説明

カーボンナノ構造体の製造方法および製造装置

【課題】常温の不活性ガス雰囲気中で、かつ大気圧下でカーボンナノ構造体を製造することができる、新しい原理に基づくカーボンナノ構造体の製造技術を提供する。
【解決手段】ターゲット原料をチャンバー内にセットし、常温の不活性ガス雰囲気中で、かつ、大気圧下で、電子加速器から放出される連続電子ビームをターゲット原料に照射することにより、ターゲット原料を溶融、ガス化させる。ついで、ガス化されたターゲット原料を冷却させることによりグラファイトと触媒金属との共存高温ガスとし、この共存高温ガス状態を一定時間維持した後、冷却することによりカーボンナノ構造体を生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい原理に基づくカーボンナノ構造体の製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、ナノスケールを有し、すぐれた機械的特性、電気的特性や光学的特性などのため、近年、非常に研究開発が進められている物質である。カーボンナノチューブは、一般に、CVD法、アーク放電法、レーザーアブレーション法などで作られている。
【0003】
このような製造方法の中で、たとえば特許文献1には、700〜1200℃にあらかじめ加熱された不活性ガスあるいは水素ガスのジェット雰囲気中で、金属触媒を含んだグラファイトターゲットに加速電圧10kV下のパルス状電子ビームを照射し、カーボンナノチューブを製造する技術が開示されている。チャンバー内の圧力は1〜10mbar(10〜100Pa)に減圧されている。
【0004】
しかしながら、このような従来のカーボンナノチューブの製造方法では、HeやAr、H等の不活性ガスを高温に加熱した雰囲気の下で製造したり、減圧状態として製造したりする必要があった。
【0005】
一方で、カーボンナノチューブは製造方法によっては、それぞれ異なった特有の性質を発現したりするため、新たな物性を発現するカーボンナノチューブの創製法が期待されている。
【0006】
また、カーボンナノチューブと同じカーボンナノ構造体にカーボンナノホーンがあり、アーク放電法等で製造されている。その場合、多数のカーボンナノホーンが頂点を外側に向って集まった毬栗状の集合体として得られることが知られている。このカーボンナノホーンは、先端がホーン状となっており、外壁に金属のナノ粒子が付着されやすく、また、内部にガスや薬剤を取り込みやすく、このような特異な構造なため、実用化が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2005/069700
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑み、不活性ガスを加熱した雰囲気下ではなく常温でしかも大気圧下でカーボンナノチューブ、あるいはカーボンナノチューブとカーボンナノホーンからなるカーボンナノ構造体を製造することができる、新しい原理に基づくカーボンナノ構造体の製造方法および製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は、第1には、グラファイトを母材とし触媒金属を含むターゲット原料をチャンバー内にセットするステップと、大気圧下で、かつ、常温の不活性ガスからなる雰囲気中で、電子加速器から放出される連続電子ビームをターゲット原料に照射することにより、ターゲット原料を溶融、ガス化させるステップと、ガス化されたターゲット原料を所定温度まで冷却させることによりグラファイトと触媒金属との共存高温ガス状態を形成するステップと、該共存高温ガス状態を一定時間維持させた後、さらに冷却させることによりカーボンナノ構造体を生成させるステップを有することを特徴とするカーボンナノ構造体の製造方法を提供する。
【0010】
第2には、グラファイトを母材とし触媒金属を含むターゲット原料をチャンバー内にセットするステップと、大気圧下で、かつ、常温の不活性ガスからなる雰囲気中で、電子加速器から放出される連続電子ビームをターゲット原料に照射することにより、ターゲット原料を溶融、ガス化させるステップと、ガス化されたターゲット原料を、内部をチャンバー内の温度より低い所定温度に加熱させた第1の冷却室に移送させ、還流させながら所定温度まで冷却させることによりグラファイトと触媒金属との共存高温ガス状態を形成するステップと、第1の冷却室で共存高温ガス状態一定時間維持させた後、さらに冷却させることによりカーボンナノ構造体を生成させるステップと、生成したカーボンナノ構造体を第2の冷却室に移送させ、さらに常温に冷却させるステップと、第2の冷却室で常温に冷却させたカーボンナノ構造体を回収するステップを有することを特徴とするカーボンナノ構造体の製造方法を提供する。
【0011】
第3には、グラファイトを母材とし触媒金属を含む触媒金属含有タブレットとグラファイトからなるグラファイトタブレットとを積層してなるターゲット原料を内部に収容した容器状ターゲットホルダーをチャンバー内にセットするステップと、大気圧下で、かつ、常温の不活性ガスからなる雰囲気中で、電子加速器から放出される連続電子ビームをターゲット原料に照射することにより、ターゲット原料を溶融、ガス化させるステップと、ガス化されたターゲット原料をガス搬送パイプを介して共存ガス還流室へ送り、共存ガス状態を形成するとともに共存ガス還流室内を還流させながら共存ガス状態を一定時間維持させてカーボンナノ構造体を生成させるステップと、生成したカーボンナノ構造体を回収するステップを有することを特徴とするカーボンナノ構造体の製造方法を提供する。
