説明

ガスケット

【課題】溝内における姿勢のより一層の安定化を図ることで、密封性の向上を図ったガスケットを提供する。
【解決手段】ヘッドカバー200とシリンダヘッドに挟まれた状態では溝201の内壁面に接することにより溝201内におけるガスケット100の姿勢を安定させる突出部110が、ガスケット100の長手方向に連続的に設けられるガスケット100であって、突出部110は、ガスケット本体の中央付近に沿って設けられ、突出量が最も大きな第1突出部111と、ヘッドカバー200側に設けられ、突出量が最も小さな第2突出部112と、シリンダヘッド側に設けられ、第1突出部111よりも突出量が小さく、第2突出部112よりも突出量が大きな第3突出部113と、を含む、段差を有する構造であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2部材間の隙間を封止するガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
2部材間の隙間を封止するガスケットとして、2部材のうちの一方の部材に設けられた溝に装着されるものが知られている。かかるガスケットは、2部材により圧縮されることによって生ずる反発力によって、2部材に対してそれぞれ密着することで密封性を発揮する。
【0003】
ここで、2部材のうちのいずれか一方が剛性の低い材料で構成される場合には、ガスケットの反発力が大き過ぎると変形してしまい、密封性低下などの不具合が生じてしまう。そこで、反発力を小さくするために、2部材により挟まれていない状態におけるガスケットの幅を溝幅よりも狭く構成するなどの対策が取られている。
【0004】
このようなガスケットの場合には、溝内においてガスケットが倒れてしまったり座屈してしまったりするなど、姿勢を安定させるのが難しく、如何に姿勢を安定させるかが重要な課題となっている。例えば、ガスケットの姿勢を安定させるために、ガスケットの断面形状を左右非対称とすることによって、圧縮時に所望の方向に倒れ易くすることで、溝内におけるガスケットの姿勢の安定化を図る技術が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、所望の姿勢となるようにガスケットを倒すのが難しい場合があり、より一層、溝内におけるガスケットの姿勢の安定化を図ることが望まれている。また、幅が溝幅よりも狭いガスケットの場合には、組立作業においてガスケットが溝から脱落しやすいため、ガスケットが溝から脱落しないような構成を採用することも望まれる。
【特許文献1】特開2007−002927号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、溝内における姿勢のより一層の安定化を図ることで、密封性の向上を図ったガスケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
【0008】
すなわち、本発明のガスケットは、
2部材のうちの一方の部材に設けられた溝に装着され、これら2部材間の隙間を封止するガスケットにおいて、
前記溝に装着され、かつ前記2部材により挟まれていない状態では溝の内壁面に接しない範囲で密封領域側に向かって突出するように構成され、前記2部材に挟まれた状態では溝の内壁面に接することにより溝内におけるガスケットの姿勢を安定させる突出部が、ガスケットの長手方向に連続的に設けられるガスケットであって、
前記突出部は、
ガスケット本体の中央付近に沿って設けられ、突出量が最も大きな第1突出部と、
第1突出部よりも前記一方の部材側に設けられ、突出量が最も小さな第2突出部と、
第1突出部よりも前記2部材のうちの他方の部材側に設けられ、第1突出部よりも突出量が小さく、第2突出部よりも突出量が大きな第3突出部と、を含む、段差を有する構造であることを特徴とする。
【0009】
本発明のガスケットによれば、溝内におけるガスケットの姿勢を安定させる突出部として、上記の通り、突出量の異なる第1,第2,第3突出部を含む段差を有する構造のものを採用している。
【0010】
これにより、ガスケットが、2部材によって圧縮されると、最初に、突出部においては突出量が最も大きな第1突出部が溝の内壁面に接する。従って、ガスケットの座屈を好適に抑制することができる。本発明においては、ガスケット本体の中央付近に沿って設けられた第1突出部の突出量を最も大きくしており、この第1突出部が溝の内壁面に最初に接することで、座屈を好適に防止することができる。
