説明

カード状記録媒体処理装置及びカード状記録媒体の処理方法

【課題】光学式センサ等を不要にしつつ、誤書込みの防止及び装置全体のコンパクト化を図ることが可能なカード状記録媒体処理装置及びカード状記録媒体の処理方法を提供する。
【解決手段】走行路と、走行路に臨むとともに、カード状記録媒体に所定の書込処理を実行する書込ヘッド6と、書込ヘッド6と離間して走行路に臨むとともに、磁気データの信号を再生する読取ヘッド5と、走行路を挟んで書込ヘッド6に対向配置されるとともに、書込ヘッド6が書込処理を実行するタイミング調整に用いられる書込みパルスを生成する書込みパルス生成手段(書込みパルス検出ヘッド)と、書込みパルスと読取ヘッド5による再生信号とを検出するとともに、書込みパルスに基づいて書込ヘッド6を制御する制御手段(CPU101)と、を有し、制御手段は、書込みパルスの検出よりも前に、読取ヘッド5による再生信号を検出したときは、書込処理を無効化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙やプラスチックなどのカード状記録媒体に記録されたデータ(例えば磁気データ)を読み取るカード状記録媒体処理装置及びカード状記録媒体の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からガイド(カード走行路)内においてカードを手動でスワイプさせて、カードに記録された情報を読み取る手動スワイプ式のデータスキャナが知られている。なお、本明細書でいう「スワイプ」とは、カード状の情報記録媒体をカード状記録媒体処理装置のガイド(カード走行路)に沿って手動でさっと走らせる動作をいう。
【0003】
このような手動スワイプ式のデータスキャナを用いて、カードに記録された情報を正確に読み取るため、或いは、カードへの書き込みを行うためには、カードがスワイプされた際に、そのスワイプ方向を正しく判別する必要がある。
【0004】
スワイプ方向を判別する方法としては、例えば、ガイド(カード走行路)の前後(長手方向)に2個の光学式センサを設置し、センサの遮光順によってスワイプ方向を判別する方法がある。ところが、光学式センサを用いた方法では、センサスイッチの設置や調整,回路パターンの準備,判別処理用ソフトウェアの準備等が必要になるため、設計段階から構想していないと後から機能を追加することが困難である。なお、この方法は、判別方法が光に頼るものであるため、例えば、屋外で使用する場合に太陽光等によって誤作動を起こす可能性がある。
【0005】
そこで、光学式センサを用いることなくスワイプ方向を判別する方法として、例えば、読取/書込ヘッドで検出した磁気データを順方向及び逆方向にデコードし、開始符号及び終了符号が正しくデコードできた方向をスワイプ方向とする方法がある。この方法によれば、光学式センサやプリヘッド等のセンサ類が不要となるため、設計や回路的な制約が少なくなり、比較的自由に設計を行うことができる。
【0006】
また、光学式センサを用いることなくスワイプ方向を判別する他の方法として、例えば、特許文献1に開示された方法もある。具体的には、まず、手動走査式データリーダ/ライタに、読取専用ヘッドと読取/書込ヘッドという2個のヘッドを設ける。また、これらのヘッド間距離をカード長よりも長くする。そして、読取専用ヘッドで磁気データを検出して方向判別を行い、スワイプ方向が正しかった場合にのみ、読取専用ヘッドと読取/書込ヘッドの間に設けられたストッパーが解放され、読取/書込ヘッドによってカードへの書込みが行われる。この方法によれば、上述同様、光学式センサやプリヘッド等のセンサ類が不要となる。
【0007】
【特許文献1】特開平4−101289号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した光学式センサを用いない方法のうち、前者の方法(磁気データを順方向及び逆方向にデコードする方法)を用いてカードへの書込みを行うためには、スワイプ動作を2回行う必要がある。すなわち、1度目のスワイプで読取/書込ヘッドから磁気データを検出することにより方向の判別を行い、2度目のスワイプで読取/書込ヘッドから書込みを行う必要がある。そのため、1度目と2度目とでスワイプ方向が変わった場合には、それを検出することはできず、誤って書込みが行われてしまう。また、1度目のスワイプの後にカードが入れ替えられて、別のカードがスワイプされたとしても、やはりそれを検出することはできず、そのカードに誤って書込みが行われてしまう。
【0009】
