説明

ガスケット材

【課題】実用上十分なシール性(密着性)を確保しつつ、メンテナンス時等における、被着体からの再剥離性に優れたガスケット材及び該ガスケット材を用いたシール構造を提供する。
【解決手段】基材シートの両面に粘着層を形成してなるガスケット材であり、該粘着層が下記A〜C成分を含む組成物の硬化物からなる。
A:1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体
B:1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物
C:ヒドロシリル化触媒
該硬化物が優れた弾力性及び圧縮性を有することから種々の材質に対して優れた密着性を有し、しかも、該硬化物は、剥離時に凝集破壊を起こさず再剥離性に優れることから、優れた密閉効果が長期間持続すると共に、再剥離時には、被着体に粘着層の残片を残すことなく剥離することができ、ガスケット材の剥離を伴う作業性を改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスケット材に関し、特に、2つの面の合せ面の間に介在させて、2つの面の合せ面の間を密閉するガスケット材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の機械や機器又はその他の構造物中の2つの面の合わせ面(例えば、2枚の板状部材を重ね合わせた積板部における2枚の板状部材の合わせ面)の間での液体やガスの移動を防止するために、該2つの面の合せ面の間にガスケットを介在させることが行われている。
【0003】
例えば、航空機の機体壁部(外板)の外面上には、航空機と遠隔地との通信を補助するためのアンテナが設けられるが、そのようなアンテナの多くは、片面に電気コネクターを突設させた平板状の取付け板を有し、該取付け板のコネクターが突設した片面を航空機の外板の外面に重ね、航空機の外板に穿設した孔からコネクターを航空機内部に挿入し、航空機内部の適切な電気回路に接続している。このとき、アンテナの取付け板は、通常、航空機の外板に対して着脱可能にネジ部品によって取付けられ、航空機の外板の外面とアンテナの取付け板の内面との合せ面の間にガスケットを介在させて、該アンテナの取付け部を密閉している。
【0004】
すなわち、アンテナの取付け板及び航空機の外板の対応する位置にネジ止め用の貫孔を形成し、アンテナの取付け板と航空機の外板の間にこれらの貫孔の形成位置と対応する位置に貫孔を形成したガスケットを介在させ、アンテナの取付け板の外側から、アンテナの取付け板、ガスケット及び航空機の外板の貫孔にネジを挿入し、航空機の外板の内面にブラインド・ナットを取付けることで、アンテナが固設されるが、その際、ネジ締めによる取付け板の変形によってガスケットが圧縮して、ネジとネジ孔の隙間及び航空機の外板と取付け板の間を密閉し、湿気が航空機内に浸入するのが防止される。
【0005】
このような航空機の外板上のアンテナ取付け部の密閉に使用するガスケットとして、例えば、特許文献1には、キャリアシート(基材シート)の表裏両面に柔軟なポリウレタンゲルからなる粘着層を形成したガスケット材が提案されている。該公報には、ポリウレタンゲルからなる粘着層を用いたガスケットは、ポリウレタンゲルが可撓性、弾力性、圧縮性および柔軟性等に優れる他、航空機の外板やアンテナ取付け板の構成材料(具体的にはアルミニウム等)や、水(塩水を含む)に対して非反応性であることから、優れたシール性能が持続すると記載されている。
【0006】
ところで、上記のようなこの種のガスケット材は、通常、シール性を確保するため、航空機の外板等の被着体に対し密着性(接着力)が高くなるように形成されている。しかしながら、航空機のメンテナンス時等に、ガスケット材を再剥離する際、ガスケット材の凝集破壊が起こり、粘着層などの残片が被着体に残り、その除去作業をしなければならないという作業上の問題が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US2004/0070156 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み成されたものであり、その解決しようとする課題は、実用上十分なシール性(密着性)を確保しつつ、メンテナンス時等における、被着体からの再剥離性に優れたガスケット材及び該ガスケット材を用いたシール構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体と1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物を反応させて用いて得られる硬化物は優れた弾力性及び圧縮性を有することから種々の材質の面に対して優れた密着性を有するとともに、該硬化物は、剥離時に凝集破壊を起こさず再剥離性に優れることを知見し、該知見に基づいてさらに研究を進めることにより、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の通りである。
(1)基材シートの両面に粘着層を形成してなるガスケット材であって、該粘着層が、下記A〜C成分を含む組成物の硬化物からなるガスケット材。
A:1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体
B:1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物
C:ヒドロシリル化触媒
(2)基材シートがガラス繊維製シートである、上記(1)記載のガスケット材。
(3)ガラス繊維製シートがガラスクロスである、上記(2)記載のガスケット材。
(4)基材シートがプラスチックフィルムである、上記(1)記載のガスケット材。
(5)基材シートが無孔プラスチックフィルムである、上記(1)記載のガスケット材。
