説明

ガスケット

【課題】シール性の低下を抑制しつつ、生産性の向上を図ることが可能なガスケットを提供する。
【解決手段】ガスケット10は、ヘッドカバー50に設けられた装着溝51に挿入されるとともに、シリンダヘッド40とヘッドカバー50により圧縮されて、シリンダヘッド40とヘッドカバー50の間の隙間をシールするように構成されている。ガスケット10の平面形状が略矩形とされ、その対向する2辺および4角に可撓部20が設けられ、可撓部20以外の部分が、圧縮されたときにたわみにくい高剛性部とされている。可撓部20の断面形状は、略I字状とされ、高剛性部の断面形状は、略T字状とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの部材間の隙間をシールするガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスケットは、2つの部材間の隙間をシールする場合に用いられる。このようなガスケットとしては、さまざまなものがあり、例えば、自動車用エンジンのシリンダヘッドとヘッドカバーとの間に装着されるヘッドカバーガスケットなどがある。
【0003】
ガスケットは、2つの部材のうちの一方の部材に設けられた装着溝に挿入され、2つの部材により圧縮される。そして、ガスケットが変形して2つの部材に密着することで、2つの部材間の隙間がシールされる。
【0004】
従来では、例えば特許文献1に示されるように、全体の断面形状が略T字状とされたガスケット(T型断面のガスケットという)が知られている。このT型断面のガスケットは、幅方向の両側に向けて突出するフランジ部が設けられている分、装着時にガスケットの倒れが生じにくくなっている。つまり、装着の際、2つの部材によってガスケットを圧縮したとき、フランジ部が2つの部材と密着する面を拡大するように変形するため、幅方向のいずれか一方へ傾くことが起こりにくくなっている。
【特許文献1】特開平06−281013号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ガスケットを折り畳んだ状態で成形し、装着時に折り畳んだ部分を開いて(拡げて)使用することで、ガスケットの成形型のサイズを縮小することが可能である。しかし、従来のT型断面のガスケットは、上述したように、圧縮したときにたわみにくくなっていることから、成形後には、折り曲げたり伸ばしたりすることが行いにくい構造となっている。このため、ガスケットを折り畳んだ状態で成形する場合、装着時には折り畳んだ部分を無理に伸ばさなければならなくなる。このように、ガスケットを無理に変形させると、それに起因してシール性が低下する可能性がある。したがって、T型断面のガスケットの場合、ガスケットの成形型のサイズを小さくすることができず、その結果、生産性が悪くなるといった問題点がある。
【0006】
本発明は、そのような点に鑑みてなされたものであり、シール性の低下を抑制しつつ、生産性の向上を図ることが可能なガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、2つの部材のうちの一方の部材に設けられた装着溝に挿入されるとともに、2つの部材により圧縮されて、これら2つの部材間の隙間をシールするガスケットであって、少なくとも対向する2箇所に可撓部が設けられ、上記可撓部以外の部分が、圧縮されたときにたわみにくい高剛性部とされていることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、可撓部において、ガスケットを折り曲げたり伸ばしたりすることを容易に行うことができるので、製造時に、ガスケットを可撓部で凹状または凸状に折り畳んだ状態で成形することで、ガスケットの成形型のサイズを縮小することができる。これにより、ガスケットの生産性を向上させることができ、製造後のガスケットの保管等のスペースも小さく抑えることができる。
【0009】
また、装着時に、折り畳んだ状態で成形されたガスケットを開いて(拡げて)使用する際、可撓部においてガスケットを変形させることで、ガスケットを可撓部で無理に伸ばしたりすることなく、装着部分の形状に合わせて容易に変形させることができる。これにより、ガスケットの無理な変形に起因するシール性の低下を抑制することができる。しかも、可撓部以外の部分を高剛性部としているので、装着時にガスケットの倒れを抑制することができ、シール性の向上を図ることができる。