【0012】
第4には、上記第1ないし第3のいずれかの発明において、触媒金属として、Ni、Fe、Co、Crまたはこれらのいずれかの組み合わせからなる合金を用いることを特徴とするカーボンナノ構造体の製造方法を提供する。
【0013】
第5には、上記第1ないし第4のいずれかの発明において、不活性ガスとして、Ar、He、Nまたはこれらの混合ガスを用いることを特徴とするカーボンナノ構造体の製造方法を提供する。
【0014】
第6には、上記第1ないし第5のいずれかの発明において、カーボンナノ構造体が、カーボンナノチューブ、またはカーボンナノチューブとカーボンナノホーンであるカーボンナノ構造体の製造方法が提供される。
【0015】
第7には、グラファイトを母材とし触媒金属を含むターゲット原料がセットされるチャンバーと、チャンバー内に常温の不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、大気圧下で、ターゲット原料に電子ビームを照射することにより、ターゲット原料を溶融、ガス化させるために電子ビームを放出する電子加速器と、ガス化されたターゲット材料を所定温度まで冷却させ、グラファイトと触媒金属との共存高温ガス状態を形成し、その共存高温ガス状態を一定時間維持させた後、さらに冷却させてカーボンナノ構造体を生成させる手段を有することを特徴とするカーボンナノ構造体の製造装置を提供する。
【0016】
第8には、グラファイトを母材とし触媒金属を含むターゲット原料がセットされるチャンバーと、チャンバー内に常温の不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、大気圧下で、ターゲット原料に電子ビームを照射することにより、ターゲット原料を溶融、ガス化させるために電子ビームを放出する電子加速器と、内部をチャンバー内の温度より低い所定温度に加熱する加熱手段を備え、ガス化されたターゲット材料を還流させながら冷却させることにより、グラファイトと触媒金属との共存高温ガス状態を形成し、その共存高温ガス状態を一定時間維持させた後、さらに冷却させてカーボンナノ構造体を生成させるための第1の冷却室と、第1の冷却室で生成したカーボンナノ構造体をさらに常温に冷却させるための第2の冷却室と、第2の冷却室で常温に冷却させたカーボンナノ構造体を回収するカーボンナノ構造体回収手段を有することを特徴とするカーボンナノ構造体の製造装置を提供する。
【0017】
第9には、グラファイトを母材とし触媒金属を含む触媒金属含有グラファイトタブレットとグラファイトからなるグラファイトタブレットとを積層してなるターゲット原料を内部に収容した容器状ターゲットホルダーがセットされるチャンバーと、チャンバー内に常温の不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、大気圧下で、ターゲット原料に電子ビームを照射することにより、ターゲット原料を溶融、ガス化させるために電子ビームを放出する電子加速器と、ガス化されたターゲット原料をガス搬送パイプを介して高温ガス反応室へ送り、共存高温ガス状態を形成するとともに共存高温ガスを高温ガス反応室内で還流させながら共存高温ガス状態を一定時間維持させた後、さらに冷却させてカーボンナノ構造体を生成させる手段と、生成したカーボンナノ構造体を回収する手段を有することを特徴とするカーボンナノ構造体の製造装置を提供する。
【0018】
第10には、上記第7ないし第9のいずれかの発明において、カーボンナノ構造体が、カーボンナノチューブ、またはカーボンナノチューブとカーボンナノホーンであるカーボンナノ構造体の製造装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、上記のような手法ないし手段を採用したので、不活性ガスを加熱した雰囲気下ではなく常温でしかも大気圧下でカーボンナノチューブ、あるいはカーボンナノチューブとカーボンナノホーンからなるカーボンナノ構造体を製造することができる、新しい原理に基づくカーボンナノ構造体の製造が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明によるカーボンナノ構造体の製造装置の一例を模式的に示す概念図である。
【図2】電子加速器の出力の例を示す図である。
【図3】図1の装置で製造した単層カーボンナノチューブの電子顕微鏡写真(TEM)像を示す図である。
【図4】図5の装置で製造した多層カーボンナノチューブの電子顕微鏡写真(TEM)像を示す図である。
【図5】本発明によるカーボンナノ構造体の製造装置の別の例を模式的に示す概念図である。
【図6】電子加速器の出力の例を示す図である。
【図7】電子加速器の出力の例を示す図である。
【図8】本発明によるカーボンナノ構造体の製造装置のさらに別の例を模式的に示す概念図である。
【図9】本発明によるカーボンナノ構造体の製造装置のさらに別の例を模式的に示す概念図である。
【図10】高温ガス反応室における共存高温ガスの動きを示す概念図である。
【図11】電子加速器の出力の例を示す図である。