【0011】
そして、本発明においては、一方の部材側(つまり溝底側)の第2突出部の突出量を最も小さくしている。従って、充填率の増加に伴う反発力の増加を抑制することができる。すなわち、反発力の増加は、溝内、特に溝底付近におけるガスケットの充填率が要因となる。本発明においては、ガスケットの姿勢を安定させるための突出部のうち、溝底側(一方の部材側)となる第2突出部の突出量を最も小さくすることで、ガスケットの倒れや座屈を防止しつつ、充填率の増加を抑制することができる。
【0012】
また、本発明においては、他方の部材側の第3突出部の突出量を、第1突出部の突出量よりも小さく、第2突出部の突出量よりも大きく設定している。従って、ガスケットの倒れを好適に抑制することができる。すなわち、ガスケットは、一方の部材に設けられた溝底と他方の部材によって圧縮される。この圧縮の過程において、ガスケットのうち溝内に収まっている部分は、溝の内壁面に接するため変形が抑制される。これに対して、ガスケットのうち溝内に収まっていない部分は変形し易い。このように、2部材によってガスケットが圧縮される場合に、ガスケットの倒れが生じる原因は、主として、ガスケットのうち溝内に収まっていない部分(つまり、他方の部材側の部分)の変形である。本発明においては、ガスケットの姿勢を安定させるための突出部のうち、他方の部材側となる第3突出部の突出量を、ある程度大きくする(座屈を防止するために突出量を高くした第1突出部の突出量よりも小さいものの、一方の部材側の第2突出部の突出量よりも大きくする)ように構成している。これによって、第1突出部の次に第2突出部が溝の内壁面に接するため、他方の部材側付近の変形を抑制し、ガスケットの倒れを好適に抑制することができる。また、圧縮時に溝外へのはみ出し及び噛み込みを防止することができる。
【0013】
以上のように、本発明によれば、ガスケットの姿勢を安定させるための突出部を、各部位に求められる要求に応じて突出量が異なるようにすることで、2部材によって圧縮された際の反発力の増加を抑制しつつ、座屈や倒れを抑制して、ガスケットの姿勢を安定化させることができる。
【0014】
また、前記溝に装着され、かつ前記2部材により挟まれていない状態でも溝の内壁面に接することにより、ガスケットが溝から脱落してしまうことを防止する突起が、ガスケットの長手方向に各々間隔を空けて複数設けられると共に、
該突起は、ガスケット本体の中心位置よりも溝底側に偏った位置であって、前記溝に装着され、かつ前記2部材により挟まれていない状態において、該溝内に収まる位置に設けられているとよい。
【0015】
これにより、ガスケットが溝から脱落してしまうことを効果的に抑制でき、ガスケットを溝に装着する際の装着性が向上する。
【0016】
また、前記突起における溝深さ方向の寸法は、前記溝の深さ寸法に対して30%以上50%以下に設定されているとよい。
【0017】
これにより、充填率の増加を抑制し、反発力の増加を抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、溝内における姿勢のより一層の安定化を図ることで、密封性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
(実施例)
図1〜図7を参照して、本発明の実施例に係るガスケットについて説明する。なお、本実施例においては、ヘッドカバーに設けられた溝に装着され、ヘッドカバー(2部材のうちの一方の部材)とシリンダヘッド(2部材のうちの他方の部材)との間の隙間を封止するために用いられるガスケットを例にして説明する。
【0021】
<ガスケット全体>
図1〜図5を参照して、本発明の実施例に係るガスケットの全体構成について説明する。図1は本発明の実施例に係るガスケットの平面図である。図2は本発明の実施例に係るガスケットの側面図の一部である。なお、図2は図1中P方向に見た図である。図3及び図4は本発明の実施例に係るガスケットを溝に装着した状態を示す模式的断面図である。なお、図3中のガスケットは図1中AA断面図に相当し、図4中のガスケットは図1中BB断面図に相当する。図5は本発明の実施例に係るガスケットが2部材によって挟まれた状態を示す模式的断面図である。なお、図5中のガスケットは図1中のAA断面部の圧縮された状態を示している。
