説明

ガイドワイヤ

【課題】操作性の良好なガイドワイヤを提供すること。
【解決手段】ガイドワイヤ1Eは、先端部10と本体部20とからなるガイドワイヤであって、先端部10は、第一の湾曲部31と、第一の湾曲部31の先端側に形成され、第一の湾曲部31と反対の方向に湾曲する第二の湾曲部32と、第二の湾曲部32の先端側に形成され、第二の湾曲部32と反対の方向に湾曲する第三の湾曲部33とを有し、第一の湾曲部31は、本体部10よりも柔軟性が高く、第二の湾曲部32は、第一の湾曲部31よりも柔軟性が高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療または検査を目的として使用されるカテーテルやイントロデューサーキット等の医療用具を、血管内の所望の部位まで導入する為に使用されるガイドワイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
ガイドワイヤは、血管の診断および治療を経皮的に行う際に、カテーテルやイントロデューサーキット等の医療用具を血管内に導入、留置する際に使用される。カテーテル等の医療用具を血管に導入する際の部位は、従来フェモラル(大腿部)が主流であったが、近年患者に対する負担を軽減する為に、ブラキアル(上腕部)や特にラディアル(手首部)に移行しつつあり、分岐や蛇行を有することが多い腕部血管内で安全に用いることができ、かつ操作性に優れる、先端に例えばJ型形状を有するガイドワイヤが望まれている。
【0003】
従来、先端にJ型形状を有するガイドワイヤを導入針やカテーテル等に挿入する際、挿入を容易にする為の補助器具(インサーター)が用いられてきたが、特にJ型形状のカーブ部分の曲率半径が小さい場合は、カテーテルの交換等の際にガイドワイヤを再度インサーターに挿入する操作が煩雑であった。
【0004】
上記の点を解決する為に、ガイドワイヤの先端形状に関して先端直線部の方向延長線とワイヤー基線のなす角度を40〜70°とすることにより、導入針やカテーテル、シース等にワイヤーを挿入する際の補助器具を不要としたものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
ガイドワイヤの先端形状に関しては、治療用チューブの側孔に入りにくくするために多湾曲形状に予備成形されたガイドワイヤが開示されている(例えば、特許文献2参照)。また、ガイドワイヤ先端の方向を制御するために異なる方向に向いた2つの湾曲部を有するガイドワイヤが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
特許文献1に見られるような、先端がJ型に形状付けされたガイドワイヤの場合、J型の先端部を一旦伸ばして導入針やカテーテル、シースに挿入する必要があり、操作性が悪い場合が多かった。
【0007】
また、特許文献2のガイドワイヤは、予め使用する治療用チューブの内径が分かっているので、その内径に対応した形状のガイドワイヤを使用する場合は治療用チューブの側孔からは出にくかった。しかし、血管は個体や部位によって径が異なるので、もし特許文献2のガイドワイヤを血管に使用する場合、血管の側枝に迷入しないように患者毎や部位毎に形状の異なるものを使い分けなければならなかった。特許文献3のガイドワイヤも、側枝が細い血管では側枝に迷入しにくいが、側枝が太い血管では側枝に迷入して、目的部位へ到達しにくくなるということがあり、操作性は悪かった。
【0008】
また、特許文献4のガイドワイには、直径の大きいおよび小さい脈管の両方の分岐を選択することができるような形状にしたものがあるが、そのために分枝には迷入し易く、上記のような手首より導入する場合には、かえって操作に時間を費やすことになる。
【0009】
さらに、特許文献5のガイドワイヤは、血管分枝へ導入するために先端形状をS字状にしたものであるが、S字状先端を有するガイドワイヤは、最先端で手元の方向を向いているため、導入針やカテーテルに挿入しにくく、毎回インサータを使用しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2004−181184号公報