この点、上述した方法のうち、特許文献1に開示された後者の方法(2個のヘッドを設ける方法)を用いれば、1度のスワイプで方向判別と磁気データの書込みを実現できるので、カードに誤って書込みが行われるのを防ぐことができる。しかし、この方法は、ヘッド間の距離を、カードの長手方向の長さ(カード長)よりも長くとることが条件となるため、装置自体の寸法が大きくなってしまう。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学式センサ等を不要にしつつ、誤書込みの防止及び装置全体のコンパクト化を図ることが可能なカード状記録媒体処理装置及びカード状記録媒体の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のような課題を解決するために、本発明は、以下のものを提供する。
【0012】
(1) 磁気データが所定方向に記録されるカード状記録媒体を走行させる走行路と、前記走行路に臨むとともに、前記カード状記録媒体に所定の書込処理を実行する書込ヘッドと、前記書込ヘッドと離間して前記走行路に臨むとともに、磁気データの信号を再生する読取ヘッドと、前記走行路を挟んで前記書込ヘッドに対向配置されるとともに、前記書込ヘッドが書込処理を実行するタイミング調整に用いられる書込みパルスを生成する書込みパルス生成手段と、前記書込みパルスと前記読取ヘッドによる再生信号とを検出するとともに、当該書込みパルスに基づいて前記書込ヘッドを制御する制御手段と、を有し、前記制御手段は、前記書込みパルスの検出よりも前に、前記読取ヘッドによる再生信号を検出したときは、前記書込処理を無効化させることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【0013】
本発明によれば、走行路と、走行路に臨んで離間して配置された書込ヘッド及び読取ヘッドと、書込ヘッドが書込処理を実行するタイミング調整に用いられる書込みパルスを生成する書込みパルス生成手段と、書込みパルスと読取ヘッドによる再生信号とを検出し、書込みパルスに基づいて書込ヘッドを制御する制御手段と、を有するカード状記録媒体処理装置で、書込みパルスの検出よりも前に、読取ヘッドによる再生信号を検出したときは、書込処理を無効化させることとしたから、カード状記録媒体が走行路を走行する方向が、書込ヘッドから見て読取ヘッドの方向であれば、カード状記録媒体に正しく磁気データが書き込まれる一方で、読取ヘッドから見て書込ヘッドの方向であれば、カード状記録媒体に磁気データの書込みは行われない(書込処理は無効化される)。
【0014】
したがって、カード状記録媒体が走行路を走行する方向が正しい場合には、方向判別と磁気データの書込みを1度に行うことができる一方で、この方向が誤っている場合には、磁気データの誤書込みを防ぐことができる。
【0015】
特に、本発明に係るカード状記録媒体処理装置では、制御手段が、書込みパルスと読取ヘッドによる再生信号とを検出するタイミングによって、方向判別を行っている。すなわち、書込ヘッドと読取ヘッドを離間させる距離は、これらのパルス・信号が別々に得られれば、いくら短くしても構わない(例えば、カード長よりも短くしてもよい)。したがって、走行路の長さを短くすることができ、ひいては、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0016】
なお、本発明は、方向判別に光学式センサを用いていないため、装置を簡易なものとすることができる。また、本発明は、書込処理の無効化を制御手段によってソフトウェア的に行うため、設計変更(機能変更)が容易である。
【0017】
(2) 前記読取ヘッドは、前記書込ヘッドからの距離が、前記カード状記録媒体の長手方向の長さよりも短くなる位置に配置されることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【0018】
本発明によれば、読取ヘッドと書込ヘッドとの距離を、カード状記録媒体の長手方向の長さよりも短くなるようにしたから(例えば、カード状記録媒体の長手方向の長さの1/4以下)、カード状記録媒体処理装置をコンパクト化することができる。
【0019】
(3) 前記読取ヘッドと、前記書込ヘッドとが前記走行路に対して同じ側に臨むように並列して配置されていることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【0020】
本発明によれば、読取りヘッドと書込ヘッドとを、走行路に対して同じ側に並列して配置することとしたから、簡易な構造で、片面にのみデータを記録するカード状記録媒体に対する誤書込みを防止することができる。
【0021】
(4) 前記読取ヘッドと、前記書込ヘッドとが前記走行路を挟んで、前記走行路に臨むように配置されていることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【0022】
