説明

ガスケット及びシール構造

【課題】切欠凹部に嵌め込まれて当該切欠凹部の切欠面をシールするガスケットであって、切欠凹部の角部において補助シール剤を用いることなくシール性の確保が確実になされるガスケットを提供する。
【解決手段】少なくとも一面に開口部10を有する箱状部材(1)の一壁部11Aに該開口部に通じるように形成された切欠凹部12に嵌め込まれ、前記切欠凹部をシールするガスケット4であって、前記切欠凹部の開口部側角部12bには、面取加工が施されており、前記ガスケットは、前記切欠凹部に弾接するシール面部60を有するゴム外装部6と、前記ゴム外装部よりも高い剛性に構成されるとともに前記ゴム外装部によって被覆された芯体5とを備えており、前記シール面部における前記開口部側角部に対応した部位に、前記開口部側角部に沿うように且つ前記開口部側角部に向かって突出して形成された突出部63,63を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カムシャフト取付の為に形成されるシリンダヘッドの切欠凹部、或いは、電力コントロールユニットを収容するケースの一壁部に形成された切欠凹部等に嵌め込まれて、切欠凹部をシールするガスケット及びシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関のシリンダヘッドに形成される上述のような切欠凹部には、この切欠凹部を封止する専用のガスケットが用いられる(例えば、特許文献1〜4参照)。
また、近時自動車用の内燃機関と電動機とを併用するハイブリッド自動車の需要が増え、このようなハイブリッド自動車には電動機の動作を制御する為にインバータ、コンバータ、或いは変圧器等の電力コントロールユニットが用いられる。そして前述の電力コントロールユニットは、ケース内に収容されており、ケースには、発熱を抑える為の冷媒供給用配管や電線を保持するとともにケース壁部に形成された切欠凹部に嵌め込まれてこの切欠凹部を封止するプラグ部材(以下、これも含めてガスケットと称す)が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭51−21975号公報
【特許文献2】実公平2−25967号公報
【特許文献3】特開昭61−167148号公報
【特許文献4】特開2009−264566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたパッキン(ガスケット)は、ゴム等の弾性に富む材料のみからなり、切欠凹部の角部付近の面上に窪みを設けて、切欠凹部に嵌め込む際の高応力回避を行うよう構成されている。このように角部付近の面上に窪みを設けることにより、嵌め込み時にこの部分が硬くなることを防ぎ、これによって、隙間の発生を抑えることができ、シール剤等が不要とされる、とされている。しかし、弾性に富む材料のみからなるから、内圧がかかる場合や、高圧洗浄水に晒される場合等には、パッキンが弾性変形して切欠凹部に対する封止機能が低下することが予想される。
【0005】
また、特許文献2には、シリンダヘッドの前記切欠凹部が円弧形であり、この円弧形の切欠凹部にシール部材(ガスケット)を嵌め込む際、位置ずれを生じさせることなく嵌め込み得るよう、切欠凹部に曲率中心の異なる段部を形成すると共に、シール部材をこの切欠凹部の形状に沿うよう形成することが示されている。しかし、切欠凹部の角部、所謂三面合せ部(シリンダヘッド、シリンダヘッドカバー及びシール部材等の三つの部材が突き合わされる部分を意味する。以下同様)におけるシール性を特に考慮するものではないから、この部分には液状ガスケット等の補助シール剤の使用が必要とされる。したがって、組立工数がかかり、補修の為に解体する際にはシール剤を除去する作業も余儀なくされることが予想される。
【0006】
更に、特許文献3には、プラグ部(ガスケット)に芯金を埋設し、芯金にフランジを形成して、このフランジを切欠凹部の端縁に当接させるようにしたシリンダヘッドカバーガスケットが開示されている。しかし、この場合でも、特に切欠角部には補助シール剤を施与することが必要とされ、前記と同様に組立・解体時等における作業性に難があることは否めなかった。
