説明

カード処理機に設けられたカード保持装置

カードトレー(16)、カード搬送装置(13,14,15)、カードトレー(16)内のカード(18,18a)の位置又は停滞を検出するための装置(52)及びカード処理機(10)における不法行為によってカードトレー(16)内で不正に停止されたカード(18a)のための保持装置(28,30,32,38)が設けられており、カード搬送装置(13,14,15)に搬送信号が送出されたにもかかわらず、カード(18a)の位置変化が認識されない場合に前記保持装置が作動されるようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード処理機に設けられたカード保持装置に関する。このカード保持装置はドイツ連邦共和国特許出願公開第19535787号明細書から出発する。
【0002】
カード処理機のカードスリットの前方に取り付けられた拘束装置によってクレジットカードを拘束する、現金自動支払機のカード処理機における不法行為の試みは公知となっている。これにより、クレジットカードはカード処理機の搬送装置によって引き込むことも、カードスリットへ搬送し戻すことも不可能となる。後で、拘束装置は拘束されたクレジットカードと一緒にカード処理機から取り外され、これにより、クレジットカードは関係者以外の手に渡ってしまう。
【0003】
従って、前掲のドイツ連邦共和国特許出願公開第19535787号明細書では、カードが故意に磁気カードリーダから引き出された場合に、メモリされた情報を破壊するための技術を有する方法及び装置が提案されている。提案された方法では、磁気カードの異常な停止及び停止後のカードの運動が検出され、この運動に関連して磁気情報破壊装置が作動する。
【0004】
このような方法は磁気カードにしか適しておらず、少なくともコンタクト一体型のチップカードは、この方法では消去不能である。それというのも、チップカードが早期に停止した場合、チップカードのコンタクトはカード処理機のコンタクトと接続されないからである。更に、正当なカード所有者に消去後新しいカードを交付せねばならず、このことは時間的な遅れと付加的なコストを生ぜしめる。
【0005】
従って本発明の課題は、あらゆるカードタイプに適したクレジットカード盗難防止装置を備えたカード処理機を提案することである。
【0006】
この課題は、請求項1記載の構成によって解決される。
【0007】
本発明は、引出しロックを設けた場合は、不法にカード処理機に取り付けられた拘束装置によって拘束されたクレジットカードが、カードトレーから引き出される恐れはないという考えから出発する。このことは本発明により、拘束装置をカードと一緒にカードトレーから大きな力で引き出そうとしても、カードを不動に保持する保持装置によって実現されている。但し、カード処理機の通常運転においてカードの運動性が損なわれてはならない。カード処理機における不法行為によって不正にカードトレー内で停止されたカードは、カード搬送装置に搬送信号が送出されたにもかかわらず、カードの位置変化が記録されないことで認識される。この場合に前記保持装置が作動される。
【0008】
本発明の改良では、保持装置が少なくとも1つのグリッパを有しており、このグリッパは、保持装置の作動時にカードの片面と接触状態にもたらされてカードを対応受けに押し付け、カードに対しては、引出し力に対して相対的に大きな保持力を備えている。前記対応受けは、本発明の第1変化態様ではカードトレーの制限面又はこのカードトレー内に位置する別の定置の面から成っていてよい。
【0009】
本発明の第2変化態様では、対応受けはグリッパに対向位置する、第2のカード面に作用する対応グリッパである。第1変化態様がグリッパ用の簡単な駆動装置の利点を有しているのに対して、第2変化態様の利点は、カードがカードトレーの中央で保持され延いては曲げ力に晒されないという点にある。
【0010】
グリッパ及び/又は対応グリッパは、カード面と接触する範囲に、カードと比較して高い摩擦係数を有している。
【0011】
有利な形状では、グリッパ及び/又は対応グリッパは、カード面と接触する範囲に、カード面に食込み可能な少なくとも1つの歯状先端部を備えている。このことは、カードを破壊する又は使用不能にすること無く、特に確実なカード拘束を生ぜしめる。
【0012】
グリッパ及び/又は対応グリッパは偏心輪として形成されていてよく、この偏心輪は、電気機械式の駆動装置によって軸線を中心として回動可能な軸に相対回動不能に取り付けられており且つこの軸によって、カードトレーを解放する位置と保持位置との間で移動可能であり、この場合、前記軸はカード処理機の引込み方向で見て、偏心輪のカードとの接触域の手前に位置している。
【0013】
有利には、グリッパ及び/又は対応グリッパは円弧状のアームとして形成されており、このアームの一方の端部は電気機械的な駆動装置によって軸線を中心として回動可能な軸に相対回動不能に取り付けられており且つ当該アームの他方の自由端部には高い摩擦係数を有する領域又は少なくとも1つの歯状先端部が設けられており、この場合、軸はカード処理機の引込み方向で見て、グリッパ及び/又は対応グリッパの接触域の手前に位置している。
【0014】
本発明の択一的な形状に対応して、グリッパ及び/又は対応グリッパはてこ状に形成されており、費やされる引出し力の増大に伴って、カードに加えられる保持力が増大するような角度でカード面に対して当付け可能である。
