説明

カーリングウェーブ剤

【課題】カーリングウェーブ剤において、無害な成分で「1液」及び「2液」を構成することによって、または更に「2液」を使用する必要をなくすことによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも少なく、不快臭を発することもないこと。
【解決手段】カール用ロットで髪の毛を巻いて固定し(S11)、第1液を満遍なく塗布し(S12)、スチーマーで約10分間髪を暖める(S13)ことによって、髪の毛のコルテックス内部のシスチン結合が切断される。続いて、第1液を洗い流し良く水分を切って(S14)、第2液を満遍なく塗布し(S15)、10分間から15分間放置する(S16)ことによって、切断されたシスチン結合が復元して、カール用ロットで巻かれた形状に髪の毛が固定される。ロットを髪から外し(S17)、温湯で洗髪して第2液を洗い流し(S18)、髪の毛を乾燥させる(S19)ことによって、カーリングウェーブ工程が完了する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオグリコール酸アンモニウムを用いることなく髪に美しいウェーブのかかったカーリングウェーブ加工を行うことができるカーリングウェーブ剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーリングウェーブ加工のメカニズムについて、図3乃至図5を参照して説明する。図3は髪の毛(頭髪)の構造を示す模式図である。図4(a)〜(d)はカーリングウェーブ加工のメカニズムを示す模式図である。図5は従来のカーリングウェーブ加工の手順を示すフローチャートである。
【0003】
図3に示されるように、髪の毛1は3層構造になっており、最も外側がキューティクル(毛表皮)2で包まれ、その内側に髪の毛の本体とも言うべきコルテックス(毛皮質)3が細い繊維状に並んでおり、最も内側はメデュラ(毛髄質)4で構成されている。この中で、コルテックス(毛皮質)3は、髪の毛1の85%〜90%を占めるメラニン色素を多量に含む繊維状のタンパク質であり、このコルテックス3の形状によって髪の毛1の形状が決まると言える。
【0004】
図4(a)に示されるように、このコルテックス3はシスチン結合5によって形成されている。そこで、カーリングウェーブ加工においては、アルカリ性の「1液」によって図3(b)に示されるようにシスチン結合5を切断し、図4(c)に示されるようにコルテックス3を変形させ、その変形させた状態を保ったまま、酸性の「2液」によって図4(d)に示されるように切断されたシスチン結合5aを再び結合させてシスチン結合5を形成する。これによって、変形した形状に固定されたコルテックス3となり、髪の毛1にカーリングウェーブが施されることになる。
【0005】
具体的には、図5に示されるように、まず洗髪(ステップS30)した後、ウェーブ(カール)の大きさに合わせたカール用ロットで髪の毛を巻き(ステップS31)、カール用ロットを巻いた部分全体に「1液」を塗布する(ステップS32)。そして、10分間〜15分間放置(ステップS33)した後、アルカリ性のリンスをする(ステップS34)が、このリンスは省略される場合もある。温湯で洗髪(ステップS35)した後、「2液」を塗布して(ステップS36)、10分間〜15分間放置(ステップS37)した後、カール用ロットを外し(ステップS38)、洗髪(ステップS39)、乾燥する(ステップS40)。
【0006】
しかしながら、上記「1液」としては、劇薬であるチオグリコール酸アンモニウムを含む水溶液が一般に使用されることから、カーリングウェーブ加工の施術を受ける本人は頭皮に刺激を受けて痛みを感じ、カーリングウェーブ加工の施術を行う美容師・理容師等は手を保護するために手袋をはめなければならず、またチオグリコール酸アンモニウムを洗い流した水はそのまま下水道に排出されるため、地球環境保護の観点からも好ましくないとされている。
【0007】
また、上記「2液」としては、通常ブロム酸ナトリウムを含む水溶液、または過酸化水素の3%水溶液(オキシドール)が用いられるが、このブロム酸ナトリウムも刺激性があり、頭皮にとって好ましいものではない。また、過酸化水素の3%水溶液(オキシドール)は漂白作用があるため、やはり髪を傷めることとなり、好ましいものではなかった。
【0008】
そこで、特許文献1及び特許文献2においては、チオグリコール酸アンモニウム及びブロム酸ナトリウムを用いることなくカーリングウェーブ加工を行うことを目的として、新たなカーリングウェーブ剤を提案している。具体的には、特許文献1においては、海洋深層水等の深層水を濃縮して得られる苦汁と、酸及び/または塩基及び/または塩とを混合することによって得られるカーリングウェーブ液の発明について開示している。これによって、苦汁に含まれる多様なミネラルが頭皮細胞及び皮下組織に触媒的効果をもたらし、作業者の手荒れが抑制されるとしている。
