説明

カード

【課題】接触型ICチップ、非接触型ICチップ、ICタグ、電池等から選択される2つの電子部品を具備するカードにおいて、繰り返し曲げストレスが加えられても、カード割れが生じないカードを提供する。
【解決手段】カード1の表面を長辺方向の中心線と短辺方向の中心線とを用いて4象限に区分した際に、対角となる象限に、2つの電子部品2、3を配置することにより、2つの電子部品2、3の間の部分にかかる力の集中を防ぎ、割れが生じないカード1を提供可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの電子部品を有するカードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、様々なカードが情報記録媒体として利用されている。これらのカードにより様々な用途や機能を持たせるため、接触型ICチップと非接触型ICチップ、2つの非接触型ICチップ、接触型又は非接触型ICチップとICタグ、ICタグと電池、といった様に、2つの電子部品が搭載されたICカードが出現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−329209
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、例えば接触型ICチップ及び非接触型ICチップが搭載されたICカードの場合には、接触端子の下部に接触型ICチップを備えた接触型ICモジュールを、カードの表面にザグリ加工を施して形成した凹部に配置し、さらに別の場所に非接触型ICチップを配置するが、この接触型ICモジュールと非接触型ICチップとがカードの長辺方向又は短辺方向に並行に配置されていると、カードが曲げられた際等に、接触型ICチップと非接触型ICチップとの中間部分に力が集中してしまう。
【0005】
接触型ICチップ及び非接触型ICチップの組み合わせ以外にも、様々な他の組み合わせからなる2つの電子部品を搭載したカードの場合であっても、2つの電子部品の中間部分に力が集中し、カード基材に繰り返し曲げストレスが加えられ、割れに対する強度が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、2つの電子部品を具備したカードにおいて、繰り返し曲げストレスが加えられても、割れが生じないカードを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、2つの電子部品を具備したカードにおいて、 該カードの表面を、長辺方向の中心線と短辺方向の中心線とを用いて4象限に区分した際に、2つの該電子部品の少なくとも中心点が、対角となる象限に配置されていることを特徴とするカードとしたものである。
【0008】
また本発明は、2つの前記電子部品の全体が各々1つの前記象限内に収まっていることを特徴とする前記カードとしたものである。
【0009】
また本発明は、2つの前記電子部品の少なくとも中心点の何れもが、前記長辺方向の中心線から長辺方向に±15mmの範囲を避けて配置されていることを特徴とする前記カードとしたものである。
【0010】
また本発明は、2つの前記電子部品の少なくとも中心点の何れもが、前記短辺方向の中心線から短辺方向に±10mmの範囲を避けて配置されていることを特徴とする前記カードとしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上説明したような構成であるから、以下に示す如き効果がある。
【0012】
即ち、本発明におけるカードの表面を、長辺方向の中心線と短辺方向の中心線とを用いて4象限に区分した際に、2つの電子部品の少なくとも中心点を、対角となる象限に配置することにより、2つの電子部品の中間部分への力の集中を防ぎ、繰り返し曲げストレスが加えられても、割れが生じないカードを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明におけるカードの実施形態の一例を示す図である。
【図2】本発明におけるカードの別の実施形態の一例を示す図である。
【図3】本発明におけるカードのさらに別の実施形態の一例を示す図である。
【図4】本発明におけるカードのさらにまた別の実施形態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明におけるカードの実施形態を、図面を参照にして詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明におけるカードの一実施形態例を示した図であり、接触型ICチップを備えた接触型ICモジュール及び非接触型ICチップの2つの電子部品を有するカードを、表面側から見た概念図である。実際には、非接触型ICチップは基材に埋め込まれており、表面から視認することはできないが、図1においては説明のために、表面から見えるように記載している。なお、カードにおける表面とは、カードを厚さ方向から見た面積の広い面であれば、どちらの面であっても表面といって良いこととする。
