説明

ガスの燃焼熱量測定方法およびウォッベ指数測定方法並びにガス測定装置

【課題】測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなるものであっても、当該測定対象ガスの熱量を高い信頼性で測定することができるガスの燃焼熱量測定方法、および、当該測定対象ガスのウォッベ指数を高い信頼性で測定することのできるウォッベ指数測定方法を提供すること。
【解決手段】ガスの燃焼熱量測定方法は、測定対象ガスの屈折率と酸素濃度とを測定し、得られた屈折率の値から、パラフィン系炭化水素ガスの熱量と屈折率との相関関係に基づいて、当該測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスのみよりなる場合におけるパラフィン系炭化水素ガス換算熱量値を求めると共に、得られた酸素濃度の値から、当該酸素濃度に対応する当該測定対象ガスにおける空気含有率を求め、当該パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値および当該測定対象ガスにおける空気含有率に基づいて測定対象ガスの熱量を求めることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱量測定方法およびウォッベ指数測定方法並びにガス測定装置に関し、更に詳しくは、パラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなる炭化水素系燃焼用ガスの熱量を、当該炭化水素系燃焼用ガスの屈折率を測定し、その屈折率に基づいて取得するガスの燃焼熱量測定方法、および当該ガスの燃焼熱量測定方法によって得られた熱量に基づいてウォッベ指数を取得するウォッベ指数測定方法、並びに当該ガスの燃焼熱量測定方法または当該ウォッベ指数測定方法によって炭化水素系燃焼用ガスの熱量およびウォッベ指数の少なくとも一方を測定するためのガス測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料用のガスとしては、パラフィン系炭化水素ガスを主成分とするガスが広く用いられており、このような燃料用のガスの熱量を測定する方法としては、パラフィン系炭化水素ガスの熱量が屈折率と相関関係を有することを利用することにより、燃料用のガスの屈折率を測定し、その屈折率に基づいて求められる屈折率換算熱量を取得するという簡便な手法が知られている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、このように屈折率に基づいて熱量を取得する熱量測定方法においては、燃料用のガスにおいて、パラフィン系炭化水素ガスを空気で希釈することによって熱量を減少させる場合や、パラフィン系炭化水素ガスが空気によって希釈されたガスに、例えばLPG(液化石油ガス)などの燃焼性ガスを加えて熱量を増加させる場合などがあり、しかも空気が、その熱量と屈折率との間に相関関係を有するものでないことから、空気が含有されていることに起因して測定誤差が生じてしまう、という問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−320300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであって、その目的は、測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなるものであっても、当該測定対象ガスの熱量を高い信頼性で測定することができるガスの燃焼熱量測定方法、および、当該測定対象ガスのウォッベ指数を高い信頼性で測定することのできるウォッベ指数測定方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなるものであっても、当該測定対象ガスの熱量およびウォッベ指数の少なくとも一方を高い信頼性で測定することができるガス測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のガスの燃焼熱量測定方法は、パラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなる炭化水素系燃焼用ガスを測定対象ガスとし、当該測定対象ガスの熱量を測定するガスの燃焼熱量測定方法であって、
測定対象ガスの屈折率と酸素濃度とを測定し、
得られた屈折率の値から、パラフィン系炭化水素ガスの熱量と屈折率との相関関係に基づいて、当該測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスのみよりなる場合におけるパラフィン系炭化水素ガス換算熱量値を求めると共に、得られた酸素濃度の値から、当該酸素濃度に対応する当該測定対象ガスにおける空気含有率を求め、
当該パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値および当該測定対象ガスにおける空気含有率に基づいて測定対象ガスの熱量を求めることを特徴とする。
【0007】
本発明のガスの燃焼熱量測定方法においては、前記測定対象ガスの熱量として、パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値をQη〔MJ/Nm3 〕、測定対象ガスにおける空気含有率をχとするとき、下記の数式(1)に基づいて測定対象ガスの総発熱量Q1 を求めることができる。
【0008】
数式(1):
総発熱量Q1 〔MJ/Nm3 =Qη−25.47×χ
【0009】
本発明のガスの燃焼熱量測定方法においては、前記測定対象ガスの熱量として、パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値をQη〔MJ/Nm3 〕、測定対象ガスにおける空気含有率をχとするとき、下記の数式(2)に基づいて測定対象ガスの真発熱量Q2 を求めることができる。
【0010】
数式(2):
真発熱量Q2 〔MJ/Nm3 =Qη−22.50×χ
【0011】
本発明のウォッベ指数測定方法は、パラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなる炭化水素系燃焼用ガスを測定対象ガスとし、当該測定対象ガスの熱量の値と比重の値とに基づいて当該測定対象ガスのウォッベ指数を算出するウォッベ指数測定方法であって、
測定対象ガスの熱量の値が、当該測定対象ガスの屈折率と酸素濃度とを測定し、得られた屈折率の値から、パラフィン系炭化水素ガスの熱量と屈折率との相関関係に基づいて、当該測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスのみよりなる場合におけるパラフィン系炭化水素ガス換算熱量値を求めると共に、得られた酸素濃度の値から、当該酸素濃度に対応する当該測定対象ガスにおける空気含有率を求め、当該パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値および当該測定対象ガスにおける空気含有率に基づいて求められるものであることを特徴とする。
