説明

カードコネクタの排他機構およびカードコネクタ

【課題】2種類のICカードのうちの一方のICカードが装着されている場合に、他方のICカードの挿入を簡便に阻止する。
【解決手段】コネクタ本体の下ハウジング部材11に階層構造に設けられ第1の収容部15aと第2の収容部15bから成るカード収容部15と、第1の収容部15aおよび第2の収容部15bにそれぞれ連通する第1の挿抜口14aと第2の挿抜口14bから成るカード挿抜口14と、下ハウジング部材11の一方の側壁に沿って取り付けられ、押圧により第1のICカードあるいは第2のICカードをカード収容部15に挿入してロックし、更にそれ等の再押圧によりカード収容部15から排出してイジェクトするプッシュイン・プッシュアウト機構と、上記2つのICカードを排他的に挿入するカードコネクタの排他機構25と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カードコネクタの排他機構およびそれを備えたカードコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコン、カメラ、録音機、携帯電話、携帯型オーディオ、PDA(Personal Digital Assistance)等の電子機器や情報端末機器等において、情報の記録、伝達あるいは処理に用いられるICチップと呼ばれるIC部品が組込まれたPCカード、MMC(Multi Media Card)カード(商品名)、SD(Secure Digital)カード(商品名)、SIM(Subscriber Identity Module)カード(商品名)等のICカードの利用が増大してきている。これ等のICカードは上記機器に取り付けられたカードコネクタに装着され、各種の機能拡張が行われている。
【0003】
そして、カードコネクタにおいては、互いに形状の異なる複数のICカードを一つの電子機器内に装着し利用するために、各ICカードの共通のカード挿抜口を有し、各ICカードが1枚ずつ選択的に着脱されるいわゆるカード用複合コネクタが開示されている(例えば、特許文献1,2,3参照)。
【0004】
ここで、特許文献1,3のカード用複合コネクタでは、1つのカード収容部が、共通のカード挿抜口に連通し例えば2種類のICカードを共通に収容できるようにコネクタハウジング内に設けられている。あるいは、特許文献2のカード用複合コネクタにおいては、例えば3種類のICカードを収容できるように、2つのカード収容部が、上記共通のカード挿抜口に連通し、一部を互いに重複させICカードの着脱方向に沿ってコネクタハウジング内に階層的に形成されている。
【0005】
そして、上記カード収容部には、各ICカードの裏面あるいは表面に形成されたコンタクトパッドに対応し、上記機器の回路基板の配線に接続するコンタクト群が、上記コネクタハウジング内においてそれぞれ別個あるいは共通に設けられている。なお、各コンタクトは、各ICカードのコンタクトパッドに接続するように形成された接点部と上記プリント基板の配線に接合される端子部とを備えている。
【0006】
上述したような複合コネクタの構造においては、所定のICカードの正規のカード収容部とは異なる他のカード収容部への使用者による誤った挿入操作の回避、あるいは、挿入操作のとき、そのICカードによって利用されないコンタクト群の損傷を回避しつつ、ICカードの円滑な着脱を可能とすることが必要とされる。この対策として、例えば、特許文献1,2では、それぞれの形状の異なるICカードの側面部を支持し挿脱移動を案内する案内溝あるいは側壁が、上記カード挿抜口あるいはカード収容部の横方向の両端に設けられている。ここで、特許文献2では、上記挿脱移動に案内する側壁は、それぞれのICカードのカード収容部を画成するようになっている。
【0007】
また、特許文献3においては、例えば横方向の寸法が異なる2種類のICカードのうちの所定のICカードの誤ったカード収容部への挿入操作を規制する切換え機構が、共通のカード挿抜口近傍の内部に備えられている。この切換え機構は、横幅の広い方のICカード用のカード収容部に対して、横幅の狭い方のICカードの誤った挿入操作を規制する誤挿入規制部材と、横幅の狭い方のICカードの挿入を規制する第1の状態(ロック状態)と、横幅の広い方のICカードの挿入を可能とする第2の状態(アンロック状態)とを誤挿入規制部材にとらせるロック/アンロック機構と、誤挿入規制部材をカード挿入方向とは反対方向に付勢する付勢部材とを含んで構成されている。
