ガスケット
【課題】低反発力で、しかも被取付部材や相手部材の変形等により傾いたり倒れたりしても良好にシール性を確保することができ、また、被取付部材や相手部材の変形や動きが発生した場合であっても、その変形等に良好に追従してシール性を確保することのできるガスケットを提供する。
【解決手段】弾性材料よりなり、被取付部材(シリンダヘッドカバー2)の環状の取付溝4に保持された状態で被取付部材の相手部材(シリンダヘッド3)が圧接されることにより、両部材間をシールする環状のガスケット1であって、少なくとも一部が取付溝4内に配置されて取付溝4に保持される中実保持部17と、中実保持部17と一体に形成され、中実保持部17が記取付溝4に保持された状態にあるときに、取付溝4の外に存在するとともに周方向に連続する密閉中空部19を、内部に有する中空シール部18とを備えている。
【解決手段】弾性材料よりなり、被取付部材(シリンダヘッドカバー2)の環状の取付溝4に保持された状態で被取付部材の相手部材(シリンダヘッド3)が圧接されることにより、両部材間をシールする環状のガスケット1であって、少なくとも一部が取付溝4内に配置されて取付溝4に保持される中実保持部17と、中実保持部17と一体に形成され、中実保持部17が記取付溝4に保持された状態にあるときに、取付溝4の外に存在するとともに周方向に連続する密閉中空部19を、内部に有する中空シール部18とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスケットに関し、より詳しくは反発力を抑えたガスケットに関する。本発明のガスケットは、樹脂部材をシールする際に好適に利用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車部品においては、軽量化等の理由により、金属製のものから樹脂製のものに変更されるケースが多い。
【0003】
樹脂製のカバーやハウジング等にガスケットを取り付ける場合、ガスケットの反発力が大きすぎると、金属製品と比べて剛性の小さい樹脂製品がガスケットの反発力によりクリープ変形して、シール性に悪影響を及ぼす場合がある。このため、樹脂製品に対しては、反発力を抑えたガスケットを用いることが望ましい。
【0004】
そこで、低反発力のガスケットとして、中空部を有するものが知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0005】
図19(a)に示されるように、特許文献1に開示されたガスケット80は、弾性材料よりなり、樹脂製の被取付部材81の取付溝82に装着されている。このガスケット80は、ガスケット80が圧縮される方向(図19(a)の上下方向で、図19(a)のA矢印方向)に沿う断面外形状が圧縮方向に長い長円形をなしており、この長円形の断面形状が周方向に連続する無端の環状体よりなる。そして、ガスケット80は、長円形断面の中央に周方向に連続する円形断面の中空部83を有している。
【0006】
このようなガスケット80に被取付部材81の相手部材84が圧接されて締め付け荷重が作用すると、図19(b)に示されるように、ガスケット80は中空部83が潰れる方向に圧縮されて、長円形断面の長軸長さが短くなる。このとき、圧縮分の反力がガスケット80の内部に発生するが、この反力は、中空部83が設けられている分だけ小さくなる。このため、被取付部材81及び相手部材84間で圧縮されたガスケット80の反力による、樹脂製の被取付部材81等のクリープ変形を抑えることができる。また、中空部83内に封じ込められた空気によって復元力が得られるので、ガスケット80のへたりを抑制することができる。
【0007】
また、図20(a)に示されるように、特許文献2に開示されたガスケット90は、弾性材料よりなり、樹脂製の被取付部材91の取付溝92に装着されている。このガスケット90は、ガスケット90が圧縮される方向(図20(a)の上下方向で、図20(a)のB矢印方向)に沿う断面外形状が圧縮方向に長い略長方形をなしており、この略長方形の断面外形状が周方向に連続する無端の環状体よりなる。そして、ガスケット90は、取付溝92に装着される前の状態において、中央壁部93と、両側の脚部94、95とを有する断面略U字状をなし、両脚部94、95の先端部を互いに圧接させた状態で、また、ガスケット90のほぼ全体が取付溝92内に配置された状態で、該取付溝92に保持されている。そして、このように取付溝92にガスケット90が保持されることで、中央壁部93の内面及び両脚部94、95の基端側の両内面により区画された、周方向に連続する略楕円形断面の中空部96が形成されている。
【0008】
このようなガスケット90に相手部材97のシール壁部98が圧接されて締め付け荷重が作用すると、図20(b)に示されるように、シール壁部98により押圧された中央壁部93の中央部分が中空部96の存在によって変形し、ガスケット90は中空部96が潰れる方向に圧縮される。このとき、圧縮分の反力がガスケット90の内部に発生するが、この反力は、中空部96が設けられている分だけ小さくなる。このため、被取付部材91及び相手部材97のシール壁部98間で圧縮されたガスケット90の反力による、樹脂製の被取付部材91等のクリープ変形を抑えることができる。また、中空部96内に封じ込められた空気によって復元力が得られるので、ガスケット90のへたりを抑制することができる。
【特許文献1】特開2002−349711号公報
【特許文献2】特開2003−222244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献1に開示された従来のガスケット80では、圧縮方向における半分以上の部分が取付溝82内に配置された状態で、該取付溝82に保持されている。そして、被取付部材81の相手部材84からの締め付け荷重がガスケット80に作用していない無荷重状態では、中空部83の大部分が取付溝82内に存在しており、実質的に中実部分のみが取付溝82の外に存在している。
【0010】
このため、例えば樹脂製の被取付部材81が熱膨張により変形したり、被取付部材81に対して相手部材84が相対移動したりすると、取付溝82の外に存在するガスケット80の中実部分が、捻れるように変形して歪んだり、あるいは傾いて倒れたりすることがある。そうすると、取付溝82及び相手部材84間で圧縮されるガスケット80の中実部分の圧縮度合が減少することで、シール面圧が低下するという問題が発生する。
【0011】
一方、前記特許文献2に開示された従来のガスケット90は、被取付部材91の取付溝92に保持されたガスケット90に相手部材97からの締め付け荷重が作用していない無荷重状態では、ガスケット90の大部分が取付溝92内に存在するとともに、中空部96の全体が取付溝92内に存在している。また、ガスケット90の締め付け荷重を加える相手部材97のシール壁部98は、取付溝92の幅よりも細い幅を有している。そして、取付溝92内に入り込んだシール壁部98がガスケット90の中央壁部93の中央部分を押圧することで、シール性が発揮されている。
【0012】
すなわち、このガスケット90では、ガスケット90の外側面が取付溝92の内側面で拘束されているため、捻れるように変形して歪んだり、あるいは傾いて倒れたりすることは取付溝92で規制される。しかし、同時に、取付溝92内に在るガスケット90は外形状を変形させることも取付溝92で規制されることから、中空部96が形状を変化させる自由度も低い。このため、このガスケット90では、例えば相手部材97のシール壁部98が変形したり動いたりしたときに、その変形や動きに追従して中空部96が形状を自由に変化させることできない。その結果、中空部96の形状を自由に変化させることで発揮される空気バネとしての機能が低下して、シール性が低下することがある。また、シール壁部98に対して横方向に荷重がかかり、シール壁部98が変形することによるシール性低下もあり得る。
【0013】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、低反発力で、しかも被取付部材や相手部材の変形等により傾いたり倒れたりしても良好にシール性を確保することができ、また、被取付部材や相手部材の変形や動きが発生した場合であっても、その変形等に良好に追従してシール性を確保することのできるガスケットを提供することを解決すべき技術課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本発明のガスケットは、弾性材料よりなり、被取付部材の環状の取付溝に保持された状態で該被取付部材の相手部材が圧接されることにより、両該部材間をシールする環状のガスケットであって、少なくとも一部が前記取付溝内に配置されて該取付溝に保持される中実保持部と、前記中実保持部と一体に形成され、該中実保持部が前記取付溝に保持された状態にあるときに、該取付溝の外に存在するとともに周方向に連続する密閉中空部を、内部に有する中空シール部とを備えていることを特徴とするものである。
【0015】
このガスケットでは、中実保持部が取付溝に保持された状態にあるとき、周方向に連続する密閉中空部を内部に有する中空シール部が該取付溝の外に存在する。このため、このガスケットでは、中空シール部の外面が取付溝の内面で拘束されていない。したがって、中空シール部の外形状が変化すること、すなわち密閉中空部の形状が変化することが、取付溝で規制されることはなく、密閉中空部が形状を変化させる自由度が高い。よって、被取付部材又は相手部材が変形したり動いたりしたときに、中空シール部の外形状(密閉中空部の形状)が自由に変化することで、空気バネとして有効に機能し、被取付部材等の変形や動きに良好に追従して良好なシール性を確保することができる。
【0016】
また、被取付部材や相手部材の変形等により仮にガスケットが傾いたり倒れたりしたとしても、圧縮された密閉中空部を内部に有する中空シール部により所定の面圧を確保することができ、シール性を良好に確保することが可能になる。
【0017】
さらに、このガスケットでは、中実保持部の少なくとも一部が取付溝内に配置されて該取付溝に保持される。すなわち、このガスケットでは、ガスケットのうち中実部分のみが取付溝に保持される。このため、取付溝に対してガスケットを確実に保持させることができ、ガスケットの姿勢安定性を向上させることができる。
【0018】
また、このガスケットでは、中空シール部の密閉中空部の存在により低反発力となるので、樹脂製の被取付部材のクリープ変形を良好に抑えることができるとともに、密閉中空部に封入された空気により復元力が得られるので、経時的に弾性が低下するへたりを良好に抑えることができる。
【0019】
本発明のガスケットの好適な態様において、前記中空シール部は、前記被取付部材との係止により自己の傾倒を規制しうる係止部を両外側面に有している。
【0020】
このガスケットでは、被取付部材の取付溝に中実保持部が保持された状態で、中空シール部の両外側面に設けられた係止部が被取付部材に係止することにより、中空シール部が傾倒する(傾いたり倒れたりする)ことを規制することができる。このため、中空シール部の姿勢を安定に保持して、常に一定のシール性を発揮させるのに有利となる。
【0021】
本発明のガスケットの好適な態様において、前記中空シール部は、前記相手部材との圧接により該相手部材とのシール性を高めるシール突条を先端に有している。
【0022】
このガスケットでは、シール性向上手段として機能しうるシール突条により、中空シール部と相手部材とのシール性を高めることができる。
【0023】
本発明のガスケットの好適な態様において、前記中空シール部は、前記相手部材との圧接により該相手部材とのシール性を高めるシール平坦面を先端に有している。
【0024】
このガスケットでは、シール性向上手段として機能しうるシール平坦面により、中空シール部と相手部材とのシール性を高めることができる。
【0025】
ここに、前述のとおり、ガスケットの被取付部材が樹脂製品である場合は、被取付部材が金属製品である場合と比較して、ガスケットの反発力を抑えることが望ましい。しかし、ガスケットの反発力を抑え過ぎると、ガスケットの圧縮量の少ない低圧縮時において、反発力(面圧)不足により、十分なシール性が得られないおそれがある。したがって、被取付部材が樹脂製品である場合のガスケットとしては、低圧縮時においても十分なシール性を得るべく適度に大きい反発力を発揮し、かつ、高圧縮時には樹脂製品のクリープ変形を良好に抑えるべく反発力が過度に大きくならないことが望ましい。
【0026】
この点、相手材に圧接される先端にシール平坦面を有するこのガスケットでは、後述するように、相手材に圧接される先端に例えば凸曲面を有するガスケットと比較して、中空シール部の圧縮量が少ない低圧縮時においても高い反発力を発揮して良好なシール性を確保することができる。このように相手材に圧接される先端を平坦面とすることにより低圧縮時の高反力化を達成できるのは、先端が平坦面であれば、中空シール部及び密閉中空部の断面積が同一である場合の例えば凸曲面と比較して、相手材との接触当初における中空シール部の接触面積が大きくなることが主な理由と考えられる。
【0027】
本発明のガスケットの好適な態様において、前記シール突条又は前記シール平坦面は、周方向に対して直角の断面形状において前記中空シール部の圧縮方向に延びる中心線に関して左右対称となるように配設されることで、前記中空シール部の姿勢を安定させる姿勢安定手段としても機能しうる構成とされている。
【0028】
このガスケットでは、姿勢安定手段としても機能しうる構成とされたシール突条又はシール平坦面により、中空シール部の姿勢を安定に保持することができるので、常に一定のシール性を発揮させるのに有利となる。
【0029】
本発明のガスケットは、好適な態様において、前記相手部材が圧接される中央圧接部と、該中央圧接部の両端から一体に連続して延びる脚基端部及び脚先端部をもつ一対の脚部とを有する略U字状の断面形状が、周方向に連続した環状体よりなり、対向内面同士を密接させた状態で前記取付溝内に挿入された両前記脚先端部により、前記中実保持部が構成され、両前記脚基端部及び前記中央圧接部により、前記中空シール部が構成されている。
【0030】
このようなガスケットによれば、中央圧接部及び一対の脚部を有する断面略U字状の環状体よりなるので、型成形により簡単に製造することができる。
【0031】
また、両脚先端部が取付溝に保持された状態では、両脚先端部の外面を取付溝の内面に圧接させる方向に両脚部の弾性復元力が作用しているので、この弾性復元力により取付溝に対する両脚先端部の結合力を高めることができ、取付溝からのガスケットの脱落を効果的に防止することが可能となる。
【0032】