(6)基材シートの両面に形成された粘着層の少なくとも一方に剥離シートが積層されてなる、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のガスケット材。
(7)剥離シートが、カチオン重合型のシリコーンとオニウム塩系光開始剤を含むカチオン重合性の紫外線硬化型シリコーン系離型処理剤で剥離処理されたものである、上記(6)記載のガスケット材。
(8)2つの面の合せ面の間に介在させるものである、上記(1)〜(5)のいずれかに記載のガスケット材。
(9)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のガスケット材を2つの面の合せ面の間に介在させて成ることを特徴とするシール構造。
【発明の効果】
【0011】
本発明のガスケット材によれば、上記特定組成の硬化物からなる粘着層が、優れた弾力性及び圧縮性を有することから種々の材質に対して優れた密着性を有し、しかも、該硬化物は剥離時に凝集破壊を起こさず、再剥離性に優れる。従って、本発明のガスケット材を2つの面の合せ面の間に介在させて固定することにより、優れた密閉効果が長期間持続すると共に、再剥離時には、被着体に粘着層の残片を残すことなく剥離することができ、ガスケット材の剥離を伴う作業性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明のガスケット材の典型例の断面の模式図である。
【図2】図2は本発明のガスケット材をロール状物形態にした側面図である。
【図3】図3は本発明の他の実施の形態のガスケット材の断面の模式図である。
【図4】図4(A)〜図4(F)は本発明のガスケット材の製造工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を好適な実施形態に即して説明する。
図1は本発明のガスケット材の典型例の断面を模式的に示した図である。本発明のガスケット材はかかる一例のガスケット材100に示されるように、基材シート1の両面に粘着層2、3を有し、該粘着層2、3を、下記A〜C成分を含む組成物の硬化物で形成したことが主たる特徴である。
A:1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体
B:1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物
C:ヒドロシリル化触媒
【0014】
本発明において、上記A成分の「1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体」は、特に制限はなく、各種のものを用いることができるが、中でも、重合体の主鎖が、下記の一般式(1)で示される繰り返し単位を有するものが好適である。
【0015】
一般式(1):−R−O−
(式中、Rはアルキレン基である)
【0016】
は、炭素数1〜14の、さらには2〜4の、直鎖状又は分岐状のアルキレン基が好ましい。
【0017】
一般式(1)で示される繰り返し単位の具体例としては、−CHO−、−CHCHO−、−CHCH(CH)O−、−CHCH(C)O−、−CHC(CHO−、−CHCHCHCHO−等が挙げられる。ポリオキシアルキレン系重合体の主鎖骨格は、1種類だけの繰り返し単位からなってもよいし、2種類以上の繰り返し単位からなってもよい。特に、入手性、作業性の点から、−CHCH(CH)O−を主たる繰り返し単位とする重合体が好ましい。また、重合体の主鎖にはオキシアルキレン基以外の繰り返し単位が含まれていてもよい。この場合、重合体中のオキシアルキレン単位の総和は、80重量%以上が好ましく、特に好ましくは90重量%以上である。
【0018】
A成分の重合体は、直鎖状の重合体でも分岐を有する重合体でもよく、それらの混合物であってもよいが、粘着層が種々の材質の面に対して良好な粘着性を示すために、直鎖状の重合体を50重量%以上含有していることが好ましい。
【0019】
A成分の重合体の分子量としては、数平均分子量で500〜50,000が好ましく、5,000〜30,000がさらに好ましい。数平均分子量が500未満のものでは、得られる硬化物が脆くなりすぎる傾向があり、逆に数平均分子量が50,000を超えるものは、高粘度になりすぎて作業性が著しく低下する傾向となるために好ましくない。ここでいう数平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求められる値のことである。
【0020】
また、A成分の重合体は、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.6以下である分子量の分布が比較的狭いものが好ましく、Mw/Mnが1.6以下である重合体は、組成物の粘度が低くなり、作業性が向上する。よって、Mw/Mnは、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.4以下である。なお、ここでいう、Mw/Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求められる値のことである。
【0021】
ここで、GPC法による分子量の測定は、東ソー株式会社製GPC装置(HLC−8120GPC)を用いて測定される、ポリスチレン換算値であり、測定条件は以下のとおりである。
サンプル濃度:0.2重量%(THF溶液)
サンプル注入量:10μl
溶離液:THF
流速:0.6ml/min
測定温度:40℃
カラム:サンプルカラム TSKgel GMH−H(S)
検出器:示差屈折計
【0022】
A成分の重合体(1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体)において、アルケニル基は特に制限はないが、下記の一般式(2)で示されるアルケニル基が好適である。
