説明

カーボンナノファイバー、およびカーボンナノファイバー分散液

【課題】 高い導電性を有し、分散剤を使用しなくても、分散媒への分散性および分散安定性が良いカーボンナノファイバー、ならびにこのカーボンナノファイバーを用いる分散液を提供することを目的とする。
【解決手段】 カーボンナノファイバーを、内径:1cmのカラムに65体積%の充填率で充填したとき、20秒後の〔(吸水量)/時間〕が、0.03〜0.20g/秒であることを特徴とする、カーボンナノファイバーである。また、このカーボンナノファイバーと、分散媒とを含む、カーボンナノファイバー分散液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノファイバー、およびカーボンナノファイバー分散液に関する。より詳しくは、溶媒に対する分散性に優れたカーボンナノファイバー、およびこのカーボンナノファイバーを含む分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、カーボンナノファイバーを代表とした各種のカーボンナノ材料が開発されており、カーボンナノファイバーは、例えば、プラスチック、セラミックス、塗料等のフィラーとして好適であり、また、各種成形材料、部品、電池やキャパシター等の各種分野の導電性付与材や補強剤等に広く使用されている。
【0003】
しかしながら、これらのカーボンナノ材料は、一般に、製造されたままの状態では、凝集体を形成しており、十分に分散させた状態にすることが難しい。このため、製品にした際に特性を十分に発揮できない、という問題がある。
【0004】
従来、カーボンナノファイバーの分散性を高める手段として、例えば、環内に、アミド基またはエステル基を含有するラクタム化合物を主体とする分散剤(特許文献1)等が知られている。
【0005】
しかしながら、分散剤がカーボンナノファイバーの表面に存在すると、カーボンナノファイバーの導電性が低下するおそれがある。また、特に、電池やキャパシターの分野では、分散剤の分解が問題になるため、分散剤を用いないカーボンナノファイバー分散液が求められている。
【0006】
一方、分散剤を用いることなく、カーボンナノチューブを分散させる分散液として、カーボンナノチューブ表面に、COOR基(式中、Rは、水素または炭素数1もしくは2アルキル基等である)およびOR基(式中、Rは、炭素数1〜4のアルキル基である)が結合した、カーボンナノチューブ化合物を含むカーボンナノチューブ分散液(特許文献2)が知られている。
【0007】
しかしながら、このカーボンナノチューブ化合物は、製造プロセスが煩雑であり、高コストである、という問題がある。
【0008】
また、カーボンナノファイバーの分散液の製造の一例として、カーボンナノファイバーを硝酸と硫酸の混合液を用いて表面酸化処理を行う方法も開示されている(特許文献3の第0035段落)。
【0009】
しかしながら、この表面酸化処理の方法で得られたカーボンナノファイバーは、分散媒への分散性が十分ではない場合がある、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2006−327878号公報
【特許文献2】特開2008−81384号公報
【特許文献3】特開2009−272041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来の上記問題および要求を解決したものであり、高い導電性を有し、分散剤を使用しなくても、分散媒への分散性および分散安定性が良いカーボンナノファイバー、ならびにこのカーボンナノファイバーを用いる分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、以下に示す構成によって上記課題を解決するカーボンナノファイバー、およびカーボンナノファイバー分散液に関する。
(1)カーボンナノファイバーを、内径:1cmのカラムに65体積%の充填率で充填したとき、20秒後の〔(吸水量)/時間〕が、0.03〜0.20g/秒であることを特徴とする、カーボンナノファイバー。
(2)上記(1)のカーボンナノファイバーと、分散媒とを含有する、カーボンナノファイバー分散液。
【発明の効果】
【0013】
本発明(1)によれば、高い導電性を有し、分散媒への分散性および分散安定性が良いカーボンナノファイバーが提供される。また、本発明(2)によれば、分散性および分散安定性が良いカーボンナノファイバー分散液が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】カラムの構造を示す断面図である。
【図2】高精度表面張力計の構造を模式的に示す断面図である。
