説明

ガスケットの製造方法及びガスケット

【課題】芯材の両面にシール層としての均質なゴム層を形成させると共に、補強材としての芯材の機能を低下させないガスケットの製造方法とこれによって得られる新規なガスケットを提供する。
【解決手段】金属板製環状芯材2と、該金属板製環状芯材2の両面にゴム層3が一体に固着されたガスケット1の製造方法であって、前記ゴム層3に対応する形状のキャビティ5a,6aを備えた上下型5,6からなる成型型4と、両面のゴム層3が連通し得る連通部2aを周縁部に備え所定の形状に板金加工された金属板製環状芯材2と、未加硫のゴム材30とを準備し、前記上下型5,6のそれぞれのキャビティ5a,6aに前記未加硫のゴム材30を供給すると共に、上下型5,6間に前記芯材2を配置させた上で、当該成型型4を型締めして前記ゴム材30を加硫成型し、その後脱型することを特徴とする製造方法である。また、この方法によって得たことを特徴とするガスケット1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車用オイルパン等に使用されるガスケットの製造方法とこの製造方法によって得られるガスケットに関し、更に具体的には、金属板製環状芯材の両面にゴム層が一体に固着されたガスケットの製造方法とこの製造方法によって得られるガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
前記のように金属板製環状芯材の両面にシール層としてのゴム層が一体に固着されたガスケットは、自動車用クランクケースガスケット、オイルパンガスケット、ギヤーケースガスケット、シリンダヘッドガスケット、或いは燃料電池用ガスケットとして広く用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。このようなガスケットは、所定の形状に板金加工された金属板製環状芯材の両面にゴムをコーティングするか、或いは、芯材の両面に接着剤によりゴムシート(未加硫のゴム材)を接着し、射出成型若しくは圧縮成型により所定の形状のゴム層を形成させることによって製せられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭52−11356号公報
【特許文献2】特開2001−57220号公報
【特許文献3】特開2007−57063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、芯材の両面にゴム層を一体成型することによってガスケットを製造する場合、芯金の両面に未加硫のゴム材(ゴム生地)を配置させなければならない。その為、下型のキャビティにゴム生地を供給し、芯材をその上に配置し、更に上型のキャビティにゴム生地を供給して成型がなされる。この時、上下型のゴム生地の供給量に差異があると、キャビティ内の圧力に差が生じ、その圧力差によって芯材が変形し、製品が歪んだ形状となることがある。ゴム生地の供給量のコントロールは難しく、また、供給位置の差によっても圧力差が発生し、均一なゴム生地供給がなし得ないことが多々ある。更に、上下型へのゴム生地の供給時間に差が生じる為、先に供給されたゴム生地の加硫の進行が速く、これによってゴム生地流れが悪くなり、ゴム層に欠け等の不良が発生し易くなる。このような事態を防ぐ為には、上下型のキャビティへのゴム生地の供給を同時に行うか、供給時間差をできるだけ小さくすることが必要となる。しかし、上下型のキャビティは、実質的に芯材で分断されるから、供給されるゴム生地が上下のキャビティ間で相互に流通せず、これが原因で、ゴム生地の同時供給や供給時間差を小さくすることの効果が充分に発揮されないことがある。
【0005】