【特許文献2】特開平11−76415号公報
【特許文献3】特表2003−530132号公報
【特許文献4】特表2003−508168号公報
【特許文献5】実公昭61−7736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、操作性の良好なガイドワイヤを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
先端部と本体部とからなるガイドワイヤであって、
外力を付与しない自然状態で、前記先端部は、第一の湾曲部と、
前記第一の湾曲部の先端側に形成され、該第一の湾曲部と反対の方向に湾曲する第二の湾曲部と、
前記第二の湾曲部の先端側に形成され、該第二の湾曲部と反対の方向に湾曲する第三の湾曲部とを有し、
前記第一の湾曲部は、前記本体部よりも柔軟性が高く、前記第二の湾曲部は、前記第一の湾曲部よりも柔軟性が高いことを特徴とするガイドワイヤ。
【0013】
このような本発明によれば、ガイドワイヤを操作する際にその操作性に優れる。ガイド
ワイヤ最先端が分枝に入り込んでも、反転して主血管を進み、分枝に迷入しない。特に、手首の橈骨動脈より導入する橈骨動脈導入用ガイドワイヤとしては、個人差や左心室に至るまでの様々な血管径に対して側枝に迷入しにくく、スムーズに目的部位まで挿入可能である。
【0014】
前記第三の湾曲部は、前記第二の湾曲部よりも柔軟性が高いか、または、同じ柔軟性であるのが好ましい。
【0015】
これにより、湾曲した血管内にガイドワイヤを挿入した場合、その血管の形状にガイド
ワイヤの先端部が追従することができる。よって、ガイドワイヤを操作する際の操作性が
向上する。
【0016】
前記ガイドワイヤは、先端部を有するコア線と、少なくとも該コア線先端部を覆い、樹脂にて構成された被覆部とからなるのが好ましい。
【0017】
これにより、ガイドワイヤを操作する際にその操作性により優れる。
【0018】
前記コア線先端部は、平坦部を有するのが好ましい。
【0019】
これにより、平坦部でより高い柔軟性が発揮される。
【0020】
前記第三の湾曲部の位置するコア線は、前記平坦部であり、前記第三の湾曲部は、前記第二の湾曲部よりも柔軟性が高いのが好ましい。
【0021】
これにより、平坦部でさらに高い柔軟性が発揮され、よって、ガイドワイヤを操作する
際にその操作性により優れる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1図は、本発明のガイドワイヤの一実施形態(参考例)を示す部分拡大図である。
【図2】第2図は、本発明のガイドワイヤの他の実施形態を示す部分拡大図である。
【図3】第3図は、本発明のガイドワイヤの内部構造を示す斜視図である。
【図4】第4図は、本発明のガイドワイヤの内部構造の一部を示す斜視図である。
【図5】第5図は、本発明のガイドワイヤの実施形態を示す部分拡大図である。
【図6】第6図は、本発明のガイドワイヤの他の実施形態を示す端面図である。
【図7】第7図は、本発明のガイドワイヤの他の実施形態を示す端面図である。
【図8】第8図は、本発明のガイドワイヤの他の実施形態を示す端面図である。
【図9】第9図は、本発明のガイドワイヤの他の実施形態を示す端面図である。
【図10】第10図は、本発明のガイドワイヤの他の実施形態を示す断面図である。
【図11】第11図は、第1図に示すガイドワイヤの具体的な構成を示す図(平面図)である。
【図12】第12図は、比較例1のガイドワイヤの具体的な構成を示す図(平面図)である。
【図13】第13図は、比較例2のガイドワイヤの具体的な構成を示す図(平面図)である。
【図14】第14図は、比較例3のガイドワイヤの具体的な構成を示す図(平面図)である。
【図15】第15図は、比較例4のガイドワイヤの具体的な構成を示す図(平面図)である。
