説明

ガイドワイヤ

【課題】ガイドワイヤの先端部の外径を細径化して、狭窄病変部へのガイドワイヤの挿入性を高めると共に、テーパー部に摩擦抵抗部を設けることでガイドワイヤに一時的なストッパー機能を付与し、狭窄部に対してより末梢方向の末梢血管への意図しない挿入を防止して、末梢血管の血管穿孔や血管壁の損傷を防ぐことでガイドワイヤ安全性を向上させたガイドワイヤ提供する。
【解決手段】ガイドワイヤ1は、コアシャフト2とそのコアシャフト2の先端部を覆うコイル体3とから構成され、コイル体3は、太径部3aと細径部3cと太径部3aと細径部3cとの間に位置する第1テーパー部3bとを有し、第1テーパー部3bの少なくとも一部には、摩擦抵抗部4が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管、消化管、尿管等の管状器官や体内組織に挿入して、目的部位へ医療デバイス等を案内するために使用される種々のガイドワイヤが提案されてきた。
【0003】
例えば、特許文献1に記載されたガイドワイヤは、末端部と末端部の基端方向に隣接する中間部とを備え、中間部は末端部よりも潤滑性が低いことを特徴としており、末端部による挿入性と、中間部によるカテーテルとガイドワイヤとの固定性を向上させている。
【0004】
また、特許文献2に記載されたガイドワイヤは、コアワイヤとコイルスプリングとを有し、コイルスプリングが、先端側小径部と先端側小径部より外径の大きい後端側大径部と、先端側小径部と後端側大径部との間に位置するテーパー部とを備え、コイルスプリングの内部には、樹脂が充填され、且つ、コイルスプリングの表面には、親水性樹脂層が形成されており、ガイドワイヤの挿入性を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5924998号明細書
【特許文献2】特許第4354525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたガイドワイヤは、末端部による挿入性と、中間部によるカテーテルとガイドワイヤとの固定性の両立を図っているものの、ガイドワイヤの末端部が狭窄病変部内に強く挿入されてしまった際には、中間部の潤滑性が末端部より低下している場合でもガイドワイヤの末端部と中間部との外径が同一である為、中間部での固定性が不十分となり、ガイドワイヤの末端部が狭窄部より末梢側の末梢血管内に意図せずに侵入してしまい、末梢血管を穿孔したり、末梢血管内の血管壁を傷つけたりする虞を有していた。
【0007】
また、引用文献2に記載されたガイドワイヤは、先端側小径部による挿入性は向上しているものの、ガイドワイヤの遠位端が狭窄部病変部内に強く挿入されてしまった場合には、引用文献1に記載のガイドワイヤと同じ様に、ガイドワイヤの遠位端部が狭窄部より末梢側の末梢血管内に意図せずに侵入してしまい、末梢血管を穿孔したり、末梢血管内の血管壁を傷つけたりする虞を有していた。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、ガイドワイヤの先端部の外径を細径化して、狭窄病変部へのガイドワイヤの挿入性を高めると共に、テーパー部に摩擦抵抗部を設けることでガイドワイヤに一時的なストッパー機能を付与し、狭窄部に対してより末梢方向の末梢血管への意図しない挿入を防止して、末梢血管の血管穿孔や血管壁の損傷を防ぐことでガイドワイヤ安全性を向上させたガイドワイヤ提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<1>本願請求項1に係る発明は、コアシャフトと、前記コアシャフトを覆うコイル体とを有し、前記コイル体は、細径部と、太径部と、前記細径部と前記太径部との間に位置する第1テーパー部と、を有しており、前記第1テーパー部の少なくとも一部は、前記細径部よりも摩擦抵抗の高い摩擦抵抗部が設けられている、ガイドワイヤを特徴とする。
【0010】
<2>請求項2に係る発明は、請求項1に記載のガイドワイヤにおいて、
前記細径部は、先端方向に向ってコイル外径が減少する第2テーパー部を有しており、前記第2テーパー部の長軸方向に対する角度が、前記第1テーパー部の長軸方向に対する角度よりも小さい、ガイドワイヤを特徴とする。
【0011】
<3>請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤにおいて、前記細径部の前記第1テーパー部から離間した位置には、潤滑性被膜が形成されている、ガイドワイヤを特徴とする。
【0012】
<4>請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、前記摩擦抵抗部は、コイル体を形成する素線の表面に設けた凹凸部によって形成されている、ガイドワイヤを特徴とする。
【0013】
<5>請求項5に係る発明は、請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、前記摩擦抵抗部の先端は、前記第1テーパー部の先端に位置している、ガイドワイヤを特徴とする。
【0014】
<6>請求項6に係る発明は、請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、前記摩擦抵抗部が設けられている前記第1テーパー部の一部と前記コアシャフトとは、固着部によって互いに固着されている、ガイドワイヤを特徴とする。
【0015】
<7>請求項7に係る発明は、請求項6に記載のガイドワイヤにおいて、前記摩擦抵抗部の先端は、前記第1テーパー部の先端に位置し、前記固着部は、前記第1テーパー部の先端に位置している、ガイドワイヤ。
【発明の効果】
【0016】