本発明のガスケットの好適な態様において、両前記脚先端部は、互いに係合する凹凸係合部を対向内面に有している。
【0033】
このガスケットでは、凹凸係合部の係合により、取付溝内で両脚先端部がずれたりする動きを規制することができる。このため、取付溝に対して両脚先端部をより確実に保持することができるとともに、中空シール部の姿勢や形状を安定に保持して一定のシール性を発揮させることができる。
【0034】
また、相手材に圧接される先端に前記シール平坦面を有するこのガスケットにおいて、前記中空シール部は、前記シール平坦面から前記中実保持部に向かって徐々に外方に広がるテーパ外側面を有していることが好ましい。
【0035】
このように前記シール平坦面を有するガスケットにおいて、シール平坦面から中実保持部に向かって徐々に外方に広がるテーパ外側面を中空シール部に設けることにより、後述するように、例えばシール平坦面から直立する外側面を中空シール部に有するガスケットと比較して、中空シール部の圧縮量が多くなる高圧縮時において反発力が高くなり過ぎる不都合を抑えることができる。このようにテーパ外側面を設けることにより高圧縮時における過度の高反力化を抑えることができるのは、中空シール部及び密閉中空部の断面積が同一の下で例えば直立する外側面とする場合との比較において、中空シール部の側壁部の先端側(シール平坦面側)における体積が大きくなりすぎないことが主な理由と考えられる。
【0036】
さらに、前記シール平坦面及び前記テーパ外側面を有するガスケットにおいて、前記密閉中空部は、周方向に対して直角の断面形状が、前記中実保持部側に底辺をもつとともに前記シール平坦面側に頂点をもつ逆三角形又は略逆三角形とされていることが好ましい。ここに、逆三角形又は略逆三角形には、三角形の頂点部分が弧状(R部)とされた形状も含まれる。
【0037】
このように前記シール平坦面及び前記テーパ外側面を有するガスケットにおいて、前記密閉中空部の断面形状を前記逆三角形又は略逆三角形とすることにより、後述するように、中空シール部及び密閉中空部の断面積が同一の下で密閉中空部の断面形状を例えば正方形、円形や三角形(前記シール平坦面側に底辺をもつとともに前記中実保持部側に頂点をもつもの)にする場合と比較して、低圧縮時においてより高反力化することができる。このように密閉中空部の断面形状が前記逆三角形又は略逆三角形であると、圧縮時に中空シール部の側壁部で屈曲する屈曲点が、被取付部材の取付溝に保持された中実保持部側に位置する(中空シール部の側壁部は、シール平坦面よりも中実保持部に近い側の部位で屈曲する)ので、圧縮初期の低圧縮時から、該屈曲部が被取付部材に当接すること等により側壁部での屈曲が拘束されやすい。また、密閉中空部の断面形状が前記逆三角形又は略逆三角形であると、中空シール部の両側壁部のシール平坦面側が逆ハの字状に斜め外方に延びた傾斜側壁部となる。そして、密閉中空部の断面形状が前記逆三角形又は略逆三角形であれば、中空シール部及び密閉中空部の断面積が同一の下で例えば正方形、円形や三角形とする場合と比較して、中空シール部の先端側(シール平坦面側)における体積が大きくなる。このため、圧縮初期の低圧縮時から比較的高めの反力が得られる。このような理由から、密閉中空部の断面形状が前記逆三角形又は略逆三角形とすることにより、密閉中空部の断面形状が例えば正方形、円形や三角形(前記シール平坦面側に底辺をもつとともに前記中実保持部側に頂点をもつもの)である場合と比較して、低圧縮時においてより高反力化することができるものと考えられる。
【0038】
また、前記シール平坦面及び前記テーパ外側面を有するガスケットにおいて、前記密閉中空部は、周方向に対して直角の断面形状が、前記シール平坦面と略平行な辺をもつ矩形状又は略矩形状とされていることが好ましい。ここに、矩形状又は略矩形状には、四辺の長さが全て等しい又は略等しい正方形状又は略正方形状も含まれ、また、矩形状の頂点部分が弧状(R部)とされた形状も含まれる。
【0039】
このように前記シール平坦面及び前記テーパ外側面を有するガスケットにおいて、前記密閉中空部の断面形状を前記矩形状又は略矩形状とすることにより、後述するように、中空シール部及び密閉中空部の断面積が同一の下で密閉中空部の断面形状を例えば円形や三角形(前記シール平坦面側に底辺をもつとともに前記中実保持部側に頂点をもつもの)にする場合と比較して、低圧縮時においてより高反力化することができる。このように密閉中空部の断面形状が前記矩形状又は略矩形状であれば、圧縮時に屈曲点となる中空シール部の側壁部の中程が、密閉中空部の断面形状が例えば円形や三角形である場合と比較して、厚肉になるので、低圧縮時から高い反力が得られるものと考えられる。
【0040】
また、前記シール平坦面及び前記テーパ外側面を有するガスケットにおいて、前記密閉中空部は、周方向に対して直角の断面形状が円形又は略円形とされていることが好ましい。
【0041】
このように前記シール平坦面及び前記テーパ外側面を有するガスケットにおいて、前記密閉中空部の断面形状を円形又は略円形とすることにより、後述するように、中空シール部及び密閉中空部の断面積が同一の下で密閉中空部の断面形状を例えば三角形(前記シール平坦面側に底辺をもつとともに前記中実保持部側に頂点をもつもの)にする場合と比較して、低圧縮時においてより高反力化することができる。このように密閉中空部の断面形状が円形又は略円形であれば、中空シール部及び密閉中空部の断面積が同一の下で例えば三角形とする場合と比較して、中空シール部の先端側(シール平坦面側)における体積が大きくなるので、低圧縮時から高い反力が得られるものと考えられる。
【発明の効果】
【0042】
よって、本発明のガスケットによれば、取付溝内に配置されて該取付溝に保持された中実保持部により、取付溝に対して安定な姿勢で確実に保持させることができるとともに、取付溝の外に在る中空シール部により、長期にわたって良好なシール性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
(実施形態1)
図1〜図3に示される本実施形態のガスケット1は、自動車のエンジン本体部品としてのシリンダヘッドカバー2に装着されて、このシリンダヘッドカバー2とシリンダヘッド3との間をシールするために用いられるものである。
【0045】
シリンダヘッドカバー2は、ガラス繊維で強化されたポリアミド(PA6やPA66等)等の樹脂材料から、射出成形により略矩形状に成形されてなり、外周縁端部に環状の取付溝4が凹設されている。
【0046】
ここに、図1は、本実施形態のガスケット1を被取付部材としてのシリンダヘッドカバー2の取付溝4に装着した状態を示す部分断面図であって、相手部材としてのシリンダヘッド3がガスケット1に圧接されておらず、シリンダヘッド3からガスケット1に締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示すものである。図2は、シリンダヘッド3がガスケット1に圧接されて、シリンダヘッド3からガスケット1に所定の締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示すものである。図3は、シリンダヘッドカバー2の取付溝4に装着する前の状態を示す、本実施形態のガスケット1の部分断面図である。
【0047】
ガスケット1は、ゴム又は熱可塑性エラストマー等の弾性材料、例えばACM(アクリルゴム)、NBR(ニトリルゴム)やFVMQ(クロロシリコン)から、無端の枠状(略矩形状)に型成形されてなるものである。このガスケット1は、図3に示されるように、シリンダヘッド3が圧接される中央圧接部5と、この中央圧接部5の両端から一体に連続して延びる一対の脚部6、7とを有する略U字状の断面形状が、周方向に連続した環状体よりなる。また、ガスケット1は、環状に延びる周方向に対して直角の断面形状において、ガスケット1が圧縮される圧縮方向(図1の上下方向であって、図1に示すA矢印方向。以下、同様)に延びる中心線に関して左右対称の形状を有している。
【0048】
脚部6は、中央圧接部5の一端に一体成形された脚基端部8と、この脚基端部8の先端に一体成形された脚先端部9とを有している。同様に、脚部7は、中央圧接部5の他端に一体成形された脚基端部10と、この脚基端部10の先端に一体成形された脚先端部11とを有している。
【0049】
中央圧接部5は、シリンダヘッド3が圧接される後述する中空シール部の頂面に形成されたシール平坦面12を有している。このシール平坦面12は、ガスケット1が環状に延びる周方向に対して直角の断面形状において、前記圧縮方向に延びる中心線に関して左右対称の形状とされている。また、シール平坦面12は、シリンダヘッド3と面接触することでシリンダヘッド3とシールする。このため、このシール平坦面12は、姿勢安定手段及びシール性向上手段として機能しうる。
【0050】
各脚基端部8、10は、中央圧接部5の両端から外側に膨らむように湾曲して延びている。また、各脚先端部9、11は、ガスケット1が取付溝4に装着される前の状態で、各脚基端部8、10の先端から斜め上方に外側に向かって直線状に延びている。これにより、本実施形態のガスケット1は、取付溝4に装着される前の状態で、先端に向かうに連れて両脚部6及び7間の間隔が徐々に広がるように、両脚部6、7が開いた形状とされている。
【0051】
また、各脚先端部9、11は、互いに係合する凹凸係合部13、14を対向内面に有するとともに、本実施形態のガスケット1が取付溝4に装着された状態で該取付溝4の内側面に圧接される突起部15、16を有している。凹凸係合部13、14は、互いに係合する波形状とされている。突起部15、16は、断面略半円形状とされている。
【0052】
なお、シール平坦面12、凹凸係合部13、14は環状のもので周方向に連続して延びている。また、突起部15、16は、周方向に連続して又は部分的に設置される。
【0053】
かかる構成を有する本実施形態のガスケット1は、図1に示されるように、両脚部6、7の両脚先端部9、11の対向内面同士を互いに密接させるとともに、凹凸係合部13、14を互いに係合させた状態で、被取付部材としてのシリンダヘッドカバー2の取付溝4内に、圧入状態で挿入されることにより、該取付溝4に保持される。この保持状態では、両脚先端部9、11の外側面に設けられた突起部15、16は取付溝4の内側面で圧縮されている。なお、図1においては、両脚先端部9、11の外側面と取付溝4の内側面との間に若干の隙間が形成されているが、実際には、高さが0.3mm程度の突起部15、16はほぼ完全に潰されており、後述する中実保持部17は実質的に密実状態(両脚先端部9、11の外側面と取付溝4の内側面との間に隙間のない状態)で取付溝4内に充填されている。このように中実保持部17が密実状態で取付溝4内に充填されていれば、取付溝4に対する中実保持部17の結合力や姿勢安定性を高めることができる。
【0054】
こうして、取付溝4に装着された本実施形態のガスケット1においては、対向内面同士を密接させた状態で取付溝4内に全体が挿入された両脚先端部9及び11により構成された、全体が取付溝4内に配置されて該取付溝4に保持された中実保持部17が形成されるとともに、両脚基端部8及び10並びに中央圧接部5により構成された、中実保持部17と一体に形成された中空シール部18が形成されている。この中空シール部18は、周方向に連続する密閉中空部19を内部に有している。この密閉中空部19は、その全体が取付溝4の外に存在しており、また略円形断面とされている。
【0055】
また、取付溝4に装着された本実施形態のガスケット1においては、ガスケット1が環状に延びる周方向に対して直角の断面形状において、中実保持部17の幅(図1の左右方向における幅)よりも、中空シール部18の幅(図1の左右方向における幅)の方が大きくされている。そして、中空シール部18は、前記両脚基端部8及び10により構成された、環状に延びる周方向に対して直角の断面形状において略円弧状をなす円弧状側壁部を有している。なお、この円弧状側壁部は略均一厚さで円弧状に延びている。
【0056】
そして、シリンダヘッド3に対してシリンダヘッドカバー2が取り付けられることにより、図2に示されるように、中空シール部18及び密閉中空部19が潰される方向に圧縮され、中空シール部18のシール平坦面12がシリンダヘッド3に圧接される。
【0057】
したがって、このガスケット1では、取付溝4の外に存在する中空シール部18の外面が取付溝4の内面で拘束されていないため、中空シール部18の外形状が変化すること、すなわち密閉中空部19の形状が変化することが、取付溝4で規制されることはなく、密閉中空部19が形状を変化させる自由度が高い。よって、例えば、図2の二点鎖線で示されるように、シリンダヘッドカバー2が熱膨張により変形したり、あるいはシリンダヘッド3に対して相対移動したりしたときに、中空シール部18の外形状(密閉中空部19の形状)が自由に変化することで、空気バネとして有効に機能し、シリンダヘッドカバー2等の変形や動きに良好に追従して良好なシール性を確保することができる。
【0058】
また、シリンダヘッドカバー2等の変形等により仮にガスケット1が傾いたり倒れたりしたとしても、圧縮された密閉中空部19を内部に有する中空シール部18により所定の面圧を確保することができ、シール性を良好に確保することが可能になる。
【0059】
さらに、このガスケット1では、中実保持部17の全体が取付溝4内に配置されて該取付溝4に保持されている。すなわち、このガスケット1では、ガスケット1のうち中実部分のみが取付溝4に保持されている。このため、取付溝4に対してガスケット1を確実に保持させることができ、ガスケット1の姿勢安定性を向上させることができる。
【0060】
また、このガスケット1では、中空シール部18の密閉中空部19の存在により、図4に示されるように低反発力となるので、樹脂製のシリンダヘッドカバー2のクリープ変形を良好に抑えることができるとともに、密閉中空部19に封入された空気により復元力が得られるので、経時的に弾性が低下するへたりを良好に抑えることができる。なお、図4は、ガスケットの圧縮量と反力との関係を概略的に示す線図であり、実線が本実施形態1のガスケット1についてのもの、点線が本実施形態1のガスケット1の密閉中空部の部分を中実にした比較例のガスケットについてのものである。
【0061】
また、本実施形態のガスケット1では、シール性向上手段及び姿勢安定手段として機能しうるシール平坦面12が中空シール部18の頂面に形成されているので、この中空シール部18とシリンダヘッド3とが接触当初から面接触状態で互いに圧接することで、中空シール部18とシリンダヘッド3とのシール性を高めることができるとともに、中空シール部18の姿勢を安定に保持して常に一定のシール性を発揮させるのに有利となる。加えて、ガスケット1が環状に延びる周方向に対して直角の断面形状において、中実保持部17の幅よりも中空シール部18の幅の方が大きくされていることも、中空シール部18の姿勢安定性の向上に寄与する。