特許文献1〜3には、芯材に孔を設け、成型時にゴム材がこの孔に貫入し得るようにして、ゴム層の遊離の防止や芯材との一体化を強化することが開示されている。しかし、特許文献1,2には、ゴム層の形成方法の具体的な記載がなく、従って、ゴム生地を上下型からなる成型型で成型して芯材の両面にゴム層を形成する場合における前記孔の奏する機能についての明示はない。また、特許文献3には、成型型内に小孔を有する基板を配置し、基板と型との間にできる上面側及び下面側の間隙(キャビティ)の双方又は一方にゴム材を充填する際、小孔を通じてゴム材が行き来し、これによって上下両面にゴム材が効率よく充填される旨の記載がある。しかし、この特許文献3における小孔は、基板の幅方向中央部に形成されており、その為、これが基板の強度を弱め、補強材としての機能を低下させる要因となることが予想される。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、芯材の両面にシール層としての均質なゴム層を形成させると共に、補強材としての芯材の機能を低下させないガスケットの製造方法とこれによって得られる新規なガスケットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決する為に、第一の発明として以下の三態様のガスケットの製造方法を、第二の発明として各態様の製造方法によって得られる三態様のガスケットを、それぞれ提案する。
第一の発明に係る第一の態様のガスケットの製造方法は、金属板製環状芯材と、該金属板製環状芯材の両面にゴム層が一体に固着されたガスケットの製造方法であって、前記ゴム層に対応する形状のキャビティを備えた上下型からなる成型型と、両面のゴム層が連通し得る連通部を周縁部に備え所定の形状に板金加工された金属板製環状芯材と、未加硫のゴム材とを準備し、前記上下型のそれぞれのキャビティに前記未加硫のゴム材を供給すると共に、上下型間に前記芯材を配置させた上で、当該成型型を型締めして前記ゴム材を加硫成型し、その後脱型することを特徴とする。
【0008】
また、第二の態様のガスケットの製造方法は、前記ゴム層に対応する形状のキャビティ及び両キャビティに共通するランナを備えた上下型からなる成型型と、両面のゴム層が連通し得る連通部を周縁部に備え所定の形状に板金加工された金属板製芯材と、未加硫のゴム材とを準備し、前記上下型間に前記芯材を配置させ、且つ当該成型型を型締めした上で、前記ランナを通じてそれぞれのキャビティに前記未加硫のゴム材を注入して前記ゴム材を加硫成型し、その後脱型することを特徴とする。
【0009】
更に、第三の態様のガスケットの製造方法は、前記ゴム層に対応する形状のキャビティ及び両キャビティに共通するランナを備えた上下型からなる成型型と、両面のゴム層が連通し得る連通部を周縁部に備え所定の形状に板金加工された金属板製芯材と、未加硫のゴム材とを準備し、前記下型上に前記芯材を配置させ、該下型の前記ランナを含む一側部に前記未加硫のゴム材を供給すると共に、前記上型を設置した上で、当該成型型を型締めして前記ランナを通じてそれぞれのキャビティに前記未加硫のゴム材を圧入させて前記ゴム材を加硫成型し、その後脱型することを特徴とする。
【0010】
これら第一乃至第三の態様のガスケットの製造方法において、前記脱型後、更に、得られた成型体の幅方向両側部を前記芯材の周縁部を含んで切断除去すると共に、該成型体の幅方向中央部に所定のシールラインに沿ってビード加工を施すようにしても良い。
【0011】
第二の発明に係るガスケットは、いずれも金属板製環状芯材と、該金属板製環状芯材の両面にゴム層が一体に固着されたガスケットであって、前記第一乃至第三の態様のいずれかの製造方法によって得られたガスケットであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第一の態様のガスケットの製造方法においては、所望のゴム層に対応する形状のキャビティを備えた上下型のそれぞれのキャビティに未加硫のゴム材を供給すると共に、上下型間に金属板製環状芯材を配置させた上で、当該成型型を型締めして前記ゴム材を加硫成型する。従って、前記キャビティの形状に倣った所望形状のゴム層が前記金属板製環状芯材の両面に一体に加硫成型される。この時、未加硫のゴム材は、上下型のそれぞれのキャビティに供給された状態で当該成型型を型締めがなされるから、上下型のキャビティ内におけるゴム材の圧力差を小さくすることができる。しかも、金属板製環状芯材の周縁部には連通部が形成されているから、型締め時にこの連通部を通じて上下のキャビティ内のゴム材が互いに流通して、前記圧力差の発生をより効果的に抑え、これによって、金属板製環状芯材の両面にシール層としての均質なゴム層が形成されると共に前記芯材の変形を生じさせず、歪んだ状態のガスケットが製せられる懸念もない。
【0013】