【図16】第16図は、比較例5のガイドワイヤの具体的な構成を示す図(平面図)である。
【図17】第17図は、第11図〜第16図に示す各ガイドワイヤをそれぞれ評価する際に用いた評価用具を示す図である。
【図18】第18図は、第11図〜第16図に示す各ガイドワイヤをそれぞれ評価する際に用いた評価用具を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1図は、ガイドワイヤの一実施形態(参考例)を示す部分拡大図であり、第2図は、本発明のガイドワイヤの他の実施形態を示す部分拡大図である。以下、本発明を一実施形態であるガイドワイヤ1Aにより説明する。本発明の一実施形態であるガイドワイヤ1Aは、第1図に示すように、先端部10と本体部20からなるガイドワイヤである。先端部10には湾曲部を有する。先端部10は本体部20の先端側に続いて第一の湾曲部31を有する。先端部10は、第一の湾曲部31の先端側に有し、第一の湾曲部31と反対の方向に湾曲する第二の湾曲部32を有する。第一の湾曲部31と第二の湾曲部32の間には直線部を有してもよい。
【0024】
先端部10は、第二の湾曲部32の先端側に有し、第二の湾曲部32と反対の方向に湾曲する第三の湾曲部33を有する。第二の湾曲部32と第三の湾曲部33の間には直線部を有してもよい。第三の湾曲部33の先端側は最先端12にて終端している。第一の湾曲部31、第二の湾曲部32及び第三の湾曲部33は、同一平面上に構成されている。
【0025】
ガイドワイヤ1Aは、第一の湾曲部31と第三の湾曲部32の両方に接する線Aを有している。線Aは、第一の湾曲部31の接点51と第三の湾曲部33の接点53を通っている。線Aは本体部20の軸線Yに対して、自然状態で、鈍角である。ここで、「自然状態」とは、ガイドワイヤ1Aに外力が付与されていない状態のことを言う。線Aと軸線Yの角度Kは20〜45度であることが好ましく、25〜42度であることがより好ましい。
【0026】
ガイドワイヤ1Aの最先端12は、第一の湾曲部31と第三の湾曲部32の両方に接する線Aと、線Aと平行であり第二の湾曲部32に接する線Bとの間に位置している。線Bは第二の湾曲部32の接点52を通っている。
【0027】
第一の湾曲部31から第二の湾曲部32へ移行する部分71の方向Mは、最先端12が向く方向Nよりも軸線Yに対して角度が大きい。第二の湾曲部32から第三の湾曲部33へ移行する部分72の方向Lは、軸線Yに対して、先端方向に向かって広がる方向である。
【0028】
線Aと線Bの距離Dは2〜11mmが好ましく、4〜9mmがより好ましい。距離Dが2mmよりも小さいと、血管を進む際に最先端12が血管壁に接触して、迷入の機会が多くなり、11mmよりも大きいと、比較的細い血管を進む場合に、最先端12が血管壁に接触してしまう。第二の湾曲部32の頂点52と本体部20の軸線Yの距離Eは、9〜16mmが好ましく、10〜15mmがより好ましい。距離Eが9mmよりも小さいと、太めの血管を進む際に第二の湾曲部32が血管壁に接触せず、最先端12が血管壁に近づいたり、接触して、側枝への迷入の機会が多くなり、16mmよりも大きいと、細めの血管を進む際に第二の湾曲部32が広がった状態となって、最先端12が反り返り、血管壁へ接触する機会が多くなって、迷入の可能性が高くなる。
【0029】
ガイドワイヤ1Aは、コア線と、少なくともコア線の先端部を覆い、樹脂にて構成された被覆部を有する。コア線はNiTi合金線が好ましい。被覆部の樹脂をポリウレタンが好ましい。被覆部の表面には親水性ポリマーがコーティングされていることが好ましい。コア線は、先端部10においてテーパ状であるので先端部10は本体部20よりも柔軟である。
【0030】
ガイドワイヤ1Aは、導入針やカテーテル、シースに挿入しやすい。具体的には、可撓性を有する管状のカテーテル本体と、カテーテル本体の基端部に設置されたハブとを有するカテーテルに、ガイドワイヤ1Aをその先端側から前記ハブに容易に挿入することができる。