【特許文献1】特許第3385249号公報
【特許文献2】特許第3396457号公報
【特許文献3】特許第3803098号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記複合コネクタとしてはその他にも種々の構造のものが考えられる。例えば横方向の寸法が同じ2種類の異なるICカードが、コネクタハウジング内で階層構造に形成された異なるカード収容部に対して、それぞれに2つの異なるカード挿抜口から着脱できるようになっている複合コネクタがある。
【0009】
ここで、コネクタハウジング内に取り付けられたコンタクト群が、上記2種類のICカードの間で異なり別個になる場合には、これ等の2つのICカードはカードコネクタに同時に装着されても全く問題が生じない。しかし、コンタクト群が、上記2種類のICカードの間で共通する場合には、これ等の2つのICカードがカードコネクタに同時に装着されないようにするために、一方のICカードが装填されていると他方のICカード挿入を阻止するカード挿入の排他機構が必須になってくる。
【0010】
しかしながら、上述した特許文献を含めてこれまでに開示されているカード用複合コネクタには、2種類のICカードの他方のICカードの挿入を簡便に阻止する排他機構に関するものは見出せない。また、このような排他機構を有するカードコネクタも見出せない。
【0011】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、カード用複合コネクタにおいて、2種類のICカードのうちの一方のICカードが装着されている場合に、他方のICカードの挿入を簡便に阻止する排他機構、および、それを備えたカードコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明にかかるカードコネクタの排他機構は、上ハウジング部材と下ハウジング部材により形成されるコネクタハウジング内に階層構造に設けられ、第1の収容部および第2の収容部から成るカード収容部と、前記第1の収容部に連通する第1の挿抜口および前記第2の収容部に連通する第2の挿抜口から成るカード挿抜部と、を備えるカードコネクタにあって、前記コネクタハウジング内の前記カード収容部と前記カード挿抜口の間に取り付けられ、第1のICカードが前記第1の収容部に装着されている状態において第2のICカードが前記第2の収容部に挿入されるのを阻止し、逆に前記第2のICカードが前記第2の収容部に装着されている状態において前記第1のICカードが前記第1の収容部に挿入されるのを阻止する、という構成になっている。
【0013】
そして、本発明にかかるカードコネクタは、上ハウジング部材と下ハウジング部材により形成されるコネクタハウジング内に階層構造に設けられ、第1の収容部および第2の収容部から成るカード収容部と、前記第1の収容部に連通する第1の挿抜口および前記第2の収容部に連通する第2の挿抜口から成るカード挿抜部と、前記下ハウジング部材の一方の側壁に沿って取り付けられ、押圧により第1のICカードあるいは第2のICカードを前記カード収容部に挿入してロックし、更にそれ等の再押圧により前記ICカードを前記カード収容部から排出しイジェクトするプッシュイン・プッシュアウト機構と、上述したカードコネクタの排他機構と、を備えて構成される。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、カード用複合コネクタにおいて、2種類のICカードのうちの一方のICカードが装着されている場合に、他方のICカードの挿入を簡便に阻止する排他機構、および、それを備えたカードコネクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明の好適な実施形態について図面を参照して説明する。図1ないし図4は本実施形態のカードコネクタの一例を示す図であって、図1はカードコネクタの全体を示した外観斜視図であり、図2は図1に示すカードコネクタのカバー部材である上ハウジング部材を取り外して示した斜視図である。そして、図3は図2に示したカードコネクタの平面図であり、階層構造のコネクタハウジング内の上層図である。図4は図2に示したカードコネクタの平面図であって、上記コネクタハウジング内の下層図である。
