説明

カーボンナノチューブの網目状薄膜を含むカーボンナノチューブパターンの透明電極、及びその製造方法

【課題】CNTの網目状薄膜を含み、優れた光透過性及び電気伝導性を示すカーボンナノチューブ(CNT)パターンの透明電極、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】透明基板と、前記透明基板上に形成された、CNTの網目状薄膜と、を含むCNTパターンの透明電極である。また、CNTパターンの透明電極の製造方法は、(a)粒状物とCNTとを混合して混合組成物を形成する段階と、(b)前記混合組成物を用いて、透明基板上に混合組成物の薄膜を形成する段階と、(c)前記混合組成物の薄膜から前記粒状物を除去し、CNTを残して、CNTの網目状薄膜を形成する段階とを含む。または、(a)透明基板上に粒状物を配列して薄膜を形成する段階と、(b)前記粒状物の薄膜中にCNTの組成物を注入し、混合組成物を生成して、CNTの組成物が注入された薄膜を形成する段階と、(c)前記CNTの組成物が注入された薄膜から前記粒状物を除去し、CNTを残して、CNTの網目状薄膜を形成する段階とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CNTの網目状薄膜を含むCNTパターンの透明電極、及びその製造方法に係る。さらに詳しくは、透明基板と、前記透明基板上に形成されたCNTの網目状薄膜とを含んでなる、電気伝導性と光透過性に共に優れたCNTパターンの透明電極、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
透明基板上に導電膜が形成された透明電極は、イメージセンサ、太陽電池、液晶ディスプレイ、有機電界発光ディスプレイ(有機ELディスプレイ)、タッチスクリーンパネルなど、高い光透過性及び導電性が共に要求される各種電子素子に幅広く用いられている。
【0003】
従来、透明基板の電極としてはITO(Indium Tin Oxide)電極が主に使われてきた。これは、ITOを用いるとガラス基板上に薄膜を形成し易く、得られる薄膜は優れた光透過性及び導電性を有するからである。このようなITO電極の製造の際には真空蒸着装置が使用され、その中でも、最も優れているスパッタリング装置が多用されている。ところが、スパッタリングによって透明電極を製造する際の処理温度は200℃以上、時には400℃以上の高温になるので、ITO電極は、フレキシブルディスプレイの製造には一般に適さない。しかも、ITO電極は柔軟性に劣り、フレキシブルディスプレイに使用すると、表面抵抗が増加し、かつ、耐久性が低下する。
【0004】
かかる問題点を解決するために、最近では、高い電気伝導性を有するカーボンナノチューブ(CNT)を透明基板に使用した、CNT透明電極に関する研究が盛んに行われている。一例として、カーボンナノチューブの分散液を基板上にスプレーコーティングする方法が挙げられる。このような方法による場合、カーボンナノチューブの損失が大量発生し、ナノメーターレベルでの膜厚調節が難しいという問題がある。CNTを用いて透明電極を製造するためには、CNTを適当に分散させて薄膜の透過性を保つことが必要である。これにより、CNTを分散剤で分散させて透明電極を作ろうとする試みがなされている。
【非特許文献1】Thin Solid Films,vol.460,p.156,2004
【非特許文献2】Diamond and Related Materials,Vol.13,No.2,p.256,2004
【非特許文献3】Applied Surface Science,Vol.252,p.425,2005
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、大部分の分散剤は有機物質からなっており、絶縁体として作用し得るため、CNTの薄膜を形成する際に透明電極の導電性が低下するという問題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、CNTの網目状に形成された薄膜を含み、優れた光透過性及び電気伝導性を示すCNTパターンの透明電極を提供することである。また、本発明の他の目的は、本発明のCNTパターンの透明電極を含む電子素子を提供することである。また、本発明の他の目的は、CNTの網目状薄膜を含む、CNTパターンの透明電極の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための本発明は、透明基板と、前記透明基板上に形成された、カーボンナノチューブ(CNT)の網目状薄膜と、を含むCNTパターンの透明電極である。
【0008】
上記目的を達成するための本発明の電子素子は、上記CNTパターンの透明電極を含む。
【0009】
上記目的を達成するための本発明のCNTパターンの透明電極の製造方法は、(a)粒状物とCNTとを混合して混合組成物を形成する段階と、(b)前記混合組成物を用いて、透明基板上に混合組成物の薄膜を形成する段階と、(c)前記混合組成物の薄膜から前記粒状物を除去し、CNTを残して、CNTの網目状薄膜を形成する段階とを含む。
【0010】
また、上記目的を達成するための本発明の他のCNTパターンの透明電極の製造方法は、(a)透明基板上に粒状物を配列して薄膜を形成する段階と、(b)前記粒状物の薄膜中にCNTの組成物を注入し、混合組成物を生成して、CNTの組成物が注入された薄膜を形成する段階と、(c)前記CNTの組成物が注入された薄膜から前記粒状物を除去し、CNTを残して、CNTの網目状薄膜を形成する段階とを含む。
【発明の効果】
【0011】
本発明によるCNTパターンの透明電極によれば、CNT薄膜を網目状に形成して光透過度及び電気伝導度を著しく向上させることにより、各種ディスプレイの電極として幅広く応用することができる。
【0012】
また、本発明によるCNTパターンの透明電極の製造方法によれば、CNT透明電極の厚さをナノメーターレベルで容易に調節することができる。
【0013】
さらに、本発明によるCNTパターンの透明電極は、フレキシブルディスプレイ用のフレキシブル透明電極にも適用可能なため、次世代ディスプレイとして注目されているフレキシブルディスプレイ用電極に広く使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付した図面を参照して、本発明を適用した最良の実施形態を説明する。
【0015】
[第1態様]