【図12】フィルターから採取した煤のラマンスペクトルの測定結果を示す図である。
【図13】採取した煤の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す図である。
【図14】採取した煤の別の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す図である。
【図15】採取した煤のさらに別の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す図である。
【図16】採取した煤のさらに別の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す図である。
【図17】図16の拡大写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明によるカーボンナノ構造体の製造方法は、基本的に、次のステップからなる。
(A)グラファイトを母材とし触媒金属を含むターゲット原料をチャンバー内にセットするステップ、
(B)大気圧下で、かつ、常温の不活性ガスからなる雰囲気中で、電子ビーム加速器から放出される連続電子ビームをターゲット原料に照射することにより、ターゲット原料を溶融、ガス化させるステップ、
(C)ガス化されたターゲット原料を所定温度まで冷却させることによりグラファイトと触媒金属との共存高温ガス状態を形成させるステップ、
(D)該共存高温ガス状態を一定時間維持させた後、さらに冷却させることによりカーボンナノ構造体を生成させるステップ。
ここで、カーボンナノ構造体は、単層もしくは多層のカーボンナノチューブあるいはそれらの混合物、もしくはこれらとカーボンナノホーンとすることができる。
【0022】
本発明では、ターゲット原料として、グラファイトを母材とし触媒金属を含んだものが使用される。たとえばグラファイトと触媒金属は粉末状のものを用い、これらを混合したものをペレット状に成形してターゲット原料とすることができるが、これに限定されない。触媒金属としては、Ni、Fe、Co、Crあるいはこれらの混合物を用いることができる。触媒金属の量は、カーボンナノ構造体の成長促進に適した量とすることが望ましく、たとえば1〜5重量%程度である。
【0023】
不活性ガスとしては、Ar、He、Nあるいはこれらの混合ガス等を常温で使用することができる。不活性ガスは、カーボンナノ構造体を製造する前に予めチャンバー内に供給していてもよく、カーボンナノ構造体製造時には一定流速、たとえば300000sccmまでの流速で供給するようにしてもよい。また、ケースによっては流速を変化させてもよい。
【0024】
チャンバーは、たとえばステンレス鋼(ロシア製型式12H18N10T)等の耐熱性材料からなり、密閉構造にできるものが使用される。
【0025】
ターゲット原料に照射される電子ビームは連続ビームを使用する。また、本発明では、加速器を用いて電子ビームを発生させる。電子加速器としては、たとえば加速電圧1.4MeV、出力が0〜40kWの間で調節できるものを使用することができ、出力は電流で調整する。この場合、照射時間は1〜60分程度がカーボンナノ構造体の良好な成長のために好ましい。
【0026】
ターゲット原料に電子ビームを照射すると、ターゲット原料が溶融、ガス化し、不活性ガスとガス化したターゲット原料の混合プラズマガスが形成されるものと推測される。このこの時の温度は5000〜6000℃程度となる。
【0027】
ガス化したターゲット原料は冷却され、グラファイトと触媒金属との共存高温ガス状態となるが、この時の温度は1000〜1400℃となる。この共存高温ガス状態は30〜60分程度維持され、気相合成によりカーボンナノチューブ、あるいはカーボンナノチューブとカーボンナノホーンが生成する。カーボンナノチューブは、触媒金属の種類により、単層となったり、二層以上の多層となったり、あるいはそれらが混合したものとなったりする。カーボンナノチューブとともにカーボンナノホーンが生成する場合がある。
【0028】
次に、本発明によるカーボンナノ構造体の製造装置の一例について述べる。図1は、本例のカーボンナノ構造体の製造装置を模式的に示す概念図である。図中11はチャンバーであり、たとえばステンレス鋼(ロシア製型式12H18N10T)等の耐熱性材料からなり、密閉構造にできるものである。チャンバー11内ではターゲット原料12が支持台13により支持されるようになっている。チャンバー11は水冷式の壁面14を有している。壁面14は、ステンレス鋼(ロシア製型式12H18N10T)から構成されている。冷却水は配管15から壁面に入り、冷却後の加熱された水は配管16から排出される。チャンバー11の上方には電子加速器17が配置され、電子ビーム18をターゲット原料12に照射できるようになっている。チャンバー11の下方には、不活性ガスとしてヘリウムをチャンバー11内に供給するための配管19が設けられている。また、一旦、空気とヘリウムを置換するための配管20、真空ポンプ21が設けられている。22、23はバルブ、26は流量計、24は熱電対、25は電子加速器17の出口部分に窒素を供給するための配管である。
【0029】
