説明

カーボンナノチューブのナノコンポジット、カーボンナノチューブのナノコンポジットを作製する方法、およびナノコンポジットを含むデバイス

本発明は、カーボンナノチューブ(CNT)を含有するナノコンポジット、ナノコンポジットの作製方法、ナノコンポジット材料を使用したデバイスを記載する。CNTをVNのようなキャパシタ材料と組み合わせることで、固有のスーパーキャパシタ特性を有するコンポジット材料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブのナノコンポジット、カーボンナノチューブのナノコンポジットを作製する方法、およびナノコンポジットを含むデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーキャパシタまたは電気化学キャパシタは、メモリ、マイクロコンピュータ、システムボード、およびクロックのバックアップ電源のような用途に対して、世界中で研究および開発されている。加えて、スーパーキャパシタは、加速を促進し、制動エネルギを回復させるように、電気および燃料電池車に用いることもできる。現在の市場での電気化学的スーパーキャパシタの市販品は、高表面積の多孔質炭素材料、および遷移金属二酸化物系に基づいている。B.E.Conway、「Electrochemical Supercapacitors,Scientific Fundamental and Technological Applications,Plenum Publishers」(1999)を参照されたい。市販のスーパーキャパシタは、ランダムアクセスメモリデバイスおよび電話装置等の待機電源として広く使用されている。電荷蓄積能力の測度として、炭素ベースの材料の比キャパシタンスは、一般的に約100乃至200F/gであり、RuO2は、約750F/gにもなり得る。Kotzら、「Principles and applications of electrochemical capacitors」、Electrochimica Acta 45、2483−2498(2000)を参照されたい。
【0003】
電気伝導金属酸化物、導電ポリマー、および炭素は、スーパーキャパシタ用の活性電極材料として、その使用についての研究が行われている。種々の炭素多形体は、それらのバランスのとれた電気伝導度、比表面積、化学的安定性、および費用性能比により、強い関心を集めた。電荷蓄積能力の測度として、炭素ベースの材料の比キャパシタンスは、一般的に約100乃至200F/gである。ランダムに分散したカーボンナノチューブ(CNT)を有するカーボンナノチューブ/カーボンコンポジットは、Liuらの、「SWNT/PAN composite film−based supercapacitors」、Carbon 41、2437−2451(2003)、および米国特許第7,061,749号に記載されている。スーパーキャパシタ用の他のCNTコンポジットは、Pushparajらの、「Flexible energy storage devices based on nanocomposite paper」、PANS、13574−13577(2007)に記載されている。Itoは、米国特許第6,475,670号で、導電性微粒子がゴムタイプのバインダによって接続された、多孔質電極のためのコンポジットの作製を開示した。Wongらは、米国特許第7,189,455号で、RuO2がCNTに共有結合されたCNTコンポジットを開示した。ある種のTiN粒子を有するCNTコンポジットは、JiangおよびGaoが、「Fabrication and Characterization of Carbon Nanotube−Titanium Nitride Composites with Enhanced Electrical and Electrochemical properties」、J.Am.Ceram.Soc,156−161(2006)、および「Carbon nanotubes−metal nitride composites:a new class of nanocomposites with enhanced electrical properties」、J.Mater.Chem.260−266(2005)に記載している。酸化バナジウムを有するカーボンナノチューブのコンポジットも開発されている。Sakamotoらの、「Vanadium Oxide−Carbon Nanotube Composite Electrodes for Use in Secondary Lithium Batteries」、J.Electrochem.Soc.A26−A30(2002)を参照されたい。Ajayanらは、「Structure of carbon nanotube−based nanocomposites」、J.Microscopy、275−282(1997)で、単分子層の酸化バナジウムでコーティングしたCNTを報告した。
近年、Choiら(Choi et al.,Adv.Mater.2006、18、1178−1182)は、ナノ結晶窒化バナジウムのスーパーキャパシタ材料(1300ファラド/グラム)の合成を報告した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7,061,749号明細書
【特許文献2】米国特許第6,475,670号明細書
【特許文献3】米国特許第7,189,455号明細書
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】B.E.Conway、「Electrochemical Supercapacitors,Scientific Fundamental and Technological Applications,Plenum Publishers」(1999)
【非特許文献2】Kotzら、「Principles and applications of electrochemical capacitors」、Electrochimica Acta 45、2483−2498(2000)