【0012】
本発明のウォッベ指数測定方法においては、前記測定対象ガスの熱量の値が、パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値をQη〔MJ/Nm3 〕、測定対象ガスにおける空気含有率をχとするとき、上記の数式(1)に基づいて求められる総発熱量Q1 であることが好ましい。
【0013】
本発明のウォッベ指数測定方法においては、前記測定対象ガスの熱量の値が、パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値をQη〔MJ/Nm3 〕、測定対象ガスにおける空気含有率をχとするとき、上記の数式(2)に基づいて求められる真発熱量Q2 であることが好ましい。
【0014】
本発明のウォッベ指数測定方法においては、前記測定対象ガスの比重の値が、前記パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値と、前記測定対象ガスにおける空気含有率に基づいて求められるものであることが好ましい。
【0015】
本発明のウォッベ指数測定方法においては、前記測定対象ガスの比重の値が、パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値をQη〔MJ/Nm3 〕、測定対象ガスにおける空気含有率をχとするとき、下記の数式(3)に基づいて求められることが好ましい。
【0016】
数式(3):
比重d1=(16.291×Qη−95.66+682.1×χ)/1000
【0017】
本発明のウォッベ指数測定方法においては、前記測定対象ガスの比重の値が、パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値をQη〔MJ/Nm3 〕、測定対象ガスにおける空気含有率をχとするとき、下記の数式(4)に基づいて求められることが好ましい。
【0018】
数式(4):
比重d2=(17.541×Qη−76.82+682.1×χ)/1000
【0019】
本発明のガス測定装置は、パラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなる炭化水素系燃焼用ガスを測定対象ガスとし、当該測定対象ガスの熱量およびウォッベ指数の少なくとも一方を測定するためのガス測定装置であって、
測定対象ガスの屈折率を測定するための屈折率測定手段と、測定対象ガスの酸素濃度を測定するための酸素濃度測定手段とを備え、下記の(1)または(2)の計算機構が設けられていることを特徴とする。
【0020】
(1)屈折率測定手段において得られる屈折率の値から、パラフィン系炭化水素ガスの熱量と屈折率との相関関係に基づいて、当該測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスのみよりなる場合におけるパラフィン系炭化水素ガス換算熱量値を求めると共に、酸素濃度測定手段において得られる酸素濃度の値から、当該酸素濃度に対応する当該測定対象ガスにおける空気含有率を求め、当該パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値および当該測定対象ガスにおける空気含有率に基づいて測定対象ガスの熱量を求める計算機構
(2)屈折率測定手段において得られる屈折率の値から、パラフィン系炭化水素ガスの熱量と屈折率との相関関係に基づいて、当該測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスのみよりなる場合におけるパラフィン系炭化水素ガス換算熱量値を求めると共に、酸素濃度測定手段において得られる酸素濃度の値から、当該酸素濃度に対応する当該測定対象ガスにおける空気含有率を求め、当該パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値および当該測定対象ガスにおける空気含有率に基づいて、測定対象ガスの熱量および測定対象ガスの比重を求め、得られた測定対象ガスの熱量の値と比重の値とに基づいてウォッベ指数を算出する計算機構
【発明の効果】
【0021】
本発明のガスの燃焼熱量測定方法においては、測定対象ガスの屈折率と共に酸素濃度を測定し、測定対象ガスの屈折率の値からは、測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスのみよりなる場合におけるパラフィン系炭化水素ガス換算熱量値を求め、一方、測定対象ガスの酸素濃度の値からは、測定対象ガスにおける空気含有率を求め、このようにして事実上同時に測定された屈折率および酸素濃度に基づいて得られたパラフィン系炭化水素ガス換算熱量値と測定対象ガスにおける空気含有率に基づいて当該測定対象ガスの熱量を求めることにより、パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値における、測定対象ガスにパラフィン系炭化水素ガスと共に空気が含有されていることに起因して生じる測定対象ガスの熱量の真値との差が、測定対象ガスにおける空気含有率に応じて適切に補正される。
その結果、測定対象ガスが、パラフィン系炭化水素ガスと共に、その熱量が屈折率と特定の対応関係を有さない空気がいかなる割合で含有されているものであっても、得られる測定対象ガスの熱量の値が、空気が含有されていることに起因する誤差の小さいものとなり、因って真値に近似する値となる。
従って、本発明の熱量測定方法によれば、測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなるものであっても、当該測定対象ガスの熱量を高い信頼性で測定することができる。
【0022】
本発明のウォッベ指数の測定方法によれば、ウォッベ指数を算出するために、測定対象ガスの熱量の値として、本発明のガスの燃焼熱量測定方法によって得られる値が用いられ、この値が空気が含有されていることに起因する誤差が小さく、真値に近似することから、測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなるものであっても、当該測定対象ガスのウォッベ指数を高い信頼性で測定することができる。
【0023】
本発明のガス測定装置によれば、測定対象ガスの屈折率を測定するための屈折率測定手段と、測定対象ガスの酸素濃度を測定するための酸素濃度測定手段と、当該屈折率測定手段および酸素濃度測定手段において得られる測定対象ガスの屈折率の値および酸素濃度の値に基づいて当該測定対象ガスの熱量またはウォッベ指数を求める計算機構が設けられており、この計算機構においては、本発明のガスの燃焼熱量測定方法によって測定対象ガスの熱量が得られ、また、必要に応じて当該ガスの燃焼熱量測定方法によって得られた測定対象ガスの熱量の値に基づいてウォッベ指数が算出されることから、測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなるものであっても、当該測定対象ガスの熱量およびウォッベ指数の少なくとも一方を高い信頼性で測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明のガスの燃焼熱量測定方法を実施するための熱量測定装置の構成の一例を示す説明図である。