【0015】
本発明の別の有利な改良に対応して、複数のグリッパ及び/又は対応グリッパがカードトレーの幅にわたって配分されている。この場合、全てのグリッパ及び/又は対応グリッパを一緒にカードトレー内にもたらすことが可能であるが、個々のグリッパ及び/又は対応グリッパのカードトレー内への侵入深さは、他のグリッパ及び/又は対応グリッパとは無関係である。
【0016】
グリッパによるカードの引出し封鎖に対して択一的に、不法行為が試みられるとカードを貫通するピンによって、カードをカード処理機内に保持することができる。有利には、ピンがレバーに固定されており、このレバーはカード搬送方向に対して横方向で組み込まれており、例えば偏心輪によってモータ駆動式で、ピンがカード搬送路を解放する第1の位置と、ピンがカードを貫通してカード搬送を阻止する第2の位置の間で移動可能である。
【0017】
以下に、本発明の実施例を図面につき詳しく説明する。
【0018】
図1及び図2には、それぞれカード処理機10の引込み域が側方断面図及び平面図で示されている。カード導入口12と第1の搬送ローラ対13のみが示されており、この搬送ローラ対13の上下のローラはそれぞれ搬送軸14によって回転可能である。これらの搬送軸14及びカード処理機10の別の全てのカード搬送手段(図示せず)は、カード搬送用モータ15と駆動結合されている。搬送軸14は、カード処理機10の引込み方向Eに対して垂直に位置しており且つ図1では中心線しか図示されていないカードトレー16に対して平行に位置している。このカードトレー16にはクレジットカード18が部分的に導入されている。
【0019】
カード導入口12は上側の制限部材20と下側の制限部材22とから成っている。上側の制限部材20には複数の切欠き24が設けられており、下側の制限部材22には複数の切欠き26が設けられている。これらの切欠き24,26は互いに向かい合っている。各切欠き24,26には円弧状のグリッパ30,32の自由端部28が、カードトレー16がまだ解放されたままであるように突入している。アーム30,32は、例えばばね鋼等のプログレッシブな弾性曲線を有する弾性材料から成っている。上側のアーム30は上側の軸34と結合されており、下側のアーム32は下側の軸36と結合されている。各アーム30,32の自由端部28には若干の歯状先端部38が配置されている。これらの先端部の代わりに、又はこれらの先端部に加えて付加的に、アーム30,32の自由端部28にはクレジットカード18の材料に比べて高い摩擦係数を有する材料が配置されていてよい。
【0020】
上側の軸34は、カードトレー16の外位に位置する上側の歯車40と回転結合されており、この歯車40は、下側の軸36に相対回動不能に被せ嵌められた下側の歯車42と噛み合っている。この下側の歯車42にはピニオン44が噛み合っており、このピニオン44はアクチュエータ46によって駆動可能である。歯車‐アクチュエータ40,42,44,46の代わりに、電磁石によって作動可能なレバー‐アクチュエータも使用可能である。
【0021】
切欠き24;26と駆動ローラ対13との間の領域において、上側の制限部材20には上側の孔48が設けられており、下側の制限部材22には下側の孔50が設けられている。これらの孔48,50は互いに向かい合っており且つクレジットカードの位置を検出するための装置52のビームが通走する。
【0022】
図3には、カード処理機10の引込み域が、拘束装置(図示せず)によって不正にカード処理機10内で保持されたクレジットカード18aと一緒に示されている。アーム30,32は保持位置に移動しており、歯状先端部38がクレジットカード18aに係合しているということが認識される。
【0023】
次に、カード処理機10及びこのカード処理機10内に配置されたカード保持装置の作動形式を説明する。カード処理機10の準備位置では、アーム30,32は図1に示したように、カードトレー16を解放している状態にある。ライトバリア52のビームは両孔48,50を支障無く貫通可能である。今、クレジットカード18が挿入方向Eでカードトレー16内へ押しずらされると、ライトバリア52のビームが中断されて、その信号が制御装置54へ伝達される。更に、この制御装置54はカード搬送モータ15を接続し、クレジットカード18は少し後で搬送ローラ13によって把持される。ライトバリア52のビームの中断は、制御装置54において監視時間を開始させ、この監視時間内でライトバリア52は再び放射されていなければならない。これは、カードが整然と搬送される場合のことである。しかし、クレジットカード18がカードトレー16内で保持された場合は、ライトバリア52が放射されること無く監視時間が経過する。制御装置54が更にアクチュエータ46に給電し、これにより、アーム30,32は図3に示した保持位置へ移動される。この場合、アーム30,32のプログレッシブな弾性係数に基づいて、これらのアーム30,32は、移動距離の第1部分では様々なカード厚さ及び付加的にカードトレー16に挿入された拘束装置にも適合可能である。移動距離の第2部分では、アーム30,32の弾性は低下して、これらのアーム30,32は生じ得る引出し力に比例して実質的に剛性になる。今、クレジットカード18aを無理矢理カード処理機10から引き出そうとすると、先端部38がそれぞれカード表面に食い込んで、アーム30,32が互いに向かって更に旋回される。これにより、上下アーム30,32の自由端部28間の間隔は更に小さくなるので、保持装置の拘束力は更に大きくなり、その結果、クレジットカード18aをカード処理機10から引き出すことは実質的に不可能になる。この場合、クレジットカード18aは、カード機能を損なわない先端部38の押込み部に至るまで無傷のままである。アーム30,32は、正式に認可された担当者によってのみ、解放位置へ戻すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】カード処理機の供給域の側方断面図である。
