説明

ガスケットおよびそれを用いたシール形成方法

1対の本体同士の対向する面同士の間にシールを形成するガスケットおよび方法。ガスケットは、対向する面同士の間に収容されるように適合された複数の穿孔を有する1つの部分を備えた本体を有する。シールを形成する方法は、この穿孔を備えた本体の部分を、対向する面同士の間に配置するステップと、1対の本体同士を互いに締結し、その間の本体の穿孔部を圧縮するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
1.技術分野
本発明は、概してガスケットおよびそのシール生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2.関連技術
ガスケットは、互いに装着される本体同士の間に延在する通路の周りにシールを生成するために、たとえば、内燃機関などの中で慣用される。ガスケットを、概ね剛体のコアを備えた無孔質のガスケット本体材料のシートまたは積層シートと、このコアを覆って本体同士との当接のための弾性のシール面を生成するより適合しやすい材料とから形成することは、周知である。ガスケットは、無孔質の本体を貫いて形成される開口部を有し、この開口部は、通路と一致し、これにより、係合する本体同士の間にシールを構築するための無孔質の外側周辺部と、本体同士の間に延在する通路を貫き、全く遮られない開放流体流路とを提供する。
【0003】
重量およびコストを低減するために、メッシュワイヤ材料を用いてコアを構成し、このメッシュコア上に、弾性の外側シール面材料を施して、ガスケット材料の完全に無孔質で中実な本体を形成することは、周知である。ある時点で、たとえば二次操作において、上記のように、開口部は、この無孔質の本体を貫いて形成され、流体の流れのための開路を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
発明の概要
互いに装着された1対の本体同士の、対向する面同士の中へ延在する少なくとも1つの通路の周りに、シールを形成するためのガスケットは、この対向する面同士の間で圧縮されるのに適合された1つの部分を備えた穿孔網状体の層を備えた本体を有する。この網状体は、本体同士の対向する側面同士の間にシールを構築しやすくする複数の穿孔を、本体同士の間の圧縮された部分に、規定する。
【0005】
本発明の別の局面は、その間に延在する少なくとも1つの流体通路を有する1対の本体同士の、対向する面同士の間に、シールを形成する方法を提供する。この方法は、穿孔網状体の層を有するガスケット本体を提供するステップと、穿孔網状体が対向する面同士の間に収容される状態で、ガスケット本体を、対向する面同士の間に配置するステップと、本体同士を互いに締結し、ガスケット本体の穿孔網状体を、対向する面同士の間で圧縮するステップとを含む。
【0006】
本発明のこれらの、および他の特徴ならびに利点は、以下の詳細な説明、および同様な特徴は同様な参照番号を付けられている添付された図面に関して考慮されるとより容易に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
好ましい実施形態の詳細な説明
図面をより詳細に参照して、図1および図2は、制限するものでないが例として内燃機関用のサーモスタットなどの組品を形成する1対の本体14および本体16の、対向する面13と面15との間で、少なくとも部分的に圧縮された本体12を有する、本発明の現
在好ましい1つの実施形態に従い構成されたガスケット10を示す。本体12は、対向する面13と面15との間で圧縮されて収容されるように適合された1つの部分を有し、本体14と本体16との間の対向する面13と面15との中へ延在する少なくとも1つの通路18を通して流体を、概ね遮られずに貫流させるように適合された別の領域または部分を規定する。対向する面13と面15との間で圧縮された部分は、1対の本体14および本体16の対向する側面13と側面15との間にシールを構築しやすくする複数の穿孔または空隙22を規定する、孔のあいた網状材料または網状体20の層を少なくとも1つ含む。
【0008】
この、穿孔網状体20の1つ以上の層は、たとえばゴムまたは他の高分子材料、金属材料、紙系材料、および多様な繊維材料またはセラミック材料などの、1つ以上の異なる種類の材料を、別々にまたは互いに組合せてのいずれかにより、互いに別々にまたはともに、形成することができる。よって、本体12は、たとえば成形、製織、スタンピング形成、ブランキング形成、およびエンボス加工などの、多数の製造プロセスを、別個にまたは互いに連続してのいずれかにより経て、構成することができる。
【0009】