【図2】図1の熱量測定装置を構成する基本換算熱量値算出機構として用いられる装置の構成の一例を示す説明図である。
【図3】実験例1において用いたガス測定システムの概要を示す説明図である。
【図4】実験例1において得られた、空気希釈率(ガス空気含有率)と、基本換算熱量および本発明のガスの燃焼熱量測定方法によって求められた熱量との関係を、試料ガスの酸素濃度と共に示すグラフである。
【図5】実験例1において得られた、空気希釈率(ガス空気含有率)と、基本換算熱量およびガス空気含有率から数式(3)に基づいて得られた比重の値(測定比重値)との関係を、試料ガスの酸素濃度と共に示すグラフである。
【図6】実験例1において得られた、空気希釈率(ガス空気含有率)と、本発明のウォッベ指数測定方法によって求められたウォッベ指数との関係を、試料ガスの酸素濃度と共に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
本発明のガスの燃焼熱量測定方法は、基本的にパラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなる炭化水素系燃焼用ガスを測定対象ガス(以下、「被測定ガス」ともいう。)とし、被測定ガスの屈折率および酸素濃度を測定し、測定された被測定ガスの屈折率の値と被測定ガスの酸素濃度の値とに基づいて当該被測定ガスの熱量を求めるものである。
本発明のガスの燃焼熱量測定方法において、被測定ガスの屈折率の値および酸素濃度の値に基づいて当該被測定ガスの熱量を求める方法とは、先ず、測定された被測定ガスの屈折率の値からは、パラフィン系炭化水素ガスの熱量と屈折率との相関関係に基づいて、被測定ガスがパラフィン系炭化水素ガスのみよりなる場合におけるパラフィン系炭化水素ガス換算熱量値(以下、「基本換算熱量値」ともいう。)を求め、一方、測定された酸素濃度の値からは、当該酸素濃度に対応する被測定ガスにおける空気含有率(以下、「ガス空気含有率」ともいう。)を求め、次いで、得られた基本換算熱量値およびガス空気含有率に基づいて、被測定ガスの熱量を求める方法(以下、「特定の熱量取得方法」ともいう。)である。
【0026】
図1は、本発明のガスの燃焼熱量測定方法を実施するための熱量測定装置の構成の一例を示す説明図である。
熱量測定装置10は、被測定ガスの屈折率を測定するためのガス屈折率測定手段と共に当該ガス屈折率測定手段において得られる被測定ガスの屈折率の値に基づいて基本換算熱量値を演算によって求めるための基本換算熱量値計算手段を有する基本換算熱量値算出機構20と、被測定ガスの酸素濃度を測定するためのガス酸素濃度測定手段と共に当該ガス酸素濃度測定手段において得られる被測定ガスの酸素濃度の値に対応するガス空気含有率を求めるための空気含有率計算手段を有する空気含有率算出機構30とを備えると共に、基本換算熱量値算出機構20によって得られる基本換算熱量値と、空気含有率算出機構30によって得られるガス空気含有率に基づいて被測定ガスの熱量を特定の熱量取得方法に基づいて算出する熱量計算手段40を備えてなる構成のものである。
この熱量測定装置10においては、熱量計算手段40にて算出された被測定ガスの熱量の値(以下、「測定熱量値」ともいう。)は、その測定熱量値のデータがデータ送信路を介して表示手段(図示せず)に送信されて、当該表示手段によって表示される。
図1において、11は、被測定ガスを、基本換算熱量値算出機構20のガス屈折率測定手段および空気含有率算出機構30のガス酸素濃度測定手段の各々に供給するための分岐構造を有するガス流路である。また、22は、基本換算熱量値算出機構20の基本換算熱量値計算手段において得られた基本換算熱量値を熱量計算手段40に送信するためのデータ送信路であり、32は、空気含有率算出機構30の空気含有率計算手段において得られたガス空気含有率を熱量計算手段40に送信するためのデータ送信路である。
【0027】
この熱量測定装置10においては、基本換算熱量値算出機構20を構成する基本換算熱量値計算手段と、空気含有率算出機構30を構成する空気含有率計算手段と、熱量計算手段40とにより、基本換算熱量値算出機構20のガス屈折率測定手段および空気含有率算出機構30のガス酸素濃度測定手段において事実上同時に測定された被測定ガスの屈折率の値と被測定ガスの酸素濃度の値とに基づいて、特定の熱量取得方法によって測定対象ガスの熱量を求めるための計算機構が構成されている。
【0028】
基本換算熱量値算出機構20としては、ガス屈折率測定手段によって被測定ガスの屈折率を測定し、基本換算熱量値計算手段により、ガス屈折率測定手段によって測定された被測定ガスの屈折率の値を、例えばグラフ化することなどによって予め取得されたパラフィン系炭化水素ガスの熱量と屈折率との相関関係に対して、パラフィン系炭化水素ガスの屈折率である仮定して、すなわち測定された被測定ガスの屈折率の値が被測定ガスがパラフィン系炭化水素ガスのみよりなる場合のものであるとして、対照することにより、基本換算熱量値を求める構成の装置を用いることができる。
【0029】
基本換算熱量値算出機構20の具体例としては、従来公知の屈折式熱量計、具体的には、例えばグラフ化することなどによって予め取得された、パラフィン系炭化水素ガスの屈折率と熱量との相関関係を利用することにより熱量(屈折率換算熱量)を求める構成の屈折率式熱量計が挙げられる。
ここに、屈折率式熱量計の具体例としては、例えば図2に示すように、被測定ガスと、空気などの標準ガスとの光の屈折率の差異を干渉縞の変位として検出し、この干渉縞の変位量に基づいて、パラフィン系炭化水素ガスの熱量と屈折率とが相関関係を有することを利用して熱量を得る構成の屈折率熱量計が挙げられる。
図2の屈折率式熱量計は、ガス屈折率測定手段として、被測定ガスを導入するための測定対象ガス用セル部52および例えば空気などの標準ガスを導入するための標準ガス用セル部53A、53Bが区画されてなるチャンバ51と、光源54からの光を分割する平行平面鏡55と、当該平行平面鏡55によって分割され、チャンバ51を通過した光を反射することによってその進行方向を変更し、再度チャンバ51を通過させた後に平行平面鏡55上において重ね合わせ、干渉縞を生じさせることのできるよう、調整されて配置されたプリズム58と、平行平面鏡55上で重ね合わせられた合成光(干渉光)を受光する干渉縞検出手段56とを備えてなる構成のものである。
図2において、57は合成光を反射する平面鏡、59は合成光を集光するための集光レンズであり、この集光レンズ59の焦点位置に干渉縞検出手段56が配置されている。また、一点鎖線矢印は、光源54からの光が干渉縞検出手段56に受光されるまでの経路を示す。
【0030】
空気含有率算出機構30としては、ガス酸素濃度測定手段によって被測定ガスの酸素濃度を測定し、空気含有率計算手段により、ガス酸素濃度測定手段によって測定された被測定ガスの酸素濃度の値と、空気の酸素濃度の値とから、空気の酸素濃度に対する比測定ガスの酸素濃度の比率を算出し、その比率をガス空気含有率として求める構成の装置を用いることができる。