【非特許文献3】Liuら、「SWNT/PAN composite film−based supercapacitors」、Carbon 41、2437−2451(2003)
【非特許文献4】Pushparajら、「Flexible energy storage devices based on nanocomposite paper」、PANS、13574−13577(2007)
【非特許文献5】JiangおよびGao、「Fabrication and Characterization of Carbon Nanotube−Titanium Nitride Composites with Enhanced Electrical and Electrochemical properties」、J.Am.Ceram.Soc,156−161(2006)
【非特許文献6】JiangおよびGao、「Carbon nanotubes−metal nitride composites:a new class of nanocomposites with enhanced electrical properties」、J.Mater.Chem.260−266(2005)
【非特許文献7】Sakamotoら、「Vanadium Oxide−Carbon Nanotube Composite Electrodes for Use in Secondary Lithium Batteries」、J.Electrochem.Soc.A26−A30(2002)
【非特許文献8】Ajayanら、「Structure of carbon nanotube−based nanocomposites」、J.Microscopy、275−282(1997)
【非特許文献9】Choiら、(Choi et al.,Adv.Mater.2006、18、1178−1182)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ナノ結晶窒化バナジウム材料には、例えば、ポリマーバインダには、電極加工が必要であり、これが、電気二重層または可逆的表面酸化還元反応のいずれかによって、多孔質構造を塞いで、利用可能な電化蓄積サイトを減少させてしまうこと、ポリマーバインダの使用は、電気伝導度を低下させ、電力性能を悪化させる場合があること、ナノ結晶VN粒子の凝集は、表面積を減少させる、および/または利用可能な電荷蓄積サイトを減少させる可能性がある、といった不利点を有する場合がある。理論的に算出された値(〜80m2/g)と実験的に測定された値(〜40m2/g)と間の比表面積についての有意差は、ナノ結晶窒化バナジウム粒子の凝集の現れである可能性がある。
集中的な研究が行われ、それとともに多数の材料が実験されてきたが、高い電荷蓄積能力によってスーパーキャパシタデバイスの特性を大幅に向上させることができる、新規の材料を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電気エネルギ貯蔵用途、より具体的には、スーパーキャパシタに特に有用な、例えば窒化バナジウムまたは酸化バナジウムを有する、新規の、高性能なカーボンナノチューブのハイブリッドナノコンポジットに関する。好適な実施形態では、大きなアスペクト比を有するカーボンナノチューブによって形成された機械的に堅牢なネットワークは、バインダの必要性を低減または取り除き、ハイブリッド電極の電荷蓄積能力を最大化する。
【0008】
窒化バナジウム(VN)および金属酸化物ベースのスーパーキャパシタのキャパシタンス特性は、酸化還元タイプのメカニズムに基づいている。カーボンナノチューブベースのスーパーキャパシタは、二重層効果に基づいている。ハイブリッド手法で2つのメカニズムを組み合わせることによって、より堅牢な設計で、極めて高い表面積および電荷保持容量を作り出す可能性から、次世代のスーパーキャパシタを提供することを期待する。
【0009】
ナノ結晶窒化バナジウムから調製された電極がポリマーバインダの使用を伴う場合、ポリマーバインダは、例えば、1)多孔質構造を塞いで、電気二重層の形成効率を低減させる、および/または2)電気伝導度を低下させて、電力性能を悪化させる、といった様々な面で性能に悪影響を及ぼし得る。加えて、ナノ結晶粒子の凝集は、電荷蓄積サイトの形成に使用することができる、利用可能な表面積を低減する。例えば、6.33ナノメートルの球状バナジウムナノ粒子の比表面積は、〜80m2/gと算出されるが、実際の測定値は、〜40m2/gである。ナノ結晶窒化バナジウムスーパーキャパシタ電極における上述の問題を解決するために、本発明は、カーボンナノチューブ/ナノ結晶窒化バナジウムのハイブリッド手法を使用して、高性能なスーパーキャパシタ電極材料を開発する。本手法は、カーボンナノチューブによる利点(高電気伝導度、高表面積、および柔軟な細孔構造制御の、機械的に堅固な交絡したネットワーク)と、ナノ結晶窒化バナジウムによる利点(多段擬似容量電荷蓄積メカニズム)との両方を備えた、新規のハイブリッド電極材料を可能にする。電荷蓄積メカニズムは、多孔質ハイブリッドスーパーキャパシタ電極におけるCNTおよびVNの構造および性能の関係を操作することによって、変化させることができる。さらに、カーボンナノチューブ配列の存在下での窒化バナジウムの原位置合成は、電荷蓄積サイトが最大化されるように、ナノ結晶粒子の凝集を防止するものと考えられる。
【0010】
一側面では、本発明は、整列CNTと混在する、炭素、金属酸化物粒子、または金属窒化物粒子を含む、CNTコンポジット電極材料を提供する。炭素(存在する場合)は、CNTからではなく、その後炭素と化合されるポリマーの含浸から生じる。好適な一実施形態では、コンポジット電極は、整列CNTと混在する炭素を含み、コンポジットは、少なくとも10F/gの比キャパシタンスを有し、コンポジットは、少なくとも85重量%のCNTを含む。他の好適な実施形態では、CNTコンポジットは、整列CNTと混在する窒化バナジウム粒子を含み、窒化バナジウム(VN)粒子は、VN核および酸化バナジウム外面を含むことが好ましい。他の好適な実施形態では、CNTコンポジットは、整列CNTと混在する酸化バナジウム粒子を含む。