【0022】
本実施例に係るガスケット100は、ヘッドカバー200に設けられた溝201に装着され、ヘッドカバー200とシリンダヘッド300との間の隙間を封止するものである。図1中、(O)が密封領域側を示しており、(A)は外部側(大気側)を示している。ヘッドカバー200とシリンダヘッド300とを組み立てると、その内部に密封領域が形成され、密封領域内のオイルがこれらの隙間から外部に漏出してしまうことを、ガスケット100によって防止する。
【0023】
本実施例に係るガスケット100においては、密封領域となる側の側面に、溝201内においてガスケット100の姿勢を安定させる突出部110が設けられている。なお、ガスケット100が圧縮された状態においては、ガスケット100におけるシリンダヘッド300側の端部が、外部側(A)に傾くように変形する。従って、上記の突出部110は、ガスケット100が傾くように変形する方向とは反対側の面に設けられている。また、この突出部110は、ガスケット100の長手方向に連続的に設けられている。すなわち、図1に示すように、ガスケット100の内周側の側面の全周に亘って設けられている。また、この突出部110は、ガスケット100が溝201に装着され、かつヘッドカバー200とシリンダヘッド300により挟まれていない状態では、溝201の内壁面に接しない範囲で密封領域側(O)に向かって突出するように構成されている(図3参照)。そして、ヘッドカバー200とシリンダヘッド300に挟まれた状態では、この突出部110が溝201の内壁面に接する(図5参照)。これにより、溝201内におけるガスケット100の姿勢を安定させる機能を発揮する。
【0024】
また、本実施例に係るガスケット100においては、密封領域となる側の側面に、ガスケット100が溝201から脱落してしまうことを防止する突起120が設けられている。この突起120は、ガスケット100の長手方向に各々間隔を空けて複数設けられている(図1参照)。また、この突起120は、ガスケット100が溝201に装着され、かつヘッドカバー200とシリンダヘッド300により挟まれていない状態でも、溝201の内壁面に接するように構成されている(図4参照)。これにより、ガスケット100が溝201から脱落してしまうことを防止する機能を発揮する。なお、本実施例においては、突起120は、突起本体121と、この突起本体121の先端に設けられる、幅の狭い小突起122とから構成される(図1参照)。この小突起122は、深さ方向の長さが比較的短く、深さ方向に垂直な断面は径の小さな半月形状となるように構成されている。これにより、ガスケット100を溝201に装着する際の挿入力を低減させつつ、脱落防止機能を発揮させることができる。また、所望の位置にガスケット100を位置決めさせることができる。
【0025】
<突出部の詳細>
特に、図2及び図3を参照して、本発明の実施例に係るガスケット100における突出部110について、更に詳細に説明する。
【0026】
本実施例において、突出部110は、段差を有する構造が採用されている。すなわち、突出部110は、ガスケット本体の中央付近に沿って設けられる第1突出部111と、ヘッドカバー200側(溝底側)に設けられる第2突出部112と、シリンダヘッド300側に設けられる第3突出部113とからなる3段構造である。
【0027】
そして、突出部110においては第1突出部111の突出量が最も大きく、第2突出部112の突出量が最も小さく、第3突出部113の突出量は、第1突出部111よりも小さく、第2突出部112よりも大きくなるように設定されている。
【0028】
<突起の詳細>
特に、図2及び図4を参照して、本発明の実施例に係るガスケット100における突起120について、更に詳細に説明する。
【0029】
本実施例において、突起120は、ガスケット本体の中心位置(図2において、一点鎖線Lは、ガスケット本体における高さ方向(溝201の溝深さ方向)の略中心である。)よりも溝底側に偏った位置に設けられている。また、この突起120は、ガスケット100が溝201に装着され、かつヘッドカバー200とシリンダヘッド300により挟まれていない状態において、溝201内に収まる位置に設けられている(図4参照)。また、突起120における溝深さ方向の寸法(図4中、寸法H1)は、溝201の深さ寸法(図4中、寸法H)に対して30%以上50%以下に設定されている。