【図3】高精度表面張力計での検査状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。なお、%は特に示さない限り、また数値固有の場合を除いて質量%である。
【0016】
〔カーボンナノファイバー〕
本発明のカーボンナノファイバーは、カーボンナノファイバーを、内径:1cmのカラムに65体積%の充填率で充填したとき、20秒後の〔(吸水量)/時間〕が、0.03〜0.20g/秒であることを特徴とする。
【0017】
カーボンナノファイバーは、直径が1〜1000nmで、アスペクト比が5以上のものをいい、直径が1〜100nmで、アスペクト比が10〜1000であると好ましい。また、カーボンナノファイバーは、X線回折測定によるグラファイトの[002]面の面間隔が、0.35nm以下であると好ましい。上記直径とアスペクト比のカーボンナノファイバーは、溶媒中で均一に分散し易く、分散液を乾燥して形成される塗膜中で、相互に十分な接触点を形成することができる。X線回折測定によるグラファイト層の[002]面の面間隔が上記範囲内であるカーボンナノファイバーは、結晶性が高いため電気抵抗が小さい。さらに、カーボンナノファイバーの圧密体の体積抵抗値が1.0Ω・cm以下であると、良好な導電性を発揮することができる。
【0018】
ここで、直径は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して求めた平均直径である(n=50)。アスペクト比は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して、(長さ/直径)を計算して求める(n=50)。X線回折測定は、CuKα線により行う。カーボンナノファイバーの圧密体の体積抵抗値は、試料粉末を円筒ドーナツ状のPP製絶縁ジグに入れ、開口部の両端を円筒の真鍮電極によって100kgf/cmで加圧し、真鍮電極間の抵抗値をデジタルマルチメーターによって測定し、この測定値から算出する。
【0019】
カーボンナノファイバーは、気相成長法で作製され、触媒が、Fe、Ni、Co、Mn、Cu、Mg、AlおよびCaの酸化物からなる群より選ばれる1種または2種以上の系であると、好ましい直径、アスペクト比、グラファイト層の[002]面の面間隔のカーボンナノファイバーを得られ易いので、好ましい。
【0020】
なお、一酸化炭素を主な原料ガスとした気相成長法によって製造されたカーボンナノファイバーを用いると、本発明の効果をより発揮することができる。この一酸化炭素を主な原料ガスとした気相成長法によって製造されたカーボンナノファイバーは、分散性に優れ、かつ透明性も優れている。また、一酸化炭素を主な原料ガスとした気相成長法によって製造されたカーボンナノファイバーは、トルエン着色透過量を95%以上にすることができ、カーボンナノファイバーの透光性を向上させることができる。ここで、トルエン着色透過量の測定は、JISK6218−4「ゴム用カーボンブラック−付随的特性−第4部:トルエン着色透過度の求め方」に準拠して行う。
【0021】
また、カーボンナノファイバーは、内径:1cmのカラムに65体積%の充填率で充填したとき、20秒後の〔(吸水量)/時間〕が、0.03〜0.20g/秒である。この〔(吸水量)/時間〕は、カーボンナノファイバーへの水の浸透性を表す。0.03g/秒未満であると、カーボンナノファイバーの溶媒への分散性が十分ではなく、一方、0.20g/秒を超えると、カーボンナノファイバーの結晶性が低下しすぎ、導電性が低下してしまう。
【0022】
粉体への液体の浸透過程は、Washburnの数式(1):
【0023】
【数1】

【0024】
で表現されることが知られている。式中、lは、液体の浸透高さ、tは時間、rは充填粉体の毛管半径、γは液体の表面張力、ηは液体の粘度、θは粉体と液体の接触角を示す。ここで、数式(1)の右辺のr、γ、η、θは、粉体と液体の種類により特定される定数になるので、左辺の(l/t)も一定値を示す。この数式(1)は、浸透高さ:lを吸水量:Wに変換すると、以下の数式(2):
【0025】
【数2】

【0026】
となる。式中、εは粉体の空隙率、Sはカラムの断面積、ρは液体の密度を示す。数式(1)のときと同じように、数式(2)の右辺のr、γ、η、θ、ε、S、ρは、定数になるので、左辺の(W/t)、すわなち〔(吸水量)/時間〕も、原則として、一定値を示す。このように、〔(吸水量)/時間〕は、原則として一定値になるが、粉体(カーボンナノファイバー)に、液体(水)が十分浸透すると、吸水量が飽和し、〔(吸水量)/時間〕が低下するため、本発明においては20秒後の〔(吸水量)/時間〕を測定する。
【0027】