試作したカーボンナノ構造体の製造装置のチャンバー11は円柱形の形状であり、直径170mm、高さ150mm、容量3.4Lである。ターゲット原料として、Co(純度99.8%)2.4重量%、Ni(純度99.8%)2.4重量%、残りグラファイト(型式MPG-6:ロシアNovocherkasskiy electrod plant社製:純度99.96%)の混合粉末を20MPaの成形圧で12mm径、4mm厚の円形タブレットとしたものを4個重ねて用いた。電子加速器17はELV型電子加速器(エネルギー1.4MeV)を用いた。ヘリウムは流量0.5L/秒で供給した。電子加速器17の出力は図2に示すものとした。また、共存高温ガス状態は3分維持した。その結果得られたカーボンナノチューブの電子顕微鏡(TEM)像を図3に示す。単層カーボンナノチューブが形成されていることがわかる。また、ラマン分析によってもカーボンナノチューブが得られていることが確認された。
【0030】
次に、本発明によるカーボンナノ構造体の別の例について述べる。図5は、別例のカーボンナノ構造体の製造装置を模式的に示す概念図である。図中31はチャンバーであり、たとえばステンレス鋼(ロシア製型式12H18N10T)等の耐熱性材料からなり、密閉構造にできるものである。チャンバー31内ではターゲット原料32が支持台33により支持されるようになっている。本例では、ターゲット材料32を取り囲むように円筒形のスクリーン34が設けられ、スクリーン34の内部には複数のリング状部材35が取付けられ、上部にはカバー36が取付けられている。この構成はより効率的にカーボンナノ構造体を製造するためにヘリウムが循環しない空間を作るためと製造したカーボンナノ構造体の回収を容易にするためである。チャンバー31の上方には電子加速器37が配置され、電子ビーム38をターゲット原料32に照射できるようになっている。また、本例では、チャンバー31内にヘリウムを供給するための2つの配管39、40がチャンバー31の側方と上方に設けられている。
【0031】
試作したカーボンナノ構造体の製造装置のチャンバー31の容量は3.4Lである。ターゲット原料として、Co(純度99.8%)2.0重量%、Ni(純度99.8%)3.0重量%、残りグラファイト(型式MPG-6:ロシアNovocherkasskiy electrod plant社製:純度99.96%)の混合粉末を20MPaの成形圧で12mm径の円形タブレットとしたものを6個重ねて用いた。サンプルの全厚みは21mmである。またターゲット原料として、Ni(純度99.8%)5.0重量%、残りグラファイト(型式MPG-6:ロシアNovocherkasskiy electrod plant社製:純度99.96%)の混合粉末を20MPaの成形圧で12mm径の円形タブレットとしたものを6個重ねて用いた。サンプルの全厚みは24mmである。以上二つのサンプルに電子ビーム照射を行った。電子加速器37はELV型電子加速器(エネルギー1.4MeV)を用いた。ヘリウムは流量0.3L/秒で2箇所から供給した。2つの電子加速器37の出力は図6、図7に示すものとした。また、共存高温ガス状態は3分維持した。いずれもカーボンナノチューブが得られていることが確認されたが、触媒としてNi(純度99.8%)5.0%を用いたターゲット原料では、カーボンナノチューブの電子顕微鏡(TEM)像を図4に示すが、多層カーボンナノチューブが形成されていることがわかる。
【0032】
次に、本発明によるカーボンナノ構造体の製造装置のさらに別の例について述べる。図8は、別例のカーボンナノ構造体の製造装置を模式的に示す概念図である。本例は、量産に適した例である。図中41はチャンバーであり、ステンレス鋼(ロシア製型式12H18N10T)からなり、密閉構造にできるものである。チャンバー41内にはターゲット原料42が収容されるるつぼ43がセットされるようになっている。チャンバー41内は大気圧に設定され、側壁の一部には配管44を介して不活性ガス収容タンク45が連結されている。不活性ガス収容タンク45内にはヘリウム等の不活性ガス46が収容され、カーボンナノ構造体製造の際にチャンバー41に供給されるようになっている。チャンバー41の上方には電子加速器47が電子ビーム48をターゲット原料42に照射可能に配置されている。電子加速器47としては前述と同様のものを用いることができる。出力は電流で調整する。
【0033】
一方、チャンバー41の側壁の別の部分には配管49を介して第1冷却室50が連結されている。第1冷却室50はステンレス鋼(ロシア製型式12H18N10T)から構成され、密閉構造となっており、カーボンナノ構造体の製造時には外部から空気冷却される。第1冷却室50内には、石英管51が配置されている。石英管51の周囲には、チャンバー41からのガス化されたターゲット原料である高温蒸発ガスを適温まで冷却するためのヒーター54が設置されている。冷却されたガスはグラファイトと触媒金属の共存高温ガスで、その温度は1000〜1400℃程度であり、ヒーター54は高温蒸発ガスを石英管51内部で冷却するため、石英管51内部の温度をたとえば1000℃程度に保つようになっている。第1冷却室50では、共存高温ガス状態を30〜60分維持してカーボンナノ構造体を生成する。
【0034】