第二の態様のガスケットの製造方法においては、所望のゴム層に対応する形状のキャビティ及び両キャビティに共通するランナを備えた上下型間に金属板製環状芯材を配置させ、且つ当該成型型を型締めした上で、前記ランナを通じてそれぞれのキャビティに前記未加硫のゴム材を注入して、前記ゴム材を加硫成型する。従って、未加硫のゴム材は、ランナを通じて上下のキャビティ内に圧力差が生じ難い状態で注入される。しかも、金属板製環状芯材の周縁部には連通部が形成されているから、ゴム材の注入時にこの連通部を通じて上下のキャビティ内のゴム材が互いに流通して、前記圧力差の発生をより効果的に抑え、これによって、金属板製環状芯材の両面にシール層としての均質なゴム層が形成されると共に前記芯材の変形を生じさせず、歪んだ状態のガスケットが製せられる懸念もない。
【0014】
第三の態様のガスケットの製造方法においては、ゴム層に対応する形状のキャビティ及び両キャビティに共通するランナを備えた上下型からなる成型型における下型上に前記芯材を配置させると共に該下型の前記ランナを含む一側部に未加硫のゴム材を供給し、前記上型を設置して当該成型型を型締めして前記ランナを通じてそれぞれのキャビティに前記未加硫のゴム材を圧入させて前記ゴム材を加硫成型する。従って、型締め時に未加硫のゴム材は、ランナを通じて上下のキャビティ内に圧力差が生じ難い状態で流入される。しかも、金属板製環状芯材の周縁部には連通部が形成されているから、ゴム材の流入時にこの連通部を通じて上下のキャビティ内のゴム材が互いに流通して、前記圧力差の発生をより効果的に抑え、これによって、金属板製環状芯材の両面にシール層としての均質なゴム層が形成されると共に前記芯材の変形を生じさせず、歪んだ状態のガスケットが製せられる懸念もない。
【0015】
前記第一乃至第三態様のいずれかの製造方法において、前記脱型後、更に、得られた成型体の幅方向両側部を前記芯材の周縁部を含んで切断除去するようにすれば、芯材の補強機能を低下させる要因となる連通部も除去される。また、芯材が金属板製であるから、成型体の幅方向中央部に、所定のシールラインに沿ったビード加工を、形成されたゴム層と共に簡易に施すことができる。
【0016】
前記第一乃至第三態様のいずれかの製造方法によって得られたガスケットにおいては、金属板製環状芯材の両面にシール層としての均質なゴム層が形成されているから、これをシール対象の2部材間に圧縮状態で介在させれば、均質なゴム層の圧縮弾力によって当該2部材間が好適にシールされる。また、ゴム層は金属板製環状芯材の両面に固着一体とされているから、これによって補強され、シール機能の信頼性が維持される。しかも、両面のゴム層が連通し得る連通部が芯材の周縁部に形成されているから、この連通部が芯材の補強機能を低下させる要因となる懸念もない。更に、この連通部が形成される芯材の周縁部を含んで切断除去されたものにおいては、一層芯材の補強機能の低下の懸念が払拭されると共に製品としての見栄えも向上する。そして、幅方向中央部に、所定のシールラインに沿ったビード加工が施されている場合は、形成されたビード部とゴム層の弾性とが相乗してより優れたシール性が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係るガスケットの製造方法によって得たガスケットの一例を示す部分破断平面図である。
【図2】同ガスケットの変形例を示す平面図である。
【図3】図1におけるX−X線矢視拡大断面図である。
【図4】同2におけるY−Y線矢視拡大断面図である。
【図5】(a)(b)(c)(d)は、本発明に係る第一態様のガスケットの製造方法の一例を示す模式的断面図である。
【図6】本発明に係るガスケットの製造方法に用いられる金属板製環状芯材の一例を、成型用下型との配置関係と共に示す部分破断斜視図である。
【図7】同金属板製環状芯材の他例を、成型用下型との配置関係と共に示す部分破断斜視図である。
【図8】(a)(b)(c)は、同第一態様のガスケットの製造方法の別例を示す図5と同様図である。
【図9】(a)(b)(c)(d)は、同第一態様のガスケットの製造方法の他の別例を示す同様図である。
【図10】(a)(b)(c)(d)は、同第一態様のガスケットの製造方法の更に他の別例を示す同様図である。
【図11】(a)(b)(c)は、本発明に係るガスケットの製造方法の第二態様の一例を示す模式的断面図である。