【0009】
また、特許文献2においては、2−メルカプト−4−ブチロラクトン、2−メルカプト−4−ブチロラクタム、等の環状メルカプト化合物と、炭化水素類・アルコール類・フェノール類・アルデヒド類・合成ムスク類等の香料とを含有することを特徴とするカーリングウェーブ加工用薬剤の発明について開示している。これによって、中性から弱酸性のpH領域(pH3〜pH7.5)においても使用可能な「1液」となるとともに、香料によってメルカプト基に基づく不快臭がマスキングされるとしている。
【特許文献1】特開2004−155615号公報
【特許文献2】特開2006−298915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、深層水を濃縮して得られる苦汁3%とクエン酸3%の混合液を1000倍〜10000倍希釈してカーリングウェーブ液としており、別に従来の還元剤としての「1液」、即ちチオグリコール酸アンモニウム等の水溶液と、酸化剤としての「2液」、即ち臭素酸ナトリウム等の水溶液を使用しており、深層水からなる構造水による炎症軽減効果が期待されるものの、実質的効果はないものと考えられる。
【0011】
また、上記特許文献2に記載の技術においては、中性から弱酸性のpH領域において使用できるというメリットはあるものの、従来の「1液」の主成分であるチオグリコール酸アンモニウムによるアンモニア臭と同等の不快臭を有する環状メルカプト化合物を使用しており、これに各種の香料を混合することによって不快臭をマスキングするものであるため、余計な成分が必要となり、コストアップになるとともに、そのまま洗い流すことによって環境汚染を引き起こすという問題点があった。
【0012】
そこで、本発明は、無害な成分で「1液」及び「2液」を構成することによって、または更に「2液」を使用する必要をなくすことによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも少なく、不快臭を発することもないカーリングウェーブ剤を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明に係るカーリングウェーブ剤は、カール用ロットで髪の毛を巻いた後に第1液を塗布し、一定時間経過後に前記第1液を洗い流し、良く水分を切った後に第2液を塗布し、一定時間経過後に前記カール用ロットを髪の毛から取り外して温湯で前記第2液を洗い流すカーリングウェーブ工程において使用される前記第1液と前記第2液からなるカーリングウェーブ剤であって、前記第1液はL−システインとアルカリ性水溶液とを主成分とするとともにチオグリコール酸アンモニウムを含有せず、前記第2液は3%過酸化水素水溶液(オキシドール)よりも濃度の低い過酸化水素水溶液であるものである。
【0014】
請求項2の発明に係るカーリングウェーブ剤は、カール用ロットで髪の毛を巻いた後に第1液を塗布し、一定時間経過後に前記第1液を洗い流し、良く水分を切った後、前記カール用ロットを髪の毛から取り外し、一定時間髪の毛に空気を通すカーリングウェーブ工程において使用される前記第1液からなるカーリングウェーブ剤であって、前記第1液はL−システインとアルカリ性水溶液とを主成分とするとともにチオグリコール酸アンモニウムを含有しないものである。
【0015】
請求項3の発明に係るカーリングウェーブ剤は、請求項1または請求項2の構成において、前記第1液の水素イオン指数(pH)は10〜14の範囲内であり、前記第2液の水素イオン指数(pH)は3〜6の範囲内であるものである。
【0016】
請求項4の発明に係るカーリングウェーブ剤は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記第1液の前記アルカリ性水溶液は、水素イオン指数(pH)が12.5〜14の範囲内で還元電位が−200mV〜−500mVの範囲内で、かつ微量のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含む電解水であるものである。ここで、「アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩」としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、等を用いることができる。
【0017】
請求項5の発明に係るカーリングウェーブ剤は、請求項1乃至請求項3のいずれか1つの構成において、前記第1液の前記アルカリ性水溶液は、水素イオン指数(pH)が12.5〜14の範囲内で還元電位が−200mV〜−500mVの範囲内の電解水に0.5重量%〜3重量%のアンモニアを加えた水溶液であるものである。
【0018】
