するための収容部14を有している。
【0019】
前記ボビン受け11の構成を更に詳細に説明すると、該ボビン受け11は、内部に仕切壁16を有する円筒の側面の一部を互いに平行する2つの平面に沿って切除したような形をしていて、湾曲面を向かい合わせにした姿勢で相対する断面円弧状をした一対の側壁15,15と、該一対の側壁15,15を軸線L方向の中間位置で連結する前記仕切壁16と、該仕切壁16で隔てられた第1凹部17及び第2凹部18とを有し、該ボビン受け11の側面には、左右相対する位置に、該ボビン受け11の全長に渡って延在するスリット19が形成されている。そして、前記第1凹部17により前記取付部13が形成され、前記第2凹部18により前記収容部14が形成され、前記第1凹部17内に前記ボビン本体10の主体部10aの先端部10cが挿入され、前記第2凹部18内に前記温度センサー6の温度検出部6aが該ボビン受け11から前方に突出しないように収容されている。
【0020】
また、前記仕切壁16には、2つの孔20a,20bが左右に隣接して形成され、このうち第1の孔20aは、前記ボビン本体10の第1の孔12aに連通し、第2の孔20bは、前記ボビン本体10の第2の孔12bに連通している。
【0021】
前記第1凹部17及び第2凹部18の深さ即ち軸線L方向の長さは、互いに同じではなく、主体部10aが挿入される第1凹部17の深さが、温度センサー6が収容される第2凹部18の深さより大きく形成され、それによってボビン本体10とボビン受け11とが安定的に結合されるようになっている。しかし、前記第1凹部17と第2凹部18との深さは互いに同じであっても良く、あるいは、前記ボビン本体10とボビン受け11とが外れないように結合されれば、第2凹部18の深さが第1凹部17の深さより大きくても構わない。
【0022】
前記ヒーター線5は、電気抵抗により発熱するニクロム線のような線材で形成され、図10に示すように、該ヒーター線5の一部を予め螺旋状に巻くと共に形状維持のための処理(例えば熱処理)を施すことによって螺旋形状を維持するように形成された螺線部5aと、該螺線部5aの両端から延びる2つの導線部5b,5cとを有している。
【0023】
そして、前記螺線部5aの中にボビン本体10の主体部10aを挿入し、該螺線部5aの先端に連なる第1の導線部5bを、前記ボビン本体10の第3の孔12cに挿通して該ボビン本体10の後端部から延出させると共に、前記螺線部5aの後端に連なる第2の導線部5cを、前記ボビン本体10の第4の孔12dに挿通して該ボビン本体10の後端部から延出させることにより、前記ヒーター線5が前記ボビン4に取り付けられ、そのあとに、前記主体部10aの先端に前記ボビン受け11が取り付けられている。
ヒーター線5をこのように構成したことにより、従来のヒーターのようにヒーター線5をボビン4に巻く面倒な作業を行う必要がなく、該ヒーター線5のボビン4に対する取り付けが非常に簡単になる。
【0024】
前記ヒーター線5の第1の導線部5b及び第2の導線部5cの端部は、比較的ボビン4に近い位置で、発熱しない通常のリード線21a,21bに端子22を介して接続され、前記ヒーターケース7の外部に導出されている。これにより、前記ヒーター線5の発熱による影響がボビン4から離れた位置まで及ぶのが防止されている。
【0025】
また、前記温度センサー6は、2種類の金属線6b,6cの先端部を相互に接合した熱電対により形成されたもので、前記先端部が温度検出部6aとなっている。
そして、一方の金属線6bを、前記ボビン受け11の先端側から、該ボビン受け11の第1の孔20a及びボビン本体10の第1の孔12a内に挿通して該ボビン本体10の後端部から延出させると共に、他方の金属線6cを、同様にボビン受け11の第2の孔20b及びボビン本体10の第2の孔12b内に挿通して該ボビン本体10の後端部から延出させ、前記温度検出部6aを前記ボビン受け11の収容部14内に該ボビン受け11の前方に突出しない状態に収容することにより、該温度センサー6が前記ボビン4に取り付けられている。
【0026】
このようにして前記ヒーター線5及び温度センサー6が取り付けられたボビン4は、前記ヒーターケース7の内部に、ボビン受け11の先端が該ヒーターケース7の端壁7aに当接する位置まで挿入されることによりその位置に位置決めされ、そのあと、該ヒーターケース7の内部に、フランジ部10bの平坦部10eと該ヒーターケース7の内周面との間の隙間を通じて前記充填材8が充填されると共に、前記封止材9が設けられることにより、前記カートリッジヒーター3が組み立てられる。このとき前記充填材8は、前記ボビン受け11の側面とヒーターケース7の内周面との間の隙間と前記スリット19とを通じて該ボビン受け11の前面側の前記収容部14内にも流入し、前記温度センサー6の温度検出部6aの回りを取り囲む。
