説明

ガスケット

【課題】安定したシール性能を発揮することができるとともに装着時の反発力が低減されるガスケットを提供する。
【解決手段】2部材200、300のうちの一方の部材200に設けられた装着溝201に装着されると共に、2部材200、300により圧縮されて、これら2部材200、300間の隙間をシールするガスケット1において、高圧側(H)と低圧側(L)の両方の側面13、14上に、それぞれ長手方向に延びる凹部13a、14aを備え、2部材200、300により圧縮されると、胴体中央付近が低圧側(L)に向かって突き出るように湾曲変形すべく、高圧側(H)の凹部13aは低圧側(L)の凹部14aよりも深さが深く形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2部材により圧縮されて、これら2部材間の隙間をシールするガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の従来例に係るガスケットについて、図6〜図8を参照して説明する。図6は従来例に係るガスケットの装着前の状態を示す模式的断面図である。図7は従来例に係るガスケットにおける装着時の様子を示す模式的断面図である。図8は従来例に係るガスケットの模式的平面図である。
【0003】
ガスケット100は、例えば、自動車エンジンのインレットマニホールド用、フィルタブランケット用、シリンダヘッドカバー用等に用いられるものであり、2部材(第1部材150と第2部材160)間の隙間をシールするために用いられる。このガスケット100は、第1部材150に設けられた装着溝151に装着される。そして、ガスケット100は、第1部材150と第2部材160により圧縮されることによって、その上端部101及び下端部102が各部材表面に密着する。これにより2部材間の隙間をシールすることができる。
【0004】
このように構成されるガスケット100は、その断面形状が幅方向よりも高さ方向の方が寸法の長い略縦長形状となっており、装着時に2部材により圧縮されると図7に示すように胴体部の中央付近で湾曲変形を生じる。ガスケット100の平面形状は、図8に示すように直線部Sやコーナー部Cが混在する環状に形成されているため、断面形状が左右対称のガスケットにおいては、外側(低圧側(L))に凸状となるコーナー部Cでは外側に湾曲変形する(胴体部の中央付近が外側に突き出るように湾曲する)傾向があるものの、直線部Sではいずれの方向に変形するのか定まらず、外側に湾曲変形する部分と内側(高圧側(H))に湾曲変形する(胴体部の中央付近が内側に突き出るように湾曲する)部分とが混在し、変形方向が反転する部分でねじれが生じる。このようなねじれが生じた箇所では、ガスケット100が第1部材150や第2部材160に対して十分に密着しないため、シール機能が十分に発揮されにくい。
【0005】
また、近年では軽量化を目的としたエンジン部材の樹脂化またはアルミ化が進んでおり、これに伴ってエンジン部材の剛性が低下していることから、これに使用されるガスケットには反発力の低いものが求められている。
【0006】
例えば特許文献1や特許文献5には側面に突起を設けて傾斜や屈折、湾曲等を防止したガスケットが開示されているが、ガスケットの傾斜や屈折、湾曲等が防止されることでシール性は高められるものの、装着時のガスケットの圧縮率が高くなるため装着時に生じるガスケットの反発力は大きくなってしまう。
【特許文献1】特許第3310547号公報
【特許文献2】特開平10−184924号公報
【特許文献3】特開2002−21635号公報
【特許文献4】特開2002−71024号公報
【特許文献5】特開2003−269613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするとこ
ろは、安定したシール性能を発揮することができるとともに装着時の反発力が低減されるガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明におけるガスケットは、
2部材のうちの一方の部材に設けられた装着溝に装着されると共に、2部材により圧縮されて、これら2部材間の隙間をシールするガスケットにおいて、
高圧側と低圧側の両方の側面上に、それぞれ長手方向に延びる凹部を備え、
2部材により圧縮されると、胴体中央付近が低圧側の領域に向かって突き出るように湾曲変形すべく、高圧側の凹部は低圧側の凹部よりも深さが深く形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の構成によれば、ガスケットは、胴体中央付近が低圧側の領域に向かって突き出るように湾曲変形する。したがって、ガスケットの湾曲方向がばらついてしまうことはないので、ガスケットにねじれが発生することを防止できる。また、ガスケットの両側面に設けられた凹部によってガスケットは2部材による圧縮に対して変形を生じ易くなるので、該圧縮に対するガスケットの反発力が低減される。