【0016】
また、図5および図6はカードコネクタに挿抜される2種類のICカードの一例を示した平面図である。ここで、図5は縦方向(カード挿入抜去方向)に短い小さな第1のカードであり、図6は縦方向に長い大きな第2のカードである。なお、これ等のカードの横方向の幅は同じになっている。上記図面においては、その要部に符号が付され、互いに同一または類似の部分には共通の符号を付して、重複説明は一部省略される。
【0017】
図1ないし図4に示されるように、本実施形態のカードコネクタ10では、コネクタ本体の下ハウジング部材11と、この下ハウジング部材11と組合されるカバー部材としての上ハウジング部材12とによりコネクタハウジング13が構成されている。ここで、下ハウジング部材11は加工性に優れた絶縁性の合成樹脂材料の成形により作られ、上ハウジング部材12は例えばステンレス等の金属板材料の打ち抜き曲げ加工品により形成される。
【0018】
そして、コネクタハウジング13の後端部にカード挿抜口14が設けられ、このカード挿抜口14は、例えば図5に示した第1のカード100が挿抜される第1の挿抜口14aと、例えば図6に示した第2のカード200が挿抜される第2の挿抜口14bから成る。また、コネクタハウジング13内には、中空で扁平なカード収容部15が形成されている。このカード収容部15は、上記第1のカード100が装着される第1の収容部15aと第2のカード200が装着される第2の収容部15bの階層構造になっている。ここで、第1の収容部15aおよび第2の収容部15bは、それぞれ第1の挿抜口14aおよび第2の挿抜口14bにコネクタハウジング13内で連通し、仕切板16により分離して画成されている。
【0019】
更に、下ハウジング部材11には、上記2種類のICカードのコンタクトパッドと加圧接触するための多数のコンタクト17が植設されている。これ等のコンタクト17は、それぞれにカード挿抜方向に伸びた弾性接片から成る第1の接点部17aと第2の接点部17bを有し、その端子部17cが例えば下ハウジング部材11の前壁から外部に延出するように形成されている。
【0020】
ここで、第1の接点部17aは、その弾性変位により、第1のカード100のカード本体101の例えば裏面に形成されたコンタクトパッド102に加圧接触する。そして、第2の接点部17bは、隣接するコンタクト17間に形成されその上端がほぼ仕切板16の高さにある隔壁18の上方から突出して、その弾性変位により、第2のカード200のカード本体201の例えば裏面に形成されたコンタクトパッド202に加圧接触するようになっている。
【0021】
また、図2ないし図4に示されるように、2種類のICカードをそれぞれのカード収容部に挿入およびそのカード収容部から排出をさせるプッシュイン・プッシュアウト機構19が下ハウジング部材11の一側壁側に設けられている。このICカードをプッシュイン・プッシュアウトするプッシュイン・プッシュアウト機構19は、下ハウジング部材11の側縁辺に沿いカード挿抜方向に進退動可に配置されたスライダーとしてのカードプッシュ部材20、該カードプッシュ部材20を弾性付勢するバネ部材21等を備えている。
【0022】
ここで、カードプッシュ部材20は、その後端領域に設けられた第1の加圧斜面20aおよびその前端領域に設けられた第2の加圧斜面20bを有している。そして、第1のカード100の挿入すなわちプッシュインにおいて、第1のカード100の前端のコーナー部に設けられたカード挿入姿勢指示用斜面である受圧斜面101aが第1の加圧斜面20aを押圧する。同様に、第2のカード200の挿入において、第2のカード200の前端のコーナー部に設けられた受圧斜面201aが第2の加圧斜面20bを押圧する。なお、カードプッシュ部材20は例えば加工性に優れた液晶ポリマーのような合成樹脂から成る。
【0023】