<1>請求項1に記載のガイドワイヤは、コイル体が細径部を有しているので狭窄部に対するガイドワイヤの挿入性を向上させつつ、第1テーパー部に摩擦抵抗部を設けたので、ガイドワイヤが狭窄部に接触した際には、摩擦抵抗部が一時的なストッパーとして機能して、狭窄部より末梢方向の末梢血管への意図しない進入を防止して、末梢血管の血管穿孔や血管壁の損傷を防止し、ガイドワイヤの安全性を高める効果を奏する。
【0017】
<2>請求項2に記載のガイドワイヤは、コイル外径が先端方向に向って減少する第2テーパー部を細径部に有しており、且つ、第2テーパー部の長軸方向に対する角度が、第1テーパー部の長軸方向に対する角度よりも小さいので、第1テーパー部の摩擦抵抗部によるストッパー機能を確保しつつ、第2テーパー部による狭窄部へのガイドワイヤの挿入性をさらに向上させる効果を奏する。
【0018】
<3>請求項3に記載のガイドワイヤは、細径部の前記第1テーパー部から離間した位置に潤滑性被膜を形成しているので、第1テーパー部の摩擦抵抗部によるストッパー機能を確保しつつ、狭窄部へのガイドワイヤの挿入性を大幅に向上させる効果を奏する。
【0019】
<4>請求項4に記載のガイドワイヤは、摩擦抵抗部が、コイル体を形成する素線の表面に設けた凹凸によって形成されているので、摩擦抵抗部を簡単に構成することができ、さらに、摩擦抵抗部と狭窄部との間で物理的な摩擦を付与することが出来るので、第1テーパー部の摩擦抵抗部によるストッパー機能をさらに向上させて、延いては、ガイドワイヤの安全性をさらに向上させる効果を奏する。
【0020】
<5>請求項5に記載のガイドワイヤは、摩擦抵抗部の先端が、第1テーパー部の先端に位置しており、コイル外径が拡大し始める第1テーパー部の先端で、摩擦抵抗部が狭窄部と接触するので、第1テーパー部の摩擦抵抗部によるストッパー機能をさらに向上させ、延いては、ガイドワイヤの安全性をさらに向上させる効果を奏する。
【0021】
<6>請求項6に記載のガイドワイヤは、摩擦抵抗部が設けられている第1テーパー部とコアシャフトとが固着部にて固着されているので、摩擦抵抗部が狭窄部と接触した場合でも、摩擦抵抗部を有する第1テーパー部の変形を防止することができるので、第1テーパー部の摩擦抵抗部によるストッパー機能をさらに向上させ、延いては、ガイドワイヤの安全性をさらに向上させる効果を奏する。
【0022】
<7>請求項7に記載のガイドワイヤは、固着部と摩擦抵抗部の先端とが、第1テーパー部の先端に設けられているので、第1テーパー部の先端の変形を確実に防止して、第1テーパー部の摩擦抵抗部によるストッパー機能を大幅に向上し、延いては、ガイドワイヤの安全性を大幅に向上させる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1実施形態を示すガイドワイヤの全体図である。
【図2】本発明の第2実施形態を示すガイドワイヤの構成図であり、(a)がガイドワイヤの全体図であり、(b)がガイドワイヤの部分拡大図である。
【図3】本発明の第3実施形態を示すガイドワイヤの全体図である。
【図4】本発明の第4実施形態を示すガイドワイヤの全体図である。
【図5】本発明の第5実施形態を示すガイドワイヤの構成図であり、(a)がガイドワイヤの全体図であり、(b)がガイドワイヤの部分拡大図である。
【図6】本発明の第6実施形態を示すガイドワイヤの全体図である。
【0024】
以下、本発明のガイドワイヤを図面に示す好適実施形態に基づいて説明する。
【0025】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態のガイドワイヤを示す全体図である。
【0026】
なお、図1では、説明の都合上、左側を「基端」、右側を「先端」として説明する。
また、図1では、理解を容易にするため、ガイドワイヤ1の長さ方向を短縮し、全体的に模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0027】
図1において、ガイドワイヤ1は、コアシャフト2と、コアシャフト2の先端部を覆うコイル体3とから構成されている。
【0028】
また、コアシャフト2は、太径部2aと、太径部2aの先端に位置して、先端方向に向って外径が減少するテーパー部2bと、テーパー部2bの先端に位置する細径部2cとを有している。
【0029】
また、コイル体3は、太径部3aと、太径部3aの先端方向に位置する細径部3cと、太径部3aと細径部3cとの間に位置する第1テーパー部3bとを有している。
【0030】
また、コイル体3の太径部3aの基端とコアシャフト2の太径部2aの先端とは、ロウ付け9によって固着されており、コイル体3の細径部3cの先端と、コアシャフト2の細径部2cの先端とは、最先端部6によって固着されている。
また、コイル体3の太径部3aの先端部と、コイル体3の細径部3cの中間部とは、コアシャフト2の細径部2cに固着部7を介して固着されている。
【0031】
さらに、コイル体3の第1テーパー部3bの一部には、コイル体3の細径部3cよりも摩擦抵抗が高い、摩擦抵抗部4が設けられている。
【0032】
このように、ガイドワイヤ1は、コイル体3が、細径部3cを有しているので、狭窄部に対するガイドワイヤ1の挿入性を向上させることができる。また、摩擦抵抗部4がコイル体3の第1テーパー部3bに設けられているので、狭窄病変へガイドワイヤ1を挿入する際に、術者が誤って狭窄部へガイドワイヤ1を勢い良く挿入した場合でも、コイル体3の第1テーパー部3bに設けた摩擦抵抗部4が狭窄部と接触して、一時的なストッパーとして機能する。これにより、ガイドワイヤ1は狭窄部よりさらに末梢方向の末梢血管に対する意図しない侵入を防止する機能を有する為、末梢血管の血管穿孔と血管壁の損傷を防止することができ、ガイドワイヤ1の安全性を向上させることができる。