【0016】
なお、図1に示したカードにおいては、2つの電子部品が接触型ICチップを備えた接触型ICモジュール及び非接触型ICチップである場合を示しているが、本発明のカードは、この例でなくとも電子部品を2つ具備していれば良い。
【0017】
ここでいう電子部品とは、接触型ICチップを備えた接触型ICモジュール、非接触型ICチップ、ICタグ、電池等が挙げられるが、カードに搭載する電子部品であれば、特にこれらに限定されるものではない。また、それぞれ異なる2つの電子部品を具備していても良いし、同じ種類の電子部品を2つ具備していても良く、その組み合わせも特に限定しない。
【0018】
カードの形成方法については、特に限定しない。例えば、図1に示した接触型ICチップを備えた接触型ICモジュール及び非接触型ICチップを具備するカードの場合であれば、一般的に、非接触型ICチップを接続したアンテナシートを、2枚の基材で挟み、必要に応じて表面に印刷層、保護層等を設け、外側から基材にザグリ加工を施すことで凹部を形成し、凹部に接触型ICチップを備えた接触型ICモジュールを設置することにより形成可能である。
【0019】
カードの基材に用いる材料としては、延伸PET、PET−G、ポリ塩化ビニル、紙等のカードに用いられる一般的な材料を用いる事が可能であり、特に限定しない。
【0020】
本発明におけるカードは、2つの電子部品の少なくとも中心点が、カードの表面を4象限に区分した際に、対角となる象限に配置されているものである。電子部品の中心点とは、電子部品の表面積から見た中心点であっても良いし、電子部品の重心であっても良い。
【0021】
例えば、図1に示したカードであれば、カード表面を4象限に区分した際に、接触型ICチップを備えた接触型ICモジュールの少なくとも中心点は第2象限に、非接触型ICチップも少なくとも中心点は第4象限に配置されており、この状態が、2つの電子部品の少なくとも中心点が対角となる象限に配置されているということである。
【0022】
つまり、カードの表面を4象限に区分した際に、2つの電子部品の少なくとも中心点が第1象限と第3象限とに配置されているか、若しくは、第2象限と第4象限に配置されているかであれば良いということである。なお、本願においてカード表面を4象限に区分するとは、カードの長辺方向の中心線と、短辺方向との中心線とからなる十字線で、カードの表面を均等に4つの仮想の領域に区分するということである。
【0023】
一般的に、カードは長辺方向及び短辺方向に、曲げやすく、且つ曲げられる機会が多く、特に長辺方向に曲げやすいものである。よって、カードの長辺方向又は短辺方向、特に長辺方向に並行に2つの電子部品が配置されていると、この2つの電子部品の中間部分のカード基材に集中的に繰り返し曲げストレスが加えられることにより割れに対する強度が低くなる。また、並行ではない場合であっても、この2つの電子部品の間に短辺方向、長辺方向の中心線を挟まない位置に配置されている場合には、同様に割れに対する強度が低くなる。
【0024】
よって、2つの電子部品の少なくとも中心点を上述した如く、カード表面を4象限に区分した際に対角となる象限に設けることで、2つの電子部品の中間部分への繰り返し曲げストレスの集中を分散させることが可能となり、割れにくいカードを提供することが可能となる。
【0025】
ここで、電子部品の面積によっては、電子部品が2以上の象限にまたがって配置される場合も想定され、このような状態であっても、カードの割れを防ぐという一定の効果は発揮されるものである。しかし、電子部品の全体が1つの象限に収まっているとより高い効果が発揮される。1つの電子部品のみがこの条件を満たしても良いが、より望ましくは、2つの電子部品ともに全体が各々1つの象限に収まっていると良い。つまり、2つの電子部品の全体が4象限に区分した際に対角となる象限に設けられているほうが、より割れに対する強度を高めることが可能となる。
【0026】
また、本発明におけるカードは、図2に示した如く、カードの表面を上記と同様に長辺方向の中心線と短辺方向の中心線とを用いて4象限に区分した際に、2つの電子部品の少なくとも中心点が対角となる象限に配置され、且つ長辺方向の中心線から長辺方向に±15mm、合わせて30mmの範囲(図2において斜線で示した部分)には、2つの電子部品の少なくとも中心点がいずれも配置しないと良い。さらに望ましくは、2つの電子部品の全体がこの範囲に配置されていないと良い。
これは、JISX6305に規定された試験方法のように、カードの両端(上下・左右)を支点に曲げた場合に曲率が高くなるエリアであるためであり、このエリアを避けて2つの電子部品少なくとも中心点を、より好ましくは全体を配置することで、さらにカードの割れを防ぐことが可能となる。
【0027】
