説明

カーボンブラシ及びその製造方法

【課題】表面に被覆処理を施されずに、整流子において発生する短絡電流を抑制することによって、発生する火花を抑制し、仕事効率を従来よりも改善したカーボンブラシを提供する。
【解決手段】一端付近に導電線が接続された基材からなり、前記基材の他端において、回転する整流子と接触するカーボンブラシであって、前記整流子の回転方向に対する接線方向における前記基材の電気抵抗率Rが、前記導電線が接続された箇所から前記整流子までの間の電気抵抗率Rよりも高く、電気抵抗率Rと電気抵抗率Rとの比R/Rが1.50以上であることが好ましい。また、電気抵抗率Rが100μΩ・m以上2000μΩ・m以下であることが好ましい。このカーボンブラシの製造方法は、基材を成型する際の加圧を、予め整流子の回転方向に対する接線方向と平行な方向に行う工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家電用、電動工具用及び自動車用の整流子を用いる電動機用カーボンブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
家電用、電動工具用及び自動車用モーターは、小型化、高回転化及び高入力化が進んでいる。従って、カーボンブラシにとっては、より過酷な条件に晒される環境が進んでいる。
【0003】
特に家電用の掃除機用ブラシでは、仕事効率が重要な性能として求められ、その仕事効率が0.1%の改善要求で激しい競争が進められているのが現状である。
【0004】
このような状況に対応するため、カーボンブラシの外表面に金属被覆(下記特許文献1参照)したり、カーボンブラシの外表面に含浸被覆(下記特許文献2参照)したりすることなどが行われている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−312921号公報
【特許文献2】特開2005−102491号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1、2では、カーボンブラシ表面に上述の被覆処理を施す工程を別途設けなければならない。
【0007】
そこで、本発明の目的は、カーボンブラシ表面に被覆処理を施されずに、整流子において発生する短絡電流を抑制することによって、発生する火花を抑制し、仕事効率を従来よりも改善したカーボンブラシを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1) 前記課題を解決するための本発明に係るカーボンブラシは、一端付近に導電線が接続された基材からなり、前記基材の他端において、回転する整流子と接触するカーボンブラシであって、前記整流子の回転方向に対する接線方向における前記基材の電気抵抗率Rが、前記導電線が接続された箇所から前記整流子までの間の電気抵抗率Rよりも高い。
【0009】
上記構成によれば、カーボンブラシ表面に被覆処理を施されずに、整流子において発生する短絡電流を抑制できるので、発生する火花を抑制できる。その結果として、仕事効率が従来よりも改善されたカーボンブラシを提供できる。
【0010】
(2) 上記(1)のカーボンブラシにおいては、前記電気抵抗率Rと前記電気抵抗率Rとの比R/Rが1.50以上であることが好ましい。なお、比R/Rが1.50未満であるときは、上記(1)のカーボンブラシにおける効果を十分に発揮できないことがある。
【0011】
(3) 上記(2)のカーボンブラシにおいては、前記電気抵抗率Rが、100μΩ・m以上であることが好ましい。上述の電気抵抗率(抵抗率)の差が大きいほど、上記(1)のカーボンブラシにおける効果は顕著となるからである。なお、前記電気抵抗率Rが、100μΩ・m未満であるときは、上記(2)のカーボンブラシにおける効果を十分に発揮できないことがある。
【0012】
(4) 上記(3)のカーボンブラシにおいては、前記電気抵抗率Rが、2000μΩ・m以下であることがより好ましい。電気抵抗率Rが高すぎると、流れるべき全体の電気量が抑制されることにより、仕事効率自体が全体的に低下するためである。
【0013】
(5) 上記(1)〜(4)のカーボンブラシにおいては、前記基材がオイル含浸されているものであることが好ましい。
【0014】
上記(5)の構成によれば、ブラシ摩耗特性を向上させることができ、整流子と接触する際の摺動性が改善されるので、この接触の際の温度上昇を抑制できる。その結果として、実際に部品として使用した際のカーボンブラシの摩耗が低減される。
【0015】
(6) 上記(1)〜(5)のカーボンブラシにおいては、前記基材の全部又は一部の表面がメッキされていることが好ましい。
【0016】
上記(6)の構成によれば、基材の見かけ上の固有抵抗を低減できるので、より温度上昇を抑制できるとともに、整流が安定し、ブラシの摩耗が低減され、さらにはより高いモーター効率とすることができる。
【0017】
(7) 本発明は、一端付近に導電線が接続された基材からなり、前記基材の他端において、回転する整流子と接触するカーボンブラシの製造方法であって、前記基材を成型する際の加圧を、予め前記整流子の回転方向に対する接線方向と平行な方向に行う工程を有している。
【0018】
上記(7)の構成によれば、カーボンブラシ表面に被覆処理を施す工程を有さずに、整流子において発生する短絡電流を抑制できるので、発生する火花を抑制でき、仕事効率が従来よりも改善されたカーボンブラシを容易に製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の実施形態に係るカーボンブラシについて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るカーボンブラシと、整流子とを示す側面図である。
【0020】
本実施形態のカーボンブラシ1は、一端に導電線1bが接続された基材1aからなり、基材1aの他端が緩やかな凹型のカーブ形状を有しており、この他端において、回転する整流子2の曲面と面接触するように配設されている。
【0021】
基材1aにおいては、整流子2の回転方向に対する接線方向(図1中の点線矢印A方向)における電気抵抗率Rが、導電線1bが接続された箇所から整流子2に接触するまでの間の電気抵抗率Rよりも高くなっている。具体的には、比R/Rが1.50以上となるように調整されているとともに、電気抵抗率Rが100μΩ・m以上2000μΩ・m以下となるように調整されている。
【0022】
整流子2は、公知の一般的な構成を有する整流子であれば、どのようなものでもよい。
【0023】
本実施形態におけるカーボンブラシの分類は、結合剤が熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂またはこれらの配合系である樹脂結合黒鉛質、熱硬化性樹脂またはピッチを非酸化雰囲気で熱処理を施すことにより炭化せしめた炭素黒鉛質及びその構成成分に金属を配合した金属黒鉛質等が例示できる。