更に、プッシュイン・プッシュアウト機構19は、カードプッシュ部材20の後端領域に形成したカム要素22、該カム要素22に係合する揺動アーム23を有している。ここで、揺動アーム23はステンレス製であり、その基端が下ハウジング部材11の所定箇所に形成された孔に回動可に支承され、その自由端がカム要素22のハート形カム等の周囲に形成されたカム溝に滑合されている。そして、カードプッシュ部材20は、バネ部材21とカム要素22により適正にカード挿抜方向に直線往復動できるようになっている。
【0024】
次に、上記2種類のICカードのカードコネクタ10へのプッシュイン・プッシュアウトについて、図7ないし図10を参照して説明する。ここで、図7はカードコネクタ10に第1のカード100を装着した状態の一例を示し、(a)はそのカードコネクタの平面図、(b)は(a)におけるA−A矢視の断面図である。図8はカードコネクタ10に第1のカード100を装着した状態におけるカード挿抜口14からの正面図である。そして、図9はカードコネクタ10に第2のカード200を装着した状態の一例を示し、(a)はそのカードコネクタの平面図、(b)は(a)におけるB−B矢視の断面図である。図10はカードコネクタ10に第2のカード200を装着した状態におけるカード挿抜口14からの正面図である。
【0025】
2種類のICカードのカードコネクタ10へのプッシュインでは、第1のカード100は、その後端部の押圧により、コイルスプリングのような圧縮バネを有するバネ部材21の弾発に抗して第1の挿抜口14aから挿入される。この挿入においては、第1のカード100の前端のコーナー部に設けられた受圧斜面101aがカードプッシュ部材20の第1の加圧斜面20aを押圧する。そして、カードプッシュ部材20は、その前端面が下ハウジング部材11の前壁に達するまでカム要素22に案内されて移動し、その後、カム要素22により所定位置において錠止される。
【0026】
このようにして、図7および図8に示すように、第1のカード100は第1の収容部15aに装着され、そのコンタクトパッド102がコンタクト17の第1の接点部17aに加圧接触し接続される。また、第1のカード100の有無およびそのライトプロテクトボタンの位置を検出する第1の検出スイッチ24aがオン状態にされる。
【0027】
同様に、第2のカード200は、その後端部の押圧により、バネ部材21の弾発に抗して第2の挿抜口14bから挿入される。この挿入において、第2のカード200の前端のコーナー部に設けられた受圧斜面201aがカードプッシュ部材20の第2の加圧斜面20bを押圧する。そして、カードプッシュ部材20は、その前端面が下ハウジング部材11の前壁に達するまでカム要素22に案内されて移動し、その後、カム要素22により所定位置において錠止される。このようにして、第2のカード200は第2の収容部15bに装着され、そのコンタクトパッド202が第2の接点部17bに加圧接触し接続される。
【0028】
このようにして、図9および図10に示すように、第2のカード200は第2の収容部15bに装着され、そのコンタクトパッド202がコンタクト17の第2の接点部17bに加圧接触し接続される。また、第2のカード200の有無およびそのライトプロテクトボタンの位置を検出する第2の検出スイッチ24bがオン状態にされる。
【0029】
そして、これ等のカードのカードコネクタ10からの排出すなわちプッシュアウトでは、第1のカード100あるいは第2のカード200のカード後端の再押圧により、カードプッシュ部材20の錠止が解除される。そして、以後は、カードプッシュ部材20がバネ部材21にてカードの排出方向に弾発され移動し、カードプッシュ部材20の後端面が下ハウジング部材11に設けられたストッパーに達するまで排出方向に直線移動する。第1のカード100あるいは第2のカード200は、それぞれの受圧斜面101aあるいは201aがカードプッシュ部材20の第1の加圧斜面20aあるいは第2の加圧斜面20bに係合していることから、上記カードプッシュ部材20の一連の動きによりカードコネクタ10から排出される。
【0030】