第1冷却室50の壁面の下方部分には、図示のごとく配管55が設けられ、第2冷却室56に連結している。第2冷却室56はカーボンナノ構造体を室温まで冷却するために設けられている。第2冷却室56の壁面にはさらに配管57が接続され、フィルター室58に連結され、フィルター室58では、内部に設置されたフィルター59により不活性ガスは、配管60を介して外部に排気され、カーボンナノ構造体が回収されるようになっている。不活性ガスの排気のためファン61が設置されている。
なお、図中62〜64はバルブである。
【0035】
図8の装置を用いてカーボンナノ構造体を製造する場合、まず、ターゲット原料42をるつぼ43内に収容し、チャンバー41にセットする。不活性ガス収容タンク45からたとえば一定流量で不活性ガス46をチャンバー41内に供給する。このとき、バルブ62は閉状態とする。電子加速器47から所定の加速電圧で電子ビーム48をターゲット原料42に一定時間連続して照射する。電子ビーム48の照射により、不活性ガス46はプラズマ化し、ターゲット原料42は溶融、蒸発し、不活性ガス46のプラズマとターゲット原料42の蒸発ガスとの高温蒸発ガスが形成される。この高温蒸発ガスは5000〜6000℃程度となる。所定時間の電子ビーム48の照射が終わり、高温混蒸発ガスが形成されると、バルブ62を開放し、高温蒸発ガスを第1冷却室50に送る。その際、バルブ63は閉状態となっている。
【0036】
第1冷却室50に送られてきた高温蒸発ガスは内部で還流する。第1冷却室50全体は空冷されており、また第1冷却室50に設けられた石英管51はヒーター54により内部の温度が高温蒸発ガスより低い温度、たとえば1000℃に保たれている。還流している高温蒸発ガスは空冷されるとともに、石英管51内で冷却され、グラファイトと触媒金属との共存高温ガスとなり、その温度は1000〜1400℃となる。この共存高温ガス状態を30〜60分程度維持させることにより、カーボンナノ構造体が成長する。
【0037】
第1冷却室50でカーボンナノ構造体生成が終わるとバルブ63を開放し、カーボンナノ構造体を含んだ不活性ガス46を第2冷却室56に送る。このときバルブ64は閉状態となっている。カーボンナノ構造体を含んだ高温の不活性ガス46は、第2冷却室56で室温に冷却される。
【0038】
その後、バルブ64を開放し、カーボンナノ構造体を含んだ室温の不活性ガス46をフィルター室58に送る。フィルター室58ではフィルター59により、カーボンナノ構造体と不活性ガス46が分離され、不活性ガス46は配管60より外部に排出され、所望のカーボンナノ構造体が得られる。
【0039】
なお、上記ではカーボンナノ構造体の回収はフィルター室58で行ったが、サイクロン装置(乾式)あるいは浮遊選別装置(湿式)を利用して行ってもよい。また、これまでカーボンナノ構造体を分離回収する公知の手法も使用可能である。乾式のサイクロン装置を用いる場合、空気でなく、ArやHeあるいはそれらの混合ガスを用いることが好ましい。さらに、カーボンナノ構造体のうちの特定の生成物(カーボンナノチューブあるいはカーボンナノホーン等)は生成、回収とは別の工程で行ってもよい。
【0040】
また、ターゲット原料42を入れたるつぼ43はチャンバー41内で回転移動可能にセットできる構成としてもよい。このようにするとさらに量産が期待できる。
【0041】
次に、本発明によるカーボンナノ構造体の製造装置のさらに別の例について述べる。図9は、さらに別例のカーボンナノ構造体の製造装置を模式的に示す概念図である。本例は、カーボンナノチューブ製造とカーボンナノホーン製造の複合に適した例である。図中71はチャンバーであり、ステンレス鋼(ロシア製型式12H18N10T)からなり、密閉構造にできるものである。チャンバー71内にはターゲット原料72が収容される容器型ターゲットホルダー73がセットされるようになっている。ターゲット原料72は、母材をグラファイトとし前述の触媒金属を含んだものからなる触媒金属含有グラファイトタブレット74と、グラファイトタブレット75とを積層して構成される。この例では各タブレットは3個ずつ交互に積層されている。チャンバー71内は大気圧に設定され、側壁と底部には不活性ガスであるヘリウムを供給するための配管76と配管79が配設され、圧力計77と圧力計80、バルブ78とバルブ81がそれぞれ設けられている。また、チャンバー71の上方にはヘリウムシールド用の窒素ガスを供給するための配管82が配置され、この配管82には圧力計83とバルブ84が設けられている。チャンバー71の上方には電子加速器85が電子ビーム86をターゲット原料72に照射可能に配置されている。電子加速器85としては前述と同様のものを用いることができる。出力は電流で調整する。なお、87はU字型圧力計、88は芯出しリング、89はターゲット囲いボックスである。
【0042】
一方、図中90は円筒形状の高温ガス反応室であり、連結金属パイプ91によりチャンバー71と連通している。連結金属パイプ91内には耐熱性グラファイトからなるガス搬送パイプ92が挿通しており、チャンバー71内のターゲット囲いボックス89と高温ガス反応室90が連絡している。さらに、高温ガス反応室90の下方には生成物の出口管94が接続され、生成物回収室93と連結され、出口管94の先端には生成物を付着させて回収するためのフィルター95が取り付けられている。図中96は排気ポンプである。
【0043】