【0023】
一般式(2):HC=C(R)−
(式中、Rは水素又はメチル基である)
【0024】
アルケニル基のポリオキシアルキレン系重合体への結合様式は、特に制限はないが、例えば、アルケニル基の直接結合、エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合、ウレタン結合、ウレア結合等が挙げられる。
【0025】
かかるA成分の重合体の具体例としては、
一般式(3):{HC=C(R3a)−R4a−O}a5a
(式中、R3aは水素又はメチル基、R4aは炭素数1〜20の2価の炭化水素基であって、1個以上のエーテル基が含まれていてもよい、R5aはポリオキシアルキレン系重合体残基であり、aは正の整数である。)
で示される重合体が挙げられる。式中のR4aは、具体的には、−CH−、−CH
−、−CHCHCH−、−CHCH(CH)CH−、−CHCHCHCH−,−CHCHOCHCH−、または−CHCHOCHCHCH−などを挙げることができるが、合成の容易さからは−CH−が好ましい。
【0026】
また、一般式(4):{HC=C(R3b)−R4b−OCO}a5b
(式中、R3b、R4b、R5b及びaは、それぞれR3a、R4a、R5a、aと同義である。)
で示されるエステル結合を有する重合体が挙げられる。
【0027】
また、一般式(5):{HC=C(R3c)}a5c
(式中、R3c、R5c及びaは、それぞれR3a、R5a、aと同義である。)
で示される重合体も挙げられる。
【0028】
さらに、一般式(6):{HC=C(R3d)−R4d−O(CO)O}a5d
(式中、R3d、R4d、R5d及びaは、それぞれR3a、R4a、R5a及びaと同義である。)
で示されるカーボネート結合を有する重合体も挙げられる。
【0029】
アルケニル基は、A成分の重合体1分子中に少なくとも1個、好ましくは1〜5個、より好ましくは、1.5〜3個存在するのがよい。A成分の重合体1分子中に含まれるアルケニル基の数が1個未満になると、硬化性が不充分になり、また5個より多くなると網目構造があまりに密となるため、良好な粘着特性を示さなくなる場合がある。なお、A成分の重合体は、JP-A-2003-292926(特開2003−292926号公報)に記載の方法に従って、合成することができ、また、市販されているものについては、市販品をそのまま使用することができる。
【0030】
B成分である「1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を含有する化合物」は、ヒドロシリル基(Si−H結合を有する基)を有するものであれば特に制限無く使用できるが、原材料の入手の容易さやA成分への相溶性の面から、特に有機成分で変性されたオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。上記有機成分で変性されたポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1分子中に平均して2〜8個のヒドロシリル基を有するものがより好ましい。ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの構造を具体的に示すと、例えば、
【0031】
【化1】

【0032】
(式中、2≦m+n≦50、2≦m、0≦nである。R6aは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有してもよい)、
【0033】
【化2】

【0034】
(式中、0≦m+n≦50、0≦m、0≦nである。R6bは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有してもよい)、
又は、
【0035】
【化3】

【0036】
(式中、3≦m+n≦20、2≦m≦19、0≦n<18である。R6cは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有してもよい)等で示される鎖状又は環状のものや、これらのユニットを2個以上有する、以下の
【0037】
【化4】

【0038】
(式中、1≦m+n≦50、1≦m、0≦nである。R6dは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有してもよい。2≦bである。R8aは2〜4価の有機基であり、R7aは2価の有機基である。ただし、R7aは、R8aの構造によってはなくても構わない。)、
【0039】
【化5】

【0040】
(式中、0≦m+n≦50、0≦m、0≦nである。R6eは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有してもよい。2≦bである。R8bは2〜4価の有機基であり、R7bは2価の有機基である。ただし、R7bは、R8bの構造によってはなくても構わない。)、又は
【0041】
【化6】

【0042】
(式中、3≦m+n≦50、1≦m、0≦nである。R6fは、主鎖の炭素数が2〜20の炭化水素基で1個以上のフェニル基を含有してもよい。2≦bである。R8cは2〜4価の有機基であり、R7cは2価の有機基である。ただし、R7cは、R8cの構造によってはなくても構わない。)
等で示されるものが挙げられる。
【0043】
B成分の「1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物」は、A成分及びC成分との相溶性、又は、系中での分散安定性が良好なものが好ましい。特に系全体の粘度が低い場合には、B成分として上記各成分との相溶性の低いものを使用すると、相分離が起こり硬化不良を引き起こすことがある。
【0044】
A成分及びC成分との相溶性、又は、分散安定性が比較的良好なB成分を具体的に示すと、以下のものが挙げられる。