この〔(吸水量)/時間〕は、協和界面科学製高精度表面張力計(型名:DY−700)で測定する。カラムは、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)製で、カーボンナノファイバー充填部は、円筒形で、内径が1cm、長さが20cmである。まず、カラムに、2gのカーボンナノファイバーを充填した後、プレスし、カーボンナノファイバーを充填率:65体積%にする。ここで、カラムの下部には、水の浸透が可能な開口を形成し、この開口上にはガラス繊維状の濾紙を載置し、カーボンナノファイバーが脱落しないようにする。一方、純水を入れた純水容器を、カラムの直下に載置する。次に、カラムを鉛直に保持した状態で、カラム下端の濾紙を介してカーボンナノファイバーと、純水容器の上部の水を接触させ、カーボンナノファイバーの重量変化を測定し、20秒後の吸水量(単位:g)の値から〔(吸水量)/時間〕を求める。ここで、水には、純水を使用する。
【0028】
図1に、カラムの構造を示す断面図を示す。図1に示すように、カラム10は、円筒状の筒部11と、筒部11の下端に設置されるガラス繊維状の濾紙12と、濾紙12を保持するストッパー13を備えており、筒部11の内部にカーボンナノファイバー15を充填する。カーボンナノファイバー15を充填した後、カラム11の上部にカバー14をかぶせる。ストッパー13は、筒部12の下端部で、濾紙12の外周を保持する構造となっている。純水は、濾紙12を介してカーボンナノファイバー15に浸透していく。ガラス繊維状の濾紙12を用いることで、濾紙12を液面に浸漬させた際の吸液が極めて素早くなり、この濾紙12の下面に発生する気泡を低減させることができる。なお、カーボンナノファイバー15には予めプレスをして、カーボンナノファイバー15の充填率(単位:体積%)を測定する。
【0029】
図2に、高精度表面張力計の構造を模式的に示す断面図を示す。この高精度表面張力計100は、カラム10と、このカラム10の質量変化を計測可能な質量計測部110と、カラム10の下側に配置される純水貯留部120を備える。純水貯留部120は、純水容器121と、純水122からなる。
【0030】
図3に、高精度表面張力計での検査状態を模式的に示す断面図を示す。図3に示すように、カラム10の濾紙12を接液させると、純水122は、破線矢印の方向に、カラム10内のカーボンナノファイバー15に浸透していく。純水122が浸透するとカラム10の重量が増加するので、重量計測部110によりこの重量変化を計測する。この結果、粉体の浸透速度を検出することが可能となる。既に述べたWashburn式(数式1、2)を用いれば、粉体の接触角を算出することができる。
【0031】
〔(吸水量)/時間〕が0.03〜0.2g/秒のカーボンナノファイバーは、例えば、以下のようにして製造することができる。原料となるカーボンナノファイバー(以下、原料ファイバーという)は、特に限定されないが、上述のように、一酸化炭素を主な原料ガスとした気相成長法によって製造されたカーボンナノファイバーを用いると、好ましい。原料ファイバーを、コロナ放電した後、硫黄含有強酸と酸化剤を含む混酸で酸化処理すると、原料ファイバーの表面の親水化が促進することができる。
【0032】
まず、原料ファイバーにコロナ放電処理を行う。コロナ放電を酸化処理前に行うことで、原料ファイバー表面が親水化し、さらに後工程の混酸での酸化処理によって親水化が促進される。詳細には、コロナ放電処理では、放電自体の物理的な表面改質と極性官能基生成による化学的な表面改質の相乗効果により著しい濡れ性の向上が得られる。物理的表面改質では、原料ファイバー表面の結晶性が低い無定形炭素等を除去し、化学的表面改質では、高エネルギーの電子やイオンが衝突して、原料ファイバー表面にラジカルやイオンが生成し、これらに周囲のオゾン、酸素、窒素、水分等が反応して、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基等の極性官能基となり、原料ファイバー表面が親水化すると、考えられる。
【0033】
コロナ放電は、30〜300W・分/mであると好ましい。コロナ放電が、30W・分/m未満と弱すぎても十分な濡れ性および分散性が得られず、また、300W・分/mを超えて強すぎても、カーボンナノファイバーの結晶に欠陥を増加させてしまい、カーボンナノファイバーの導電性が低下してしまう。このコロナ放電の好ましい強度は、春日電機製コロナ放電装置(型番:TEC−4X)を使用したときの値である。
【0034】