請求項6の発明に係るカーリングウェーブ剤は、請求項1乃至請求項5のいずれか1つの構成において、前記第1液のL−システインの濃度は8重量%〜15重量%の範囲内であるものである。
【0019】
請求項7の発明に係るカーリングウェーブ剤は、請求項1乃至請求項6のいずれか1つの構成において、前記第2液の前記過酸化水素水溶液の濃度は1.0重量%〜2.0重量%の範囲内であるものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明に係るカーリングウェーブ剤は、カール用ロットで髪の毛を巻いた後に第1液を塗布し、一定時間経過後に第1液を洗い流し、良く水分を切った後に第2液を塗布し、一定時間経過後にカール用ロットを髪の毛から取り外して温湯で第2液を洗い流すカーリングウェーブ工程において使用される第1液と第2液からなるカーリングウェーブ剤であって、第1液はL−システインとアルカリ性水溶液とを主成分とするとともにチオグリコール酸アンモニウムを含有せず、第2液は3%過酸化水素水溶液(オキシドール)よりも濃度の低い過酸化水素水溶液である。
【0021】
上述の如く、人の髪の毛はその85%〜90%がコルテックス(毛表皮)で構成されており、コルテックス内部のシスチン結合を還元剤で切ることによって髪の毛が自由に変形できるようになり、変形させた状態を保ったまま酸化剤でシスチン結合を復元させることによって、髪の毛の形状が固定されてカーリングウェーブがかかるものである。本発明に係るカーリングウェーブ剤においては、還元剤である第1液としてL−システインとアルカリ性水溶液とを主成分とするものを使用し、酸化剤である第2液として3%過酸化水素水溶液(オキシドール)よりも濃度の低い過酸化水素水溶液を使用している。
【0022】
ここで、第1液の成分である「L−システイン」は、アミノ酸の一種でコラーゲンを構成する主要要素であり、美肌用サプリメント・美容健康食品や美肌化粧品として近年人気が高まっている。また、体内でも合成されている人体の構成物質でもある。したがって、還元剤としてコルテックス内部のシスチン結合を切断する機能を有するが、頭皮に優しく、不快な刺激を与える恐れが全くないばかりか、そのまま下水道に流されても環境を汚染する心配もない。したがって、第1液の成分である「アルカリ性水溶液」とともに用いても、頭皮に与える刺激は極めて少ない。
【0023】
更に、第1液は、チオグリコール酸アンモニウムを含有しないため、不快なアンモニア臭を発することもない。また、第2液の成分である「過酸化水素水溶液」は、従来のカーリングウェーブ工程において使用されていた3%過酸化水素水溶液(オキシドール)よりも濃度が低いものであるため、髪の毛を傷めることが殆どなく、頭皮に与える刺激も極めて少ない。
【0024】
このようにして、無害な成分で「1液」及び「2液」を構成することによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも少なく、不快臭を発することもないカーリングウェーブ剤となる。
【0025】
請求項2の発明に係るカーリングウェーブ剤は、カール用ロットで髪の毛を巻いた後に第1液を塗布し、一定時間経過後に第1液を洗い流し、良く水分を切った後、カール用ロットを髪の毛から取り外し、一定時間髪の毛に空気を通すカーリングウェーブ工程において使用される第1液からなるカーリングウェーブ剤であって、第1液はL−システインとアルカリ性水溶液とを主成分とするとともにチオグリコール酸アンモニウムを含有しない。
【0026】
本発明に係るカーリングウェーブ剤が上記請求項1に係るカーリングウェーブ剤と異なるのは、第2液を用いない点にある。すなわち、酸化剤として機能するのは、第1液を洗い流した後に一定時間髪の毛に通される空気である。したがって、第1液は還元剤としてコルテックス内部のシスチン結合を切断する機能を有するが、頭皮に優しく、不快な刺激を与える恐れが全くないばかりか、そのまま下水道に流されても環境を汚染する心配もないものであり、更に第2液を用いないことによって、より髪の毛及び頭皮に優しいカーリングウェーブ剤となる。
【0027】
このようにして、無害な成分で「1液」を構成するとともに、更に「2液」を使用する必要をなくすことによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも少なく、不快臭を発することもないカーリングウェーブ剤となる。
【0028】
請求項3の発明に係るカーリングウェーブ剤においては、第1液の水素イオン指数(pH)が10〜14の範囲内であり、第2液の水素イオン指数(pH)が3〜6の範囲内である。
【0029】
第1液は還元剤であるためアルカリ性である必要があり、pHが10〜14の範囲内である場合に、より好ましくは12〜13の範囲内である場合に、頭皮への刺激も少なく美容師等の手も荒れることなく、コルテックスのシスチン結合を切断する優れた効果が得られる。また、第2液は酸化剤であるため酸性である必要があり、pHが3〜6の範囲内である場合に、より好ましくは4〜5の範囲内である場合に、頭皮への刺激も少なく美容師等の手も荒れることなく、優れたシスチン結合の復元効果が得られる。
