説明

カード用コネクタ

【課題】簡素な構成でありながらカードを確実に保持することができ、小型で、製造が容易であり、コストが低く、信頼性が高くなるようにする。
【解決手段】ハウジングは、互いに対向する天板部及び底板部、並びに、天板部及び底板部の両側縁を結合する互いに対向する一対の側板部によって四方を画定されたカード挿入空間を備え、接続端子はハウジングと一体化され、カード挿入空間は、挿入されたカードの前端及び後端が露出する前端開口及び後端開口を備え、側板部の一方は、挿入されたカードの側縁に形成された第1凹部と係合してカードを保持するカード保持部と、挿入されたカードの側縁に形成された第2凹部と係合してカードの前後方向及び幅方向の位置決めを行う位置決め部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カード用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA(Personal Digital Assistant)、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等の電子機器においては、SIM(Subscriber Identity Module)カード、MMC(R)(Multi Media Card)、SD(R)(Secure Digital)カード、miniSD(R)カード、xDピクチャーカード(R)(xD−Picture card)、メモリスティック(R)、メモリスティックDuo(R)、スマートメディア(R)、Trans−Flash(R)メモリカード、マイクロSD(R)カード等の各種メモリカードを利用するために、カード用コネクタを備えている。
【0003】
近年、電子機器の小型化及び低価格化に伴って、簡単な構造で製造が容易であり、小型かつ低コストのカード用コネクタが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
図8は従来のカード用コネクタを示す図である。
【0005】
図において、811はカード用コネクタのハウジングであり、平板状の底壁部811b、該底壁部811bの前部において前側の縁に沿って延在し、底壁部811bから立設する奥壁部811a、及び、前記底壁部811bの左右の側縁に沿って前後方向に延在する側壁部811cを有する。
【0006】
また、前記底壁部811bには複数の端子収容開口811eが横方向に並ぶように形成され、各端子収容開口811e内には、端子851のアーム部851d及び該アーム部851dの先端に接続された接触部851bが収容されている。
【0007】
前記端子851は、一体成形によってハウジング811と一体化されている。すなわち、該ハウジング811は、端子851をあらかじめ内部にセットした金型のキャビティ内に樹脂を充填(てん)することによって成形される。これにより、端子851は、本体部がハウジング811の底壁部811b内に埋没し、アーム部851d及び接触部851bが端子収容開口811e内に露出し、テール部851cが底壁部811bの後側の縁から突出した状態で、ハウジング811に一体的に取付けられる。
【0008】
なお、第1固定用金具852及び第2固定用金具853も、端子851と同様に、一体成形によってハウジング811と一体化されている。
【0009】
そして、図示されないメモリカードの先端を前記ハウジング811に挿入すると、メモリカードの下面に配設されたコンタクトパッドが端子851の接触部851bと接触して導通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−146166号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、前記従来のカード用コネクタにおいては、メモリカードの先端における下面及び左右側面のみをハウジング811で支持するので、メモリカードを確実に保持することができない。そのため、例えば、カード用コネクタが装着された電子機器が衝撃を受けたような場合に、メモリカードの位置がずれてしまい、メモリカードのコンタクトパッドと端子851の接触部851bとが不接触となったり、メモリカード全体がカード用コネクタから外れたりする可能性がある。
【0012】