【0024】
使用される黒鉛は、人造黒鉛、天然黒鉛、膨張黒鉛、キッシュ黒鉛等が例示され、また不定形炭素については、コークス及びスートが好ましいが、特に限定されるものではない。黒鉛及び不定形炭素のこれらが個々に他の黒鉛及び不定形炭素同士で配合されるものでも差し支えない。
【0025】
なお、黒鉛は、その結晶が平面的な構造になっており、面に接する平行な方向によりも面に垂直な結晶が積み重なった層方向の方が電気的な抵抗率(電気抵抗率)が高くなる性質を持っている。その詳細な比率は、結晶構造や粒径により異なる。
【0026】
使用される結合剤は、熱硬化性樹脂にあっては、好ましくはエポキシ樹脂、フェノール樹脂またはこれらを個々に配合するもの、熱可塑性樹脂にあっては、ポリエステル、ポリエチレン等市販の樹脂が使用できる。また、これらの各配合系でも使用できる。金属黒鉛質に使用される主な金属成分は、銅、銀さらにこれらをメッキしたものが好ましいが、特に限定されるものではなく、これらの配合系であっても差し支えない。
【0027】
次に、カーボンブラシ1の製造方法について説明する。まず、黒鉛に添加剤を混合した後、結合剤とともに所定温度で温めながら混練し、混練終了後に室温まで冷却する。その後、所定粒径となるように粉砕し、所定圧力で基材1aを加圧成型する。この加圧は、図2(a)の両矢印方向のように、予め整流子2の回転方向に対する接線方向と平行な方向(図2(a)紙面におけるカーボンブラシ1の右側面及び左側面に対して垂直に挟むような方向)に行われるので、各層の面に対する法線方向が加圧方向と略平行となっている複数層からなる基材1aが形成されることになる。そして、基材1aの一端に穴をあけて、この穴に導電線1bを銅粉などによって埋め込み取り付けすることによって、カーボンブラシ1は完成する。
【0028】
なお、図2(b)の両矢印方向のような従来の加圧方向(図2(b)紙面におけるカーボンブラシ3の手前側面及び奥手側面に対して垂直に挟むような方向)では、図2(a)において導電線1bが接続された面中心から整流子2に接触する面中心の方向を軸とした場合、この軸に対して90°回転させたような複数層からなる基材3aを有するカーボンブラシ3となる。このとき、カーボンブラシ3の整流子4に接触する面は、図2(b)に示すように、回転する整流子4の曲面と面接触するように、緩やかな凹型のカーブ形状を有するように形成されている。このようなカーボンブラシ3では、黒鉛の層が回転方向に重なって配列していないため、短絡電流が大きくなるので、カーボンブラシ1に比べ、仕事効率が劣る。
【0029】
上記構成のカーボンブラシ1によれば、このカーボンブラシ1表面に被覆処理を施す工程を有さずに、整流子2において発生する短絡電流を抑制できるので、発生する火花を抑制できる。その結果として、仕事効率が従来よりも改善されたカーボンブラシ1を提供できる。
【実施例】
【0030】
以下に実施例を挙げ、本発明を詳しく説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例及び比較例に記載される寸法表記中の(W)は、幅を意味し、(L)は、長さを意味し、(T)は厚み方向を意味している。
【0031】
(実施例1)
平均粒径100μmの天然黒鉛85重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を10mm×30mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0032】
(実施例2)
平均粒径50μmの天然黒鉛85重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を10mm×30mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0033】
(実施例3)
平均粒径25μmの天然黒鉛85重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を10mm×30mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0034】
(実施例4)
平均粒径100μmの人造黒鉛85重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を10mm×30mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0035】
(実施例5)
平均粒径50μmの人造黒鉛85重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を10mm×30mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0036】
(実施例6)
平均粒径25μmの人造黒鉛85重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を10mm×30mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0037】
(実施例7)
平均粒径15μmの人造黒鉛55重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)mm×6mm(T)の成型体を10mm×30mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0038】
(実施例8)
平均粒径8μmの人造黒鉛55重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を10mm×30mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0039】
(実施例9)
平均粒径50μmの天然黒鉛85重量部に汎用フェーノール樹脂15重量部をメタノールで溶解したものと同1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を10mm×30mmの面で加圧成型して、500℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0040】
(実施例10)
平均粒径50μmの人造黒鉛85重量部に汎用フェーノール樹脂15重量部をメタノールで溶解したものと同1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を10mm×30mmの面で加圧成型して、500℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0041】