この空気含有率算出機構30は、ガス空気含有率を求めるために用いる空気の酸素濃度の値として、既知の値を利用するものであってもよいが、被測定ガスの酸素濃度の測定と同期して大気中の空気を測定することによって得られる値を用いるものであることが好ましい。空気の酸素濃度の値として被測定ガスの酸素濃度の測定と同期して測定される値を用いることによれば、ガス酸素濃度測定手段自体の有する気温および/または温度依存性、または感度の経時変化によらず、高い信頼性のガス空気含有率を得ることができる。
ここに、空気含有率算出機構30は、空気の酸素濃度の値として大気中の空気を測定した値を用いるものである場合においては、大気中の空気の酸素濃度を測定するための専用の測定手段が設けられていてもよく、また、ガス酸素濃度測定手段によって被測定ガスの酸素濃度と共に大気中の空気の酸素濃度が測定される構成、例えば被測定ガスの酸素濃度の測定と大気中の空気の酸素濃度の測定とが交互に行われる構成を有するものであってもよい。
【0031】
空気含有率算出機構30を構成するガス酸素濃度測定手段の具体例としては、従来公知の酸素センサが挙げられる。
また、空気含有率算出機構30を構成する空気含有率計算手段の具体例としては、例えばパーソナルコンピュータ、演算機能付レコーダなどが挙げられる。
【0032】
熱量計算手段40としては、基本換算熱量値算出機構20によって得られる基本換算熱量値と、空気含有率算出機構30によって得られるガス空気含有率とから、特定の演算式に基づいて、計算により被測定ガスの熱量を求める構成の装置を用いることができる。
【0033】
この熱量計算手段40において利用される、基本換算熱量値とガス空気含有率とから被測定ガスの熱量を求めるための特定の演算式は、被測定ガスがパラフィン系炭化水素ガスに空気が混入されてなるものである場合において、基本換算熱量値と被測定ガスの熱量の真値との差が、被測定ガスにおける空気含有率と比例関係を有することに基づいて取得されたものである。
ここに、「基本換算熱量値と被測定ガスの熱量の真値との差」とは、パラフィン系炭化水素ガスの熱量が屈折率と相関関係にあることを利用し、被測定ガスがパラフィン系炭化水素ガスのみであると仮定することによって得られる屈折率換算熱量と、当該測定対象ガスの熱量の真値との間に生じる誤差である。
【0034】
具体的には、被測定ガスの熱量として、総発熱量Q1 〔MJ/Nm3 〕を求める場合においては、基本換算熱量値(Qη〔MJ/Nm3 〕)と、ガス空気含有率(χ)とに基づいて、上記数式(1)により、測定熱量値が算出される。
また、被測定ガスの熱量として、真発熱量Q2 〔MJ/Nm3 〕を求める場合においては、基本換算熱量値(Qη〔MJ/Nm3 〕)と、ガス空気含有率(χ)とに基づいて、上記数式(2)により、測定熱量値が算出される。
ここに、「総発熱量」とは、高発熱量とも称され、単位量の燃料が完全燃焼したときに発生する熱量であって、燃料中の水分および燃焼により生成される水分を蒸発させるのに必要な熱量(潜熱)を含む熱量である。
また、「真発熱量」とは、低発熱量とも称され、単位量の燃料が完全燃焼したときに発生する熱量(総発熱量)から、燃料中に含まれる水分および燃焼によって生成される水分を蒸発させるのに必要な熱量(潜熱)を差し引いた残りの熱量である。
【0035】
この熱量計算手段40としては、例えばパーソナルコンピュータ、演算機能付レコーダなどを用いることができる。
【0036】
このような構成を有する熱量測定装置10においては、ガス流路11を介して、基本換算熱量値算出機構20を構成するガス屈折率測定手段と、空気含有率算出機構30を構成するガス酸素濃度測定手段とにガス流路11を介して同時に被測定ガスを供給することにより、基本換算熱量値算出機構20においては基本換算熱量値が求められ、一方、空気含有率算出機構30においてはガス空気含有率が求められる。
そして、基本換算熱量値算出機構20および空気含有率算出機構30において得られた基本換算熱量値およびガス空気含有率のデータが、各々、データ送信路22、32を介して熱量計算手段40に送信され、当該熱量計算手段40において、基本換算熱量値とガス空気含有率とから、例えば上記数式(1)または上記数式(2)に基づいて、測定熱量値が算出される。このようにして得られた測定熱量値は、データ送信路を介して表示機構に送信され、この表示機構において表示される。
【0037】
以上のような熱量測定装置10によって実施される本発明のガスの燃焼熱量測定方法においては、被測定ガスはパラフィン系炭化水素ガスに対して未知の割合の空気が混入されてなる炭化水素系燃焼用ガスであり、被測定ガス中における空気の含有割合はいかなる割合であってもよく、空気の含有割合が0%、すなわち被測定ガスが空気が含有されておらず、パラフィン系炭化水素ガスのみよりなるガスであってもよい。
また、本発明の本発明のガスの燃焼熱量測定方法は、基本的にパラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなる炭化水素系燃焼用ガスを被測定ガスとするものであるが、パラフィン系炭化水素ガスに対して既知の割合で空気が混入されてなるガスの熱量を測定することもできる。
【0038】
このような熱量測定装置10においては、基本換算熱量値算出機構20と、空気含有率算出機構30と、熱量計算手段40とが設けられており、事実上同時に測定された、基本換算熱量値算出機構20のガス屈折率測定手段において得られる被測定ガスの屈折率の値と、空気含有率算出機構30のガス酸素濃度測定手段において得られる被測定ガスの酸素濃度の値とから、基本換算熱量値算出機構20の基本換算熱量値計算手段、空気含有率算出機構30の空気含有率計算手段および熱量計算手段40よりなる計算機構において、特定の演算式に基づいて当該被測定ガスの熱量を算出することにより、基本換算熱量値における、被測定ガスがパラフィン系炭化水素ガスと共に空気が含有されてなるものであることに起因して生じる被測定ガスの熱量の真値との差が、ガス空気含有率に応じて適切に補正される。
その結果、被測定ガスが、パラフィン系炭化水素ガスと共に、その熱量が屈折率と特定の対応関係を有さない空気がいかなる割合で含有されてなるものであっても、得られる被測定ガスの熱量の値が、空気が含有されていることに起因する誤差の小さいものとなり、因って真値に近似する値となる。
従って、熱量測定装置10によれば、被測定ガスがパラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなるものであっても、当該被測定ガスの熱量を高い信頼性で測定することができる。
【0039】
このような構成の熱量測定装置10によって実施される本発明のガスの燃焼熱量測定方法は、被測定ガスの熱量を測定するために用いられる手法であるが、熱量に基づいて算出される物性値、例えばウォッベ指数を測定するために用いることもできる。
【0040】