【0033】
また、コイル体3の太径部3aの先端側とコイル体3の細径部3cの中間部とが、コアシャフト2の細径部2cに固着部7を介して固着されているので、コイル体3の第1テーパー部3bが狭窄部に接触した際に、摩擦抵抗部4が設けられているコイル体3の第1テーパー部3bが変形し難くなる。この結果、摩擦抵抗部4が病変部に対してしっかりと接触するので、摩擦抵抗部4によるガイドワイヤ1のストッパー機能を向上させることができる。
【0034】
本実施形態のガイドワイヤ1は、次の方法で作製することができる。
まず、コイル体3を構成する為に芯金を用意する。この芯金は、太径部と、細径部と、この太径部と細径部との間に位置するテーパー部とを有している為、この芯金にコイル体3の素線を巻きつけ、その後、芯金を引き抜くことで、コイル体3を作製することができる。
尚、コイル体3の素線を芯金に巻きつけ後、コイル体3の形状を保持する為に、熱処理を行って、コイル体3の素線を芯金に巻きつけた際に発生した応力を緩和させても良い。
【0035】
次に、センタレス研磨機等を用いてコアシャフト2に太径部2aとテーパー部2bと細径部2cとを形成し、コアシャフト2の細径部2cの先端をコイル体3の太径部3aの基端側に挿入して、コイル体3の太径部3aの基端とコアシャフト2の太径部2aの先端とをロウ付け9によって固着する。
【0036】
次に、コイル体3の細径部3cの先端とコアシャフト2の細径部2cの先端とを最先端部6にて固着する。
【0037】
そして、最後に、コイル体3の太径部3aの先端部とコイル体3の細径部3cの中間部とを、それぞれコアシャフト2の細径部2cに固着部7を介して固着することで、ガイドワイヤ1を作製することができる。
【0038】
尚、コイル体3とコアシャフト2とを固着する固着部7、最先端部6、及びロウ付け9を形成する際には、図示していないが、この形成部に相当するコイル体3の素線の素線間に間隙を設けて、コイル体3とコアシャフト2との固着を形成し易くしても良い。
【0039】
コイル体3の第1テーパー部3bに摩擦抵抗部4を設ける場合は、コイル体3を形成した後か、ガイドワイヤ1を形成した後に、コイル体3の第1テーパー部3bの一部又は全体に、血管との摩擦抵抗を高める様な処理を施せば良い。例えば、ゴム成分やエラストマー成分を溶媒に溶解して溶液を作製し、その溶液をコイル体3の第1テーパー部3bに塗布する方法か、コイル体3の第1テーパー部3bの外周表面にゴム成分やエラストマー成分の層を設けて、金型や熱収縮チューブによる加熱によってゴム成分やエラストマー成分を溶融させる成形方法か、または、コイル体3の第1テーパー部3bに押し出し等によってエラストマー成分の溶融体を設ける方法を採用することで、コイル体3の第1テーパー部3bに摩擦抵抗部4を設けることができる。
【0040】
また、血管との摩擦抵抗を高める方法としては、これに限定されること無く、他の方法であっても良く、コイル体3の第1テーパー部3bの表面粗度を粗く加工する方法でも良い。
【0041】
次に、第1実施例のガイドワイヤ1を構成する材料を以下に記載する。
摩擦抵抗部4を形成するゴム成分やエラストマー成分としては、特に限定されるものではないが、ゴム成分として、シリコンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、及びエピクロルヒドリンゴム等を使用することができ、また、エラストマー成分として、スチレン系エラストマー、オレフィン系、ポリウレタン系、ポリエステル系、及びポリアミド系等を使用することができる。また、ゴム成分やエラストマー成分を混合したポリマーアロイを用いても良い。
【0042】
また、ゴム成分やエラストマー成分で摩擦抵抗部4を形成する場合は、コイル体3の第1テーパー部3bをプラズマ処理やプライマー処理することで表面改質を行って、摩擦抵抗部4とコイル体3の第1テーパー部3bとの固着強度を高めても良い。このようにすることで、摩擦抵抗部4のコイル体3の第1テーパー部3bからの剥離を防止して、ガイドワイヤ1のストッパー機能の低下を防ぐことができる。
【0043】
また、コアシャフト2を形成する材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス鋼(SUS304)、Ni−Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線等の材料を使用することができる。
【0044】
また、コイル体3を形成する材料としては、放射線不透過性を有する素線、又は放射線透過性を有する素線を用いることができる。
放射線不透過性を有する素線の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、金、白金、タングステン、又はこれらの元素を含む合金(例えば、白金−ニッケル合金)等を使用することができる。
また、放射線透過性を有する素線の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ステンレス鋼(SUS304やSUS316等)、Ni−Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線等を使用することができる。
【0045】
また、コイル体3は、放射線不透過性の素線と放射線透過性の素線とから形成しても良い。この場合、コイル体3の細径部3cと、第1テーパー部3bと、太径部3aの先端部とを白金−ニッケル合金の様な放射線不透過性の素線で形成し、コイル体3の太径部3aの先端部より基端側をステンレス鋼の様な放射線透過性の素線で形成することが好ましい。
