説明

カート式処理設備

【課題】 処理炉において処理されたカートを複数の作業部が設けられたカート返送路により処理炉の入口に戻すカート式処理設備において、カート返送路におけるカートの数を少なくした場合にも、安定して連続した処理が行えるようにする。
【解決手段】 被処理物11を積載させたカート10を処理炉20内に順々に導いて処理し、出口22から取り出された処理後のカートをカート返送路30に設けられた複数の作業部32〜34に順々に導いて各作業を行い、作業が終了したカートをカート返送路に沿って処理炉の入口21側に順々に戻すカート式処理設備において、カート返送路に沿って往復移動してカート返送路におけるカートを選択的に処理炉の入口側に移動させる第1戻し装置40と第2戻し装置50とを設け、第1戻し装置と第2戻し装置とが往復移動するタイミングを異ならせた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、被処理物を積載させたカートを処理炉の入口から出口に順々に導いて、処理炉内で被処理物を処理し、出口から取り出された処理後のカートをカート返送路に設けられた複数の作業部に順々に導いて各作業を行うと共に、各作業部における作業が終了したカートを上記のカート返送路に沿って処理炉の入口側に順々に戻すようにしたカート式処理設備に係り、特に、カート返送路におけるカートの数を少なくした場合にも、カートが適切に処理炉の入口側に戻されて処理炉に導かれるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、プラズマディスプレイパネル等の表示装置を効率よく製造するため、特許文献1〜3に示されるように、ディスプレイ用ガラスパネル等の被処理物を積載させたカートを処理炉の入口から出口に順々に導いて、処理炉内で被処理物を処理するようにしたものが提案されている。
【0003】
そして、このように処理炉内で被処理物を処理した後、出口から取り出された処理後のカートをカート返送路に設けられた複数の作業部、例えば、処理されたディスプレイ用ガラスパネルにおけるチップ管を切断除去するチップオフ作業部、処理されたディスプレイ用ガラスパネルをカートから取り出すパネル取出し作業部、カートに新しいディスプレイ用ガラスパネルを積載させるパネル積載作業部に順々に導いて各作業を行うと共に、各作業部における作業が終了したカートを上記のカート返送路に沿って処理炉の入口側に順々に戻し、再度、処理炉の入口から処理炉内に導くようにしている。
【0004】
ここで、上記のように出口から取り出された処理後のカートをカート返送路に設けられた複数の作業部に順々に導いて各作業を行い、各作業部における作業が終了したカートを処理炉の入口側に順々に戻す場合において、上記のカート返送路におけるカートの数が、搬送及び処理に必要な時間に対して十分である場合には、各作業部における作業が終了したカートが遅れることなく、常に処理炉の入口側に戻された状態になり、新しい被処理物が積載されたカートを処理炉の入口から処理炉内に順々に導いて、連続した処理が行えるようになる。
【0005】
しかし、上記のカートは一般にそのコストが非常に高いため、近年においては、カート返送路におけるカートの数を少なくすることが要望されている。
【0006】
しかし、カート返送路におけるカートの数を少なくした場合、上記のようにカートをカート返送路に設けられた複数の作業部に順々に導いていく搬送時間が長くなり、各作業部における作業が終了したカートを処理炉の入口側に適切に戻して、新しい被処理物が積載されたカートを処理炉の入口から処理炉内に順々に導くことが困難になるという問題があった。
【0007】
このため、特許文献3に示されるように、カート返送路に沿って往復移動する戻し装置を設け、この戻し装置によりカート返送路におけるカートを選択的に処理炉の入口側に移動させるようにし、各作業部において作業が終了したカートを処理炉の入口側に移動させる一方、各作業部において作業が終了していないカートについては移動させないようにしたものが提案されている。
【0008】
しかし、各作業部における作業時間は一定しておらず、特に、1つの作業部における作業時間が他の作業部における作業時間よりも長い場合には、この作業時間の長い作業部においてカートが多く詰まるため、一般に、作業時間が長い作業部における作業の終了に合わせて、カートを移動させることが行われており、依然として、各作業部において作業が終了したカートを処理炉の入口側に適切に戻すことが困難になり、連続した処理を安定して行うことができないという問題があった。
【特許文献1】特開2002−173331号公報
【特許文献2】特開2005−249248号公報