【0031】
また、ガイドワイヤ1Aは、想定される血管において側枝に迷入しにくく目的部位へ速やかに到達できる。具体的には、ガイドワイヤ1Aを血管内に挿入した際、その血管が直線状である場合、血管壁にガイドワイヤ1Aの最先端12が触れるのが防止または抑制される。また、ガイドワイヤ1Aを挿入した血管に、その血管から分岐した側枝(血管)がある場合、ガイドワイヤ1Aの先端部10が側枝に不本意に入り込むのが防止される。これにより、ガイドワイヤ1Aが血管内の目的部位に迅速に到達することができる。
【0032】
第2図は、上述したガイドワイヤ1Aのほかに、他の実施形態としてガイドワイヤ1B、1C、1Dを示す。
【0033】
ガイドワイヤ1Bは、第二の湾曲部から第三の湾曲部へ移行する部分の方向Lが、軸線Yに対して略平行である。また、ガイドワイヤ1Cは、第二の湾曲部から第三の湾曲部へ移行する部分の方向Lが、軸線Yに対して先端に向かって狭まる方向である。ガイドワイヤ1Dは、ガイドワイヤ1Aと同様に、方向Lが、軸線Yに対して先端に向かって広がる方向である。
【0034】
第3図は本発明のガイドワイヤの内部構造を示す斜視図である。内部構造を示すために先端部10の湾曲部は省略されている。第3図に示すガイドワイヤ1Eは、コア線先端部41を有するコア線40と、少なくともコア線先端部41を覆い、樹脂にて構成された被覆部60とから構成されている。コア線40はコア線本体部42とテーパ部44とコア線先端部41とから構成されている。コア線40の材料はNiTi合金やステンレス鋼が挙げられる。コア線40は超弾性合金にて構成されていることが好ましい。コア線本体部42は断面が円形である。コア線本体部42の先端側は、テーパ部44が設けられている。テーパ部44は先端に向かって徐々に外径が小さくなっている。第3図のテーパ部44は、先端に向かって一定の割合で外径が小さくなっているが、テーパ部の一部においてテーパの角度が変化していても良い。例えば、基端側のテーパの角度が先端側のテーパの角度よりも大きくても良い。また、基端側のテーパの角度が先端側のテーパの角度よりも小さくても良い。テーパ部44の先端側は、コア線先端部41が設けられている。コア線先端部41は平坦部46を有している。平坦部46は幅と厚みを有しており、幅は厚みよりも大きい。平坦部46は厚み方向に湾曲しやすくなる。コア線先端部41には、テーパ部44の先端側に外径均一部分を有していても良い。この場合は、外径均一部分の先端側に移行部を介して平坦部46へと続く。コア線本体部42の断面積は、コア線先端部41の断面積よりも大きい。平坦部46は、超弾性であることが好ましい。荷重−ひずみ曲線において、平坦部46の弾性域における弾性率は、コア線本体部42の弾性域における弾性率よりも小さいことが好ましい。このような構成により、平坦部46の厚みを極度に薄くしなくても柔軟性を確保することができる。
【0035】
コア線先端部41を覆う被覆部60は、ポリウレタンなどの樹脂にて構成されている。被覆部60は、コア線先端部41、コア線本体部42及びテーパ部44を被覆しているが、コア線先端部41のみを被覆してもよい。また、被覆部60は、コア線先端部41及びテーパ部44のみを被覆してもよい。
【0036】
コア線先端部41の平坦部46には、柔軟部が設けられていてもよい。その一例としては、第4図に示すように、平端部46の途中に、平坦部46の厚みをより薄くした柔軟部48を設けることである。柔軟部48の幅は平坦部46の幅よりも広くなっている。柔軟部48の強度を保持できる点から、平坦部46の断面積と柔軟部48の断面積がほぼ等しいことが好ましい。柔軟部48の厚みを平坦部46の厚みよりも薄くして、柔軟部48の幅は平坦部46の幅と同じにしてもよい。柔軟部の他の例としては、熱処理等で材質を変化させて柔軟部としてもよい。なお、第3図では内部構造を示すために先端部10の湾曲部は省略したが、湾曲部は上述したガイドワイヤ1A、1B、1C及び1Dの形状が適用できる。