網状体20により規定される複数の空隙22の形状および大きさは、用途のシール要件に最もよく合致するようにさまざまに変化させることができる。たとえば、この空隙は、円形、矩形、三角形、楕円形、または多角形にすることができ、大きさはミクロンからミリメーターに及ばせることができる。好ましくは、対向する側面13と側面15との間にシールを構築する本体12の部分は、網状体の均一なパターン、よって、本体12に亘って実質的に同じ大きさと形状を有する空隙22の均一なパターンを有して構成される。このようであるので、製造効率を最大化することができるとともに、製造プロセスに関するコストを最小化することができる。しかしながら、もし、意図する用途により適するならば、シールを構築する本体12の部分を、非均一な網状体20のパターンを有し、よって空隙22が本体12に亘って大きさおよび/または形状がさまざまに変化するよう構成することができることが認識されるべきである。
【0010】
空隙22は、網状体20が、荷重を受けて、伸縮自在におよび可能性としては可塑的に、空隙区域へ横方向に移動することを可能にすることで、網状体20のより均一な圧縮を提供し、よって、対向する面13と面15との間での均一なシールの形成を容易にする。さらに、空隙22は、圧縮されたガスケット本体12の表面積を減少させ、よってガスケット本体12が受ける単位荷重は、周知のガスケットのものよりも増大する。また、空隙22は、万が一、個々の空隙22を規定する網のいずれか1つが損傷または破損した場合に、流体がガスケット本体12全体を通過し漏れることを防止する冗長閉じ込め域を形成する。よって、仮に1つの網が破裂した場合、未損傷の網により規定される近傍の空隙が、流体が漏れることを依然としてくいとめ、これによりガスケット本体12を通過しての漏れを阻止することができる。この、同じ局面は、たとえばむしれまたは擦り傷などの何らかの程度の損傷を有する面同士の間に、またはたとえば鋳込み材料の表面に一般に生じるような高い空隙率を有する面同士の間に、信頼できるシールを構築するに当って特に有用である。さらに、たとえば組立中に封入流体を空隙22の区域中に配置することによって、または使用中に流体が空隙22の区域に入ることによって取り込まれ得る、空隙22の区域に取り込まれた任意の流体も、面13と面15との間に、信頼性の高いシールを形成しやすくすることができる。空隙22内の流体は、一種の流体静力学的シールとして作用することができ、よって本体14と本体16との間での流体および/または汚染物質の侵出または侵入を防止することができる。
【0011】
上記のように、ガスケット本体12は、さまざまな材料およびパターンの網状体を用いて構成することができる。たとえば、図3は、2つの異なる材料から構成される本体12を示しており、本体12は、たとえば金属ワイヤスクリーン網の層などの第1の材料から
成るコア24と、たとえばゴムなどの高分子材料層である第2の材料から成る外層26とを有する。高分子外層26は、たとえば成形またはスプレー塗装などのさまざまな方法でコア24へ施すことができ、ここでは外層26をコア24の内部に完全に封じ込めて図示されている。別の例では、図4は、たとえばゴムなどの弾性高分子材料の単一の層などの、単一の材料から構成される本体12を示す。この単一の層は、制限するものでなく例として、断面が概ね円形の網状体20を有するように図示されているが、網状体20は、任意の適当な断面の形状を有するように構成することができることが認識されるべきである。さらに他の例において、図5は、少なくとも2つの異なる材料から構成される本体12を示し、本体12は、金属材料の概ね平坦な層など、たとえば概ね剛体である材料である第1の材料より成るコア24と、剛性がより低く、圧縮性および弾性がより高い、高分子材料の層などの材料からたとえば成る、1対の対向する第2の外層26および外層27とを有する。コア24ならびに外層26および外層27を、任意の適当なガスケット材料より形成し、所望の如くさまざまな厚さを備えた任意の適当な数の層で成層し得ることが認識されるべきである。さらに、外層26および外層27を、たとえば、一方の外層26が1つの弾性高分子材料から形成され、他方の外層27が、異なる弾性高分子材料から形成されるように、2つの異なる材料で形成することができる。さらに、コア24を、この例では、一方の側面では金属コア24が露出し、他方の側面ではより弾性の高い層が露出するように、単一の側面(図示せず)を被覆することができることが認識されるべきである。この例では、材料の層は、矩形または正方形の断面を有して図示され、外層26および外層27は、コア24が空隙22内で露出するように、コア24を完全には内部に封じ込めない。さらに別の例では、図6は、エンボス処理プロセスを経て形成された金属網状体20の層を有する本体12を示す。上記のように、網状体20を、図示された以外の構成で配置することができ、これにより、網状体20は、所望の形状および大きさを有する空隙22を規定し得る。
【0012】