【0030】
このようにして、無害な成分で「1液」及び「2液」を構成することによって、または更に「2液」を使用する必要をなくすことによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも少なく、美容師等の手も荒れることなく、不快臭を発することもないカーリングウェーブ剤となる。
【0031】
請求項4の発明に係るカーリングウェーブ剤においては、第1液のアルカリ性水溶液は、水素イオン指数(pH)が12.5〜14の範囲内で還元電位が−200mV〜−500mVの範囲内で、かつ微量のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含む電解水である。ここで、「アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩」としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、等を用いることができる。
【0032】
また、「微量のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩」を含む電解水が好ましいのは、pHを12.5以上とするために何回も電解を繰り返す過程で、pHをアルカリ性に保持するためにアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩の存在が役立つからであり、pHが12.5〜14の範囲内で還元電位が−200mV〜−500mVの範囲内の電解水が得られるのであれば、アルカリ金属塩・アルカリ土類金属塩は全く含まなくても良い。なお、「微量のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩」としては、アルカリ性水溶液中の存在量として、0.25重量%〜1.5重量%の範囲内の炭酸カリウムであることが好ましい。
【0033】
第1液のアルカリ性水溶液として、pHが12.5〜14の範囲内で還元電位が−200mV〜−500mVの範囲内で、かつ微量のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含む電解水を用いることによって、これに HYPERLINK \l "#Hlk177351381" \s "1,3836,3843,0,,L−システイン" L−システインを混合するだけで充分な還元力を有する第1液を得ることができ、他の成分を添加する必要がないため、確実に還元剤としてコルテックス内部のシスチン結合を切断する機能を有するとともに、頭皮に優しく、不快な刺激を与える恐れが全くないばかりか、そのまま下水道に流されても環境を汚染する心配もない第1液となる。
【0034】
このようにして、無害な成分で「1液」及び「2液」を構成することによって、または更に「2液」を使用する必要をなくすことによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも少なく、美容師等の手も荒れることなく、不快臭を発することもないカーリングウェーブ剤となる。
【0035】
請求項5の発明に係るカーリングウェーブ剤においては、第1液のアルカリ性水溶液は、水素イオン指数(pH)が12.5〜14の範囲内で還元電位が−200mV〜−500mVの範囲内の電解水に0.5重量%〜3重量%のアンモニアを加えた水溶液である。
【0036】
第1液のアルカリ性水溶液として、pHが12.5〜14の範囲内で還元電位が−200mV〜−500mVの範囲内の電解水を用いる場合でも、微量の炭酸カリウムを含まない場合には、確実に還元力を持たせるために、ごく僅かな0.5重量%〜3重量%のアンモニアを加える必要がある。
【0037】
これによって、僅かにアンモニア臭を発する第1液となるが、後は HYPERLINK \l "#Hlk177351381" \s "1,3836,3843,0,,L−システイン" L−システインを混合するだけで充分な還元力を有する第1液を得ることができるため、確実に還元剤としてコルテックス内部のシスチン結合を切断する機能を有するとともに、頭皮に優しく、不快な刺激を与える恐れが全くないばかりか、そのまま下水道に流されても環境を汚染する心配もない第1液となる。
【0038】
このようにして、無害な成分で「1液」及び「2液」を構成することによって、または更に「2液」を使用する必要をなくすことによって、僅かな不快臭は発するものの、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも少なく、美容師等の手も荒れることのないカーリングウェーブ剤となる。