【0011】
別の側面では、本発明は、CNTおよびVNを含む、コンポジット電極を含む。結晶VNは、CNTと混在することが好ましい。
【0012】
更なる一側面では、本発明は、酸化バナジウムまたは窒化バナジウムが混在するCNTを含む、CNTコンポジット材料を提供する。この材料は、少なくとも5F/gの比キャパシタンスを有する。CNTは、整列されることが好ましい。
【0013】
本発明は、本願明細書に記載のコンポジット材料のうちのいずれかを含む、スーパーキャパシタも含む。一般的に、コンポジット材料は、少なくとも第1の電極を形成し、スーパーキャパシタは、第1の電極に接続された第1のコレクタと、第2の電極と、第1および第2の電極の間に配置されたセパレータ層と、第2の電極に接続された第2のコレクタとをさらに含む。いくつかの実施形態では、第1および第2の電極は、それぞれが同じタイプのコンポジット材料で構成される。加えて、本発明は、本願明細書に記載のコンポジット材料のうちのいずれかを含む、スーパーキャパシタを含む(携帯電話のような)電子デバイスを提供する。
【0014】
更なる一側面では、本発明は、カーボンナノチューブおよび窒化バナジウムを含有するコンポジット材料を作製する方法を提供し、当該方法は、カーボンナノチューブを提供するステップと、カーボンナノチューブと窒化バナジウムとを組み合わせてコンポジット材料を形成するステップと、コンポジット材料を加熱または乾燥するステップとを含む。好適な一実施形態では、VNは、CNTの分散体に添加される。いくつかの好適な実施形態では、CNTは整列される。いくつかの好適な実施形態では、VNおよびCNTの混合物は、材料の組み合わせを補助するように超音波処理される。VNは、粒子として添加するか、またはVN前駆体を、VNを形成するように反応させることができる。いくつかの実施形態では、VNは、結晶VNを形成するように加熱される。
【0015】
別の側面では、本発明は、CNTコンポジットを作製する方法を提供し、当該方法は、基板上に整列されるCNTを提供するステップと、(a)整列CNTにポリマー材料を含浸させるステップと、ポリマー材料を炭化するか、または(b)整列CNTに、金属酸化物または金属窒化物の粒子を、または金属窒化物または金属酸化物粒子の前駆体を含浸させるステップとを含む。ステップ(a)を使用する好適な方法では、ポリマー材料は、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリ酢酸ビニル(PVA)、またはポリ塩化ビニル(PVC)を含む。ステップ(a)を使用する好適な方法では、炭化するステップは、不活性雰囲気中で、少なくとも600℃まで加熱することによって行われる。ステップ(b)を使用するとき、本発明は、コンポジットを含有する整列カーボンナノチューブを作製する方法を提供し、当該方法は、整列カーボンナノチューブを提供するステップと、整列CNTを含浸させるように粒子または前駆体を添加するステップとを含み、粒子または前駆体が、窒化バナジウムまたは酸化バナジウム粒子、または窒化バナジウムまたは酸化バナジウム粒子の前駆体を含み、また、コンポジット材料を加熱または乾燥するステップを含む。
【0016】
更なる一側面では、本発明は、カーボンナノチューブおよび酸化バナジウムを含有するコンポジットを作製する方法を提供し、当該方法は、カーボンナノチューブを提供するステップと、カーボンナノチューブと酸化バナジウムとを組み合わせて、コンポジット材料を形成するステップと、少なくとも約500℃の温度で、コンポジット材料を熱処理するステップとを含む。酸化バナジウムは、酸化バナジウムの泡沫から導出されることが好ましい。熱処理ステップが、比キャパシタンスを飛躍的に改善するということが見出された。
【0017】
本発明の方法のいずれも、以下の項でさらに詳しく説明する、種々の好適なステップと組み合わせることができる。例えば、本方法は、乾燥後にコンポジットを基板から剥離するステップを含むことができる。
【0018】
別の側面では、本発明は、スーパーキャパシタを作製する方法を提供し、当該方法は、上述のステップのうちのいずれか(すなわち、コンポジット電極を作製するステップのうちのいずれか)によってコンポジット電極を作製するステップと、コンポジット電極をコレクタとセパレータとの間に挟むステップとを含む。
【0019】
特許用語において典型的であるように、「含む」とは、他の構成要素を含み、許容することを意味する。説明のうちのいずれにおいても、本発明は、「含む」という用語を、「本質的に〜から構成される」および「〜から構成される」という、より限定的な用語と置き換えることができる、製品および方法を含む。
【0020】
本発明は、キャパシタの作製および使用に有用となり、例えば、マイクロコンピュータ、メモリ、クロック、ポータブルコンピュータ、システムボード、携帯型電子デバイス、および印刷可能な電子式論文およびディスプレイにおける電力貯蔵、および、デジタルカメラ、録音および/または再生機、火災/煙警報器、およびオフィス機器のCMOS論理回路のような電子デバイス用の電力バックアップに有用となる。SWNT/VNスーパーキャパシタが、最高のスーパーキャパシタンス性能を提供し、CNTハイブリッドコンポジットが、種々の実施形態で、コスト、耐久性、信頼性、およびより小さなサイズにおける利点を提供することができると想定される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】電極組成物の、標準的な定電流充放電の結果を示す図である。
【図2】カーボンナノチューブおよびバナジウム化合物から形成されたハイブリッド電極の、定電流充放電の結果を示す図である。電極性能は、1>2>7>3、4、5>6>8の順であった(表Iを参照されたい)。