図9の装置を用いてカーボンナノ構造体を製造する場合、まず、グラファイトタブレット75と触媒金属含有グラファイトタブレット74とを積層させて、容器型ターゲットホルダー73内に収容し、チャンバー71にセットする。次に、チャンバー71の側壁と低部から配管76と配管79を通してヘリウムガスをチャンバー71内に入れ、チャンバー内空気を排除する。そしてチャンバー内ヘリウムガスがチャンバー上部より外部に放出しないように配管82を通して窒素ガスを送り、シーリングする。次に、電子加速器85から所定の加速電圧で電子ビーム86をターゲット原料72に一定時間連続して照射する。その際、あらかじめ低出力で所定時間チャンバー71内を温める。その後、排気ポンプ96を作動させながら、電子加速器85の出力を上げ、電子ビーム86をターゲット原料72に連続照射する。電子ビーム86の連続照射により、ヘリウムガスはプラズマ化し、ターゲット原料72は溶融、蒸発し、ヘリウムガスのプラズマとターゲット原料72の蒸発ガスとの高温混合プラズマが形成される。この高温混合プラズマは5000〜6000℃程度となる。電子ビーム86が所定時間照射されて高温蒸発ガスが形成されると、ガス搬送パイプ92から、高温ガス反応室90に送られる。高温ガス反応室90に送られてきた高温蒸発ガスはグラファイトと触媒金属との共存高温ガスであり、高温ガス反応室90内では、高温ガス反応室90の壁面が円筒状であるので、共存高温ガスはうず回転になり、円筒壁に沿って流れ、共存高温ガス状態を一定時間保たれた後、下方に移動する。このイメージ図を図10の(a)に透視斜視図で、(b)に断面図で模式的に示す。図10(a)の矢印のゾーンは、共存高温ガスがうず回転し、所定の温度に一定時間保たれるゾーンである。このゾーンで共存高温ガスが一定時間保たれた後、冷却させることにより、カーボンナノ構造体が生成される。生成されたカーボンナノ構造体は、出口管94から排出され、生成物回収室93内でフィルター95に付着され、回収される。
【0044】
次に、具体的な実験例について述べる。
装置構成等について述べると、チャンバー71は円筒状の形状であり、耐熱性のステンレス鋼(ロシア製型式12H18N10T)からなり、密閉構造にできるものである。チャンバー71の寸法は、直径150mm、高さ200mm、容量約3Lであった。
原料ターゲット72は触媒金属含有グラファイトタブレット74と切り出し精製グラファイトタブレット75を交互に3個ずつ積層し、全高さは30mmであった。触媒金属含有グラファイトタブレット74は、Co(純度99.8%)2.5重量%、Ni(純度99.8%)2.5重量%、残りグラファイト(型式MPG-6:ロシアNovocherkasskiy electrod plant社製:純度99.96%)の混合粉末を200atm(約20MPa)の成形圧で20mm径、厚さ5mm、密度2.0g/cm、重量4gの円形タブレットとしたものを3個作製した。グラファイトタブレット75は、グラファイト(ドイツ製リアクターグラファイト Henschke CGD:純度99.99%以上)からなり、20mm径、厚さ5mm、密度1.8g/cmの円形タブレットを3個作製した。
容器型ターゲットホルダー73は、グラファイト(ドイツ製リアクターグラファイト Henschke CGD:純度99.99%以上)からなり、外径35mm、内径21mm、高さ50mmのものを作製した。
ターゲット囲いボックス89は、耐熱性グラファイト(型式MDG-6:ロシアNovocherkasskiy electrod plant社製:純度99.75%以上)、外径120mm、内径100mm、高さ150mmのものを作製した。
電子加速器85は、ELV型電子加速器(エネルギー1.4MeV)のものを用いた。電子加速器85の出力は図11のものとした。
連結金属パイプ91は、ステンレス鋼(ロシア製型式12X18H10T)からなり、外径45mm、内径40mm、長さ260mm)のものを作製した。
ガス搬送パイプ92は、耐熱性グラファイト(型式MDG-6:ロシアNovocherkasskiy electrod plant社製:純度99.75%以上)、外径39mm、内径23mm、長さ300mmのものを作製した。
【0045】
上記の構成の装置を用い、カーボンナノ構造体の製造を以下のようにして行った。
まず、上記で作製したグラファイトタブレット75と触媒金属含有グラファイトタブレット74とを3個ずつ交互に積層させて計6個のタブレットをターゲット原料72として容器型ターゲットホルダー73内に収容し、チャンバー71内にセットした。次に、チャンバー71内にヘリウムガスを入れ、チャンバー内空気を排除した。その後、チャンバー内ヘリウムガスがチャンバー上部より外部に流出しないように窒素ガスを供給し、シーリングした。ヘリウムガスおよび窒素ガスの流量は0.3−0.5L/秒とした。排気ポンプ96を作動させた。チャンバー71の底部からチャンバー71内に入ったヘリウムガスはターゲット囲いガス89の外側を上昇し、チャンバー71の側面からのヘリウムガスと合流し、ターゲット囲いボックス89の上部穴からターゲット囲いボックス89の内部に入る。
【0046】
この状態で、電子加速器85を作動させ、出力4.2KWで5分間チャンバー71内を温めた。排気ポンプ96による電子ビーム照射前のチャンバー内余剰圧(供給ガスの圧力+排気ポンプによる抜き圧)、すなわち外気圧1気圧とチャンバー内部の圧力の差、はU字型圧力計87によれば40Paであり、チャンバー内部の圧力は1.000394気圧であった。