本発明の第1態様であるカーボンナノチューブ(以下、「CNT」ともいう)パターンの透明電極は、透明基板と、前記透明基板上に形成された、カーボンナノチューブ(CNT)の網目状薄膜とを含む。前記透明電極のうちの網目状薄膜は、換言するならば、複数の閉空間を連続的に形成するよう、カーボンナノチューブ(CNT)が集合してなる薄膜である。前記CNTの薄膜は網目状に形成され、優れた電気伝導性及び光透過性を併有する。
【0016】
図1は本態様によるCNTパターンの透明電極の概略的な断面図を示す。図1に示すように、本発明に係るCNTパターンの透明電極1は、透明基板2と、前記透明基板2上に形成されたCNTの薄膜3(網目状構造)とを含む。また、図2は、本態様によるCNTパターンの透明電極の平面模式図、すなわち前記透明電極をCNTの薄膜3側の上から見た図を示す。
【0017】
透明基板2は、透明性を有するものであれば、いずれも使用可能である。好ましくは、ガラス基板若しくは石英基板から選ばれる透明無機基板、またはプラスチックなどのフレキシブル透明基板が使用できる。前記フレキシブル透明基板は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)、ポリエチレンナフタレート(polyethylene naphthalate)、ポリエーテルスルホン(polyether sulfone)、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon)、ポリエーテルイミド(polyetherimide)、アクリル樹脂、オレフィンマレイミド共重合体及びノルボルネン系樹脂よりなる群から選ばれる1種以上の材料で構成されうる。透明基板2の厚さは、素材によって様々であるため、特に制限されることはない。
【0018】
CNTの薄膜3は、複数の閉空間を連続的に形成するよう、CNTが集合し、形成されてなることを特徴とする。CNTの薄膜3における表面の物性は、細孔径分布、及び前記薄膜全体に占めるCNTの表面積の割合で規定することができる。細孔径分布は、原子間力顕微鏡(AFM)または電子顕微鏡(SEM、TEM)により実測する方法などにより算出することができる。本明細書における細孔径分布は、電子顕微鏡により実測する方法を採用し、好ましくは50nm〜10μmであり、より好ましくは50nm〜5μmである。また、CNTの薄膜3の厚さは、好ましくは1〜200nmであり、より好ましくは5〜100nmである。本明細書における前記薄膜全体に占めるCNTの表面積の割合の好ましい範囲は、電子顕微鏡による実測によって、上記細孔径分布とCNTの薄膜3の厚さとから算出することができる。上記した範囲内にある場合、得られる透明電極の光透過度を低下させることなく、導電性を有意に向上させることができる。
【0019】
なお、本明細書において、「CNT」は、他の素材(ワイヤ)に代替することも可能である。例えば、窒化ガリウム(GaN)、酸化亜鉛(ZnO)、金ナノロード(Au nanoroad)が挙げられる。これらの素材(ワイヤ)を用いても、CNTの場合と同様に、緻密なナノレベルの網目状構造を有する薄膜を含み、優れた光透過性及び電気伝導性を併有する透明電極が得られうる。
【0020】
CNTの薄膜3を構成するCNTとしては、本発明の目的を達成し得る限り、特に限定されることはない。CNTは、単層CNT、二層CNT、多層CNT、及びロープ状CNTよりなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。CNTが単層CNTである場合、本発明の透明電極の電気伝導性を向上させる上で、金属性であることが好ましい。具体的には、単層CNTを使用する場合には、単層CNTに混在している半導体性CNT及び金属性CNTより、化学的な分離方法を用いて、金属性CNTを選択的に分離して使用することができる。
【0021】
網目状構造を有する、CNTの薄膜3の光透過度は、CNTパターンの透明電極1の用途及び場合に応じて、当業者であれば適宜選択できる。だが、透明電極として使用するためには、550〜600nmの波長帯域における可視光透過度(率)が60%T以上となるように調節するのが好ましく、75%T以上となるように調節するのがより好ましい。上記した範囲の場合、光透過性が向上しうる。電子素子では、インプットされるランプの光がパートごとに吸収され、全体として多くの光が吸収される結果、アウトプットされる光が減少するという傾向がある。そのため、光透過度が高いほど、すなわち光の吸収量が少ないほど、本発明の透明電極にとって好ましい。
【0022】
CNTの薄膜3は、分散剤をさらに含んでもよい。前記分散剤は、特に限定されないが、CNTパターンの透明電極1の電気伝導性を向上させるために導電性分散剤であることが好ましい。導電性分散剤の例として、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(2−エチルヘキシルオキシ−5−メトキシ−1,4−フェニルビニレン)が挙げられる。また、前記導電性分散剤は、CNTとの親和性が高い芳香族環からなるヘッド部と、分散媒に親和性を持つテール部とを含む構造を有していてもよい。その際、分散剤にドープ処理を施すことにより、かかる分散剤の導電性をさらに向上させることもできる。前記分散剤の濃度は、使用する分散剤の種類などによって様々であるが、100質量部のCNTに対して、前記分散剤は5〜5,000質量部であることが好ましい。なお、前記分散剤(特に前記導電性分散剤)は、電気伝導性を向上させる観点から見ると、後述する「導電性ナノ粒子」に含まれうる。
【0023】
CNTの薄膜3は、導電性ナノ粒子を含んでもよい。前記導電性ナノ粒子としては、導電性を有するナノ粒子であれば特に制限されることはないが、高分子ナノ粒子、無機ナノ粒子、金属ナノ粒子など、多様な導電性ナノ粒子が使用可能である。また、CNTの薄膜3は、薄膜の導電性を一層向上させる観点から、金属粒子を含んでもよい。前記金属粒子は、金属ナノ粒子であることが好ましい。上記したナノ粒子や金属粒子は、CNTの鎖同士の間に位置してもよく、かかる場合、CNTの薄膜の電気伝導度及び光透過度が有意に向上しうる。
【0024】
本態様によるCNTパターンの透明電極において、CNTパターンの領域及びその他の領域(CNTパターンの存在しない領域)の平均径は、数十ナノメートルである。その一方で、従来技術によるCNTパターンの透明電極において、CNTパターンの領域の平均径は、数百ナノメートル超である点で、本発明とは顕著に異なる。かかる相違点に起因して、本発明によるCNTパターンの透明電極は、従来よりも有意に緻密な網目状構造を有し、ひいては優れた電気伝導性を有する。