図1に示されるように、ガスケット10は、本体14および本体16を互いに装着されるために用いられる止め金具32の受けを容易にするためにガスケット10に形成される、複数の開口部30を有し得る。しかしながら、開口部30は、用途によっては望ましいかも知れないが、開口部30の形成は必要でないかもしれないことが認識されるべきである。これは、止め金具32を、ガスケット本体12を貫いて押すことにより、止め金具32によりガスケット本体12を貫く開口部を容易に形成することができることに起因する。これは、ガスケット本体12にある複数の空隙22によって促進され、止め金具32に加えられる力により、ガスケット本体12に損傷を生じることなく、網状体20を貫いて容易に開口部を形成することができる。よって、ガスケット本体12を、もし所望されるならば、開口部32をガスケット本体12に形成せずに構成することができ、これによりガスケット10を製造する全体コストを削減できる。
【0013】
図1および図2に示されるように、ガスケット本体12は、通路18に対応する、網状体20の上記1つの部分から半径方向に内側に開口部34を規定する領域または部分を有する。開口部34は、通路18と一致するよう成形されて図示されており、よって、網状体20は、通路18へ概ね延出しない。このようであるので、流体は、全く遮られずに通路18を貫流することができる。ガスケット本体12に形成される開口部の数および形状は、本体13と本体15との間に延在する通路の数および形状に対応してさまざまに変化し得ることが認識されるべきである。
【0014】
図7および図8に示されるように、本発明の別の実施形態に従い構成されるガスケット10は、ここではたとえば外側周辺部として表される対向する面13と面15との間で、少なくとも部分的に圧縮される1つの部分と、流体通路18を、少なくとも部分的に横断するのに適合され、ここでは完全に横切って延在するものとして表わされる別の部分とを有する。この実施形態は、たとえばピストンなどの、通路18を横断する機械装置がない
用途においてのみ有用であることが認識されるべきである。好ましくは、ガスケット10のこれら2つの部分は、均一な形状およびサイズの空隙22を備えた同一の網状材料から構成される。通路18を横断する部分にある空隙22は、流体が通路18を概ね遮られずに貫流することができるような大きさに作られる。よって、ガスケット10は、通路18の大きさに一致し、ガスケット10に形成される、別個の開口部を必要としない。このようであるので、ガスケット10は、通路の大きさおよび形状に拘らず、1つ以上の通路を有するさまざまな用途に亘って、汎用的に用いられることができる。さらに、ガスケット10の製造効率は、別個の開口部を形成する必要がない結果、最大化される。
【0015】
仮に、適用例が、通路18での特定の流体流量、および本体14と本体16との間で圧縮されるガスケット本体12の部分の特定の圧縮を要求する場合は、通路18を横断する空隙22を、係合する面13と面15との間で圧縮される空隙18と異なる大きさに作ることができる。このようであるので、ガスケット本体12の外側周辺部は、必要とされるシールの完全さを提供する1つの網状体パターンを有するよう構成され得、その一方で、通路18を横断して延在する本体12の部分は、所望される流体流量を実現するのに最も適当な大きさおよび形状の空隙22を提供する、異なる網状体パターンを有し得る。そうでなければ、ガスケット10は、上記実施形態について上に記載したのと同様に構成され得る。
【0016】
明らかに、本発明の多くの変更例および変形例が、上記の教示に照らして可能である。したがって、本発明は、添付された請求項の範囲内で特に記述された以外の方法で実行され得ることが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】1対の本体同士の間に配置され、本体同士の間にシールを生成する、本発明の1つの実施形態に従い構成されるガスケットの分解部分斜視図である。
【図2】本体同士の間にシールを形成するガスケットを備えた本体同士の組立断面図である。
【図3】図1のガスケットの拡大部分断面図である。
【図4】本発明の別の現在好ましい実施形態に従い構成されるガスケットの拡大部分断面図である。
【図5】本発明のさらに別の現在好ましい実施形態に従い構成されるガスケットの拡大部分断面図である。
【図6】本発明のさらに別の現在好ましい実施形態に従い構成されるガスケットの拡大部分断面図である。
【図7】1対の本体同士の間に配置され、本体同士の間にシールを生成する、本発明の別の実施形態に従い構成されるガスケットを示す図1と同様の図である。
【図8】本体同士の間にシールを形成する図7のガスケットを示す図2と同様の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに取付けられた1対の本体同士の、対向する面同士の中へ延在する少なくとも1つの通路の周りに、シールを形成するためのガスケットであって、