【0039】
請求項6の発明に係るカーリングウェーブ剤においては、第1液のL−システインの濃度が8重量%〜15重量%の範囲内である。
【0040】
本発明者は、第1液におけるL−システインの濃度について、鋭意実験研究を重ねた結果、第1液中のL−システインの濃度が8重量%〜15重量%の範囲内である場合に、最も好ましい結果が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0041】
すなわち、第1液中のL−システインの濃度が8重量%未満であると、L−システインの量が少な過ぎて還元剤としての効果が充分でなくなり、充分なカーリングウェーブがかからない恐れがあり、一方第1液中のL−システインの濃度が15重量%を超えると、L−システインの量が多過ぎて、コストアップしてしまう恐れがある。したがって、第1液中におけるL−システインの濃度は、8重量%〜15重量%の範囲内であることが好ましい。
【0042】
このようにして、無害な成分で「1液」及び「2液」を構成することによって、または更に「2液」を使用する必要をなくすことによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも少なく、美容師等の手も荒れることなく、不快臭を発することもないカーリングウェーブ剤となる。
【0043】
請求項7の発明に係るカーリングウェーブ剤においては、第2液の過酸化水素水溶液の濃度が1.0重量%〜2.0重量%の範囲内である。
【0044】
本発明者は、第2液における過酸化水素の濃度について、鋭意実験研究を重ねた結果、第2液中の過酸化水素の濃度が1.0重量%〜2.0重量%の範囲内である場合に、最も好ましい結果が得られることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0045】
すなわち、第2液中の過酸化水素の濃度が1.0重量%未満であると、過酸化水素の濃度が低過ぎて酸化剤としての効果が充分でなくなり、充分なカーリングウェーブがかからない恐れがあり、一方第2液中の過酸化水素の濃度が2.0重量%を超えると、過酸化水素の濃度が高過ぎて、髪の毛を傷める恐れがある。したがって、第2液中における過酸化水素の濃度は、1.0重量%〜2.0重量%の範囲内であることが好ましい。
【0046】
このようにして、無害な成分で「1液」及び「2液」を構成することによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも少なく、美容師等の手も荒れることなく、不快臭を発することもないカーリングウェーブ剤となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0048】
実施の形態1
まず、本発明の実施の形態1について、図1を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態1に係るカーリングウェーブ剤を用いたカーリングウェーブ工程を示すフローチャートである。
【0049】
図1に示されるように、本実施の形態1においては、カーリングウェーブ剤として第1液及び第2液を使用した。本実施の形態1に係るカーリングウェーブ剤においては、第1液として、アルカリ性水溶液としての水素イオン指数(pH)が12.5で還元電位が−200mVで「微量のアルカリ金属塩」としての0.25重量%の炭酸カリウムを含む電解水に、10重量%の濃度になるようにL−システインを加えたものを使用した。また、第2液としては、濃度1.5重量%の過酸化水素水を使用した。
【0050】
このような第1液及び第2液を用いた本実施の形態1に係るカーリングウェーブ工程について、図1を参照して説明する。図1においては、頭髪全体にカーリングウェーブ加工を行う場合について説明している。まず、髪全体に霧吹きで満遍なく水を塗布して湿らせ(ステップS10)、カール用ロット(「ロッド」とも言う。)で髪の毛を巻いて固定する(ステップS11)。その上から、第1液を満遍なく塗布し(ステップS12)、スチーマーで約10分間、髪を暖める(ステップS13)。これらの工程によって、髪の毛のコルテックス内部のシスチン結合が切断される。
【0051】
続いて、カール用ロットを巻いたまま洗髪して第1液を洗い流し、良く水分を切って(ステップS14)、第2液を満遍なく塗布し(ステップS15)、10分間から15分間放置する(ステップS16)。これらの工程によって、切断されたコルテックス内部のシスチン結合が復元して、カール用ロットで巻かれた形状に髪の毛が固定される。そして、カール用ロットを髪から外し(ステップS17)、温湯で洗髪して第2液を洗い流し(ステップS18)、カーリングウェーブがかかった頭髪を乾燥して(ステップS19)、仕上げる。
【0052】