【図12】(a)(b)(c)は、本発明に係るガスケットの製造方法の第三態様の一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。図1及び図2は、後記する各態様の製造方法によって得られたガスケットの例を示し、図例は、いずれも自動車用オイルパン等に用いられるガスケット1,1Aを示している。図1に示すガスケット1は、図3にも示すように、金属板製環状芯材2と、該金属板製環状芯材2の両面にゴム層3が一体に固着されたものである。金属板製環状芯材2は、ステンレス等の鋼板を所定のオイルパン(不図示)の開口周縁部に沿った形状に板金加工して形成されたもので、内周縁部及び外周縁部には、その長手方向(周方向)に沿って多数の円孔からなる連通部2aが形成され(図5も参照)、両面のゴム層3がこの連通部2aを通して互いに連通している。連通部2aの形状としては、図例のような円孔に限らず、図7に示すように周端縁部から幅方向中央部に向かって切り欠かれた切欠状のものであっても良い。また、該芯材2の幅方向の略中央部には、当該オイルパンをエンジンブロック(不図示)に締結する為のボルト挿通孔2bが周方向に沿って適宜間隔毎に開設されている。
【0019】
図2及び図4に示すガスケット1Aは、図1及び図3に示す成型体としてのガスケット1における幅方向両側部1a,1aを前記芯材2の周縁部を含んで切断除去すると共に、該成型体の幅方向中央部に所定のシールラインに沿ってビード加工を施したものである。図例では、前記切断除去の際に、前記連通部2aの全てを除去した例を示しているが、各連通部2aの一部を残して切断除去するようにしても良い。また、前記ビード加工によって、幅方向中央部に山形のビード部1bが形成され、該ビード部1bの稜線部がオイルパンの所定のシールラインLに沿うよう形成されている。図例では、前記ボルト挿通孔2bが前記芯材2の幅方向の略中央部に形成されているから、当該シールラインLは、この挿通孔2bの形成部位を迂回するように形成されている。
【0020】
前記構成のガスケット1,1Aは、エンジンブロックとオイルパンとの締結合体部に挟圧状態で介在され、ゴム層3の圧縮反力によって両合体面間がシールされる。そして、ゴム層3は金属板製環状芯材2によって補強され、その形状保持がなされる。図1及び図3に示すガスケット1のように、芯材2の両面のゴム層3が連通部2aを通して連通している場合は、芯材2とゴム層3との間に通常は接着剤を介在させることが望ましいが、接着剤を介さなくともゴム層3の強固な固着一体化が図られる。また、図2及び図4に示すガスケット1Aのようにビード部1bを備えている場合、前記挟圧によりビード部1bも圧縮変形し、この圧縮変形による反力とも相俟って各合体面との面圧が確保され、より優れたシール性が発揮される。この例の場合、連通部2aも含んで前記幅方向両側部1a,1aが切断除去されているから、芯材2の補強機能を低下させる一要因となる連通部2aの影響をなくすことができる。
【0021】
ゴム層3を構成するゴム材としては、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリルゴム(ACM)、水素化アクリロニトリルブタジエンゴム(HNBR)、シリコーンゴム(VMQ)、フロロシリコーンゴム(FVMQ)、フッ素ゴム(FKM)等が採用される。
【0022】
次に、前記のようなガスケット1(1A)の製造方法について図面を参照して説明する。図5(a)(b)(c)(d)は、第一態様のガスケットの製造方法の一例を示す。この第一態様の製造方法によるガスケットの製造に先立ち、前記ゴム層3に対応する形状の環状キャビティ5a,6aを備えた上下型5,6からなる成型型4と、両面のゴム層が連通し得る連通部2aを周縁部に備え所定の形状に板金加工された金属板製環状芯材2と、未加硫のゴム材(ゴム生地)30とを準備する。金属板製環状芯材2の両面には、予め接着剤の塗布層或いは焼付層を形成しておく。未加硫のゴム材(以下、未加硫ゴム材と略称する)30は、押出機7に装填され、この押出機7より所定の部位に押出されるよう構成される。
【0023】