【0007】
特許文献4には、芯金に、フランジ部とその反対側に舌片部とを形成し、フランジ部と舌片部とにより、切欠凹部の周縁両側部を挟むように切欠凹部に嵌め込まれるプラグ部を有したガスケットが開示されている。しかし、この場合でも、切欠凹部の角部では、シール性を確保する為に補助シール剤を施与する必要があり、前記と同様の問題点がなお残存する。
【0008】
本発明は、切欠凹部に嵌め込まれて切欠凹部をシールするガスケットであって、切欠凹部の開口部側角部において補助シール剤を用いることなくシール性の確保がなされるガスケット及びシール構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るガスケットは、少なくとも一面に開口部を有する箱状部材の一壁部に該開口部に通じるように形成された切欠凹部に嵌め込まれ、前記切欠凹部をシールするガスケットであって、前記切欠凹部に弾接するシール面部を有するゴム外装部と、該ゴム外装部よりも高い剛性に構成されるとともに前記ゴム外装部によって被覆された芯体とを備えており、前記切欠凹部の開口部側角部には、面取加工が施され、前記シール面部における前記開口部側角部に対応した部位に、前記開口部側角部に沿うように且つ前記開口部側角部に向かって突出して形成された突出部を有していることを特徴とする。
【0010】
本発明のガスケットにおいて、前記突出部は、前記シール面部とは反対側に張り出す圧縮代を有するようにしてもよい。
また本発明のガスケットにおいて、前記ゴム外装部は、前記切欠凹部に嵌め込んだ際に前記切欠凹部に対応する部位を前記箱状部材の外側から覆うように前記シール面部の側辺部より延出して形成されたカバー部を更に有し、前記カバー部は、前記開口部側角部に対応する部位に且つ前記切欠凹部が形成された前記一壁部の面域方向に拡張して形成された拡張部を有するようにしてもよい。
そして本発明のガスケットにおいて、前記芯体は、前記突出部に対応する位置に及ぶように形成された舌片部を有し、前記ゴム外装部は、前記舌片部を覆って形成された突部を有しているようにしてもよい。
また本発明のガスケットにおいて、前記芯体は、金属製であって、前記舌片部は、前記芯体の一部を切り起こし、且つ、その先側を折曲することによって形成されているようにしてもよい。
【0011】
本発明に係るシール構造は、少なくとも一面に開口部を有した箱状部材の一壁部に該開口部に通じるように形成された切欠凹部にガスケットを嵌め込んで、前記切欠凹部をシールするシール構造であって、前記切欠凹部の開口部側角部には、面取加工が施されており、前記ガスケットは、前記切欠凹部に弾接するシール面部を有するゴム外装部と、該ゴム外装部よりも高い剛性に構成されるとともに前記ゴム外装部によって被覆された芯体とを備え、前記シール面部における前記開口部側角部に対応した部位に、前記開口部側角部に沿うように且つ前記開口部側角部に向かって突出して形成された突出部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガスケットは、切欠凹部に弾接するシール面部を有するゴム外装部と、該ゴム外装部よりも高い剛性に構成されるとともにゴム外装部によって被覆された芯体とを備えているので、ゴム外装部は芯体によって補強され、その所期の形状を保つことができる。特に、ゴム外装部は、前記凹部への嵌め入れ時における押圧力や、嵌め入れ後の外力が作用しても、変形することなく形状が保持され組付性のよいものとすることができる。
また、ガスケットの前記シール面部における前記開口部側角部に対応した部位に、前記開口部側角部に沿うように且つ前記開口部側角部に向かって突出して形成された突出部とされている。従って、当該ガスケットを前記凹部に嵌め込み、シール対象となる箱形部材に他のシール対象部材を別の環状ガスケットを介在させて合体させた際に、突出部が、面取り加工が施された切欠凹部の開口部側角部の形状に沿って変形し、開口部側角部に対するシール性が高められ、この部分での補助シール剤の使用が不要とされる。