これにより、コイル体3の細径部3cの先端から第1テーパー部3bを含む太径部3aの先端部までの放射線透視下での視認性が向上するので、術者がこのガイドワイヤ1を操作して、コイル体3の細径部3c及び第1テーパー部3bが狭窄部に衝突した際には、狭窄部の位置とガイドワイヤ1の位置を把握することができる。この結果、ガイドワイヤ1のその後の操作を慎重に行なえるので、ガイドワイヤ1による狭窄部より末梢方向の末梢血管の血管穿孔と末梢血管の血管壁の損傷を防止することができ、ガイドワイヤ1の安全性を向上させることができる。
【0046】
上述した様にコイル体3の細径部3cと、第1テーパー部3bと、太径部3aの先端部とを放射線不透過性の素線で形成し、コイル体3の太径部3aの先端部よりも基端側を放射線透過性の素線で形成する場合には、コイル体3は、放射線不透過性の素線の基端と放射線透過性の素線の先端とを溶接するか、または、コイル体3の太径部3aとコアシャフト2の細径部2cとを固着した固着部7を介して、放射線不透過性の素線の基端と放射線透過性の先端とを固着接合することで作製することができる。
【0047】
コアシャフト2の太径部2aの先端とコイル体3の太径部3aの基端とを固着するロウ付け9、コアシャフト2の細径部2cとコイル体3の太径部3a及び細径部3cとを固着する固着部7、及びコアシャフト2の細径部2cの先端とコイル体3の細径部3cの先端とを固着する最先端部6の材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム合金ロウ、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn−Pb合金、Pb−Ag合金、Sn−Ag、Au−Sn合金等の金属ハンダや、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、各種エラストマー材料、又はエポキシ樹脂等の接着剤等の合成樹脂を使用することができる。
【0048】
また、金属ハンダを用いて、各部品を組み付ける際には、固着を行なう位置に予めフラックスを塗布しておくことが好ましい。これにより、金属ハンダと各部品との濡れ性が良好となり、固着強度が増加する。
【0049】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態のガイドワイヤ11について、図2(a)と(b)を用いて、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図2(a)は、理解を容易にするため、ガイドワイヤ11の長さ方向を短縮し、ガイドワイヤ11の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。また、図2(b)はガイドワイヤ11の先端部の部分拡大図であり、図2(a)と同様に、図の寸法は、実際とは異なる。
【0050】
図2(a)において、ガイドワイヤ11は、コアシャフト2と、コアシャフト2の先端部を覆うコイル体13とから構成されている。
【0051】
コイル体13は、太径部13aと、細径部13cと、太径部13aと細径部13cとの間に位置している第1テーパー部13bとを有しており、さらに、細径部13cの全長に亘って、先端方向に向ってコイル外径が減少する第2テーパー部を有している。
また、コイル体13の第1テーパー部13bには、摩擦抵抗部4が設けられている。
また、コアシャフト2の細径部2cと、コイル体13の第1テーパー部13bの中間部及び細径部13cの中間部とは、固着部7によって固着されている。
【0052】
また、図2(b)に示している様に、ガイドワイヤ1の長軸方向において、コイル体13の第1テーパー部13bは、ガイドワイヤ1の中心線CLに対して平行である直線L1と第1テーパー部13bの接線である直線L2とが成す角度θ1を有している。
【0053】
また、コイル体13の細径部13cに設けた第2テーパー部は、ガイドワイヤ1の長軸方向において、ガイドワイヤ1の中心線CLに対して平行である直線L3と第2テーパー部の接線である直線L4とが成す角度θ2を有している。
【0054】
さらに、第1テーパー部13bが有する角度θ1は、第2テーパー部が有する角度θ2よりも大きくなるように設計されている。
【0055】
このようにガイドワイヤ11は、コイル体13の細径部13cに先端に向ってコイル外径が減少する第2テーパー部を有しているので、血管内の狭窄部へのガイドワイヤ11の挿入性を向上させることができる。
【0056】
さらに、コイル体13の第1テーパー部13bが有するガイドワイヤ11の長軸方向における角度θ1が、コイル体13の細径部13cに設けた第2テーパー部が有する長軸方向における角度θ2よりも、角度が大きくなるように設計されている。この為、コイル体13の第1テーパー部13bに設けている摩擦抵抗部4が、血管内の狭窄部に接触しやすくなる為、一時的なストッパーとしての機能を確保することができるので、狭窄部よりさらに末梢方向の末梢血管に対するガイドワイヤ11の意図しない侵入を防止して、末梢血管の血管穿孔と血管壁の損傷を防止することができ、ガイドワイヤ11の安全性を確保することができる。
【0057】
コイル体13の製造方法としては、第1実施形態でコイル体3を作製した方法と同じ方法で作製することができ、その際には、コイル体13の第1テーパー部13bにあたる部分の芯金の形状(角度)を、コイル体13の第2テーパー部にあたる部分の芯金の形状(角度)よりも、大きくしておく必要がある。この芯金に、コイル体13を形成する素線を巻き付けて、巻き付けた後、芯金を抜き取ることで、コイル体13を作製することができる。
【0058】
コイル体13の細径部13cに形成した第2テーパー部は、細径部13cの一部に設けても良いが、図2(a)の様に、細径部13cの先端から基端にかけての全長に亘って設けることが好ましい。
