説明

ガスケットのシール構造

【課題】シール性能に優れるガスケットのシール構造を提供すること。
【解決手段】容器本体2と該容器本体2に取り付けられる蓋3との間をシールするガスケット4のシール構造であって、ガスケット4は、容器3に設けられた下部シールリング6のシール面6aと、蓋3に設けられた上部シールリング7のシール面7aとの間に面接触状態にて介装され、下部シールリング6及び上部シールリング7の少なくとも一方のシール面は、少なくとも二つのシール面11,12からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓋付き容器における容器と蓋との間に介装されるガスケットのシール構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器と蓋とからなる蓋付き容器中において有機物を加熱分解する装置においては、有機物から発生するガスの漏れを防止するために、容器と蓋との間にガスケットが介装される(例えば、特許文献1)。
【0003】
蓋付き容器におけるシール性の確保は、容器と蓋との間にガスケットを介装した状態にて、ボルト等を用いて蓋を容器に対して締め付けることによって行うのが一般的である。
【特許文献1】特開平5−148487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の装置において用いられるガスケットは、高温状態において使用可能な耐熱ガスケットであるため、柔軟性を有さない。したがって、加熱分解作業毎に容器に対する蓋の取り外し及び取り付けが行われる場合には、締め付けの繰り返しによってガスケットのシール面に塑性変形が生じる場合がある。ガスケットのシール面に塑性変形が生じた場合には、シール性能が著しく低下する。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、シール性能に優れるガスケットのシール構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器と当該容器に取り付けられる蓋との間をシールするガスケットのシール構造であって、前記ガスケットは、前記容器に設けられた第一シール部材のシール面と、前記蓋に設けられた第二シール部材のシール面との間に面接触状態にて介装され、前記第一シール部材及び前記第二シール部材の少なくとも一方のシール面は、少なくとも二つのシール面からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガスケットと接触するシール面は、少なくとも二つのシール面からなるため、あるシール面とガスケットとの当たりによってガスケットに塑性変形が生じシール性能が低下した場合でも、他のシール面にてシール性を確保することができる。このように、本発明に係るガスケットのシール構造は、シール性能に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
図1及び図2を参照して、本発明の実施の形態に係るガスケットのシール構造について説明する。図1はガスケットのシール構造が適用される蓋付き容器を示す断面図であり、図2は図1におけるシール構造部の拡大図である。
【0010】
図1に示す蓋付き容器1は、有機物を熱分解して燃料油や燃料ガス等の揮発分を生成する熱分解設備に用いられるものであり、蓋付き容器1内にて有機物の熱分解が行われる。
【0011】
蓋付き容器1は、容器本体2とこの容器本体2に取り付けられる蓋3とを備え、蓋付き容器1内にて熱分解された有機物から発生するガスの漏れを防止するために、容器本体2と蓋3との間には両者間をシールするガスケット4が介装される。
【0012】
容器本体2は、有底の筒状部材であり、胴部の開口端側の外面全周には、環状の第一シール部材としての下部シールリング6が溶接によって固定されている。下部シールリング6の外周には、締結部材としてのボルト8が螺合するボルト支持部9が、所定間隔をおいて複数取り付けられている。
【0013】
蓋3は、湾曲部材であり、開口端側の外面全周には、環状の第二シール部材としての上部シールリング7が溶接によって固定されている。上部シールリング7の外周には、ボルト支持部9と対応する位置に、ボルト8が螺合して挿通するボルト受部10が、所定間隔をおいて複数取り付けられている。
【0014】
ガスケット4は、平板状の環状体であり、高温状態において使用可能な耐熱ガスケットである。したがって、ガスケット4は柔軟性を有さない。
【0015】
ガスケット4は、下部シールリング6の環状のシール面6aと上部シールリング7の環状のシール面7aとの間に面接触状態にて介装される。そして、この状態にて、ボルト8を用いて蓋3を容器本体2に対して締め付けることによって、ガスケット4は、シール面6aとシール面7aとの間にて押圧され、容器本体2と蓋3との間がシールされる。
【0016】
下部シールリング6及び上部シールリング7は、鉄鋼材料にて構成され、ガスケット4と同様に柔軟性を有さない。
【0017】
図2を参照して、ガスケット4のシール構造について詳しく説明する。
【0018】
上部シールリング7には、下部シールリング6が嵌り合う環状の嵌合溝7bが形成される。
【0019】
下部シールリング6が、ガスケット4を介在した状態にて、嵌合溝7bと嵌り合うことによって、容器本体2と蓋3はシール性を確保した状態にて一体となる。このように、ガスケット4は、嵌合溝7b内において、上部シールリング7と下部シールリング6とによって押圧される。
【0020】
嵌合溝7bの底面部はシール面7aであり、ガスケット4は嵌合溝7bにぴったりと嵌合する。このように、上部シールリング7は、シール面7a全体にてガスケット4に面接触する。
【0021】
下部シールリング6のシール面6aは、環状溝6bが形成されることによって、環状の二つのシール面11と12から構成される。このように、下部シールリング6のシール面6aは二重に形成され、下部シールリング6は、二つのシール面11と12によってガスケット4に面接触する。
【0022】
シール面6aに環状溝6bを形成することによって、環状溝6bのラビリンス効果にて蓋付き容器1内のガスの漏れが防止される。
【0023】
また、蓋3の取り外し及び取り付けが頻繁に行われガスケット4の締め付けが繰り返し行われる場合には、二つのシール面11と12のうち一方のシール面とガスケット4の当たりによってガスケット4に塑性変形が生じシール性能が低下する場合がある。しかし、このような場合でも、他方のシール面とガスケット4によってシール性能が確保される。