【特許文献3】特開2006−49220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明は、被処理物を積載させたカートを処理炉の入口から出口に順々に導いて、処理炉内で被処理物を処理し、出口から取り出された処理後のカートをカート返送路に設けられた複数の作業部に順々に導いて各作業を行うと共に、各作業部における作業が終了したカートを上記のカート返送路に沿って処理炉の入口側に順々に戻すようにしたカート式処理設備における上記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0010】
すなわち、この発明においては、上記のようなカート式処理設備において、カート返送路に設けられた各作業部における作業時間が一定しておらず、各作業部においてカートの処理作業が終了する時間が異なる場合においても、カートが適切に処理炉の入口側に戻されて処理炉に導かれるようにし、カート返送路におけるカートの数を少なくした場合にも、連続した処理が安定して行えるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明においては、上記のような課題を解決するため、被処理物を積載させたカートを処理炉の入口から出口に順々に導いて、処理炉内で被処理物を処理し、出口から取り出された処理後のカートをカート返送路に設けられた複数の作業部に順々に導いて各作業を行うと共に、各作業部における作業が終了したカートを上記のカート返送路に沿って処理炉の入口側に順々に戻すようにしたカート式処理設備において、上記のカート返送路に沿って往復移動してカート返送路におけるカートを選択的に処理炉の入口側に移動させる第1戻し装置と第2戻し装置とを設け、上記の第1戻し装置と第2戻し装置とが往復移動するタイミングを異ならせるようにした。
【0012】
ここで、上記のように第1戻し装置と第2戻し装置とが往復移動するタイミングを異ならせるにあたっては、上記の第1戻し装置と第2戻し装置との往復移動するタイミングを逆にすることが好ましい。
【0013】
ここで、このカート式処理設備において、上記のカートに積載させて処理する被処理物としては、例えば、プラズマディスプレイパネル等の表示装置に用いるディスプレイ用ガラスパネルが用いられる。
【0014】
また、上記のカート式処理設備において、第1戻し装置と第2戻し装置とをカート返送路に沿って往復移動させて、カート返送路におけるカートを選択的に処理炉の入口側に移動させるにあたっては、上記のカートに係止部材を設けると共に、上記の第1戻し装置及び第2戻し装置に、それぞれカート返送路に沿った移動用部材とこの移動用部材を往復移動させる往復移動装置とを設け、それぞれの移動用部材にカートに設けられた上記の係止部材と選択的に係合可能な係合部材を設けるようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明におけるカート式処理設備においては、上記のようにカート返送路に沿って往復移動してカート返送路におけるカートを選択的に処理炉の入口側に移動させる第1戻し装置と第2戻し装置とを設け、上記の第1戻し装置と第2戻し装置とが往復移動するタイミングを異ならせるようにしたため、例えば、第1戻し装置によってカートを処理炉の入口側に移動させる動作を開始した直後に、作業部における作業が終了して移動可能になったカートは、上記の第1戻し装置が往復移動して戻るまで待機しなくても、第1戻し装置と往復移動するタイミングが異なった第2戻し装置によって処理炉の入口側に移動されるようになり、カートが適切に処理炉の入口側に戻されるようになる。
【0016】
特に、上記の第1戻し装置と第2戻し装置とが往復移動するタイミングを逆にすると、1つの戻し装置によってカートを処理炉の入口側に移動させる場合に比べて、作業が終了して移動可能になったカートの移動時間が最大で半分に短縮されるようになり、作業が終了したカートが処理炉の入口側に適切に戻されるようになる。
【0017】
この結果、この発明におけるカート式処理設備においては、カート返送路におけるカートの数を少なくした場合にも、安定して連続した処理が行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明の実施形態に係るカート式処理設備を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明に係るカート式処理設備は下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0019】