(実施例11)
平均粒径50μmの人造黒鉛55重量部及びコークス30重量部に汎用フェーノール樹脂15重量部をメタノールで溶解したものと同1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を10mm×30mmの面で加圧成型して、500℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0042】
(実施例12)
平均粒径50μmの天然黒鉛85重量部に汎用フェーノール樹脂15重量部をメタノールで溶解したものと同1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、これと平均粒径50μmの銅粉を50重量部となるように混合し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を10mm×30mmの面で加圧成型して、700℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0043】
(実施例13)
平均粒径50μmの人造黒鉛85重量部に汎用フェーノール樹脂15重量部をメタノールで溶解したものと同1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、これと平均粒径50μmの銅粉を50重量部となるように混合し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を10mm×30mmの面で加圧成型して、700℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0044】
(実施例14)
平均粒径15μmの人造黒鉛55重量部に汎用フェーノール樹脂15重量部をメタノールで溶解したものと同1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、これと平均粒径50μmの銅粉を50重量部となるように混合し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を10mm×30mmの面で加圧成型して、700℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0045】
(比較例1)
平均粒径100μmの天然黒鉛85重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を6mm×10mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0046】
(比較例2)
平均粒径50μmの天然黒鉛85重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を6mm×10mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0047】
(比較例3)
平均粒径25μmの天然黒鉛85重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を6mm×10mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0048】
(比較例4)
平均粒径100μmの人造黒鉛85重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を6mm×10mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0049】
(比較例5)
平均粒径50μmの人造黒鉛85重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を6mm×10mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0050】
(比較例6)
平均粒径25μmの人造黒鉛85重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、
150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を6mm×10mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0051】
(比較例7)
平均粒径15μmの人造黒鉛55重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を6mm×10mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0052】
(比較例8)
平均粒径8μmの人造黒鉛55重量部に汎用エポキシ樹脂15重量部を120℃で1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を6mm×10mmの面で加圧成型して、180℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0053】
(比較例9)
平均粒径50μmの天然黒鉛85重量部に汎用フェーノール樹脂15重量部をメタノールで溶解したものと同1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を6mm×10mmの面で加圧成型して、500℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0054】
(比較例10)
平均粒径50μmの人造黒鉛85重量部に汎用フェーノール樹脂15重量部をメタノールで溶解したものと同1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を6mm×10mmの面で加圧成型して、500℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0055】
(比較例11)
平均粒径50μmの人造黒鉛55重量部及びコークス30重量部に汎用フェーノール樹脂15重量部をメタノールで溶解したものと同1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を6mm×10mmの面で加圧成型して、500℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0056】
(比較例12)
