説明

ガスケット

【課題】部品点数を増加させることなく、段差のある部分においてもシール性を発揮させることのできるガスケットを提供する。
【解決手段】溝に装着されると共に、該溝の溝底表面に密着する第1シール部111を有する装着部110と、該装着部110を介して第1シール部111とは反対側に設けられる第2シール部130と、を備えるガスケット100において、第2シール部130は、前記溝に沿って設けられる第1凸部131と、第1凸部131よりも突出量が小さく、かつ第1凸部131の両側に沿って該第1凸部131と一体的に設けられる一対の第2凸部132,133とから構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
各種装置において、液体や気体などの流体の漏れを防止するために、ガスケットが用いられている。例えば自動車のエンジンには、インレットマニホールド用,フィルターブランケット用,シリンダーヘッドカバー用,カムカバー用など、各種用途において、比較的大型のガスケットが用いられている。
【0003】
一般的に、ガスケットは2面間の隙間を封止するものである。上記の各種用途においては、2面のうちの一方の面を有する部材に溝が設けられ、この溝にガスケットを装着させるのが一般的である。図9を参照して、従来例に係るガスケットについて説明する。図9は従来例に係るガスケットの模式的断面図である。
【0004】
従来例に係るガスケット300は、2面のうちの一方の面を有する部材に設けられた溝に装着されて、これら2面間の隙間を封止するものである。そして、ガスケット300は、溝に装着される装着部310と、溝側面側から一方の部材表面に張り出し、2面間に挟まれる張出部320とを備えている。また、装着部310の先端には、溝底表面に密着する第1シール部311が設けられており、装着部310を介して第1シール部311とは反対側には第2シール部330が設けられている。更に、張出部320には、2面のうちの他方の面に当接する一対の凸部341,342が設けられている。以上の構成により、主として、第1シール部311と第2シール部330によって、2面間の隙間を封止する。
【0005】
ここで、溝加工や組立公差などの影響により、ガスケットが装着される溝の深さが、場所によって異なっていることもある。また、近年、自動車のエンジンの場合、軽量化を目的として、エンジンを構成する部材の素材として、樹脂材やアルミニウムなどの剛性の低い材料が用いられる傾向にある。このような剛性の低い材料が用いられた部材にガスケットが密着する場合には、ガスケットの反力を低くしないと、当該部材が変形してしまう。以上のことから、近年、ガスケットには低反力化が求められている(特許文献1〜4参照)。
【0006】
また、上述した2面のうちの他方の面を有する部材が1部材で構成される場合には、通常、ガスケットが密着する面は段差のない面で構成されるため、それほど問題は生じない。しかしながら、当該他方の面を有する部材が複数の部材で構成される場合には、ガスケットが密着する面は段差を有する面となってしまうため、適正にシール性を発揮させるためには、何らかの工夫が必要となる。勿論、当該他方の面を有する部材が1部材で構成される場合であっても、ガスケットが密着する面に段差があれば、同様に、何らかの工夫が必要となる。
【0007】
このようにガスケットが密着する面に段差がある場合に、適正にシール性を発揮させる技術として、段差の部分にシリコーンゴムなどの液状シールを塗布するものが知られている(特許文献5参照)。しかし、液状シールを塗布する技術を採用する場合には、ガスケットとは別に液状シールを必要とし、かつ液状シールを塗布する工程が必要となってしまう。また、液状シールを塗布することで段差部の隙間を埋めることはできるが、その隅部(E2の部分(図6参照))で十分な面圧を得ることはできず、さらにはガスケットが上記の他方の面に固着してしまい、ガスケットの取り外し作業が大変になってしまったりす
るという問題もある。
【特許文献1】特開2003−26913号公報
【特許文献2】特開2002−71024号公報
【特許文献3】特開2002−21635号公報
【特許文献4】特開平10−9395号公報