【0025】
[第2態様]
本発明の第2態様は、上記第1態様の透明電極を含む電子素子である。上述のように、本発明によるCNTパターンの透明電極は、電気伝導性及び光透過性に優れるため、既存の各種透明電極、及び将来開発されうる各種透明電極にも制限なく適用できる。前記CNTパターンの透明電極を含む電子素子は、特に限定されることなく各種ディスプレイを含む。前記電子素子は、好ましくは、イメージセンサー、太陽電池、液晶ディスプレイ、有機電界発光ディスプレイ(有機ELディスプレイ)及びタッチスクリーンパネルよりなる群から選ばれる。本発明のCNTパターンの透明電極が採用可能な各種透明電極の構成は、本発明の属する技術分野において周知なため、本明細書での詳細な説明は省略する。
【0026】
[第3態様]
本発明の第3態様は、上記したCNTの透明電極の製造方法の1つに関する。前記製造方法は、(a)粒状物とCNTとを混合して混合組成物を形成する段階と、(b)前記混合組成物を用いて、透明基板上に混合組成物の薄膜を形成する段階と、(c)前記混合組成物の薄膜から前記粒状物を除去し、CNTを残して、CNTの網目状薄膜を形成する段階とを含む。
【0027】
各段階で使用される材料(透明基板、CNTやナノ粒子など)は、上記第1態様で挙げたものと同様であるため、ここでは説明を省略する。図3は本態様の製造方法に係るCNTパターンの透明電極の製造方法を示す概略的な工程図である。図3を参照しつつ、以下に、かかる製造方法における各段階について詳細に説明する。
【0028】
(a)粒状物11とCNT12とを混合して混合組成物10を形成する段階
図3中、「(a)」の図が本段階に相当する。CNTパターンの透明電極を製造する場合には、まず、粒状物11とCNT12とを混合して混合組成物10を生成する。前記混合組成物10中、粒状物11とCNT12との混合比は、特に限定されることはないが、CNTパターンの透明電極における光透過性及び電気伝導性の向上を考慮すると、質量比(w/w)で1:5〜1:30であることが好ましく、1:5〜1:20であることがより好ましい。本明細書において、「混合組成物」とは、粒状物とCNTとが混合されてなる組成物を意味する。
【0029】
粒状物11は、コロイド物質であれば特に限定されることはなく、有機コロイド粒子または無機コロイド粒子を使用できる。前記有機コロイド粒子は、特に限定されることはないが、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリリジン及びポリジビニルベンゼンよりなる群から選ばれる二種以上であることが好ましい。一方、無機コロイド粒子も、特に限定されることはないが、シリカ、チタニア、銀、金、及びこれらの組み合わせ、並びにこれらの合金よりなる群から選ばれることが好ましい。
【0030】
ここで、本発明における「粒状物」とは、「CNTの薄膜」におけるCNTの均一性、及びCNTの網目状薄膜を形成する目的で使用されうる。換言すれば、「粒状物」は「CNTの薄膜」の成形型として用いられうる。そして、「粒状物」は、最終的には後述の通り、除去されることを特徴とする。したがって、本明細書において、「粒状物」は、CNT薄膜の導電性などを向上させるために用いられうる「ナノ粒子」とは異なるものである。
【0031】
粒状物11の平均粒径は、50nm〜10μmであることが好ましく、50nm〜5μmであることがより好ましい。なぜなら、CNT12は粒状物11同士の間に配列されることに起因して、粒状物11の平均粒径が上記範囲内にある場合、CNTパターンの透明電極の光透過度及び電気伝導度が特に優れるからである。また、前記透明電極において、粒状物11は複数の粒径のものを含むことが好ましい。なぜなら、複数の粒径の粒状物11が含まれる場合、CNT12の配列の稠密度を多様に調節でき、これにより前記透明電極の光透過度および表面抵抗値を好適に調節できるからである。
【0032】
本態様の製造方法において、粒状物11とCNT12との混合方法は特に限定されることはない。ここで、CNT12の分散性を向上させるという観点でいえば、CNT12の組成物をあらかじめ調製しておくことが好ましい。「CNT12の組成物」とは、CNT12を溶媒中で混合してなる組成物である。前記溶媒はCNT12と混合しうる溶媒であれば特に限定されない。例えば、水、エタノール、メタノールなどが挙げられる。
【0033】
CNT12の組成物の形成過程について例示する。まず、溶媒または溶液(後述の分散剤を含有する溶液を含む)にCNT12を添加する。該溶液中のCNT12の組成物の濃度は、0.0005〜0.5質量%であることが好ましく、0.001〜0.25質量%であることが好ましく、0.001〜0.05質量%であることが特に好ましい。該溶液中のCNT12が十分に分散されるように、分散処理を行う。例えば、超音波分散機などを用いて、5分間〜20時間程度、該溶液に分散処理を施す。その後、1,000〜15,000rpm程度で約5〜10分間遠心分離を行って、CNT12の組成物を形成する。続いて、粒状物11を溶媒または溶液に分散させた分散液と、CNT12の組成物とを、粒状物11とCNT12との組成比が上記範囲内となるように混合して、混合組成物10を得る。
【0034】
(b)混合組成物10を用いて、透明基板13上に混合組成物の薄膜14を形成する段階
まず、混合組成物の薄膜14を形成する前に、粒状物11同士、粒状物11とCNT12との間、及び/またはCNT12同士が凝集し合うことを防止するために、CNTを分散剤で処理する段階をさらに含んでもよい。前記分散剤は、本発明による透明電極の導電性を向上させるという観点から、導電性分散剤であることが好ましい。分散剤を用いて、あらかじめCNT12のみを分散させておき、その後、かかる分散液を粒状物11の溶液(コロイド溶液)と混合することにより配列させる。
【0035】
分散剤の添加量は、使用する分散剤やCNTの種類によって異なるため、本発明による透明電極の導電性を向上させる限りにおいて、特に制限されることはない。一例を挙げるならば、分散剤がポリチオフェンであってCNTが単層である場合に、(単層)CNT100質量%に対して、分散剤の含有量は1〜5,000質量%であることが好ましく、5〜1,000質量%であることがより好ましい。
【0036】