【図3】定電流充放電法(電流レベル=0.5mA)を使用して測定した、カーボンナノチューブ/バナジウム化合物のハイブリッド電極の比キャパシタンスを示す図である。
【図4】原位置外および原位置で作製したカーボンナノチューブ/バナジウム化合物のハイブリッド電極の、キャパシタンス性能の比較を示す図である。
【図5】原位置外および原位置で作製したカーボンナノチューブ/バナジウム化合物のハイブリッド電極の、キャパシタンス性能の比較を示す図である。
【図6】異なる手法によって作られた、作製されたままのハイブリッド電極の比キャパシタンスを示す図である。
【図7】カーボンナノチューブ/バナジウム化合物のハイブリッド電極のキャパシタンス性能に関する熱処理の効果を示す図である。
【図8】スーパーキャパシタ用途の垂直整列CT/ポリマーコンポジット膜を調製するためのスキームを例示した図である。
【図9】活性化したMWNT/PANコンポジット膜電極のキャパシタンス性能に対する、CNTの配向効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
「カーボンナノチューブ」または「CNT」という用語は、単壁、二重壁、および多壁カーボンナノチューブを含み、さらに明記されない限り、束および他の形態も含む。本発明は、特定のタイプのCNT限定されない。好適なカーボンナノチューブには、高圧一酸化炭素(HiPco)法、アーク放電、CVD、およびレーザアブレーションプロセスによって作製された単壁カーボンナノチューブ、二重壁カーボンナノチューブ(DWNT)、単壁、二重壁、三重壁カーボンナノチューブ、および多壁カーボンナノチューブ、ならびに、これらの材料の共有結合的に改変された変形、が挙げられる。CNTは、これらの材料のいかなる組み合わせとすることもでき、例えば、CNT組成物は、単壁および多壁CNTを混合したものを含むことができ、または該組成物は、本質的にDWNTおよび/またはMWNTから構成されるか、または本質的にSWNTから構成されるように、等とすることができる。CNTは、少なくとも50、好ましくは少なくとも100、および一般的に1000以上のアスペクト比(直径に対する長さ)を有する。いくつかの実施例に対しては、MER社から入手した整列MWNTを使用したが、その寸法は、長さが7±2μmで直径が140±30nm、および長さが約30μmで直径が35±10nmであった。
【0023】
多くの好適な実施形態では、CNTは、整列される。本願明細書で使用される、「整列(される)」という用語は、一方向に整列していることを意味する。一方向に整列されたCNTは、市販されており、ナノテクノロジに携わっている者には広く認識されている。膜内の整列は、走査型電子顕微鏡(SEM)で、膜の断面を観察することによって見ることができる。好適な一実施形態では、ナノチューブの少なくとも95(質量)%は、単一軸の10°以内にある。
【0024】
いくつかの好適な実施形態では、整列ナノチューブは、一端において、基板(好ましくは金属基板)に取り付けられる。いくつかの好適な実施形態では、導電性基板には導電性があり、スーパーキャパシタ内の電流コレクタとして、その後使用することができる。いくつかの好適な金属基板は、銅、アルミニウム、ニッケル、またはステンレス鋼を含む。代替的に、CNTを含むコンポジットを基板上に形成し、その後、さらなる加工のために、および/または電子デバイス内への配置のために、該基板から剥離することができる。いくつかの好適な実施形態では、コンポジット電極は、スーパーキャパシタ内に挟持されるか、または固定される。
【0025】
発明的スーパーキャパシタは、従来の構造(コレクタ:電極:セパレータ:電極:コレクタ)を用いる。一方または両方の電極は、本願明細書に記載のCNTコンポジット材料を含む。セパレータは、当技術分野において既知であり、一般的に、多孔質ポリマーおよび/または電解質を含む。既に知られているように、スーパーキャパシタは、直列または並列に積み重ねて接続することができる。いくつかの好適な実施形態では、スーパーキャパシタは、厚みが50μm未満であり、いくつかの実施形態では、10マイクロメートル(μm)乃至100μmの範囲である。
【0026】
「混在する」という用語は、粒子が、CNTのフォレスト全体を通じて散在するか、または結合され、単にCNTの層の上部に層状にされるだけではないことを意味する。一般的に、粒子は、個々のCNTの最外壁を修飾し、整列された配列の全体にわたって出現する。分散は、SEMによって観察することができる。混在する粒子は、CNTに結合させることができるが、いくつかの好適な実施形態では、静電力によってCNT内に保持される。いくつかの実施形態では、バインダを用いて、粒子のCNTへの接着を援助することができ、バインダを使用したときには、その存在が10重量%未満であることが好ましく、いくつかの実施形態では、2乃至6%の範囲である。いくつかの実施形態では、CNT配列は、(金属酸化物粒子または前駆体、金属窒化物粒子または前駆体、または熱分解可能なポリマーのような)溶浸材による処理中、または処理後に超音波処理することができる。
【0027】
広範な側面では、CNTコンポジットは、所望の電気的特性を得るために選択された、金属酸化物(例、V族の金属酸化物)または金属窒化物のような、無機化合物を含むことができる。いくつかの実施形態では、粒子は、酸化ルテニウム、酸化イリジウム、酸化マンガン、酸化チタン、二酸化オスミウム、二酸化モリブデン、酸化ロジウム、酸化タングステン、およびこれらの混合物を含むことができる。粒子は、酸化バナジウムまたはバナジウム窒化物、あるいは酸化バナジウムおよび窒化物の混合物であることが最も好ましい。コンポジット内の粒子の質量%は、1乃至99%の範囲とすることができる。いくつかの実施形態では、コンポジットは、5質量%を超える粒子を含み、いくつかの実施形態では70%を超え、いくつかの実施形態では70乃至98%である。
【0028】