【0062】
また、本実施形態のガスケット1では、凹凸係合部13、14の係合により、取付溝4内で両脚先端部9、11がずれたりする動きを規制することができる。このため、取付溝4に対して両脚先端部9、11をより確実に保持することができるとともに、中空シール部18の姿勢や形状を安定に保持して一定のシール性を発揮させることができる。
【0063】
さらに、本実施形態のガスケット1は、中央圧接部5及び一対の脚部6、7を有する断面略U字状の環状体よりなるので、型成形により容易に製造することができる。
【0064】
また、両脚先端部9、11が取付溝4に保持された状態では、両脚先端部9、11の外側面を取付溝4の内側面に圧接させる方向に両脚部6、7の弾性復元力が作用しているので、この弾性復元力により取付溝4に対する両脚先端部9、11の結合力を高めることができ、取付溝4からのガスケット1の脱落を効果的に防止することが可能となる。
【0065】
さらに、後述するように、相手材としてのシリンダヘッド3に圧接される先端にシール平坦面12を有するこのガスケット1では、相手材に圧接される先端に例えば凸曲面を有するガスケットと比較して、中空シール部18の圧縮量が少ない低圧縮時においても高い反発力を発揮して良好なシール性を確保することができる。
【0066】
(実施形態2)
図5に示される本実施形態のガスケット20は、前記実施形態1のガスケット1において、第1〜第3のシールリブ21〜23を設けるとともに、一対の係止段部24、25を設けたものである。
【0067】
すなわち、このガスケット20においては、前記中空シール部18が、被取付部材としてのシリンダヘッドカバー2との係止により自己の傾倒を規制しうる係止部として、シリンダヘッドカバー2の取付溝4の開口端(取付溝4の両内側面の端部)と係合するとともに、シリンダヘッドカバー2の端面(図5の下端面)と面接触する係止段部24、25を両外側面に有している。
【0068】
第1、第2シールリブ21、22は前記シール平坦面12の両端に形成されており、第3シールリブ23は前記シール平坦面12の中央に形成されている。すなわち、第1〜第3シールリブ21〜23は、中空シール部18の圧縮方向における断面において、軸対称となるように配設されている。なお、これら第1〜第3シールリブ21〜23は、いずれも断面略半円形状とされている。
【0069】
したがって、第1〜第3シールリブ21〜23は、シリンダヘッド3とのシール面圧を高めるシール性向上手段として機能しうるとともに、中空シール部18の姿勢を安定させる姿勢安定手段としても機能しうる。なお、第3シールリブ23を省略して、第1及び第2シールリブ21及び22のみとしても、実質的に同様の機能を果たしうる。
【0070】
また、このガスケット20では、シリンダヘッドカバー2の取付溝4に中実保持部17が保持された状態で、中空シール部18の両外側面に設けられた係止段部24、25がシリンダヘッドカバー2の取付溝4の開口端に係止することにより、中空シール部18が傾倒することを規制することができる。よって、中空シール部18の姿勢を安定に保持して、常に一定のシール性を発揮させるのに有利となる。
【0071】
なお、このガスケット20は、各脚先端部9、11の外側面に前記突起部15、16が形成されていない。このため、このガスケット20では、シリンダヘッドカバー2の取付溝4に装着された状態で、脚先端部9、11の外側面の全体が取付溝4の内側面の全体に圧接されており、中実保持部17は密実状態で取付溝4内に充填されている。
【0072】
その他の構成及び作用効果は、前記実施形態1のガスケット1と同様であるため、その説明を省略する。
【0073】
(実施形態3)
図6に示される本実施形態のガスケット26は、前記取付溝4に装着された状態で、前記シール平坦面12と、このシール平坦面12から前記中実保持部17に向かって(図6の上方に向かって)徐々に外方に広がるテーパ外側面27、28を有している。
【0074】
ここに、図6(a)は、本実施形態のガスケット26を被取付部材としてのシリンダヘッドカバー2の取付溝4に装着した状態を示す部分断面図であって、相手部材としてのシリンダヘッド3がガスケット1に圧接されておらず、シリンダヘッド3からガスケット1に締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示すものである。また図6(b)は、シリンダヘッド3がガスケット26に圧接されて、シリンダヘッド3からガスケット26に所定の締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示すものである。
【0075】
また、このガスケット26における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記中実保持部17側(図6の上方側)に底辺をもつとともに前記シール平坦面12側(図6の下方側)に頂点をもち、三角形の3個の頂点部分が弧状(R部)とされた略逆三角形とされている。
【0076】
さらに、このガスケット26においては、前記中空シール部18が、被取付部材としてのシリンダヘッドカバー2との係止により自己の傾倒を規制しうる係止部として、シリンダヘッドカバー2の取付溝4の開口端(取付溝4の両内側面の端部)に設けられたテーパ端面4a、4aに面接触して係合する係止テーパ面29、30を両外側面に有している。
【0077】
そして、このガスケット26の前記中空シール部18は、前記両脚基端部8及び10により構成された、環状に延びる周方向に対して直角の断面形状において前記シール平坦面12側の長さが前記中実保持部17側の長さよりも長い略くの字状をなす、略均一厚さの略くの字状側壁部31、32を有している。また、この中空シール部18は、略くの字状側壁部31、32の前記シール平坦面12側(図6の下方側)に、前記略逆三角形における側辺(前記底辺以外の辺)である略くの字状側壁部31、32の内側面と前記テーパ外側面27、28とが前記シール平坦面12から前記中実保持部17側(図6の上方側)に向かって斜め外方に略平行に延びて、逆ハの字状に略均一厚さで斜め外方に長く延びる傾斜側壁部33、34を有している。なお、この傾斜側壁部33、34の外側面が前記テーパ外側面27、28とされている。
【0078】
なお、このガスケット26は、各脚先端部9、11の外側面に前記突起部15、16が形成されていない。このため、このガスケット26では、シリンダヘッドカバー2の取付溝4に装着された状態で、脚先端部9、11の外側面の全体が取付溝4の内側面の全体に圧接されており、中実保持部17は密実状態で取付溝4内に充填されている。
【0079】
その他の構成は、前記実施形態1のガスケット1と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0080】
(実施形態4)
図7に示される本実施形態のガスケット35における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記シール平坦面12側(図7の下方側)に底辺をもつとともに、前記中実保持部17側(図7の上方側)に頂点をもち、三角形の3個の頂点部分が弧状(R部)とされた略三角形とされている。
【0081】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0082】
なお、密閉中空部19の断面形状が略三角形とされていることから、前記略くの字状側壁部31、32の形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なり、逆ハの字状に略均一厚さで斜め外方に長く延びる前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0083】
また、このガスケット35は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0084】
(実施形態5)
図8に示される本実施形態のガスケット36における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が円形とされている。
【0085】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0086】
なお、密閉中空部19の断面形状が円形とされていることから、前記略くの字状側壁部31、32の形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なり、逆ハの字状に略均一厚さで斜め外方に長く延びる前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0087】
また、このガスケット36は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0088】
(実施形態6)
図9に示される本実施形態のガスケット37における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、正方形の4個の頂点部分に弧状(R部)をもつ略正方形とされている。
【0089】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0090】
なお、密閉中空部19の断面形状が略正方形とされていることから、前記略くの字状側壁部31、32の形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なり、逆ハの字状に略均一厚さで斜め外方に長く延びる前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0091】
また、このガスケット37は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0092】
(実施形態7)
図10に示される本実施形態のガスケット38における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、ガスケット38の圧縮方向に長く、長方形の4個の頂点部分に弧状(R部)をもつ略長方形とされている。
【0093】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0094】
なお、密閉中空部19の断面形状が略長方形とされていることから、前記略くの字状側壁部31、32の形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なり、逆ハの字状に略均一厚さで斜め外方に長く延びる前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0095】
また、このガスケット38は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0096】
(実施形態8)
図11に示される本実施形態のガスケット39は、前記取付溝4に装着された状態で、前記中空シール部18が、前記シール平坦面12と、このシール平坦面12から前記中実保持部17に向かって(図11の上方に向かって)直立する直立外側面40、41とを有している。
【0097】
また、このガスケット39における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と同様、略逆三角形とされている。
【0098】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0099】
なお、直立外側面40、41とされていることから、前記中空シール部18の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なる。すなわち、このガスケット39の中空シール部18は、前記略くの字状側壁部31、32及び前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0100】
また、このガスケット39は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0101】
(実施形態9)
図12に示される本実施形態のガスケット42は、前記実施形態8のガスケット39と同様、前記中空シール部18が、前記シール平坦面12と、前記直立外側面40、41とを有している。
【0102】
また、このガスケット42における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記実施形態4のガスケット35と同様、略三角形とされている。
【0103】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0104】
なお、直立外側面40、41とされ、かつ、密閉中空部19の断面形状が略三角形とされていることから、前記中空シール部18の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なる。すなわち、このガスケット42の中空シール部18は、前記略くの字状側壁部31、32及び前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0105】
また、このガスケット42は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0106】
(実施形態10)
図13に示される本実施形態のガスケット43は、前記実施形態8のガスケット39と同様、前記中空シール部18が、前記シール平坦面12と、前記直立外側面40、41とを有している。
【0107】
また、このガスケット43における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記実施形態5のガスケット36と同様、円形とされている。
【0108】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0109】
なお、直立外側面40、41とされ、かつ、密閉中空部19の断面形状が円形とされていることから、前記中空シール部18の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なる。すなわち、このガスケット43の中空シール部18は、前記略くの字状側壁部31、32及び前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0110】