【0027】
前記カートリッジヒーター3はこのように構成されていて、前記温度センサー6の温度検出部6aが、前記ボビン受け11の収容部14内に該収容部14から前方に突出しないように収容されているので、前記ボビン4を、ヒーターケース7の内部に、ボビン受け11の先端が端壁7aに当接する位置まで挿入しても、前記温度検出部6aが該端壁7aに接触することはない。しかも、前記収容部14は仕切壁16でボビン本体10の先端部10cと隔てられているので、前記温度検出部6aが該ボビン本体10の先端部10cに押されてヒーターケース7の端壁7aに押し付けられることもない。
また、前記ボビン4は、ボビン受け11の先端がヒーターケース7の端壁7aに当接する位置まで挿入することによって位置決めされるため、該ボビン4の位置決めが正確かつ容易である。
【0028】
なお、必要であれば、前記ボビン受け11の収容部14に電気絶縁性のキャップを嵌着し、該キャップで前記収容部14の前面を覆うこともできる。この場合、該キャップの側面にも、前記収容部14の側面に形成されているスリット19と同様のスリットを設けることが望ましい。
【0029】
前記実施形態においては、ボビン本体10が主体部10aの基端側にフランジ部10bを有しているが、このフランジ部10bは必ずしも必要ではなく、それを省略することもできる。この場合、前記主体部10aの基端部は、先端部10cと同様に均一径のまま終わるように形成される。
また、前記ボビン受け11は、側面に前記スリット19のない完全な円筒形をしていても構わない。
更に、本発明のカートリッジヒーターは、はんだ鏝以外のものにも加熱源として使用することができるものである。
【符号の説明】
【0030】
3 カートリッジヒーター
4 ボビン
5 ヒーター線
5a 螺線部
5b,5c 導線部
6 温度センサー
6a 温度検出部
8 充填材
10 ボビン本体
10a 主体部
10c 先端部
11 ボビン受け
13 取付部
14 収容部
15 側壁
16 仕切壁
17 第1凹部
18 第2凹部
19 スリット
L 軸線
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒーター線と温度センサーとを取り付けたボビンをヒーターケースの内部に収容して形成されるカートリッジヒーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体チップ等の電子部品のはんだ付けを自動はんだ付け装置や手動のはんだ付け装置を用いて行う場合、カートリッジヒーターを内蔵したはんだ鏝が使用される。このはんだ鏝は、前記カートリッジヒーターによって鏝先を加熱し、該鏝先によりはんだを溶融させてはんだ付けを行うもので、前記カートリッジヒーターとして、通常、特許文献1や特許文献2に開示されているようなものが使用されている。
【0003】
図11には、前記特許文献1に開示されたカートリッジヒーターが記載されている。このカートリッジヒーターは、電気絶縁性を有するボビン30に、ニクロム線のような電気抵抗発熱式のヒーター線31を巻き付けると共に、熱電対などからなる温度センサー32を取り付け、前記ボビン30を、伝熱性の良い金属からなる筒状のヒーターケース33の内部に、前記ヒーター線31及び温度センサー32が該ヒーターケース33と接触しないように電気絶縁性の充填物34を介して収容したものである。また、前記温度センサー32がボビン30の先端から前方に突出しているため、この温度センサー32が前記ヒーターケース33の端壁33aと接触するのを防止する目的で、該端壁33aと温度センサー32との間にシート状の絶縁部材35を介在させている。
【0004】
ところが、前記絶縁部材35は、非常に小さくて軽くかつ薄い部材であるため、このような部材を細長い前記ヒーターケース33の内部に挿入し、折れ曲がったり傾いたりしないよう正しい姿勢を保ったままヒーターケース33の奥まで移動させ、該ヒーターケース33の端壁33aに正確に接触させるのは非常に面倒で難しい作業である。しかも、ボビン30を前記ヒーターケース33の奥まで挿入した場合、該ボビン30によって前記温度センサー32が前記絶縁部材35に強く押し付けられ、該温度センサー32及び絶縁部材35が変形したり破損したりするおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭61−88684号公報