前記分散剤は、CNT12との親和性が高い芳香族環からなるヘッド部と、分散媒に親和性のあるテール部とを含む構造からなってもよい。その際、前記分散剤にドープ処理を施して、導電性を向上させてもよい。
【0037】
図3中「(b)」の図が、本段階に相当する。透明基板13上に、上記(a)の段階で得た混合組成物10を用いて薄膜14を形成するが、図3に示すように、薄膜形成の際に粒状物11の間にCNT12が配列される。
【0038】
透明基板11上に混合組成物の薄膜14を形成する方法として、特に限定されないが、例えば、一般的なコーティング方法または対流整列方法が適用可能である。
【0039】
一般的なコーティング方法の例としては、スピンコーティング、スプレーコーティング、濾過(filtration)、またはバーコーティング(bar coating)などがあり得る。これらの方法の中から、溶液の特性と使用用途に応じて適当な方法を選定することができる。
【0040】
対流整列方法は、様々な方法で行われ得る。例えば、図3に示すように、透明基板13を用いる整列方法を採用してもよい。具体的にいえば、まず、互いに所定の間隔をおいて対面(対向)している第1の透明基板(図3の「(b)」において左側)と第2の透明基板(図3の「(b)」において右側)との間に、粒状物11とCNT12との混合組成物10を注入し、配置させる。2枚の基板が対向するように配置される際の「所定の間隔」は、0.05〜3mmであることが好ましく、0.1〜1mmであることがより好ましい。
【0041】
その後、暖かい空気15を吹き込んで徐々に溶媒を蒸発させながら、前記第1の透明基板を前記第2の透明基板に対して平行移動させると、粒状物11が透明基板13上に配列される。より具体的にいえば、粒状物11とCNT12とが配列した透明基板13の端部にメニスカス(meniscus)が生ずるように粒状物11とCNT12とが誘導され、これらが同時にメニスカスに沿って移動しながら配列されるように誘導されることにより、混合組成物10の薄膜14を形成する。
【0042】
対流整列方法やその条件は、例えば、文献「ADVANCED FUNCTIONAL MATERIAL 2005,15,1329〜1335(Mun Ho Kim,Sang Hyuk In,0 0k Park)」に記載の内容を参考することによって、本発明に採用されうる。なお、本明細書において、第1の透明基板を単に「第1基板」といい、第2の透明基板を単に「第2基板」という場合がある。
【0043】
透明基板13は、後工程での薄膜形成におけるコンタミネーション濃度を低減させる等の目的で、あらかじめ表面処理しておいてもよい。前記表面処理の方法としては、例えばOプラズマ処理などの公知の方法を用いることができる。Oプラズマ処理を行う際の処理時間は、0.5〜60分間程度であることが好ましい。
【0044】
また、本段階は、ナノ粒子を混合組成物10に添加する操作を含んでもよい。すなわち、本段階では、混合組成物10にナノ粒子を使用可能である。添加されたナノ粒子は、粒状物11同士の間の引力を増加させるため、粒状物11の結晶化度を増大させて、粒状物11の均一性および配列性を向上させることができる。かかる操作に起因して、CNTパターンの透明電極の光透過度の更なる向上が可能となる。
【0045】
ナノ粒子の材料は、特に限定されることはないが、添加されたナノ粒子が粒状物11同士の間でブリッジを形成し易いため、電気伝導度の高い金属であることが好ましい。前記ナノ粒子が金属ナノ粒子である場合、CNTの薄膜16の電気伝導度を有意に増大させることができる。
【0046】
CNTの薄膜16を形成する段階の後、CNT14の密度を大きくすることによってCNTパターンの透明電極の導電性を向上させるために、透明基板13においてCNTの薄膜16側に、CNTの組成物を用いて1回以上成膜する段階をさらに含んでもよい。ここで、「CNTの組成物」とは、CNT12と溶媒とを混合してなる組成物を意味する。前記溶媒は、コロイド(粒状物11)を溶解させることなくCNT12と混合しうる溶媒であれば、特に制限されることはない。例えば、水、エタノール、メタノールなどが使用可能である。
【0047】
CNTの組成物を用いて成膜する方法として、混合組成物の薄膜14を形成する場合と同様に、上述した一般的なコーティング方法または対流整列方法が適用可能である。
【0048】
(c)混合組成物の薄膜14から粒状物11を除去し、CNT12を残して、網目状の、CNTの薄膜16を形成する段階
最後に、透明基板13上に存在する、粒状物11同士の間にCNT12が形成されてなる混合組成物の薄膜14中の粒状物11を除去し、CNT12を残して、光透過度が向上したCNTの薄膜16であって網目状の薄膜を形成する。
【0049】
混合組成物の薄膜14から粒状物11を除去する段階では、溶媒または溶液を用いた処理方法、その他粒状物11を除去することが可能な任意の方法を利用可能である。溶媒または溶液を用いた処理方法としては、例えば有機溶媒処理またはpH調節処理が挙げられる。その他の方法として、例えば、熱処理またはプラズマ処理によっても粒状物11を除去することができる。
【0050】
上記した溶媒または溶液を用いた処理方法は、混合組成物の薄膜14を使用する溶媒または溶液に応じて、適当な時間浸漬すると、粒状物11が除去される。有機溶媒により粒状物11を除去する際には、トルエン、シクロヘキサン、ベンゼン及びクロロホルムよりなる群から選ばれる1種以上が使用可能である。一方、前記pH調節処理のうち、酸性溶液により粒状物11を除去する際には、フッ酸、酢酸及びリン酸よりなる群から選ばれる1種以上が使用可能である。前記pH調節処理のうち、塩基性溶液により粒状物11を除去する際には、粒状物11を溶解させるという観点より、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムよりなる群から選ばれる1種以上が使用可能である。
【0051】
プラズマ処理による粒状物除去の際には、プラズマ源としてOを使用することができ、200〜800Wの範囲で使用可能であり、1〜5分間で処理することができる。例えば、500Wのプラズマソースを使用する場合、約1分間処理すれば十分である。
【0052】
熱処理によって粒状物11を除去する場合には、CNT12が破壊されずに粒状物11のみが除去されるように、好ましくは550℃以下、より好ましくは50〜200℃で熱処理を行って、粒状物11のみを選択的に除去する。
【0053】