平均粒径50μmの天然黒鉛85重量部に汎用フェーノール樹脂15重量部をメタノールで溶解したものと同1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、これと平均粒径50μmの銅粉を50重量部となるように混合し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を6mm×10mmの面で加圧成型して、700℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0057】
(比較例13)
平均粒径50μmの人造黒鉛85重量部に汎用フェーノール樹脂15重量部をメタノールで溶解したものと同1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、これと平均粒径50μmの銅粉を50重量部となるように混合し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を6mm×10mmの面で加圧成型して、700℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0058】
(比較例14)
平均粒径15μmの人造黒鉛55重量部に汎用フェーノール樹脂15重量部をメタノールで溶解したものと同1時間混練し、その後室温まで冷却した後、粒径が40メッシュ以下になるように粉砕し、これと平均粒径50μmの銅粉を50重量部となるように混合し、150MPaの圧力で10mm(W)×30mm(L)×6mm(T)の成型体を6mm×10mmの面で加圧成型して、700℃で熱処理してカーボンブラシ基材を得た。
【0059】
実施例1から11及び比較例1から11の各々のカーボンブラシについて、AC100V、60Hz掃除機用モーターの仕事率の測定を行った。尚、モーターに使用されるカーボンブラシの整流子の回転方向における寸法は6mmである。
【0060】
実施例12から14及び比較例12から14の各々のカーボンブラシについて、DC100V、60Hz掃除機用モーターの仕事率の測定を行った。尚、モーターに使用されるカーボンブラシの整流子の回転方向における寸法は6mmである。
【0061】
これらの試験結果を表1に示した。
【表1】

【0062】
表1に示すように樹脂結合黒鉛質、炭素黒鉛質及び金属黒鉛質において整流子の回転方向とその各電気抵抗率の方向性による仕事効率の差が認められる。
【0063】
従って、本実施例により、カーボンブラシ表面に被覆処理を施す工程を有さずに、整流子において発生する短絡電流を抑制できるので、発生する火花を抑制できることがわかる。したがって、仕事効率が従来よりも改善されたカーボンブラシを提供できたことがわかる。
【0064】
なお、本発明は、特許請求の範囲を逸脱しない範囲で設計変更できるものであり、上記実施形態や実施例に限定されるものではない。例えば、上記実施形態における導電線1bは、基材1aの一端に接続されているが、基材1aの一端付近(例えば側面)に接続されているものであればよい。
【0065】
さらに、上記実施形態の変形例として、基材1aに穴を形成して埋め込み取り付けする導電線1bの代わりに、(1)穴を形成せずに導電性のスプリングを基材1aに単に接触させたり、(2)予め基材1aに突起部を形成しておき、その突起部に導電性のスプリングを嵌合させたりするようなカーボンブラシとしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態のカーボンブラシの基材においては、オイル含浸されているものであってもよい。ここで用いられるオイルとしては、潤滑油、炭化水素油などが挙げられる。これにより、ブラシ摩耗特性を向上させることができ、整流子と接触する際の摺動性が改善されるので、この接触の際の温度上昇を抑制できる。その結果として、実際に部品として使用した際のカーボンブラシの摩耗が低減される。
【0067】
さらに、上記実施形態のカーボンブラシの基材においては、全部又は一部の表面がメッキされていてもよい。ここで、メッキに用いる金属材料としては、銅、銀、銅および銀の2層などが挙げられる。これにより、基材の見かけ上の固有抵抗を低減できるので、より温度上昇を抑制できるとともに、整流が安定し、ブラシの摩耗が低減され、さらにはモーターに使用した際、より高いモーター効率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態に係るカーボンブラシと、整流子とを示す側面図である。
【図2】(a)が図1のカーボンブラシと、整流子の一部とを示す斜視図、(b)が従来のカーボンブラシと、整流子の一部とを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0069】
1、3 カーボンブラシ
1a、3a 基材
1b、3b 導電線
2、4 整流子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端付近に導電線が接続された基材からなり、前記基材の他端において、回転する整流子と接触するカーボンブラシであって、
前記整流子の回転方向に対する接線方向における前記基材の電気抵抗率Rが、前記導電線が接続された箇所から前記整流子までの間の電気抵抗率Rよりも高いことを特徴とするカーボンブラシ。
【請求項2】
前記電気抵抗率Rと前記電気抵抗率Rとの比R/Rが1.50以上であることを特徴とする請求項1記載のカーボンブラシ。
【請求項3】
前記電気抵抗率Rが、100μΩ・m以上であることを特徴とする請求項2に記載のカーボンブラシ。
【請求項4】
前記電気抵抗率Rが、2000μΩ・m以下であることを請求項3に記載のカーボンブラシ。
【請求項5】
前記基材が、オイル含浸されているものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカーボンブラシ。
【請求項6】
前記基材の全部又は一部の表面がメッキされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のカーボンブラシ。
【請求項7】
一端付近に導電線が接続された基材からなり、前記基材の他端において、回転する整流子と接触するカーボンブラシの製造方法であって、
前記基材を成型する際の加圧を、予め前記整流子の回転方向に対する接線方向と平行な方向に行う工程を有していることを特徴とするカーボンブラシの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−325401(P2007−325401A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152198(P2006−152198)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(592026174)東炭化工株式会社 (11)
【Fターム(参考)】