本発明は、前記従来のカード用コネクタの問題点を解決して、簡素な構成でありながらカードを確実に保持することができ、小型で、製造が容易であり、コストが低く、信頼性の高いカード用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのために、本発明のカード用コネクタにおいては、端子部材を備えるカードが挿入されるハウジングと、該ハウジングに取付けられ、前記カードの端子部材と接触する接続端子とを有するカード用コネクタであって、前記ハウジングは、互いに対向する天板部及び底板部、並びに、前記天板部及び底板部の両側縁を結合する互いに対向する一対の側板部によって四方を画定されたカード挿入空間を備え、前記接続端子は前記ハウジングと一体化され、前記カード挿入空間は、挿入された前記カードの前端及び後端が露出する前端開口及び後端開口を備え、前記側板部の一方は、挿入された前記カードの側縁に形成された第1凹部と係合して前記カードを保持するカード保持部と、挿入された前記カードの側縁に形成された第2凹部と係合して前記カードの前後方向及び幅方向の位置決めを行う位置決め部とを備える。
【0014】
本発明の他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記天板部は、前記ハウジングの前端寄り及び後端寄りに配設された前方天板部及び後方天板部、並びに、前記前方天板部)と後方天板部との間に形成された天板開口部を含み、前記底板部は、前記ハウジングの前端寄り及び後端寄りに配設された前方底板部及び後方底板部、並びに、前記前方底板部と後方底板部との間に形成された底板開口部を含み、前記前方天板部及び前方底板部は、前記一対の側板部とともに、前記カードの前半分の少なくとも一部の周囲を囲繞(にょう)し、前記後方天板部及び後方底板部は、前記一対の側板部とともに、前記カードの後半分の少なくとも一部の周囲を囲繞する。
【0015】
本発明の更に他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記ハウジングと一体化された補強金具を更に有し、該補強金具は、前記ハウジングの幅方向に延在する金具本体部と、該金具本体部の一端に接続された前記カード保持部と、前記金具本体部の他端に接続された側板補強部とを含み、該側板補強部は、前記カード保持部に対向し、前記側板部の他方と一体化されている。
【0016】
本発明の更に他のカード用コネクタにおいては、さらに、前記位置決め部は、前記カードの第2凹部の傾斜部と当接する傾斜したストッパ部を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、カード用コネクタは、簡素な構成でありながらカードを確実に保持することができ、小型で、製造が容易であり、コストが低く、信頼性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの分解図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの断面図であり、図1におけるA−A矢視断面図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの製造工程を示す平面図であり、(a)は端子予備形成体を示す図、(b)は端子予備形成体にオーバーモールドを施した状態を示す図、(c)は完成したカード用コネクタを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態におけるカードを示す三面図であり、(a)は正面図、(b)は下面図、(c)は側面図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入する途中の状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにカードが挿入された状態を示す斜視図である。
【図8】従来のカード用コネクタを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
図1は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタを示す斜視図、図2は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの分解図、図3は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの断面図であり、図1におけるA−A矢視断面図である。
【0021】
図において、1は本実施の形態におけるカード用コネクタであり、図示されない電子機器に取付けられる。そして、前記カード用コネクタ1の内部には後述されるカード101が挿入され、前記カード用コネクタ1を介して、前記電子機器にカード101が装着される。なお、前記電子機器は、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、PDA、デジタルカメラ、ビデオカメラ、音楽プレーヤ、ゲーム機、車両用ナビゲーション装置等であるが、いかなる種類の機器であってもよい。
