説明

ガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体

【課題】めっき性に優れ、機械的特性および外観が良好で、電磁波シールド材料に適したガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体を提供する。
【解決手段】ポリオレフィン樹脂組成物を樹脂マトリックス成分とするシート状架橋樹脂発泡体であり、厚みが0.1mm〜1.0mm、25%圧縮固さが25〜100kPa、少なくとも片面の平均粗さが10μm〜30μm、かつ表面濡れ指数が40mN/m以上であることを特徴とするガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めっき性に優れ、機械的特性および外観が良好で、電磁波シールド用ガスケットに適したポリオレフィン樹脂架橋発泡体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年では、電子機器が広く一般家庭でも利用されているが、販路や用途の拡大に伴いこれらの電子機器から漏れる電磁波が他の電子機器に誤動作を起こさせたり、通信機器に電波障害を起こさせたりするという問題があった。
【0003】
この対策には、電磁波シールドガスケットや電磁波吸収体が使用されているが、最近の電子機器の小型化、薄型化、機器種類の増加によって、電磁波防止性能だけではなく、安価で、装填作業が容易で、かつ様々な形状に成型可能なガスケット材が要求されている。
【0004】
従来から実用化され使用に供されているガスケット材としては、ウレタンフォームに無電解めっきしたもの(例えば、特許文献1参照)があるが、このガスケット材は、オレフィンフォームと比較して高価であり、しかも0.1〜1.0mmのシート状のフォームを得にくいという問題があった。
【0005】
また、合成樹脂多孔体シートの両面に繊維状織物を積層し、その全体に無電解めっきしたもの(例えば、特許文献2参照)も実用されているが、このガスケット材は、加工に多大な手間を要するため、コストアップになるという問題があった。
【0006】
さらに、合成樹脂に導電性塗料を塗布したもの(例えば、特許文献3参照)は、実用に際して塗布した導電材料が表面から剥がれ、シールド性能が低下し易いという問題があった。
【特許文献1】特開平11−214886号公報
【特許文献2】特開平11−220283号公報
【特許文献3】特開平10−183358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、厚さが0.1〜1.0mmと薄く、しかも長尺であってもめっき性に優れ、機械的特性および外観が良好で、電磁波シールドガスケットに適したポリオレフィン樹脂架橋発泡体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明によれば、ポリオレフィン樹脂組成物から構成され、厚みが0.1mm〜1.0mm、25%圧縮固さが25〜100kPa、少なくとも片面の平均粗さが10μm〜30μm、かつ該表面の表面濡れ指数が40mN/m以上であることを特徴とするガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体、である。
【0010】
なお、本発明のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体においては、ゲル分率が15〜60%であること、ポリオレフィン樹脂組成物がポリエチレン系樹脂を50〜100重量%含有すること、ポリオレフィン樹脂組成物がアクリル樹脂を5〜30重量%含有していること、前記アクリル樹脂がエチレン−アルキルアクリレート共重合体であること、がいずれも好ましい条件として挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、以下に説明するとおり、厚さが0.1〜1.0mmと薄く、しかも長尺であってもめっき性に優れ、機械的特性および外観が良好で、電磁波シールド材料に適したガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体を効率的に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0013】
本発明のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体は、ポリオレフィン樹脂組成物から構成されることが特徴である。
【0014】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物に用いられるポリオレフィン系樹脂は、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン(PP)、ポリ−1−ブテン、1,2−ポリブタジエン及びその水素添加物、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1−ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、およびエチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエン3元共重合体等が挙げられる。