このように、コイル体13の細径部13cの全長に亘って第2テーパー部を設けることで、ガイドワイヤ11の血管内の狭窄部に対する挿入性を向上させることができる。
【0059】
また、ガイドワイヤ11は、コアシャフト2の細径部2cとコイル体13の第1テーパー部13bの中間部とが固着部7にて固着されていることから、血管内の狭窄部にコイル体13の第1テーパー部13bが接触した場合でも、摩擦抵抗部4を設けた第1テーパー部13bの変形を防止することができ、ガイドワイヤ11の一時的なストッパー機能を向上させることができる。
【0060】
また、コアシャフト2の細径部2cとコイル体13の第1テーパー部13bの中間部とが固着部7にて固着されているので、コイル体13の第1テーパー部13bに設けられた摩擦抵抗部4が、狭窄病変と接触した際に、その接触した時の感触が固着部7を介してコアシャフト2の細径部2cに伝えられ、術者はガイドワイヤ11の操作をより慎重に行うことができる。その結果、末梢血管の血管穿孔と血管壁の損傷を防止して、ガイドワイヤ11の安全性を向上させることができる。
【0061】
尚、コアシャフト2の細径部2cとコイル体13の細径部13cとを固着する固着部7は、第1実施形態で形成した固着部7と同じ方法で設けることができる。
【0062】
また、コアシャフト2の細径部2cとコイル体13の第1テーパー部13bとを固着する固着部7は、金ロウやAu−Sn合金のような金を主成分とする金属ロウ又は金属ハンダで形成することが好ましい。金を主成分とする金属ロウや金属ハンダは剛性が高い為、コイル体13の第1テーパー部13bと血管内の狭窄部とが接触した際に、コイル体13の第1テーパー部13bの変形を防止することができる為、コイル体13の第1テーパー部13bに設けた摩擦抵抗部4の一時的なストッパー機能をさらに向上させることができる。
【0063】
また、金を主成分とする金属ロウや金属ハンダは放射線不透過性を有する為、摩擦抵抗部4に放射線透視下での視認性を向上させることができる。これにより、摩擦抵抗部4が狭窄部と接触した際に、ガイドワイヤ11の位置を確認しながら、操作することができるので、狭窄部よりさらに末梢方向の末梢血管に対する意図しない侵入を防止して、末梢血管の血管穿孔と血管壁の損傷を防止して、ガイドワイヤ11の安全性を向上させることができる。
【0064】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態のガイドワイヤ21について、図3を用いて、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図3は、理解を容易にするため、ガイドワイヤ21の長さ方向を短縮し、ガイドワイヤ21の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0065】
図3において、ガイドワイヤ21は、コアシャフト2と、コアシャフト2の先端部を覆うコイル体3と、最先端部6とコイル体3の細径部3cの一部を覆う潤滑性被膜8とから形成されており、コイル体3の第1テーパー部3bの全長に亘って、摩擦抵抗部4が設けられている。
【0066】
また、コアシャフト2の細径部2cと、コイル体3の第1テーパー部3bの中間部及び細径部3cの中間部とは、固着部7によって互いに固着されている。
【0067】
このように、ガイドワイヤ21は、コイル体3の細径部3cに潤滑性被膜8を有しているので、血管内の狭窄部に対するガイドワイヤ21の挿入性をさらに高めることができる。
【0068】
さらに、コイル体3の第1テーパー部3bの全長に亘って、摩擦抵抗部4が設けられており、コイル体3の第1テーパー部3bの先端に摩擦抵抗部4の先端が位置している。この為、血管内の狭窄部に対するガイドワイヤ21の一時的なストッパー機能をさらに向上させることができるので、狭窄部よりさらに末梢方向の末梢血管に対する意図しない侵入を防止して、末梢血管の血管穿孔と血管壁の損傷を防止することができ、ガイドワイヤ21の安全性をさらに向上させることができる。
【0069】
また、潤滑性被膜8は、コイル体3の細径部3cの全長に亘って設けても良いが、図3に記載されているように、コイル体3の第1テーパー部3bから離間した部分、例えば、コイル体3の細径部3cの基端を除く部分、のコイル体3の細径部3cに潤滑性被膜潤滑性被膜8を形成することが好ましい。
コイル体3の細径部3cの全長に亘って潤滑性被膜8を形成してしまうと、コイル体3の第1テーパー部3bの先端に潤滑性被膜8が形成される可能性が存在する。このように、コイル体3の第1テーパー部3bの先端に潤滑性被膜8を設けてしまうと、摩擦抵抗部4によるストッパー機能が低下する可能性がある為、コイル体3の第1テーパー部3bの先端への潤滑性被膜8の形成は出来るだけ避けた方が良い。また、コイル体3の第1テーパー部3bの先端にかかることなく、細径部3cの全長のみに潤滑性被膜8を設ける為には、潤滑性被膜8の形成を慎重に行う必要がある。
【0070】
コイル体3の細径部3cに潤滑性被膜8を形成する方法としては、潤滑性被膜8の潤滑性成分を溶媒に溶解させて作製した潤滑性成分の溶液、または潤滑性成分が分散した分散液にガイドワイヤ21のコイル体3の細径部3cを浸漬させて、その後、ガイドワイヤ21のコイル体3の細径部3cを乾燥して溶媒等を揮発させることで、ガイドワイヤ21のコイル体3の細径部3cに潤滑性被膜8を形成することができる。
【0071】
また、これに限定されることなく、潤滑性成分が溶解した溶液、又は、潤滑性成分が分散した分散液をハケ等で塗布しても良く、この他の公知の方法によって、コイル体3の細径部3cに潤滑性被膜8を形成しても良い。