酸化バナジウム粒子は、それらの中性状態において、組成式がV25(五酸化バナジウム)である。窒化バナジウム粒子は、核および外筒形態を有し、核内には窒化バナジウムを有し、粒子の外面を構成する層内には酸化バナジウムを有することが好ましい。コンポジット内の粒子は、粒径(質量平均)範囲が1乃至50nm(最大寸法にて測定)であることが好ましく、2乃至10nmの範囲であることがより好ましい。
【0029】
(合成方法)
A.CNT/ポリマーコンポジット
本方法は、整列CNTの配列、好ましくは、表面(いくつかの実施形態では金属表面)に付着させた、整列CNTから、開始される。次いで、CNTは、熱分解可能なポリマー材料で含浸される。ポリマー材料は、単一タイプのポリマーまたはポリマーを混合したものとすることができ、溶媒を加えない状態、または溶媒内に分散(好ましくは溶解)したものとすることができる。本方法に使用できるポリマーおよび溶媒のいくつかの実施例は、米国特許第7,061,749号に開示されている。
【0030】
含浸ステップは、ポリマーまたはポリマー含有溶液を、整列CNTの膜の表面上に滴下することによって行うことができる。代替的に、整列CNTを、溶融高分子またはポリマー含有溶液に浸漬することができる。さらに他の代替例では、モノマーを、整列CNTの配列内に含浸させて、配列内に重合させることができる。
【0031】
いかなる熱分解可能なポリマーも、本発明の広範の側面に用いることができる。好適なポリマーは、活性炭素に変換することができるが、そのようなポリマーには、ポリアクリロニトリル(PAN)、スチレンアクリロニトリル(SAN)、ポリスチレン(PS)フェノール樹脂、フェノールホルムアルデヒド樹脂、ポリアセナフタレン、ポリアクリルエーテル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)、ポリ−L−ラクチド、ポリイミド、ポリウレタン類、ナイロン類、ポリ(アクリロニトリル−メチルアクリレート)のようなポリアクリロニトリルコポリマー、ポリ(アクリロニトリル−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリロニトリル−イタコン酸−メチルアクリレート)、ポリ(アクリロニトリル−ビニルピリジン)、ポリ(アクリロニトリル−塩化ビニル)、およびポリ(アクリロニトリル−ビニル酢酸塩)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
溶媒を使用してポリマー材料を分散させる実施形態では、ナノチューブの含浸を容易にするように、ポリマーを可溶化または懸濁する、いかなる溶媒をも使用してポリマー溶液を調製することができる。例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)を使用して、アクリロニトリル含有のポリマー、および活性炭素に変換することができる他のポリマーを、懸濁または可溶化することができる。
【0033】
整列CNTに含浸させた後、残りの溶媒は、もしあれば、ポリマーナノチューブコンポジットから除去する。ポリマーナノチューブ形態から溶媒を除去するための、あらゆる既知の手段を使用することができる。溶媒を除去するための手段の実施例には、これに限定されないが、真空乾燥、周囲蒸発、加熱、非溶媒中でのポリマーナノチューブ懸濁液の凝固、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
溶媒を除去した後は、もしあれば、ポリマーナノチューブの混合物から、膜のような形態を、任意選択で、どの時点ででも、所望の形状に切断することができる。
次いで、ポリマー含有のコンポジットに熱処理を行う。任意選択で、コンポジットは、酸化環境中で、部分反応に充分な温度で、好ましくは200℃乃至1000℃の範囲で、いくつかの実施形態では200℃乃至300℃で処理することができる。酸化環境の実施例には、これに限定されないが、空気、蒸気、二酸化炭素、窒素または不活性ガス中に希釈した酸素、およびそれらの組み合わせが挙げられる。酸化環境での処理は、炭化の前および/または後に生じさせることができる(下記参照)。炭化後の処理の重要な利点は、それがコンポジット材料の細孔を増加させることである。
【0034】
ポリマーナノチューブコンポジットは、非酸化または不活性雰囲気中の熱処理によって炭化される。炭化中に、ポリマーの非炭素要素は、揮発性副産物として除去される。ポリマーの炭化に寄与する、いかなる非酸化または不活性環境をも使用することができる。使用できる好適な環境は、真空(好ましくは20mmHg未満)または代替的に、窒素、アルゴンのような不活性ガス、またはそれらの組み合わせである。「炭化」とは、ポリマーを主に炭素に変換することを意味する。炭化は、一般的に、非酸化環境中で高温(少なくとも500℃)で行われる。炭化は、少なくとも600℃の温度で実行されることがより好ましい。
各熱処理は、少なくとも30秒間、いくつかの実施形態では、1分乃至1日の範囲で行われることが好ましい。
任意選択で、コンポジットは、一般的に、薬品賦活によって処理して、細孔を増加させることもできる。薬品賦活は、水酸化カリウム、塩化亜鉛、炭酸ナトリウム、およびリン酸のような化学剤を含浸させた前駆体材料の熱分解を伴う。化学剤は、炭化中の揮発および収縮の影響を受けにくい架橋マトリックスの形成を促進することができる。ポリマーナノチューブコンポジットの薬品賦活では、水酸化カリウム、塩化亜鉛、炭酸ナトリウム、またはリン酸のような化学剤が、ポリマーナノチューブの混合物に添加される。ポリマーナノチューブ混合物への化学剤の添加および混合は、ポリマーナノチューブ混合物をコンポジットの形態に形成する前に、いかなる時点でも行うことができる。
【0035】
B.CNT/酸化バナジウムまたは窒化物のナノコンポジット