【0015】
これらのポリオレフィン系樹脂の重合方法は特に制限はなく、高圧法、スラリー法、溶液法および気相法等の何れでも良く、重合触媒についても、チーグラー触媒やメタロセン触媒等、特に制限されるものではない。これらのポリオレフィン系樹脂は、目的とする樹脂組成物および発泡体の特性に応じて、必要であれば2種類以上用いても良いし、機能を付与する目的で、カルボン酸等で変性されたものであっても良い。
【0016】
本発明のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体を構成するポリオレフィン樹脂組成物は、主として上記ポリオレフィン系樹脂を含有し、好ましくは50重量%以上含有する。より好ましくはポリオレフィン樹脂組成物100重量%がポリエチレン系樹脂を50〜100重量%含有することが好ましい。さらに好ましくは、ポリオレフィン樹脂組成物100重量%がポリエチレン系樹脂を70〜95重量%含有する態様である。
【0017】
本発明で使用されるアクリル樹脂としては、エチレン−アルキルアクリレート共重合体が好適である。ここでいうエチレン−アルキルアクリレート共重合体とは、エチレンとアルキルアクリレートとの共重合体である。これらは交互共重合体であっても、ランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。アルキルアクリレートの具体例としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレートのような炭素数1〜4のアルキルのアクリレートを挙げることができる。好ましいエチレン−アルキルアクリレート共重合体は、エチレン−エチルアクリレート(EEA)共重合体である。
【0018】
こうした特性を備えたエチレン−アルキルアクリレート共重合体は、通常、高圧ラジカル重合法で製造される。また、市販のエチレン−アルキルアクリレート共重合体も使用できる。例えば、日本ユニカー社からNUC−6170の商品名で入手可能なエチレン−エチルアクリレート共重合体などがある。
【0019】
本発明のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体を構成するポリオレフィン樹脂組成物は、上記アクリル樹脂を5〜30重量%含有することが好ましく、より好ましくは10〜20重量%含有する態様である。ポリオレフィン樹脂組成物100重量%にアクリル樹脂の含有量が5重量%未満であると、ガスケット用ポリオレフィン樹脂発泡体の柔軟性がやや劣り、また無電解めっきの金属が剥がれやすくなってしまうことがある。一方、ポリオレフィン樹脂組成物100重量%にアクリル樹脂の含有量が30重量%を超えると、ガスケット用ポリオレフィン樹脂発泡体が柔軟なために架橋発泡体長尺シートをロール状に巻き取ったあと、経時で密着してしまい、シート状に取り出せなくなってしまうことがある。
【0020】
そして、本発明のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体は、導電性シールド材として、25%圧縮固さが25〜100kPaのものであることが重要であり、より好ましくは40〜80kPaである。25kPaを下回ると発泡体の強度が不足し、加工時の折れ曲がりなどの加工不具合が生じ、100kPaを超えると弾力性がなく、導電性シールド材の密閉性能が劣ってしまうという問題がある。なお、25%圧縮固さはJISK6767に基づき、測定されるものである。
【0021】
圧縮固さは選択する樹脂本来の柔らかさと添加する発泡剤から生成するガス量に依存し、いずれの組み合わせにおいても、25%圧縮固さ25〜100kPaを満たすものであり、一例としては低密度ポリエチレン樹脂で有機系熱分解型発泡剤としては、アゾジカルボンアミドを用いて240Cで熱分解させる場合は、発泡剤添加量で調整し、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して3〜8重量部とすることが重要となる。
【0022】
そして、本発明のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体は、メッキ定着性を維持するために、少なくとも一方の面の平均表面粗さが10〜30μmであることが重要であり、より好ましくは15〜25μmである。表面粗さが10μm未満であると、メッキ処理時のアンカー効果が十分に発揮されず、メッキ加工性が低下傾向となり、30μmを超えると表面凸凹により、導電性シールド材の密閉性能が劣ってしまうという問題がある。他面については、特に規定されるものではないが、10〜30μmが好ましく、通常2〜50μm程度が実用レベルである。
【0023】