この実施形態におけるカート式処理設備においては、図1に示すように、被処理物としてプラズマディスプレイパネル等の表示装置に用いるディスプレイ用ガラスパネル11を積載させたカート10を、送り装置(図示せず)により処理炉20の入口21から処理炉20内に導き、この処理炉20内を順々に移動させて各カート10に積載されたディスプレイ用ガラスパネル11を順々に処理し、ディスプレイ用ガラスパネル11が処理されたカート10を処理炉20の出口22から取り出すようにしている。
【0020】
そして、このように処理炉20の出口22から取り出したカート10を、返送用横送り路31を通して処理炉20の入口21側に戻すカート返送路30に導き、このようにカート返送路30に導かれたカート10を、処理炉20の入口21側に順々に送って、このカート返送路30に設けられた複数の作業部32,33,34に順々に導き、各作業部32,33,34においてそれぞれの作業を行った後、作業終了後のカート10を、供給用横送り路35を通して処理炉20の入口21に導くようにしている。
【0021】
ここで、この実施形態におけるカート式処理設備においては、上記のカート返送路30における上記の複数の作業部32,33,34として、カート返送路30の送り方向上流側から順に、処理されたディスプレイ用ガラスパネル11におけるチップ管(図示せず)を切断除去するチップオフ作業部32と、処理されたディスプレイ用ガラスパネル11をカート10から取り出すパネル取出し作業部33と、カート10に新しいディスプレイ用ガラスパネル11を積載させるパネル積載作業部34とを設けている。
【0022】
そして、上記のようにカート返送路30に導かれたカート10を、処理炉20の入口21側に順々に戻すにあたり、この実施形態においては、カート返送路30に沿って往復移動して、カート返送路30におけるカート10を選択的に一括して処理炉20の入口21側に移動させる第1戻し装置40と第2戻し装置50とを並設させ、この第1戻し装置40と第2戻し装置50とが往復移動するタイミングが逆になるようにしている。
【0023】
ここで、上記の第1戻し装置40と第2戻し装置50においては、図2に示すように、それぞれカート返送路30に沿って溝型状の移動用部材41,51を設け、各移動用部材41,51の内部にそれぞれその幅方向に個別にスライド可能になった複数の係合部材42,52を長手方向に所要間隔を介して設けるようにし、これらの移動用部材41,51をシリンダからなる往復移動装置43,53によってカート返送路30に沿って往復移動させるようにしている。
【0024】
そして、上記の往復移動装置43,53によって、それぞれの移動用部材41,51を往復移動させるタイミングを逆にし、例えば、上記の第1戻し装置40による往復移動装置43によって移動用部材41を、カート10を処理炉20の入口21側に戻す方向に移動させる場合には、上記の第2戻し装置50による往復移動装置53によって移動用部材51を、処理炉20の出口22側に移動させるようにしている。
【0025】
また、上記の第1戻し装置40と第2戻し装置50とによってカート10を処理炉20の入口21側に移動させるにあたっては、図3に示すように、敷設されたレール15の上を走行する移動用の車輪12が設けられた上記のカート10の底部の中央部から下方に向けて、上記の第1戻し装置40における係合部材42がスライド移動して係合される第1係止部材13と、上記の第2戻し装置50における係合部材52がスライド移動して係合される第2係止部材14とを並設させている。
【0026】
そして、上記の第1戻し装置40によりカート返送路30におけるカート10を選択的に一括して処理炉20の入口21側に移動させるにあたっては、移動可能な状態になったカート10の対応した位置における各係合部材42をスライド移動させて、移動可能な各カート10に設けられた第1係止部材13にそれぞれ上記の係合部材42を係合させ、この状態で、上記の往復移動装置43により上記の移動用部材41と一緒に各カート10を処理炉20の入口21側に移動させるようにする。一方、上記の第2戻し装置50においては、移動用部材51内に設けられた係合部材52がカート10に設けられた第2係止部材14に係合しない状態にして、上記の往復移動装置53によってこの移動用部材51を、処理炉20の出口22側に移動させるようにする。
【0027】
そして、上記のように第1戻し装置40により適当なカート10を処理炉20の入口21側に移動させた後は、上記のようにスライドさせた係合部材42を元の位置に戻して、各カート10に設けられた第1係止部材13から離脱させ、この状態で、上記の往復移動装置43により移動用部材41を、処理炉20の出口22側に移動させるようにする。一方、上記の第2戻し装置50においては、移動可能な状態になったカート10の対応した位置における各係合部材52をスライド移動させて、移動可能な各カート10に設けられた第2係止部材14にそれぞれ上記の係合部材52を係合させ、この状態で、上記の往復移動装置53により上記の移動用部材51と一緒に各カート10を処理炉20の入口21側に移動させるようにする。