【0037】
第5図は本発明のガイドワイヤの実施態様を示す部分拡大図である。前述した形状のガイドワイヤ1Aに第3図に示す構造を備えるガイドワイヤ1Eは、先端部10と本体部20から構成されている。先端部10には第一の湾曲部31と第二の湾曲部32と第三の湾曲部33を備えている。第二の湾曲部32は第一の湾曲部31の先端側に有している。第二の湾曲部32は第一の湾曲部31と反対の方向に湾曲している。第三の湾曲部33は第二の湾曲部32の先端側に有している。第三の湾曲部33は第二の湾曲部32と反対の方向に湾曲している。第一の湾曲部31は本体部20よりも柔軟性が高い。第二の湾曲部32は第一の湾曲部31よりも柔軟性が高い。第三の湾曲部33は第二の湾曲部32と同じ柔軟性であるが、第三の湾曲部33は第二の湾曲部32よりも柔軟性が高くてもよい。
【0038】
第6図は本発明のガイドワイヤの他の実施形態を示し、第5図で表した位置における各部位の端面図である。第5図において、ガイドワイヤ1Eの軸と垂直にA−AからF−Fまでの端面を表している。
【0039】
A−A端面図は、ガイドワイヤ1Eの本体部20の端面である。A−A端面図において、ガイドワイヤ1Eはコア線40のコア線本体部42とその周りを同心円状に覆う被覆部60とからなる。
【0040】
B−B端面図は、第一の湾曲部31よりも基端側であり、本体部20の軸線上にある部分の端面図である。B−B端面図の位置は、コア線40におけるテーパ部44である。テーパ部44の断面積は、A−A端面図におけるコア線本体部42の断面積よりも小さい。
【0041】
C−C端面図は、第一の湾曲部31の頂点における端面図である。C−C端面図の位置はコア線40におけるテーパ部44である。C−C端面図におけるテーパ部44は、B−B端面図におけるテーパ部44よりも先端側にある。C−C端面図におけるテーパ部44の断面積は、B−B端面図におけるテーパ部44の断面積よりも小さい。第一の湾曲部31の頂点はコア線40のテーパ部44の開始部と終了部の間に位置する。テーパ部44の終了部は、第一の湾曲部31の頂点よりも先端側に位置する。第一の湾曲部31はコア線40のテーパ部44に位置する。第一の湾曲部31におけるコア線40はテーパ部44であるので第一の湾曲部31は本体部20よりも柔軟性が高い。
【0042】
D−D端面図は、第二の湾曲部32の頂点における端面図である。D−D端面図の位置はコア線40における平坦部46である。第二の湾曲部32におけるコア線40は平坦部46であるので、第二の湾曲部32は第一の湾曲部31よりも柔軟性が高い。第二の湾曲部32における平坦部46の断面積は、第一の湾曲部31におけるテーパ部44の断面積よりも小さい。平坦部46の厚みは、第一の湾曲部31におけるテーパ部44の外径よりも小さい。従って、第二の湾曲部32は第一の湾曲部31よりも柔軟性が高い。このように構成することによって、ガイドワイヤ1Eの最先端12が側枝に入り込んでも、最先端12がそれ以上挿入する前に、柔軟な第二の湾曲部32が一層湾曲して、第二の湾曲部32を先頭にして主血管を進んで、側枝には迷入しない。
【0043】
E−E端面図は、第三の湾曲部33の頂点における端面図である。E−E端面図の位置はコア線40における平坦部46である。第三の湾曲部33におけるコア線40は第二の湾曲部32と同じ平坦部46であるので第三の湾曲部33は第二の湾曲部32と同じ柔軟性を有している。
【0044】
F−F端面図は、最先端12における端面図である。F−F端面図の位置はコア線40における平坦部46である。最先端12におけるコア線40は第二の湾曲部32や第三の湾曲部33と同じ平坦部46であるので第三の湾曲部33は第二の湾曲部32や第三の湾曲部33と同じ柔軟性を有している。
【0045】