また、このガスケット43は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0111】
(実施形態11)
図14に示される本実施形態のガスケット44は、前記実施形態8のガスケット39と同様、前記中空シール部18が、前記シール平坦面12と、前記直立外側面40、41とを有している。
【0112】
また、このガスケット44における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記実施形態6のガスケット37と同様、略正方形とされている。
【0113】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0114】
なお、直立外側面40、41とされ、かつ、密閉中空部19の断面形状が略正方形とされていることから、前記中空シール部18の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なる。すなわち、このガスケット44の中空シール部18は、前記略くの字状側壁部31、32及び前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0115】
また、このガスケット44は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0116】
(実施形態12)
図15に示される本実施形態のガスケット45は、前記実施形態8のガスケット39と同様、前記中空シール部18が、前記シール平坦面12と、前記直立外側面40、41とを有している。
【0117】
また、このガスケット45における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記実施形態7のガスケット38と同様、略長方形とされている。
【0118】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0119】
なお、直立外側面40、41とされ、かつ、密閉中空部19の断面形状が略長方形とされていることから、前記中空シール部18の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なる。すなわち、このガスケット45の中空シール部18は、前記略くの字状側壁部31、32及び前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0120】
また、このガスケット45は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0121】
(実施形態13)
図16に示される本実施形態のガスケット46は、前記取付溝4に装着された状態で、前記中空シール部18が前記シール平坦面12を有していない。すなわち、このガスケット46では、ガスケット46が環状に延びる周方向に対して直角の断面において、中空シール部18の頂面が円弧状の凸曲面47とされている。
【0122】
また、このガスケット46における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と同様、略逆三角形とされている。
【0123】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0124】
なお、中空シール部18の頂面が円弧状の凸曲面47とされていることから、中空シール部18の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なる。すなわち、このガスケット46の中空シール部18は、前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0125】
また、このガスケット46は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0126】
(圧縮量に対する反力の評価)
図6〜図16に示した前記実施形態3〜13のガスケットについて、前記取付溝4に装着されたガスケットに対してシリンダヘッド3から所定の圧縮量を付与することにより、圧縮量と反力との関係を調べた。その結果を図17及び図18に示す。
【0127】
なお、前記シール平坦面12及び前記テーパ外側面27、28を有する前記実施形態3〜7のガスケットについての評価結果を図17に示す。図17中、細い実線が、図6に示す略逆三角形の密閉中空部19をもつ実施形態3のガスケット26の評価結果であり、太い実線が、図7に示す略三角形の密閉中空部19をもつ実施形態4のガスケット35の評価結果であり、細い一点鎖線が、図8に示す円形の密閉中空部19をもつ実施形態5のガスケット36の評価結果であり、細い二点鎖線が、図9に示す略正方形の密閉中空部19をもつ実施形態6のガスケット37の評価結果であり、太い一点鎖線が、図10に示す略長方形の密閉中空部19をもつ実施形態7のガスケット38の評価結果である。
【0128】
また、前記シール平坦面12及び前記直立外側面40、41を有する前記実施形態8、9、11、12のガスケット並びに前記凸曲面43を有する前記実施形態13のガスケットについての評価結果を図18に示す。図18中、細い実線が、図11に示す略逆三角形の密閉中空部19をもつ実施形態8のガスケット39の評価結果であり、太い実線が、図12に示す略三角形の密閉中空部19をもつ実施形態9のガスケット42の評価結果であり、細い二点鎖線が、図14に示す略正方形の密閉中空部19をもつ実施形態11のガスケット44の評価結果であり、太い一点鎖線が、図15に示す略長方形の密閉中空部19をもつ実施形態12のガスケット45の評価結果であり、細い点線が、図16に示す略逆三角形の密閉中空部19及び前記凸曲面43をもつ前記実施形態13のガスケット46についての評価結果である。
【0129】
まず、図17に示す細い実線と、図18に示す細い点線とを比較するとわかるように、圧縮量が1.5mm程度以下である低圧縮時における反力は、前記凸曲面43をもつ前記実施形態13のガスケット46よりも、前記シール平坦面12をもつ前記実施形態3のガスケット26の方が増大した。すなわち、前記シール平坦面12を設けることにより、低圧縮時における反力が増大した。
【0130】
また、図17に示す各線と、図18に示す細い点線以外の各線とを比較するとわかるように、圧縮量が2.5mm程度以上である高圧縮時における反力は、前記テーパ外側面27、28をもつ前記実施形態3〜7のガスケットよりも、前記直立外側面40、41をもつ前記実施形態8〜12のガスケットの方が大きく増大した。すなわち、前記テーパ外側面27、28を設けることにより、高圧縮時における反力が過度に増大することを抑えることができた。
【0131】
さらに、図17より、前記シール平坦面12及び前記テーパ外側面27、28をもつガスケットにおいては、前記密閉中空部19の断面形状を前記略逆三角形とすることが最も好ましいことがわかった。すなわち、密閉中空部19の断面形状が前記略逆三角形である前記実施形態3のガスケット26では、低圧縮時における反力が適度に高く、かつ、高圧縮時における反力が過度に上昇しなかった。このようにガスケット26の中空シール部18が、低圧縮時及び高圧縮時の双方で適正な反力となるのは、前記傾斜側壁部33、34を有する略くの字状側壁部31、32で、圧縮時における圧縮変形と剪断変形とがうまくバランスしていることも一つの要因と考えられる。
【0132】
そして、密閉中空部19の断面形状が前記略正方形である前記実施形態6のガスケット37が次に良好であり、密閉中空部19の断面形状が前記円形である前記実施形態5のガスケット36がその次に良好であった。
【0133】
これに対し、密閉中空部19の断面形状が前記略長方形である前記実施形態7のガスケット38では、高圧縮時における反力が過度に上昇した。これは、密閉中空部19が前記正方形である場合と比較して、圧縮時の屈曲点となる略くの字状側壁部31、32の中程の肉厚が大きいことが原因と考えられる。
【0134】
また、密閉中空部19の断面形状が前記三角形である前記実施形態4のガスケット35では、低圧縮時の高反力化の効果が全体的に小さめであった。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】実施形態1に係るガスケットを被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図である。
【図2】実施形態1に係るガスケットに相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図3】実施形態1に係るガスケットを被取付部材に装着する前の状態を示す部分断面図である。
【図4】ガスケットに対する圧縮量とその圧縮により生ずる反力との関係を示す図であり、実線が実施形態1に係るガスケットについてのもので、点線が密閉中空部を中実とした比較例に係るガスケットについてのものである。
【図5】実施形態2に係るガスケットを被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図である。
【図6】実施形態3に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図7】実施形態4に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図8】実施形態5に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図9】実施形態6に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図10】実施形態7に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図11】実施形態8に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図12】実施形態9に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図13】実施形態10に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図14】実施形態11に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図15】実施形態12に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図16】実施形態13に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図17】前記実施形態3〜7のガスケットについて、圧縮量と反力との関係を調べた評価結果を示す線図である。
【図18】前記実施形態8、9、11〜13のガスケットについて、圧縮量と反力との関係を調べた評価結果を示す線図である。
【図19】従来のガスケットに係り、(a)が締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)が締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図20】他の従来のガスケットに係り、(a)が締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)が締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0136】
1、20…ガスケット 2…シリンダヘッドカバー(被取付部材)
3…シリンダヘッド(相手部材) 4…取付溝
5…中央圧接部 6、7…脚部
8、10…脚基端部 9、11…脚先端部
12…シール平坦面 13、14…係合凹凸部
15、16…突起部 17…中実保持部
18…中空シール部 19…密閉空間部
21〜23…第1〜第3シールリブ
24、25…係止段部(係止部)
27、28…テーパ外側面
29、30…係止テーパ面(係止部)
【技術分野】
【0001】
本発明はガスケットに関し、より詳しくは反発力を抑えたガスケットに関する。本発明のガスケットは、樹脂部材をシールする際に好適に利用することができる。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車部品においては、軽量化等の理由により、金属製のものから樹脂製のものに変更されるケースが多い。
【0003】
樹脂製のカバーやハウジング等にガスケットを取り付ける場合、ガスケットの反発力が大きすぎると、金属製品と比べて剛性の小さい樹脂製品がガスケットの反発力によりクリープ変形して、シール性に悪影響を及ぼす場合がある。このため、樹脂製品に対しては、反発力を抑えたガスケットを用いることが望ましい。
【0004】
そこで、低反発力のガスケットとして、中空部を有するものが知られている(例えば、特許文献1、2参照。)。
【0005】
図19(a)に示されるように、特許文献1に開示されたガスケット80は、弾性材料よりなり、樹脂製の被取付部材81の取付溝82に装着されている。このガスケット80は、ガスケット80が圧縮される方向(図19(a)の上下方向で、図19(a)のA矢印方向)に沿う断面外形状が圧縮方向に長い長円形をなしており、この長円形の断面形状が周方向に連続する無端の環状体よりなる。そして、ガスケット80は、長円形断面の中央に周方向に連続する円形断面の中空部83を有している。
【0006】
このようなガスケット80に被取付部材81の相手部材84が圧接されて締め付け荷重が作用すると、図19(b)に示されるように、ガスケット80は中空部83が潰れる方向に圧縮されて、長円形断面の長軸長さが短くなる。このとき、圧縮分の反力がガスケット80の内部に発生するが、この反力は、中空部83が設けられている分だけ小さくなる。このため、被取付部材81及び相手部材84間で圧縮されたガスケット80の反力による、樹脂製の被取付部材81等のクリープ変形を抑えることができる。また、中空部83内に封じ込められた空気によって復元力が得られるので、ガスケット80のへたりを抑制することができる。
【0007】
また、図20(a)に示されるように、特許文献2に開示されたガスケット90は、弾性材料よりなり、樹脂製の被取付部材91の取付溝92に装着されている。このガスケット90は、ガスケット90が圧縮される方向(図20(a)の上下方向で、図20(a)のB矢印方向)に沿う断面外形状が圧縮方向に長い略長方形をなしており、この略長方形の断面外形状が周方向に連続する無端の環状体よりなる。そして、ガスケット90は、取付溝92に装着される前の状態において、中央壁部93と、両側の脚部94、95とを有する断面略U字状をなし、両脚部94、95の先端部を互いに圧接させた状態で、また、ガスケット90のほぼ全体が取付溝92内に配置された状態で、該取付溝92に保持されている。そして、このように取付溝92にガスケット90が保持されることで、中央壁部93の内面及び両脚部94、95の基端側の両内面により区画された、周方向に連続する略楕円形断面の中空部96が形成されている。