本発明によれば、読取ヘッドと書込ヘッドとが、走行路を挟んで配置されることとしたから、両面にデータを記録するカード状記録媒体であったとしても、誤書込みを防止することができる。
【0023】
(5) 磁気データが所定方向に記録されるカード状記録媒体を走行させる走行路と、前記走行路に臨むとともに、前記カード状記録媒体に所定の書込処理を実行する書込ヘッドと、前記書込ヘッドと離間して前記走行路に臨むとともに、磁気データの信号を再生する読取ヘッドと、前記走行路を挟んで前記書込ヘッドに対向配置されるとともに、前記書込ヘッドが書込処理を実行するタイミング調整に用いられる書込みパルスを生成する書込みパルス生成手段と、前記書込みパルスと前記読取ヘッドによる再生信号とを検出するとともに、当該書込みパルスに基づいて前記書込ヘッドを制御する制御手段と、を有するカード状記録媒体処理装置で使用されるカード状記録媒体の処理方法であって、電気的に接続された上位装置から書込コマンドを受信するステップと、前記書込ヘッドと前記読取ヘッドとが磁気データの書込/読取可能状態で待機するステップと、前記書込みパルスの検出よりも前に、前記読取ヘッドによる再生信号を検出したときは、前記書込処理を無効化させるステップと、を含むことを特徴とするカード状記録媒体の処理方法。
【0024】
本発明によれば、走行路と、走行路に臨んで離間して配置された書込ヘッド及び読取ヘッドと、書込ヘッドが書込処理を実行するタイミング調整に用いられる書込みパルスを生成する書込みパルス生成手段と、書込みパルスと読取ヘッドによる再生信号とを検出し、書込みパルスに基づいて書込ヘッドを制御する制御手段と、を有するカード状記録媒体処理装置で使用されるカード状記録媒体の処理方法で、電気的に接続された上位装置から書込コマンドを受信するステップと、書込ヘッドと読取ヘッドとが磁気データの書込/読取可能状態で待機するステップと、書込みパルスの検出よりも前に、読取ヘッドによる再生信号を検出したときは、書込処理を無効化させるステップと、を含むこととしたので、カード状記録媒体が走行路を誤った方向に走行した場合であっても、誤書込みを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、書込ヘッドと読取ヘッドとを離間して配置し、適切でない場合には書込処理を無効化することとしたので、カード状記録媒体への誤書込みを防ぐことができる。また、書込ヘッドと読取ヘッドとの距離を短くとれば、装置をコンパクト化することができる。さらに、方向判別をソフトウェア的に制御手段によってコントロールするため、設計変更に柔軟に対応することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本発明の実施の形態に係るデータスキャナ1を上から見たときの概要を示す断面模式図である。また、図2は、本発明の実施の形態に係るデータスキャナ1を横から見たときの概要を示す断面模式図である。特に、図2(a)は、データスキャナ1をスワイプ方向と直交する方向から見たときの図を示しており、図2(b)は、データスキャナ1をスワイプ方向から見たときの図を示している。なお、本実施形態でいうデータスキャナ1は、カード状記録媒体処理装置の一例に相当する。
【0028】
図1及び図2において、データスキャナ1は、断面形状がほぼコ字形状をなし(図2(b)参照)、カード走行路を形成するフレーム2と、このフレーム2の一部(底部)として形成される走行基準面3と、カード4(カード状記録媒体の一例であって、磁気カード,ICカードなど如何なる種類のものでもよい)上の磁気データを読み取る読取ヘッド5と、カード4に情報を書き込む書込ヘッド6と、カード4が書込ヘッド6の正面を通過するときに、カード4を圧送しながら回転するパッドローラ7と、書込みパルスを検出する書込みパルス検出ヘッド8と、を有している。
【0029】
読取ヘッド5及び書込ヘッド6は、カード走行路を挟み、カード走行路に臨むように(カード4のスワイプ方向に)離間して配置されている。カード4が正常な方向(矢印方向)にスワイプされた場合、カード4は、書込ヘッド6の正面、読取ヘッド5の正面の順に通過する。
【0030】
読取ヘッド5は、カード4上の磁気データの信号を再生する。具体的には、磁気ヘッド5は、カード4表面上の磁気ストライプに接触・摺動することによって、その磁気ストライプに記録された磁気データを読み取り、その磁気データの信号(再生信号)を生成する。なお、本実施形態では、読取ヘッド5は、読取専用の磁気ヘッドを用いているが、読み取り/書き込み兼用の磁気ヘッドを用いても構わない。
【0031】