【0030】
<ガスケットの挙動>
特に、図5を参照して、ヘッドカバー200とシリンダヘッド300を組み立てる過程、及び組立が完了した際におけるガスケット100の挙動を説明する。本実施例においては、まず、ガスケット100をヘッドカバー200の溝201に装着させる。そして、シリンダヘッド300にヘッドカバー200を組み立てる。これにより、ガスケット100はヘッドカバー200(溝201の溝底)とシリンダヘッド300によって圧縮される。
【0031】
上記の通り、圧縮前の状態においては、ガスケット100における突出部110は、溝201の内壁面に接していない。そして、圧縮過程において、最初に突出量が最も大きな第1突出部111が溝201の内壁面に接し、次に第3突出部113が接し、最後に突出量の最も小さな第2突出部112が接する。
【0032】
このように、ガスケット100は、ヘッドカバー200とシリンダヘッド300により圧縮され、その反発力によって、これらの部材にそれぞれ密着することで密封性を発揮する。ここで、本実施例においては、ヘッドカバー200とシリンダヘッド300の組立が完了した状態において、これらの間には隙間が確保された状態となる(図5参照)。
【0033】
<本実施例の優れた点>
以上のように、本実施例に係るガスケット100においては、溝201内におけるガスケット100の姿勢を安定させる突出部110として、段差を有する構造が採用されている。そして、ガスケット100が、ヘッドカバー200とシリンダヘッド300によって圧縮されると、最初に突出量が最も大きな第1突出部111が溝201の内壁面に接する。従って、ガスケット100の座屈を好適に抑制することができる。
【0034】
すなわち、ガスケット100がヘッドカバー200とシリンダヘッド300によって圧縮されると、ガスケット本体の中央付近に応力が集中し易く、中央付近から座屈が生じ易い。本実施例に係るガスケット100においては、ガスケット本体の中央付近に沿って設けられた第1突出部111の突出量を最も大きくしており、この第1突出部111が溝201の内壁面に最初に接することで、座屈を好適に防止することができる。また、ガスケット100の中央付近が最初に溝201の内壁面に接することで、ガスケット100が圧縮した際に、シリンダヘッド300側の端部を、より確実に外部側(A)に傾くように変形させることができる。更に、ガスケット100が溝201内に装着された状態において、第1突出部111を、所望の位置により確実に位置決めさせることができる。
【0035】
そして、本実施例に係るガスケット100においては、ヘッドカバー200側(つまり溝201の溝底側)の第2突出部112の突出量を最も小さくしている。従って、充填率の増加に伴う反発力の増加を抑制することができる。すなわち、反発力の増加は、溝201内、特に溝底付近におけるガスケット100の充填率が要因となる。本実施例に係るガスケット100においては、溝底側となる第2突出部112の突出量を最も小さくすることで、充填率の増加を抑制することができる。なお、第2突出部112は、ガスケット100が圧縮した状態において、ガスケット110の溝底側の先端が狙い通りに倒れるだけの剛性を有するように設定している。これにより、密封性を得るための適度な反発力を発生させつつ、充填率を低くして、反発力の増加を抑制している。
【0036】
また、本実施例に係るガスケット100においては、シリンダヘッド300側の第3突出部113の突出量を、第1突出部111の突出量よりも小さく、第2突出部112の突出量よりも大きく設定している。従って、ガスケット100の倒れを好適に抑制することができる。すなわち、ガスケット100は、ヘッドカバー200に設けられた溝201の溝底とシリンダヘッド300によって圧縮される。この圧縮の過程において、ガスケット100のうち溝内に収まっている部分は、溝201の内壁面に接するため変形が抑制される。これに対して、ガスケット100のうち溝内に収まっていない部分は変形し易い。このように、ガスケット100が圧縮される場合に、ガスケット100の倒れが生じる原因は、主として、ガスケット100のうち溝内に収まっていない部分(つまり、シリンダヘッド300側の部分)の変形である。
【0037】