【0008】
このようなガスケット90に相手部材97のシール壁部98が圧接されて締め付け荷重が作用すると、図20(b)に示されるように、シール壁部98により押圧された中央壁部93の中央部分が中空部96の存在によって変形し、ガスケット90は中空部96が潰れる方向に圧縮される。このとき、圧縮分の反力がガスケット90の内部に発生するが、この反力は、中空部96が設けられている分だけ小さくなる。このため、被取付部材91及び相手部材97のシール壁部98間で圧縮されたガスケット90の反力による、樹脂製の被取付部材91等のクリープ変形を抑えることができる。また、中空部96内に封じ込められた空気によって復元力が得られるので、ガスケット90のへたりを抑制することができる。
【特許文献1】特開2002−349711号公報
【特許文献2】特開2003−222244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記特許文献1に開示された従来のガスケット80では、圧縮方向における半分以上の部分が取付溝82内に配置された状態で、該取付溝82に保持されている。そして、被取付部材81の相手部材84からの締め付け荷重がガスケット80に作用していない無荷重状態では、中空部83の大部分が取付溝82内に存在しており、実質的に中実部分のみが取付溝82の外に存在している。
【0010】
このため、例えば樹脂製の被取付部材81が熱膨張により変形したり、被取付部材81に対して相手部材84が相対移動したりすると、取付溝82の外に存在するガスケット80の中実部分が、捻れるように変形して歪んだり、あるいは傾いて倒れたりすることがある。そうすると、取付溝82及び相手部材84間で圧縮されるガスケット80の中実部分の圧縮度合が減少することで、シール面圧が低下するという問題が発生する。
【0011】
一方、前記特許文献2に開示された従来のガスケット90は、被取付部材91の取付溝92に保持されたガスケット90に相手部材97からの締め付け荷重が作用していない無荷重状態では、ガスケット90の大部分が取付溝92内に存在するとともに、中空部96の全体が取付溝92内に存在している。また、ガスケット90の締め付け荷重を加える相手部材97のシール壁部98は、取付溝92の幅よりも細い幅を有している。そして、取付溝92内に入り込んだシール壁部98がガスケット90の中央壁部93の中央部分を押圧することで、シール性が発揮されている。
【0012】
すなわち、このガスケット90では、ガスケット90の外側面が取付溝92の内側面で拘束されているため、捻れるように変形して歪んだり、あるいは傾いて倒れたりすることは取付溝92で規制される。しかし、同時に、取付溝92内に在るガスケット90は外形状を変形させることも取付溝92で規制されることから、中空部96が形状を変化させる自由度も低い。このため、このガスケット90では、例えば相手部材97のシール壁部98が変形したり動いたりしたときに、その変形や動きに追従して中空部96が形状を自由に変化させることできない。その結果、中空部96の形状を自由に変化させることで発揮される空気バネとしての機能が低下して、シール性が低下することがある。また、シール壁部98に対して横方向に荷重がかかり、シール壁部98が変形することによるシール性低下もあり得る。
【0013】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、低反発力で、しかも被取付部材や相手部材の変形等により傾いたり倒れたりしても良好にシール性を確保することができ、また、被取付部材や相手部材の変形や動きが発生した場合であっても、その変形等に良好に追従してシール性を確保することのできるガスケットを提供することを解決すべき技術課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決する本発明のガスケットは、弾性材料よりなり、被取付部材の環状の取付溝に保持された状態で該被取付部材の相手部材が圧接されることにより、両該部材間をシールする環状のガスケットであって、少なくとも一部が前記取付溝内に配置されて該取付溝に保持される中実保持部と、前記中実保持部と一体に形成され、該中実保持部が前記取付溝に保持された状態にあるときに、該取付溝の外に存在するとともに周方向に連続する密閉中空部を、内部に有する中空シール部とを備えていることを特徴とするものである。
【0015】
このガスケットでは、中実保持部が取付溝に保持された状態にあるとき、周方向に連続する密閉中空部を内部に有する中空シール部が該取付溝の外に存在する。このため、このガスケットでは、中空シール部の外面が取付溝の内面で拘束されていない。したがって、中空シール部の外形状が変化すること、すなわち密閉中空部の形状が変化することが、取付溝で規制されることはなく、密閉中空部が形状を変化させる自由度が高い。よって、被取付部材又は相手部材が変形したり動いたりしたときに、中空シール部の外形状(密閉中空部の形状)が自由に変化することで、空気バネとして有効に機能し、被取付部材等の変形や動きに良好に追従して良好なシール性を確保することができる。
【0016】
また、被取付部材や相手部材の変形等により仮にガスケットが傾いたり倒れたりしたとしても、圧縮された密閉中空部を内部に有する中空シール部により所定の面圧を確保することができ、シール性を良好に確保することが可能になる。
【0017】
さらに、このガスケットでは、中実保持部の少なくとも一部が取付溝内に配置されて該取付溝に保持される。すなわち、このガスケットでは、ガスケットのうち中実部分のみが取付溝に保持される。このため、取付溝に対してガスケットを確実に保持させることができ、ガスケットの姿勢安定性を向上させることができる。
【0018】
また、このガスケットでは、中空シール部の密閉中空部の存在により低反発力となるので、樹脂製の被取付部材のクリープ変形を良好に抑えることができるとともに、密閉中空部に封入された空気により復元力が得られるので、経時的に弾性が低下するへたりを良好に抑えることができる。
【0019】
本発明のガスケットの好適な態様において、前記中空シール部は、前記被取付部材との係止により自己の傾倒を規制しうる係止部を両外側面に有している。
【0020】
このガスケットでは、被取付部材の取付溝に中実保持部が保持された状態で、中空シール部の両外側面に設けられた係止部が被取付部材に係止することにより、中空シール部が傾倒する(傾いたり倒れたりする)ことを規制することができる。このため、中空シール部の姿勢を安定に保持して、常に一定のシール性を発揮させるのに有利となる。
【0021】
本発明のガスケットの好適な態様において、前記中空シール部は、前記相手部材との圧接により該相手部材とのシール性を高めるシール突条を先端に有している。
【0022】
このガスケットでは、シール性向上手段として機能しうるシール突条により、中空シール部と相手部材とのシール性を高めることができる。
【0023】
本発明のガスケットの好適な態様において、前記中空シール部は、前記相手部材との圧接により該相手部材とのシール性を高めるシール平坦面を先端に有している。
【0024】
このガスケットでは、シール性向上手段として機能しうるシール平坦面により、中空シール部と相手部材とのシール性を高めることができる。
【0025】
ここに、前述のとおり、ガスケットの被取付部材が樹脂製品である場合は、被取付部材が金属製品である場合と比較して、ガスケットの反発力を抑えることが望ましい。しかし、ガスケットの反発力を抑え過ぎると、ガスケットの圧縮量の少ない低圧縮時において、反発力(面圧)不足により、十分なシール性が得られないおそれがある。したがって、被取付部材が樹脂製品である場合のガスケットとしては、低圧縮時においても十分なシール性を得るべく適度に大きい反発力を発揮し、かつ、高圧縮時には樹脂製品のクリープ変形を良好に抑えるべく反発力が過度に大きくならないことが望ましい。
【0026】
この点、相手材に圧接される先端にシール平坦面を有するこのガスケットでは、後述するように、相手材に圧接される先端に例えば凸曲面を有するガスケットと比較して、中空シール部の圧縮量が少ない低圧縮時においても高い反発力を発揮して良好なシール性を確保することができる。このように相手材に圧接される先端を平坦面とすることにより低圧縮時の高反力化を達成できるのは、先端が平坦面であれば、中空シール部及び密閉中空部の断面積が同一である場合の例えば凸曲面と比較して、相手材との接触当初における中空シール部の接触面積が大きくなることが主な理由と考えられる。
【0027】
本発明のガスケットの好適な態様において、前記シール突条又は前記シール平坦面は、周方向に対して直角の断面形状において前記中空シール部の圧縮方向に延びる中心線に関して左右対称となるように配設されることで、前記中空シール部の姿勢を安定させる姿勢安定手段としても機能しうる構成とされている。
【0028】
このガスケットでは、姿勢安定手段としても機能しうる構成とされたシール突条又はシール平坦面により、中空シール部の姿勢を安定に保持することができるので、常に一定のシール性を発揮させるのに有利となる。
【0029】
本発明のガスケットは、好適な態様において、前記相手部材が圧接される中央圧接部と、該中央圧接部の両端から一体に連続して延びる脚基端部及び脚先端部をもつ一対の脚部とを有する略U字状の断面形状が、周方向に連続した環状体よりなり、対向内面同士を密接させた状態で前記取付溝内に挿入された両前記脚先端部により、前記中実保持部が構成され、両前記脚基端部及び前記中央圧接部により、前記中空シール部が構成されている。
【0030】
このようなガスケットによれば、中央圧接部及び一対の脚部を有する断面略U字状の環状体よりなるので、型成形により簡単に製造することができる。
【0031】
また、両脚先端部が取付溝に保持された状態では、両脚先端部の外面を取付溝の内面に圧接させる方向に両脚部の弾性復元力が作用しているので、この弾性復元力により取付溝に対する両脚先端部の結合力を高めることができ、取付溝からのガスケットの脱落を効果的に防止することが可能となる。
【0032】
本発明のガスケットの好適な態様において、両前記脚先端部は、互いに係合する凹凸係合部を対向内面に有している。
【0033】
このガスケットでは、凹凸係合部の係合により、取付溝内で両脚先端部がずれたりする動きを規制することができる。このため、取付溝に対して両脚先端部をより確実に保持することができるとともに、中空シール部の姿勢や形状を安定に保持して一定のシール性を発揮させることができる。
【0034】
また、相手材に圧接される先端に前記シール平坦面を有するこのガスケットにおいて、前記中空シール部は、前記シール平坦面から前記中実保持部に向かって徐々に外方に広がるテーパ外側面を有していることが好ましい。
【0035】
このように前記シール平坦面を有するガスケットにおいて、シール平坦面から中実保持部に向かって徐々に外方に広がるテーパ外側面を中空シール部に設けることにより、後述するように、例えばシール平坦面から直立する外側面を中空シール部に有するガスケットと比較して、中空シール部の圧縮量が多くなる高圧縮時において反発力が高くなり過ぎる不都合を抑えることができる。このようにテーパ外側面を設けることにより高圧縮時における過度の高反力化を抑えることができるのは、中空シール部及び密閉中空部の断面積が同一の下で例えば直立する外側面とする場合との比較において、中空シール部の側壁部の先端側(シール平坦面側)における体積が大きくなりすぎないことが主な理由と考えられる。
【0036】
さらに、前記シール平坦面及び前記テーパ外側面を有するガスケットにおいて、前記密閉中空部は、周方向に対して直角の断面形状が、前記中実保持部側に底辺をもつとともに前記シール平坦面側に頂点をもつ逆三角形又は略逆三角形とされていることが好ましい。ここに、逆三角形又は略逆三角形には、三角形の頂点部分が弧状(R部)とされた形状も含まれる。
【0037】
このように前記シール平坦面及び前記テーパ外側面を有するガスケットにおいて、前記密閉中空部の断面形状を前記逆三角形又は略逆三角形とすることにより、後述するように、中空シール部及び密閉中空部の断面積が同一の下で密閉中空部の断面形状を例えば正方形、円形や三角形(前記シール平坦面側に底辺をもつとともに前記中実保持部側に頂点をもつもの)にする場合と比較して、低圧縮時においてより高反力化することができる。このように密閉中空部の断面形状が前記逆三角形又は略逆三角形であると、圧縮時に中空シール部の側壁部で屈曲する屈曲点が、被取付部材の取付溝に保持された中実保持部側に位置する(中空シール部の側壁部は、シール平坦面よりも中実保持部に近い側の部位で屈曲する)ので、圧縮初期の低圧縮時から、該屈曲部が被取付部材に当接すること等により側壁部での屈曲が拘束されやすい。また、密閉中空部の断面形状が前記逆三角形又は略逆三角形であると、中空シール部の両側壁部のシール平坦面側が逆ハの字状に斜め外方に延びた傾斜側壁部となる。そして、密閉中空部の断面形状が前記逆三角形又は略逆三角形であれば、中空シール部及び密閉中空部の断面積が同一の下で例えば正方形、円形や三角形とする場合と比較して、中空シール部の先端側(シール平坦面側)における体積が大きくなる。このため、圧縮初期の低圧縮時から比較的高めの反力が得られる。このような理由から、密閉中空部の断面形状が前記逆三角形又は略逆三角形とすることにより、密閉中空部の断面形状が例えば正方形、円形や三角形(前記シール平坦面側に底辺をもつとともに前記中実保持部側に頂点をもつもの)である場合と比較して、低圧縮時においてより高反力化することができるものと考えられる。
【0038】
また、前記シール平坦面及び前記テーパ外側面を有するガスケットにおいて、前記密閉中空部は、周方向に対して直角の断面形状が、前記シール平坦面と略平行な辺をもつ矩形状又は略矩形状とされていることが好ましい。ここに、矩形状又は略矩形状には、四辺の長さが全て等しい又は略等しい正方形状又は略正方形状も含まれ、また、矩形状の頂点部分が弧状(R部)とされた形状も含まれる。
【0039】
