説明

ガスケットによるシール構造

【課題】ガスケットの倒れを抑制し、ガスケットによるシール性能を向上させることができるガスケットによるシール構造を提供する。
【解決手段】第1部品としてのシリンダヘッド11の合せ面11aと、第2部品としてのインテークマニホールド12の合せ面12aとがガスケット25を介して重ね合わされる。インテークマニホールド12には第1嵌着溝18が設けられ、第1ガスケット本体26が嵌着されてシリンダヘッド11の合せ面11aとインテークマニホールド12の合せ面12aとの間の隙間がシールされる。ガスケット25の視認用突起31が第1ガスケット本体26から突出される案内溝23は第1嵌着溝18に連通して形成されている。視認用突起31はインテークマニホールド12側に折り返された位置決め部33を有するとともに、インテークマニホールド12には位置決め部33を位置決めすべくその両側に沿うようにガイドリブ35が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車用エンジンのシリンダヘッドとインテークマニホールドとの間にガスケットが介装されて両部品間の隙間をシールするシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
インテークマニホールドは空気と燃料との混合気をシリンダに供給する部品であって、そのシリンダヘッド側端部は各気筒に対応して複数に分岐されている。このインテークマニホールドとシリンダヘッドとの間には、両者を気密にシールするためにゴム等の弾性材料で形成されたガスケットが介装されている。該ガスケットには、シリンダヘッドへのインテークマニホールドの組付後にガスケットの存在を外部から視認できるように視認用突起が設けられている。
【0003】
すなわち、図5に示すように、インテークマニホールド40の嵌着溝41にはガスケット本体43が嵌着されるとともに、インテークマニホールド40の一部には嵌着溝41に連通する案内溝44が形成され、ガスケット本体43から視認用突起45が案内溝44を通って外方へ延びるように突出形成されている。このため、図6に示すように、インテークマニホールド40がシリンダヘッド46に組付けられた後に、案内溝44から外部へ突出した視認用突起45を目視することによりガスケット47の装着確認を行うことができる。
【0004】
この種のガスケット取付構造が特許文献1に開示されている。すなわち、このガスケットの取付構造は、視認用の突起が図5の構成とほぼ同様にガスケットの外部へ突出してガスケットの装着を確認できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−209687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6に示すように、ガスケット47が取付けられたインテークマニホールド40をシリンダヘッド46に組付ける際にはシリンダヘッド46が実線に示す位置から二点鎖線に示す位置に相対移動することから、ガスケット本体43が圧縮力を受ける。このとき、前記図5に示すような従来構成や特許文献1に記載されているような従来構成においては、ガスケット47の視認用突起45が突出される位置には案内溝44が形成されていることから、ガスケット本体43の端部は前記圧縮力により図6の矢印に示す方向へ倒れやすくなる。そのため、ガスケット47によるシリンダヘッド46とインテークマニホールド40との間のシール性能が悪化するという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的とするところは、ガスケットの倒れを抑制し、ガスケットによるシール性能を向上させることができるガスケットによるシール構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明のガスケットによるシール構造では、第1部品と第2部品の合せ面のいずれか一方に設けた嵌着溝にガスケット本体が嵌着されて第1部品と第2部品との合せ面をシールするとともに、ガスケット本体に一体形成されガスケットの装着を確認するための視認用突起が前記嵌着溝に連通する案内溝から突出されたガスケットによるシール構造であって、前記ガスケットの視認用突起は案内溝が形成された第1又は第2部品側に突出する位置決め部を有するとともに、案内溝が形成された第1又は第2部品には前記ガスケットの位置決め部を位置決めすべくその両側に沿うようにガイドリブを設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明のガスケットによるシール構造は、請求項1に係る発明において、前記視認用突起はガスケット本体の外端側から放射方向外方へ延びるように形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