【0047】
次に、電子加速器85の出力を11.2KWまで上昇させ、電子ビーム86をターゲット原料72に20分間照射させた。電子ビーム86の照射により、ヘリウムガスはプラズマ化し、電子ビーム86によりターゲット72も溶解、蒸発してプラズマ化し、両者の混合高温プラズマは、ターゲット囲いボックス89から高温ガス反応室90に延びるガス搬送パイプ92を経て高温反応室90へ共存高温ガスとして入る。その後、電子加速器85の運転を停止させた。共存高温ガスは高温ガス反応室90にて自然冷却されるが、冷却過程の1000〜1400℃の所定ゾーン(図10(a)の矢印で示したゾーン)で炭素とNiとCoが共存した状態でカーボンナノ構造体が成長する。
【0048】
その後、フィルター95、高温ガス反応室90、ガス搬送パイプ92およびチャンバー71内の煤を回収した。その結果、フィルター95全表面に煤が付着しており、高温ガス反応室90の内壁および蓋にも煤があり、ガス搬送パイプ92にはかなりの量の煤があるものの、フィルター95表面および高温ガス反応室90内より少なかった。ターゲット囲いボックス89内にはほとんど煤はなかった。これにより、高温ガス反応室90でのカーボンナノ構造体(カーボンナノチューブおよびカーボンナノホーン)の生成が確認された。
【0049】
フィルター95から採取した煤のラマンスペクトルの測定結果を図12に示す。この図から、カーボンナノチューブとともにカーボンナノホーンが得られたことが確認された。
【0050】
また、図13から図17に採取した煤の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を示す。図13では、比較的長い多層カーボンナノチューブが観察される。図14では、単層カーボンナノチューブと多層カーボンナノチューブが観察される。図15では、内部に別の物質が入ったカーボンナノチューブが観察される。図16では、単層カーボンナノホーンが観察される。図17は、図16の拡大図である。
【符号の説明】
【0051】
11 チャンバー
12 ターゲット試料
13 支持台
17 電子加速器
18 電子ビーム
31 チャンバー
32 ターゲット原料
34 スクリーン
35 リング状部材
36 カバー
37 電子加速器
38 電子ビーム
41 チャンバー
42 ターゲット原料
43 るつぼ
46 不活性ガス
47 電子加速器
48 電子ビーム
50 第1冷却室
51 石英管
54 ヒーター
56 第2冷却室
58 フィルター室
59 フィルター
61 ファン
71 チャンバー
72 ターゲット原料
73 容器型ターゲットホルダー
74 触媒金属含有グラファイトタブレット
75 グラファイトタブレット
85 電子加速器
86 電子ビーム
89 ターゲット囲いボックス
90 高温ガス反応室
92 ガス搬送パイプ
95 フィルター
96 排気ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイトを母材とし触媒金属を含むターゲット原料をチャンバー内にセットするステップと、
大気圧下で、かつ、常温の不活性ガスからなる雰囲気中で、電子加速器から放出される連続電子ビームをターゲット原料に照射することにより、ターゲット原料を溶融、ガス化させるステップと、
ガス化されたターゲット原料を所定温度まで冷却させることによりグラファイトと触媒金属との共存高温ガス状態を形成するステップと、
該共存高温ガス状態を一定時間維持させた後、さらに冷却させることによりカーボンナノ構造体を生成させるステップを有することを特徴とするカーボンナノ構造体の製造方法。
【請求項2】
グラファイトを母材とし触媒金属を含むターゲット原料をチャンバー内にセットするステップと、
大気圧下で、かつ、常温の不活性ガスからなる雰囲気中で、電子加速器から放出される連続電子ビームをターゲット原料に照射することにより、ターゲット原料を溶融、ガス化させるステップと、
ガス化されたターゲット原料を、内部をチャンバー内の温度より低い所定温度に加熱させた第1の冷却室に移送させ、還流させながら所定温度まで冷却させることによりグラファイトと触媒金属との共存高温ガス状態を形成するステップと、
第1の冷却室で共存高温ガス状態一定時間維持させた後、さらに冷却させることによりカーボンナノ構造体を生成させるステップと、
生成したカーボンナノ構造体を第2の冷却室に移送させ、さらに常温に冷却させるステップと、
第2の冷却室で常温に冷却させたカーボンナノ構造体を回収するステップを有することを特徴とするカーボンナノ構造体の製造方法。
【請求項3】
グラファイトを母材とし触媒金属を含む触媒金属含有タブレットとグラファイトからなるグラファイトタブレットとを積層してなるターゲット原料を内部に収容した容器状ターゲットホルダーをチャンバー内にセットするステップと、
大気圧下で、かつ、常温の不活性ガスからなる雰囲気中で、電子加速器から放出される連続電子ビームをターゲット原料に照射することにより、ターゲット原料を溶融、ガス化させるステップと、
ガス化されたターゲット原料をガス搬送パイプを介して共存ガス還流室へ送り、共存ガス状態を形成するとともに共存ガス還流室内を還流させながる共存ガス状態を一定時間維持させてカーボンナノ構造体を生成させるステップと、
生成したカーボンナノ構造体を回収するステップを有することを特徴とするカーボンナノ構造体の製造方法。