【0022】
また、カード101は、例えば、SIMカード、MMC(R)、SD(R)カード、miniSD(R)カード、xDピクチャーカード(R)、メモリスティック(R)、メモリスティックDuo(R)、スマートメディア(R)、Trans−Flash(R)メモリカード等のICカードであり、いかなる種類のカードであってもよいが、本実施の形態においては、マイクロSD(R)カードであるものとして説明する。
【0023】
なお、本実施の形態において、カード用コネクタ1及びカード101の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、カード用コネクタ1、カード101又はそれらの部品が図に示される姿勢である場合に適切であるが、カード用コネクタ1、カード101又はそれらの部品の姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0024】
ここで、前記カード用コネクタ1は、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に成形されたハウジング11と、金属等の導電性材料から成る板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって一体的に成形され、ハウジング11に取付けられた複数の接続端子としての端子51とを備える。典型的には、該端子51は、オーバーモールディングによってハウジング11と一体化されている。すなわち、ハウジング11は、端子51をあらかじめ内部にセットした金型のキャビティ内に樹脂を充填することによって成形される。
【0025】
図に示されるように、ハウジング11は、全体的に扁(へん)平な直方体の箱状の部材であり、略矩(く)形の天板部11a、略矩形であって該天板部11aに対向する底板部11b、並びに、前記天板部11a及び底板部11bに直交する方向に延在するとともに前後方向に延在し、前記天板部11aの左右の両側縁と底板部11bの左右の両側縁とを結合する側板部としての第1側板部11c及び第2側板部11dを備える。なお、該第2側板部11dには、位置決め部11g及び側方開口11d1が形成されている。前記天板部11a、底板部11b、第1側板部11c及び第2側板部11dによって四方を画定された空間がカード101が挿入されるカード挿入空間16である。
【0026】
図において、13及び14は、カード用コネクタ1の前端及び後端、すなわち、ハウジング11の前端及び後端である。また、13a及び14aは、カード挿入空間16の前端開口及び後端開口である。
【0027】
そして、前記天板部11aは、ハウジング11の前端13寄りに配設された前方天板部11a1と、ハウジング11の後端14寄りに配設された後方天板部11a2とを含み、前記前方天板部11a1と後方天板部11a2との間には略矩形の開口である天板開口部11fが形成されている。図に示される例において、前記前方天板部11a1及び後方天板部11a2は、それぞれ、ハウジング11の幅方向に延在する細長い矩形状の形状を備える。
【0028】
また、前記底板部11bは、ハウジング11の前端13寄りにおいて前記前方天板部11a1と対向するように配設された前方底板部11b1と、ハウジング11の後端14寄りにおいて前記後方天板部11a2と対向するように配設された後方底板部11b2とを含み、前記前方底板部11b1と後方底板部11b2との間には、前記天板開口部11fに対向する略矩形の開口である底板開口部11eが形成されている。前記前方底板部11b1及び後方底板部11b2は、前記前方天板部11a1及び後方天板部11a2と同様に、それぞれ、ハウジング11の幅方向に延在する細長い矩形状の形状を備える。また、前記底板部11bは、左右の両側縁に沿って前後方向に延在する細長い帯状の第1側底部11b3及び第2側底部11b4を含む。なお、前記第1側底部11b3及び第2側底部11b4には、それぞれ、前記第1側板部11c及び第2側板部11dの下端が接続されている。さらに、前記底板部11bは、後方底板部11b2の前縁から前方に向けて延出し、櫛(くし)歯のように配列された複数の端子保持部11b5を含む。
【0029】
そして、前記端子51は、前後方向に互いに平行に延在する細長い帯状の部材であり、隣接するもの同士が接触しないように、並列に配設されている。各端子51は、図2に示されるように、前後方向に延在する本体部51aと、該本体部51aの前端に接続された分岐部51eと、該分岐部51eの前端から分岐して前方に向けて延出する腕部51d及び連結部51fと、前記腕部51dの先端に接続された接触部51bと、前記連結部51fの前端に接続された前方ベース部51gと、該前方ベース部51gの前端から前方に向けて延出するテール部51cとを含む。