このように前記シール平坦面及び前記テーパ外側面を有するガスケットにおいて、前記密閉中空部の断面形状を前記矩形状又は略矩形状とすることにより、後述するように、中空シール部及び密閉中空部の断面積が同一の下で密閉中空部の断面形状を例えば円形や三角形(前記シール平坦面側に底辺をもつとともに前記中実保持部側に頂点をもつもの)にする場合と比較して、低圧縮時においてより高反力化することができる。このように密閉中空部の断面形状が前記矩形状又は略矩形状であれば、圧縮時に屈曲点となる中空シール部の側壁部の中程が、密閉中空部の断面形状が例えば円形や三角形である場合と比較して、厚肉になるので、低圧縮時から高い反力が得られるものと考えられる。
【0040】
また、前記シール平坦面及び前記テーパ外側面を有するガスケットにおいて、前記密閉中空部は、周方向に対して直角の断面形状が円形又は略円形とされていることが好ましい。
【0041】
このように前記シール平坦面及び前記テーパ外側面を有するガスケットにおいて、前記密閉中空部の断面形状を円形又は略円形とすることにより、後述するように、中空シール部及び密閉中空部の断面積が同一の下で密閉中空部の断面形状を例えば三角形(前記シール平坦面側に底辺をもつとともに前記中実保持部側に頂点をもつもの)にする場合と比較して、低圧縮時においてより高反力化することができる。このように密閉中空部の断面形状が円形又は略円形であれば、中空シール部及び密閉中空部の断面積が同一の下で例えば三角形とする場合と比較して、中空シール部の先端側(シール平坦面側)における体積が大きくなるので、低圧縮時から高い反力が得られるものと考えられる。
【発明の効果】
【0042】
よって、本発明のガスケットによれば、取付溝内に配置されて該取付溝に保持された中実保持部により、取付溝に対して安定な姿勢で確実に保持させることができるとともに、取付溝の外に在る中空シール部により、長期にわたって良好なシール性を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
(実施形態1)
図1〜図3に示される本実施形態のガスケット1は、自動車のエンジン本体部品としてのシリンダヘッドカバー2に装着されて、このシリンダヘッドカバー2とシリンダヘッド3との間をシールするために用いられるものである。
【0045】
シリンダヘッドカバー2は、ガラス繊維で強化されたポリアミド(PA6やPA66等)等の樹脂材料から、射出成形により略矩形状に成形されてなり、外周縁端部に環状の取付溝4が凹設されている。
【0046】
ここに、図1は、本実施形態のガスケット1を被取付部材としてのシリンダヘッドカバー2の取付溝4に装着した状態を示す部分断面図であって、相手部材としてのシリンダヘッド3がガスケット1に圧接されておらず、シリンダヘッド3からガスケット1に締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示すものである。図2は、シリンダヘッド3がガスケット1に圧接されて、シリンダヘッド3からガスケット1に所定の締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示すものである。図3は、シリンダヘッドカバー2の取付溝4に装着する前の状態を示す、本実施形態のガスケット1の部分断面図である。
【0047】
ガスケット1は、ゴム又は熱可塑性エラストマー等の弾性材料、例えばACM(アクリルゴム)、NBR(ニトリルゴム)やFVMQ(クロロシリコン)から、無端の枠状(略矩形状)に型成形されてなるものである。このガスケット1は、図3に示されるように、シリンダヘッド3が圧接される中央圧接部5と、この中央圧接部5の両端から一体に連続して延びる一対の脚部6、7とを有する略U字状の断面形状が、周方向に連続した環状体よりなる。また、ガスケット1は、環状に延びる周方向に対して直角の断面形状において、ガスケット1が圧縮される圧縮方向(図1の上下方向であって、図1に示すA矢印方向。以下、同様)に延びる中心線に関して左右対称の形状を有している。
【0048】
脚部6は、中央圧接部5の一端に一体成形された脚基端部8と、この脚基端部8の先端に一体成形された脚先端部9とを有している。同様に、脚部7は、中央圧接部5の他端に一体成形された脚基端部10と、この脚基端部10の先端に一体成形された脚先端部11とを有している。
【0049】
中央圧接部5は、シリンダヘッド3が圧接される後述する中空シール部の頂面に形成されたシール平坦面12を有している。このシール平坦面12は、ガスケット1が環状に延びる周方向に対して直角の断面形状において、前記圧縮方向に延びる中心線に関して左右対称の形状とされている。また、シール平坦面12は、シリンダヘッド3と面接触することでシリンダヘッド3とシールする。このため、このシール平坦面12は、姿勢安定手段及びシール性向上手段として機能しうる。
【0050】
各脚基端部8、10は、中央圧接部5の両端から外側に膨らむように湾曲して延びている。また、各脚先端部9、11は、ガスケット1が取付溝4に装着される前の状態で、各脚基端部8、10の先端から斜め上方に外側に向かって直線状に延びている。これにより、本実施形態のガスケット1は、取付溝4に装着される前の状態で、先端に向かうに連れて両脚部6及び7間の間隔が徐々に広がるように、両脚部6、7が開いた形状とされている。
【0051】
また、各脚先端部9、11は、互いに係合する凹凸係合部13、14を対向内面に有するとともに、本実施形態のガスケット1が取付溝4に装着された状態で該取付溝4の内側面に圧接される突起部15、16を有している。凹凸係合部13、14は、互いに係合する波形状とされている。突起部15、16は、断面略半円形状とされている。
【0052】
なお、シール平坦面12、凹凸係合部13、14は環状のもので周方向に連続して延びている。また、突起部15、16は、周方向に連続して又は部分的に設置される。
【0053】
かかる構成を有する本実施形態のガスケット1は、図1に示されるように、両脚部6、7の両脚先端部9、11の対向内面同士を互いに密接させるとともに、凹凸係合部13、14を互いに係合させた状態で、被取付部材としてのシリンダヘッドカバー2の取付溝4内に、圧入状態で挿入されることにより、該取付溝4に保持される。この保持状態では、両脚先端部9、11の外側面に設けられた突起部15、16は取付溝4の内側面で圧縮されている。なお、図1においては、両脚先端部9、11の外側面と取付溝4の内側面との間に若干の隙間が形成されているが、実際には、高さが0.3mm程度の突起部15、16はほぼ完全に潰されており、後述する中実保持部17は実質的に密実状態(両脚先端部9、11の外側面と取付溝4の内側面との間に隙間のない状態)で取付溝4内に充填されている。このように中実保持部17が密実状態で取付溝4内に充填されていれば、取付溝4に対する中実保持部17の結合力や姿勢安定性を高めることができる。
【0054】
こうして、取付溝4に装着された本実施形態のガスケット1においては、対向内面同士を密接させた状態で取付溝4内に全体が挿入された両脚先端部9及び11により構成された、全体が取付溝4内に配置されて該取付溝4に保持された中実保持部17が形成されるとともに、両脚基端部8及び10並びに中央圧接部5により構成された、中実保持部17と一体に形成された中空シール部18が形成されている。この中空シール部18は、周方向に連続する密閉中空部19を内部に有している。この密閉中空部19は、その全体が取付溝4の外に存在しており、また略円形断面とされている。
【0055】
また、取付溝4に装着された本実施形態のガスケット1においては、ガスケット1が環状に延びる周方向に対して直角の断面形状において、中実保持部17の幅(図1の左右方向における幅)よりも、中空シール部18の幅(図1の左右方向における幅)の方が大きくされている。そして、中空シール部18は、前記両脚基端部8及び10により構成された、環状に延びる周方向に対して直角の断面形状において略円弧状をなす円弧状側壁部を有している。なお、この円弧状側壁部は略均一厚さで円弧状に延びている。
【0056】
そして、シリンダヘッド3に対してシリンダヘッドカバー2が取り付けられることにより、図2に示されるように、中空シール部18及び密閉中空部19が潰される方向に圧縮され、中空シール部18のシール平坦面12がシリンダヘッド3に圧接される。
【0057】
したがって、このガスケット1では、取付溝4の外に存在する中空シール部18の外面が取付溝4の内面で拘束されていないため、中空シール部18の外形状が変化すること、すなわち密閉中空部19の形状が変化することが、取付溝4で規制されることはなく、密閉中空部19が形状を変化させる自由度が高い。よって、例えば、図2の二点鎖線で示されるように、シリンダヘッドカバー2が熱膨張により変形したり、あるいはシリンダヘッド3に対して相対移動したりしたときに、中空シール部18の外形状(密閉中空部19の形状)が自由に変化することで、空気バネとして有効に機能し、シリンダヘッドカバー2等の変形や動きに良好に追従して良好なシール性を確保することができる。
【0058】
また、シリンダヘッドカバー2等の変形等により仮にガスケット1が傾いたり倒れたりしたとしても、圧縮された密閉中空部19を内部に有する中空シール部18により所定の面圧を確保することができ、シール性を良好に確保することが可能になる。
【0059】
さらに、このガスケット1では、中実保持部17の全体が取付溝4内に配置されて該取付溝4に保持されている。すなわち、このガスケット1では、ガスケット1のうち中実部分のみが取付溝4に保持されている。このため、取付溝4に対してガスケット1を確実に保持させることができ、ガスケット1の姿勢安定性を向上させることができる。
【0060】
また、このガスケット1では、中空シール部18の密閉中空部19の存在により、図4に示されるように低反発力となるので、樹脂製のシリンダヘッドカバー2のクリープ変形を良好に抑えることができるとともに、密閉中空部19に封入された空気により復元力が得られるので、経時的に弾性が低下するへたりを良好に抑えることができる。なお、図4は、ガスケットの圧縮量と反力との関係を概略的に示す線図であり、実線が本実施形態1のガスケット1についてのもの、点線が本実施形態1のガスケット1の密閉中空部の部分を中実にした比較例のガスケットについてのものである。
【0061】
また、本実施形態のガスケット1では、シール性向上手段及び姿勢安定手段として機能しうるシール平坦面12が中空シール部18の頂面に形成されているので、この中空シール部18とシリンダヘッド3とが接触当初から面接触状態で互いに圧接することで、中空シール部18とシリンダヘッド3とのシール性を高めることができるとともに、中空シール部18の姿勢を安定に保持して常に一定のシール性を発揮させるのに有利となる。加えて、ガスケット1が環状に延びる周方向に対して直角の断面形状において、中実保持部17の幅よりも中空シール部18の幅の方が大きくされていることも、中空シール部18の姿勢安定性の向上に寄与する。
【0062】
また、本実施形態のガスケット1では、凹凸係合部13、14の係合により、取付溝4内で両脚先端部9、11がずれたりする動きを規制することができる。このため、取付溝4に対して両脚先端部9、11をより確実に保持することができるとともに、中空シール部18の姿勢や形状を安定に保持して一定のシール性を発揮させることができる。
【0063】
さらに、本実施形態のガスケット1は、中央圧接部5及び一対の脚部6、7を有する断面略U字状の環状体よりなるので、型成形により容易に製造することができる。
【0064】
また、両脚先端部9、11が取付溝4に保持された状態では、両脚先端部9、11の外側面を取付溝4の内側面に圧接させる方向に両脚部6、7の弾性復元力が作用しているので、この弾性復元力により取付溝4に対する両脚先端部9、11の結合力を高めることができ、取付溝4からのガスケット1の脱落を効果的に防止することが可能となる。
【0065】
さらに、後述するように、相手材としてのシリンダヘッド3に圧接される先端にシール平坦面12を有するこのガスケット1では、相手材に圧接される先端に例えば凸曲面を有するガスケットと比較して、中空シール部18の圧縮量が少ない低圧縮時においても高い反発力を発揮して良好なシール性を確保することができる。
【0066】
(実施形態2)
図5に示される本実施形態のガスケット20は、前記実施形態1のガスケット1において、第1〜第3のシールリブ21〜23を設けるとともに、一対の係止段部24、25を設けたものである。
【0067】
すなわち、このガスケット20においては、前記中空シール部18が、被取付部材としてのシリンダヘッドカバー2との係止により自己の傾倒を規制しうる係止部として、シリンダヘッドカバー2の取付溝4の開口端(取付溝4の両内側面の端部)と係合するとともに、シリンダヘッドカバー2の端面(図5の下端面)と面接触する係止段部24、25を両外側面に有している。
【0068】
第1、第2シールリブ21、22は前記シール平坦面12の両端に形成されており、第3シールリブ23は前記シール平坦面12の中央に形成されている。すなわち、第1〜第3シールリブ21〜23は、中空シール部18の圧縮方向における断面において、軸対称となるように配設されている。なお、これら第1〜第3シールリブ21〜23は、いずれも断面略半円形状とされている。
【0069】
したがって、第1〜第3シールリブ21〜23は、シリンダヘッド3とのシール面圧を高めるシール性向上手段として機能しうるとともに、中空シール部18の姿勢を安定させる姿勢安定手段としても機能しうる。なお、第3シールリブ23を省略して、第1及び第2シールリブ21及び22のみとしても、実質的に同様の機能を果たしうる。
【0070】
また、このガスケット20では、シリンダヘッドカバー2の取付溝4に中実保持部17が保持された状態で、中空シール部18の両外側面に設けられた係止段部24、25がシリンダヘッドカバー2の取付溝4の開口端に係止することにより、中空シール部18が傾倒することを規制することができる。よって、中空シール部18の姿勢を安定に保持して、常に一定のシール性を発揮させるのに有利となる。
【0071】
なお、このガスケット20は、各脚先端部9、11の外側面に前記突起部15、16が形成されていない。このため、このガスケット20では、シリンダヘッドカバー2の取付溝4に装着された状態で、脚先端部9、11の外側面の全体が取付溝4の内側面の全体に圧接されており、中実保持部17は密実状態で取付溝4内に充填されている。
【0072】
その他の構成及び作用効果は、前記実施形態1のガスケット1と同様であるため、その説明を省略する。
【0073】
(実施形態3)
図6に示される本実施形態のガスケット26は、前記取付溝4に装着された状態で、前記シール平坦面12と、このシール平坦面12から前記中実保持部17に向かって(図6の上方に向かって)徐々に外方に広がるテーパ外側面27、28を有している。
【0074】