【請求項4】
触媒金属として、Ni、Fe、Co、Crまたはこれらのいずれかの組み合わせからなる合金を用いることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載のカーボンナノ構造体の製造方法。
【請求項5】
不活性ガスとして、Ar、He、Nまたはこれらの混合ガスを用いることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載のカーボンナノ構造体の製造方法。
【請求項6】
カーボンナノ構造体が、カーボンナノチューブ、またはカーボンナノチューブとカーボンナノホーンである請求項1ないし5のいずれか一項に記載のカーボンナノ構造体の製造方法。
【請求項7】
グラファイトを母材とし触媒金属を含むターゲット原料がセットされるチャンバーと、
チャンバー内に常温の不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、
大気圧下で、ターゲット原料に電子ビームを照射することにより、ターゲット原料を溶融、ガス化させるために電子ビームを放出する電子加速器と、
ガス化されたターゲット材料を所定温度まで冷却させ、グラファイトと触媒金属との共存高温ガス状態を形成し、その共存高温ガス状態を一定時間維持させた後、さらに冷却させてカーボンナノ構造体を生成させる手段を有することを特徴とするカーボンナノ構造体の製造装置。
【請求項8】
グラファイトを母材とし触媒金属を含むターゲット原料がセットされるチャンバーと、
チャンバー内に常温の不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、
大気圧下で、ターゲット原料に電子ビームを照射することにより、ターゲット原料を溶融、ガス化させるために電子ビームを放出する電子加速器と、
内部をチャンバー内の温度より低い所定温度に加熱する加熱手段を備え、ガス化されたターゲット材料を還流させながら冷却させることにより、グラファイトと触媒金属との共存高温ガス状態を形成し、その共存高温ガス状態を一定時間維持させた後、さらに冷却させてカーボンナノ構造体を生成させるための第1の冷却室と、
第1の冷却室で生成したカーボンナノ構造体をさらに常温に冷却させるための第2の冷却室と、
第2の冷却室で常温に冷却させたカーボンナノ構造体を回収するカーボンナノ構造体回収手段を有することを特徴とするカーボンナノ構造体の製造装置。
【請求項9】
グラファイトを母材とし触媒金属を含む触媒金属含有グラファイトタブレットとグラファイトからなるグラファイトタブレットとを積層してなるターゲット原料を内部に収容した容器状ターゲットホルダーがセットされるチャンバーと、
チャンバー内に常温の不活性ガスを供給する不活性ガス供給手段と、
大気圧下で、ターゲット原料に電子ビームを照射することにより、ターゲット原料を溶融、ガス化させるために電子ビームを放出する電子加速器と、
ガス化されたターゲット原料をガス搬送パイプを介して高温ガス反応室へ送り、共存高温ガス状態を形成するとともに共存高温ガスを高温ガス反応室内で還流させながら共存高温ガス状態を一定時間維持させた後、さらに冷却させてカーボンナノ構造体を生成させる手段と、
生成したカーボンナノ構造体を回収する手段を有することを特徴とするカーボンナノ構造体の製造装置。
【請求項10】
カーボンナノ構造体が、カーボンナノチューブ、またはカーボンナノチューブとカーボンナノホーンである請求項7ないし9のいずれか一項に記載のカーボンナノ構造体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図3】
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【図4】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−51880(P2011−51880A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−135453(P2010−135453)
【出願日】平成22年6月14日(2010.6.14)
【出願人】(509224413)
【氏名又は名称原語表記】Kuksanov Nikolay
【住所又は居所原語表記】Budker Institute of Nuclear Physics, Russia 630090 Novosibirsk Lavrentyev prospect 11
【出願人】(509224424)
【氏名又は名称原語表記】Okotrub Aleksandr
【住所又は居所原語表記】Nikolaev Institute of Inorganic Chemistry, Russia 630090 Novosibirsk Lavrentyev prospect 3
【出願人】(509224435)
【氏名又は名称原語表記】Antokhin Evgeny
【住所又は居所原語表記】Budker Institute of Nuclear Physics, Russia 630090 Novosibirsk Lavrentyev prospect 11
【出願人】(509224446)
【出願人】(509224457)
【出願人】(509225177)
【Fターム(参考)】