同様に、本発明におけるICカードは、図3に示した如く、カードの表面を上記と同様に長辺方向の中心線と短辺方向の中心線とを用いて4象限に区分した際に、2つの電子部品が対角となる象限に配置され、且つ短辺方向の中心線から短辺方向に±10mm、合わせて20mmの範囲(図3において斜線で示した部分)には、2つの電子部品がいずれも配置しないと良い。さらに望ましくは、2つの電子部品の全体がこの範囲に配置されていないと良い。
これも、JISX6305に規定された試験方法のように、カードの両端(上下・左右)を支点に曲げた場合に曲率が高くなるエリアであるためであり、このエリアを避けて2つの電子部品の中心点を、より好ましくは全体を配置することで、さらにカードの割れを防ぐことが可能となる。
【0028】
さらに望ましくは、図4に示したように、図2と図3において斜線で示した部分の両方、つまり、長辺方向の中心線から長辺方向に±15mm、合わせて30mmの範囲と、短辺方向の中心線から短辺方向に±10mm、合わせて20mmの範囲との両方を合わせた範囲(図4において斜線で示した部分)に、2つの電子部品の少なくとも中心点のいずれもが配置されていないと良い。これについても同様に、電子部品の全体がいずれも配置されていないとさらに良い。これにより、さらにカードの割れを確実に防ぐことが可能となる。
【実施例1】
【0029】
非接触型ICチップを接続したアンテナシートを、ポリエステルフィルムからなる2枚の基材で挟み込み、外層に印刷層及び保護層を設け、基材にザグリ加工を施して凹部を形成し、形成した凹部に接触型ICチップを備えた接触型ICモジュールを設置してカードを得た。カードのサイズは、短辺54.03mm、長辺85.60mmとした。
カード表面から見て、接触型ICモジュールは、長辺方向の左端から15.06mm、短辺方向の上端から23.89mmを中心とした位置に、非接触型ICチップは、長辺方向の右端から12.5mm、短辺方向の下端から17.0mmを中心とした位置に設けた。
得られたカードに対して、JISX6320-1(2009)4.2.9 動的曲げ強さ試験を行ったところ、カード割れが発生しなかった。
【実施例2】
【0030】
2つの非接触型ICチップが接続されたアンテナシートを、PETからなる2枚の基材で挟み込み、外層に印刷層及び保護層を設けてカードを得た。カードのサイズは、短辺54.03mm、長辺85.60mmとした。
カード表面から見て、第1の非接触型ICチップは、長辺方向の左端から12.5mm、短辺方向の上端から17.0mmを中心とした位置に、第2の非接触型ICチップは、長辺方向の右端から12.5mm、短辺方向の下端から17.0mmを中心とした位置に設けた。
得られたカードに対して、JISX6320-1(2009)4.2.9 動的曲げ強さ試験を行ったところ、カード割れが発生しなかった。
(比較例1)
【0031】
2つの非接触型ICチップが接続されたアンテナシートを、PETからなる2枚の基材で挟み込み、外層に印刷層及び保護層を設けてカードを得た。カードのサイズは、短辺54.03mm、長辺85.60mmとした。
カード表面から見て、第1の非接触型ICチップは、長辺方向の左端から15.06mm、短辺方向の上端から23.89mmを中心とした位置に、第2の非接触型ICチップは、長辺方向の右端から12.5mm、短辺方向の上端から17.0mmを中心とした位置に設けた。
得られたカードに対して、JISX6320-1(2009)4.2.9 動的曲げ強さ試験を行ったところ、カード割れが発生した。
【符号の説明】
【0032】
1・・・カード
2・・・接触型ICモジュール
3・・・非接触型ICチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの電子部品を具備したカードにおいて、
該カードの表面を、長辺方向の中心線と短辺方向の中心線とを用いて4象限に区分した際に、2つの該電子部品の少なくとも中心点が、対角となる象限に配置されていることを特徴とするカード。
【請求項2】
2つの前記電子部品の全体が各々1つの前記象限内に収まっていることを特徴とする請求項1に記載のカード。
【請求項3】
2つの前記電子部品の少なくとも中心点の何れもが、前記長辺方向の中心線から長辺方向に±15mmの範囲を避けて配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカード。
【請求項4】
2つの前記電子部品の少なくとも中心点の何れもが、前記短辺方向の中心線から短辺方向に±10mmの範囲を避けて配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のカード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−129021(P2011−129021A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−288905(P2009−288905)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】