【0013】
前記突出部が、前記シール面部とは反対側に張り出す圧縮代を有するものとした場合、この圧縮代の存在により、突出部が圧縮され易く、その先端部が開口部側角部に沿うように弾性変形し易いものとすることができる。したがって、突出部及び開口部側角部に寸法公差が存在しても、開口部側角部を好適にシールできる。
【0014】
前記ゴム外装部が、前記切欠凹部に嵌め込んだ際に前記切欠凹部に対応する部位を前記箱状部材の外側から覆うように前記シール面部の側辺部より延出して形成されたカバー部を更に有するものとした場合、シール面部の側辺部がカバー部によって覆われるから、切欠凹部のシールがより向上する。また、前記カバー部が、前記開口部側角部に対応する部位に且つ前記切欠凹部が形成された前記一壁部の面域方向に拡張して形成された拡張部を有するものとした場合、シール対象となる箱形部材に他のシール対象部材を別の環状ガスケットを介在させて合体させた際に、前記開口部側に位置する側辺部が拡張部によって覆われるから、開口部側にする部位と他のシール対象部材との界面のシール性もより向上する。しかも、拡張部を有する場合、その拡張部の外縁と開口部側角部との間隔が狭まることを抑制できるので、開口部側角部付近のシール性が低下することを抑制できる。
【0015】
また前記芯体が、前記突出部の近傍に及ぶ舌片部を有し、前記ゴム外装部は、前記舌片部を覆って形成された突部を有するものとした場合、突出部に位置するカバー部にゴム外装部で覆われた舌片部が位置するから、例えば高圧洗浄水による外力が作用してもこの部分のカバー部が煽られることが抑止され、前記突出部による三面合せ部のシールがより効果的に発揮される。
【0016】
更に前記芯体が、金属製であって、前記舌片部が、前記芯体の一部を切り起こし、且つ、その先側を折曲することによって形成されているものとした場合、舌片部が、芯体の板金加工によって簡易に形成される。
【0017】
本発明のシール構造は、上述したように当該ガスケットを前記切欠凹部に嵌め込み、シール対象となる箱形部材に他のシール対象部材を別の環状ガスケットを介在させて合体させた際に、突出部が、面取り加工が施された切欠凹部の開口部側角部の形状に沿って変形し、開口部側角部に対するシール性が高められ、この部分での補助シール剤の使用が不要とされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るガスケットの一実施形態をシール対象の第一部材と共に示す概略的全体斜視図である。
【図2】同ガスケットをシール対象の第一部材に嵌め込んだ状態を示す部分破断正面図と部分拡大図である。
【図3】同ガスケットに用いられる芯体の一実施形態を示す斜視図である。
【図4】図1におけるA部の拡大斜視図である。
【図5】図2におけるガスケットのB−B線矢視断面図である。
【図6】図2におけるガスケットのC線方向から見た側面図である。
【図7】同ガスケットをシール対象の2部材間に介在させた使用状態における図2の拡大図と同様図である。
【図8】本発明に係るガスケットの他の実施形態を示す図2の拡大図と同様図である。
【図9】本発明に係るガスケットの更に他の実施形態を示す図2の部分破断正面図と同様図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1は本発明のガスケットの一実施形態をシール対象の第一部材と共に示す概略的全体斜視図であり、図2は同ガスケットをシール対象の第一部材に嵌め込んだ状態を示す部分破断正面図と部分拡大図である。
シール対象となる第一部材1は、少なくとも一面に開口部10を有する箱状部材であればよく、図1及び図2では、六面体からなる略直方体の一面(図例は上面)に開口部10を有した箱形部材を示しており、開口部10を囲む周壁部11の上端面11aがシール対象部とされている。即ち、上端面11aには、後記するようにシリンダヘッドカバー或は蓋体等の他のシール対象としての第二部材2が別の環状ガスケット3を介して(図5及び図7参照)合体される。