図5(a)に示すように、下型6が不図示のx−yテーブル上に設置され、その上方に前記押出機7が配設されている。下型6をキャビティ6aが前記押出機7の直下に位置するようx−yテーブルによって移動させながら、押出機7より未加硫ゴム材30をキャビティ6aに押出してその全周に亘るよう供給する。次に、図5(b)において、前記金属板製環状芯材2を、キャビティ6a内に供給された未加硫ゴム材30上に配置させる。この時、図6及び図7に示すように芯材2の両側部がキャビティ6aの開口縁部に跨るように且つ連通部2aがキャビティ6a内に位置するよう位置決めされる。前記のように芯材2がボルト挿通孔2bを備える場合は、キャビティ6aの底部にこれに対応させて突部(不図示)設け、この突部を芯材2の位置決めに用いることができる。
【0024】
図5(c)において、下型6をx−yテーブルによって移動させながら、前記のように配置された芯材2の上に押出機7より未加硫ゴム材30を押出してその全周に亘るよう供給する。その後、図5(d)において、上型5を下型6上の所定位置に設置し、上型5と下型6とを型締めして未加硫ゴム材30を両キャビティ5a,6a内に行き渡らせながら加硫する。この時、両キャビティ5a,6aに供給された未加硫ゴム材30の量に多少の差があっても、型締めの際に未加硫ゴム材30が連通部2aを通じて相互に流通するから、キャビティ5a,6a内での内圧が均一化され、芯材2の変形の発生が防止される。また、同一の未加硫ゴム材30が芯材2の両面に供給されるから、加硫時間に差が生じず、芯材2の両面に亘って均質なゴム層3が加硫形成される。更に、芯材2の両面に形成されるゴム層3は、連通部2aを介して相互に繋がっており、接着剤を用いずともゴム層3が芯材2に対して強固に一体化される。その後、上下型5,6を脱型すると、図1及び図3に示すようなガスケット1が得られ、得られたガスケット1は、製品品質の安定したものとされる。
【0025】
図1及び図3に示すガスケット1は、それ自体がオイルパン用ガスケットとして充分に機能を奏するものであるが、図2及び図4に示すように、ガスケット1を半製品(成型体)とし、幅方向両側部1a,1aを前記芯材2の周縁部を含んで切断除去すると共に、該成型体の幅方向中央部に所定のシールラインLに沿ってビード加工を施し、山形のビード部1bを形成したものとしても良い。この場合は、前述の通りシール性が更に向上し、芯材2の補強機能がより効果的に発現されると共に、製品としての見栄えも向上する。
尚、図1及び図3に示すガスケット1の場合は、芯材2の両面に形成されるゴム層3は、連通部2aを介して相互に繋がって芯材2に対して強固に一体化されるので、製造に先立ち、製品仕様によっては芯材2の両面に接着剤の層を形成させておかなくても良い。しかし、図2及び図4に示すガスケット1Aのように、幅方向両側部1a,1aを前記芯材2の周縁部を含んで切断除去する場合は、芯材2の両面に接着剤の層を形成させておくことが必要である。
【0026】
図8(a)(b)(c)は、第一態様のガスケットの製造方法の別例を示している。図8(a)において、前記と同様に事前に準備された金属板製環状芯材2を不図示のx−yテーブルの把持部に把持させ、金属板製環状芯材2の両側に未加硫ゴム材30が装填された2機の押出機7を互いに対向方向に向くよう配置させる。そして、当該芯材2をx−yテーブルによって移動させながら、押出機7から未加硫のゴム材30を芯材2の両面に付着させるように押出してその全周に亘るよう供給する。次いで、図8(b)に示すように、下型6のキャビティ6a内に芯材2の下面に供給された未加硫ゴム材30が嵌まり込むようにして芯材2を前記と同様に位置付ける。更に、図8(c)に示すように、上型5を下型6上に設置し、上下型5,6を型締めして未加硫ゴム材30を両キャビティ5a,6a内に行き渡らせながら加硫する。
【0027】
この場合も、両キャビティ5a,6aに供給された未加硫ゴム材30の量に多少の差があっても、型締めの際に未加硫ゴム材30が連通部2aを通じて相互に流通するから、キャビティ5a,6a内での内圧が均一化され、芯材2の変形の発生が防止される。また、同一の未加硫ゴム材30が芯材2の両面に供給されるから、加硫時間に差が生じず、芯材2の両面に亘って均質なゴム層3が加硫形成される。更に、芯材2の両面に形成されるゴム層3は、連通部2aを介して相互に繋がっており、接着剤を用いずともゴム層3が芯材2に対して強固に一体化される。その後、上下型5,6を脱型すると、図1及び図3に示すようなガスケット1が得られ、得られたガスケット1は、製品品質の安定したものとされる。
【0028】