明のガスケットによるシール構造は、請求項1又は請求項2に係る発明において、前記ガスケットの視認用突起はガイドリブよりも高く設定されていることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明のガスケットによるシール構造は、請求項1から請求項3のいずれか1項に係る発明において、前記ガイドリブはガスケットの視認用突起よりも長く形成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明のガスケットによるシール構造は、請求項1から請求項4のいずれか1項に係る発明において、前記第1部品はシリンダヘッドであり、第2部品はインテークマニホールドであり、ガスケット本体はインテークマニホールドに設けられた嵌着溝に嵌着されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。
本発明のガスケットによるシール構造では、ガスケットの視認用突起は案内溝から外方へ突出し、該案内溝が形成された第1又は第2部品側に突出する位置決め部を有している。このため、視認用突起を位置決め部で支えることができ、視認用突起をガスケット本体の端部側に設けることが可能になる。加えて、案内溝が形成された第1又は第2部品にはその両側に沿うようにガイドリブが設けられている。従って、ガスケットの位置決め部をガイドリブで位置決めすることができる。
【0014】
よって、本発明のガスケットによるシール構造によれば、ガスケットの倒れを抑制し、ガスケットによるシール性能を向上させることができるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態においてシリンダヘッドとインテークマニホールドとの間のガスケットによるシール構造を示す断面図であって、図4の1−1線における断面図。
【図2】図1の要部拡大断面図。
【図3】ガスケットの位置決め部を位置決めする一対のリブを示す平面図。
【図4】ガスケットが装着されたインテークマニホールドをシリンダヘッド側から見た状態を示す平面図。
【図5】従来例を示し、視認用突起を有するガスケットがインテークマニホールドに装着された状態を示す平面図。
【図6】図5の6−6線における断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図4に基づいて詳細に説明する。
図1の二点鎖線に示すように、3気筒の自動車用エンジンの第1部品としてのシリンダヘッド11には、同図の実線に示す第2部品としてのインテークマニホールド12が装着される。図4に示すように、このインテークマニホールド12には第1ポート13、第2ポート14及び第3ポート15が分岐形成され、第1ポート13と第2ポート14のシリンダヘッド側端部は第1連結部16で連結され、第2ポート14と第3ポート15のシリンダヘッド側端部は第2連結部17で連結されている。このインテークマニホールド12は、機械的強度、耐熱性等に優れたポリアミド樹脂(ナイロン樹脂)、ポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等のエンジニアリングプラスチックにより形成されている。
【0017】
各ポート13,14,15のシリンダヘッド11側端面にはそれぞれ第1嵌着溝18、第2嵌着溝19及び第3嵌着溝20が形成されるとともに、各連結部16,17には第1連結溝21及び第2連結溝22が形成されている。前記第1ポート13の一部には、外側面に開口するとともに、第1嵌着溝18に連通する案内溝23が形成されている。インテークマニホールド12には複数のボルト挿通孔24が設けられ、それらのボルト挿通孔24に図示しないボルトが挿通されてシリンダヘッド11のねじ孔に螺合されることによりインテークマニホールド12がシリンダヘッド11に固定される。
【0018】
ガスケット25は前記インテークマニホールド12の各嵌着溝18,19,20及び各連結溝21,22に嵌着され得る形状に形成され、互いに一体形成された第1ガスケット本体26が第1嵌着溝18、第2ガスケット本体27が第2嵌着溝19、第3ガスケット本体28が第3嵌着溝20に嵌着されている。さらに、第1ガスケット本体26と第2ガスケット本体27間に一体形成された第1連結部29が第1連結溝21に及び第2ガスケット本体27と第3ガスケット本体28間に一体形成された第2連結部30が第2連結溝22に嵌着されている。第1ガスケット本体26の一部には、視認用突起31が案内溝23を通って外方へ延びるように突出形成されている。このガスケット25は、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の弾性材料により形成されている。
【0019】