次に、コロナ放電後の原料ファイバーに、硫黄含有強酸と酸化剤を含む混酸で酸化処理を行う。例えば、原料ファイバーに、硫酸等の硫黄含有強酸と、硝酸等の酸化剤を含む混酸を加えて、スラリーとし、このスラリーを加熱下で攪拌した後、濾過し、残留する酸を洗浄して除去すればよい。この酸化処理によって原料ファイバーの表面にカルボニル基やカルボキシル基あるいはニトロ基などの極性官能基が形成されるので親水化することができる。具体例としては、コロナ放電後の原料ファイバー(ファイバー)を、硝酸(濃度60%)と硫酸(濃度95%以上)の混合液に、ファイバー:硝酸:硫酸=1質量部:5質量部:15質量部の割合で混合し、加熱して表面酸化処理を行う。得られた溶液を濾過し、数回水洗を行って残留する酸を洗い流し、その後、乾燥して粉末化し、カーボンナノファイバーを製造することができる。なお、この酸化処理で、カーボンナノファイバーの触媒の少なくとも一部を除去することができる。
【0035】
〔カーボンナノファイバー分散液〕
本発明のカーボンナノファイバーは、上記カーボンナノファイバーと、分散媒とを含有する。
【0036】
分散媒の種類は限定されず、例えば、水系、アルコール系、ケトン系、エステル系などの溶媒を用いることができる。上記カーボンナノファイバーは、極性溶媒である水への分散性が良好であるので、分散媒としては、極性溶媒が好ましい。また、分散性の観点から、分散媒としては、水、エタノール、イソプロパノール(IPA)、シクロヘキサノン、酢酸エチル、N−メチルピロリドン(NMP)、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトンが、より好ましい。
【0037】
分散媒の含有量は、カーボンナノファイバー分散液:100質量部に対して、50〜99質量部であると、好ましい。この含有量が50質量部以上であればとカーボンナノファイバーを溶媒中に、十分に分散できる。一方、この含有量が99質量部以下であれば、カーボンナノファイバー分散液から形成される塗膜に十分な導電性が得られる。
【0038】
カーボンナノファイバー分散液は、本発明の目的を損なわない範囲で、更に必要に応じ、慣用の各種添加剤を含有させることができる。このような添加剤としては、レベリング剤、粘度調整剤、消泡剤、硬化触媒、酸化防止剤等が挙げられる。
【0039】
カーボンナノファイバー分散液は、上述の成分を、常法により、ペイントシェーカー、ボールミル、サンドミル、セントリミル、三本ロール等によって混合し、カーボンナノファイバー等を分散させ、作製することができる。無論、通常の攪拌操作によって作製することもできる。
【0040】
このカーボンナノファイバー分散液を、基材上に、塗布し、乾燥して、導電性膜を簡便に得ることができる。基材は、当業者に公知のものでよく、特に限定されない。基材としては、プラスチック成形体、ガラス基板等が挙げられる。
【0041】
なお、カーボンナノファイバー分散液は、バインダー成分を含有させて、カーボンナノファイバー組成物として使用することができる。バインダー成分としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、塩ビ−酢ビ樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。
【0042】
バインダー成分の含有量は、カーボンナノファイバー組成物:100質量部に対して、5〜60質量部であると、カーボンナノファイバー組成物の塗工性、密着性の観点から、好ましい。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
〔実施例1〕
《カーボンナノファイバーの製造》
Co、Mg酸化物を触媒にし、一酸化炭素を主な原料ガスとして気相成長法によって合成された平均直径:20nmのカーボンナノファイバー(以下、CNFという)を、原料として使用した。
【0045】
使用したCNFのアスペクト比は、10〜1000であり、X線回折測定によるグラファイトの[002]面の面間隔は、0.339〜0.344nmであり、圧密体の体積抵抗値は、0.06Ω・cmであった。また、一酸化炭素を原料とする場合のトルエン着色透過率は、98〜99%であった。CNFの平均直径は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して求めた(n=50)。アスペクト比は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して、(長さ/直径)を計算して求めた(n=50)。X線回折測定は、CuKα線により行った。トルエン着色透過量の測定は、JISK6218−4「ゴム用カーボンブラック−付随的特性−第4部:トルエン着色透過度の求め方」に準拠して行った。
【0046】
このCNFを、コロナ放電処理した。コロナ放電処理は、春日電機製コロナ放電装置(型番:TEC−4AX)を用い、ガラス基板上に1gのカーボンナノファイバーを高さ(0.5)mm程度に載置し、150W・分/mの強度で行った。
【0047】