周壁部11のうちの一壁部11Aには前記開口部10側から、即ち、一壁部11Aの上端面11aaから、箱形の第一部材1の深さ方向に向け切欠かれたU字形(半長円形或は半楕円形)の切欠凹部12が形成されている。この切欠凹部12の切欠面12aは、前記周壁部11の上端面11aに連続する。そして、切欠凹部12の角部としての開口部側角部(切欠面12aと前記周壁部11の上端面11aとの境界部)12bには、平斜面状の面取加工が施されている。
【0020】
当該ガスケット4は、図5に示すように、前記切欠凹部12に弾接するシール面部60を有するゴム外装部6と、ゴム外装部6よりも高い剛性に構成されるとともにゴム外装部6によって被覆された芯体5とを備えている。
ゴム外装部6は、芯体5の表面に一体成型され、例えばFKM,NBR,H−NBR,EPDM,CR,ACM,AEM,VMQ及びFVMQ等のゴム材による加硫成型体からなる。具体的には、事前に板金加工によって形成された前記芯体5を、所定形状のキャビティを有する金型内に配置し、未加硫の前記ゴム材を金型内に注入し、ゴム材を加硫して芯体5と一体とされた図示のような成型体を得る。
図例のガスケット4においては、芯体5の縦向壁部50及び第一の横向壁部51の外表面が、ゴム外装部6によって完全に覆われ、ゴム外装部6の外形は切欠凹部12に整合するように形成されている。更に、前記舌片部53,53及び切り起こし片部53a,53a全体もゴム外装部6に埋設された状態で完全に覆われている。ゴム外装部6が舌片部53,53を覆う部分は、正面視して左右対称の逆ハの字形突部61,61とされる。第一の横向壁部51の外表面を覆うゴム外装部6の表面部が前記シール面部60とされ、このシール面部60にはその曲成方向に沿った複数のビード部60aが互いに平行に隆起形成されている(図1、図4、図6参照)。また、第二の横向壁部52の外表面には、ゴム外装部6の一部による薄肉のゴム被覆層62が形成されており、このゴム被覆層62の周囲における第二の横向壁部52の外表面は、一部が露出している。第二の横向壁部52におけるこの露出部分のうち、前記第一部材1の内方側に向く部分52aは、芯体5における他の部位より当該内方側に突出するよう形成されている。
尚、ビード部60aは、図例では3本形成されているが、これに限定されず、1本、2本、或は4本以上でも良い。このようなビード部60aを設けることは、シール性の点で有効であるが、設けることを必須とするものではない。
【0021】
芯体5は、ゴム外装部6よりも高い剛性に構成されていればよく、例えば、鋼板を板金絞り加工して形成するようにしてもよい。芯体5は、前記切欠凹部12の形状に対応した形状とされ、芯体5を鋼板で形成する場合は、鉄系鋼板やステンレス鋼板等が採用される。芯体5は、図3及び図5に示すように、正面視した(前記周壁部11に直交する方向より見た)外形状が切欠凹部12の形状と略相似の縦向壁部50と、この縦向壁部50の周囲に連成されて前記第一部材1の内方に向く第一及び第二の横向壁部51,52とを有し、横向き箱形(断面コの字形)の形状とされている。第一の横向壁部51は、前記切欠凹部12の切欠面12aの形状に沿うようU字状に曲成され、第二の横向壁部52は、該第一の横向壁部51の上端縁に跨るように、且つ、当該ガスケット4が切欠凹部12に嵌め込まれた時には、前記周壁部11の上端面11aと平行になるよう平坦に形成されている。縦向壁部50には、切り起こしによって一対の舌片部53,53が形成されている。即ち、該舌片部53,53は、縦向壁部50を逆ハの字形(縦向壁部50を正面視して左右対称)に切り起こし、縦向壁部50に垂直な切り起こし片部53a,53aの先側53b,53bをそれぞれが第一及び第二の横向壁部51,52の連成角部51a,51aに向くよう更に90°折曲することにより形成されている(図3参照)。
【0022】