書込ヘッド6は、カード4に所定の書込処理を実行する。具体的には、書込ヘッド6は、磁気ギャップを挟んで対向配置された磁気コアと、磁気コアに巻回されたライト用巻き線及びリード用巻き線と、を有しており、ライト用巻き線には、カード4に対する磁気データの書き込み電流が流れ、リード用巻き線には、磁気ギャップ近傍の磁束変化に基づいて電磁誘導により電流が流れるようになっている。そして、ヘッドアンプ104(後述する図3参照)が、CPU101(後述する図3参照)から磁気データのライト信号を受信し、これに基づいて書込ヘッド6のライト用巻き線に書き込み電流を流したとき、このライト用巻き線内に誘導磁束が発生するとともに、磁気コアに沿って形成された磁路にも誘導磁束が発生する。この誘導磁束は、カード4表面上の磁気ストライプに対して磁極変化をもたらす。これにより、書込ヘッド6はカード4に所定の書込処理を実行する。なお、本実施形態では、書込ヘッド6として、読み取り/書き込み兼用の磁気ヘッドを用いることとしたが、書き込み専用の磁気ヘッドを用いても構わない。
【0032】
パッドローラ7及び書込みパルス検出ヘッド8は、カード走行路を挟んで書込ヘッド6に対向配置され、書込ヘッド6が書込処理を実行するタイミング調整に用いられる書込みパルスを生成する。具体的には、パッドローラ7は磁気ドラムの機能を果たし、書込みパルス検出ヘッド8は磁気検知センサの機能を果たす。すなわち、パッドローラ7が回転すると、書き込みパルス検出ヘッド8近傍の磁界が変化して、パッドローラ7の回転と同期した書込みパルス(パッドローラ7の回転速度に応じたタイミングパルス)が生成される。なお、パッドローラ7及び書込みパルス検出ヘッド8は、書込みパルス生成手段の一例に相当する。
【0033】
図3は、本発明の実施の形態に係るデータスキャナ1の電気的構成を示すブロック図である。
【0034】
図3において、本発明の実施の形態に係るデータスキャナ1は、主としてCPU101と、ROM102と、RAM103と、ヘッドアンプ104と、を備えている。また、ヘッドアンプ104には、書込ヘッド6、読取ヘッド5、書込みパルス検出ヘッド8が、それぞれ接続されている。
【0035】
CPU101は、データスキャナ1の制御中枢を司るものであって、データスキャナ1の統合的な制御を行う。ROM102は、データスキャナ1の基本機能を支えるシステムプログラムを格納している。また、RAM103は、CPU101のワーキングエリアとして機能する。
【0036】
また、CPU101は、上述した書込みパルスと、読取ヘッド5による再生信号とを検出する。具体的に説明すると、書込みパルス検出ヘッド8によって生成された書込みパルスは、ヘッドアンプ104において増幅・波形整形され、CPU101に送られる。そして、CPU101は、この書込みパルスに基づいて、書込ヘッド6の制御を行う。例えば、書込ヘッド6が書込処理を開始するタイミングを制御したり、カード4に対する書込スピードを制御したり、書込みジッタ(速度変動)を補正したりする。一方で、読取ヘッド5による再生信号も、ヘッドアンプ104において増幅・波形整形され、CPU101に送られる。なお、ヘッドアンプ104は、例えば、ドライバー回路(IC)やアンプ,BPFやコンパレータ等の電気要素から構成される。また、本実施形態では制御手段の一例としてCPU101を用いたが、例えばMPUやLSIなど書込ヘッド6を制御し得るものであれば如何なる電気要素を用いてもよい。
【0037】
ここで、本実施形態に係るデータスキャナ1のCPU101は、書込みパルス検出ヘッド8によって生成された書込みパルスを検出する前に、読取ヘッド5による再生信号を検出したときには、書込ヘッド6への書込処理を無効化させる機能を有する。この無効化については、書込処理を禁止するような態様であれば如何なるものであってもよい。例えば書込ヘッド6の電力供給を遮断したり、ヘッドアンプ104から書込ヘッド6へ書き込み電流が供給されないようにしたりする等、ハードウェア的に書込処理を無効化させるものであってもよい。また、例えばCPU101からヘッドアンプ104に対し、上述したライト信号が送信されないようなプログラムを作成する等、ソフトウェア的に書込処理を無効化させるものであってもよい。本実施形態の情報処理の流れについて以下詳しく説明する。
【0038】
図4は、本発明の実施の形態に係るデータスキャナ1において、書込処理を無効化させる際の情報処理の流れを示すフローチャートである。なお、本実施形態では、データスキャナ1は、例えばATMなどの上位装置と電気的に接続されているものとする。
【0039】
図4において、まず、データスキャナ1のCPU101は、上位装置からの書込コマンドを受信する(ステップS1)。その後、読取ヘッド5及び書込みパルス検出ヘッド8を共に検出可能状態(いわゆるスタンバイ状態、待機状態)にする(ステップS2)。
【0040】