図9(a)(b)(c)(d)は、第一態様のガスケットの製造方法の他の別例を示している。図9(a)において、不図示の押出機で紐状に押出された未加硫ゴム材30を人手(不図示)によって下型6のキャビティ6a内にその全周に亘って供給する。次いで、図9(b)において、前記と同様に事前に準備された芯材2をキャビティ6a内に供給されたゴム材30上に押付けるように配置させる。この時も、芯材2の下型6に対する相対位置が、図6或いは図7に示すような関係となるよう設定されることは前記と同様である。図9(c)において、紐状の未加硫ゴム材30を前記と同様に人手によって芯材2上の幅方向中央部にその全周に亘って供給する。そして、図9(d)に示すように、上型5を下型6上に設置し、上下型5,6を型締めして未加硫ゴム材30を両キャビティ5a,6a内に行き渡らせながら加硫する。
【0029】
この場合も、連通部2aが同様に機能し、キャビティ5a,6a内での内圧が均一化され、芯材2の変形の発生が防止されると共に、芯材2の両面に亘って均質なゴム層3が加硫形成され、更に、ゴム層3が芯材2に対して強固に一体化される。そして、上下型5,6を脱型することにより図1及び図3に示すようなガスケット1が得られる、得られたガスケット1は、前記と同様に製品品質の安定したものとされる。
【0030】
図10(a)(b)(c)(d)は、第一態様のガスケットの製造方法の更に他の別例を示している。図10(a)において、不図示の押出機で帯状に押出された未加硫ゴム材30を人手(不図示)によって下型6のキャビティ6a内にその全周に亘って供給する。次いで、図10(b)において、前記と同様に事前に準備された芯材2をキャビティ6a内に供給されたゴム材30上に載せるように配置させる。この時も、芯材2の下型6に対する相対位置が、図6或いは図7に示すような関係となるよう設定されることは前記と同様である。図10(c)において、帯状の未加硫ゴム材30を前記と同様に人手によって芯材2上にその全周に亘って供給する。そして、図10(d)に示すように、上型5を下型6上に設置し、上下型5,6を型締めしてゴム材30を両キャビティ5a,6a内に行き渡らせながら加硫する。
【0031】
この場合も、連通部2aが同様に機能し、キャビティ5a,6a内での内圧が均一化され、芯材2の変形の発生が防止されると共に、芯材2の両面に亘って均質なゴム層3が加硫形成され、更に、ゴム層3が芯材2に対して強固に一体化される。そして、上下型5,6を脱型することにより図1及び図3に示すようなガスケット1が得られる、得られたガスケット1は、前記と同様に製品品質の安定したものとされる。
【0032】
図11(a)(b)(c)は、第二態様のガスケットの製造方法の一例を示している。この第二態様の製造方法によるガスケットの製造に先立ち、前記ゴム層3に対応する形状のキャビティ50a,60a及び両キャビティ50a,60aに共通するランナ41を備えた上下型50,60からなる成型型40と、両面のゴム層が連通し得る連通部2aを周縁部に備え所定の形状に板金加工された金属板製環状芯材2と、未加硫のゴム材30とを準備する。前記ランナ41は、上型50に環状キャビティ50aの内周側の側部近傍部に周方向に沿って形成された周溝50bと、キャビティ50aの開口縁部に周方向に沿って隔設され前記周溝50bとキャビティ50aとを繋ぐ複数の連通溝50cと、下型60のキャビティ60aの開口縁部に周方向に沿って隔設され、上下型50,60を合体させた時に前記周溝50bとキャビティ60aとを繋ぐ複数の連通溝60bとより構成される。上型50の連通溝50cと下型60の連通溝60bとは同位置(対向位置)に同幅で形成されており、これにより、後記するように芯材2を介在させて上下型50,60を型締めする際、芯材2の周縁部が波打ち状に変形する懸念がない。上型50には、コールドランナー型射出機8が設置されるゲート50dが設けられ、該ゲート50dは前記周溝50bに通じている。射出機8には未加硫のゴム材30が装填され、ゲート50d、周溝50b及び連通溝50c、60bを通じてキャビティ50a,60a内に未加硫ゴム材30が供給されるよう構成されている。
【0033】