図2に示すように前記U字形シール面部60の両上端部は、互いに反方向に突出して開口部側角部12bに向かうように形成され、この突出した部位が突出部63,63とされている。すなわち、この突出部63,63は、シール面部60における開口部側角部12bに対応した部位に、開口部側角部12bに沿うように且つ開口部側角部12bに向かって突出して形成されている。ここで、ガスケット4における開口部側角部12bに対応した部位とは、ガスケット4の上辺部4aの両角部をさし、ガスケット4が切欠凹部12に嵌め込まれてシールする状態で、開口部側角部12bに弾性的に接触する部位をさす。突出部63,63の下面63a(図2拡大図等参照)は、開口部側角部12bと同様の平斜面状に形成されて面取加工された開口部側角部12b,12bの面取加工面に沿う形状とされている。突出部63,63は、一壁部11Aの面域方向に突出しており、突出部63,63はシール面部60とは反対側に張り出すように形成された圧縮代を有している。すなわち、突出部63,63の上辺部は、その先端から基端側に向かうにつれて上側に若干張り出すように形成されており、第一部材1と第二部材2とが締結合体とされる前の状態では一壁部11Aの上端面11aaよりも上側に張り出した状態で組み付けられる。そのため、第一部材1と第二部材2とが締結合体される前の状態では、一壁部11Aの上端面11aaと環状ガスケット3との間に所定の隙間X(図2拡大図参照)が存在している。そしてこれが圧縮代となり、突出部63,63が圧縮され易く、その先端部が開口部側角部12b,12bに沿うように弾性変形し易いものとすることができる。したがって、突出部63,63及び開口部側角部12b,12bに寸法公差が存在しても、開口部側角部12b,12bを好適にシールでき、シールすることが難しいとされる所謂三面合せ部のシール性をより向上させることができる。
【0023】
また、芯体5の縦向壁部50を覆うゴム外装部6の周縁部には、一壁部11Aの面域方向に広がるカバー部64が延設されている。すなわち、前記ゴム外装部6は、切欠凹部12に嵌め込んだ際に切欠凹部12に対応する部位を第1部材1(箱状部材)の一壁部11Aの外側から覆うようにシール面部60の側辺部より延出して形成されたカバー部64を有している。このカバー部64は、突出部63,63の周縁部からも突出するよう形成されている。更に、前記シール面部60における前記第一部材1の内方側部位には、内側鍔部65が一壁部11Aの面域方向に広がるように形成されている。そして、図1、図2等に示すように、カバー部64は、その開口側角部12bに対応する部位、本実施形態では正面視における両上隅部が、他の部位よりも拡張して形成された拡張部64a,64aを有している。拡張部64a,64aは、カバー部64の開口部側角部12bに対応する部位に且つ切欠凹部12が形成された一壁部11Aの面域方向に拡張して形成されている。ここでいう開口部側角部12bに対応する部位とは、ガスケット4が切欠凹部12に嵌め込まれシールする状態で、開口部側角部12bと弾性的に接触する位置(すなわち、突出部63,63)に対応するカバー部64の部位をさす。言い換えれば、ガスケット4の上辺部4aの両角部の形成位置に対応するカバー部64の部位ということもできる。拡張部64a,64aの形状は、図に示すように横方向に拡がり三角形状の頂部が突出した角張った形状に限定されず、突出部分が丸みを帯びたような形状であってもよい。そしてカバー部64は、図1、図2等に示すように、その外縁が切欠凹部12の切欠面12aに倣う形状に一定の間隔(図2拡大図・間隔Y参照)を保持した状態で形成されている。
尚、図例では、芯体5の外表面がゴム外装部6で覆われているが、内表面も覆われたものであっても良い。またこのように芯体5の全体をゴム外装部6で被覆する例に限定されず、芯体5の第一及び第二の横向壁部51,52にのみゴム外装部6を被覆してもよいし、芯体5の縦向壁部50及び第一及び第二の横向壁部51,52で囲まれた空間にゴム外装部6が充填されブロック状に形成されたものであっても良い。また、本明細書において、縦向及び横向なる用語は、前者が第一部材1の深さ方向に沿った方向、後者が第一部材1の一壁部11Aに直交する方向を意味している。