本実施例においては、ガスケット100の姿勢を安定させるための突出部110のうち、シリンダヘッド300側となる第3突出部113の突出量を、ある程度大きくする(座屈を防止するために突出量を高くした第1突出部111の突出量よりも小さいものの、ヘッドカバー200側の第2突出部112の突出量よりも大きくする)ように構成している。これによって、第1突出部111の次に第2突出部112が溝201の内壁面に接するため、シリンダヘッド300側付近の変形を抑制することができる。すなわち、図5にお
いて、矢印X方向の変形を抑制することができる。これにより、溝201内におけるガスケット100の倒れを好適に抑制することができる。なお、第3突出部113は、ガスケット100が圧縮された際に、シリンダヘッド300とヘッドカバー200との間の隙間へのはみ出しや、これらによる噛み込みを防止できる程度の剛性、かつガスケット100のシリンダヘッド300側の端部が狙い通りに倒れることができる程度の剛性を有するように設定されている。
【0038】
以上のように、本実施例に係るガスケット100によれば、ガスケット100の姿勢を安定させるための突出部110が、各部位に求められる要求に応じて突出量が異なるように構成されている。従って、ヘッドカバー200とシリンダヘッド300によって圧縮された際の反発力の増加を抑制しつつ、座屈や倒れを抑制して、ガスケット100の姿勢を安定化させることができ、密封性を向上させることができる。これについて、図6に示す比較例を用いて更に詳しく説明する。図6は比較例に係るガスケットを溝に装着した状態を示す模式的断面図である。
【0039】
図6に示す比較例に係るガスケット100aにおいても、本実施例に係るガスケット100の場合と同様に、密封領域となる側の側面に、溝201内においてガスケット100aの姿勢を安定させる突出部110aが設けられている。そして、この突出部110aも、ガスケット本体の中央付近に沿って設けられる第1突出部111aと、ヘッドカバー200側(溝底側)に設けられる第2突出部112aと、シリンダヘッド300側に設けられる第3突出部113aとからなる3段構造である。
【0040】
ただし、この比較例においては、第1突出部111aの突出量が最も大きく、第2突出部112aの突出量と第3突出部113aの突出量は同一となるように構成されている。
【0041】
この比較例に係るガスケット100aの場合、低反発力を優先して、第2突出部112aと第3突出部113aの突出量を設定すると、ガスケット100aが圧縮された場合に、ガスケット100aにおけるシリンダヘッド300側付近の変形(図6中矢印Y方向への変形)が大きくなってしまう。そのため、溝201内におけるガスケット100aの倒れを抑制するのが難しくなる。
【0042】
逆に、倒れ防止を優先して、第2突出部112aと第3突出部113aの突出量を設定すると、ガスケット100aが圧縮された場合に、溝底付近における充填率が高くなってしまい、反発力が大きくなりすぎてしまう。
【0043】
このように、比較例に係るガスケット100aの場合には、低反発力と、溝201内におけるガスケット100aの姿勢の安定化の両立を図るのが難しい。
【0044】
また、本実施例に係るガスケット100においては、ガスケット100が溝201から脱落してしまうことを防止する突起120が、ガスケット本体の中心位置よりも溝底側に偏った位置であって、溝201に装着され、かつヘッドカバー200とシリンダヘッド300により挟まれていない状態において、溝201内に収まる位置に設けられている。従って、ガスケット100を溝201に装着する際の装着性に優れ、簡単に、ガスケット100を装着することができる。
【0045】
また、突起120における溝深さ方向の寸法H1は、溝201の深さ寸法Hに対して30%以上50%以下に設定されている。従って、溝201内におけるガスケット100の充填率の増加を抑制することができ、反発力の増加を抑制することができる。これについて、図7に示す比較例を用いて更に詳しく説明する。図7は比較例に係るガスケットを溝に装着した状態を示す模式的断面図である。
【0046】
図7に示す比較例に係るガスケット100bにおいても、本実施例に係るガスケット100の場合と同様に、密封領域となる側の側面に、ガスケット100bが溝201から脱落してしまうことを防止する突起120bが設けられている。なお、突出部の構成については、本実施例の場合と同一である。