上記表面粗さを得るために、一般的なポリオレフィン樹脂架橋発泡体の表面粗さは10μm以下であり、本発明では、ポリオレフィン樹脂架橋発泡体を厚み方向に2分割スライス加工し、気泡断面を表面化し、その後、加熱延伸圧縮することで所望の表面粗さを得るものである。2分割スライス加工した直後は表面粗さは30μm以上となっている。
【0024】
本発明で言う表面粗さとはJISB0601−1994に基づくRaで示されるものであり、粗さ曲線からその平均線の方向に基準長さだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線の方向X軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をY=F(X)で表したときに、次の式によって求められる値をマクロメートル(μm)で表したものをいう。
【0025】
【数1】

【0026】
本発明では、株式会社小坂研究所製の表面粗さ測定器SE−2300を使用し、基準長さ30mm、測定スピード0.5mm/S、カットオフ2.5mmにて測定した。
【0027】
さらに、本発明のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体は、少なくとも片面の表面濡れ指数が40mN/m以上、特に48mN/m以上であることが好ましい。なお、表面濡れ指数が40mN/m以上と制御することが重要な面は、上記平均表面粗さ10〜30μmと制御した面と同一の面であることが重要である。表面濡れ性を付与する手段としては、通常、コロナ放電処理を利用する。表面濡れ指数が40mN/m未満であると、無電解メッキの接着力が弱く、簡単にメッキ層が剥離してしまうという問題がある。また、濡れ指数60mN/mを超える濡れ性を付与しようと試みると発泡体に放電孔と呼ばれる貫通孔が開き、発泡体としての実用性が損なわれるため、濡れ指数は60mN/m以下であることが好ましい。なお、濡れ指数は、和光純薬工業(株)製の濡れ張力用混合液No.30〜58を使いJISK6768に準拠し、評価したものである。
【0028】
本発明において、上記ガスケット用ポリオレフィン樹脂発泡体を構成するポリオレフィン樹脂組成物を架橋する方法は特に限定されず、例えば、電離性放射線を所定線量照射する方法、過酸化物による架橋、シラン架橋などを挙げることができる。この中でも架橋の均一性、生産安定性を考慮し電離性放射線照射が好ましい。
【0029】
電離性放射線としては、例えば、α線、β線、γ線、電子線等を挙げることができる。電離性放射線の照射線量は、目的とする架橋度等によって異なるが、通常1〜500kGy、好ましくは5〜300kGyであり、ゲル分率として、通常15〜60%となる。照射線量が少なすぎると得られる発泡体の耐熱性が不十分となり、多すぎると得られる発泡体の成形加工性が低下する。
【0030】
また、ポリオレフィン樹脂組成物のみでは架橋構造を導入することが困難な場合には、架橋助剤を用いて上記方法と併用することで架橋構造を導入することができる。架橋助剤としては特に制限はないが、多官能モノマーを使用するのが好ましい。多官能モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、1,10−デカンジオールジメタクリレート、トリメリット酸トリアリルエステル、トリアリルイソシアヌレート、エチルビニルベンゼンなどを使用することができる。これらの多官能モノマーは、それぞれ単独で用いても、あるいは2種以上を組み合わせて使用しても良い。これらの多官能モノマーは、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して好ましくは0.5〜10重量部添加される。
【0031】
本発明において、ポリオレフィン樹脂組成物を発泡する方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。好ましくは熱分解型発泡剤をポリオレフィン樹脂組成物に添加する方法が用いられ、特に好ましくは有機系熱分解型発泡剤が用いられる。
【0032】
有機系熱分解型発泡剤としては、具体的には、アゾジカルボンアミド、ベンゼンスルホニルヒドラジド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、トルエンスルホニルヒドラジド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾジカルボン酸バリウム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、併用してもよい。有機系熱分解型発泡剤は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは1〜25重量部の割合で添加される。有機系熱分解型発泡剤の添加量は、少なすぎると樹脂組成物の発泡性が低下し、多すぎると得られる発泡体の強度、並びに耐熱性が低下する傾向がある。
【0033】
熱分解型発泡剤を用いた場合の発泡は、架橋した樹脂組成物を該発泡剤の熱分解温度以上に加熱することで通常行われる。
【0034】