【0024】
次に、前記構成のガスケット4の使用例について述べる。当該ガスケット4は、図1の矢印aに沿って第一部材1の切欠凹部12に嵌め込まれる。この時、図4に示す白抜矢印b,cに示すように、前記突部61及び第二の横向壁部52の露出部分52aを手指或は簡易な工具を作用させ矢印aに沿って押し込むようにして、ガスケット4の嵌め込みがなされる。シール面部60には、ビード部60aが形成されており、前記嵌め込みはこのビード部60aの圧縮弾性変形を伴うことから、強い押し込み力を必要とする。然るに、白抜矢印b,cに示すように押し込み操作をするようにすれば、第二部材2(図5参照)とのシール面とされるゴム被覆層62を手指等によって傷付けることがない。また、突部61には芯体5の一部としての切り起こし片部53a及び舌片部53が埋設された状態とされているから、これら芯体5の一部によって突部61が強化され、強い押込み力を作用させることができる。切欠凹部12にガスケット4が嵌め込まれた状態では、切欠凹部12の近傍の一壁部11Aが、カバー部64及び内側鍔部65によって内外より挟装された状態とされる。第一部材1は、例えば、自動車用エンジンのシリンダヘッドや、インバータケースであり、インバータケースの場合には、ガスケット4の正面部分より、発熱を抑える為の冷媒供給用配管や電線を保持する為の保持孔(不図示)が貫設される。
【0025】
上述のように、切欠凹部12にガスケット4を嵌め込んだ後、図5に示すように環状ガスケット3を、一壁部11Aの上端面11aa及びゴム被覆層62を含むガスケット4の上辺部4aの上に載せ置くように位置付ける。この環状ガスケット3は、ゴム単体による成型体、或は、無機若しくは有機繊維を含有するゴムコンパウンドの成型体であっても良く、その形状も平帯状に限らず、周方向に沿ったビード部を備えたものであっても良い。更に、第一部材1の上には、環状ガスケット3を介してシール対象の第二部材2を載せ置く。この状態ではガスケット4、切欠角部12b及び環状ガスケット3による三面合せ部が生じ、これらの三面合せ部には寸法公差などに起因した隙間が生じることがある。しかし、不図示のボルトによって第一部材1及び第二部材2を締結合体させると、この締結合体によって、前記ビード部60aが更に圧縮されると共に、環状ガスケット3もその厚み方向に圧縮される。これによって、ガスケット4におけるシール面部60と切欠凹部12の切欠面12aとの界面、周壁部11の上端面11a及びゴム被覆層62を含むガスケット4の上辺部4aと第二部材2との界面が環状ガスケット3を介してシールされる。そして、図7に示すように、突出部63は、面取加工された切欠凹部12の開口部側角部12bと、第二部材2との間で隙間X分(図2拡大図参照)圧縮され、開口部側角部12bの平斜面に対して倣うように弾性変形する。この結果、突出部63の先端側が三面合せ部に生じる隙間を埋めるようになるため、シールが難しいとされる三面合せ部でありながら、液状ガスケット等の補助シール剤を用いずとも、この三面合せ部のシールが確実になされる。因みに、このように開口部側角部12bが面取加工されていない場合には、切欠凹部12やガスケット4の寸法公差などによって開口部側角部12bの隙間を生めることができず、シール面部60のこの部分が締結時に破断し、シール性が保てなくなる懸念が生じる。
【0026】
また、前記芯体5の縦向壁部50を覆うゴム外装部6の周囲に延設されたカバー部64により前記界面における第一部材1の外方側に位置する側辺部が覆われ、例えば、高圧洗浄水が作用しても、その洗浄水の界面への浸入が防止される。しかも、カバー部64は、三面合せ部(開口部側角部12b)の近傍の部位がその他の部位よりも拡張して形成されており、開口部側角部12bに面取加工が施されていても、カバー部64の外縁からシール面部60と切欠面12aとの界面までの間隔Y(図2・拡大図参照)を確保できるため、カバー部64による遮蔽機能が開口部側角部12b付近で低下することが抑制される。したがって、本実施形態のカバー部64は、三面合せ部における高圧洗浄水の浸入を好適に遮蔽できる。そして、前記三面合せ部(開口部側角部12b)の近傍には、芯体5の一部としての舌片部53が、ゴム外装部6による突部61に埋設された状態で及んでいるから、高圧洗浄水によって三面合せ部におけるカバー部64が煽られることがなく、三面合せ部におけるシール性の維持が好適になされる。