更に、上記カードコネクタ10には、第1のカード100(あるいは第2のカード200)が第1の収容部15a(あるいは第2の収容部15b)に装填されている状態で、第2のカード200(あるいは第1のカード100)が第2の収容部15b(あるいは第1の収容部15a)に挿入されるのを阻止するためのカード挿入排他機構25が設けられている。このカード挿入排他機構25は、図2ないし図4に示したように、第1の挿抜口14aおよび第2の挿抜口14bから成るカード挿抜口14と第1の収容部15aおよび第2の収容部15bから成るカード収容部15との間に位置し、カード挿抜方向に直交して下ハウジング部材11の左右の側壁の間に延在するシャッター部材26を有している。
【0031】
以下、図2、図3、図4および図11を参照して上記カード挿入排他機構25について説明する。ここで、図11(a)はカード挿入排他機構25を構成するシャッター部材26の斜視図であり、図11(b)はカード挿抜口14から見たシャッター部材26の正面図である。カード挿入排他機構25は、シャッター部材26、このシャッター部材26を一方向に付勢するねじりコイルバネ27を含んで構成される。
【0032】
シャッター部材26は、カード挿抜口14から見てその下方が開放した略門型の形状を成しており、この門型の成す矩形状の空間を第1のカード100が通り抜けられるように構成されている。そして、図11(a)および図11(b)に拡大されて示されるように、その両端に回動軸として例えば円柱状の軸部26SL、26SRを有すると共に、軸部26SLと軸部26SRとを連結する上記門型の連結部26Tを中央部に有している。また、連結部26Tの上端には2つの突起部26UL、26URが突成されている。
【0033】
ここで、シャッター部材26は例えばアルミ合金等の軽金属材料を一体成形したものである。そして、連結部26Tの形状は、細長の長手方向にその前端面(カード収容部15側の面)とその後端面(カード挿抜口14側の面)が平行に形成された断面矩形を成している。あるいは、この断面矩形状の他に、例えば、その後端面が下方に向かって前端面に傾斜する傾斜面を有し、断面三角形状を成していても構わない。
【0034】
上記軸部26SL、26SRは、それぞれ、下ハウジング部材11の左右の側壁に固設された軸受部に回動自在に係合し支持されている。そして、軸部26SL、26SRの外周部には、それぞれ、ねじりコイルバネ27(図3および図4参照)が巻装されている。ねじりコイルバネ27の一端は軸部26SL、26SRの端部に係止され、ねじりコイルバネ27の他端は下ハウジング部材11の側壁に係止されている。これにより、シャッター部材26は、軸部26SL、26SRが回動する上記軸受部を中心として、第1のカード100の挿入方向すなわち第2のカード200の排出方向となる時計回りの一方向に付勢されることになる。
【0035】
ここで、シャッター部材26が時計回りの方向に付勢され元の位置にある状態で、上述したように、シャッター部材26の門型の成す矩形状の空間を第1のカード100が通り抜け、第1の収容部15a内に挿入できるようになっている。逆に、シャッター部材26がねじりコイルバネ27の付勢に抗して反時計回りの方向に転動し横倒しになった状態で、シャッター部材26の横倒しになった連結部26Tの上方に形成される空間を第2のカード200が通り抜け、第2の収容部15b内に挿入できるようになっている。
【0036】
次に、カード挿入排他機構25の動作機構について図12ないし図15を参照して説明する。ここで、図12はカードコネクタ10に第1のカード100を装着した状態における上ハウジング部材12を取り外したところの平面図である。図13(a)はカードコネクタ10に第1のカード100を装着した状態で第2のカード200を挿入するところの平面図であり、図13(b)は図13(a)のC−C矢視の断面図である。そして、図14はカードコネクタ10に第2のカード200を装着した状態における上ハウジング部材12を取り外したところの平面図である。図15(a)はカードコネクタ10に第2のカード200を装着した状態で第1のカード100を挿入するところの平面図であり、図15(b)は図15(a)のD−D矢視の断面図である。
【0037】
図12に示したような第1のカード100の装着では、カード挿入排他機構25はそのシャッター部材26が時計回りの方向に付勢された元の位置にある状態になっている。このような状態において、第1のカード100は、第1の挿抜口14aからシャッター部材26の門型の成す矩形状の空間を通り、仕切板16下にある第1の収容部15aへと挿入される。