第7図は第5図で示した位置における他の実施形態を示す端面図である。第7図で示した実施形態のA−A端面図、B−B端面図、D−D端面図、E−E端面図及びF−F端面図は第6図と同じであるが、C−C端面図におけるコア線40は平坦部46である。C−C端面図に示された平坦部46の断面積は、B−B端面図におけるテーパ部44の断面積よりも小さい。第一の湾曲部31におけるコア線40は平坦部46であるので第一の湾曲部31は本体部20よりも柔軟性が高い。
【0046】
第8図は第5図で示した位置における他の実施形態を示す端面図である。第8図で示した実施形態のA−A端面図、B−B端面図、C−C端面図、D−D端面図、及びF−F端面図は第6図と同じであるが、E−E端面図はコア線40の柔軟部48である。柔軟部48は、第4図に示すように、平坦部46の厚みがより薄くされている。柔軟部48の幅は平坦部46の幅よりも広くなっている。したがって、第三の湾曲部33は第二の湾曲部32よりも柔軟性が高くなっている。
【0047】
第9図は第5図で示した位置における他の実施形態を示す端面図である。第9図で示した実施形態のA−A端面図、B−B端面図は第6図と同じである。C−C端面図に示されたテーパ部44の断面積は、第6図中のC−C端面図に示されたテーパ部44の断面積よりも大きくなっている。また、D−D端面図に示されたテーパ部44の断面積は、同じ図中のC−C端面図に示されたテーパ部44の断面積よりも小さくなっている。このような構成により、第二の湾曲部32は、第一の湾曲部31よりも柔軟性が高くなる。F−F端面図およびE−E端面図におけるコア線40は平坦部46である。これらF−F端面図およびE−E端面図における平坦部46の厚さは、互いに同じであり、第6図中のE−E端面図(F−F端面図)における平坦部46の厚さよりも小さくなっている。このような構成により、第三の湾曲部33は、第一の湾曲部31および第二の湾曲部32よりも柔軟性が高くなる。これにより、ガイドワイヤ最先端12が分枝に入り込んでも、第三の湾曲部33で反転して主血管を進み、分枝に迷入するのが防止される。
【0048】
第10図は、本発明のガイドワイヤの他の実施形態を示す断面図である。
【0049】
第10図は湾曲部を柔軟にする態様を示す。第10図において、湾曲部の少なくとも内側の、被覆部60の表面に、軸にほぼ直交する方向に溝80を有する。溝80はらせん状に設けられている。溝80は湾曲部の表面に設けられている。例えば、溝80は第1図、第2図又は第5図の第二の湾曲部32及び第三の湾曲部33の被覆部60の表面全周に設けられている。溝80は湾曲部の被覆部60の表面にのみ設けられている。溝80の横断面は、第10図に示されるように、被覆部60の外表面(外周面)の縦断面形状は、波状となっている。波状の溝80は、例えば、ワイヤ70を被覆部60にワイヤ70の外径分の隙間を空けながら巻き付けて、加熱することにより得ることができる。
【0050】
溝80はらせん状の他に、環状であっても良い。溝80の代わりにスリット状であってもよい。溝80は湾曲部、例えば、第1図、第2図又は第5図の第二の湾曲部32及び第三の湾曲部33の内側の被覆部60の表面にのみ設けられていてもよい。
【0051】
本実施態様において、湾曲部の少なくとも内側の、被覆部60の表面に、軸方向にほぼ直交する溝80若しくはスリットを有することにより、湾曲部の柔軟性が増加するので、湾曲部は容易に曲がる。
【0052】
湾曲部を柔軟にする上記態様は、これまでに説明した実施形態に用いることができる。
【0053】
湾曲部を柔軟にする態様は、湾曲部にあたるコア線に熱処理して他の部分よりも柔軟性の高い材質にすることでも可能である。
【0054】
本発明のガイドワイヤは、ラディアルやブラキアルおよびフェモラルから、カテーテルやシース等の医療器具を、胸部や腹部等の目的とする部位まで導入する為に使用することが可能であり、穿刺部位や目的部位によって適応範囲が限定されるものではない。
【実施例】
【0055】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
【0056】
1.ガイドワイヤの製造
(実施例)