次に、ステップS2のスタンバイ状態において、カード4がスワイプされると、データスキャナ1のCPU101は、読取ヘッド5による再生信号が検出されたか否かを判断する(ステップS3)。なお、この再生信号の検出にあたっては、再生信号のうち1ビット分を検出するだけでも構わない。
【0041】
この再生信号が検出された場合には(ステップS3:YES)、CPU101は、書込処理を無効化させる(ステップS6)。具体的には、上述したように、例えば、ヘッドアンプ104に対してライト信号を送信しないようにする。そして、この書込無効化処理が実行された後、本サブルーチンは終了する。
【0042】
一方で、読取ヘッド5による再生信号が検出されなかった場合には(ステップS3:NO)、CPU101は、次に書込みパルスが検出されたか否かを判断する(ステップS4)。この書込みパルスが検出された場合には(ステップS4:YES)、CPU101は、書込ヘッド6を用いて書込処理を実行する(ステップS5)。そして、この書込処理が実行された後、本サブルーチンは終了する。
【0043】
なお、データスキャナ1の構造上、書込ヘッド6を用いて書込処理が実行される前には、必ずパッドローラ7が回転するようになっている。すなわち、正常な方向にスワイプされた場合、CPU101は、書込みパルスの検出をトリガとして、書込ヘッド6を用いた書込処理を実行することができるようになっている。
【0044】
また、ステップS4の処理で、書込みパルスが検出されなかった場合には(ステップS4:NO)、処理はステップS2に戻され、スタンバイ状態(待機状態)が維持されることになる。
【0045】
[実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係るデータスキャナ1によれば、1度のスワイプでカード4のスワイプ方向判別と磁気データの書込みを行うことができ(図4のステップS3〜ステップS5参照)、カード4に誤って磁気データの書込みが行われるのを防ぐことができる(図4のステップS3及びステップS6参照)。また、逆方向書込みされたカードが市場に流通するのを、防止することができる。
【0046】
また、上述したように、読取ヘッド5による再生信号の検出にあたっては、再生信号のうち1ビット分を検出するだけで十分なので、読取ヘッド5と書込ヘッド6の距離を短くすることができる。具体的には、例えば図5に示すように、読取ヘッド5と書込ヘッド6との間の距離Lhを、カード4の長手方向の長さLcの約4分の1に設定することができる。これにより、フレーム2の長手方向(カード4のスワイプ方向)の長さを短くすることができるので、結果的に、データスキャナ1をコンパクト化することができる。特に、ハンディ型スキャナに好適となる。
【0047】
さらに、図4を用いて説明したように、カード4のスワイプ方向の判別、及び、書込処理の可否をCPU101によってコントロールすることができるため、判別方法の変更等をソフトウェア的に行うことが可能となり、設計変更(機能変更)に柔軟に対応することができる。
【0048】
[変形例]
本実施形態では、読取ヘッド5と書込ヘッド6とを、カード走行路を挟んで配置することで、両面にデータを記録するカード4であっても誤書込みを防止することができるようにした。その他、読取ヘッド5と書込ヘッド6とを、カード走行路に対して同じ側に臨むように並列して配置してもよい。具体的には、図6に示すように、読取ヘッド5と書込ヘッド6とを並列して配置することにより、簡易な構造で、片面にのみデータを記録するカード4に対する誤書込みを防止することができる。
【0049】
なお、図1では、読取ヘッド5は1箇所にのみ配置したが、例えば、2箇所配置することとしてもよい。具体的には、図7に示すように、読取ヘッド5の他に、追加読取ヘッド9を配置してもよい。追加読取ヘッド9を配置することにより、カード4が正常な方向にスワイプされた場合であっても、磁気データの読み取りが行われる。そのため、仮に磁気データの読み取りが行われなかった場合、例えばカード4の表裏を反転してスワイプされた場合等に、誤った書込みが行われるのを防ぐことができる。このように、図7に示すデータスキャナ1によれば、カード4のスワイプ方向に加えて、表裏の判別も行った上で書込みを行うことができる。