そして、本発明のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体のゲル分率は、耐熱性と高温での成形加工性を維持するために15〜60%であることが好ましく、より好ましくは20〜40%である。ゲル分率が15%未満であると発泡体の耐熱性が低下傾向となり、60%を超えると発泡体の伸びが低下し、成形加工性が低下傾向となる。
【0035】
なお、本発明でいうゲル分率とは、以下の方法にて算出した値のことである。すなわち、ポリオレフィン系樹脂発泡体を約50mg精密に秤量し、120℃のキシレン25mlに24時間浸漬した後、200メッシュのステンレス製金網で濾過して、金網状の不溶解分を真空乾燥する。次いで、この不溶解分の重量を精密に秤量し、以下の式に従ってゲル分率を百分率で算出した値である。
【0036】
ゲル分率(%)={不溶解分の重量(mg)/秤量したポリオレフィン樹脂発泡体の重量(mg)}×100
本発明のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体においては、本発明の目的が損なわれない範囲内で、フェノール系、リン系、アミン系、イオウ系等の酸化防止剤、金属害防止剤、難燃剤、充填剤、帯電防止剤、熱安定剤、顔料などを添加してもよい。
【0037】
また、易接着性ポリオレフィン架橋発泡体の厚さの調整方法は、特に限定はなく、加熱発泡時に0.1〜1.0mmの所定の厚みに成型する方法、得られたフォームの厚みをロールあるいはオーブン中で加熱したあと、長手方向、あるいは幅方向に拡幅して成型品を得る方法、発泡体を厚み方向にスライスする方法及びそれを加熱延伸する方法、搬送ロール中で圧縮処理を行う方法などが用いられる。特に、得られたフォームを長手方向あるいは/または幅方向に拡幅する方法で得られた架橋発泡体は厚みムラが小さくなり、その結果、シールド部品のバラツキが小さくなることから好ましい。
【0038】
なお、厚さが0.1mmよりも薄いとフォームの弾力性がなく、導電性シールド材の密閉性能が劣り、また、1.0mmを超えるものは導電性シールド材として、従来技術のウレタン発泡体などでも十分代替可能な領域であり、本発明の意図するものではない。
【0039】
次に、本発明のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体の好ましい製造方法について説明する。
【0040】
まず、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、架橋助剤、熱分解型発泡剤よりなる組成物の所定量を、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダーミキサー、ミキシングロール等の混練装置を用いて、熱分解型発泡剤の分解温度未満で均一に溶融混練し、これをシート状に成形する。次いで、得られたシートに電離性放射線を所定線量照射してオレフィン系樹脂を架橋させる。電離性放射線としては、電子線、X線、β線、γ線等が使用される。照射線量は、一般に1〜300kGy程度であり、所望のゲル分率に応じて線量が設定される。また、電離性放射線照射による架橋にかえて、過酸化物による架橋や、シラン架橋を行っても良い。次いで、この架橋シートを例えば、熱風、赤外線、メタルバス、オイルバス、ソルトバス等により、熱分解型発泡剤の分解温度以上、且つ樹脂の融点以上の温度、例えば190〜290℃に加熱して発泡させる。さらに、得られた発泡体を厚み方向に2分割スライスし、その後シート表面温度が130〜170℃まで加熱後、ロール間速度差をつけることで長手方向に1.1〜2.5倍もしくは幅方向に1.1〜2.5倍まで拡幅し、その後、コロナ放電処理を行い、ロール状に巻き取ることで、上記の特性を備えたガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体を低価格で効率的に製造することができる。
【実施例】
【0041】
次に、本発明の実施例を説明する。
なお、実施例に用いた評価は以下の方法で行った。
[厚み]
JIS K 6767に従って測定を行った。
[表面濡れ指数]
JIS K 6768の濡れ試験方法に従って測定された値。
[表面粗さ]
JIS B 0601の表面粗さ測定法に準拠して株式会社小坂研究所製の表面粗さ測定器SE−2300を用いて測定長30mm、測定スピード0.5mm/S、カットオフ2.5mm設定にて測定したRa値。
[25%圧縮固さ]
JIS K 6767に従って測定を行った。
[テープ加工特性]
テープ加工性は1000mm幅の長尺シートから、10mm幅スリット製品を得る場合にシワが全く混入しない製品を◎、シワは入るが軽度であり実用上問題ない製品を○、実用上問題となるシワが混入した製品を×とした。
[テープ耐熱性]
テープ耐熱性は100℃、60分の加熱後、測定前の距離の収縮率が30%以下のものを◎、30%より大きく40%以下を○、40%より大きく50%以下を△、50%を超えるものを×とした。
[テープ弾力性]