次に、コロナ放電後のCNFを、硝酸(濃度60%)と硫酸(濃度95%以上)の混合液に、CNF:硝酸:硫酸=1質量部:5質量部:15質量部の割合で混合し、加熱して表面酸化処理を行った。得られた溶液を濾過し、5回水洗を行って残留する酸を洗い流した。その後、乾燥して粉末化し、カーボンナノファイバーを得た。
【0048】
《CNFの評価》
CNFの評価を行った。まず、〔(吸水量)/時間〕は、協和界面科学製高精度表面張力計(型名:DY−700)で測定した。カラムは、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)製で、カーボンナノファイバー充填部の内径1cmであり、カーボンナノファイバーを充填率65体積%にして、20秒後の吸水量(単位:g)を測定し、これらの値から〔(吸水量)/時間〕を求めた。表1に、結果を示す。
【0049】
次に、CNFの圧密体の体積抵抗値を測定した。表1に、結果を示す。CNFの圧密体の体積抵抗値は、試料粉末を円筒ドーナツ状のPP製絶縁ジグに入れ、開口部の両端を円筒の真鍮電極によって100kgf/cmで加圧し、真鍮電極間の抵抗値をデジタルマルチメーターによって測定し、この測定値から算出した。
【0050】
《CNF分散液の製造》
次に、上記の粉末化したCNF:0.5g(5質量部)と、水:9.5g(95質量部)を、ホモミキサーを用いて混合し、CNF分散液を製造した。
【0051】
《CNF分散液の評価》
製造したCNF分散液の分散度の評価を行った。均一にCNFが分散したCNF分散液ができなかった場合、分散度を「×」にした。次に、均一にCNFが分散したCNF分散液ができたものについて、CNF分散液を、室温で静置し、10日後に目視で、CNFの沈降が確認できない場合を「○」、CNFの沈降が確認できた場合を「△」とした。すなわち、分散度が○の場合は、分散性および分散安定性がよいことを示し、分散度が△の場合は、初期の分散性はよいが、分散安定性が悪いことを示し、分散度が×の場合は、初期の分散性が悪いことを示す。表1に、結果を示す。
【0052】
〔実施例2〜13〕
表1に記載した組成になるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして、CNF、CNF分散液を製造し、評価を行った。なお、実施例9のCを原料とする場合のトルエン着色透過率は、93%であった。表1に、結果を示す。
【0053】
〔比較例1〕
CNFにコロナ放電処理をしなかったこと以外は、実施例1と同様にして、CNF、CNF分散液を作製し、評価を行った。表1に、結果を示す。
【0054】
〔比較例2、3〕
表1に記載した条件で、CNFにコロナ放電処置をしたこと以外は、実施例1と同様にして、CNF、CNF分散液を作製し、評価を行った。表1に、結果を示す。
【0055】
〔比較例4〕
CNFに酸化処理をしなかったこと以外は、実施例1と同様にして、CNF、CNF分散液を作製し、評価を行った。表1に、結果を示す。
【0056】
【表1】

【0057】
表1からわかるように、実施例1〜13の全てで、〔(吸水量)/時間〕が0.03〜0.20g/秒であり、十分に低い体積抵抗値と、良好な分散度、すなわち良好な分散性と分散安定性を示した。これに対して、CNFにコロナ放電処理をしなかった比較例1と、コロナ放電処理が弱すぎた比較例2は、〔(吸水量)/時間〕が低く、分散安定性が悪かった。一方、CNFへのコロナ放電処理が強すぎた比較例3は、〔(吸水量)/時間〕が高く、体積抵抗値が高かった。また、CNFに酸化処理をしなかった比較例4は、〔(吸水量)/時間〕が低く、初期の分散性が悪かった。
【符号の説明】
【0058】
10 カラム
11 筒部
12 濾紙
13 ストッパー
14 カバー
15 カーボンナノファイバー
100 高精度表面張力計
110 質量計測部
120 純水貯留部
121 純水容器
122 純水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノファイバーを、内径:1cmのカラムに65体積%の充填率で充填したとき、20秒後の〔(吸水量)/時間〕が、0.03〜0.2g/秒であることを特徴とする、カーボンナノファイバー。
【請求項2】
請求項1のカーボンナノファイバーと、分散媒とを含有する、カーボンナノファイバー分散液。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−76180(P2013−76180A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215969(P2011−215969)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】