ここに、図6(a)は、本実施形態のガスケット26を被取付部材としてのシリンダヘッドカバー2の取付溝4に装着した状態を示す部分断面図であって、相手部材としてのシリンダヘッド3がガスケット1に圧接されておらず、シリンダヘッド3からガスケット1に締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示すものである。また図6(b)は、シリンダヘッド3がガスケット26に圧接されて、シリンダヘッド3からガスケット26に所定の締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示すものである。
【0075】
また、このガスケット26における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記中実保持部17側(図6の上方側)に底辺をもつとともに前記シール平坦面12側(図6の下方側)に頂点をもち、三角形の3個の頂点部分が弧状(R部)とされた略逆三角形とされている。
【0076】
さらに、このガスケット26においては、前記中空シール部18が、被取付部材としてのシリンダヘッドカバー2との係止により自己の傾倒を規制しうる係止部として、シリンダヘッドカバー2の取付溝4の開口端(取付溝4の両内側面の端部)に設けられたテーパ端面4a、4aに面接触して係合する係止テーパ面29、30を両外側面に有している。
【0077】
そして、このガスケット26の前記中空シール部18は、前記両脚基端部8及び10により構成された、環状に延びる周方向に対して直角の断面形状において前記シール平坦面12側の長さが前記中実保持部17側の長さよりも長い略くの字状をなす、略均一厚さの略くの字状側壁部31、32を有している。また、この中空シール部18は、略くの字状側壁部31、32の前記シール平坦面12側(図6の下方側)に、前記略逆三角形における側辺(前記底辺以外の辺)である略くの字状側壁部31、32の内側面と前記テーパ外側面27、28とが前記シール平坦面12から前記中実保持部17側(図6の上方側)に向かって斜め外方に略平行に延びて、逆ハの字状に略均一厚さで斜め外方に長く延びる傾斜側壁部33、34を有している。なお、この傾斜側壁部33、34の外側面が前記テーパ外側面27、28とされている。
【0078】
なお、このガスケット26は、各脚先端部9、11の外側面に前記突起部15、16が形成されていない。このため、このガスケット26では、シリンダヘッドカバー2の取付溝4に装着された状態で、脚先端部9、11の外側面の全体が取付溝4の内側面の全体に圧接されており、中実保持部17は密実状態で取付溝4内に充填されている。
【0079】
その他の構成は、前記実施形態1のガスケット1と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0080】
(実施形態4)
図7に示される本実施形態のガスケット35における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記シール平坦面12側(図7の下方側)に底辺をもつとともに、前記中実保持部17側(図7の上方側)に頂点をもち、三角形の3個の頂点部分が弧状(R部)とされた略三角形とされている。
【0081】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0082】
なお、密閉中空部19の断面形状が略三角形とされていることから、前記略くの字状側壁部31、32の形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なり、逆ハの字状に略均一厚さで斜め外方に長く延びる前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0083】
また、このガスケット35は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0084】
(実施形態5)
図8に示される本実施形態のガスケット36における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が円形とされている。
【0085】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0086】
なお、密閉中空部19の断面形状が円形とされていることから、前記略くの字状側壁部31、32の形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なり、逆ハの字状に略均一厚さで斜め外方に長く延びる前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0087】
また、このガスケット36は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0088】
(実施形態6)
図9に示される本実施形態のガスケット37における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、正方形の4個の頂点部分に弧状(R部)をもつ略正方形とされている。
【0089】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0090】
なお、密閉中空部19の断面形状が略正方形とされていることから、前記略くの字状側壁部31、32の形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なり、逆ハの字状に略均一厚さで斜め外方に長く延びる前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0091】
また、このガスケット37は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0092】
(実施形態7)
図10に示される本実施形態のガスケット38における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、ガスケット38の圧縮方向に長く、長方形の4個の頂点部分に弧状(R部)をもつ略長方形とされている。
【0093】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0094】
なお、密閉中空部19の断面形状が略長方形とされていることから、前記略くの字状側壁部31、32の形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なり、逆ハの字状に略均一厚さで斜め外方に長く延びる前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0095】
また、このガスケット38は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0096】
(実施形態8)
図11に示される本実施形態のガスケット39は、前記取付溝4に装着された状態で、前記中空シール部18が、前記シール平坦面12と、このシール平坦面12から前記中実保持部17に向かって(図11の上方に向かって)直立する直立外側面40、41とを有している。
【0097】
また、このガスケット39における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と同様、略逆三角形とされている。
【0098】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0099】
なお、直立外側面40、41とされていることから、前記中空シール部18の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なる。すなわち、このガスケット39の中空シール部18は、前記略くの字状側壁部31、32及び前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0100】
また、このガスケット39は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0101】
(実施形態9)
図12に示される本実施形態のガスケット42は、前記実施形態8のガスケット39と同様、前記中空シール部18が、前記シール平坦面12と、前記直立外側面40、41とを有している。
【0102】
また、このガスケット42における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記実施形態4のガスケット35と同様、略三角形とされている。
【0103】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0104】
なお、直立外側面40、41とされ、かつ、密閉中空部19の断面形状が略三角形とされていることから、前記中空シール部18の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なる。すなわち、このガスケット42の中空シール部18は、前記略くの字状側壁部31、32及び前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0105】
また、このガスケット42は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0106】
(実施形態10)
図13に示される本実施形態のガスケット43は、前記実施形態8のガスケット39と同様、前記中空シール部18が、前記シール平坦面12と、前記直立外側面40、41とを有している。
【0107】
また、このガスケット43における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記実施形態5のガスケット36と同様、円形とされている。
【0108】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0109】
なお、直立外側面40、41とされ、かつ、密閉中空部19の断面形状が円形とされていることから、前記中空シール部18の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なる。すなわち、このガスケット43の中空シール部18は、前記略くの字状側壁部31、32及び前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0110】
また、このガスケット43は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0111】
(実施形態11)
図14に示される本実施形態のガスケット44は、前記実施形態8のガスケット39と同様、前記中空シール部18が、前記シール平坦面12と、前記直立外側面40、41とを有している。
【0112】
また、このガスケット44における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記実施形態6のガスケット37と同様、略正方形とされている。
【0113】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0114】
なお、直立外側面40、41とされ、かつ、密閉中空部19の断面形状が略正方形とされていることから、前記中空シール部18の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なる。すなわち、このガスケット44の中空シール部18は、前記略くの字状側壁部31、32及び前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0115】
また、このガスケット44は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0116】
(実施形態12)
図15に示される本実施形態のガスケット45は、前記実施形態8のガスケット39と同様、前記中空シール部18が、前記シール平坦面12と、前記直立外側面40、41とを有している。
【0117】
また、このガスケット45における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記実施形態7のガスケット38と同様、略長方形とされている。
【0118】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0119】
なお、直立外側面40、41とされ、かつ、密閉中空部19の断面形状が略長方形とされていることから、前記中空シール部18の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なる。すなわち、このガスケット45の中空シール部18は、前記略くの字状側壁部31、32及び前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0120】
また、このガスケット45は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0121】
(実施形態13)
図16に示される本実施形態のガスケット46は、前記取付溝4に装着された状態で、前記中空シール部18が前記シール平坦面12を有していない。すなわち、このガスケット46では、ガスケット46が環状に延びる周方向に対して直角の断面において、中空シール部18の頂面が円弧状の凸曲面47とされている。
【0122】
また、このガスケット46における前記密閉中空部19は、周方向に対して直角の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と同様、略逆三角形とされている。
【0123】
その他の構成は、前記実施形態3のガスケット26と基本的に同様であるため、その説明を省略する。
【0124】
なお、中空シール部18の頂面が円弧状の凸曲面47とされていることから、中空シール部18の断面形状が、前記実施形態3のガスケット26と少し異なる。すなわち、このガスケット46の中空シール部18は、前記傾斜側壁部33、34を有していない。
【0125】
また、このガスケット46は、周方向に対して直角の断面において、中空シール部18及び密閉中空部19の断面積が、それぞれ前記実施形態3のガスケット26のものと同等とされている。
【0126】
(圧縮量に対する反力の評価)
図6〜図16に示した前記実施形態3〜13のガスケットについて、前記取付溝4に装着されたガスケットに対してシリンダヘッド3から所定の圧縮量を付与することにより、圧縮量と反力との関係を調べた。その結果を図17及び図18に示す。