【0047】
そして、この比較例においては、突起120bにおける溝深さ方向の寸法(図7中、寸法H2)は、溝201の深さ寸法(図7中、寸法H)に対して50%を超えるように設定されている。
【0048】
この比較例に係るガスケット100bの場合には、ガスケット100bの脱落防止用の突起120bが設けられている付近の溝201に対する充填率が高くなってしまう。そのため、ガスケット100bを溝201に装着し難く、装着作業の際にガスケット100bが座屈してしまったり、倒れてしまったりしてしまう。
【0049】
なお、上記実施例においては、ガスケットをヘッドカバーに設けた溝に装着した例を示したが、本発明は、これに限定されるものではない。本発明は、これ以外にも、例えば、タイミングベルトカバー,エアクリーナ,インテークマニホールド等に適用することが可能であり、その場合においても本実施例の場合と同様の作用効果が得られることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】図1は本発明の実施例に係るガスケットの平面図である。
【図2】図2は本発明の実施例に係るガスケットの側面図の一部である。
【図3】図3は本発明の実施例に係るガスケットを溝に装着した状態を示す模式的断面図である。
【図4】図3は本発明の実施例に係るガスケットを溝に装着した状態を示す模式的断面図である。
【図5】図5は本発明の実施例に係るガスケットが2部材によって挟まれた状態を示す模式的断面図である。
【図6】図6は比較例に係るガスケットを溝に装着した状態を示す模式的断面図である。
【図7】図7は比較例に係るガスケットを溝に装着した状態を示す模式的断面図である。
【符号の説明】
【0051】
100 ガスケット
110 突出部
111 第1突出部
112 第2突出部
113 第3突出部
120 突起
200 ヘッドカバー
201 溝
300 シリンダヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2部材のうちの一方の部材に設けられた溝に装着され、これら2部材間の隙間を封止するガスケットにおいて、
前記溝に装着され、かつ前記2部材により挟まれていない状態では溝の内壁面に接しない範囲で密封領域側に向かって突出するように構成され、前記2部材に挟まれた状態では溝の内壁面に接することにより溝内におけるガスケットの姿勢を安定させる突出部が、ガスケットの長手方向に連続的に設けられるガスケットであって、
前記突出部は、
ガスケット本体の中央付近に沿って設けられ、突出量が最も大きな第1突出部と、
第1突出部よりも前記一方の部材側に設けられ、突出量が最も小さな第2突出部と、
第1突出部よりも前記2部材のうちの他方の部材側に設けられ、第1突出部よりも突出量が小さく、第2突出部よりも突出量が大きな第3突出部と、を含む、段差を有する構造であることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記溝に装着され、かつ前記2部材により挟まれていない状態でも溝の内壁面に接することにより、ガスケットが溝から脱落してしまうことを防止する突起が、ガスケットの長手方向に各々間隔を空けて複数設けられると共に、
該突起は、ガスケット本体の中心位置よりも溝底側に偏った位置であって、前記溝に装着され、かつ前記2部材により挟まれていない状態において、該溝内に収まる位置に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のガスケット。
【請求項3】
前記突起における溝深さ方向の寸法は、前記溝の深さ寸法に対して30%以上50%以下に設定されていることを特徴とする請求項2に記載のガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−101398(P2010−101398A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−272774(P2008−272774)
【出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【出願人】(000151209)株式会社マーレ フィルターシステムズ (159)
【Fターム(参考)】