なお、図7に示す場合であっても、読取ヘッド5及び追加読取ヘッド9によって、読取る磁気データを開始符号までと限定することによって、方向判別を迅速に行うことができ、また、データスキャナ1をコンパクト化することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係るカード状記録媒体処理装置及びカード状記録媒体の処理方法は、1度のスワイプでカードのスワイプ方向判別と磁気データの書込みを行うことができる一方で、カードに誤って書込みが行われるのを防ぐことが可能なものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施の形態に係るデータスキャナを上から見たときの概要を示す断面模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係るデータスキャナを横から見たときの概要を示す断面模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るデータスキャナの電気的構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るデータスキャナにおいて、書込処理を無効化させる際の情報処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】ヘッド間の距離を短くすることにより、コンパクト化したデータスキャナを横から見たときの概要を示す模式図である。
【図6】本発明の別の実施形態に係るデータスキャナを上から見たときの概要を示す断面模式図である。
【図7】本発明の別の実施形態に係るデータスキャナを上から見たときの概要を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0052】
1 データスキャナ
2 フレーム
3 走行基準面
4 カード
5 読取ヘッド
6 書込ヘッド
7 パッドローラ
8 書込みパルス検出ヘッド
9 追加読取ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気データが所定方向に記録されるカード状記録媒体を走行させる走行路と、
前記走行路に臨むとともに、前記カード状記録媒体に所定の書込処理を実行する書込ヘッドと、
前記書込ヘッドと離間して前記走行路に臨むとともに、磁気データの信号を再生する読取ヘッドと、
前記走行路を挟んで前記書込ヘッドに対向配置されるとともに、前記書込ヘッドが書込処理を実行するタイミング調整に用いられる書込みパルスを生成する書込みパルス生成手段と、
前記書込みパルスと前記読取ヘッドによる再生信号とを検出するとともに、当該書込みパルスに基づいて前記書込ヘッドを制御する制御手段と、を有し、
前記制御手段は、前記書込みパルスの検出よりも前に、前記読取ヘッドによる再生信号を検出したときは、前記書込処理を無効化させることを特徴とするカード状記録媒体処理装置。
【請求項2】
前記読取ヘッドは、前記書込ヘッドからの距離が、前記カード状記録媒体の長手方向の長さよりも短くなる位置に配置されることを特徴とする請求項1記載のカード状記録媒体処理装置。
【請求項3】
前記読取ヘッドと、前記書込ヘッドとが前記走行路に対して同じ側に臨むように並列して配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のカード状記録媒体処理装置。
【請求項4】
前記読取ヘッドと、前記書込ヘッドとが前記走行路を挟んで、前記走行路に臨むように配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載のカード状記録媒体処理装置。
【請求項5】
磁気データが所定方向に記録されるカード状記録媒体を走行させる走行路と、前記走行路に臨むとともに、前記カード状記録媒体に所定の書込処理を実行する書込ヘッドと、前記書込ヘッドと離間して前記走行路に臨むとともに、磁気データの信号を再生する読取ヘッドと、前記走行路を挟んで前記書込ヘッドに対向配置されるとともに、前記書込ヘッドが書込処理を実行するタイミング調整に用いられる書込みパルスを生成する書込みパルス生成手段と、前記書込みパルスと前記読取ヘッドによる再生信号とを検出するとともに、当該書込みパルスに基づいて前記書込ヘッドを制御する制御手段と、を有するカード状記録媒体処理装置で使用されるカード状記録媒体の処理方法であって、
電気的に接続された上位装置から書込コマンドを受信するステップと、
前記書込ヘッドと前記読取ヘッドとが磁気データの書込/読取可能状態で待機するステップと、
前記書込みパルスの検出よりも前に、前記読取ヘッドによる再生信号を検出したときは、前記書込処理を無効化させるステップと、を含むことを特徴とするカード状記録媒体の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−83764(P2008−83764A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260071(P2006−260071)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】