【特許文献5】特開2006−132485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、部品点数を増加させることなく、段差のある部分においてもシール性を発揮させることのできるガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0010】
すなわち、本発明は、
溝に装着されると共に、該溝の溝底表面に密着する第1シール部を有する装着部と、
該装着部を介して第1シール部とは反対側に設けられる第2シール部と、
を備えるガスケットにおいて、
第2シール部は、前記溝に沿って設けられる第1凸部と、第1凸部よりも突出量が小さく、かつ第1凸部の両側に沿って該第1凸部と一体的に設けられる一対の第2凸部とから構成されることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第1凸部が圧縮する場合に、その両側に一体的に設けられた一対の第2凸部によって、第1凸部における両側への変形を抑制することができる。その結果、第1凸部の反力の低下を抑制できる。従って、本発明のガスケットによれば、段差のある部分でもシール性を発揮させることができる。
【0012】
この点について、更に詳しく説明する。ガスケットが密着する面に段差がある場合、ガスケットのシール部は段差に沿うように変形する。この場合、ガスケットのうち段差の角部に当る部分に応力が集中し、ガスケットによる前記「密着する面」への面圧は、角部に当る部分が最も高くなり、段差の隅部に当る部分が最も小さくなる。ここで、ガスケットのシール部を段差に沿うように変形し易くするためには、シール部の柔軟性を高めるのが望ましいが、シール部の柔軟性を高めると、上記角部に当る部分の応力集中によってシール部の変形が大きくなり、上記隅部に当る部分の面圧が小さくなりすぎて、当該部分のシール性が低下してしまう。これに対し、本発明によれば、上記の通り第2凸部を設けたことで、第1凸部の反力の低下を抑制することができ、段差のある部分でもシール性を発揮させることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように、本発明によれば、部品点数を増加させることなく、段差のある部分においてもシール性を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0015】
(実施例1)
図1〜図8を参照して、本発明の実施例1に係るガスケットについて説明する。
【0016】
<ガスケットの構成>
図1〜図3を参照して、本発明の実施例1に係るガスケットの構成について説明する。図1は本発明の実施例1に係るガスケットの平面図の一部である。図2は本発明の実施例1に係るガスケットの模式的断面図である。なお、図2は図1中XX断面図である。図3は本発明の実施例1に係るガスケットの模式的断面図の一部を拡大した図である。
【0017】
本実施例に係るガスケット100は、2面のうちの一方の面を有する部材に設けられた溝に装着されて、これら2面間の隙間を封止するものである。
【0018】
そして、ガスケット100は、溝に装着される装着部110と、溝側面側から一方の部材表面に張り出し、2面間に挟まれる張出部120とを備えている。また、装着部110の先端には、溝底表面に密着する第1シール部111が設けられており、装着部110を介して第1シール部111とは反対側には第2シール部130が設けられている。更に、張出部120には、2面のうちの他方の面に当接する一対の凸部141,142が設けられている。以上の構成により、主として、第1シール部111と第2シール部130によって、2面間の隙間を封止する。
【0019】
また、装着部110の両側面には、一対の突出部151,152が、長手方向に所定の間隔で複数備えられている。これらの突出部151,152は、溝の両側面に当接して、ガスケット100が溝内で倒れたり、座屈したり、位置がずれたりしてしまうことを防止するために設けられている。
【0020】
装着部110は、先端に向かって徐々に幅が狭くなるように、両側面は傾斜面によって構成されている。つまり、図2に示すように、装着部110の両側面は、傾斜角度αだけ傾斜している。また、張出部120はガスケット100の装着状態をより安定させるために設けられている。この張出部120は、2面間に挟まれるが、張出部120に設けられた一対の凸部141,142が他方の面に当接するように構成しているので、反力の増加を抑制することができる。