以上の工程によって、本実施の形態1に係るカーリングウェーブ剤を用いたカーリングウェーブ工程が完了し、美しいツヤのあるカーリングウェーブがしっかりとかかった頭髪が得られる。このように、本実施の形態1に係るカーリングウェーブ剤においては、第1液としてチオグリコール酸アンモニウムを用いていないのは無論のこと、アンモニアも用いておらず、また第2液として従来よりも濃度の低い濃度1.5重量%の過酸化水素水を使用したため、頭皮に対する刺激は殆どなく、髪の毛も傷めず、また美容師等のカーリングウェーブ工程の施術者の手に対しても、優しいカーリングウェーブ剤となる。
【0053】
このようにして、本実施の形態1に係るカーリングウェーブ剤を用いたカーリングウェーブ工程においては、無害な成分である微量の炭酸カリウムを含む電解水にL−システインを加えたものを第1液とし、濃度1.5重量%の過酸化水素水を第2液とすることによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも少なく、美容師等の手も荒れることなく、不快臭を発することもない。
【0054】
実施の形態2
次に、本発明の実施の形態2について、図2を参照して説明する。図2は本発明の実施の形態2に係るカーリングウェーブ剤を用いたカーリングウェーブ工程を示すフローチャートである。
【0055】
図2に示されるように、本実施の形態2においては、カーリングウェーブ剤として第1液のみを使用した。本実施の形態2に係るカーリングウェーブ剤においては、第1液として、アルカリ性水溶液としての水素イオン指数(pH)が13.0で還元電位が−300mVで0.25重量%の炭酸カリウムを含む電解水に、12重量%の濃度になるようにL−システインを加えたものを使用した。
【0056】
このような第1液のみを用いた本実施の形態2に係るカーリングウェーブ工程について、図2を参照して説明する。図2においては、頭髪全体にカーリングウェーブ加工を行う場合について説明している。まず、髪全体に霧吹きで満遍なく水を塗布して湿らせ(ステップS20)、カール用ロットで髪の毛を巻いて固定する(ステップS21)。その上から、第1液を満遍なく塗布し(ステップS22)、スチーマーで約10分間、髪を暖める(ステップS23)。これらの工程によって、髪の毛のコルテックス内部のシスチン結合が切断される。
【0057】
続いて、カール用ロットを巻いたまま洗髪して第1液を洗い流し、良く水分を切って(ステップS24)、その後カール用ロットを髪の毛から外して(ステップS25)、髪の毛をくしでときながら、30分間〜40分間放置する(ステップS26)。これによって、切断されたコルテックス内部のシスチン結合が復元して、カール用ロットで巻かれた形状に髪の毛が固定される。そして、カーリングウェーブがかかった頭髪を乾燥して(ステップS27)、仕上げる。
【0058】
以上の工程によって、本実施の形態2に係るカーリングウェーブ剤を用いたカーリングウェーブ工程が完了し、美しいツヤのあるカーリングウェーブがしっかりとかかった頭髪が得られる。このように、本実施の形態2に係るカーリングウェーブ剤においては、第1液としてチオグリコール酸アンモニウムを用いていないのは無論のこと、アンモニアも用いておらず、また第2液を用いていないため、頭皮に対する刺激は殆どなく、髪の毛も傷めず、また美容師等のカーリングウェーブ工程の施術者の手に対しても、優しいカーリングウェーブ剤となる。
【0059】
このようにして、本実施の形態2に係るカーリングウェーブ剤を用いたカーリングウェーブ工程においては、無害な成分である微量の炭酸カリウムを含む電解水にL−システインを加えたものを第1液とし、第1液のみカーリングウェーブをかけることによって、頭皮に対する刺激も少なく、環境汚染の恐れも少なく、美容師等の手も荒れることなく、不快臭を発することもない。
【0060】
上記各実施の形態においては、第1液として微量の炭酸カリウムを含む電解水にL−システインを加えたものを用いた場合について説明したが、炭酸カリウムを含まない電解水にL−システインを加え、更に0.5重量%〜3重量%のアンモニアを加えた水溶液を用いることもできる。
【0061】
また、上記各実施の形態においては、第1液としてアルカリ性水溶液としての水素イオン指数(pH)が12.5で還元電位が−200mVの電解水に10重量%の濃度になるようにL−システインを加えたもの、またはpHが13.0で還元電位が−300mVの電解水に12重量%の濃度になるようにL−システインを加えたものを使用した場合について説明したが、電解水のpHは12.5〜14の範囲内で還元電位は−200mV〜−500mVの範囲内であれば良く、L−システインの濃度は8重量%〜15重量%の範囲内であれば良い。
【0062】