本発明のウォッベ指数測定方法は、基本的にパラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなる炭化水素系燃焼用ガスを被測定ガス(測定対象ガス)とし、被測定ガスの熱量と比重とを測定し、得られた被測定ガスの熱量の値と比重の値とに基づいてウォッベ指数を算出するものであり、ウォッベ指数を算出するための被測定ガスの熱量の値として、被測定ガスの屈折率および酸素濃度を測定し、測定された被測定ガスの屈折率の値と被測定ガスの酸素濃度の値とに基づいて当該被測定ガスの熱量を求める特定の熱量取得方法によって得られる値を利用することを特徴とするものである。
すなわち、本発明のウォッベ指数測定方法は、本発明のガスの燃焼熱量測定方法において得られる被測定ガスの熱量の値(測定熱量値)を用いることによって被測定ガスのウォッベ指数を求めるものである。
【0041】
本発明のウォッベ指数測定方法を実施するためのウォッベ指数測定装置としては、例えば下記の(1)または(2)の構成のものが挙げられる。
【0042】
(1)被測定ガスの屈折率を測定するためのガス屈折率測定手段および被測定ガスの酸素濃度を測定するためのガス酸素濃度測定手段を備え、ガス屈折率測定手段において得られる被測定ガスの屈折率の値と、ガス酸素濃度測定手段において得られる被測定ガスの酸素濃度の値とから、特定の熱量取得方法によって被測定ガスの熱量を算出すると共に、被測定ガスの比重をも算出し、その算出された被測定ガスの熱量値および比重の値に基づいて被測定ガスのウォッベ指数を算出する構成を有するもの。
(2)被測定ガスの屈折率を測定するためのガス屈折率測定手段、被測定ガスの酸素濃度を測定するためのガス酸素濃度測定手段および被測定ガスの比重を測定するためのガス比重測定手段を備え、ガス屈折率測定手段において得られる被測定ガスの屈折率の値と、ガス酸素濃度測定手段において得られる被測定ガスの酸素濃度の値とから特定の熱量取得方法によって被測定ガスの熱量を算出し、その算出された被測定ガスの熱量の値と、ガス比重測定手段において得られる被測定ガスの比重の値とに基づいて被測定ガスのウォッベ指数を算出する構成を有するもの。
ここで、上記の(1)の装置は、被測定ガスの比重の値を、被測定ガスの屈折率の値および酸素濃度の値に基づいて当該測定対象ガスの比重を算出することによって得るものであり、上記の(2)の装置は、被測定ガスの比重の値をガス比重測定手段によって直接的に測定するものである。
【0043】
ここに、本発明のウォッベ指数測定方法において、被測定ガスの屈折率の値と酸素濃度の値とから当該被測定ガスの比重を算出するために用いられる、被測定ガスの屈折率の値および酸素濃度の値に基づいて当該被測定ガスの比重を求める方法とは、先ず、測定された被測定ガスの屈折率の値から基本換算熱量値を求め、一方、測定された酸素濃度の値からガス空気含有率を求め、次いで、得られた基本換算熱量値およびガス空気含有率に基づいて、被測定ガスの比重を求める方法(以下、「特定の比重取得方法」ともいう。)である。
【0044】
上記の(1)の構成を有するウォッベ指数測定装置の一例としては、例えば被測定ガスの屈折率を測定するためのガス屈折率測定手段と共に当該ガス屈折率測定手段において得られる被測定ガスの屈折率の値に基づいて基本換算熱量値を演算によって求めるための基本換算熱量値計算手段を有する基本換算熱量値算出機構と、被測定ガスの酸素濃度を測定するためのガス酸素濃度測定手段と共に当該ガス酸素濃度測定手段において得られる被測定ガスの酸素濃度の値に基づいてガス空気含有率を求めるための空気含有率計算手段を有する空気含有率算出機構とを備えると共に、基本換算熱量値算出機構によって得られる基本換算熱量値と、空気含有率算出機構によって得られるガス空気含有率に基づいて、最終的にウォッベ指数を算出するウォッベ指数計算機構を備えてなる装置(以下、「第1のウォッベ指数測定装置」ともいう。)が挙げられる。
この第1のウォッベ指数計算装置において算出された被測定ガスのウォッベ指数の値(以下、「測定ウォッベ指数値」ともいう。)は、その測定ウォッベ指数値のデータが表示手段に送信されて、当該表示手段によって表示される。
【0045】
第1のウォッベ指数測定装置を構成するウォッベ指数計算機構は、基本換算熱量値算出機構によって得られる基本換算熱量値と、空気含有率算出機構によって得られるガス空気含有率とに基づいて被測定ガスの熱量を算出する熱量計算手段、基本換算熱量値算出機構によって得られる基本換算熱量値と、空気含有率算出機構によって得られるガス空気含有率とに基づいて被測定ガスの比重を算出する比重計算手段、および熱量計算手段において算出される被測定ガスの熱量の値(測定熱量値)と、比重計算手段において算出される被測定ガスの比重の値(以下、「測定比重値」ともいう。)とに基づいて被測定ガスのウォッベ指数を算出するウォッベ指数計算手段によって構成されてなるものである。
【0046】
この第1のウォッベ指数測定機構においては、基本換算熱量値算出機構を構成する基本換算熱量値計算手段と、空気含有率算出機構を構成する空気含有率計算手段と、ウォッベ指数計算機構を構成する熱量計算手段、比重計算手段およびウォッベ指数計算手段とにより、基本換算熱量値算出機構を構成するガス屈折率測定手段および空気含有率算出機構を構成するガス酸素濃度測定手段において事実上同時に測定された被測定ガスの屈折率の値と被測定ガスの酸素濃度の値とに基づいて、特定の熱量取得方法によって被測定ガスの熱量を求めると共に特定の比重取得方法によって被測定ガスの比重を求め、最終的にウォッベ指数を算出するための計算機構が構成されている。
【0047】
ウォッベ指数計算機構を構成する熱量計算手段としては、基本換算熱量値算出機構によって得られる基本換算熱量値と、空気含有率算出機構によって得られるガス空気含有率とに基づいて、特定の熱量取得方法によって被測定ガスの熱量を求める構成の装置を用いることができる。
【0048】
この熱量計算手段としては、例えばパーソナルコンピュータ、演算機能付レコーダなどを用いることができる。
【0049】
ウォッベ指数計算機構を構成する比重計算手段としては、基本換算熱量値算出機構によって得られる基本換算熱量値と、空気含有率算出機構によって得られるガス空気含有率とから、特定の演算式に基づいて、被測定ガスの比重を求める構成の装置を用いることができる。
【0050】
この比重計算手段において利用される、基本換算熱量値とガス空気含有率とから被測定ガスの比重を求めるための特定の演算式は、被測定ガスの比重と熱量とが比例関係を有することに基づいて取得されたものである。
【0051】
具体的には、熱量計算手段において得られる被測定ガスの熱量の値(測定熱量値)が上記数式(1)によって得られる総発熱量である場合においては、基本換算熱量値(Qη〔MJ/Nm3 〕)と、ガス空気含有率(χ)とに基づいて、上記数式(3)によって求められる比重d1 が測定比重値として算出される。
また、熱量計算手段において得られる比測定ガスの熱量の値(測定熱量値)が上記式(2)によって得られる真発熱量である場合においては、基本換算熱量値(Qη〔MJ/Nm3 〕)と、ガス空気含有率(χ)とに基づいて、上記数式(4)によって求められる比重d2 が測定比重値として算出される。