第11図に示すガイドワイヤを製造した。このガイドワイヤは、外径が0.89mm、全長が1500mmのものとした。また、ガイドワイヤを構成するコア線をNi−Ti製のものとし、被覆部をポリウレタン製のものとした。また、平坦部は、その長さを4mm、幅を0.23mm、厚さを0.03mmに設定した。また、距離Dは約8.5mm、距離Eは約13.5mmであった。
【0057】
(比較例1)
第12図に示すガイドワイヤを製造した。ガイドワイヤの外径、全長、構成材料については、前記実施例と同様にした。
【0058】
(比較例2)
第13図に示すガイドワイヤを製造した。ガイドワイヤの外径、全長、構成材料については、前記実施例と同様にした。
【0059】
(比較例3)
第14図に示すガイドワイヤを製造した。ガイドワイヤの外径、全長、構成材料については、前記実施例と同様にした。
【0060】
(比較例4)
第15図に示すガイドワイヤを製造した。ガイドワイヤの外径、全長、構成材料については、前記実施例と同様にした。
【0061】
(比較例5)
第16図に示すガイドワイヤを製造した。ガイドワイヤの外径、全長、構成材料については、前記実施例と同様にした。
【0062】
なお、第11図〜第16図中の長さの単位は、それぞれ、「mm」である。
【0063】
2.評価
2.1 第17図に示す評価用具を用いた評価
実施例および各比較例で得られたガイドワイヤについて、それぞれ、第17図に示す評価用具を用いて評価を行なった。なお、この評価用具は、直線状の血管と、その血管の途中から分岐した側枝とを想定した用具であり、「主管」が「直線状の血管」に対応し、「側管」が「側枝」に対応している。また、主管および側管は、それぞれ、ポリプロピレン製のものとした。
【0064】
ここでは、主管にガイドワイヤをその先端側から5回挿入し、そのうち1回でもガイドワイヤの先端部が側管に侵入するか否かについての評価を行なった。評価基準は、以下のとおりとした。なお、主管の内径φd1および側管の内径φd2がそれぞれ異なる評価用具1a〜5aを用意して、上記の評価を行なった。
【0065】
○:ガイドワイヤの先端部が全く側管に侵入しなかった
×:ガイドワイヤの先端部が1回でも側管に侵入した
評価結果を表1に示す。
【0066】
【表1】

【0067】
2.2 第18図に示す評価用具を用いた評価
実施例および各比較例で得られたガイドワイヤについて、それぞれ、第18図に示す評価用具を用いて評価を行なった。なお、この評価用具は、湾曲した血管(Ulnar Loop)と、その血管の湾曲部の中央部から外側に向かって分岐した側枝とを想定した用具であり、「主管」が「湾曲したの血管」に対応し、「側管」が「側枝」に対応している。また、主管および側管は、それぞれ、ポリプロピレン製のものとした。
【0068】
ここでは、主管の内径φd1および側管の内径φd2がそれぞれ異なる評価用具1b〜5bを用意して、上記と同様の評価を行なった。
評価結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
表1および表2から明らかなように、実施例で得られたガイドワイヤでは、いずれの評価用具で評価した場合でも、ガイドワイヤの先端部が全く側管に侵入しなかった。
【0071】
一方、各比較例で得られたガイドワイヤでは、いずれかの評価用具において、ガイドワイヤの先端部が1回でも側管に侵入する場合が生じた。
【0072】
また、第2図および第5図〜第10図に示すガイドワイヤを製造し、それらについても、前記実施例と同様の評価を行なった。その結果、各図に示すガイドワイヤについても、前記実施例と同様の結果が得られた。
【0073】
2.3 カテーテルを用いた評価
実施例および各比較例で得られたガイドワイヤについて、それぞれ、カテーテルを用いて評価を行なった。なお、このカテーテルは、可撓性を有する管状のカテーテル本体と、当該カテーテル本体の基端部に設置されたハブとを有するものである。また、ハブは、筒状をなすものであり、カテーテル本体と連通している。また、カテーテル本体の内径φ1.05mm、ハブの入口の内径は、φ4mmであった。