【特許文献2】実開昭47−29838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ヒーターケースとボビンとの間に前述したような絶縁部材を介在させることなく、温度センサーを該ヒーターケースと非接触の状態に簡単かつ確実に取り付けることができるカートリッジヒーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明のカートリッジヒーターは、電気絶縁性のボビンにヒーター線及び温度センサーを取り付け、該ボビンを先端側から筒状のヒーターケースの内部に収容すると共に、該ヒーターケースの内部に電気絶縁性の充填材を充填することにより形成され、前記ボビンは、前記ヒーター線が巻かれたボビン本体と、該ボビン本体と別体に形成されて該ボビン本体の先端部に取り付けられたボビン受けとからなり、前記ボビン受けは、仕切壁で前記ボビン本体の先端部と隔てられた収容部を有し、該収容部内に前記温度センサーの温度検出部が非突出状態に収容されていることを特徴とする。
【0008】
本発明において、前記ボビン受けは中空状をなし、内部に前記仕切壁を有すると共に、該仕切壁で隔てられた第1凹部及び第2凹部を有し、前記第1凹部内に前記ボビン本体の先端部が嵌合し、前記第2凹部で前記収容部が形成されていることが望ましい。
また、前記ボビン受けは、側面の相対する位置に該ボビン受けの全長に渡って延在するスリットを有していても良い。
更に、前記ヒーター線は、該ヒーター線の一部を予め螺旋状に巻いて形成された螺線部と、該螺線部の両端に連なる導線部とを有し、前記螺線部の中にボビン本体を挿入して該ボビン本体に前記ボビン受けを取り付けることにより、前記ヒーター線が前記ボビンに装着されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ボビンを、ヒーター線を装着するためのボビン本体と、温度センサーを取り付けるためのボビン受けとに分けて形成し、該ボビン受けに形成した収容部内に前記温度センサーの温度検出部を非突出状態に収容したことにより、該ボビンとヒーターケースとの間に従来のような絶縁部材を介在させることなく、前記温度センサーをヒーターケースと非接触の状態に簡単かつ確実に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るはんだ鏝用ヒーターをはんだ鏝の内部に収容した状態の要部断面図である。
【図2】前記ヒーターの断面図である。
【図3】前記ヒーターの分解斜視図である。
【図4】ボビン本体の側面図である。
【図5】図4の右側面である。
【図6】図4におけるVI−VI線での断面図である。
【図7】ボビン受けの側面図である。
【図8】図7におけるVIII−VIII線での断面図である。
【図9】図8におけるIX−IX線での断面図である。
【図10】ヒーター線の側面図である。
【図11】従来のヒーターの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1には本発明に係るカートリッジヒーターを内蔵したはんだ鏝の先端の一部が示されている。このはんだ鏝は、自動はんだ付け装置(はんだ付けロボット)のハンドに取り付けられるはんだ鏝であっても、手動操作式のはんだ付け装置で使用される手持ちのはんだ鏝であっても良い。
【0012】
前記はんだ鏝は、ステンレス等の金属からなるパイプで形成された鏝胴部1と、該鏝胴部1の先端に取り付けられた銅−鉄メッキ製あるいは銅−鉄合金製の鏝先2と、前記鏝胴部1の内部に収容されたカートリッジヒーター3とを有し、該カートリッジヒーター3の先端は、前記鏝先2に形成されたヒーター取付孔2a孔内に嵌合して該鏝先2と接触し、該カートリッジヒーター3からの熱で前記鏝先2が加熱されるように構成されている。
【0013】
前記カートリッジヒーター3は、図2及び図3から分かるように、電気絶縁性のボビン4と、該ボビン4に巻かれたヒーター線5と、前記ボビン4に取り付けられた温度センサー6と、前記ボビン4が収容された筒状のヒーターケース7とからなり、該ヒーターケース7の内部に、前記ボビン4の回りの隙間を埋めるようにマグネシアやアルミナ等からなる粉末状又はセメント状をした電気絶縁性の充填材8が充填されると共に、前記ボビン4の後端部の位置で前記ヒーターケース7を封止する電気絶縁性の封止材9が設けられている。