テープ弾力性は、25%圧縮硬さ(JIS6767準拠)が40kPa以上80kPa未満を◎、30kPa以上40kPa未満または80kPa以上90kPa未満を○、25kPa以上30kPa未満または90kPa以上100kPa未満を△、25kPa未満、または100kPa以上を×とした。
[めっき特性]
架橋樹脂発泡体成形品を苛性ソーダ(20g/L)溶液中で40℃、5分間親水化処理を行った。
【0042】
水洗後、塩酸水溶液(10%)で中和処理を行った後、塩化すず(2g/L)、塩化パラジウム(0.2g/L)、および塩酸(100ml/L)を含む触媒液中で、室温により2分間浸漬し、触媒処理を行った。さらに水洗後、硫酸水溶液(5%)中で活性化処理した架橋樹脂発泡体成形品を下記の無電解銅めっき浴(めっき浴1)に45℃、5分間浸漬し、無電解銅めっき処理を行った。
めっき浴1:
硫酸銅5水和物10g/L
ホルムアルデヒド(37%)10g/L
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)40g/L
酒石酸カリウムナトリウム5g/L
苛性ソーダ 12g/L
続いて、塩化パラジウム(0.2g/L)および塩酸(100ml/L)を含む触媒液中で2分間浸漬し、触媒処理を行った後、下記の無電解ニッケルめっき浴(めっき浴2)中に60℃、3分間浸漬し、無電解ニッケルめっき処理を行い、金属めっき発泡樹脂を得た。
めっき浴2:
硫酸ニッケル6水和物 20g/L
次亜リン酸ナトリウム1水和物30g/L
酢酸ナトリウム5g/L
クエン酸3ナトリウム30g/L
pH 4.8
得られた金属めっき発泡体を、十分乾燥させたあと、めっき済み発泡体を折り曲げ、めっきが全く剥がれないものを◎、局所的に一部はがれるが実用上問題のないものを○、めっきが剥がれ、実用上機能を満たさないものを×と評価した。
【0043】
[実施例1]
メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づき、温度190℃、荷重2.16kgfの通常の条件で測定されるもので、MFRが6.5g/10分、密度が0.933kg/mのポリエチレン100kg、発泡剤としてアゾジカルボンアミド5.0kg、安定剤として“イルガノックス”1010(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)0.45kg、“イルガノックス”PS802(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)0.3kgを準備し、ポリエチレン樹脂、発泡剤、安定剤をヘンシェルミキサーに投入し、200〜400rpmの低速回転で約3分混合し、次いで800〜1000rpmの高速回転とし、3分間混合して発泡用樹脂組成物とした。
【0044】
この発泡用樹脂組成物を発泡剤の分解しない温度、具体的には150℃に加熱したベント付き押出し機に供給、Tダイから押し出し、厚みが0.7mmの架橋発泡用シートに成型した。
【0045】
このシートに80kGyの電子線を照射し、架橋した後、240℃に加熱した溶融アルカリ金属塩浴上で3分間加熱し、発泡剤を分解し発泡体を得た。
【0046】
このようにして得られた架橋樹脂発泡体は、厚み1.2mmであった。この発泡体を厚み方向に2分割スライス加工し、さらにRHヒーターにて120℃に加熱し、ロール差速により150%縦延伸かつ鏡面ニップロールによる圧縮後、コロナ放電処理を行った所、スライス加工で新たに出現した表面の平均表面粗さ15μm、25%圧縮固さは45kPa、濡れ指数48mN/m、ゲル分率は30%であった。評価結果を表1に示す。
【0047】
[実施例2]
ポリオレフィン樹脂として、プロピレンにエチレンを5.2重量%ランダム共重合し、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づき、温度230℃、荷重2.16kgfの通常の条件で測定されるもので、MFRが2.2g/10分、密度が0.901kg/mのポリプロピレン樹脂65kg、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づき、温度190℃、荷重2.16kgfの通常の条件で測定されるもので、MFRが9.5g/10分、密度が0.933kg/mのポリエチレン35kg、安定剤として“イルガノックス”1010(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)0.45kg、“イルガノックス”PS802(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)0.3kg、発泡剤としてアゾジカルボンアミド5.0kg、ジビニルベンゼン3.0kgを準備し、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、発泡剤、安定剤をヘンシェルミキサーに投入し、200〜400rpmの低速回転で約3分混合し、次いで800〜1000rpmの高速回転とし、3分間混合して発泡用樹脂組成物とした。
【0048】