【0030】
前記本体部51aは、左右両側から端子保持部11b5によって挟持される。また、前記前方ベース部51gは前方底板部11b1内に埋込まれて保持される。そして、前記腕部51d及び連結部51fは、底板開口部11e内に露出した状態となる。また、前記テール部51cは、前方底板部11b1の前縁から前方に露出する。なお、前記テール部51cは、図示されない回路基板の表面に露出する接続パッド等に、はんだ付等の接続手段によって、電気的かつ物理的に接続される。これにより、端子51は、回路基板が備える導電トレースに、前記接続パッド等を介して導通される。
【0031】
さらに、前記腕部51dは、先端が斜め上方に向くように、本体部51a及び分岐部51eに対して傾斜している。したがって、前記接触部51bは、底板部11bの上面よりも上方に位置する。そして、前記腕部51dは、弾性的に変形するカンチレバーとして機能する。これにより、カード挿入空間16に挿入されたカード101が備える後述されるコンタクトパッド151に接触部51bが弾性的に押圧されるので、コンタクトパッド151と接触部51bとの導通が確保される。
【0032】
また、前記連結部51fは、その長手方向中心軸線が本体部51aの長手方向中心軸線に対して、接触部51bと反対側寄りにずれるように配設されている、すなわち、本体部51aに対して、接触部51bと反対側にオフセットされていることが望ましい。これにより、腕部51d及び接触部51bと連結部51fとを合せた部分の長手方向中心軸線と本体部51aの長手方向中心軸線とを近接させることができ、隣接する端子51同士の間隔を狭めて、ピッチを小さくすることができる。
【0033】
図において、56は、端子51と同様の板材から成る補強金具であり、ハウジング11の幅方向に延在する略矩形の金具本体部56aと、該金具本体部56aの前縁から前方に向けて延出し、櫛歯のように配列された複数の端子切断残部56bと、前記金具本体部56aの左右の両側縁から横方に向けて延出し、途中で直交するように曲げられた第1支持部56g及び第2支持部56dと、前記第1支持部56gの前縁から前方に向けて延出する側板補強部56hと、該側板補強部56hの先端に曲げて接続された天板補強部56iと、前記第2支持部56dの前縁から前方に向けて延出するカード保持部56eと、該カード保持部56eの先端に接続されたカード保持凸部56fとを含む。
【0034】
そして、前記金具本体部56aは、少なくともその下面の一部が後方底板部11b2の上面に一体的に接続されて保持される。また、前記第1支持部56g及び前記第2支持部56dは、少なくともそれらの一部が第1側板部11c及び第2側板部11d内に埋込まれて保持される。
【0035】
さらに、前記カード保持部56e及びカード保持凸部56fは、側方開口11d1内に露出し、前記カード保持凸部56fは、カード挿入空間16の内側を向いて突出した状態となる。そして、前記カード保持部56eは、ハウジング11の幅方向に弾性的に変形するカンチレバーとして機能する。これにより、カード挿入空間16に挿入されたカード101の側縁に形成された後述される第1凹部113aにカード保持凸部56fが嵌(かん)入して係合するので、カード101を確実に保持することができる。
【0036】
図において、57及び58は、端子51と同様の板材から成る第1固定金具及び第2固定金具であり、略矩形の細長い板部材である。前記第1固定金具57及び第2固定金具58は、前記補強金具56と別個に形成されているが、一種の補強金具であって、少なくとも一部が前方底板部11b1内に埋込まれて保持される。そして、前記第1固定金具57及び第2固定金具58の前端部は、前方底板部11b1の前縁から前方に露出し、図示されない回路基板の表面に露出する固定パッド等に、はんだ付等の接続手段によって、電気的かつ物理的に接続される。なお、前記第1固定金具57及び第2固定金具58は、ハウジング11の左右両端近傍に配設され、少なくとも端子51のテール部51cよりも、左右方向の外側に位置する。
【0037】
なお、本実施の形態において、前記端子51、補強金具56、第1固定金具57及び第2固定金具58は、後述されるように、同一の板材に打抜き、折曲げ等の加工を施すことによって成形された部材であって、かつ、オーバーモールディングによってハウジング11と一体化されている。そのため、各端子51と補強金具56との間、具体的には、図3に示されるように、各端子51の本体部51aの後端と補強金具56の各端子切断残部56bの前端との間に、各端子51と補強金具56とを切離すために形成された切断空間59が形成されている。