【0014】
前記ボビン4は、マグネシアやアルミナ等の粉末を焼き固めることにより形成されたボビン本体10と、同様の粉末素材を焼き固めることによって該ボビン本体10と別体に形成され、該ボビン本体10に取り付けられたボビン受け11とで形成されている。
【0015】
前記ボビン本体10は、図3−図6から明らかなように、前記ヒーター線5が外周に巻かれている丸棒状の主体部10aと、該主体部10aの軸線L方向の一端即ち基端部に形成されたフランジ部10bとを有し、該主体部10aの軸線L方向の他端即ち先端部10cは均一径のまま終わっており、該先端部10cに前記ボビン受け11が取り付けられている。
【0016】
前記フランジ部10bは、円形の一部を互いに平行な2つの平面に沿って切除したような形をしていて、相対する2つの円弧状部10d,10dと、該円弧状部10d,10dの間の相対する2つの平坦部10e,10eとを有し、前記2つの円弧状部10d,10dの曲率半径は前記主体部10aの半径より大きく、前記2つの平坦部10e,10e間の間隔は、前記主体部10aの直径とほぼ同程度に形成されている。
【0017】
前記ボビン本体10の基端部側の端面には、図5から分かるように、前記軸線Lを取り囲むように位置する4つの孔12a−12dが形成されている。
前記4つの孔12a−12dのうち、図の左右に位置する第1の孔12a及び第2の孔12bは、前記温度センサー6を形成する2本の金属線6b及び6cを挿通するためのもので、軸線Lと平行に延びて前記ボビン本体10を貫通し、前記主体部10aの先端面に開口している。また、図の上下に位置する第3の孔12c及び第4の孔12dは、前記ヒーター線5を挿通するためのもので、図2、図6からも明らかなように、上方に位置する第3の孔12cは、軸線Lと平行に延びて前記ボビン本体10を貫通し、前記主体部10aの先端部10cの端面と側面とに開口しており、下方に位置する第4の孔12dは、軸線Lに対して斜めに延び、前記主体部10aとフランジ部10bとの境目の位置でボビン本体10の側面に開口している。
【0018】
前記ボビン受け11は、図7−図9からも分かるように、前記ボビン本体10の主体部10aより大径をなすと共に前記フランジ部10bと同径か又はそれより大径をなす中空部材のような形に形成され、軸線L方向の一側に、該主体部10aの先端に取り付けるための取付部13を有し、他側に、前記温度センサー6の温度検出部6aを非突出状態に収容するための収容部14を有している。
【0019】
前記ボビン受け11の構成を更に詳細に説明すると、該ボビン受け11は、内部に仕切壁16を有する円筒の側面の一部を互いに平行する2つの平面に沿って切除したような形をしていて、湾曲面を向かい合わせにした姿勢で相対する断面円弧状をした一対の側壁15,15と、該一対の側壁15,15を軸線L方向の中間位置で連結する前記仕切壁16と、該仕切壁16で隔てられた第1凹部17及び第2凹部18とを有し、該ボビン受け11の側面には、左右相対する位置に、該ボビン受け11の全長に渡って延在するスリット19が形成されている。そして、前記第1凹部17により前記取付部13が形成され、前記第2凹部18により前記収容部14が形成され、前記第1凹部17内に前記ボビン本体10の主体部10aの先端部10cが挿入され、前記第2凹部18内に前記温度センサー6の温度検出部6aが該ボビン受け11から前方に突出しないように収容されている。
【0020】
また、前記仕切壁16には、2つの孔20a,20bが左右に隣接して形成され、このうち第1の孔20aは、前記ボビン本体10の第1の孔12aに連通し、第2の孔20bは、前記ボビン本体10の第2の孔12bに連通している。
【0021】
前記第1凹部17及び第2凹部18の深さ即ち軸線L方向の長さは、互いに同じではなく、主体部10aが挿入される第1凹部17の深さが、温度センサー6が収容される第2凹部18の深さより大きく形成され、それによってボビン本体10とボビン受け11とが安定的に結合されるようになっている。しかし、前記第1凹部17と第2凹部18との深さは互いに同じであっても良く、あるいは、前記ボビン本体10とボビン受け11とが外れないように結合されれば、第2凹部18の深さが第1凹部17の深さより大きくても構わない。
【0022】
前記ヒーター線5は、電気抵抗により発熱するニクロム線のような線材で形成され、図10に示すように、該ヒーター線5の一部を予め螺旋状に巻くと共に形状維持のための処理(例えば熱処理)を施すことによって螺旋形状を維持するように形成された螺線部5aと、該螺線部5aの両端から延びる2つの導線部5b,5cとを有している。