【0010】
前記凹部の断面形状は、円弧状であってもよい。
【0011】
凹部の断面形状を円弧状とすることにより、2部材による圧縮時の応力集中を抑制できる。
【0012】
凹部の深さは、ガスケット断面の幅寸法に対して5%以上15%以下であってもよい。
【0013】
2部材のうちの他方の部材側の端部は、
2部材間の隙間に延出して他方の部材とのシール面を拡大するフランジ部を備え、
胴体中央付近が低圧側に向かって突き出るようにガスケットが湾曲変形するときに、他方の部材に対して面状に密着する構成であってもよい。
【0014】
なお、上記各構成は、可能な限り組み合わせて採用し得る。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明により、安定したシール性能を発揮することができ、装着時の反発力が低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【実施例1】
【0017】
図1〜図5を参照して、本発明の実施例に係るガスケットについて説明する。図1は本実施例に係るガスケットの模式的平面図である。図2は本実施例に係るガスケットの模式的断面図であり、図1のAA断面図である。図3は本実施例に係るガスケットの装着時(圧縮前)の状態を示す模式的断面図である。図4は本実施例に係るガスケットの装着時(圧縮時)の状態を示す模式的断面図である。図5は本発明の実施例に係るガスケットの比較実験の結果を示す表である。
【0018】
<ガスケットの構成及び概要>
本実施例に係るガスケット1は、図1に示すように、平面形状において直線部Sとコーナー部Cとが混在した環状の部材である。その断面形状は、例えば、図2に示すように、幅方向よりも高さ方向の方が、寸法が長い形状となっている。なお、ガスケット1の材料としては、例えば、ゴム硬度(デュロメータA:JIS K 6253)40〜70のアクリル系ゴム、ニトリル系ゴム、フッ素系ゴム等のゴム材料や、熱可塑性エラストマー等が使用できる。
【0019】
ここで、ガスケット1のうち、高さ方向の両端部(以下、それぞれ、第1端部11、第2端部12と称する)はシール面を形成する部分である。なお、本実施例では、シール性を高めるために、第1端部11及び第2端部12には、それぞれ環状のシール突起11a、12aが形成されている。
【0020】
また、第1端部11の両側は、高圧側(H)と低圧側(L)にそれぞれフランジ状に突出しており(フランジ部11b)、第1端部11によるシール面は、第2端部12によるシール面に対して、高圧側(H)と低圧側(L)にそれぞれ拡大されている。
【0021】
さらに、第1端部11はシール突起11aの内側と外側にシール突起11cが形成されている(断面においてはシール突起11aに対して略対称に形成されている)。シール突起11cは、高さがシール突起11aよりも小さく形成されており、フランジ部11bによって拡大されたシール面上に配置されている。
【0022】
そして、本実施例においては、ガスケット1の高圧側(H)の側面13(ここでは、内側面に相当する)と低圧側(L)の側面14(ここでは、外側面に相当する)に、それぞれ長手方向(ここでは、周方向)に延びる凹部13a、14aが形成されている。本実施例では、側面の全体にわたって凹部13a、14aが形成されている。
【0023】
凹部13a、14aは、断面形状が円弧状となるように形成されており、また、ガスケット1の幅方向の寸法に対するそれぞれの深さは、高圧側(H)の凹部13aが低圧側(L)の凹部14aよりも深くなるように形成されている。
【0024】
このように構成されたガスケット1は、2部材(以下、第1部材200、第2部材300と称する)間の隙間をシールするために用いられる。すなわち、ガスケット1は、第1部材200に設けられた装着溝201に装着される。
【0025】
そして、ガスケット1は、第1部材200と第2部材300により圧縮されることによって、第1端部11(シール突起11a、11b)が第2部材300の表面に密着し、第2端部12(シール突起12a)が第1部材200に設けられた装着溝201の溝底面に密着する。これにより、2部材間の隙間をシールすることができる。
【0026】
なお、本実施例に係るガスケット1の使用用途としては、自動車エンジンのインレットマニホールド用、フィルタブランケット用、シリンダヘッドカバー用等が考えられるが、これらの用途に限られないのは言うまでもない。
【0027】
<ガスケットの装着時(圧縮前)>
ガスケット1は、まず、図3に示すように、第1部材200に設けられた装着溝201に装着される。ここで、第1部材200と第2部材300により圧縮される前の状態においては、ガスケット1は装着溝201内において真っ直ぐな状態にある。
【0028】
なお、図中、T0は、ガスケット1における幅方向の中心線を示している。この中心線