【図2】図1に示したカード処理機の供給域の平面図である。
【図3】図に示したカード処理機の供給域を、該供給域内で保持されたクレジットカードと一緒に示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードトレー(16)、カード搬送装置(13,14,15)、カードトレー(16)内のカード(18,18a)の位置又は停滞を検出するための装置(52)及びカード処理機(10)における不法行為によってカードトレー(16)内で不正に停止されたカード(18a)のための保持装置(28,30,32,38)が設けられており、カード搬送装置(13,14,15)に搬送信号が送出されたにもかかわらず、カード(18a)の位置変化が認識されない場合に前記保持装置が作動されるようになっていることを特徴とする、カード処理機。
【請求項2】
保持装置が少なくとも1つのグリッパ(30)を有しており、該グリッパが、保持装置(28,30,32,38)の作動時にカードの片面と接触状態にもたらされてカード(18a)を対応受けに押し付け、カード(18a)に対しては、引出し力に対して相対的に大きな保持力を備えている、請求項1記載のカード処理機。
【請求項3】
前記対応受けが、グリッパ(30)に対向位置する、第2のカード面に作用する対応グリッパ(32)である、請求項2記載のカード処理機。
【請求項4】
グリッパ(30,32)がカード面と接触する範囲に、カード(18a)と比較して高い摩擦係数を有している、請求項2又は3記載のカード処理機。
【請求項5】
グリッパ(30,32)のカード面と接触する範囲に少なくとも1つの歯状先端部(38)が設けられており、該歯状先端部が、少なくとも引出し力の行使時にカード面に食込み可能である、請求項2又は3記載のカード処理機。
【請求項6】
グリッパ(30)及び/又は対応グリッパ(32)が偏心輪として形成されており、該偏心輪が、電気機械的な駆動装置(46)によって軸線を中心として回動可能な軸(34,36)に相対回動不能に取り付けられており且つ該軸によって、カードトレー(16)を解放する位置と保持位置との間で移動可能であり、しかも、前記軸がカード処理機(10)の引込み方向で見て、偏心輪のカード(18a)との接触域の手前に位置している、請求項2から5までのいずれか1項記載のカード処理機。
【請求項7】
前記偏心輪が円弧状に形成されたアームであり、該アームの一方の端部が軸(34;36)において相対回動不能であり、当該アームの他方の自由端部(28)に、高い摩擦係数を有する領域又は少なくとも1つの歯状先端部(38)が設けられている、請求項6記載のカード処理機。
【請求項8】
グリッパ及び/又は対応グリッパがてこ状に形成されており、カードトレー(16)を解放する位置と保持位置の間で移動可能であり且つ費やされる引出し力の増大に伴って、カード(18a)に加えられる保持力が増大するような角度でカード面に対して当付け可能である、請求項2から5までのいずれか1項記載のカード処理機。
【請求項9】
複数のグリッパ(30)及び/又は対応グリッパ(32)がカードトレー(16)の幅にわたって配分されている、請求項2から8までのいずれか1項記載のカード処理機。
【請求項10】
全てのグリッパ(30)及び/又は対応グリッパ(32)が一緒にカードトレー(16)内へもたらされるが、個々のグリッパ(30)及び/又は対応グリッパ(32)のカードトレー(16)内への侵入深さは、他のグリッパ及び/又は対応グリッパとは無関係である、請求項1から9までのいずれか1項記載のカード処理機。
【請求項11】
グリッパ(30,32)が弾性材料から成っており且つプログレッシブな弾性係数を有している、請求項7から10までのいずれか1項記載のカード処理機。
【請求項12】
保持装置が少なくとも1本のピンを有しており、該ピンが保持装置の作動時にカードの片面と接触状態にもたらされてカードを貫通するようになっている、請求項1記載のカード処理機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−507612(P2006−507612A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510216(P2005−510216)
【出願日】平成15年11月3日(2003.11.3)
【国際出願番号】PCT/DE2003/003642
【国際公開番号】WO2004/049236
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(502402250)ヴィンコール ニクスドルフ インテルナチオナール ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (4)
【Fターム(参考)】