図11(a)において、下型60の所定位置に前記芯材2を配置させ、次いで、図11(b)に示すように、下型60上に前記上型50を設置し、上下型50,60を型締めする。その後、図11(c)において、前記射出機8より未加硫ゴム材30を射出し、ゲート50d、周溝50b及び連通溝50c、60bを通じてキャビティ50a,60a内に未加硫ゴム材30を行き渡らせながら注入して加硫する。この時、両キャビティ50a,60aには、周溝50bを経て連通溝50c、60bより同時に未加硫ゴム材30が供給されるから、キャビティ50a,60a内での内圧に差が生じ難くい。しかも、両キャビティ50a,60aにおいて供給量に多少の差があっても、未加硫ゴム材30が芯材2の連通部2aを通じて相互に流通するから、キャビティ50a,60a内での内圧が均一化され、芯材2の変形の発生が防止される。また、同一の未加硫ゴム材30が芯材2の両面に供給されるから、前記と同様に加硫時間に差が生じず、芯材2の両面に亘って均質なゴム層3が形成される。更に、芯材2の両面に形成されるゴム層3は、連通部2aを介して相互に繋がっており、接着剤を用いずともゴム層3が芯材2に対して強固に一体化される。その後、上下型50,60を脱型すると、図1及び図3に示すようなガスケット1が得られ、得られたガスケット1は、製品品質の安定したものとされる。
【0034】
図12(a)(b)(c)は、第三態様のガスケットの製造方法の一例を示している。この第三態様の製造方法によるガスケットの製造に先立ち、前記ゴム層3に対応する形状のキャビティ500a,600a及び両キャビティ500a,600aに共通するランナ401を備えた上下型500,600からなる成型型400と、両面のゴム層が連通し得る連通部2aを周縁部に備え所定の形状に板金加工された金属板製環状芯材2と、未加硫のゴム材30とを準備する。下型600は、キャビティ600aの内周側と等間隔の壁部600bを構成する隆起突部600cを有し、該壁部600bに沿って周溝600dが形成されている。また、キャビティ600aの開口縁部に周方向に沿って隔設され前記周溝600dとキャビティ600aとを繋ぐ複数の連通溝600eが形成されている。この複数の連通溝600eと前記周溝600dとによりランナ401が構成される。そして、上型500の当該ランナ401に対応する部位500bはフラットな形状とされている。
【0035】
図12(a)において、下型600の所定位置に前記芯材2を配置させ、次いで、図12(b)に示すように、下型600の前記周溝600dの上に、図9に示したと同様の紐状の未加硫ゴム材30をその全周に亘るよう人手で供給する。更に、図12(c)において、下型600上に前記上型500を設置し、上下型500,600を型締めする。この型締めと共に、未加硫ゴム材30が、上型500の前記フラットな部位500bと前記下型600の壁部600bとによって規制され、連通溝600eを通じて下型600のキャビティ600a及び上型500のキャビティ500a内に行き渡るよう強制的に圧入される。これと並行して未加硫ゴム材30の加硫がなされる。この時、両キャビティ500a,600aには、周溝600dを経て同時に未加硫ゴム材30が供給されるから、キャビティ500a,600a内での内圧に差が生じ難くい。しかも、両キャビティ500a,600aにおいて供給量に多少の差があっても、未加硫ゴム材30が芯材2の連通部2aを通じて相互に流通するから、キャビティ500a,600a内での内圧が均一化され、芯材2の変形の発生が防止される。また、同一の未加硫ゴム材30が芯材2の両面に供給されるから、前記と同様に加硫時間に差が生じず、芯材2の両面に亘って均質なゴム層3が形成される。更に、芯材2の両面に形成されるゴム層3は、連通部2aを介して相互に繋がっており、接着剤を用いずともゴム層3が芯材2に対して強固に一体化される。その後、上下型500,600を脱型すると、図1及び図3に示すようなガスケット1が得られ、得られたガスケット1は、製品品質の安定したものとされる。
【0036】
尚、図8〜図12の製造方法によって得たガスケット1を半製品(成型体)として、幅方向両側部1a,1a(図3、図4参照)を前記芯材2の周縁部を含んで切断除去すると共に、該成型体の幅方向中央部に所定のシールラインLに沿ってビード加工を施し、山形のビード部1bを形成して、図2及び図4に示すガスケット1Aを得るようにしても良い。また、図8〜図12の製造方法においても、図7に示すような形状の芯材2を用いることは、もとより可能である。更に、本発明のガスケットとして、自動車用のオイルパンガスケットを例示したが、これに限らず、挟圧状態で介在されてシール対象空所をシールすることが求められる他のシール対象2部材にも適用され得ることは言うまでもない。加えて、本発明のガスケットの製造方法において、未加硫ゴム材30の供給方法は、例示の方法に限らず、芯材2の両面に直接供給するよう構成される方法であれば、他の方法も採用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1,1A ガスケット