混合組成物の薄膜14から粒状物11が除去されると、CNT12のみが残り、図3に示すようなCNTの薄膜16が形成される。なお、図3中、最も右側に示すCNTの薄膜16の図は、上記した図2に相当する。
【0054】
[第4態様]
本発明の第4態様は、上記したCNTの透明電極の製造方法のうち、上記第3態様とは異なる製造方法に関する。本態様による製造方法は、(a)透明基板上に粒状物を配列して薄膜を形成する段階と、(b)前記粒状物の薄膜中にカーボンナノチューブの組成物を注入し、混合組成物を生成して、カーボンナノチューブの組成物が注入された薄膜を形成する段階と、(c)前記カーボンナノチューブの組成物が注入された薄膜から前記粒状物を除去し、カーボンナノチューブを残して、カーボンナノチューブの網目状薄膜を形成する段階とを含む。
【0055】
本態様によるCNTパターンの透明電極の製造方法は、概略的にいえば、粒状物を配列する段階、CNTの組成物を注入する段階、及び前記粒状物を除去する段階を含み、かかる製造方法は、従来の製造方法とは明白に異なるものである。かような相違点に起因して、本態様による製造方法により得られるCNTパターンの透明電極は、上記第1態様で述べたような、従来のCNTパターンの透明電極では到底得られない種々の特徴を発揮しうる。各段階で使用される材料のうち、CNTパターンの透明電極に使用される材料及び粒状物などは、上述の説明と同一である。図4は、本態様に係るCNTパターンの透明電極の製造方法を示す概略的な工程図である。以下、図4を参照して、前記製造方法における各段階について、詳細に説明する。
【0056】
(a)透明基板21上に粒状物22を配列して薄膜24を形成する段階
本態様に係るCNTパターンの透明電極の製造の際には、まず、透明基板21上に粒状物22を配列させて、粒状物22が配列された薄膜24(以下、単に「粒状物の薄膜24」ともいう)を形成する。粒状物22の薄膜形成方法としては、一般的なコーティング方法または対流整列方法が適用可能である。
【0057】
一般なコーティング方法の例としては、スピンコーティング、スプレーコーティング、濾過、またはバーコーティングなどがあり得る。これらの方法の中から、溶液の特性と使用用途に応じて適当な方法を選択して適用可能である。その際、使用可能な溶媒は、コロイド(粒状物22)を溶解させることなく、粒状物22を混合しうる溶媒であれば特に限定されない。例えば、水、エタノール、メタノールなどが挙げられる。
【0058】
対流整列方法は、特に限定されないが、上記図3に示した基板を用いた整列方法が適用可能である。具体的にいえば、互いに所定の間隔をおいて対面(対向)している第1基板と第2基板との間に、粒状物22を添加し、配置させる。その後、暖かい空気を吹き込んで徐々に溶媒を蒸発させながら、第1基板を平行移動させると、粒状物22が基板上に配列される。
【0059】
その際、透明基板21はあらかじめ表面処理して使用してもよい。かかる表面処理の方法としては、特に限定されることはないが、例えば、Oプラズマ処理など公知の方法が適用可能である。詳細については上記第3態様と同様である。
【0060】
粒状物22の薄膜24が形成される際、すなわち次工程へ進む前に、粒状物22同士が凝集し合うことを防止するために分散剤で処理してもよい。前記分散剤は、特に限定されないが、CNTパターンの透明電極の電気伝導性を向上させるために導電性分散剤であることが好ましい。導電性分散剤の例については、上述の通りである。
【0061】
また、粒状物22の薄膜24を形成する段階において、ナノ粒子をさらに添加してもよい。添加されたナノ粒子は、粒状物22同士の間の引力を増加させるため、粒状物22の結晶化度を増大させて、粒状物22の均一性及び配列性を向上させることができる。これにより、CNTパターンの透明電極の光透過度の更なる向上が可能となる。
【0062】
ナノ粒子の材料は、特に限定されないが、添加されたナノ粒子が粒状物22同士の間でブリッジを形成し易いため、電気伝導度の高い金属であることが好ましい。前記ナノ粒子が金属ナノ粒子である場合、CNTの薄膜26の電気伝導度を有意に増大させることができる。
【0063】
(b)粒状物22の薄膜24中にCNT23の組成物を注入し、混合組成物を生成して、CNTの組成物が注入された薄膜25を形成する段階
続いて、粒状物22の薄膜24にCNT23の組成物を注入し、混合組成物を生成する。ここで、「CNT23の組成物」とは、CNT23を混合しうる溶媒にCNT23を加えて混合してなる組成物を意味する。したがって、前記溶媒は、コロイド(粒状物22)を溶解させることなくCNT23と混合しうる溶媒であれば、特に限定されることはない。例えば、水、エタノール、メタノールなどが挙げられる。粒状物22の薄膜24に注入されるCNT23の組成物の量は、本発明によるCNTパターンの透明電極の電気伝導度を向上できるように調節することが好ましい。「混合組成物」については上述の通りである。
【0064】
また、注入方法は、特に限定されることなく、公知の方法であればいずれも適用可能である。例えば、図4に示すように、フラスコなどを用いて、CNT23の組成物を粒状物22の薄膜24上に注ぎ込み、その後、該薄膜を乾燥させることにより、CNT23を注入することができる。一層優れた均一性を確保するためには、粒状物22の薄膜24の一端部をCNT23の溶液に浸漬して、毛細管力によってCNT23を粒状物22同士の間に含浸させることが好ましい。
【0065】
CNT23の組成物が注入された薄膜25を形成する段階の間、または前記段階の後、粒状物22をエッチングすることをさらに含むことが好ましい。前記エッチングにより、粒状物22の薄膜24を形成した後、CNT23の組成物の注入の際またはその後に、CNT23の注入量を高めて、CNTパターンの透明電極の電気伝導度を一層高めることができる。前記エッチングの方法は特に限定されないが、例えば、イオンエッチングまたはプラズマエッチングが適用可能である。
【0066】
(c)CNT23の組成物が注入された薄膜25から粒状物22を除去し、CNT23を残して、CNT23の薄膜26(網目状構造を有する)を形成する段階
最後に、CNT23組成物が注入された粒状物22の薄膜から粒状物22を除去し、CNT23のみを残すことにより、網目状構造を有するような、CNT23の薄膜26を形成する。前記粒状物22を除去する方法は特に限定されることはない。溶媒または溶液を用いた処理方法、その他粒状物22を除去することが可能な任意の方法が挙げられる。溶媒または溶液を用いた処理方法としては、例えば有機溶媒処理またはpH調節処理が挙げられる。その他の方法として、例えば、熱処理またはプラズマ処理によっても粒状物22を除去することができる。