【0038】
この第1のカード100の挿入では、上述したようなプッシュイン・プッシュアウト機構19が用いられる。すなわち、第1のカード100の前端部の第1の挿抜口14aへの当接とその後端部の押圧により、第1のカード100は上述したバネ部材21の弾発に抗して第1の収容部15aへと挿入される。この挿入において、第1のカード100の受圧斜面101aがカードプッシュ部材20の第1の加圧斜面20aを押圧し、カードプッシュ部材20は、上述したようにカム要素22に案内されて移動すると共にその所定位置において錠止される。
【0039】
このようにして、第1のカード100は第1の収容部15aに装着され、第1のカード100のコンタクトパッド102が上述したようにコンタクト17の第1の接点部17aと加圧接触する。
【0040】
図13に示すように、カードコネクタ10に第1のカード100を装着した状態で第2のカード200を挿入しようとすると、第2のカード200の前端部がカード挿入排他機構25におけるシャッター部材26の連結部26Tに当たり、その挿入が阻止される。ここで、連結部26Tの上端に連成する2つの突起部26UL、26URが上記挿入の阻止を保証する。
【0041】
他方、図14に示したような第2のカード200の装着では、第2の挿抜口14bから挿入した第2のカード200の前端部がシャッター部材26における連結部26Tの上端たとえば2つの突起部26UL、26URに当たり、更に第2のカード200の後端部の押圧によりシャッター部材26がねじりコイルバネ27の付勢に抗して反時計回りの方向に回動して横倒しになる。このようにして、シャッター部材26の横倒しになった連結部26Tの上方に開放される空間を第2のカード200が通り抜け、第2の収容部15bへと挿入される。
【0042】
この第2のカード200の挿入においても、上述したプッシュイン・プッシュアウト機構19が用いられる。すなわち、第2のカード200の後端部の押圧により、第2のカード200は上述したのと同様にバネ部材21の弾発に抗して第2の収容部15bへと挿入される。この挿入において、第2のカード200の受圧斜面201aがカードプッシュ部材20の第2の加圧斜面20bを押圧し、カードプッシュ部材20は、上述したようにカム要素22に案内されて移動すると共にその所定位置において錠止される。
【0043】
このようにして、第2のカード200は第2の収容部15bに装着され、第2のカード200のコンタクトパッド202が上述したようにコンタクト17の第2の接点部17bと加圧接触する。
【0044】
図15に示すように、カードコネクタ10に第2のカード200を装着した状態で第1のカード100を挿入しようとすると、第1のカード100の前端部がカード挿入排他機構25において転動して横倒しになっているシャッター部材26の連結部26Tの下端に当たり、その挿入が阻止される。
【0045】
以上のようにして、カード挿入排他機構25は、2種類のICカードが装着されるカード用複合コネクタにおいて、2種類のICカードのうちの一方のICカードが装着されている場合に、他方のICカードの挿入を簡便に阻止するようになる。
【0046】
本実施形態では、カード用複合コネクタにおいて、そのコネクタハウジング内で階層構造に形成された異なるカード収容部に対し、2つの異なるカード挿抜口からの2種類の異なるICカードの互いに排他的な挿入が可能になる。そして、このようなカード用複合コネクタへの2種類の異なるICカードのうちの一方のみの装着が簡便にできるようになる。しかも、このICカードの排他的な挿入を可能にする本実施形態のカードコネクタ排他機構は極めて簡素な構造であり耐久性に優れる。
【0047】
そして、2種類の異なるICカードに対応して、コネクタハウジング内で階層構造に形成された2つのカード収容部、および2つの異なるカード挿抜口を有するカードコネクタは、上記カードコネクタ排他機構を備えることにより実用に供される。また、このカードコネクタは、コネクタハウジング内に取り付けられたコンタクト群において、上記2種類のICカードの間で共通するものがある場合でも、電子機器や情報端末機器等に広汎に使用でき、これ等の機器において各種の機能拡張ができるようになる。