【0127】
なお、前記シール平坦面12及び前記テーパ外側面27、28を有する前記実施形態3〜7のガスケットについての評価結果を図17に示す。図17中、細い実線が、図6に示す略逆三角形の密閉中空部19をもつ実施形態3のガスケット26の評価結果であり、太い実線が、図7に示す略三角形の密閉中空部19をもつ実施形態4のガスケット35の評価結果であり、細い一点鎖線が、図8に示す円形の密閉中空部19をもつ実施形態5のガスケット36の評価結果であり、細い二点鎖線が、図9に示す略正方形の密閉中空部19をもつ実施形態6のガスケット37の評価結果であり、太い一点鎖線が、図10に示す略長方形の密閉中空部19をもつ実施形態7のガスケット38の評価結果である。
【0128】
また、前記シール平坦面12及び前記直立外側面40、41を有する前記実施形態8、9、11、12のガスケット並びに前記凸曲面43を有する前記実施形態13のガスケットについての評価結果を図18に示す。図18中、細い実線が、図11に示す略逆三角形の密閉中空部19をもつ実施形態8のガスケット39の評価結果であり、太い実線が、図12に示す略三角形の密閉中空部19をもつ実施形態9のガスケット42の評価結果であり、細い二点鎖線が、図14に示す略正方形の密閉中空部19をもつ実施形態11のガスケット44の評価結果であり、太い一点鎖線が、図15に示す略長方形の密閉中空部19をもつ実施形態12のガスケット45の評価結果であり、細い点線が、図16に示す略逆三角形の密閉中空部19及び前記凸曲面43をもつ前記実施形態13のガスケット46についての評価結果である。
【0129】
まず、図17に示す細い実線と、図18に示す細い点線とを比較するとわかるように、圧縮量が1.5mm程度以下である低圧縮時における反力は、前記凸曲面43をもつ前記実施形態13のガスケット46よりも、前記シール平坦面12をもつ前記実施形態3のガスケット26の方が増大した。すなわち、前記シール平坦面12を設けることにより、低圧縮時における反力が増大した。
【0130】
また、図17に示す各線と、図18に示す細い点線以外の各線とを比較するとわかるように、圧縮量が2.5mm程度以上である高圧縮時における反力は、前記テーパ外側面27、28をもつ前記実施形態3〜7のガスケットよりも、前記直立外側面40、41をもつ前記実施形態8〜12のガスケットの方が大きく増大した。すなわち、前記テーパ外側面27、28を設けることにより、高圧縮時における反力が過度に増大することを抑えることができた。
【0131】
さらに、図17より、前記シール平坦面12及び前記テーパ外側面27、28をもつガスケットにおいては、前記密閉中空部19の断面形状を前記略逆三角形とすることが最も好ましいことがわかった。すなわち、密閉中空部19の断面形状が前記略逆三角形である前記実施形態3のガスケット26では、低圧縮時における反力が適度に高く、かつ、高圧縮時における反力が過度に上昇しなかった。このようにガスケット26の中空シール部18が、低圧縮時及び高圧縮時の双方で適正な反力となるのは、前記傾斜側壁部33、34を有する略くの字状側壁部31、32で、圧縮時における圧縮変形と剪断変形とがうまくバランスしていることも一つの要因と考えられる。
【0132】
そして、密閉中空部19の断面形状が前記略正方形である前記実施形態6のガスケット37が次に良好であり、密閉中空部19の断面形状が前記円形である前記実施形態5のガスケット36がその次に良好であった。
【0133】
これに対し、密閉中空部19の断面形状が前記略長方形である前記実施形態7のガスケット38では、高圧縮時における反力が過度に上昇した。これは、密閉中空部19が前記正方形である場合と比較して、圧縮時の屈曲点となる略くの字状側壁部31、32の中程の肉厚が大きいことが原因と考えられる。
【0134】
また、密閉中空部19の断面形状が前記三角形である前記実施形態4のガスケット35では、低圧縮時の高反力化の効果が全体的に小さめであった。
【図面の簡単な説明】
【0135】
【図1】実施形態1に係るガスケットを被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図である。
【図2】実施形態1に係るガスケットに相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図3】実施形態1に係るガスケットを被取付部材に装着する前の状態を示す部分断面図である。
【図4】ガスケットに対する圧縮量とその圧縮により生ずる反力との関係を示す図であり、実線が実施形態1に係るガスケットについてのもので、点線が密閉中空部を中実とした比較例に係るガスケットについてのものである。
【図5】実施形態2に係るガスケットを被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図である。
【図6】実施形態3に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図7】実施形態4に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図8】実施形態5に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図9】実施形態6に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図10】実施形態7に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図11】実施形態8に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図12】実施形態9に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図13】実施形態10に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図14】実施形態11に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図15】実施形態12に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図16】実施形態13に係るガスケットを示し、(a)は被取付部材に装着した状態であって、相手部材からの締め付け荷重が作用していない締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)は相手部材からの締め付け荷重が作用している締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図17】前記実施形態3〜7のガスケットについて、圧縮量と反力との関係を調べた評価結果を示す線図である。
【図18】前記実施形態8、9、11〜13のガスケットについて、圧縮量と反力との関係を調べた評価結果を示す線図である。
【図19】従来のガスケットに係り、(a)が締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)が締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【図20】他の従来のガスケットに係り、(a)が締め付け荷重付与前の状態を示す部分断面図であり、(b)が締め付け荷重付与後の状態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0136】
1、20…ガスケット 2…シリンダヘッドカバー(被取付部材)
3…シリンダヘッド(相手部材) 4…取付溝
5…中央圧接部 6、7…脚部
8、10…脚基端部 9、11…脚先端部
12…シール平坦面 13、14…係合凹凸部
15、16…突起部 17…中実保持部
18…中空シール部 19…密閉空間部
21〜23…第1〜第3シールリブ
24、25…係止段部(係止部)
27、28…テーパ外側面
29、30…係止テーパ面(係止部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材料よりなり、被取付部材の環状の取付溝に保持された状態で該被取付部材の相手部材が圧接されることにより、両該部材間をシールする環状のガスケットであって、
少なくとも一部が前記取付溝内に配置されて該取付溝に保持される中実保持部と、
前記中実保持部と一体に形成され、該中実保持部が前記取付溝に保持された状態にあるときに、該取付溝の外に存在するとともに周方向に連続する密閉中空部を、内部に有する中空シール部とを備えていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記中空シール部は、前記被取付部材との係止により自己の傾倒を規制しうる係止部を両外側面に有していることを特徴とする請求項1記載のガスケット。
【請求項3】
前記中空シール部は、前記相手部材との圧接により該相手部材とのシール性を高めるシール突条を先端に有していることを特徴とする請求項1又は2記載のガスケット。
【請求項4】
前記中空シール部は、前記相手部材との圧接により該相手部材とのシール性を高めるシール平坦面を先端に有していることを特徴とする請求項1又は2記載のガスケット。
【請求項5】
前記シール突条又は前記シール平坦面は、周方向に対して直角の断面形状において前記中空シール部の圧縮方向に延びる中心線に関して左右対称となるように配設されることで、前記中空シール部の姿勢を安定させる姿勢安定手段としても機能しうる構成とされていることを特徴とする請求項3又は4記載のガスケット。
【請求項6】
前記相手部材が圧接される中央圧接部と、該中央圧接部の両端から一体に連続して延びる脚基端部及び脚先端部をもつ一対の脚部とを有する略U字状の断面形状が、周方向に連続した環状体よりなり、
対向内面同士を密接させた状態で前記取付溝内に挿入された両前記脚先端部により、前記中実保持部が構成され、
両前記脚基端部及び前記中央圧接部により、前記中空シール部が構成されることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のガスケット。
【請求項7】
両前記脚先端部は、互いに係合する凹凸係合部を対向内面に有していることを特徴とする請求項6記載のガスケット。
【請求項8】
前記中空シール部は、前記シール平坦面から前記中実保持部に向かって徐々に外方に広がるテーパ外側面を有していることを特徴とする請求項4記載のガスケット。
【請求項9】
前記密閉中空部は、周方向に対して直角の断面形状が、前記中実保持部側に底辺をもつとともに前記シール平坦面側に頂点をもつ逆三角形又は略逆三角形とされていることを特徴とする請求項8記載のガスケット。
【請求項10】
前記密閉中空部は、周方向に対して直角の断面形状が、前記シール平坦面と略平行な辺をもつ矩形状又は略矩形状とされていることを特徴とする請求項8記載のガスケット。
【請求項11】
前記密閉中空部は、周方向に対して直角の断面形状が円形又は略円形とされていることを特徴とする請求項8記載のガスケット。
【請求項1】
弾性材料よりなり、被取付部材の環状の取付溝に保持された状態で該被取付部材の相手部材が圧接されることにより、両該部材間をシールする環状のガスケットであって、
少なくとも一部が前記取付溝内に配置されて該取付溝に保持される中実保持部と、
前記中実保持部と一体に形成され、該中実保持部が前記取付溝に保持された状態にあるときに、該取付溝の外に存在するとともに周方向に連続する密閉中空部を、内部に有する中空シール部とを備えていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記中空シール部は、前記被取付部材との係止により自己の傾倒を規制しうる係止部を両外側面に有していることを特徴とする請求項1記載のガスケット。
【請求項3】
前記中空シール部は、前記相手部材との圧接により該相手部材とのシール性を高めるシール突条を先端に有していることを特徴とする請求項1又は2記載のガスケット。
【請求項4】
前記中空シール部は、前記相手部材との圧接により該相手部材とのシール性を高めるシール平坦面を先端に有していることを特徴とする請求項1又は2記載のガスケット。
【請求項5】
前記シール突条又は前記シール平坦面は、周方向に対して直角の断面形状において前記中空シール部の圧縮方向に延びる中心線に関して左右対称となるように配設されることで、前記中空シール部の姿勢を安定させる姿勢安定手段としても機能しうる構成とされていることを特徴とする請求項3又は4記載のガスケット。
【請求項6】
前記相手部材が圧接される中央圧接部と、該中央圧接部の両端から一体に連続して延びる脚基端部及び脚先端部をもつ一対の脚部とを有する略U字状の断面形状が、周方向に連続した環状体よりなり、
対向内面同士を密接させた状態で前記取付溝内に挿入された両前記脚先端部により、前記中実保持部が構成され、
両前記脚基端部及び前記中央圧接部により、前記中空シール部が構成されることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のガスケット。
【請求項7】
両前記脚先端部は、互いに係合する凹凸係合部を対向内面に有していることを特徴とする請求項6記載のガスケット。
【請求項8】
前記中空シール部は、前記シール平坦面から前記中実保持部に向かって徐々に外方に広がるテーパ外側面を有していることを特徴とする請求項4記載のガスケット。
【請求項9】
前記密閉中空部は、周方向に対して直角の断面形状が、前記中実保持部側に底辺をもつとともに前記シール平坦面側に頂点をもつ逆三角形又は略逆三角形とされていることを特徴とする請求項8記載のガスケット。
【請求項10】
前記密閉中空部は、周方向に対して直角の断面形状が、前記シール平坦面と略平行な辺をもつ矩形状又は略矩形状とされていることを特徴とする請求項8記載のガスケット。
【請求項11】
前記密閉中空部は、周方向に対して直角の断面形状が円形又は略円形とされていることを特徴とする請求項8記載のガスケット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【公開番号】特開2007−120745(P2007−120745A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81425(P2006−81425)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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