【0067】
溶液を用いた粒状物22の除去方法は、溶液中にCNT23の組成物が注入された粒状物22の薄膜(25)を、各種溶媒に応じて適当な時間中浸しておくことにより、粒状物22が除去される。有機溶媒で粒状物22を除去する場合には、例えば、トルエン、シクロヘキサン、ベンゼン及びクロロホルムよりなる群から選ばれる1種以上の有機溶媒が使用可能である。一方、前記pH調節処理のうち、酸性溶液で粒状物22を除去する場合には、フッ酸、酢酸及びリン酸よりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸性溶液が使用可能である。前記pH調節処理のうち、塩基性溶液で粒状物22を除去する場合には、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムよりなる群から選ばれる1種以上が使用可能である。
【0068】
熱処理で粒状物22を除去する場合には、550℃以下で加熱することが好ましく、50〜200℃で加熱することがより好ましい。上記した範囲内の場合、CNT23が破壊されることなく粒状物22のみが除去されうる。
【0069】
CNT23の組成物が注入された粒状物22の薄膜(25)から粒状物22が除去されると、CNT23のみが残り、図4に示すように、網目状構造を有する、CNT23の薄膜26が形成される。
【0070】
CNT23の薄膜26を形成した後、前記基板においてCNT23の薄膜側に、CNT23の組成物を用いて1回以上成膜する段階をさらに含んでもよい。これにより、CNT23の密度を増大させて電気伝導性を向上させることができる。成膜の方法は、特に限定されることはないが、上述した一般的なコーティング方法または対流整列方法が適用可能である。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を挙げて本発明についてより詳細に説明する。これらは本発明の一例を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
【0072】
<実施例1:シリカナノ粒子/CNTの混合組成物を用いた、網目状構造を有する、CNT電極の形成>
導電性分散剤として水溶性ポリチオフェン(American Dye Source社製のADS12PQT)20mgを水20mlに入れて溶解した後、この溶液に単層CNT(Iljin社、アーク放電法で製造)20mgを添加して超音波分散機で10時間分散させた後、10,000rpmで10分間遠心分離を行ってCNTの組成物を調製した。
【0073】
蒸留水に平均粒径500nmのシリカナノ粒子(Duke Scientific)を分散させた1質量%のシリカナノ粒子分散液と、調製された0.05質量%のCNTの組成物とを混合して混合組成物を製造した。その後、2枚の透明ポリエステル基板(厚さ0.17mm)をOプラズマで10分間処理して透明基板を準備した。
【0074】
こうして処理された透明基板(透明ポリエステル基板)を2枚準備して、互いに0.1mmの間隔で対向するように配置した後、2枚の透明基板の間に、得られた混合組成物を0.8mm/分の速度で注入し、その後暖かい空気を吹き込んで溶媒を徐々に蒸発させながら1枚の基板を平行移動させ、粒状物とCNTとが配列される透明基板の端部にメニスカス(meniscus)が生ずるように粒状物とCNTとが誘導され、これらが同時にメニスカスに沿って移動しながら配列されるように誘導することにより、混合組成物の薄膜を形成した。このような透明基板上に形成された混合組成物の薄膜のSEM写真を図5aに示す。図5aより、上記製造方法によれば、粒状物同士の間にCNTがほぼ均一に配列して、混合組成物の薄膜が形成されることを確認した。
【0075】
続いて、得られた基板上の混合組成物の薄膜を2.5%フッ酸(HF)溶液に1分間浸漬して、上記混合組成物の薄膜上のシリカナノ粒子を除去し、CNTの網目状薄膜が形成されたCNT電極(透明電極)を製造した。前記CNT電極の光透過度及び表面抵抗値を測定して、その結果を下記表1に示し、前記透明電極(CNT電極)の表面形状を撮影したSEM写真を図5bに示した。図5bより、上記製造方法によれば、混合組成物の薄膜から粒状物が除去されると、CNTのみが残って、CNTの網目状薄膜が形成されることを確認した。なお、上記光透過度及び表面抵抗値の測定方法・条件については、後述する。
【0076】
<実施例2:CNTの組成物の追加的コーティング>
実施例1で得られた基板上の混合組成物の薄膜から、シリカナノ粒子を除去する段階を実行する前に、混合組成物の薄膜上に対流整列方法を用いてCNTの組成物(脱イオン水の水溶液中での濃度:0.25質量%)を更に2回被覆して成膜した以外は、実施例1と同様にしてCNT電極(透明電極)を製造した。製造されたCNT電極の光透過度及び表面抵抗値を測定し、その結果を下記表1に示した。なお、上記光透過度及び表面抵抗値の測定方法・条件については、後述する。
【0077】
<比較例1>
導電性分散剤(American Dye Source社製のADS12PQT)20mgを水20mlに入れて溶解した後、得られた溶液に単層CNT(Iljin社、アーク放電法で製造)20mgを添加して超音波分散機で10時間分散させた後、10,000rpmで10分間遠心分離を行ってCNTの組成物を形成した。続いて、形成されたCNTの組成物を濾過してCNTの薄膜を得た後、2枚の透明ポリエステル基板(厚さ0.17mm)上に塗布し、これを60℃で2時間乾燥させてCNT電極を得た。
【0078】
得られたCNT電極(透明電極)の光透過度及び表面抵抗値を測定して下記表1に示し、透明電極(CNT電極)の表面形状を撮影したSEM写真を図6に示した。図6より、本製造方法によれば、粒状物が存在しないことに起因して、CNTが均一に配列していない薄膜が形成されることを確認した。なお、上記光透過度及び表面抵抗値の測定方法・条件については、後述する。
【0079】
【表1】

【0080】
[透明電極の物性評価方法]
(1)光透過度:光透過度はUV−Visible Spectrophotometerによって測定し、入射光の可視光透過度(率)を「%T」の単位で表示した。
【0081】