場合によっては、金属酸化物または金属窒化物(好ましくはV25または窒化バナジウム)の粒子が、CNTと組み合わせられる。材料は、一緒に超音波処理を行って、2つの相の互いへの分散を改善することが好ましい。他の場合によっては、(VCl4およびNaNH2のような)化学的前駆体がCNTと組み合わせられ、CNTの存在下で金属窒化物が形成されるが、任意選択で、このプロセスは、超音波処理と同時に行うことができる。反応および組み合わせのステップは、室温で行われることが好ましい。その後、一般的に濾過または遠心分離によって、中間生成物が得られる。固体ナノコンポジットは、次いで、好ましくは少なくとも400℃で、より好ましくは少なくとも500℃で、また、いくつかの実施形態では、400℃乃至700℃の範囲で焼成される。
【0036】
(特性)
本発明のナノコンポジットは、特にキャパシタ材料として有用である。ナノコンポジットは、比キャパシタンスが、少なくとも5F/gであることが好ましく、より好ましくは少なくとも10F/g、さらに好ましくは少なくとも20F/g、より好ましくは少なくとも50F/g、少なくとも100F/gである。好適な材料は、比キャパシタンスが、少なくとも1000F/g、より好ましくは少なくとも1500F/gとなり、また、いくつかの実施形態では50乃至約2000F/gの範囲となる、と考えられる。
【0037】
本発明の材料は、高い電気伝導度を呈することもできる(等方性か、または、いくつかの好適な実施形態では、非等方性となり得る)。電気伝導度は、好ましくは少なくとも100S/cm、より好ましくは1000S/cmであり、また、いくつかの実施形態では、0.1S/cm乃至約10,000S/cm以上の範囲である。薄膜電極試料の場合、標準的な4プローブ電気試験法を用いて、面内のシート抵抗R1を求めることができる。面通過の電気抵抗R2の測定には2プローブ法が用いられる。マイクロメータ、プロフィロメータ、原子間力顕微鏡(AFM)、SEM等の適切なものを使用して求めることができる、膜厚をtとした場合、電気伝導度は、面内については、t/R1で計算され、面通過については、t/(R2A)(Aは、2プローブ測定における、プローブと膜との間の接触面積である)で計算される。
ナノコンポジットの表面積は、好ましくは少なくとも100m2/g、より好ましくは少なくとも500m2/gであり、いくつかの実施形態では、100乃至約1300m2/gである。
【0038】
コンポジット材料(スーパーキャパシタ内で電極の形態であることが好ましい)は、膜の形態であることが好ましく、膜の表面に対して垂直に整列させた(すなわち、膜厚に平行である)CNT配列を有する膜であることが好ましい。いくつかの好適な実施形態では、膜は、厚さが100nm以下であり、いくつかの実施形態では、厚さが1μm乃至1mmの範囲であり、いくつかの実施形態では、厚さが20μm乃至50μmの範囲であり、いくつかの実施形態では、厚さが30乃至500nmの範囲である。コンポジットは、多孔質であることが好ましく、中央細孔サイズ(容量中央値)が50nm以下であることが好ましく、1乃至20nmの範囲であることがより好ましい。細孔サイズは、BET法および/またはHgポロシメトリで測定することができる。
カーボンナノチューブは、(CNTおよびナノ結晶の独立した層とは対照的に)CNTと混在して、ナノ結晶と整列されることが好ましい。
【0039】
好適な実施形態では、CNT/炭素コンポジット材料は、(充放電による平均として測定された)比キャパシタンスが、少なくとも10F/gであり、より好ましくは少なくとも20F/gであり、また、いくつかの実施形態では最高で約50F/gであり、いくつかの実施形態では最高で約40F/gである。いくつかの好適な実施形態では、コンポジットは、少なくとも85%のCNTで、より好ましくは少なくとも90(重量)%のCNTで、また、いくつかの実施形態では85乃至99%、いくつかの実施形態では80乃至約95重量%のCNTから作製され(またはこれを含み)、残りは、ポリマーである(溶媒は、これらの重量パーセントから除く)。キャパシタンスは、浸炭、および任意選択で活性化によって発生するが、本発明は、完成品に限定されず、中間のコンポジット組成物を含むことができる。
【実施例】
【0040】
(実施例1)非結晶窒化バナジウム
ナノ構造化VN粉体は、(上述のように)Choiら、Carnegie−Mellon Universityによって、アンモニアガスと、クロロホルム中のVCl4溶液との反応によって合成した。その後の酸素による不動態化は、400℃で行われる。ChoiらによるVNの合成のための手法は、大量のアンモニア(NH3)を必要とする。本実施例では、VCl4をNaNH2とを反応させる、より容易かつ安全な合成方法を用いた。Chenら、「A room−temperature synthesis of nanocrystalline vanadium nitride」、Solid State Comm.、343−346(2004)を参照されたい。
【0041】
手順は、以下の通りである。
液相反応VCl4+4NaNH2=VN+4NaCl+N2+NH3+5/2H2
不活性環境−水分/酸素無し
酸化バナジウム/窒化物の混合物は、若干の酸素が存在すれば得ることができる。
バナジウム/カーボンナノチューブのハイブリッド電極の2ステップ(「原位置外」とも称する)形成は、MWNT(MER社より購入)を使用した。―MRCSD(長さ7±2μm、直径140±30nm)、およびMRCMW(長さ30μm、直径35±10nm)は、8.5乃至0.1のMWNT/バナジウム比を用いた。バナジウム化合物(上述のように調製したもの)およびMWNT(ジメチルアセトアミド(30g)中に溶解した1gの溶液からのもの)を、超音波処理の下で30分間混合した。5重量%のPVDFを、膜電極を作製するための結合剤物質として添加した。得られた分散体は、アルミナ膜(Anodisc、0.2μmの細孔サイズ)上で濾過して、薄膜電極を作製し、真空中で乾燥した。
【0042】
比キャパシタンスの性能評価および定義
比キャパシタンスは、試験用電解質として6N KOH水溶液を使用して、0.5mAの電流レベルでの定電流充放電によって測定した。Solatron社製1287型誘電体界面を備えたSolatron社製1260型周波数応答分析器を、性能評価に使用した。