【0072】
潤滑性被膜8を形成する潤滑性成分の材料としては、特に限定されるものではないが、親水性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリメチルアクリルアミド、ポリ(2−ハイドロキシエチルメタクリレート)、ポリ(N−ハイドロキシエチルアクリルアミド)等のノニオン系親水性高分子、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ポリ(2−アクリルアミド−2メチルプロパンスルホン酸)等のアニオン系親水性高分子や、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン等のカチオン性親水性高分子を用いることができる。また、これらの親水性高分子を複数用いても良いが、イオン性官能基を複数用いる場合は、イオンコンプレックスの形成を防ぐために、アニオン系かカチオン系のいずれかに統一した方が良い。
また、疎水性の高分子としては、ポリジメチルシロキサンの様なシリコーンオイルやポリテトラフルオロエチレンに代表されるフッ素系樹脂を用いることができる。
【0073】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態のガイドワイヤ31について、図4を用いて、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図4は、理解を容易にするため、ガイドワイヤ31の長さ方向を短縮し、ガイドワイヤ31の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0074】
図4において、ガイドワイヤ31は、潤滑性被膜18が、基端部を形成する薄肉部18aと先端部を形成する厚肉部18bとから構成されている点を除けば、第3実施形態と同じ構造を有している。
【0075】
このようなガイドワイヤ31は、潤滑性被膜18が、潤滑性被膜18の基端部を形成する薄肉部18aと基端部を形成する厚肉部18bとから構成されている為、潤滑性被膜18の厚肉部18bによって、コイル体3の細径部3cの先端部の潤滑性を大幅に高めて、血管内の狭窄部に対するガイドワイヤ31の挿入性を大幅に向上させることができる。さらに、潤滑性被膜18の薄肉部18aは、コイル体3の細径部3cの基端側の潤滑性をコイル体3の細径部3cの先端側の潤滑性よりも低くさせることができる。これにより、血管内の狭窄部がコイル体3の第1テーパー部3bに衝突する際の速度を若干低下させることができ、コイル体3の第1テーパー部3bに設けた摩擦抵抗部4による一時的なストッパー機能をより向上させることができる。この結果、狭窄部よりさらに末梢方向の末梢血管に対する意図しない侵入を防止して、末梢血管の血管穿孔と血管壁の損傷を防止することができ、ガイドワイヤ31の安全性をより向上させることができる。
【0076】
このように潤滑性被膜18を形成する方法としては、第3実施形態と同じ方法を採用することができる。例えば、潤滑性成分が溶解した溶液、又は潤滑性成分が分散した分散液にガイドワイヤ31のコイル体3の細径部3cを浸漬して、その後、ガイドワイヤ31を乾燥して、乾燥後、ガイドワイヤ31のコイル体3の細径部3cの先端側を、潤滑性成分が溶解した溶液、又は潤滑性成分が分散した分散液に浸漬して、ガイドワイヤ31を乾燥し、溶媒等を揮発させて、ガイドワイヤ31を作製することができる。
【0077】
また、潤滑性被膜18を形成する他の方法としては、例えば、図4に記載している様に、コイル体3の細径部3cの先端側を形成する素線は密巻き状態にしておき、基端側を形成するコイル素線の素線間には間隙を形成しておく。
次に、上述した様にコイル体3の細径部3cを、潤滑性成分が溶解した溶液、又は、潤滑性成分が分散した分散液に浸漬し、その後、ガイドワイヤ31を乾燥する。すると、コイル体3の細径部3cの基端側のコイル素線の素線間には間隙が形成されている為、潤滑性成分が溶解した溶液、又は潤滑性成分が分散した分散液がコイル体3の内部に浸透するので、潤滑性被膜18の薄肉部18aを得ることが出来る。また、コイル体3の細径部3cの先端側は、コイル素線は密巻き状態なので、潤滑性成分が溶解した溶液、又は潤滑性成分が分散した分散液がコイル体3の内部に浸透することが無く、潤滑性被膜18の圧肉部18bを形成することができる。
【0078】
この方法によれば、コイル体3の細径部の3cの基端側を形成するコイル素線の素線間に間隙を設けることで、潤滑性被膜18の薄肉部18aを有したガイドワイヤ31を容易に形成することができる。
【0079】
また、潤滑性被膜18の薄肉部18aは、潤滑性被膜18の膜厚を先端から基端方向にかけて、減少させた構造であっても良い。このような被膜を形成したガイドワイヤ31は、例えば、コイル体3の細径部3cの基端側を形成するコイル素線の素線間の間隙を、コイル体3の細径部3cの先端から基端方向に向うに従って拡大したコイル体3を形成し、その後、前述した潤滑性被膜18の形成方法を用いることで作製することができる。
【0080】
また、潤滑性被膜18の先端側と基端側で潤滑性の異なる潤滑性被膜18を形成しても良い。このような被膜を形成したガイドワイヤ31は、例えば、潤滑性被膜18の先端側を前述した親水性高分子で形成し、潤滑性被膜18の基端側を前述した疎水性高分子で形成することで作製することができる。
【0081】
<第5実施形態>
次に、第5実施形態のガイドワイヤ41について、図5(a)と(b)を用いて、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図5(a)は、理解を容易にするため、ガイドワイヤ41の長さ方向を短縮し、ガイドワイヤ41の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0082】