【0021】
そして、本実施例においては、第2シール部130は、溝に沿って設けられる第1凸部131と、第1凸部131よりも突出量が小さく、かつ第1凸部131の両側に沿って該第1凸部131と一体的に設けられる一対の第2凸部132,133とから構成される。第1凸部131は、長手方向に垂直な断面形状が略半円形状であり、第2凸部132,133は、長手方向に垂直な断面形状が略(1/4)円形状である。
【0022】
本実施例においては、第1凸部131の幅Aを0.6mmとし、第2凸部132,133の幅Bをそれぞれ0.3mmとしている。そして、第2凸部132,133の突出量(高さ)Cを0.3mmとし、第1凸部131の突出量(高さ)C+Dを0.5mmとしている。つまり、第1凸部131は第2凸部132,133よりも更にD分(0.2mm)だけ突出している。また、第1凸部131の曲率半径R1及び第2凸部132,133の曲率半径R2は、いずれも0.3mmとしている。なお、これらの寸法は、適用箇所や各種構成部材の素材などに応じて適宜設定し得る。
【0023】
また、本実施例に係るガスケット100の素材はエラストマーであり、より具体的には、アクリル系ゴムやニトリル系ゴムやフッ素ゴムなどを採用し得る。そして、例えばエンジンに用いられる各種用途のガスケットは、その断面形状が、通常、高さが5〜20mm,幅が1.5〜6mmの縦長の形状となるように設計される。本実施例に係るガスケット100の場合には、その断面形状のアスペクト比が0.2〜0.3となるように設計され
る。
【0024】
<ガスケットの機能>
特に、図4〜図7を参照して、本実施例に係るガスケット100の機能について説明する。図4は本発明の実施例1に係るガスケットの装着完了前の状態を示す模式的断面図である。図5は本発明の実施例1に係るガスケットの装着完了状態を示す模式的断面図である。なお、図5においては、長手方向に垂直な断面を示している。図6は本発明の実施例1に係るガスケットの装着完了状態を示す模式的断面図である。なお、図6においては、長手方向に平行な断面(ガスケットの幅方向の中心面を切断した断面)を示している。図7は本発明の実施例に係るガスケットにおける第2シール部の挙動を説明する模式的断面図である。
【0025】
本実施例に係るガスケット100は、上記の通り、2面のうちの一方の面を有する部材に設けられた溝に装着されて、これら2面間の隙間を封止するものである。本実施例では、2面のうちの一方の面を有する部材がヘッドカバー500であり、2面のうちの他方の面を有する部材が、シリンダヘッド600aとチェーンカバー600bにより構成される場合を例にして説明する。
【0026】
ヘッドカバー500には溝501が設けられている。この溝501にガスケット100の装着部110が装着される。図4に示すように、ガスケット100の装着部110を溝501に装着した後に、シリンダヘッド600a及びチェーンカバー600bとヘッドカバー500とを組み立てる。ガスケット100の装着部110は、その高さが溝501の深さよりも大きく、その幅は溝501の幅よりも小さく設定されている(図4参照)。
【0027】
そして、シリンダヘッド600a及びチェーンカバー600bとヘッドカバー500とを組み立てると、ガスケット100は、シリンダヘッド600aの表面とヘッドカバー500における溝501の溝底面501aによって、及びチェーンカバー600bの表面とヘッドカバー500における溝501の溝底面501aによって、縦方向に圧縮される。これにより、ガスケット100の第1シール部111が溝底面501aに密着し、第2シール部130がシリンダヘッド600aの表面又はチェーンカバー600bの表面に密着する。また、張出部120に設けられた一対の凸部141,142も、シリンダヘッド600aの表面又はチェーンカバー600bの表面に密着する。
【0028】
以上の構成により、主として、第1シール部111と第2シール部130によって、2面間の隙間を封止する。
【0029】