この発泡用樹脂組成物を発泡剤の分解しない温度、具体的には190℃に加熱したベント付き押出し機に供給、Tダイから押し出し、厚みが0.9mmの架橋発泡用シートに成型した。
【0049】
このシートに200kGyの電子線を照射し、架橋した後、240℃に加熱した溶融アルカリ金属塩浴上で3分間加熱し、発泡剤を分解し発泡体を得た。
【0050】
このようにして得られた架橋樹脂発泡体は、厚み1.6mmであった。この発泡体を厚み方向に2分割スライス加工し、さらにRHヒーターにて140℃に加熱し、ロール差速により150%縦延伸かつ鏡面ニップロールによる圧縮後、コロナ放電処理を行った所、スライス加工で新たに出現した表面の平均表面粗さ20μm、25%圧縮固さは81kPa、濡れ指数48mN/m、ゲル分率は40%であった。評価結果を表1に示す。
【0051】
[実施例3]
メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づき、温度190℃、荷重2.16kgfの通常の条件で測定されるもので、MFRが6.5g/10分、密度が0.933kg/mのポリエチレン80kg、エチレン−エチルアクリレート共重合体(20%エチルアクリレート含量)を20kg、発泡剤としてアゾジカルボンアミド5.0kg、安定剤として“イルガノックス”1010(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)0.45kg、“イルガノックス”PS802(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)0.3kgを実施例1と同様の方法で混練し、Tダイから押し出し、厚みが0.5mmの架橋発泡用シートに成型した。
【0052】
このシートに60kGyの電子線を照射し、以下実施例1と同様に発泡、スライス、加熱縦延伸かつ鏡面ニップロールによる圧縮後、コロナ放電処理加工をし、スライス加工で新たに出現した表面の平均表面粗さ18μm、25%圧縮固さは43kPa、濡れ指数52mN/m、ゲル分率は23%であった。評価結果を表1に示す。
【0053】
[実施例4]
メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づき、温度190℃、荷重2.16kgfの通常の条件で測定されるもので、MFRが6.5g/10分、密度が0.933kg/mのポリエチレン70kg、エチレン−エチルアクリレート共重合体(20%エチルアクリレート含量)を30kg、発泡剤としてアゾジカルボンアミド4.0kg、安定剤として“イルガノックス”1010(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)0.45kg、“イルガノックス”PS802(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)0.3kgを実施例1と同様の方法で混練し、Tダイから押し出し、厚みが0.7mmの架橋発泡用シートに成型した。
【0054】
このシートに80kGyの電子線を照射し、以下実施例1と同様に発泡、スライス、加熱縦延伸かつ鏡面ニップロールによる圧縮後、コロナ放電処理加工をし、スライス加工で新たに出現した表面の平均表面粗さ22μm、25%圧縮固さは75kPa、濡れ指数50mN/m、ゲル分率は32%であった。評価結果を表1に示す。
【0055】
[実施例5]
ポリオレフィン樹脂として、プロピレンにエチレンを5.2重量%ランダム共重合しメルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づき、温度230℃、荷重2.16kgfの通常の条件で測定されるもので、MFRが2.2g/10分、密度が0.901kg/mのポリプロピレン樹脂60kg、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210(1999年)に基づき、温度190℃、荷重2.16kgfの通常の条件で測定されるもので、MFRが9.5g/10分、密度が0.933kg/mのポリエチレン20kg、アクリル樹脂としてエチレン−エチルアクリレート共重合体(20%エチルアクリレート含量)を20kg、安定剤として“イルガノックス”1010(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)0.45kg、“イルガノックス”PS802(チバ・スペシャルティケミカルズ株式会社製)0.3kg、発泡剤としてアゾジカルボンアミド7.4kg、ジビニルベンゼン3.0kgを実施例2と同様の方法で混練し、Tダイから押し出し、厚みが0.7mmの架橋発泡用シートに成型した。
【0056】
このシートに100kGyの電子線を照射し、以下実施例2同様に発泡、スライス、加熱縦延伸かつ鏡面ニップロールによる圧縮後、コロナ放電処理加工をし、スライス加工で新たに出現した表面の平均表面粗さ13μm、25%圧縮固さは32kPa、濡れ指数48mN/m、ゲル分率は38%であった。評価結果を表1に示す。
【0057】
[実施例6]