また、図5(b)は、図5(a)のコイル体3の第1テーパー部3bの一部を囲む拡大矩形部Aを拡大したものである。また、コアシャフト2の細径部2cとコイル体3の第1テーパー部3bとを固着する固着部7は、説明を容易にする為、省略して記載している。尚、図5(b)は、図に対して上部が、コアシャフト2側であり、図に対して下部が、コイル体3の外表面方向に該当する。
【0083】
図5(a)及び(b)において、ガイドワイヤ41は、摩擦抵抗部14が、コイル体3の第1テーパー部3bを構成するコイル素線の表面に設けた凹凸部5によって形成された点を除けば、第3実施形態と同じ構造を有している。尚、図5(b)に記載の凹凸部5は、コイル体3の外表面方向に向って形成されており、コイル体3の内表面側には、凹凸部5は形成されていない。
【0084】
このようなガイドワイヤ41は、コイル体3の第1テーパー部3bを構成するコイル素線の表面に設けた凹凸部5によって形成された摩擦抵抗部14を有しているので、摩擦抵抗部14を簡単に構成することができる。さらに、ガイドワイヤ41は凹凸部5を有しているので、摩擦抵抗部14と狭窄部との間で物理的な摩擦が高まり、コイル体3の第1テーパー部3bに設けた摩擦抵抗部14によるストッパー機能をさらに向上させることもできる。これにより、ガイドワイヤの安全性をさらに向上させる効果を奏する。
【0085】
コイル体3の第1テーパー部3bを構成するコイル素線の表面に、凹凸部5を形成する方法としては、コイル体3の太径部3aと細径部3cに金型、フッ素系の熱収縮チューブ、又はマスキングテープ等によるマスキングを施して、第1テーパー部3bの表面を晒した状態で、スパッタリング方法、ブラスト法、又は切削法等がある。また、これに限定されることなく、他の公知の方法を用いることができる。
【0086】
スパッタリング方法で用いる材料としては、放射線透過性のステンレス鋼や放射線不透過性の金や白金等の金属、及び、ヒドロキシアパタイトのような生体適合性に優れたセラミックを用いることができる。
【0087】
この内、金や白金等の放射線不透過性の金属で凹凸部5を形成することが好ましい。放射線不透過性の金属で凹凸部5を形成することで、摩擦抵抗部14に放射線透視下での視認性を向上させることができる。これにより、摩擦抵抗部14が狭窄部と接触した際に、ガイドワイヤ41の位置を確認しながら、操作することができるので、狭窄部よりさらに末梢方向の末梢血管に対する意図しない侵入を防止して、末梢血管の血管穿孔と血管壁の損傷を防止して、ガイドワイヤ41の安全性をより向上させることができる。
【0088】
また、ブラスト方法で用いる研掃材としては、比較的荒い凹凸部5を形成する為に、粒径の大きなガラスビーズ、酸化アルミナビーズ、ステンレス鋼ビーズを用いることができる。
【0089】
また、切削方法では、リューターの様な器具を用いて、リューターに取り付けた砥石の角をコイル体3の第1テーパー部3bに接触させることにより、第1テーパー部3bの表面に凹凸部5を形成し、摩擦抵抗部14を作製することができる。
【0090】
尚、図5(b)では、コイル体3の第1テーパー部3bの外表面側に凹凸部5が形成されているが、これに限定されることなく、コイル体3の第1テーパー部3bを形成するコイル素線の全周に凹凸部5が形成されていても良い。
【0091】
この場合には、コイル体3の第1テーパー部3bを形成する一定長さのコイル素線の全周に凹凸部5を形成しておき、第1実施形態で記載した様に、コイル素線の全周に凹凸部5を有した部分が、芯金のテーパー部に該当するように、コイル体3を捲回する等して、コイル体3を得ることができる。
【0092】
<第6実施形態>
次に、第6実施形態のガイドワイヤ51について、図6を用いて、第1実施形態とは異なる点を中心に説明する。第1実施形態と共通する部分については、図中では同じ符号を付すこととする。
なお、図6は、理解を容易にするため、ガイドワイヤ51の長さ方向を短縮し、ガイドワイヤ51の全体を模式的に図示しているため、全体の寸法は実際とは異なる。
【0093】
図6において、ガイドワイヤ51は、コアシャフト2の細径部2cと、摩擦抵抗部4の基端、即ち、コイル体3の第1テーパー部3bの基端とが固着部7aで固着されている点、及びコアシャフト2の細径部2cと、摩擦抵抗部4の先端、即ち、コイル体3の第1テーパー部3bの先端とが固着部7bで固着されている点を除けば、第3実施形態と同じ構造を有している。
尚、コアシャフト2の細径部2cとコイル体3の細径部3cとは、固着部7cによって固着されている。
【0094】
このようなガイドワイヤ51は、固着部7aと摩擦抵抗部4の基端とが、第1テーパー部3bの基端に設けられているので、摩擦抵抗部4が変形を受けることなく、血管内の狭窄部に接触させることができる。これにより、摩擦抵抗部4によるストッパー機能を向上させて、ガイドワイヤ51の安全性を向上させることができる。
【0095】
さらに、ガイドワイヤ51は、固着部7bと摩擦抵抗部4の先端とが、第1テーパー部3bの先端に設けられているので、第1テーパー部3bと血管内の狭窄部が接触した場合でも、第1テーパー部3bの先端の変形を確実に防止して、第1テーパー部3bに設けた摩擦抵抗部4によるストッパー機能を大幅に向上させることができる。これにより、ガイドワイヤ51の安全性を大幅に向上させる効果を奏する。
【0096】
尚、コイル体3の第1テーパー部3bの長軸方向の全長に亘ってコアシャフト2の細径部2cと固着する固着部を設けても良いが、ガイドワイヤ51の先端部の剛性が急激の増加する可能性がある為、柔軟性を確保する意味でも、固着部7aと固着部7bとは別体として形成することが好ましい。