ここで、本実施例においては、上記の通り、2面のうちの他方の面を有する部材が、シリンダヘッド600aとチェーンカバー600bにより構成されている。そのため、他方の面は平坦面ではなく、図6に示すように段差が形成される。これにより、ガスケット100の第2シール部130は、段差に沿うように変形する。この場合、ガスケット100のうち段差の角部に当る部分(図6中、矢印E1にて示す部分)に応力が集中し、ガスケット100による他方の面への面圧は、角部に当る部分E1が最も高くなり、段差の隅部に当る部分(図6中、矢印E2にて示す部分)が最も小さくなる。
【0030】
また、本実施例においては、上記の通り、第2シール部130は、第1凸部131と一対の第2凸部132,133とから構成されている。そして、他方の面に対しては、基本的に、最も突出する第1凸部131が密着する。
【0031】
ここで、この第1凸部131は、一対の第2凸部132,133よりも更に突出し、かつ第2シール部130の全体の幅に対して幅が狭く構成されている。従って、第1凸部1
31は、その剛性が比較的小さく、柔軟性が高くなるように構成されている。これにより、第1凸部131は、段差が大きくても、段差に沿って密着するよう構成されている。このように、第1凸部131は、段差に沿って変形する機能を発揮する。
【0032】
そして、図7に示すように、第1凸部131が他方の面から圧力Pを受けると、第1凸部131には、その肉が両側に逃げるような力Qが作用する。これにより、第1凸部131において、その肉が両側に逃げるように変形し過ぎた場合には、他方の面への面圧の分布が分散し、面圧不足となってシール性が低下してしまう。
【0033】
しかし、本実施例では、上記の通り、第1凸部131の両側に沿って該第1凸部131と一体的に設けられる一対の第2凸部132,133が備えられている。これにより、第1凸部131における両側への変形を抑制することができる。その結果、第1凸部131の面圧の低下を抑制できる。このように、第2凸部132,133は、第1凸部131における両側への変形を抑制する機能を発揮する。
【0034】
なお、第1凸部131が段差に沿って変形する機能を発揮させ、かつ第2凸部132,133が第1凸部131における両側への変形を抑制する機能を発揮させるために、これらの形状寸法を適正な値に設定する必要があることは言うまでもない。特に、曲率半径の寸法が重要である。
【0035】
例えば、第1凸部131の高さや幅や曲率が小さ過ぎると、体積的な量が不足してしまうため、段差が大きいと段差の隅部に対して第1凸部131が密着しないか、第1凸部131の隅部への面圧が低くなってしまう。また、第1凸部131の高さや幅や曲率が大き過ぎると、第1凸部131の柔軟性が低くなり、段差が大きいと段差に沿って十分に変形しきれずに、段差の隅部に対して第1凸部131が密着しないか、第1凸部131の隅部への面圧が低くなってしまう。
【0036】
また、第2凸部132,133の高さや幅や曲率が小さ過ぎると、第1凸部131における両側への変形をあまり抑制することができず、段差が大きいと段差の隅部に対して第1凸部131が密着しないか、第1凸部131の隅部への面圧が低くなってしまう。また、第2凸部132,133の高さや幅や曲率が大き過ぎると、第2凸部132,133も他方の面に対して接触した場合に、反力が大きくなってしまうため、段差の有無に関係なく、ガスケット100の反力を低くするという要求に応えることができなくなってしまう。
【0037】
上記のように、A=0.6mm,B=0.3mm,C=0.3mm,D=0.2mm,R1=R2=0.3mmに設定すると、他方の面の段差が0.4mmの場合でも好適にシール性を発揮させることができる。このうち、曲率半径R1とR2が最も重要な設計事項となる。なお、これらの曲率半径はできる限り大きなほうが、圧縮時の歪を抑制できるので望ましい。また、ガスケット100の断面形状は、幅方向の中心面に対して左右対称にするのが望ましい。左右対称にすることにより、ガスケット100が圧縮した際に、ガスケット100の倒れや座屈を抑制することができる。
【0038】
<本実施例の優れた点>
本実施例に係るガスケット100によれば、ガスケット100が密着する面(他方の面)に段差があっても、第1凸部131が、段差に沿って変形する。しかも、第1凸部131が他方の面から圧力Pを受けて、その肉が両側に逃げようとしても、一対の第2凸部132,133により、第1凸部131における両側への変形を抑制することができる。その結果、第1凸部131の面圧の低下を抑制できる。従って、本実施例に係るガスケット100によれば、段差のある部分でもシール性を発揮させることができる。そして、本実