【0045】
【化7】

【0046】
(式中、nは4以上10以下の整数である、)
【0047】
【化8】

【0048】
(式中、2≦m≦10、0≦n≦5であり、R6gは炭素数8以上の炭化水素基である。)
当該B成分の好ましい具体例としては、ポリメチルハイドロジェンシロキサンが挙げられ、また、A成分との相溶性確保と、SiH量の調整のために、α−オレフィン、スチレン、α−メチルスチレン、アリルアルキルエーテル、アリルアルキルエステル、アリルフェニルエーテル、アリルフェニルエステル等により変性した化合物が例示され、一例として、以下の構造があげられる。
【0049】
【化9】

【0050】
(式中、2≦m≦20、1≦n≦20である。)
【0051】
B成分は、公知の方法により合成することができ、市販されているものについては、市販品をそのまま使用することができる。
【0052】
本発明において、C成分の「ヒドロシリル化触媒」は特に限定されず、任意のものを使用できる。具体例としては、たとえば、塩化白金酸;白金の単体;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の担体に固体白金を担持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体{例えば、Pt(ViMeSiOSiMeVi)、Pt〔(MeViSiO)等};白金−ホスフィン錯体{例えば、Pt(PPh、Pt(PBu等};白金−ホスファイト錯体{例えば、Pt〔P(OPh)、Pt〔P(OBu)等};Pt(acac);Ashbyらの米国特許第3159601及び3159662号に記載された白金−炭化水素複合体;Lamoreauxらの米国特許第3220972号に記載された白金アルコラート触媒等が挙げられる。なお、上記式中、Meはメチル基、Buはブチル基、Viはビニル基、Phはフェニル基、acacはアセチルアセトナトを表し、n、mは整数を表す。
【0053】
また、白金化合物以外の触媒の例としては、RhCl(PPh、RhCl、Rh/Al、RuCl、IrCl、FeCl、AlCl、PdCl・2HO、NiCl、TiCl等が挙げられる。
これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用しても構わない。触媒活性の点から、塩化白金酸、白金−ホスフィン錯体、白金−ビニルシロキサン錯体、Pt(acac)等が好ましい。
【0054】
C成分の配合量は、特に制限はないが、組成物のポットライフの確保及び硬化物(粘着層)の透明性の観点から、A成分中のアルケニル基1molに対して一般に1×10−1mol以下、好ましくは5.3×10−2mol以下であり、硬化物(粘着層)の透明性の観点から、より好ましくは3.5×10−2mol以下、とりわけ好ましくは1.4×10−3mol以下である。A成分中のアルケニル基1molに対して1×10−1molを超えると、最終的に得られる硬化物(粘着層)が黄変しやすく、硬化物(粘着層)の透明性が損なわれる傾向となる。なお、C成分の配合量が少なすぎる場合、組成物の硬化速度が遅く、また硬化性が不安定になる傾向となるため、C成分の配合量は8.9×10−5mol以上が好ましく、1.8×10−4mol以上がより好ましい。
【0055】
以上説明したA〜C成分を含む組成物は、加熱により硬化する。すなわち、A成分(1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体)中のアルケニル基が、ヒドロシリル化触媒(C成分)の存在下、B成分の1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物のヒドロシリル基(Si−H結合を有する基)でヒドロシリル化されて、架橋構造が進行することによって硬化が成される。かかる硬化物は、粘着付与樹脂を無添加または少量添加であっても、粘着特性(他の物体への接着機能)を発現できるという特徴を有する。また、活性が低く、水、金属、プラスチック材料等の種々の物質に接触しても反応しない。
【0056】
A〜C成分を含む組成物において、A成分とB成分は、B成分(化合物B)のヒドロシリル基が、A成分(化合物A)のアルケニル基に対して官能基比が0.3以上、2未満となるように配合されることが好ましく、より好ましくは0.4以上、1.8未満の範囲であり、さらに一層好ましくは0.5以上、1.5未満の範囲である。前記官能基比が2を超える組成では、架橋密度が高くなり、粘着付与樹脂を無添加または少量添加において粘着性を得ることはできなくなる場合がある。また、官能基比が0.3未満になると、硬化物における架橋が緩くなりすぎて、高温で特性保持が困難となる場合がある。このようにA成分とB成分の配合比率を特定の範囲で選択することで、粘着付与樹脂を配合しなくとも組成物が良好な粘着特性が発現し得、しかも、実用上充分に速いライン速度にて硬化させることができる。
【0057】
なお、A〜C成分を含む組成物には保存安定性を改良する目的で、保存安定性改良剤を配合してもよい。この保存安定性改良剤としては、上記B成分の保存安定剤として知られている公知の化合物を制限なく使用できる。例えば、脂肪族不飽和結合を含有する化合物、有機リン化合物、有機硫黄化合物、窒素含有化合物、スズ系化合物、有機過酸化物等を好適に用いることができる。具体的には、2−ベンゾチアゾリルサルファイド、ベンゾチアゾール、チアゾール、ジメチルアセチレンダイカルボキシレート、ジエチルアセチレンダイカルボキシレート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、ブチルヒドロキシアニソール、ビタミンE、2−(4−モルフォリニルジチオ)ベンゾチアゾール、3−メチル−1−ブテン−3−オール、2−メチル−3−ブテン−2−オール、アセチレン性不飽和基含有オルガノシロキサン、アセチレンアルコール、3−メチル−1−ブチル−3−オール、ジアリルフマレート、ジアリルマレエート、ジエチルフマレート、ジエチルマレエート、ジメチルマレエート、2−ペンテンニトリル、2,3−ジクロロプロペン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