図1及び図2に示すように、第1ガスケット本体26のシリンダヘッド11側端部には断面円弧状に膨らむ膨出部32が設けられ、インテークマニホールド12の合せ面12aと図中の二点鎖線に示すシリンダヘッド11の合せ面11aとの間において膨出部32によりシール性能を発現できるように構成されている。前記視認用突起31は第1ガスケット本体26のシリンダヘッド11側端部から案内溝23を通って外方へ延び、さらに同視認用突起31にはインテークマニホールド12の外面に沿って折り返し状に突出された位置決め部33が延長形成されている。すなわち、この第1ガスケット本体26、視認用突起31及びその位置決め部33がインテークマニホールド12の案内溝23を形成する端部低壁34を包み込むように構成されている。
【0020】
図3に示すように、インテークマニホールド12の端部低壁34の部分を含む外面には、第1ガスケット本体26の位置決め部33の両側に沿って延びる一対のガイドリブ35が突設されている。このガイドリブ35は、第1ガスケット本体26の位置決め部33の両側に近接配置されて位置決め部33の倒れを防止している。該位置決め部33の高さT1はこれらガイドリブ35の高さT2よりも高く設定され、外部から位置決め部33の視認が容易になっている。また、ガイドリブ35の長さL1は位置決め部33の長さより長く形成され、シリンダヘッド11へのインテークマニホールド12の組付け時に位置決め部33の倒れが規制されている。シリンダヘッド11はアルミニウム、アルミニウム合金等の金属により形成されている。
【0021】
上記のように構成されたガスケット25によるシール構造の作用について説明する。
さて、インテークマニホールド12をシリンダヘッド11に組付ける場合には、図1に示すように、先ず各ガスケット本体26,27,28をインテークマニホールド12の各嵌着溝18,19,20にそれぞれ嵌着するとともに、各連結部29,30を各連結溝21,22にそれぞれ嵌着する。このとき、第1ガスケット本体26の視認用突起31は案内溝23から外部に臨むとともに、その位置決め部33がインテークマニホールド12の端部低壁34外面に沿って配置される。つまり、第1ガスケット本体26、視認用突起31及びその位置決め部33がインテークマニホールド12の端部低壁34に位置するように断面コの字状に配置される。
【0022】
従って、視認用突起31を従来に比べて位置決め部33で十分に支えることができるため、視認用突起31を第1ガスケット本体26のシリンダヘッド11側端部に設けることが可能になる。加えて、インテークマニホールド12には第1ガスケット本体26の位置決め部33の両側に沿うように一対のガイドリブ35が設けられている。このため、それらのガイドリブ35により第1ガスケット本体26の位置決め部33をその両側で保持するように位置決めすることができる。
【0023】
その状態で、図1及び図2の二点鎖線に示すように、インテークマニホールド12の合せ面12aをシリンダヘッド11の合せ面11aに重ね合せて締付けることによってインテークマニホールド12がシリンダヘッド11に組付けられる。このとき、インテークマニホールド12の各ポート13,14,15がシリンダヘッド11の各吸入ポートに接続される。この組付け時には、インテークマニホールド12とシリンダヘッド11との間にガスケット25が介在され、そのガスケット25の膨出部32が圧縮されてシリンダヘッド11とインテークマニホールド12との間のシール性能(気密性能)が発現される。さらに、第1ガスケット本体26の視認用突起31には位置決め部33が設けられ、かつその位置決め部33がガイドリブ35で保持され、視認用突起31の倒れ込みが抑えられることから、膨出部32によるシール性能の発現が有効に働く。
【0024】
以上のように構成された実施形態により得られる効果を以下にまとめて説明する。
(1)本実施形態のガスケット25によるシール構造では、視認用突起31は案内溝23から突出してインテークマニホールド12の端部低壁34側に折り返された位置決め部33を有している。このため、視認用突起31を位置決め部33で安定に支持することができ、視認用突起31をシリンダヘッド11側端部に設けることができる。その上、位置決め部33の両側には一対のガイドリブ35が設けられている。従って、第1ガスケット本体26の位置決め部33を位置決めすることができるとともに、視認用突起31がその位置決め部33で保持されることから、シリンダヘッド11とインテークマニホールド12との間への視認用突起31の噛み込みを防止することができる。
【0025】
よって、本実施形態のガスケット25によるシール構造によれば、ガスケット25の倒れを抑制し、ガスケット25によるシール性能を向上させることができるという効果を発揮することができる。