【0023】
そして、前記螺線部5aの中にボビン本体10の主体部10aを挿入し、該螺線部5aの先端に連なる第1の導線部5bを、前記ボビン本体10の第3の孔12cに挿通して該ボビン本体10の後端部から延出させると共に、前記螺線部5aの後端に連なる第2の導線部5cを、前記ボビン本体10の第4の孔12dに挿通して該ボビン本体10の後端部から延出させることにより、前記ヒーター線5が前記ボビン4に取り付けられ、そのあとに、前記主体部10aの先端に前記ボビン受け11が取り付けられている。
ヒーター線5をこのように構成したことにより、従来のヒーターのようにヒーター線5をボビン4に巻く面倒な作業を行う必要がなく、該ヒーター線5のボビン4に対する取り付けが非常に簡単になる。
【0024】
前記ヒーター線5の第1の導線部5b及び第2の導線部5cの端部は、比較的ボビン4に近い位置で、発熱しない通常のリード線21a,21bに端子22を介して接続され、前記ヒーターケース7の外部に導出されている。これにより、前記ヒーター線5の発熱による影響がボビン4から離れた位置まで及ぶのが防止されている。
【0025】
また、前記温度センサー6は、2種類の金属線6b,6cの先端部を相互に接合した熱電対により形成されたもので、前記先端部が温度検出部6aとなっている。
そして、一方の金属線6bを、前記ボビン受け11の先端側から、該ボビン受け11の第1の孔20a及びボビン本体10の第1の孔12a内に挿通して該ボビン本体10の後端部から延出させると共に、他方の金属線6cを、同様にボビン受け11の第2の孔20b及びボビン本体10の第2の孔12b内に挿通して該ボビン本体10の後端部から延出させ、前記温度検出部6aを前記ボビン受け11の収容部14内に該ボビン受け11の前方に突出しない状態に収容することにより、該温度センサー6が前記ボビン4に取り付けられている。
【0026】
このようにして前記ヒーター線5及び温度センサー6が取り付けられたボビン4は、前記ヒーターケース7の内部に、ボビン受け11の先端が該ヒーターケース7の端壁7aに当接する位置まで挿入されることによりその位置に位置決めされ、そのあと、該ヒーターケース7の内部に、フランジ部10bの平坦部10eと該ヒーターケース7の内周面との間の隙間を通じて前記充填材8が充填されると共に、前記封止材9が設けられることにより、前記カートリッジヒーター3が組み立てられる。このとき前記充填材8は、前記ボビン受け11の側面とヒーターケース7の内周面との間の隙間と前記スリット19とを通じて該ボビン受け11の前面側の前記収容部14内にも流入し、前記温度センサー6の温度検出部6aの回りを取り囲む。
【0027】
前記カートリッジヒーター3はこのように構成されていて、前記温度センサー6の温度検出部6aが、前記ボビン受け11の収容部14内に該収容部14から前方に突出しないように収容されているので、前記ボビン4を、ヒーターケース7の内部に、ボビン受け11の先端が端壁7aに当接する位置まで挿入しても、前記温度検出部6aが該端壁7aに接触することはない。しかも、前記収容部14は仕切壁16でボビン本体10の先端部10cと隔てられているので、前記温度検出部6aが該ボビン本体10の先端部10cに押されてヒーターケース7の端壁7aに押し付けられることもない。
また、前記ボビン4は、ボビン受け11の先端がヒーターケース7の端壁7aに当接する位置まで挿入することによって位置決めされるため、該ボビン4の位置決めが正確かつ容易である。
【0028】
なお、必要であれば、前記ボビン受け11の収容部14に電気絶縁性のキャップを嵌着し、該キャップで前記収容部14の前面を覆うこともできる。この場合、該キャップの側面にも、前記収容部14の側面に形成されているスリット19と同様のスリットを設けることが望ましい。
【0029】
前記実施形態においては、ボビン本体10が主体部10aの基端側にフランジ部10bを有しているが、このフランジ部10bは必ずしも必要ではなく、それを省略することもできる。この場合、前記主体部10aの基端部は、先端部10cと同様に均一径のまま終わるように形成される。
また、前記ボビン受け11は、側面に前記スリット19のない完全な円筒形をしていても構わない。
更に、本発明のカートリッジヒーターは、はんだ鏝以外のものにも加熱源として使用することができるものである。
【符号の説明】
【0030】
3 カートリッジヒーター
4 ボビン
5 ヒーター線
5a 螺線部
5b,5c 導線部