(2)表面抵抗(Sheet Resistance):4ポイントプローブ(four−point probe)方法によって測定した。
【0082】
以上述べたように、実施例(本発明)に係るCNT透明電極は、粒状物を使用せずに製造した、比較例によるCNT透明電極と比較して、ほぼ同等の光透過度を有する一方で、表面抵抗値を著しく減少させた。すなわち、本発明のCNT透明電極は、電気伝導度(導電性)に極めて優れるため、イメージセンサー、太陽電池、液晶ディスプレイなどの様々なディスプレイの透明電極として、優れた特性を提供できることを実証した。
【0083】
実施例1の結果を示す図5bと、比較例1の結果を示す図6とを比較すると、図5bでは粒状物が存在していた結果、得られたCNT薄膜は、緻密な網目状構造を形成しており、CNTが均一に存在している。その結果、前記CNT薄膜の表面抵抗を有意に低下させることができる。これに対し、図6では、粒状物を使用することなく、CNTを基板上に塗布した結果、網目状構造が全く形成されないことが分かる。このように、本発明による「粒状物」が存在してはじめて、CNT薄膜中でCNTが網目状構造を形成することを本発明者は見出したのである。なお、上記した結果より、本発明で用いられうる分散剤に含まれる物質は、前記「粒状物」の代替物になり得ないことを確認した。
【0084】
以上、幾つかの例を挙げつつ本発明を具体的に説明したが、これらの例は本発明の保護範囲の画定に何ら影響を与えることはない。すなわち、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で様々な変形などを加え得るので、それらの変形された態様についても本発明の保護範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本発明の一態様に係るCNTパターンの透明電極の概略的な断面図である。
【図2】本発明の一態様に係るCNTパターンの透明電極の平面模式図である。
【図3】本発明の一態様に係るCNTパターンの透明電極の製造方法を示す概略的な工程図である。
【図4】本発明の他の態様に係るCNTパターンの透明電極の製造方法を示す概略的な工程図である。
【図5a】実施例1で製造された混合組成物の薄膜のSEM写真を示す図である。
【図5b】実施例1において粒状物の除去後に得られたCNTパターンの透明電極のSEM写真を示す図である。
【図6】比較例1で得られたCNTパターンの透明電極のSEM写真を示す図である。
【符号の説明】
【0086】
1 透明電極、
2、13、21 透明基板、
3、16、26 CNTの薄膜、
10 混合組成物、
11、22 粒状物、
12、23 CNT、
14 混合組成物の薄膜、
15 暖かい空気、
24 粒状物の薄膜、
25 CNTの組成物が注入された薄膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、
前記透明基板上に形成された、カーボンナノチューブの網目状薄膜と、を含む、カーボンナノチューブパターンの透明電極。
【請求項2】
前記カーボンナノチューブの網目状薄膜は、導電性ナノ粒子を含む、請求項1に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極。
【請求項3】
前記カーボンナノチューブの網目状薄膜は、金属粒子を含む、請求項1または2に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極。
【請求項4】
前記透明基板は、ガラス基板若しくは石英基板から選ばれる透明無機基板、またはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、アクリル樹脂、オレフィンマレイミド共重合体及びノルボルネン系樹脂よりなる群から選ばれる1種以上の材料で構成されるフレキシブル透明基板である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極。
【請求項5】
前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、及びロープ状カーボンナノチューブよりなる群から選ばれる1種以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極。
【請求項6】
前記単層カーボンナノチューブは、金属性カーボンナノチューブである、請求項5に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極。
【請求項7】
前記カーボンナノチューブの網目状薄膜は、分散剤をさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極。
【請求項8】
前記分散剤は、導電性分散剤である、請求項7に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極を含む、電子素子。
【請求項10】
イメージセンサー、太陽電池、液晶ディスプレイ、有機電界発光ディスプレイ及びタッチスクリーンパネルよりなる群から選ばれる、請求項9に記載の電子素子。
【請求項11】
(a)粒状物とカーボンナノチューブとを混合して混合組成物を形成する段階と、
(b)前記混合組成物を用いて、透明基板上に混合組成物の薄膜を形成する段階と、
(c)前記混合組成物の薄膜から前記粒状物を除去し、カーボンナノチューブを残して、カーボンナノチューブの網目状薄膜を形成する段階と、
を含む、カーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項12】
(a)透明基板上に粒状物を配列して薄膜を形成する段階と、
(b)前記粒状物の薄膜中にカーボンナノチューブの組成物を注入し、混合組成物を生成して、カーボンナノチューブの組成物が注入された薄膜を形成する段階と、
(c)前記カーボンナノチューブの組成物が注入された薄膜から前記粒状物を除去し、カーボンナノチューブを残して、カーボンナノチューブの網目状薄膜を形成する段階と、
を含む、カーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項13】
前記粒状物は、無機コロイド粒子または有機コロイド粒子である、請求項11または12に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項14】