【0052】
この比重計算手段としては、例えばパーソナルコンピュータ、演算機能付レコーダなどを用いることができる。
【0053】
ウォッベ指数計算機構を構成するウォッベ指数計算手段としては、熱量計算手段において得られる測定熱量値と、比重計算手段において得られる測定比重値とに基づいてウォッベ指数を算出することのできる構成のものが用いられる。
ここに、ウォッベ指数(WI)とは、被測定ガスの熱量をQ〔MJ/Nm3 〕、被測定ガスの比重をdとするとき、下記数式(5)により算出される値である。
【0054】
数式(5):
ウォッベ指数(WI)=Q/d1/2
【0055】
具体的に、ウォッベ指数計算手段としては、例えばパーソナルコンピュータ、演算機能付レコーダなどを用いることができる。
【0056】
このような構成を有する第1のウォッベ指数測定装置においては、基本換算熱量値算出機構を構成するガス屈折率測定手段と、空気含有率算出機構を構成するガス酸素濃度測定手段とに同時に被測定ガスを供給することにより、基本換算熱量値算出機構においては基本換算熱量値が求められ、一方、空気含有率算出機構においてはガス空気含有率が求められる。
そして、基本換算熱量値算出機構および空気含有率算出機構において得られた基本換算熱量値およびガス空気含有率のデータが、ウォッベ指数計算機構に送信され、当該ウォッベ指数計算機構において、基本換算熱量値とガス空気含有率とから、例えば上記数式(1)または上記数式(2)に基づいて測定熱量値が算出されると共に、例えば上記数式(3)または上記数式(4)に基づいて測定比重値が算出され、最終的に上記数式(5)により、ウォッベ指数値が算出される。このようにして得られたウォッベ指数値、および必要に応じて、ウォッベ指数計算機構においてウォッベ指数値を算出する過程において得られる値(具体的には、例えば基本換算熱量値)は、表示機構に送信され、この表示機構において表示される。
【0057】
上記の(2)の構成を有するウォッベ指数測定装置の一例としては、例えば被測定ガスの屈折率を測定するためのガス屈折率測定手段と共に当該ガス屈折率測定手段において得られた被測定ガスの屈折率の値に基づいて基本換算熱量値を演算によって求めるための基本換算熱量値計算手段を有する基本換算熱量値算出機構と、被測定ガスの酸素濃度を測定するためのガス酸素濃度測定手段と共に当該ガス酸素濃度測定手段において得られる被測定ガスの酸素濃度の値に基づいてガス空気含有率を求めるための空気含有率計算手段を有する空気含有率算出機構と、被測定ガスの比重を測定するためのガス比重測定手段とを備えると共に、基本換算熱量値算出機構によって得られる基本換算熱量値と、空気含有率算出機構によって得られるガス空気含有率とに基づいて被測定ガスの熱量を算出する熱量計算手段、および当該熱量計算手段において算出される被測定ガスの熱量の値(測定熱量値)と、ガス比重測定手段において得られる被測定ガスの比重の値とに基づいてウォッベ指数を算出するウォッベ指数計算手段を備えてなる構成の装置(以下、「第2のウォッベ指数測定装置」ともいう。)が挙げられる。
この第2のウォッベ指数計算装置において算出された被測定ガスのウォッベ指数の値(測定ウォッベ指数値)は、その測定ウォッベ指数値のデータが表示手段に送信されて、当該表示手段によって表示される。
ここに、第2のウォッベ指数測定装置は、第1のウォッベ指数測定装置において、ガス比重測定手段が設けられており、また、基本換算熱量値とガス空気含有率とから被測定ガスの比重を算出し、その算出された被測定ガスの比重値(測定比重値)を用いてウォッベ指数を算出するウォッベ指数計算機構に代えて、ガス比重測定手段において測定された被測定ガスの比重の値を用いてウォッベ指数を算出するウォッベ指数計算手段が設けられていること以外は、当該第1のウォッベ指数測定装置と同様の構成を有するものである。
【0058】
この第2のウォッベ指数測定装置においては、基本換算熱量値算出機構を構成する基本換算熱量値計算手段と、空気含有率算出機構を構成する空気含有率計算手段と、熱量計算手段と、ウォッベ指数計算手段とにより、基本換算熱量値算出機構を構成するガス屈折率測定手段および空気含有率算出機構を構成するガス酸素濃度測定手段において同時に測定された被測定ガスの屈折率の値と被測定ガスの酸素濃度の値とに基づいて、特定の熱量取得方法によって測定対象ガスの熱量を求め、最終的にウォッベ指数を算出するための計算機構が構成されている。
【0059】
第2のウォッベ指数測定装置を構成する比重測定手段としては、従来公知の比重測定計を用いることができ、また、ウォッベ指数計算手段としては、熱量計算手段において得られる測定熱量値と、ガス比重測定手段において得られる被測定ガスの比重の値とに基づいてウォッベ指数を算出することのできる構成のもの、具体的には、例えばパーソナルコンピュータ、演算機能付レコーダなどを用いることができる。
【0060】
このような構成を有する第2のウォッベ指数測定装置においては、基本換算熱量値算出機構を構成するガス屈折率測定手段と、空気含有率算出機構を構成するガス酸素濃度測定手段と、ガス比重測定手段とに同時に被測定ガスを供給することにより、基本換算熱量値算出機構においては基本換算熱量値が求められ、空気含有率算出機構においてはガス空気含有率が求められ、またガス比重測定手段においては被測定ガスの比重が測定される。
そして、基本換算熱量値算出機構、空気含有率算出機構およびガス比重測定手段において得られた基本換算熱量値、ガス空気含有率および被測定ガスの比重の値のデータが、ウォッベ指数計算手段に送信され、当該ウォッベ指数計算手段において、基本換算熱量値とガス空気含有率とに基づいて、例えば上記数式(1)または上記数式(2)によって測定熱量値が算出され、最終的に上記数式(5)により、測定ウォッベ指数値が算出される。このようにして得られた測定ウォッベ指数値、および必要に応じて、ウォッベ指数計算機構においてウォッベ指数値を算出する過程において得られる値(具体的には、例えば基本換算熱量値)は、表示機構に送信され、この表示機構において表示される。
【0061】
以上のようなウォッベ指数測定装置によって実施される本発明のウォッベ指数測定方法は、被測定ガスはパラフィン系炭化水素ガスに対して未知の割合の空気が混入されてなる炭化水素系燃焼用ガスであり、被測定ガス中における空気の含有割合はいかなる割合であってもよく、空気の含有割合が0%、すなわち被測定ガスが空気が含有されておらず、パラフィン系炭化水素ガスのみよりなるガスであってもよい。
また、本発明の本発明のウォッベ指数測定方法は、基本的にパラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなる炭化水素系燃焼用ガスを被測定ガスとするものであるが、パラフィン系炭化水素ガスに対して既知の割合で空気が混入されてなるガスの熱量を測定することもできる。
【0062】