比キャパシタンス(単一の電極の単位質量あたりのキャパシタンス)は、次式を使用して、放電電圧の関数として計算し、式中、mAおよびmBは2つの電極の質量、Iは放電電流、V(t)は電圧、そしてtは時間である。
【化1】

【0043】
代表的な試験用セルの概略は、米国特許第7,061,749(B2)号に開示されており、あたかも以下に完全に複写されたかのように、参照することにより本願明細書に組み込まれる。
図1は、標準的な定電流充放電の結果を示す図である。スーパーキャパシタは、電流を一定に(例えば0.5mA)に保持して充電される。時間の経過とともに、セルの電圧は、電極に蓄積される電荷によって、事前設定した値(この場合は0.8V)まで増加する。放電は、正反対のプロセスであり、充電したセルから定電流(0.5mA)を引き出して、電極から貯蔵電荷を放出する。
本発明の目的での、「比キャパシタンス」とは、本願明細書に記載の測定値のことである。
上述した試料調製手順の後に、多重ハイブリッド電極を作製した。その組成を表Iに示す。
【0044】
【表1】

【0045】
上述の性能評価手順に従って、定電流充放電試験を、作製したハイブリッド電極に対して行い、その結果を図2に示す。
定電流充放電の結果に基づいて、ハイブリッド電極の比キャパシタンス(F/g)を、上述の式を用いて計算し、その結果を図3に示す。
カーボンナノチューブ/バナジウム化合物のハイブリッド電極を作製するための2ステップ手法との比較として、1ステップ(「原位置」とも称される)法を用いて、ナノコンポジット材料を作製した。原位置外手法での事後混合とは対照的に、カーボンナノチューブは、VCl4+4NaNH2の反応混合物内に組み込まれた。同じ電極組成物であることを前提とすると、原位置外で製作したハイブリッド電極は、原位置手法によって製作したものと比較して、優れた性能を呈した。原位置で製作した、および原位置外で製作したハイブリッド電極の両方に対する、定電流充放電の結果および比キャパシタンスを、それぞれ図4および5に示す。比放電時間(図4)は、スーパーキャパシタセルの電荷蓄積能力を可視化する比キャパシタンスの式に対する代替的方法である。比放電時間が長くなるにつれて、電荷蓄積能力が高くなり、また、比キャパシタンスも高くなる。この線図は、DC定電流充放電(スーパーキャパシタの性能評価のための標準的な方法)の直接的な結果であるが、換算質量1/(1/mA+1/mB)によって除算した時間(t)を用いる。図4では、電極1の場合に最も長い比放電時間が見られるが、原位置作製の電極の時間よりもはるかに短い。
【0046】
(実施例2)酸化バナジウムの泡沫および対応するカーボンナノチューブのハイブリッド電極
25の泡沫を、Chandrappaらの、Nature、vol.416、p.702(2002)に記載されている手順に基づいて、以下のように調製した。5gの市販の酸化バナジウム粉体を、15mlのアセトンの存在下で、10gのヘキサデシルアミンと反応させた。15分後に、均質な反応混合物は、糊状になった。その後、250mlの30重量%のH22溶液を、該混合物に添加した。発泡は直ちに始まり、多量のV25の泡沫が得られ、これを、ハイブリッド電極を作製するために、市販の多壁カーボンナノチューブと混合した。V25発泡材料およびVNの作製の追加的な説明は、Krawiecら、Adv.Mater.2006、18、505−508に見出すことができる。
カーボンナノチューブ/発泡V2O5のハイブリッド電極は、V25泡沫とMRCSD(多壁カーボンナノチューブ、MER社製)との間の標準的な質量比の、85重量%:15重量%として、V25泡沫およびMWNT(1g)を、30分間の超音波処理の下で、ジメチルアセトアミド(30g)中に溶解し、得られた分散体を、アルミナ膜(Anodisc、0.2μmの細孔サイズ)上で濾過して、薄膜電極を作製し、真空中で乾燥し、その後、窒素雰囲気の下で、管炉内で600℃で1時間加熱して、室温まで冷却することによって、作製した。膜厚は、1μm乃至1mmの厚さであることが好ましく、20乃至50μmの厚さであることがより好ましい。
【0047】
電気化学的測定は、2電極セルの設定で行った。約10mmの直径を有する2つの円形のV25泡沫−MRCSD膜を、2つのステンレス鋼電流コレクタおよび親水性ポリエチレンシートセパレータで構成したスーパーキャパシタ試験セル内に挟んだ。6MのKOHを、すべての電気化学的測定のための電解質として使用した。キャパシタンスは、定電流充放電(CC)法および定電圧充放電(CV)法によって照合確認した。
同じ電極組成物(MRCSD/バナジウム化合物=8.5および0.12)において、原位置外で、原位置で、発泡V25ハイブリッドで作製されたままの電極を、定電流充放電試験法によって比キャパシタンスを評価した。比キャパシタンスの結果を図6に示すが、図中、発泡V25ハイブリッド電極は、電荷蓄積能力をほとんど示さない。しかしながら、驚くべきことに、発泡V25ハイブリッド電極を600℃で熱処理した後に、キャパシタンス性能が飛躍的に高められた(100倍)ことを見出した。結果を図7に示す。同図に示されるように、発泡V25ハイブリッド電極とは異なり、原位置の手法で作製したハイブリッド電極は、高温の熱処理による著しい性能向上は示していない。
【0048】
(実施例3)垂直整列カーボンナノチューブ/ポリマーコンポジット膜ベースのスーパーキャパシタ電極
カーボンナノチューブ/ポリマーコンポジット膜ベースのスーパーキャパシタ電極の概略手順を図8に示す。
【0049】
この手順の後に、垂直整列MWNT/PANのコンポジット膜を作製して、キャパシタンス性能を評価した。試験した試料では、膜を含浸させ、乾燥して、基板から剥離し、不活性雰囲気中で約700℃で炭化し、約700℃でCO2によって活性化した。試料は、95重量%のCNTと、5重量%のPANとを含有した。驚くべきことに、垂直整列CNTを使用することで、ランダム整列CNTから作製した同様のコンポジットと比較して、キャパシタンス性能が飛躍的に改善されることを発見した。結果を図9に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