T0は、第1部材200と第2部材300により圧縮される前の状態においては、溝底面に対して垂直となり、かつ湾曲していない。
【0029】
ここで、シール突起11a、12aは第1端部11及び第2端部12に対してそれぞれ中心線T0上に形成されている。また、高圧側(H)と低圧側(L)にそれぞれに突出している第1端部11のフランジ部11bは、その先端の間の長さが装着溝201の幅寸法よりも大きくなるように構成されている。
【0030】
<ガスケットの装着時(圧縮時)>
次に、第2部材300を第1部材200に取り付けると、ガスケット1は、図4に示すように、第1部材200と第2部材300によって圧縮される。なお、図中矢印Pは第2部材300による圧縮力の作用方向を示している。
【0031】
ここで、本実施例では、ガスケット1の高圧側(H)の側面13(内側面)と低圧側(L)の側面14(外側面)に、それぞれ長手方向に延びる凹部13a、14aが形成されており、ガスケット1の幅方向の寸法に対するそれぞれの深さは、高圧側(H)の凹部13aが低圧側(L)の凹部14aよりも深くなるように形成されている。
【0032】
したがって、ガスケット1が第1部材200と第2部材300によって圧縮されると、ガスケット1は、胴体中央付近が低圧側(L)に向かって突き出るように湾曲変形する。なお、凹部13a、14aは、ガスケット1の側面全体にわたって形成されているので、ガスケット1は、全体が上記のように湾曲変形する。
【0033】
また、図4に示すように、圧縮時におけるガスケット1の幅方向の中心線T1は湾曲している。そして、シール面を形成する両端部(第1端部11及び第2端部12)は、第2端部12が高圧側(H)に向かって傾斜しており、第1端部が第2部材300の表面と略平行に向かい合っている。
【0034】
第2部材300に密着する第1端部11は、高圧側(H)と低圧側(L)にそれぞれ突出するフランジ部11bによって幅方向にシール面が拡大されるとともに、その拡大された部分に形成されたシール突起11bがシール突起11aの内側と外側とで第2部材300に当接する。すなわち、第1部材200と第2部材300による圧縮の初期段階においては、第1端部11は、その断面においてシール突起11aとその両側のシール突起11bとによる3点で第2部材300と接触する構成であり、第2部材300に対して略面状に密着していくことになる。
【0035】
一方、装着溝201の溝底面に密着する第2端部12は、第1部材200と第2部材300による圧縮の初期段階においては、中心線上に形成されたシール突起12aのみによる1点で装着溝201の溝底面に接触する構成であり、第1部材200と第2部材300の圧縮によるガスケット1の湾曲変形によって、装着溝201の溝底面に対して傾斜して密着していくことになる。
【0036】
また、第1部材200と第2部材300の圧縮によってガスケット1が湾曲変形すると、低圧側(L)の側面14が装着溝201の側面201aに当接する。
【0037】
なお、図4に示しているのは、第1部材200と第2部材300の取付時における装着溝201の溝底から第2部材300の表面までの高さ方向の寸法に対して、ガスケット1の高さ方向の寸法のしめ代が小さい場合である。したがって、該しめ代を大きくした場合には、ガスケット1は胴体中央付近で屈折を生じ、第1部材200と第2部材300との間の隙間に延出している第1端部11のフランジ部11bは、装着溝201の外側で第1
部材200の表面と第2部材300の表面とに挟まれてそれぞれに密着することになる。
【0038】
<本実施例に係るガスケットの優れた点>
本実施例に係るガスケット1によれば、凹部13a、14aを設けたことによって、ガスケット1が第1部材200と第2部材300によって圧縮されると、ガスケット1は、胴体中央付近が低圧側(L)に向かって突き出るように湾曲変形する。したがって、ガスケット1の湾曲方向がばらついてしまうことはないので、ガスケット1にねじれが発生することを防止できる。
【0039】
また、凹部をガスケット1の両側面に形成することにより、第1部材200と第2部材300による圧縮に対してガスケット1が変形を生じ易くなるので、該圧縮に対するガスケット1の反発力が低減される。
【0040】
すなわち、ガスケット1の湾曲方向を一定とすることのみを目的とするのであれば、ガスケット1の高圧側(H)の側面にのみ凹部を形成する構成であってもねじれの発生を抑制できるが、本実施例に係るガスケット1のように、両方の側面に凹部を形成する構成とすることで、ねじれ発生の防止に加えて第1部材200と第2部材300による圧縮に対する反発力の低減効果を得ることができる。
【0041】
また、凹部13a、14aの断面形状を円弧状とすることにより、第1部材200と第2部材300による圧縮時の応力集中を抑制できる。ただし、凹部の断面形状は円弧状に限定されるわけではなく、適宜変更され得るのは言うまでもない。
【0042】