6 温度センサー
6a 温度検出部
8 充填材
10 ボビン本体
10a 主体部
10c 先端部
11 ボビン受け
13 取付部
14 収容部
15 側壁
16 仕切壁
17 第1凹部
18 第2凹部
19 スリット
L 軸線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性のボビンにヒーター線及び温度センサーを取り付け、該ボビンを先端側から筒状のヒーターケースの内部に収容すると共に、該ヒーターケースの内部に電気絶縁性の充填材を充填してなるカートリッジヒーターにおいて、
前記ボビンは、前記ヒーター線が巻かれたボビン本体と、該ボビン本体と別体に形成されて該ボビン本体の先端部に取り付けられたボビン受けとからなり、
前記ボビン受けは、仕切壁で前記ボビン本体の先端部と隔てられた収容部を有し、該収容部内に前記温度センサーの温度検出部が非突出状態に収容されている、
ことを特徴とするカートリッジヒーター。
【請求項2】
前記ボビン受けは中空状をなし、内部に前記仕切壁を有すると共に、該仕切壁で隔てられた第1凹部及び第2凹部を有し、前記第1凹部内に前記ボビン本体の先端部が嵌合し、前記第2凹部で前記収容部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジヒーター。
【請求項3】
前記ボビン受けは、側面の相対する位置に該ボビン受けの全長に渡って延在するスリットを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のカートリッジヒーター。
【請求項4】
前記ヒーター線は、該ヒーター線の一部を予め螺旋状に巻いて形成された螺線部と、該螺線部の両端に連なる導線部とを有し、前記螺線部の中にボビン本体を挿入して該ボビン本体に前記ボビン受けを取り付けることにより、前記ヒーター線が前記ボビンに装着されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のカートリッジヒーター。
【請求項1】
電気絶縁性のボビンにヒーター線及び温度センサーを取り付け、該ボビンを先端側から筒状のヒーターケースの内部に収容すると共に、該ヒーターケースの内部に電気絶縁性の充填材を充填してなるカートリッジヒーターにおいて、
前記ボビンは、前記ヒーター線が巻かれたボビン本体と、該ボビン本体と別体に形成されて該ボビン本体の先端部に取り付けられたボビン受けとからなり、
前記ボビン受けは、仕切壁で前記ボビン本体の先端部と隔てられた収容部を有し、該収容部内に前記温度センサーの温度検出部が非突出状態に収容されている、
ことを特徴とするカートリッジヒーター。
【請求項2】
前記ボビン受けは中空状をなし、内部に前記仕切壁を有すると共に、該仕切壁で隔てられた第1凹部及び第2凹部を有し、前記第1凹部内に前記ボビン本体の先端部が嵌合し、前記第2凹部で前記収容部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカートリッジヒーター。
【請求項3】
前記ボビン受けは、側面の相対する位置に該ボビン受けの全長に渡って延在するスリットを有することを特徴とする請求項1又は2に記載のカートリッジヒーター。
【請求項4】
前記ヒーター線は、該ヒーター線の一部を予め螺旋状に巻いて形成された螺線部と、該螺線部の両端に連なる導線部とを有し、前記螺線部の中にボビン本体を挿入して該ボビン本体に前記ボビン受けを取り付けることにより、前記ヒーター線が前記ボビンに装着されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のカートリッジヒーター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−256496(P2012−256496A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128455(P2011−128455)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(390014834)株式会社ジャパンユニックス (21)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(390014834)株式会社ジャパンユニックス (21)
【Fターム(参考)】
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