前記有機コロイド粒子は、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリリジン及びポリジビニルベンゼンよりなる群から選ばれる二種以上であり、前記無機コロイド粒子は、シリカ、チタニア、銀、金、及びこれらの組み合わせ、並びにこれらの合金よりなる群から選ばれる、請求項13に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項15】
前記混合組成物中、前記粒状物と前記カーボンナノチューブとの混合比は、質量比で1:5〜1:30である、請求項11〜14のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項16】
前記混合組成物の薄膜または前記カーボンナノチューブの組成物が注入された薄膜のいずれかを形成する前に、カーボンナノチューブを分散剤で処理する段階をさらに含む、請求項11〜15のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項17】
前記分散剤は、導電性分散剤である、請求項16に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項18】
前記混合組成物の薄膜を形成する段階または前記粒状物の薄膜を形成する段階は、導電性ナノ粒子を添加することを含む、請求項11〜17のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項19】
前記導電性ナノ粒子は、金属ナノ粒子である、請求項18に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項20】
前記カーボンナノチューブの薄膜を形成する段階の後、前記基板において前記カーボンナノチューブの薄膜側に、前記カーボンナノチューブの組成物を用いて1回以上成膜する段階をさらに含む、請求項11〜19のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項21】
前記粒状物の平均粒径は、50nm〜10μmである、請求項11〜20のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項22】
前記粒状物は、複数の粒径のものを含む、請求項11〜21のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項23】
前記透明基板は、ガラス基板若しくは石英基板から選ばれる透明無機基板、またはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、アクリル樹脂、オレフィンマレイミド共重合体及びノルボルネン系樹脂よりなる群から選ばれる1種以上の材料で構成されるフレキシブル透明基板である、請求項11〜22のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項24】
前記カーボンナノチューブは、単層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、及びロープ状カーボンナノチューブよりなる群から選ばれる1種以上である、請求項11〜23のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項25】
前記単層カーボンナノチューブは、金属性カーボンナノチューブである、請求項24に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項26】
前記薄膜を形成する段階は、スピンコーティング、スプレーコーティング、濾過、バーコーティング、または対流整列方法(convective arrangement)によって行われる、請求項11〜25のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項27】
前記対流整列方法は、互いに所定の間隔をおいて対面している第1基板と第2基板との間に、粒状物とカーボンナノチューブとの混合組成物を配置させた後、前記第1基板を前記第2基板に対して平行移動させることを含む、請求項26に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項28】
前記粒状物を除去する段階は、熱処理、有機溶媒処理、pH調節処理、またはプラズマ処理によって行われる、請求項11〜27のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項29】
前記有機溶媒処理で使用される有機溶媒は、トルエン、シクロヘキサン、ベンゼン及びクロロホルムよりなる群から選ばれる1種以上である、請求項28に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項30】
前記pH調節処理のうち、酸性溶液処理で使用される酸は、フッ酸、酢酸及びリン酸よりなる群から選ばれる1種以上であり、前記pH調節処理のうち、塩基性溶液処理で使用される塩基は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムよりなる群から選ばれる1種以上である、請求項28又は29に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項31】
前記カーボンナノチューブの組成物が注入された薄膜を形成する段階の間、または前記段階の後、前記粒状物をエッチングすることをさらに含む、請求項12〜30のいずれか1項に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。
【請求項32】
前記エッチングは、イオンエッチングまたはプラズマエッチングである、請求項31に記載のカーボンナノチューブパターンの透明電極の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−177165(P2008−177165A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7353(P2008−7353)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG ELECTRONICS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do 442−742(KR)
【Fターム(参考)】