また、必要に応じて、A〜C成分を含む組成物には、基材シート1への接着性をより向上させるために接着付与剤を添加することができる。接着付与剤の例としては、各種シランカップリング剤やエポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、エポキシ基、メタクリロイル基、ビニル基等の官能基を有するシランカップリング剤は、硬化性に及ぼす影響も小さく、接着性の発現にも効果が大きいため、好ましいものである。また、シランカップリング剤やエポキシ樹脂と併用して、シリル基やエポキシ基を反応させるための触媒を添加することができる。なお、これらの使用にあたっては、ヒドロシリル化反応に対する影響を考慮しなければならない。また、各種充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、界面活性剤、溶剤、シリコーン化合物を適宜添加してもよい。充填剤の具体例としては、シリカ微粉末、炭酸カルシウム、クレー、タルク、酸化チタン、亜鉛華、ケイソウ土、硫酸バリウム等が挙げられる。これらの充填剤の中では、特にシリカ微粉末、とりわけ粒子径が50〜70nm(BET比表面積が50〜380m/g)程度の微粉末シリカが好ましく、その中でも表面処理を施した疎水性シリカが、強度を好ましい方向に改善する働きが大きいので特に好ましい。さらに、タック等の特性を上げるため、必要に応じて粘着付与樹脂を添加してもよく、粘着付与樹脂としては、例えば、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、石油樹脂、ロジンエステル等が例示され、用途に合わせて自由に選択することができる。
【0059】
また、特性改善の面から、フェノール樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、キシレン樹脂等の樹脂類を添加することが可能である。また、アクリル粘着剤、スチレンブロック系粘着剤、オレフィン系粘着剤等の粘着剤成分を同様の目的から添加することが可能である。
【0060】
本発明のガスケット材に使用する基材シート1としては、種々の材質、形態のシート(フィルム)を使用することができ、特に制限はされないが、例えば、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等);ナイロン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリエチレン、ポリプロピレン、リアクターTPO、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン;ポリテトラフルオロエチレン及びアイオノマー樹脂等から選ばれる1種又は2種以上のプラスチックからなるフィルム(単層フィルム)や金属箔、或いは、これらから選ばれる2つ以上を積層したラミネートフィルム等が挙げられる。これらのフィルムは中実フィルム(無孔フィルム)の状態で使用する他、機械的に穿孔処理を施した有孔フィルムにして使用してもよい。また、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)など)等の合成高分子繊維、綿、麻等の天然繊維、金属繊維及びガラス繊維から選ばれる1種または2種以上の繊維を用いた編布、織布、不織布等の繊維製シート(単層シート、2層以上の積層シート)、かかる繊維製シートの1種又は2種以上を前述のプラスチックフィルムに積層した積層シートも基材シート1として使用することができる。
【0061】
これらの中でも、耐透湿性(モイスチャーバリア性)の観点から、水分が通過する通気孔が少ないものが好ましく、無孔プラスチックフィルムが特に好ましい。また、プラスチックフィルムは、作業性の観点から、透明性を有することが好ましい。また、ガスケット材の配置後に、ガスケット材を貫通するボルト締めを行なう場合などには、基材シートとしては、ガラス繊維製シート(特に、ガラスクロス)を使用することが、ボルト締め時の作業性や剥離時の強度付与等の観点から好ましい。また、ガラス繊維性シートの目付けは、5〜1000g/m2の範囲であることが、強度や透明性の点から好ましく、ガラス繊維の太さ(直径)は、0.01〜1mm程度が好適である。また、ガラスクロスの場合、その形態としては、平織り、朱子織、綾織、ななこ織などが挙げられる。また、ガラスクロスはシランカップリング剤による表面処理を施すことで、粘着層との接着性を向上できる。
【0062】
基材シート1の厚みは、シートの材質、形態等によっても異なるが、一般的には、2〜1000μm、好ましくは5〜500μm、最も好ましくは5〜200μmの範囲から選択される。
【0063】
本発明のガスケット材110は、2つの面の合せ面の間に実装する前は、図2に示されるように、基材シート1の両面に形成された粘着層2、3の少なくとも一方に剥離シート4が積層された粘着テープ様(図3)のロール状物200として構成するのが好ましく、該ロール状物は、例えば、以下に示す方法によって製造される。図4はかかる製法の工程別の断面図である。
【0064】
(1)まず、A〜C成分を、必要に応じて有機溶剤とともに、真空機能を備えた攪拌装置に仕込み、真空状態(真空下)で攪拌することで脱泡し、脱泡された混合物(組成物)を調製する。
【0065】