更に、上記各実施の形態においては、第1液のアルカリ性水溶液として、pHが12.5〜14の範囲内で還元電位が−200mV〜−500mVの範囲内の電解水を用いた場合について説明したが、それ以外にも海洋深層水や他のアルカリ性水溶液を使用することができる。また、pHが12.5〜14の範囲内で還元電位が−200mV〜−500mVの範囲内の電解水であれば、微量のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含む必要はない。
【0063】
本発明を実施するに際しては、カーリングウェーブ剤のその他の部分の構成、成分、配合、形状、数量、材質、大きさ、製造方法等についても、本実施の形態に限定されるものではない。なお、本発明の実施の形態で挙げている数値は、臨界値を示すものではなく、実施に好適な好適値を示すものであるから、上記数値を若干変更してもその実施を否定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】図1は本発明の実施の形態1に係るカーリングウェーブ剤を用いたカーリングウェーブ工程を示すフローチャートである。
【図2】図2は本発明の実施の形態2に係るカーリングウェーブ剤を用いたカーリングウェーブ工程を示すフローチャートである。
【図3】図3は髪の毛(頭髪)の構造を示す模式図である。
【図4】図4(a)〜(d)はカーリングウェーブ加工のメカニズムを示す模式図である。
【図5】図5は従来のカーリングウェーブ加工の手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0065】
1 髪の毛
3 コルテックス(毛皮質)
5 シスチン結合

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カール用ロットで髪の毛を巻いた後に第1液を塗布し、一定時間経過後に前記第1液を洗い流し、良く水分を切った後に第2液を塗布し、一定時間経過後に前記カール用ロットを髪の毛から取り外して温湯で前記第2液を洗い流すカーリングウェーブ工程において使用される前記第1液と前記第2液からなるカーリングウェーブ剤であって、
前記第1液はL−システインとアルカリ性水溶液とを主成分とするとともにチオグリコール酸アンモニウムを含有せず、前記第2液は3%過酸化水素水溶液(オキシドール)よりも濃度の低い過酸化水素水溶液であることを特徴とするカーリングウェーブ剤。
【請求項2】
カール用ロットで髪の毛を巻いた後に第1液を塗布し、一定時間経過後に前記第1液を洗い流し、良く水分を切った後、前記カール用ロットを髪の毛から取り外し、一定時間髪の毛に空気を通すカーリングウェーブ工程において使用される前記第1液からなるカーリングウェーブ剤であって、
前記第1液はL−システインとアルカリ性水溶液とを主成分とするとともにチオグリコール酸アンモニウムを含有しないことを特徴とするカーリングウェーブ剤。
【請求項3】
前記第1液の水素イオン指数(pH)は10〜14の範囲内であり、前記第2液の水素イオン指数(pH)は3〜6の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のカーリングウェーブ剤。
【請求項4】
前記第1液の前記アルカリ性水溶液は、水素イオン指数(pH)が12.5〜14の範囲内で還元電位が−200mV〜−500mVの範囲内で、かつ微量のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含む電解水であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のカーリングウェーブ剤。
【請求項5】
前記第1液の前記アルカリ性水溶液は、水素イオン指数(pH)が12.5〜14の範囲内で還元電位が−200mV〜−500mVの範囲内の電解水に0.5重量%〜3重量%のアンモニアを加えた水溶液であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のカーリングウェーブ剤。
【請求項6】
前記第1液のL−システインの濃度は8重量%〜15重量%であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1つに記載のカーリングウェーブ剤。
【請求項7】
前記第2液の前記過酸化水素水溶液の濃度は1.0重量%〜2.0重量%であることを特徴とする請求項1または請求項3乃至請求項6のいずれか1つに記載のカーリングウェーブ剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−73785(P2009−73785A)
【公開日】平成21年4月9日(2009.4.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−245727(P2007−245727)
【出願日】平成19年9月21日(2007.9.21)
【出願人】(507316631)
【Fターム(参考)】