【0027】
図8は他の実施形態を示し、開口部側角部12bの面取形状が前記の実施形態と異なっている。即ち、前記の実施形態では、開口部側角部12bが平斜面状に面取加工されているが、図8の実施形態では、凸曲状(R状)に面取加工されている。従って、この例では突出部63はその下面が開口部側角部12bの形状に沿うよう凹曲状に形成されている。この実施形態のガスケット4も、図1に示すように、第一部材1の切欠凹部12に嵌め入れられ、図5及び図7に示すように、環状ガスケット3を介して第二部材2が第一部材に締結合体される。この時、突出部63は、面取加工された切欠凹部12の開口部側角部12bと、第二部材3との間で、環状ガスケット3と共に圧縮され、開口部側角部12bの面取による空間部分を埋めるように弾性変形する。この結果、所謂三面合せ部でありながら、前記実施形態と同様に、液状ガスケット等の補助シール剤を用いずとも、この三面合せ部のシールが確実になされる。
尚、前記実施形態と構成的に共通する部分には同一の符号を付し、ここでは、その説明を割愛する。
【0028】
図9は、更に他の実施形態を示し、突部61,61の形成態様が前記実施形態と異なっている。即ち、突部61,61が前記実施形態のような逆ハの字形ではなく、前記押込み方向(図1及び図9の矢印a)に対して直交し、前記三面合せ部の近い位置に臨んで左右対称且つ横向き直列的に形成されている。そして、この突部61,61には、前記と同様に舌片部53,53とその切り起こし片部53a,53aとが埋設された状態とされているが、切り起こし片部53a,53aの板面が前記押込み方向aに平行に、且つ、舌片部53,53が押込み方向aに直交する方向に向くよう形成されている。この場合、舌片部53,53の向く方向が、前記三面合せ部よりずれるが、その基本的な機能は前記と同様である。この例では、切り起こし片部53a,53aの板面が前記押込み方向aに平行とされていることにより、そのリブ効果によって押込み力に対する抗力が前記例より大きい。従って、図4の矢印bで示すように、突部61,61に手指等を作用させてガスケット4を押込み、切欠凹部12に嵌め込む操作がより効果的になされる。
その他の構成は、前記実施形態と同様であるので、共通部分に同一の符号を付し、ここでもその説明を割愛する。
【0029】
尚、ガスケット4の構成、形状等は上述の実施形態に限定されない。例えば、開口部側角部12bの面取形状として、平斜面状及び凸曲状の例を挙げたが、凹曲状その他の形状であっても良い。従って、突出部63の下面は、これら面取形状のそれぞれに整合するよう形成される。また、舌片部53を芯体5の一部を切り起こして形成した例について述べたが、芯体5の縦向壁部50に別途作製した舌片用部片を溶接すること等により形成すること、或は、縦向壁部50に絞り加工を施して形成すること等も可能である。更に、本発明のガスケット4が適用される対象として、自動車用のシリンダヘッドやインバータケースを例示したが、箱形部材の壁部に切欠形成された凹部に嵌め込まれて、その切欠面をシールするものであれば、他の分野のものもその対象とされる。そして、ゴム被覆層62を傷つける懸念がなければ、舌片部53を適宜省略してもよい。また、突出部63の存在によって上述のような三面合せ部を十分にシールできる場合は、カバー部64を適宜省略してもよい。更に、本発明のガスケット4におけるゴム外装部6と、図5に示す環状ガスケット3とを一体に成型することも可能である。そして、ガスケット4の補強部材として機能する芯体5は、上述の鉄系鋼板やステンレス鋼板等からなる芯体5に限らず、例えば、ゴム外装部6よりも高剛性の芯体であれば、樹脂材やゴム材などからなる芯体5であってもよい。