(2)次に、かかる脱泡処理後のA〜C成分を含む組成物(混合物)5を、両面が離型処理された剥離シート4の片面に所定厚みとなるように塗布(流延)し(図4(A))、所定の熱処理を行なって、A〜C成分を含む組成物(混合物)5を硬化させ、硬化物による粘着層2を形成する(図4(B))。なお、硬化反応は、A成分(1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体)中のアルケニル基が、ヒドロシリル化触媒(C成分)の存在下、B成分の1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物のヒドロシリル基(Si−H結合を有する基)でヒドロシリル化されて架橋構造が進行することによって成される。
【0066】
(3)次に、硬化物による粘着層2の表面に基材シート1を貼り合わせる(図4(C))。
【0067】
(4)別の剥離シート6を用意し、(2)と同様に、脱泡処理後のA〜C成分を含む組成物(混合物)5を剥離シート6上に所定厚みとなるように塗布(流延)し(図4(D))、所定の熱処理を行なって、A〜C成分を含む組成物(混合物)5を硬化させて、硬化物による粘着層3を形成する(図4(E))。得られた粘着層3を基材シート1の他面(粘着層非形成面)に貼り合わせた後(図4(F))、別の剥離シート6を剥離し、この後、ロール状に巻き取る(図2)。
【0068】
剥離シートへの混合物の塗布は、例えば、グラビア、キス、コンマ等のロールコーター、スロット、ファンテン等のダイコーター、スクイズコーター、カーテンコーター等の公知の塗布装置によって行うことができる。また、熱処理条件としては50〜200℃(好ましくは100〜160℃)で、0.01〜24時間(好ましくは0.05〜4時間)程度加熱するのが好ましい。なお、真空機能を備えた攪拌装置としては、公知の真空装置付攪拌装置を使用すればよく、具体的には、遊星式(公転/自転方式)攪拌脱泡装置やディスパー付脱泡装置等が挙げられる。また、真空脱泡を行う際の減圧の程度としては、10kPa以下が好ましく、3kPa以下がより好ましい。また、攪拌時間は攪拌装置や流動物の処理量によっても異なるが、概ね、0.5〜2時間程度が好ましい。脱泡処理により、形成される粘着層には実質的に気泡(ボイド)が存在せず、それによって高い透明性が得られる。
【0069】
なお、本発明のガスケット材は、上記のような基材シートの両面に形成される粘着層の一方の粘着層のみに剥離シートが積層された形態だけでなく、基材シートの両面の粘着層のそれぞれに剥離シートが積層されたロール状物として形成してもよい。
【0070】
剥離シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル、エチレン−メタクリル酸コポリマーの分子間を金属イオン(Na、Zn2+等)で架橋したアイオノマー樹脂、EVA(エチレン・酢酸ビニルコポリマー)、PVC(ポリ塩化ビニル)、EEA(エチレン・エチルアクリレートコポリマー)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、ポリアミド、ポリブチラール、ポリスチレンなどの熱可塑樹脂;ポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリジエン系、塩ビ系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系、塩素化ポリエチレン系、ポリノルボルネン系、ポリスチレン・ポリオレフィン共重合体系、(水添)ポリスチレン・ブタジエン共重合体系、ポリスチレン・ビニルポリイソプレン共重合体系などのゴム弾性を示す種々の熱可塑性エラストマー;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンに熱可塑エラストマーをブレンドしたもの等からなる単層のフィルム(シート)の片面に離型処理を施したもの;ポリオレフィン(ポリプロビレン(PP)又はポリエチレン(PE)等)/熱可塑性樹脂(例えば、EVA)/ポリオレフィン、ポリオレフィン(PP又はPE)+熱可塑性エラストマー/ポリオレフィン(PP又はPE)、PP/PE/PPなどの多層(積層)、ポリオレフィン+熱可塑性エラストマーのブレンド比を変えた複合系の多層(積層)等の多層(積層)のフィルム(シート)の片面に離型処理を施したもの等が挙げられる。また、含浸紙、コート紙、上質紙、クラフト紙、布、アセテート布、不織布、ガラス布等の片面に離型処理を施したものも使用できる。
【0071】
離型処理剤としては、例えば、シリコーン系離型剤、フッ素系離型剤、長鎖アルキル系離型処理剤等を挙げることができ、中でも、シリコーン系離型処理剤が好ましく、硬化方法としては、紫外線照射や電子線照射等の硬化方法を用いるのが好ましい。さらに、シリコーン系離型処理剤の中でもカチオン重合性の紫外線硬化型シリコーン系離型処理剤が好ましい。カチオン重合性の紫外線硬化型シリコーン系離型処理剤は、カチオン重合型のシリコーン(分子内にエポキシ官能基を有するポリオルガノシロキサン)とオニウム塩系光開始剤を含む混合物であるが、オニウム塩系光開始剤がホウ素系光開始剤からなるものが特に好ましく、このようなオニウム塩系光開始剤がホウ素系光開始剤からなるカチオン重合性の紫外線硬化型シリコーン系離型処理剤を使用することで特に良好な剥離性(離型性)が得られる。カチオン重合型のシリコーン(分子内にエポキシ官能基を有するポリオルガノシロキサン)は、1分子中に少なくとも2個のエポキシ官能基を有するものであって、直鎖状のもの、分岐鎖状のものまたはこれらの混合物であってもよい。ポリオルガノシロキサンに含有されるエポキシ官能基の種類は特に制限されないが、オニウム塩系光開始剤によって開環カチオン重合が進行するものであればよい。具体的には、γ−グリシジルオキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、β−(4−メチル−3,4エポキシシクロヘキシル)プロピル基などが例示できる。かかるカチオン重合型のシリコーン(分子内にエポキシ官能基を有するポリオルガノシロキサン)は上市されており、市販品を使用することができる。例えば、東芝シリコーン社製のUV9315、UV9430、UV9300、TPR6500、TPR6501等、信越化学工業社製のX−62−7622、X−62−7629、X−62−7655、X−62−7660,X−62−7634A等、荒川化学社製のPoly200、Poly201、RCA200、RCA250、RCA251等を挙げることができる。