1a 側部
1b ビード部
2 金属板製環状芯材
2a 連通部
3 ゴム層
30 未加硫のゴム材
4,40,400 成型型
41,401 ランナ
5,50,500 上型
6,60,600 下型
5a,50a,500a キャビティ
6a,60a,600a キャビティ
L シールライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板製環状芯材と、該金属板製環状芯材の両面にゴム層が一体に固着されたガスケットの製造方法であって、
前記ゴム層に対応する形状のキャビティを備えた上下型からなる成型型と、両面のゴム層が連通し得る連通部を周縁部に備え所定の形状に板金加工された金属板製環状芯材と、未加硫のゴム材とを準備し、
前記上下型のそれぞれのキャビティに前記未加硫のゴム材を供給すると共に、上下型間に前記芯材を配置させた上で、当該成型型を型締めして前記ゴム材を加硫成型し、その後脱型することを特徴とするガスケットの製造方法。
【請求項2】
金属板製環状芯材と、該金属板製環状芯材の両面にゴム層が一体に固着されたガスケットの製造方法であって、
前記ゴム層に対応する形状のキャビティ及び両キャビティに共通するランナを備えた上下型からなる成型型と、両面のゴム層が連通し得る連通部を周縁部に備え所定の形状に板金加工された金属板製芯材と、未加硫のゴム材とを準備し、
前記上下型間に前記芯材を配置させ、且つ当該成型型を型締めした上で、前記ランナを通じてそれぞれのキャビティに前記未加硫のゴム材を注入して前記ゴム材を加硫成型し、その後脱型することを特徴とするガスケットの製造方法。
【請求項3】
金属板製環状芯材と、該金属板製環状芯材の両面にゴム層が一体に固着されたガスケットの製造方法であって、
前記ゴム層に対応する形状のキャビティ及び両キャビティに共通するランナを備えた上下型からなる成型型と、両面のゴム層が連通し得る連通部を周縁部に備え所定の形状に板金加工された金属板製芯材と、未加硫のゴム材とを準備し、
前記下型上に前記芯材を配置させ、該下型の前記ランナを含む一側部に前記未加硫のゴム材を供給すると共に、前記上型を設置した上で、当該成型型を型締めして前記ランナを通じてそれぞれのキャビティに前記未加硫のゴム材を圧入させて前記ゴム材を加硫成型し、その後脱型することを特徴とするガスケットの製造方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のガスケットの製造方法において、
前記脱型後、更に、得られた成型体の幅方向両側部を前記芯材の周縁部を含んで切断除去すると共に、該成型体の幅方向中央部に所定のシールラインに沿ってビード加工を施すことを特徴とするガスケットの製造方法。
【請求項5】
金属板製環状芯材と、該金属板製環状芯材の両面にゴム層が一体に固着されたガスケットであって、
請求項1又は4に記載の製造方法によって得られたことを特徴とするガスケット。
【請求項6】
金属板製環状芯材と、該金属板製環状芯材の両面にゴム層が一体に固着されたガスケットであって、
請求項2又は4に記載の製造方法によって得られたことを特徴とするガスケット。
【請求項7】
金属板製環状芯材と、該金属板製環状芯材の両面にゴム層が一体に固着されたガスケットであって、
請求項3又は4に記載の製造方法によって得られたことを特徴とするガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−144852(P2011−144852A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4846(P2010−4846)
【出願日】平成22年1月13日(2010.1.13)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】