【0038】
また、図3に示されるように、ハウジング11の位置決め部11gは、第2側板部11dの前端近傍に一体的に形成され、かつ、第2側板部11dの他の部分よりも幅方向に肉厚に形成された部分であって、その後端に形成されたストッパ部11g1を備える。該ストッパ部11g1は、カード挿入空間16に挿入されたカード101の側縁に形成された後述される前方切欠部113bに当接する部分であり、前記前方切欠部113bの形状に合せて、カード101の挿入方向、すなわち、前後方向に対して斜めに傾斜した傾斜面となっている。そして、カード挿入空間16に挿入されたカード101は、その前方切欠部113bの後述される傾斜部113cがストッパ部11g1に当接することによって前後方向に位置合せされる。
【0039】
なお、前述のように、カード挿入空間16の前端は、前端開口13aとなっていて、開口している。したがって、カード挿入空間16に挿入されたカード101は、後述されるようにその前端111aが、ハウジング11に当接することがなく、前端13から前方に露出する。
【0040】
また、位置決め部11gの内側面は、第2側板部11dの他の部分よりも、第1側板部11cの内側面に近接している。すなわち、位置決め部11gの内側面と第1側板部11cの内側面との間隔は、第2側板部11dの他の部分の内側面と第1側板部11cの内側面との間隔よりも狭くなっている。そして、位置決め部11gの内側面と第1側板部11cの内側面との間隔は、カード101の前端111a寄りに形成された後述される幅狭部114の幅よりも少し大きい程度に形成されている。そのため、カード挿入空間16に挿入されたカード101は、その幅狭部114が位置決め部11gと第1側板部11cとの間に進入することによって幅方向に位置合せされる。
【0041】
次に、前記カード用コネクタ1の製造方法について説明する。
【0042】
図4は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタの製造工程を示す平面図である。なお、図において、(a)は端子予備形成体を示す図、(b)は端子予備形成体にオーバーモールドを施した状態を示す図、(c)は完成したカード用コネクタを示す図である。
【0043】
まず、プレス装置等の工作機械によって、金属等の導電性材料から成る板材に打抜き加工及び折曲げ加工を施すことによって、図4(a)に示されるような端子予備形成体61を一体的に形成する。この場合、打抜き加工及び折曲げ加工は、同時に施してもよいし、順次施してもよい。なお、前記端子予備形成体61は、いかなる種類の加工方法によって形成されてもよく、例えば、レーザ加工、エッチング等、いかなる種類の加工方法によって形成されてもよい。
【0044】
前記端子予備形成体61は、互いに平行に延在する一対のキャリア62、該キャリア62と直交する方向に延在する一対の枠部材63、並びに、前記キャリア62に接続された端子51、補強金具56、第1固定金具57及び第2固定金具58を有する。前記キャリア62、枠部材63、端子51、補強金具56、第1固定金具57及び第2固定金具58は、同一の板材から形成された部材である。
【0045】
ここで、一方のキャリア62には、補強金具接続部64を介して、補強金具56が接続されている。また、他方のキャリア62には、端子前方接続部65を介して、各端子51の前端、すなわち、テール部51cの前端が接続されている。なお、各端子51の後端、すなわち、本体部51aの後端は、端子後方接続部68を介して、補強金具56の金具本体部56aに接続されている。さらに、前記一方のキャリア62における端子前方接続部65の外側における部分には、第1固定金具接続部66及び第2固定金具接続部67を介して、第1固定金具57及び第2固定金具58が接続されている。
【0046】
前記キャリア62及び枠部材63は、カード用コネクタ1、又は、端子51、補強金具56、第1固定金具57及び第2固定金具58を製造する過程において、端子51、補強金具56、第1固定金具57及び第2固定金具58の搬送、位置決め等の作業を容易に行うために搬送機械、工作機械、工具、ジグ、オペレータの手等によって把持される部材であり、製造の最終段階において切除される。なお、図に示される例において、キャリア62に接続されている端子51、補強金具56、第1固定金具57及び第2固定金具58は一組であるが、通常、前記キャリア62は、長い帯状の板材であり、複数組の端子51、補強金具56、第1固定金具57及び第2固定金具58の組が、枠部材63を間に挟んで、並列に配列されて接続されている。