前記1対の本体同士の対向する面同士の間で圧縮されるのに適合された1つの部分を含む本体を備え、前記1つの部分は、前記1対の本体同士の対向する側面同士の間に、シールを構築しやすくする複数の穿孔を規定する、網状材料の層を含む、ガスケット。
【請求項2】
前記網状材料は、少なくとも部分的にエラストマー材料から構成される、請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記網状材料は、少なくとも部分的に金属材料から構成される、請求項1に記載のガスケット。
【請求項4】
前記金属材料の少なくとも一部分に、エラストマー材料被膜をさらに含む、請求項3に記載のガスケット。
【請求項5】
前記エラストマー材料は、前記本体同士の対向する面同士の間に収容されるように適合された、請求項4に記載のガスケット。
【請求項6】
前記穿孔は、前記1つの部分に亘って均一に分布する、請求項1に記載のガスケット。
【請求項7】
前記穿孔は、実質的に同じ大きさおよび形状である、請求項6に記載のガスケット。
【請求項8】
前記本体は、前記少なくとも1つの通路を横切って延在するのに適合された網状材料の層を有する別の部分を規定し、前記別の部分は、前記少なくとも1つの通路を貫く概ね遮られない流体の流れを可能にする大きさに作られる複数の穿孔を規定する、請求項1に記載のガスケット。
【請求項9】
前記1つの部分および前記別の部分にある前記穿孔は、実質的に同じ大きさおよび形状である、請求項8に記載のガスケット。
【請求項10】
前記本体は、前記1つの部分から半径方向に内側に、少なくとも1つの開口領域を規定し、前記少なくとも1つの開口領域は、前記少なくとも1つの通路と一致する大きさに作られている、請求項1に記載のガスケット。
【請求項11】
互いに取付けられた1対の本体同士の、対向する面同士の中へ延在する少なくとも1つの通路の周りに、シールを形成するガスケットであって、
前記対向する面同士の間に収容されるために前記少なくとも1つの通路を越えて延在するのに適合された1つの部分と、前記少なくとも1つの通路の中へ少なくとも部分的に延在するのに適合された別の部分とを有する網状材料の、連続的な層を含む本体を備える、ガスケット。
【請求項12】
前記網状材料は、前記別の部分を貫き、流体が前記少なくとも1つの通路を概ね遮られずに貫流することを可能にする、複数の穿孔を規定する、請求項11に記載のガスケット。
【請求項13】
前記別の部分は、前記少なくとも1つの通路を横断する、請求項12に記載のガスケット。
【請求項14】
前記網状材料は、前記少なくとも1つの通路を越えて延在する前記1つの部分にある複数の穿孔を規定する、請求項12に記載のガスケット。
【請求項15】
前記1つの部分にある前記穿孔および前記別の部分にある前記穿孔は、実質的に同じ大きさおよび形状である、請求項14に記載のガスケット。
【請求項16】
前記本体は、材料のコアと、前記コアとは異なる材料の外層とを有する、請求項11に記載のガスケット。
【請求項17】
前記コアは、前記外層によって内部に封じ込められる、請求項16に記載のガスケット。
【請求項18】
前記コアは、前記外層よりもより剛性が高い材料である、請求項16に記載のガスケット。
【請求項19】
1対の本体同士の、対向する面同士の間にシールを形成する方法であって、前記本体同士は、前記対向する面同士の中へ延在し流体が貫流するための、少なくとも1つの通路を含み、前記方法は、
穿孔網状材料の層を含むガスケット本体を提供するステップと、
前記本体同士の対向する面同士の間で前記穿孔網状材料が収容される状態で、前記ガスケット本体を前記本体同士の間に配置するステップと、
前記本体同士を互いに締結し、前記対向する面同士の間で前記ガスケット本体の前記穿孔網状材料を圧縮するステップとを備える、方法。
【請求項20】
前記ガスケット本体に穿孔網状材料の連続した層を設け、前記網状材料を前記通路を横切って配置するステップをさらに備える、請求項19に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公表番号】特表2009−533634(P2009−533634A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506664(P2009−506664)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2007/064995
【国際公開番号】WO2007/121047
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(599058372)フェデラル−モーグル コーポレイション (234)
【Fターム(参考)】