【0072】
カチオン重合性のシリコーンの中でも下記の構造単位(A)〜(C)からなるポリオルガノシロキサンが特に好ましい。
【0073】
【化10】

【0074】
また、かかる構造単位(A)〜(C)からなるポリオルガノシロキサンにおいては、構造単位(A)〜(C)の組成比((A):(B):(C))が50〜95:2〜30:1〜30(mol%)であるものが特に好ましく、50〜90:2〜20:2〜20(mol%)であるものがとりわけ好ましい。なお、かかる構造単位(A)〜(C)からなるポリオルガノシロキサンはPoly200、Poly201、RCA200、X−62−7622、X−62−7629、X−62−7660として入手できる。
【0075】
一方、オニウム塩系光開始剤としては、公知のものを特に制限無く使用できる。具体例としては、例えば、(R、ArN、又は(R、(これらの式中、Rはアルキル基および/またはアリール基を、Arはアリール基を、Xは[B(C]、[B(C]、[B(CCF]、[(CBF]、[CBF]、[B(C]、BF、PF、AsF、HSO、またはClO等を示す。)で表される化合物が挙げられるが、これの中でも、式中のXが[B(C]、[B(C]、[B(CCF]、[(CBF]、[CBF]、[B(C]又はBFである化合物(ホウ素系光開始剤)が好ましく、特に好ましくは(R[B(C](式中、Rは置換又は非置換のフェニル基を示す)で表わされる化合物(アルキルヨードニウム,テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート)である。なお、オニウム塩系光開始剤として、従来からアンチモン(Sb)系開始剤が知られているが、アンチモン(Sb)系開始剤を使用した場合、重剥離化が起こり、透明粘着シートを剥離シートから剥離しにくい傾向となる。
【0076】
オニウム塩系光開始剤の使用量は特に制限されるものではないが、カチオン重合型のシリコーン(ポリオルガノシロキサン)100重量部に対して、0.1〜10重量部程度とするのが望ましい。使用量が0.1重量部より少ないと、シリコーン剥離層の硬化が不十分となるおそれがある。また使用量が10重量部より多いと、コスト面において実用的ではない。なお、カチオン重合型のシリコーン(ポリオルガノシロキサン)とオニウム塩系光開始剤を混合する際、オニウム塩系開始剤を有機溶剤に溶解または分散させてポリオルガノシロキサンに混合してもよい。有機溶剤の具体例としては、イソプロピルアルコール、n−ブタノール等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤;酢酸エチル等のエステル系溶剤などが挙げられる。
【0077】
離型処理剤の塗布は、例えば、ロールコーター法、リバースコーター法、ドクターブレード法等の一般的な塗工装置を用いて行うことができる。離型処理剤の塗布量(固形分量)は特に限定はされないが、一般に0.05〜6mg/cm程度である。
【0078】
本発明のガスケット材において、基材シート1の両面に形成する粘着層2、3の厚みは特に限定されないが、ハンドリング性や耐透湿性(モイスチャーバリア性)の観点から、粘着層2、3ともに、50μm以上であるのが好ましく、500μm以上が特に好ましい。ただし、厚みが大きすぎると、ハンドリング性が悪化する傾向となるため、その上限は1000μm以下が好ましく、800μm以下がより好ましい。
【0079】
本発明のガスケット材における粘着層2、3は弾力性及び圧縮性に優れるとともに高い透明性を有する。従って、機械や機器内の所定の2つの面の合わせ面の間に介在させる際に、ガスケット材越しに粘着層を密着させる面(シール面)を確認しながら作業を行なうことができるため、本発明のガスケット材はその位置決めを容易に行なうことができるという利点も有する。
【0080】
また、本発明のガスケット材の接着力は、特に限定するものではないが、シール性の観点からは、後述する被着体をSUS板とした時の初期接着力が2N/25mm以上であることが好ましい。
【0081】
本発明のガスケット材は、2つの面の合わせ面の間にガスケット材を介在させた後は、2つの合わせ面の間を隙間なく密閉し、優れたシール性能が持続するとともに、メンテナンス時等の剥離時には、被着体に粘着層を残すことなく優れた再剥離性を実現できる。
一方、2つの面の合わせ面の間にガスケット材を介在させた後は、経時により粘着層2、3の剥離力が向上して、2つの合わせ面の間を隙間なく密閉し、優れたシール性能が持続する。
【0082】
また、本発明のガスケット材における粘着層2、3は、−30℃でのせん断貯蔵弾性率(G’)が6.0×10(Pa)以下、好ましくは5.5×10(Pa)以下を示す。せん断貯蔵弾性率(G’)は粘弾性体の硬さの指標として知られるが、本発明のガスケット材における粘着層は、−30℃でのせん断貯蔵弾性率(G’)が6.0×10(Pa)以下であり、低温で剛直化しないため、氷点下の温度下でも、高い柔軟性を維持すると考えられる。また、温度−時間換算則を考慮すると、ある温度における高速の変形に対しては、より低温での粘弾性体の特性が影響する。そのため、−30℃における粘着力を議論する際には、より低温での粘弾性挙動を考慮する必要がある。本発明のガスケット材における粘着層2、3は、−50℃におけるせん断貯蔵弾性率も6.0×10以下である。そのため、低温での接着安定性が非常に優れていると考えられる。ここでいう「せん断貯蔵弾性率(G’)」は以下の方法で測定される。