また芯体5の形状を変更してもよく、例えば縦断面が略I型形状(不図示)であってもよい。更に芯体5の形状は、切欠凹部12に整合する形状に限らず、ゴム外装部6の形状を保持可能であればよく、適宜変更してもよい。そして、切欠凹部12は、箱状部材の開口部に通じるように切欠形状且つ凹状に形成されていればよく、箱状部材を成型後、切欠形成されるものに限らず、例えば、箱型部材が樹脂材からなる場合は、成型時に図1に示すような切欠凹部12を形成するものであってもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 第一部材(箱形部材)
10 開口部
11A 一壁部
12 切欠凹部
12a 切欠面
12b 開口部側角部
4 ガスケット
5 芯体
53 舌片部
6 ゴム外装部
60 シール面部
63 突出部
64 カバー部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一面に開口部を有する箱状部材の一壁部に該開口部に通じるように形成された切欠凹部に嵌め込まれ、前記切欠凹部をシールするガスケットであって、
前記切欠凹部の開口部側角部には、面取加工が施されており、
前記ガスケットは、前記切欠凹部に弾接するシール面部を有するゴム外装部と、前記ゴム外装部よりも高い剛性に構成されるとともに前記ゴム外装部によって被覆された芯体とを備えており、
前記シール面部における前記開口部側角部に対応した部位に、前記開口部側角部に沿うように且つ前記開口部側角部に向かって突出して形成された突出部を有することを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1に記載のガスケットにおいて、
前記突出部は、前記シール面部とは反対側に張り出す圧縮代を有することを特徴とするガスケット。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のガスケットにおいて、
前記ゴム外装部は、前記切欠凹部に嵌め込んだ際に前記切欠凹部に対応する部位を前記箱状部材の外側から覆うように前記シール面部の側辺部より延出して形成されたカバー部を更に有し、
前記カバー部は、前記開口部側角部に対応する部位に且つ前記切欠凹部が形成された前記一壁部の面域方向に拡張して形成された拡張部を有することを特徴とするガスケット。
【請求項4】
請求項3に記載のガスケットにおいて、
前記芯体は、前記突出部に対応する位置に及ぶように形成された舌片部を有し、
前記ゴム外装部は、前記舌片部を覆うように形成された突部を有することを特徴とするガスケット。
【請求項5】
請求項4に記載のガスケットにおいて、
前記芯体は、金属製であって、
前記舌片部は、前記芯体の一部を切り起こし、且つ、その先側を折曲することによって形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項6】
少なくとも一面に開口部を有した箱状部材の一壁部に該開口部に通じるように形成された切欠凹部にガスケットを嵌め込んで、前記切欠凹部をシールするシール構造であって、
前記切欠凹部の開口部側角部には、面取加工が施されており、
前記ガスケットは、前記切欠凹部に弾接するシール面部を有するゴム外装部と、前記ゴム外装部よりも高い剛性に構成されるとともに前記ゴム外装部によって被覆された芯体とを備え、
前記シール面部における前記開口部側角部に対応した部位に、前記開口部側角部と整合するように且つ前記開口部側角部に向かって突出して形成された突出部を有することを特徴とするシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−255514(P2012−255514A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129869(P2011−129869)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】