【0048】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、上述した実施形態は本発明を限定するものでない。当業者にあっては、具体的な実施態様において本発明の技術思想および技術範囲から逸脱せずに種々の変形・変更を加えることが可能である。
【0049】
例えば、第1の接点部17aと第2の接点部17bが共通のコンタクト17に連成されない場合であっても、本実施形態のカード挿入排他機構をカード用複合コネクタに取り付けることができる。
【0050】
また、上記2種類のICカードは、その挿抜方向である縦方向の長さが異なり、その横方向の幅が同一の場合において、カード用複合コネクタを説明しているが、それ等の横方向の幅が異なる場合において、本実施形態のカード挿入排他機構をカード用複合コネクタに取り付けても構わない。
【0051】
また、カード挿入排他機構は、そのシャッター部材が上下に逆さに取り付けられた構成になっていてもよい。このような構成では、シャッター部材が反時計回りの方向に付勢され元の位置にある状態で、シャッター部材の門型の成す矩形状の空間を第2のカードが通り抜け、第2の収容部内に挿入できるようになる。そして、第1のカードは、シャッター部材をねじりコイルバネの付勢に抗して時計回りの方向に転動させ、その連結部を横倒に押し上げて第1の収容部内に挿入するようになる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の実施形態にかかるカードコネクタを示す全体の斜視図である。
【図2】図1のカードコネクタのカバー部材である上ハウジング部材を取り外して示した斜視図である。
【図3】図2に示したカードコネクタの平面図である。
【図4】図3のカードコネクタの仕切板を取り外して示したカードコネクタの平面図である。
【図5】2種類のICカードのうちの小さなカードの一例を示した平面図である。
【図6】2種類のICカードのうちの大きなカードの一例を示した平面図である。
【図7】本発明の実施形態にかかるカードコネクタに小さなカードを装着した状態の一例を示し、(a)はそのカードコネクタの平面図、(b)は(a)におけるA−A矢視の断面図である。
【図8】本発明の実施形態にかかるカードコネクタに小さなカードを装着した状態におけるカード挿抜口からの正面図である。
【図9】本発明の実施形態にかかるカードコネクタに大きなカードを装着した状態の一例を示し、(a)はそのカードコネクタの平面図、(b)は(a)におけるB−B矢視の断面図である。
【図10】本発明の実施形態にかかるカードコネクタに大きなカードを装着した状態におけるカード挿抜口からの正面図である。
【図11】本発明の実施形態にかかるカード挿入排他機構の一例を示し、(a)はそのシャッター部材の斜視図であり、(b)はカード挿抜口から見たシャッター部材の正面図である。
【図12】本発明の実施形態にかかるカードコネクタに小さなカードを装着した状態における上ハウジング部材を取り外したところの平面図である。
【図13】本発明の実施形態にかかるカード挿入排他機構の動作機構を示し、(a)はカードコネクタに小さなカードを装着した状態で大きなカードの挿入を阻止するところの平面図であり、(b)は(a)のC−C矢視の断面図である。
【図14】本発明の実施形態にかかるカードコネクタに大きなカードを装着した状態における上ハウジング部材を取り外したところの平面図である。
【図15】本発明の実施形態にかかるカード挿入排他機構の動作機構を示し、(a)はカードコネクタに大きなカードを装着した状態で小さなカードの挿入を阻止するところの平面図であり、(b)は(a)のD−D矢視の断面図である。
【符号の説明】
【0053】