施例に係るガスケット100によれば、ガスケット100単体で段差のある部分でもシール性を発揮させるこができ、液状シールなどは必要としない。
【0039】
また、第2シール部130は、第1凸部131と一対の第2凸部132,133とから構成され、全体としては、その断面積を比較的大きくすることができる。従って、ガスケット100が圧縮した際に第2シール部130に生じる応力集中を緩和でき、応力集中による破損を抑制することができる。なお、ガスケット100全体の反力は従来品と同程度に設定できるので、密着面に段差がない場合であっても、本実施例に係るガスケット100を従来品と同様に用いることができる。
【0040】
(実施例2)
図8には、本発明の実施例2が示されている。上記実施例1では、張出部を備える構成の場合について説明したが、本実施例では張出部を備えない構成の場合について説明する。図8は本発明の実施例2に係るガスケットの模式的断面図である。
【0041】
本実施例に係るガスケット200は、上記実施例1に係るガスケット100と同様に、溝に装着される装着部210を備えている。また、装着部210の先端には、溝底表面に密着する第1シール部211が設けられており、装着部210を介して第1シール部211とは反対側には第2シール部230が設けられている。なお、本実施例における装着部210は、その両側面は傾斜していない。
【0042】
更に、第2シール部230は、溝に沿って設けられる第1凸部231と、第1凸部231よりも突出量が小さく、かつ第1凸部231の両側に沿って該第1凸部231と一体的に設けられる一対の第2凸部232,233とから構成される。そして、第1凸部231は、長手方向に垂直な断面形状が略半円形状であり、第2凸部232,233は、長手方向に垂直な断面形状が略(1/4)円形状である。
【0043】
以上のように、本実施例に係るガスケット200は、実施例1に係るガスケット100における張出部120、及び、張出部120に設けられる一対の凸部141,142を備えていない点及び装着部210の両側面が傾斜していない点を除いて、実施例1に係るガスケット100と同一の構成である。
【0044】
従って、本実施例に係るガスケット200においても、上記実施例1の場合と同様の効果を得ることができる。なお、本実施例に係るガスケット200は、実施例1に係るガスケット100に比べて、最大主歪に関してはやや劣るが、段差部分に対するシール性(最大面圧が高いほど良い)や反力の低さに関しては優れている。これらについては、以下に示すFEM解析結果から明らかである。
【0045】
(FEM解析結果)
従来品,実施例1に係るガスケット100及び実施例2に係るガスケット200について、段差に対するシール性を評価するFEM解析の結果を説明する。図10はFEM解析のモデルを示す概略図である。図11〜図13はFEM解析結果を示す表である。
【0046】
図10中、矢印Tで示すのがガスケットに相当する。この解析においては、ガスケットTの長さLを7.5mmに設定し、ガスケットTの標準硬度「Duro A」を50に設定した。また、従来品及び実施例1に係るガスケット100については、高さh0を7.95mm,幅d0を6.0mm,傾斜角度αを2.0度に設定した(寸法の位置については図2及び図4参照)。また、実施例2に係るガスケット200については、高さh0を7.95mm,幅d0を1.79mmに設定した(寸法の位置については図8参照)。また、溝501の深さHは4.50mmに設定し、溝501の幅Wは3.15mmに設定し
た(寸法の位置については、図4及び図8参照)。更に、実施例1に係るガスケット100及び実施例2に係るガスケット200における第2シール部130,230の各部の寸法に関しては、図3において、A=0.6mm,B=0.3mm,C=0.3mm,D=0.2mm,R1=R2=0.3mmに設定した。
【0047】
そして、シリンダヘッド600aとチェーンカバー600bとの段差Sが、0.1mm,0.2mm,0.3mm,0.4mmの場合について、それぞれ解析を行った。また、解析は、ガスケットTの圧縮率が0.33となるようにガスケットTを圧縮した場合について行い、段差の隅部に当る部分における最大面圧(MPa),反力(N/mm)及び最大主歪みについて算出した。ここで、シール性に関しては、上記隅部に対する最大面圧が1.0MPa以上あれば、密封可能として○とし、1.0MPa未満の場合には、密封不可能として×とした。