【0074】
ここでは、ハブに対して、ガイドワイヤをその先端側からの挿入を5回試み、そのうち1回でもガイドワイヤの先端部がハブに挿入されなかったか否かについての評価を行なった。評価基準は、以下のとおりとした。
【0075】
○:ガイドワイヤの先端部を5回全て挿入することができた
×:ガイドワイヤの先端部を1回でも挿入することができなかった
評価結果を表3に示す。
【0076】
【表3】

【0077】
表3から明らかなように、実施例で得られたガイドワイヤでは、ガイドワイヤの先端部をハブに5回全て挿入することができた。
【0078】
一方、各比較例で得られたガイドワイヤには、ガイドワイヤの先端部がハブに1回でも挿入することができなかったものがあった。
【0079】
また、第2図および第5図〜第10図に示すガイドワイヤを製造し、それらについても、前記実施例と同様の評価を行なった。その結果、各図に示すガイドワイヤについても、前記実施例と同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明のガイドワイヤは、先端部と本体部からなるガイドワイヤであって、第一の湾曲部と、該第一の湾曲部の先端側に有し、該第一の湾曲部と反対の方向に湾曲する第二の湾曲部と、該第二の湾曲部の先端側に有し、該第二の湾曲部と反対の方向に湾曲する第三の湾曲部を有し、該第一の湾曲部と該第三の湾曲部の両方に接する線が該本体部の軸線に対して鈍角である。そのため、ガイドワイヤを操作する際の操作性に優れる。従って、本発明のガイドワイヤは、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0081】
1A、1B、1C、1E ガイドワイヤ
31 第一の湾曲部
32 第二の湾曲部
33 第三の湾曲部
51、52、53 接点
10 先端部
12 最先端
20 本体部
40 コア線
41 コア線先端部
42 コア線本体部
44 テーパ部
46 平坦部
48 柔軟部
60 被覆部
70 ワイヤ
80 溝
A、B 線
D、E 距離
K 角度
L、M、N 方向
Y 軸線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部と本体部とからなるガイドワイヤであって、
外力を付与しない自然状態で、前記先端部は、第一の湾曲部と、
前記第一の湾曲部の先端側に形成され、該第一の湾曲部と反対の方向に湾曲する第二の湾曲部と、
前記第二の湾曲部の先端側に形成され、該第二の湾曲部と反対の方向に湾曲する第三の湾曲部とを有し、
前記第一の湾曲部は、前記本体部よりも柔軟性が高く、前記第二の湾曲部は、前記第一の湾曲部よりも柔軟性が高いことを特徴とするガイドワイヤ。
【請求項2】
前記第三の湾曲部は、前記第二の湾曲部よりも柔軟性が高いか、または、同じ柔軟性である請求項1に記載のガイドワイヤ。
【請求項3】
前記ガイドワイヤは、先端部を有するコア線と、少なくとも該コア線先端部を覆い、樹脂にて構成された被覆部とからなる請求項1または2に記載のガイドワイヤ。
【請求項4】
前記コア線先端部は、平坦部を有する請求項3に記載のガイドワイヤ。
【請求項5】
前記第三の湾曲部の位置するコア線は、前記平坦部であり、前記第三の湾曲部は、前記第二の湾曲部よりも柔軟性が高い請求項4に記載のガイドワイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−91070(P2012−91070A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−32896(P2012−32896)
【出願日】平成24年2月17日(2012.2.17)
【分割の表示】特願2008−505066(P2008−505066)の分割
【原出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】