【0047】
次に、前記端子51、補強金具56、第1固定金具57及び第2固定金具58の少なくとも一部を覆うようにオーバーモールド成形を施すことによって、図4(b)に示されるように、合成樹脂等の絶縁性材料によって一体的に成形されたハウジング11を作製する。
【0048】
典型的には、前方底板部11b1が端子51の前方ベース部51gの全体並びにテール部51c及び連結部51fの一部、並びに、第1固定金具57及び第2固定金具58の一部を覆い、後方底板部11b2が金具本体部56aの少なくともその下面の一部と一体化し、端子保持部11b5が端子51の本体部51aの少なくとも側縁の一部と一体化し、第1側板部11c及び第2側板部11dが第1支持部56g及び第2支持部56dの少なくとも一部を覆うように形成される。また、端子51の腕部51d及び接触部51bの全体並びに連結部51fの大部分は、底板開口部11e内に露出した状態となり、絶縁性材料によって覆われない。さらに、端子後方接続部68も、絶縁性材料によって覆われず、かつ、天板開口部11fに対向する位置にある。なお、天板開口部11fは、底板開口部11eよりも大きく形成される。
【0049】
次に、図4(c)に示されるように、補強金具接続部64、端子前方接続部65、第1固定金具接続部66及び第2固定金具接続部67を切断し、キャリア62及び枠部材63を除去することによって、カード用コネクタ1を得ることができる。この場合、端子後方接続部68も切断除去されることによって、切断空間59が形成され、各端子51と補強金具56とが切離される。
【0050】
次に、前記カード用コネクタ1にカード101を挿入する動作について説明する。
【0051】
図5は本発明の実施の形態におけるカードを示す三面図、図6は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにカードを挿入する途中の状態を示す斜視図、図7は本発明の実施の形態におけるカード用コネクタにカードが挿入された状態を示す斜視図である。なお、図5において、(a)は正面図、(b)は下面図、(c)は側面図である。
【0052】
カード101は、マイクロSD(R)カードである場合、図5に示されるような形状を備える。カード101は、全体的に略矩形の板状の形状を有し、各寸法は、長さ(図5(b)における上下)が15.0〔mm〕、幅(図5(b)における左右)が11.0〔mm〕、厚さ(図5(c)における左右)が0.7〔mm〕である。そして、下面の前端寄りの位置には、複数の端子部材としてのコンタクトパッド151が前端111aに沿って並んだ状態で配設されている。
【0053】
また、カード101の一方の側縁(図5(b)における左側縁)には第1凹部113a及び第2凹部としての前方切欠部113bが形成されている。該前方切欠部113bは、カード101の前端111aと前記一方の側縁との角部を所定範囲に亘(わた)って欠落させたものであり、前後方向に対して傾斜した傾斜部113cを含み、略台形の形状を備える。これにより、カード101の前端111a寄りの部分には後端111b寄りの部分よりも幅の狭い幅狭部114が形成され、該幅狭部114の幅寸法は9.7〔mm〕である。なお、前記幅狭部114においても、左右の側縁は平行である。
【0054】
まず、カード101を挿入する場合、利用者が手指等によってカード101をカード用コネクタ1の後方(図6における右上方)から、カード挿入空間16の後端開口14aに挿入する。なお、カード101は、図6に示されるように、コンタクトパッド151の配設された面がハウジング11の底板部11bと対向し、コンタクトパッド151の配設されていない面がハウジング11の天板部11aと対向し、前端111aが挿入方向先端となるような姿勢で、カード用コネクタ1のカード収容空間16内に挿入される。これにより、カード101は、第1凹部113a及び前方切欠部113bが形成されている側縁がハウジング11の第2側板部11dに沿って、かつ、他方の側縁がハウジング11の第1側板部11cに沿って進行する。
【0055】
なお、図6は、カード101の挿入工程の途中の状態を示し、前端111a及びその近傍のみがハウジング11の後端開口14aからカード挿入空間16内に挿入された状態を示している。
【0056】
続いて、利用者が図6に示される状態からカード101を更に押込むと、カード101の前方切欠部113bがハウジング11のストッパ部11g1に当接し、カード101のハウジング11に対する変位が停止させられる。これにより、カード101の挿入が完了して、図7に示される状態となる。
【0057】