10…カードコネクタ、11…下ハウジング部材、12…上ハウジング部材、13…コネクタハウジング、14…カード挿抜口、14a…第1の挿抜口、14b…第2の挿抜口、15…カード収容部、15a…第1の収容部、15b…第2の収容部、16…仕切板、17…コンタクト、17a…第1の接点部、17b…第2の接点部、17c…端子部、18…隔壁、19…プッシュイン・プッシュアウト機構、20…カードプッシュ部材、20a…第1の加圧斜面、20b…第2の加圧斜面、21…バネ部材、22…カム要素、23…揺動アーム、24a…第1の検出スイッチ、24b…第2の検出スイッチ、25…カード挿入排他機構、26…シャッター部材、26SL,26SR…軸部、26T…連結部、26UL,26UR…突起部、27…ねじりコイルバネ、100…第1のカード、101,201…カード本体、101a,201a…受圧斜面、102,202…コンタクトパッド、200…第2のカード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上ハウジング部材と下ハウジング部材により形成されるコネクタハウジング内に階層構造に設けられ、第1の収容部および第2の収容部から成るカード収容部と、
前記第1の収容部に連通する第1の挿抜口および前記第2の収容部に連通する第2の挿抜口から成るカード挿抜部と、を備えるカードコネクタにあって、
前記コネクタハウジング内の前記カード収容部と前記カード挿抜口の間に取り付けられ、
第1のICカードが前記第1の収容部に装着されている状態において第2のICカードが前記第2の収容部に挿入されるのを阻止し、逆に前記第2のICカードが前記第2の収容部に装着されている状態において前記第1のICカードが前記第1の収容部に挿入されるのを阻止するカードコネクタの排他機構。
【請求項2】
前記カード収容部および前記カード挿抜口の間において前記ICカードの挿抜方向と交差するように配置され回動するシャッター部材と、前記シャッター部材を一回動方向に付勢する付勢部材と、を有することを特徴とする請求項1に記載のカードコネクタの排他機構。
【請求項3】
前記シャッター部材は、その両端において、前記下ハウジング部材の側壁に固設された軸受部に回動自在に係合する回動軸と、該回動軸を連結し前記カード挿抜口から見て門型の連結部とを備え、前記第1のICカードが前記門型の前記連結部の成す矩形状の空間を通り抜け、前記第2のICカードが前記シャッター部材の回動に伴い前記連結部の開放された空間を通り抜けるようになっていることを特徴とする請求項2に記載のカードコネクタの排他機構。
【請求項4】
前記付勢部材は、前記回動軸に巻装されたねじりコイルバネを有し、前記ねじりコイルバネの一端が前記下ハウジング部材の側壁に係止され、前記ねじりコイルバネの他端が前記回動軸に係止されて、前記シャッター部材を一回動方向に付勢することを特徴とする請求項3に記載のカードコネクタの排他機構。
【請求項5】
上ハウジング部材と下ハウジング部材により形成されるコネクタハウジング内に階層構造に設けられ、第1の収容部および第2の収容部から成るカード収容部と、
前記第1の収容部に連通する第1の挿抜口および前記第2の収容部に連通する第2の挿抜口から成るカード挿抜部と、
前記下ハウジング部材の一方の側壁に沿って取り付けられ、押圧により第1のICカードあるいは第2のICカードを前記カード収容部に挿入してロックし、更にそれ等の再押圧により前記ICカードを前記カード収容部から排出しイジェクトするプッシュイン・プッシュアウト機構と、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載のカードコネクタの排他機構と、
を具備して構成されるカードコネクタ。
【請求項6】
前記第1の収容部に装着される前記第1のICカードの少なくとも1つのコンタクトパッドおよび前記第2の収容部に装着される前記第2のICカードの少なくとも1つのコンタクトパッドが、前記コネクタハウジング内に設けられた互いに共通するコンタクトに加圧接触する構造になっていることを特徴とする請求項5に記載のカードコネクタ。
【請求項7】
前記第1のICカードと前記第2のICカードは横方向の幅は同じで縦方向の長さが異なる請求項6に記載のカードコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−93816(P2009−93816A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260582(P2007−260582)
【出願日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【出願人】(000177690)山一電機株式会社 (233)
【Fターム(参考)】