【0048】
図11は従来品と実施例1に係るガスケットの解析結果を比較したものである。この結果から、本実施例に係るガスケット100は、反力を従来品と同等に保ちつつ、従来品に比べて、最大主歪みを小さくすることができ、かつ、段差部分におけるシール性を向上させることができることが分かる。そして、従来品の場合には、段差が0.4mmになると密封が不可能になってしまうのに対して、本実施例に係るガスケット100の場合には、段差が0.4mmになっても密封可能であることが分かる。
【0049】
図12は実施例1に係るガスケットと実施例2に係るガスケットの解析結果を比較したものである。この結果から、実施例2に係るガスケット200については、最大主歪みは実施例1よりも劣る(従来品と同程度)ものの、段差の隅部に当る部分における最大面圧や反力については、実施例1よりも優れていることが分かる。従って、段差が大きくなる場合や、シリンダヘッド600aやチェーンカバー600bの素材の剛性が低い場合には、実施例2の方がより良いことが分かる。
【0050】
図13は段差の隅部に当る部分における最大面圧が1.0MPaに達する場合の実施例1に係るガスケット100と実施例2に係るガスケット200のつぶし量を比較したものである。この結果から、実施例2の場合のほうが、より少ないつぶし量で密封を可能にすることができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】図1は本発明の実施例1に係るガスケットの平面図の一部である。
【図2】図2は本発明の実施例1に係るガスケットの模式的断面図である。
【図3】図3は本発明の実施例1に係るガスケットの模式的断面図の一部を拡大した図である。
【図4】図4は本発明の実施例1に係るガスケットの装着完了前の状態を示す模式的断面図である。
【図5】図5は本発明の実施例1に係るガスケットの装着完了状態を示す模式的断面図である。
【図6】図6は本発明の実施例1に係るガスケットの装着完了状態を示す模式的断面図である。
【図7】図7は本発明の実施例に係るガスケットにおける第2シール部の挙動を説明する模式的断面図である。
【図8】図8は本発明の実施例2に係るガスケットの模式的断面図である。
【図9】図9は従来例に係るガスケットの模式的断面図である。
【図10】図10はFEM解析のモデルを示す概略図である。
【図11】図11はFEM解析結果を示す表である。
【図12】図12はFEM解析結果を示す表である。
【図13】図13はFEM解析結果を示す表である。
【符号の説明】
【0052】
100 ガスケット
110 装着部
111 第1シール部
120 張出部
130 第2シール部
131 第1凸部
132,133 第2凸部
141,142 凸部
151,152 突出部
200 ガスケット
210 装着部
211 第1シール部
230 第2シール部
231 第1凸部
232,233 第2凸部
500 ヘッドカバー
501 溝
501a 溝底面
600a シリンダヘッド
600b チェーンカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝に装着されると共に、該溝の溝底表面に密着する第1シール部を有する装着部と、
該装着部を介して第1シール部とは反対側に設けられる第2シール部と、
を備えるガスケットにおいて、
第2シール部は、前記溝に沿って設けられる第1凸部と、第1凸部よりも突出量が小さく、かつ第1凸部の両側に沿って該第1凸部と一体的に設けられる一対の第2凸部とから構成されることを特徴とするガスケット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−58104(P2009−58104A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−228081(P2007−228081)
【出願日】平成19年9月3日(2007.9.3)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】