カード挿入空間16に挿入されたカード101は、前方切欠部113bがストッパ部11g1に当接することによって前後方向に位置合せされ、幅狭部114が位置決め部11gと第1側板部11cとの間に進入することによって幅方向に位置合せされる。そして、カード101のコンタクトパッド151の各々には、対応する端子51の接触部51bが接触して導通する。また、前方切欠部113bの傾斜部113cがストッパ部11g1に当接することによって前後方向に位置合せされると、カード101の第1凹部113aにカード保持部56eのカード保持凸部56fが嵌入して係合する。したがって、カード101は、正確に位置合せされ、各コンタクトパッド151が対応する端子51と導通した状態でカード用コネクタ1に確実に保持される。
【0058】
なお、本実施の形態においては、図7に示されるように、カード101の前端111aは前端開口13aから前方に露出し、カード101の後端111bは後端開口14aから後方に露出する。
【0059】
このように、本実施の形態において、ハウジング11は、互いに対向する天板部11a及び底板部11b、並びに、天板部11a及び底板部11bの両側縁を結合する互いに対向する一対の側板部としての第1側板部11c及び第2側板部11dによって四方を画定されたカード挿入空間16を備え、端子51はハウジング11と一体化され、カード挿入空間16は、挿入されたカード101の前端111a及び後端111bが露出する前端開口13a及び後端開口14aを備え、側板部の一方である第2側板部11dは、挿入されたカード101の側縁に形成された第1凹部113aと係合してカード101を保持するカード保持部56eと、挿入されたカード101の側縁に形成された前方切欠部113bと係合してカード101の前後方向及び幅方向の位置決めを行う位置決め部11gを備える。
【0060】
これにより、カード用コネクタ1は、小型で、かつ、簡素な構成でありながら、挿入されたカード101を確実に位置決めすることができるとともに、確実に保持することができる。また、部品点数が少なく、かつ、一体成形することができるので、製造が容易であり、コストが低いながらも、信頼性の高いカード用コネクタ1を得ることができる。
【0061】
また、天板部11aは、ハウジング11の前端13寄り及び後端14寄りに配設された前方天板部11a1及び後方天板部11a2、並びに、前方天板部11a1と後方天板部11a2との間に形成された天板開口部11fを含み、底板部11bは、ハウジング11の前端13寄り及び後端14寄りに配設された前方底板部11b1及び後方底板部11b2、並びに、前方底板部11b1と後方底板部11b2との間に形成された底板開口部11eを含み、前方天板部11a1及び前方底板部11b1は、第1側板部11c及び第2側板部11dとともに、カード101の前半分の少なくとも一部の周囲を囲繞し、後方天板部11a2及び後方底板部11b2は、第1側板部11c及び第2側板部11dとともに、カード101の後半分の少なくとも一部の周囲を囲繞する。
【0062】
このように、天板開口部11f及び底板開口部11eが形成されているので、ハウジング11の成形材料の使用量を低減することができ、コストを低減することができる。その一方で、カード101の前半分及び後半分の周囲をそれぞれ囲繞するようになっているので、ハウジング11の断面が、前半分及び後半分で閉断面構造となり、ハウジング11の強度を確実に維持することができる。しかも、天板開口部11fによって挿入されたカード101を目視することができるので、カード101の挿入状態を容易に確認することができる。
【0063】
さらに、カード用コネクタ1は、ハウジング11と一体化された補強金具56を更に有し、補強金具56は、ハウジング11の幅方向に延在する金具本体部56aと、金具本体部56aの一端に接続されたカード保持部56eと、金具本体部56aの他端に接続された側板補強部56hとを含み、側板補強部56hは、カード保持部56eに対向し、側板部の他方である第1側板部11cと一体化されている。
【0064】
このように、側板補強部56hが、第1側板部11cと一体化され、カード101の側縁に形成された第1凹部113aと係合するカード保持部56eと対向し、かつ、金具本体部56aを介して、カード保持部56eと接続されているので、第1側板部11cとカード保持部56eとによってカード101を両側から確実に保持することができ、カード101がカード用コネクタ1から脱落することが確実に防止される。
【0065】
さらに、位置決め部11gは、カード101の前方切欠部113bの傾斜部113cと当接する傾斜したストッパ部11g1を含む。
【0066】
このように、カード101の傾斜部113cが傾斜したストッパ部11g1に当接することによって、カード101の前後方向及び幅方向の位置決めを容易に、かつ、確実に行うことができる。