【0028】
このようにすると、移動可能な状態になったカート10が、第1戻し装置40と第2戻し装置50とによって処理炉20の入口21側に移動されるようになり、それぞれの戻し装置40,50が一往復するタイミングを待たなくても、移動可能な状態になったカート10が適切に処理炉20の入口21側に送られるようになり、カート返送路30におけるカート10の数を少なくした場合においても、作業後のカート10が処理炉20の入口21に適切に導かれて、連続した処理が安定して行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】この発明の一実施形態に係るカート式処理設備を示した概略説明図である。
【図2】同実施形態に係るカート式処理設備において、カート返送路に設ける第1戻し装置と第2戻し装置の状態を示した概略平面図である。
【図3】同実施形態に係るカート式処理設備において、上記の第1戻し装置や第2戻し装置によってカートを処理炉の入口側に移動させるにあたり、第1戻し装置や第2戻し装置に設けられた係合部材を、カートの底部に設けられた第1係止部材や第2係止部材に係合させる状態を示した部分説明図ある。
【図4】同実施形態に係るカート式処理設備において、上記の第1戻し装置に設けられた係合部材を、カートの底部に設けられた第1係止部材に係合させて、第1戻し装置によって処理炉の入口側に移動させる状態を示した部分説明図ある。
【図5】同実施形態に係るカート式処理設備において、上記の第2戻し装置に設けられた係合部材を、カートの底部に設けられた第2係止部材に係合させて、第2戻し装置によって処理炉の入口側に移動させる状態を示した部分説明図ある。
【符号の説明】
【0030】
10 カート
11 ディスプレイ用ガラスパネル(被処理物)
12 車輪
13 第1係止部材
14 第2係止部材
15 レール
20 処理炉
21 入口
22 出口
30 カート返送路
31 返送用横送り路
32 チップオフ作業部
33 パネル取出し作業部
34 パネル積載作業部
35 供給用横送り路
40 第1戻し装置
41 移動用部材
42 係合部材
43 往復移動装置
50 第2戻し装置
51 移動用部材
52 係合部材
53 往復移動装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を積載させたカートを処理炉の入口から出口に順々に導いて、処理炉内で被処理物を処理し、出口から取り出された処理後のカートをカート返送路に設けられた複数の作業部に順々に導いて各作業を行うと共に、各作業部における作業が終了したカートを上記のカート返送路に沿って処理炉の入口側に順々に戻すようにしたカート式処理設備において、上記のカート返送路に沿って往復移動してカート返送路におけるカートを選択的に処理炉の入口側に移動させる第1戻し装置と第2戻し装置とを設け、上記の第1戻し装置と第2戻し装置とが往復移動するタイミングを異ならせたことを特徴とするカート式処理設備。
【請求項2】
請求項1に記載したカート式処理設備において、上記の第1戻し装置と第2戻し装置とが往復移動するタイミングが逆であることを特徴とするカート式処理設備。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載したカート式処理設備において、上記のカートに積載させた被処理物がディスプレイ用ガラスパネルであることを特徴とするカート式処理設備。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載したカート式処理設備において、上記のカートに係止部材を設けると共に、上記の第1戻し装置及び第2戻し装置に、それぞれカート返送路に沿った移動用部材とこの移動用部材を往復移動させる往復移動装置とを設け、それぞれの移動用部材にカートに設けられた上記の係止部材と選択的に係合可能な係合部材を設けたことを特徴とするカート式処理設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−152018(P2009−152018A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−328094(P2007−328094)
【出願日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】