このようなウォッベ指数測定装置においては、ウォッベ指数を算出するために必要とされる被測定ガスの熱量の値が、特定の熱量取得方法によって得られるものであることから、被測定ガスがパラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなるものであっても、当該被測定ガスのウォッベ指数を高い信頼性で測定することができる。
【0063】
また、ウォッベ指数測定装置が、被測定ガスの比重の値を、被測定ガスの屈折率の値および酸素濃度の値に基づいて当該被測定ガスの比重を算出することによって得る構成のものであることにより、被測定ガスの比重を測定するための手段を設ける必要がないために当該ウォッベ指数測定装置の小型化を図ることができる。
【0064】
以上、本発明のガスの燃焼熱量測定方法およびウォッベ指数測定方法並びにガス測定装置(具体的には、熱量測定装置およびウォッベ指数測定装置)について具体的に説明したが、本発明は以上の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
例えばガスの燃焼熱量測定方法は、基本換算熱量値算出機構、空気含有率算出機構および熱量計算手段を合わせて備えてなる装置によって実施されることに限定されず、特定の熱量取得方法によって被測定ガスの熱量を求めるのであれば、基本換算熱量値、ガス空気含有率および測定熱量値を得るための装置が一体化されておらずに個別であってもよく、さらに測定熱量値、あるいは基本換算熱量値およびガス空気含有率を求めるための算出手法が演算機などによる自動計算であっても、あるいは手動による計算であってもよい。
また、ウォッベ指数測定方法は、ガスの燃焼熱量測定方法と同様に、基本換算熱量値算出機構、空気含有率算出機構およびウォッベ指数計算機構を合わせて備えてなる装置、または基本換算熱量値算出機構、空気含有率算出機構、比重測定手段およびウォッベ指数計算手段を合わせて備えてなる装置によって実施されることに限定されず、ウォッベ指数を算出するための被測定ガスの熱量の値を特定の熱量取得方法によって求めるのであれば、基本換算熱量値、ガス空気含有率、測定熱量値および必要に応じて測定比重値を得るための装置が一体化されておらずに個別であってもよく、さらに測定熱量値、あるいは基本換算熱量値およびガス空気含有率を求めるための算出手法が演算機などによる自動計算であっても、あるいは手動による計算であってもよい。
【0065】
以下、本発明の実験例について説明する。
【0066】
〔実験例1〕
図3に示すような、パラフィン系炭化水素ガスの屈折率と熱量との相関関係を利用することにより熱量(屈折率換算熱量)を求める構成の屈折率式熱量計よりなる基本換算熱量値算出機構20と、酸素センサよりなるガス濃度測定手段を備え、試料ガスの酸素濃度と大気中の空気の酸素濃度とを交互に測定する構成の空気含有率算出機構30と、基本換算熱量値算出機構20および空気含有率算出機構30の各々にガスを供給するための分岐構造を有するガス流路11と共に、基本換算熱量値算出機構20および空気含有率算出機構30の各々において得られる基本換算熱量値およびガス空気含有率から、数式(1)によって測定熱量値を算出し、数式(3)によって測定比重値を算出すると共に、得られた測定熱量値および測定比重値に基づいて数式(5)によってウォッベ指数値を算出することのできるパーソナルコンピュータよりなるウォッベ指数計算機構40とを備えてなる構成のガス測定システムを用意した。この測定システムに対して、下記表1に示す組成を有し、比重が0.635、総発熱量が44.96〔MJ/Nm3 〕、ウォッベ指数が56.4である圧縮天然ガス(CNG)が充填されたガスボンベ62からシリンジ61を用いて圧縮天然ガスを採取し、必要に応じてシリンジ61内において空気によって希釈することにより、空気希釈率(試料ガスにおける空気含有率(百分率))が0%、10%、20%、30%、40%および50%であるガスを試料ガスとして供給し、各試料ガスについて、基本換算熱量値算出機構20によって基本換算熱量値(屈折率換算熱量)を測定すると共に、空気含有率算出機構30によってガス空気含有率を測定し、更に、ウォッベ指数計算機構40によって測定熱量値と測定ウォッベ指数値を算出した。結果を図4〜図6に示す。
図4においては、基本換算熱量値算出機構20を構成する屈折率式比重計によって得られた基本換算熱量値を四角プロット(■)で示し、ウォッベ指数計算機構40を構成するパーソナルコンピュータによって得られた測定熱量値を三角プロット(▲)で示し、熱量の理論値(真値)を破線で示した。また、同図において、空気含有率算出機構30を構成する酸素センサによって測定された試料ガスの酸素濃度の値を円プロット(●)で示した。
図5においては、ウォッベ指数計算機構40を構成するパーソナルコンピュータによって得られた測定比重値を三角プロット(▲)で示し、比重の理論値(真値)を破線で示した。また、同図において、空気含有率算出機構30を構成する酸素センサによって測定された試料ガスの酸素濃度の値を円プロット(●)で示した。
図6においては、ウォッベ指数計算機構40を構成するパーソナルコンピュータによって得られたウォッベ指数値を三角プロット(▲)で示し、ウォッベ指数の理論値(真値)を破線で示した。また、同図において、空気含有率算出機構30を構成する酸素センサによって測定された被測定ガスの酸素濃度の値を円プロット(●)で示した。
【0067】
【表1】

【0068】
この実験例1の結果から、測定対象ガスの屈折率と共に酸素濃度を測定し、測定対象ガスの屈折率の値からは、測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスのみよりなる場合におけるパラフィン系炭化水素ガス換算熱量値を求め、一方、測定対象ガスの酸素濃度の値からは、測定対象ガスにおける空気含有率を求め、このようにして事実上同時に測定された屈折率および酸素濃度に基づいて得られたパラフィン系炭化水素ガス換算熱量値と測定対象ガスにおける空気含有率に基づいて当該測定対象ガスの熱量を求めることにより、測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなるものであっても、当該測定対象ガスの熱量およびウォッベ指数を高い信頼性で測定することができることが確認された。
【符号の説明】
【0069】
10 熱量測定装置
11 ガス流路
20 基本換算熱量値算出機構
22 データ送信路
30 空気含有率算出機構
32 データ送信路
40 熱量計算手段
51 チャンバ
52 測定対象ガス用セル部
53A、53B 標準ガス用セル部
54 光源
55 平行平面鏡
56 干渉縞検出手段
57 平面鏡
58 プリズム
59 集光レンズ
61 シリンジ
62 ガスボンベ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなる炭化水素系燃焼用ガスを測定対象ガスとし、当該測定対象ガスの熱量を測定するガスの燃焼熱量測定方法であって、
測定対象ガスの屈折率と酸素濃度とを測定し、