また、凹部13a、14aの側面13、14からの深さも、ガスケットや装着溝等の仕様によって適宜設定され得るものであるが、ガスケット1の幅寸法に対して5%以上15%以下の範囲内であることが好ましい。すなわち、5%より小さい場合には、第1部材200及び第2部材300による圧縮に対する反発力の低減効果が小さくなり、15%を超えるとガスケットの成型が困難となるからである。なお、本願発明者らが鋭意行った研究から、凹部の幅(ガスケット断面における高さ方向の長さ)を変えてもガスケットの反発力は変化せず、凹部の深さだけが反発力に影響を与えることがわかっている。
【0043】
また、シール突起11cは、シール突起11aよりも高さを低く形成されており、シール突起11aの両側で第2部材300に当接することにより、シール突起11aの第2部材300表面に対する垂直性を維持するように機能する。また、シール突起11aは、両側のシール突起11cよりも高さを高く形成されているので、シール突起11aの方がシール突起11cよりも大きく圧縮されることになり、シール突起11aの1点で面圧が高められる。これにより、第1端部11の第2部材300に対する安定したシール性を得ることができる。
【0044】
また、第2端部12は、シール突起12aによる1点で密着する構成であり、装着溝201に対する面圧が高くなり、シール性能が向上される。なお、第2端部12は、装着溝201の溝底に対して傾斜して密着することになるが、高圧側(H)に傾くので、シール性能の低下は抑制される。
【0045】
なお、本実施例では、ガスケット1の平面形状が直線部とコーナー部とが混在する非円形の場合を例にして説明したが、本発明に係るガスケットの形状から円形形状が除外される訳ではない。
【0046】
また、本実施例では、凹部13a、14aがガスケット1の下側、すなわち、胴体中央付近よりも装着溝201の溝底側に形成されているが、凹部13a、14aを形成する位
置はこれに限定されるものではない。ただし、凹部を胴体中央付近よりも上側に形成した場合には、装着時にガスケットが傾くおそれがあるため、胴体中央付近よりも下側に形成するのが好ましい。また、凹部を下側に形成することで側面中央部に空いたスペースには倒れ防止突起等を形成することも好適である。また、圧縮される前の状態において、凹部13a、14aは、装着溝201内に収まるように形成されるのが好ましい。こうすることで、ガスケット1が第1部材200と第2部材300によって圧縮された場合には、ガスケット1の湾曲変形によって突き出る部分が装着溝201の内部となり、湾曲変形によってガスケット1の一部が装着溝201からはみ出てしまうことが防止される。
【0047】
また、形成される凹部13a、14aの数も両側面13、14に各1つずつに限られるものではなく、それぞれ複数形成することも、また、内側面13と外側面14とで異なる数を形成することも無論可能である。
【0048】
さらに、本実施例では凹部13a、14aをガスケット1の側面の全体にわたって形成する構成としているが、側面の一部に凹部を形成する構成であってもよい。すなわち、所望の湾曲方向とは逆の方向に湾曲を生じるおそれのある部分の側面のみに凹部を形成してもよく、本実施例で言えば、図1のガスケット平面図における直線部Sの側面のみに凹部を形成する構成であってもよい。
【0049】
<比較実験>
ここで、本実施例に係るガスケットのシール性能の安定性および低反発性について、図5を参照して説明する。図5は、凹部の数や深さ等の構成が本実施例のガスケットとは異なる比較例を用いた比較実験の結果を示す表である。
【0050】
実験に用いたガスケットは、ゴム硬度60のゴム材からなるもので、ガスケット高さを8.9mm、ガスケット幅を2.2mmとし、内側凹部深さ比(ガスケット幅に対する比)が0、7、14%、外側凹部深さ比(ガスケット幅に対する比)が0、7、14%のそれぞれの組み合わせからなる断面形状を有するものとした。このガスケットを深さ5mm、幅3mmの溝を有する部材に装着し、平坦な表面を有する部材で3.1mm圧縮した。その結果得られた変形方向の反転の有無、反発力をそれぞれ図5の表に示している。
【0051】
まずNo.1とNo.9を比較する。No.1はいずれの側面にも凹部が形成されていないガスケットであり、No.9は凹部が両方の側面に形成されているガスケットである。No.9のガスケットに形成されている凹部は、その深さが両側面のいずれも同じ深さに形成されているため、No.1とNo.9はいずれもガスケット断面の中心線に対して軸対称の断面形状となっている。そのため、装着時の圧縮に対するNo.1とNo.9の変形方向はいずれも一定に定まらずねじれが発生している。ただし、表の結果から凹部を形成することでガスケットの反発力が低減されていることがわかる(3.4→2.9)。
【0052】