【0083】
[せん断貯蔵弾性率(G’)]
剥離シートの離型処理面に粘着層を形成したサンプルを複数作成し、得られた粘着層同士を貼り合せて厚みが約0.5〜1mmの積層体とする。該積層体を直径7.9mmの円形に打抜いたものを測定試料とし、以下の方法で測定する。
測定装置:Rheometric Scientific社製 ARES
測定条件:測定温度 −30℃及び−50℃
測定周波数 1Hz(6.28rad/sec)
【0084】
本発明のガスケット材は、種々の技術分野の機械や機器、構造物中の2つの面の合せ面の間の密閉に使用することができる。例えば、航空機、車、電車等におけるシール用途(例えば、機体や車両の外板(ボディー)への各種の機器や機材の装着部でのシール等)、家屋やビル等の建築物におけるシール用途等を挙げることができる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例を示して、本発明をより具体的に説明する。なお、実施例のガスケット材の物性評価(試験)は次の方法で行った。
【0086】
[物性評価]
1.対SUS初期接着力
実施例で得られたガスケット材の片面の粘着層に、厚み25μmのPETフィルムを貼り合わせ、25mm幅に切断してサンプルを作成した。サンプルの他方の粘着層をSUS304板に2kgローラを1往復させて貼り付け、室温で30分放置後、引張試験機を使用して、引張速度300mm/分、剥離角度180°にて初期接着力を測定した。
2.再剥離性
実施例で得られたガスケット材の片面の粘着層に、厚み25μmのPETフィルムを貼り合わせ、25mm幅に切断してサンプルを作成した。サンプルの他方の粘着層をSUS304板に2kgローラを1往復させて貼り付け、温度:23℃、湿度:65%RHの環境下に240時間放置後、サンプルをSUS板から手で剥離した際のガスケット材の破壊状況を観察した。このとき、ガスケット材が破壊することなく、被着体の界面で剥離した場合を○、ガスケット材が破壊して被着体に粘着層の残片が残った場合を×とした。
【0087】
(実施例1)
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体に、B成分であるヒドロシリル化合物(そのヒドロシリル基量がA成分のポリオキシアルキレン系重合体のアルケニル基量に対して官能基比で0.58となる量)およびC成分であるヒドロシリル化触媒を含む組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム製剥離ライナーの表面に塗布し、加熱処理することで、厚さ500μmの粘着層を形成した。基材シートとしてのガラスクロスの両面に、前記粘着層を貼り合わせることで、ガスケット材を作製した。
【0088】
(実施例2)
A成分であるポリオキシアルキレン系重合体に、B成分であるヒドロシリル化合物(そのヒドロシリル基量がA成分のポリオキシアルキレン系重合体のアルケニル基量に対して官能基比で0.65となる量)およびC成分であるヒドロシリル化触媒を含む組成物を、ポリエチレンテレフタレートフィルム製剥離ライナーの表面に塗布し、加熱処理することで、厚さ800μmの粘着層を形成した。基材シートとしての厚さ60μmのポリオレフィンフィルム(リアクターTPO)の両面に、前記粘着層を貼り合わせることで、ガスケット材を作製した。
【0089】
【表1】

【0090】
表1から分かるように、実施例1及び実施例2のガスケット材はともに優れた接着性と再剥離性を有するものであった。
【符号の説明】
【0091】
1 基材シート
2、3 粘着層
4 剥離シート
5 A〜C成分を含む組成物
100、110 ガスケット材
200 ロール状物形態にしたガスケット材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シートの両面に粘着層を形成してなるガスケット材であって、該粘着層が、下記A〜C成分を含む組成物の硬化物からなるガスケット材。
A:1分子中に少なくとも1個のアルケニル基を有するポリオキシアルキレン系重合体
B:1分子中に平均2個以上のヒドロシリル基を有する化合物
C:ヒドロシリル化触媒
【請求項2】
基材シートがガラス繊維製シートである、請求項1記載のガスケット材。
【請求項3】
ガラス繊維製シートがガラスクロスである、請求項2記載のガスケット材。
【請求項4】
基材シートがプラスチックフィルムである、請求項1記載のガスケット材。
【請求項5】
基材シートが無孔プラスチックフィルムである、請求項1記載のガスケット材。
【請求項6】
基材シートの両面に形成された粘着層の少なくとも一方に剥離シートが積層されてなる、請求項1〜5のいずれか1項記載のガスケット材。
【請求項7】
剥離シートが、カチオン重合型のシリコーンとオニウム塩系光開始剤を含むカチオン重合性の紫外線硬化型シリコーン系離型処理剤で剥離処理されたものである、請求項6記載のガスケット材。
【請求項8】
2つの面の合せ面の間に介在させるものである、請求項1〜5のいずれか1項記載のガスケット材。
【請求項9】
請求項1〜5のいずれか1項記載のガスケット材を2つの面の合せ面の間に介在させて成ることを特徴とするシール構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−13645(P2010−13645A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154623(P2009−154623)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】