得られた屈折率の値から、パラフィン系炭化水素ガスの熱量と屈折率との相関関係に基づいて、当該測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスのみよりなる場合におけるパラフィン系炭化水素ガス換算熱量値を求めると共に、得られた酸素濃度の値から、当該酸素濃度に対応する当該測定対象ガスにおける空気含有率を求め、
当該パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値および当該測定対象ガスにおける空気含有率に基づいて測定対象ガスの熱量を求めることを特徴とするガスの燃焼熱量測定方法。
【請求項2】
前記測定対象ガスの熱量として、パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値をQη〔MJ/Nm3 〕、測定対象ガスにおける空気含有率をχとするとき、下記の数式(1)に基づいて総発熱量Q1 を求めることを特徴とする請求項1に記載のガスの燃焼熱量測定方法。
数式(1):
総発熱量Q1〔MJ/Nm3 〕=Qη−25.47×χ
【請求項3】
前記測定対象ガスの熱量として、パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値をQη〔MJ/Nm3 〕、測定対象ガスにおける空気含有率をχとするとき、下記の数式(2)に基づいて真発熱量Q2 を求めることを特徴とする請求項1に記載のガスの燃焼熱量測定方法。
数式(2):
真発熱量Q2 〔MJ/Nm3 =Qη−22.50×χ
【請求項4】
パラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなる炭化水素系燃焼用ガスを測定対象ガスとし、当該測定対象ガスの熱量の値と比重の値とに基づいて当該測定対象ガスのウォッベ指数を算出するウォッベ指数測定方法であって、
測定対象ガスの熱量の値が、当該測定対象ガスの屈折率と酸素濃度とを測定し、得られた屈折率の値から、パラフィン系炭化水素ガスの熱量と屈折率との相関関係に基づいて、当該測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスのみよりなる場合におけるパラフィン系炭化水素ガス換算熱量値を求めると共に、得られた酸素濃度の値から、当該酸素濃度に対応する当該測定対象ガスにおける空気含有率を求め、当該パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値および当該測定対象ガスにおける空気含有率に基づいて求められるものであることを特徴とするウォッベ指数測定方法。
【請求項5】
前記測定対象ガスの熱量の値が、パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値をQη〔MJ/Nm3 〕、測定対象ガスにおける空気含有率をχとするとき、下記の数式(1)に基づいて求められる総発熱量Q1 であることを特徴とする請求項4に記載のウォッベ指数測定方法。
数式(1):
総発熱量Q1 〔MJ/Nm3 =Qη−25.47×χ
【請求項6】
前記測定対象ガスの熱量の値が、パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値をQη〔MJ/Nm3 〕、測定対象ガスにおける空気含有率をχとするとき、下記の数式(2)に基づいて求められる真発熱量Q2 であることを特徴とする請求項4に記載のウォッベ指数測定方法。
数式(2):
真発熱量Q2 〔MJ/Nm3 =Qη−22.50×χ
【請求項7】
前記測定対象ガスの比重の値が、前記パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値と、前記測定対象ガスにおける空気含有率に基づいて求められるものであることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれかに記載のウォッベ指数測定方法。
【請求項8】
前記測定対象ガスの比重の値が、パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値をQη〔MJ/Nm3 〕、測定対象ガスにおける空気含有率をχとするとき、下記の数式(3)に基づいて求められることを特徴とする請求項5に記載のウォッベ指数測定方法。
数式(3):
比重d1=(16.291×Qη−95.66+682.1×χ)/1000
【請求項9】
前記測定対象ガスの比重の値が、パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値をQη〔MJ/Nm3 〕、測定対象ガスにおける空気含有率をχとするとき、下記の数式(4)に基づいて求められることを特徴とする請求項6に記載のウォッベ指数測定方法。
数式(4):
比重d2=(17.541×Qη−76.82+682.1×χ)/1000
【請求項10】
パラフィン系炭化水素ガスに未知の割合の空気が混入されてなる炭化水素系燃焼用ガスを測定対象ガスとし、当該測定対象ガスの熱量およびウォッベ指数の少なくとも一方を測定するためのガス測定装置であって、
測定対象ガスの屈折率を測定するための屈折率測定手段と、測定対象ガスの酸素濃度を測定するための酸素濃度測定手段とを備え、下記の(1)または(2)の計算機構が設けられていることを特徴とするガス測定装置。
(1)屈折率測定手段において得られる屈折率の値から、パラフィン系炭化水素ガスの熱量と屈折率との相関関係に基づいて、当該測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスのみよりなる場合におけるパラフィン系炭化水素ガス換算熱量値を求めると共に、酸素濃度測定手段において得られる酸素濃度の値から、当該酸素濃度に対応する当該測定対象ガスにおける空気含有率を求め、当該パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値および当該測定対象ガスにおける空気含有率に基づいて測定対象ガスの熱量を求める計算機構
(2)屈折率測定手段において得られる屈折率の値から、パラフィン系炭化水素ガスの熱量と屈折率との相関関係に基づいて、当該測定対象ガスがパラフィン系炭化水素ガスのみよりなる場合におけるパラフィン系炭化水素ガス換算熱量値を求めると共に、酸素濃度測定手段において得られる酸素濃度の値から、当該酸素濃度に対応する当該測定対象ガスにおける空気含有率を求め、当該パラフィン系炭化水素ガス換算熱量値および当該測定対象ガスにおける空気含有率に基づいて、測定対象ガスの熱量および測定対象ガスの比重を求め、得られた測定対象ガスの熱量の値と比重の値とに基づいてウォッベ指数を算出する計算機構

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−251813(P2012−251813A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123237(P2011−123237)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(000250421)理研計器株式会社 (216)
【Fターム(参考)】