次にNo.1とNo.7を比較する。No.7は、凹部が高圧側(すなわち、内側)にのみ形成されたガスケットである。No.7は、凹部を高圧側に形成することで胴体中央付近が低圧側(外側)に向かって突き出るように湾曲変形し易くなっているため、変形方向が一定に定まりねじれの発生が防止されていることがわかる。また、凹部を形成することでガスケットの反発力が低減されていることがわかる(3.4→3.0)
【0053】
次にNo.7とNo.9を比較する。No.7は凹部が一方の側面にのみ形成され、No.9は凹部が両方の側面に形成されている。表の結果から両方の側面に凹部を形成することでガスケットの反発力が低減されていることがわかる(3.0→2.9)。
【0054】
最後に、No.8をNo.7及びNo.9と比較する。No.8は凹部が両方の側面に
形成され、なおかつ高圧側の凹部が低圧側の凹部に対して深く形成されているガスケットである。すなわち本実施例のガスケットに対応したものである。No.7との比較では、No.7は高圧側に凹部を形成することで断面を非対称としガスケットの変形方向に一定性を持たせることが可能となっているものの、両方の側面に凹部を形成しているNo.8の方がガスケットの反発力が低減されていることがわかる(3.1→3.0)。また、No.9との比較では、低圧側の凹部の深さがより深いNo.9の方がガスケットの反発力では優れているものの、両方の凹部が同じ深さに形成された軸対称形状となっているのでガスケットの変形方向が一定に定まらずねじれが発生している。
【0055】
以上より、本実施例に対応するNo.8のガスケットにおいては、両側面に凹部の形成することでガスケットの反発力の低減が図られるとともに、高圧側の凹部を低圧側の凹部に対して相対的に深くしてガスケット断面を非対称形状とすることでガスケットの変形方向に一定性を持たせることも可能となることがわかる。
【0056】
すなわち、No.4、7のように凹部を高圧側にのみ形成することでも本実施例と同様にガスケットの変形方向に一定性を持たせることは可能であるが、凹部を両側に形成しているNo.8(本実施例)のガスケットの方が、ねじれ発生の防止(変形方向の反転なし)に加えて反発力の低減効果を得られることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施例に係るガスケットの模式的平面図である。
【図2】本発明の実施例に係るガスケットの模式的断面図である。
【図3】本発明の実施例に係るガスケットの装着時(圧縮前)の状態を示す模式的断面図である。
【図4】本発明の実施例に係るガスケットの装着時(圧縮時)の状態を示す模式的断面図である。
【図5】本発明の実施例に係るガスケットの比較実験の結果を示す表である。
【図6】従来例に係るガスケットの装着前の状態を示す模式的断面図である。
【図7】従来例に係るガスケットにおける装着時の様子を示す模式的断面図である。
【図8】従来例に係るガスケットの模式的平面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 ガスケット
11 第1端部
11a シール突起
11b フランジ部
11c シール突起
12 第2端部
12a シール突起
13 側面
13a 凹部
14 側面
14a 凹部
200 第1部材
201 装着溝
201a 側面
300 第2部材
T0、T1 中心線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2部材のうちの一方の部材に設けられた装着溝に装着されると共に、2部材により圧縮されて、これら2部材間の隙間をシールするガスケットにおいて、
高圧側と低圧側の両方の側面上に、それぞれ長手方向に延びる凹部を備え、
2部材により圧縮されると、胴体中央付近が低圧側に向かって突き出るように湾曲変形すべく、高圧側の前記凹部は低圧側の前記凹部よりも深さが深く形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記凹部の断面形状は、円弧状であることを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記凹部の深さは、ガスケット断面の幅寸法に対して5%以上15%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のガスケット。
【請求項4】
前記2部材のうちの他方の部材側の端部は、
前記2部材間の隙間に延出して他方の部材とのシール面を拡大するフランジ部を備え、
胴体中央付近が低圧側に向かって突き出るようにガスケットが湾曲変形するときに、他方の部材に対して面状に密着することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−239958(P2007−239958A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66580(P2006−66580)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】