樹脂組成物の組成を表1のとおり実施例1と同様にし、実施例1の80kGy電子線照射を50kGy電子線照射とする以外は、実施例1と同様の方法で架橋樹脂発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
【0058】
[実施例7]
樹脂組成物の組成を表1のとおり実施例2と同様にし、実施例2の200kGy電子線照射を300kGy電子線照射以外は、実施例2と同様の方法で行い架橋樹脂発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
【0059】
[比較例1]
樹脂組成物の組成を表1のとおり実施例3と同様にし、スライス加工しない以外は、実施例3と同様の方法を行い架橋樹脂発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
【0060】
[比較例2]
樹脂組成物の組成を表1のとおり実施例5と同様にし、加熱縦延伸・圧縮加工しない以外は、実施例5と同様の方法を行い架橋樹脂発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
【0061】
[比較例3]
樹脂組成物の組成を表1のとおり実施例2と同様にし、実施例2の発泡剤添加量5重量を1.0重量部とする以外は、実施例2と同様の方法で行い架橋樹脂発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
【0062】
[比較例4]
樹脂組成物の組成を表1のとおり実施例3と同様にし、実施例3の発泡剤添加量5重量部を50重量部とする以外は、実施例3と同様の方法で行い架橋樹脂発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
【0063】
[比較例5]
樹脂組成物の組成を表1のとおり実施例3と同様にし、コロナ放電処理加工しない以外は、実施例3と同様の方法を行い架橋樹脂発泡体を得た。その評価結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
実施例1〜7の発泡体は、表面粗さが適度であり、25%圧縮固さも適度であり、表面濡れ指数も高く、めっき特性に優れていた。
【0066】
一方、スライス加工せず、表面粗さが非常に小さい場合(比較例1)は、メッキ加工でのアンカー効果が十分でなく、メッキの欠落が発生した。
【0067】
また、150%延伸加工しない場合(比較例2)は、表面粗さが非常に大きくテープ加工性および弾性力がガスケットとして十分でない。
【0068】
また発泡剤添加量が少なく25%圧縮固さが非常に大きい場合(比較例3)ではフォームの柔軟性が低下し、弾性力が十分でなく、逆に、発泡剤添加量が多く、25%圧縮固さが非常に小さい場合(比較例4)では、フォームとしての腰がなくテープ加工時に問題があると共に、ガスケットとしての耐熱性も十分でない。
【0069】
また表面濡れ指数が低い(比較例5)の場合、メッキ加工でのメッキ欠落が発した。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体は、厚さが0.1〜1.0mmと薄く、しかも長尺であってもめっき性に優れ、機械的特性および外観が良好であるため、電子機器における電磁波シールド材料用途に好ましく使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン樹脂組成物から構成され、厚みが0.1mm〜1.0mm、25%圧縮固さが25〜100kPa、少なくとも片面の平均粗さが10μm〜30μm、かつ該表面の表面濡れ指数が40mN/m以上であることを特徴とするガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体。
【請求項2】
ポリオレフィン樹脂組成物がポリエチレン系樹脂を50〜100重量%含有することを特徴とする請求項1に記載のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体。
【請求項3】
ポリオレフィン樹脂組成物がアクリル樹脂を5〜30重量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体。
【請求項4】
前記アクリル樹脂がエチレン−アルキルアクリレート共重合体であることを特徴とする請求項3に記載のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体。
【請求項5】
ゲル分率が15〜60%であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のガスケット用ポリオレフィン樹脂架橋発泡体。

【公開番号】特開2009−221237(P2009−221237A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−63840(P2008−63840)
【出願日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】