整列CNTと混在する、炭素、金属酸化物粒子、または金属窒化物粒子を含む、CNTコンポジット電極材料。
【請求項2】
前記コンポジット電極は、前記整列CNTと混在する炭素を含み、前記コンポジットは、少なくとも10F/gの比キャパシタンスを有し、前記コンポジットは、少なくとも85重量%のCNTを含む、請求項1に記載のCNTコンポジット。
【請求項3】
前記整列CNTと混在する窒化バナジウム粒子を含む、請求項1に記載のCNTコンポジット。
【請求項4】
前記窒化バナジウム(VN)粒子は、VN核および酸化バナジウム外面を含む、請求項3に記載のCNTコンポジット。
【請求項5】
前記整列CNTと混在する酸化バナジウム粒子を含む、請求項1に記載のCNTコンポジット。
【請求項6】
CNTおよびVNを含む、コンポジット電極。
【請求項7】
結晶VNは、前記CNTと混在する、請求項6に記載のコンポジット電極。
【請求項8】
酸化バナジウムまたは窒化バナジウムが混在するCNTを含み、前記材料は、少なくとも5F/gの比キャパシタンスを含む、CNTコンポジット材料。
【請求項9】
前記CNTは、整列される、請求項8に記載のCNTコンポジット材料。
【請求項10】
先行する請求項のうちのいずれかのコンポジット材料を含む、スーパーキャパシタ。
【請求項11】
前記コンポジット材料は、少なくとも第1の電極を形成し、前記スーパーキャパシタは、前記第1の電極に接続された第1のコレクタと、第2の電極と、前記第1および第2の電極の間に配置されたセパレータ層と、前記第2の電極に接続された第2のコレクタとをさらに含む、請求項10に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項12】
前記第1および第2の電極は、それぞれ同じタイプのコンポジット材料で構成される、請求項11に記載のスーパーキャパシタ。
【請求項13】
請求項11に記載のキャパシタを備える、携帯電話。
【請求項14】
カーボンナノチューブおよび窒化バナジウムを含有するコンポジットを作製する方法であって、
カーボンナノチューブを提供するステップと、
前記カーボンナノチューブと窒化バナジウムとを組み合わせてコンポジット材料を形成するステップと、
前記コンポジット材料を加熱または乾燥するステップと、
を含む、方法。
【請求項15】
VNは、CNTの分散体に添加される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記VNおよびCNTを含有する分散体は、超音波処理される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
VN前駆体は、基板上に配置された整列CNTに添加され、前記VN前駆体は、VNを形成するように反応する、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
VNは、結晶VNを形成するように加熱される、請求項14乃至17のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項19】
CNTコンポジットを作製する方法であって、
基板上に整列したCNTを提供するステップと、
(a)前記整列CNTをポリマー材料で含浸させるステップと、
前記ポリマー材料を炭化するステップ、または
(b)前記整列CNTを、金属酸化物または金属窒化物の粒子で、または金属窒化物または金属酸化物粒子の前駆体で含浸させるステップと、
を含む、方法。
【請求項20】
ステップ(a)を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記炭化するステップは、不活性雰囲気中で、少なくとも600℃まで加熱することによって行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
カーボンナノチューブおよび酸化バナジウムを含有するコンポジットを作製する方法であって、
カーボンナノチューブを提供するステップと、
カーボンナノチューブと酸化バナジウムとを組み合わせて、コンポジット材料を形成するステップと、
少なくとも約500℃の温度で、前記コンポジット材料を熱処理するステップと、
を含む、方法。
【請求項23】
前記酸化バナジウムは、酸化バナジウムの泡沫から導出される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
ステップ(b)を含み、前記粒子または前駆体が、窒化バナジウムもしくは酸化バナジウム粒子、または窒化バナジウムもしくは酸化バナジウム粒子の前駆体を含み、前記コンポジット材料を加熱または乾燥するステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
乾燥後に基板から前記コンポジットを剥離するステップをさらに含む、請求項14乃至24のうちのいずれかに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−503214(P2010−503214A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526728(P2009−526728)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/019125
【国際公開番号】WO2008/027502
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(504306714)バッテル メモリアル インスティテュート (26)
【氏名又は名称原語表記】BATTELLE MEMORIAL INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】505 King Avenue, Columbus, OH 43201−2693 (US)
【Fターム(参考)】