【0067】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、カード用コネクタに適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 カード用コネクタ
11、811 ハウジング
11a 天板部
11a1 前方天板部
11a2 後方天板部
11b 底板部
11b1 前方底板部
11b2 後方底板部
11b3 第1側底部
11b4 第2側底部
11b5 端子保持部
11c 第1側板部
11d 第2側板部
11d1 側方開口
11e 底板開口部
11f 天板開口部
11g 位置決め部
11g1 ストッパ部
13、111a 前端
13a 前端開口
14、111b 後端
14a 後端開口
16 カード挿入空間
51、851 端子
51a 本体部
51b、851b 接触部
51c、851c テール部
51d 腕部
51e 分岐部
51f 連結部
51g 前方ベース部
56 補強金具
56a 金具本体部
56b 端子切断残部
56d 第2支持部
56e カード保持部
56f カード保持凸部
56g 第1支持部
56h 側板補強部
56i 天板補強部
57 第1固定金具
58 第2固定金具
59 切断空間
61 端子予備形成体
62 キャリア
63 枠部材
64 補強金具接続部
65 端子前方接続部
66 第1固定金具接続部
67 第2固定金具接続部
68 端子後方接続部
101 カード
113a 第1凹部
113b 前方切欠部
113c 傾斜部
114 幅狭部
151 コンタクトパッド
811a 奥壁部
811b 底壁部
811c 側壁部
811e 端子収容開口
851d アーム部
852 第1固定用金具
853 第2固定用金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)端子部材を備えるカードが挿入されるハウジングと、
(b)該ハウジングに取付けられ、前記カードの端子部材と接触する接続端子とを有するカード用コネクタであって、
(c)前記ハウジングは、互いに対向する天板部及び底板部、並びに、前記天板部及び底板部の両側縁を結合する互いに対向する一対の側板部によって四方を画定されたカード挿入空間を備え、
(d)前記接続端子は前記ハウジングと一体化され、
(e)前記カード挿入空間は、挿入された前記カードの前端及び後端が露出する前端開口及び後端開口を備え、
(f)前記側板部の一方は、挿入された前記カードの側縁に形成された第1凹部と係合して前記カードを保持するカード保持部と、挿入された前記カードの側縁に形成された第2凹部と係合して前記カードの前後方向及び幅方向の位置決めを行う位置決め部とを備えることを特徴とするカード用コネクタ。
【請求項2】
前記天板部は、前記ハウジングの前端寄り及び後端寄りに配設された前方天板部及び後方天板部、並びに、前記前方天板部と後方天板部との間に形成された天板開口部を含み、
前記底板部は、前記ハウジングの前端寄り及び後端寄りに配設された前方底板部及び後方底板部、並びに、前記前方底板部と後方底板部との間に形成された底板開口部を含み、
前記前方天板部及び前方底板部は、前記一対の側板部とともに、前記カードの前半分の少なくとも一部の周囲を囲繞し、
前記後方天板部及び後方底板部は、前記一対の側板部とともに、前記カードの後半分の少なくとも一部の周囲を囲繞する請求項1に記載のカード用コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングと一体化された補強金具を更に有し、
該補強金具は、前記ハウジングの幅方向に延在する金具本体部と、該金具本体部の一端に接続された前記カード保持部と、前記金具本体部の他端に接続された側板補強部とを含み、
該側板補強部は、前記カード保持部に対向し、前記側板部の他方と一体化されている請求項1又は2に記載のカード用コネクタ。
【請求項4】
前記位置決め部は、前記カードの第2凹部の傾斜部と当接する傾斜したストッパ部を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載のカード用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−74199(P2012−74199A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−217270(P2010−217270)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】