【0024】
このように、シール面6aを二つのシール面11と12にて構成することによって、優れたシール性能を発揮する。また、新しいガスケット4への交換までの期間が長くなり、ガスケット4の寿命が長くなる。
【0025】
二つのシール面11と12は、図2、3に示すように、内側のシール面11を外側のシール面12よりも高く形成するのが望ましい。
【0026】
二つのシール面11と12の高さをこのように設定することによって、新しいガスケット4を用いた当初は、下部シールリング6は、内側のシール面11のみにてガスケット4に接触し、外側のシール面12とガスケット4との間には僅かな隙間が存在する。したがって、ガスケット4に塑性変形が生じていない段階では、内側のシール面11にてシール性を確保する。そして、シール面11とガスケット4の当たりによってガスケット4に潰れ(塑性変形)が生じてくると、外側のシール面12がガスケット4に接触しシール性を確保する。
【0027】
内側のシール面11と外側のシール面12との高さの差は、ガスケット4の潰れ代を考慮して設定され、例えば0.5mm程度に設定される。
【0028】
なお、上記構成とは逆に、内側のシール面11を外側のシール面12よりも低く形成した場合には、外側のシール面12がガスケット4に接触し、内側のシール面11とガスケット4との間には隙間が存在することになる。したがって、有機物を熱分解した際に発生するスラッジ等がその隙間に堆積してしまい、上記したようなシール性の確保は困難となる。
【0029】
二つのシール面11と12の内周縁及び外周縁は、図3に示すように、アール形状13に形成するのが望ましい。このようにシール面11,12にアール形状13を設けることによって、ガスケット4の傷付きが防止され、ガスケット4の寿命をさらに延ばすことができる。
【0030】
なお、上記実施の形態では、下部シールリング6のシール面6aを、環状の二つのシール面11と12から構成したが、シール面6aに複数の環状溝6bを形成することによって、シール面6aを三つ以上のシール面から構成するようにしてもよい。
【0031】
その場合には、最も内側のシール面を一番高く形成し、外側に向かってシール面の高さが順番に低くなるように形成すれば、有効にシール性を確保することができる。
【0032】
また、上記実施の形態では、下部シールリング6のシール面6aのみを二重に形成したが、上部シールリング7のシール面7aの嵌合溝7bにさらに環状溝を形成することによって、シール面7aのみを二重に形成してもよく、さらに、双方のシール面6a,7aを二重に形成するようにしてもよい。
【0033】
以上の実施の形態によれば、環状溝6bのラビリンス効果によって、蓋付き容器1内のガスの漏れが防止される。
【0034】
また、下部シールリング6は、二つのシール面11と12によってガスケット4に面接触するため、二つのシール面11と12のうち一方のシール面とガスケット4の当たりによってガスケット4に塑性変形が生じシール性能が低下した場合でも、他方のシール面とガスケット4にてシール性を確保することができる。これにより、新しいガスケット4への交換までの期間が長くなりガスケット4の寿命が長くなると共に、ガスケット4の寿命のばらつきが抑制される。
【0035】
また、内側のシール面11を外側のシール面12よりも高く形成することによって、当初は内側のシール面11にてシール性を確保し、使用によって内側のシール面11に塑性変形が生じてくると外側のシール面12がガスケット4に接触しシール性を確保するように作用する。このように、一つのガスケット4によって複数段階にわたってシール性能を発揮することができるため、ガスケット4の寿命がさらに長くなる。
【0036】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、内部にて有機物を加熱分解する蓋付き容器における容器と蓋との間のシール構造に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の実施の形態に係るガスケットのシール構造が適用される蓋付き容器を示す断面図である。
【図2】図1におけるシール構造部を示す拡大図である。
【図3】下部シールリングのシール面の拡大図である。
【符号の説明】
【0039】
1 蓋付き容器
2 容器
3 蓋
4 ガスケット
6 下部シールリング
6a シール面
6b 環状溝
7 上部シールリング
7b 嵌合溝
7a シール面
8 ボルト
9 ボルト支持部
10 ボルト受部
11 内側シール面
12 外側シール面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と当該容器に取り付けられる蓋との間をシールするガスケットのシール構造であって、
前記ガスケットは、前記容器に設けられた第一シール部材のシール面と、前記蓋に設けられた第二シール部材のシール面との間に面接触状態にて介装され、
前記第一シール部材及び前記第二シール部材の少なくとも一方のシール面は、少なくとも二つのシール面からなることを特徴とするガスケットのシール構造。
【請求項2】
前記少なくとも二つのシール面は、内側のシール面が外側のシール面よりも高く形成されことを特徴とする請求項1に記載のガスケットのシール構造。
【請求項3】
容器と当該容器に取り付けられる蓋との間をシールするガスケットのシール構造であって、
前記ガスケットは環状体であり、前記容器に設けられた第一シール部材の環状シール面と、前記蓋に設けられた第二シール部材の環状シール面との間に面接触状態にて介装され、
前記第一シール部材及び前記第二シール部材の少なくとも一方のシール面には、少なくとも一つの環状溝が形成されることを特徴とするガスケットのシール構造。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−327573(P2007−327573A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159667(P2006−159667)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(304039065)カヤバ システム マシナリー株式会社 (185)
【Fターム(参考)】