(2)前記視認用突起31は第1ガスケット本体26の外端側から放射方向外方へ延びるように形成されている。この視認用突起31は第1ガスケット本体26の外端側から外方へ安定した状態で突出されるため、膨出部32の長さを短くすることが可能になる。さらに、位置決め部33を第1ガスケット本体26の外端側からインテークマニホールド12の外面に沿わせることができるため、インテークマニホールド12の外面に対してより長く沿わせることが可能となり、膨出部32の倒れ込みを一層抑制することができる。
(3)前記第1ガスケット本体26の視認用突起31は、ガイドリブ35よりも高く設定されている。そのため、視認用突起31を外方から良好に視認することができる。
(4)前記ガイドリブ35は第1ガスケット本体26の視認用突起31よりも長く形成されている。従って、ガイドリブ35により視認用突起31を安定した状態で位置決め保持することができる。
(5)前記第1部品はシリンダヘッド11、第2部品はインテークマニホールド12であり、各ガスケット本体26,27,28はインテークマニホールド12に設けられた各嵌着溝18,19,20に嵌着されている。このため、前記ガスケット25により、シリンダヘッド11の合せ面11aとインテークマニホールド12の合せ面12aとの間における良好なシール性能を発現することができる。
【0026】
なお、前記実施形態を次のように変更して実施することも可能である。
・ 本発明を、第1部品としてのシリンダヘッド11と第2部品としてのシリンダヘッドカバーとの間のガスケットによるシール構造に具体化することもできる。また、第1部品としてのシリンダヘッドカバーと第2部品としての燃料ポンプとの間のガスケットによるシール構造に具体化することも可能である。
【0027】
・ 前記ガスケット25の視認用突起31を、第2ガスケット本体27又は第3ガスケット本体28の一部に設けることもできる。
・ 前記位置決め部33を含む視認用突起31の少なくとも一部を実施形態よりもさらに外方へ突出させる形状とし、その他の部分をガイドリブ35と同じ高さに形成することもできる。
【0028】
・ ガスケット本体が嵌着される嵌着溝は、第1部品の合せ面又は第2部品の合せ面のいずれに設けられていてもよい。
・ 本発明を、4気筒、6気筒等の自動車用エンジンのシリンダヘッド11とインテークマニホールド12との間のガスケット25によるシール構造に具体化することもできる。
【符号の説明】
【0029】
11…第1部品としてのシリンダヘッド、11a…合せ面、12…第2部品としてのインテークマニホールド、12a…合せ面、18…第1嵌着溝、23…案内溝、25…ガスケット、26…第1ガスケット本体、31…視認用突起、33…位置決め部、35…ガイドリブ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部品と第2部品の合せ面のいずれか一方に設けた嵌着溝にガスケット本体が嵌着されて第1部品と第2部品との合せ面をシールするとともに、ガスケット本体に一体形成されガスケットの装着を確認するための視認用突起が前記嵌着溝に連通する案内溝から突出されたガスケットによるシール構造であって、
前記ガスケットの視認用突起は案内溝が形成された第1又は第2部品側に突出する位置決め部を有するとともに、案内溝が形成された第1又は第2部品には前記ガスケットの位置決め部を位置決めすべくその両側に沿うようにガイドリブを設けたことを特徴とするガスケットによるシール構造。
【請求項2】
前記視認用突起はガスケット本体の外端側から放射方向外方へ延びるように形成されていることを特徴とする請求項1に記載のガスケットによるシール構造。
【請求項3】
前記ガスケットの視認用突起はガイドリブよりも高く設定されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガスケットによるシール構造。
【請求項4】
前記ガイドリブはガスケットの視認用突起よりも長く形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のガスケットによるシール構造。
【請求項5】
前記第1部品はシリンダヘッドであり、第2部品はインテークマニホールドであり、ガスケット本体はインテークマニホールドに設けられた嵌着溝に嵌着されていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のガスケットによるシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−219830(P2012−219830A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−82943(P2011−82943)
【出願日】平成23年4月4日(2011.4.4)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】