【0097】
また、コイル体3の第1テーパー部3bの変形を確実に防止する為には、固着部7aと固着部7bとを同時に形成することが良いが、これに限定されることなく、どちらか一方の固着部をガイドワイヤ51に形成しても良い。どちらか一方の固着部を設ける場合には、ガイドワイヤ51のストッパー機能の向上の観点から、コアシャフト2の細径部2cと、摩擦抵抗部4、即ち、コイル体3の第1テーパー部3bの先端とを固着している固着部7bを設けることが好ましい。
【0098】
また、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術思想内において、当業者による種々の変更が可能である。
【0099】
例えば、図2に記載している第2実施形態のガイドワイヤ11において、コアシャフト2のテーパー部2bとコアシャフト2cとの境界を、コアシャフト2の細径部2cとコイル体3の第1テーパー部3bとを固着している固着部7の位置に設けて、コイル体3の第1テーパー部3bの変形を防止して、コイル体3の第1テーパー部3bに設けた摩擦抵抗部4の一時的なストッパー機能を向上させても良い。
【0100】
また、図3に記載している第3実施形態のガイドワイヤ21において、コイル体3の太径部3aにも潤滑性被膜を形成しても良い。
【0101】
また、ガイドワイヤ21のコイル体3の細径部3cに設けた潤滑性被膜8よりも潤滑性を低下させ、且つ、摩擦抵抗部4のストッパー機能による摩擦を十分に確保できる範囲で、コイル体3の第1テーパー部3bに潤滑性被膜を非常に薄く形成しても良い。
【0102】
また、本実施形態のコアシャフト2の形状に係らず、テーパー部2bと細径部2cを複数設けて、複数の段階を経て、コアシャフト2の外径を変化させても良い。
【0103】
また、本実施形態のコイル体の形状に係らず、ストッパー機能を有する範囲で、複数のテーパー部と複数の摩擦抵抗部を設けても良い。
【0104】
また、例えば、第1実施形態のように、ガイドワイヤ1のコイル体3の第1テーパー部3bとコアシャフト2の細径部2cとが、固着部7によって固着されていない場合、ガイドワイヤ1のコイル体3の第1テーパー部3bは、このコイル体3の第1テーパー部3bを形成するコイル素線の一部又は全部を密巻きに捲回して形成することが好ましい。コイル体3の第1テーパー部3bを密巻きに捲回することにより、コイル体3の第1テーパー部3bの遊びがなくなる為、コイル体3の第1テーパー部3bの変形を防止することができる。これにより、コイル体3の第1テーパー部3bに設けられた摩擦抵抗部4と狭窄病変とがしっかりと接触するので、ガイドワイヤ1のストッパー機能をさらに向上させ、ガイドワイヤ1の安全性を高めることができる。
【符号の説明】
【0105】
1、11、21、31、41、51 ガイドワイヤ
2 コアシャフト
2a 太径部(コアシャフト)
2b テーパー部(コアシャフト)
2c 細径部(コアシャフト)
3、13 コイル体
3a、13a 太径部(コイル体)
3b、13b 第1テーパー部(コイル体)
3c、13c 細径部(コイル体)
4、14 摩擦抵抗部
5 凹凸部
6 最先端部
7、7a、7b、7c 固着部
8、18 潤滑性被膜
18a 厚肉部(潤滑性被膜)
18b 薄肉部(潤滑性被膜)
9 ロウ付け

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアシャフトと、前記コアシャフトを覆うコイル体とを有し、
前記コイル体は、細径部と、太径部と、前記細径部と前記太径部との間に位置する第1テーパー部と、を有しており、
前記第1テーパー部の少なくとも一部は、前記細径部よりも摩擦抵抗の高い摩擦抵抗部が設けられている、ガイドワイヤ。
【請求項2】
請求項1に記載のガイドワイヤにおいて、
前記細径部は、先端方向に向ってコイル外径が減少する第2テーパー部を有しており、
前記第2テーパー部の長軸方向に対する角度が、前記第1テーパー部の長軸方向に対する角度よりも小さい、ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のガイドワイヤにおいて、
前記細径部の前記第1テーパー部から離間した位置には、潤滑性被膜が形成されている、ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、
前記摩擦抵抗部は、コイル体を形成する素線の表面に設けた凹凸部によって形成されている、ガイドワイヤ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、
前記摩擦抵抗部の先端は、前記第1テーパー部の先端に位置している、ガイドワイヤ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1つに記載のガイドワイヤにおいて、
前記摩擦抵抗部が設けられている前記第1テーパー部の一部と前記コアシャフトとは、固着部によって互いに固着されている、ガイドワイヤ。
【請求項7】
請求項6に記載のガイドワイヤにおいて、
前記摩擦抵抗部の先端は、前記第1テーパー部の先端に位置し、
前記固着部は、前記第1テーパー部の先端に位置している、ガイドワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−115315(P2012−115315A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−265255(P2010−265255)
【出願日】平成22年11月29日(2010.11.29)
【出願人】(390030731)朝日インテック株式会社 (140)
【Fターム(参考)】