【0010】
ここで、可撓部の平面形状を曲線状とすることで、可撓部においても、ガスケットの剛性が高くなり、装着時にガスケットの倒れを抑制することができる。これにより、シール性をいっそう向上させることができる。この場合、可撓部の曲率半径を小さくするほど、可撓部におけるガスケットの剛性を高くすることができ、シール性を効率的に向上させることができる。
【0011】
本発明において、上記可撓部の断面形状を略I字状とし、上記高剛性部の断面形状を略T字状とすることが好ましい。より具体的には、高剛性部は、略I字状に形成された基部の高さ方向の一端部に幅方向の両側に向けて突出するフランジ部が一体的に設けられた構成となっている。このように、可撓部の断面形状を略I字状とすることで、可撓部において、ガスケットを容易に折り曲げたり伸ばしたりすることが可能になり、上述のように、生産性の向上を図ることが可能になる。また、高剛性部の断面形状を略T字状とすることで、高剛性部において、上記フランジ部が2つの部材と密着する面(シール面)を拡大するように変形するため、ガスケットが幅方向のいずれか一方へ傾きにくくなる。つまり、ガスケットの倒れが発生しにくくなるので、シール性の低下を抑制できる。したがって、可撓部の断面形状を略I字状とし、高剛性部の断面形状を略T字状とすることで、シール性の低下を抑制しつつ、生産性の向上を図ることができる。
【0012】
本発明において、ガスケットの全体的な平面形状を略矩形とすることが好ましい。この構成において、可撓部をガスケットの対向する2辺に設けることが好ましい。こうすれば、対向2辺に設けた可撓部においてガスケットを折り畳むことで、もう一方の対向2辺の間の距離が短縮する。そして、ガスケットを折り畳んだ状態で成形することで、その短縮した距離に応じて、ガスケットの成形型のサイズを縮小することができ、ガスケットの生産性を向上させることができる。
【0013】
また、ガスケットの全体的な平面形状を略矩形とする構成において、可撓部をガスケットの対向する2辺および4角に設けることが好ましい。この構成によれば、ガスケットの成形型のサイズをより効果的に縮小することができ、生産性の向上をより効果的に図ることができる。詳細には、対向する2辺の各可撓部でガスケットを凹状に折り曲げ、4角の各可撓部でガスケットを凸状に折り曲げる。こうすると、可撓部が設けられたガスケットの対向2辺が折り畳まれ、その折り畳んだ部分がもう一方の対向2辺の間に収まるので、もう一方の対向2辺の間の距離が短縮する。そして、ガスケットを折り畳んだ状態で成形することで、その短縮した距離に応じて、ガスケットの成形型のサイズを縮小することができ、ガスケットの生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、可撓部において、ガスケットを折り曲げたり伸ばしたりすることを容易に行うことができるので、製造時に、ガスケットを可撓部で凹状または凸状に折り畳んだ状態で成形することで、ガスケットの成形型のサイズを縮小することができる。これにより、ガスケットの生産性を向上させることができ、製造後のガスケットの保管等のスペースも小さく抑えることができる。
【0015】
また、装着時に、折り畳んだ状態で成形されたガスケットを開いて(拡げて)使用する際、可撓部においてガスケットを変形させることで、ガスケットを可撓部で無理に伸ばしたりすることなく、装着部分の形状に合わせて容易に変形させることができる。これにより、ガスケットの無理な変形に起因するシール性の低下を抑制することができる。しかも、可撓部以外の部分を高剛性部としているので、装着時にガスケットの倒れを抑制することができ、シール性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明を実施するための最良の形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0017】
本発明のガスケットは、対向配置される2つの部材のうちの一方の部材に設けられた装着溝に挿入されるとともに、2つの部材により圧縮されることで、これらの2つの部材間の隙間をシールするように構成されている。以下では、本発明を、自動車用エンジンのシリンダヘッドとヘッドカバーとの間に装着されるヘッドカバーガスケットに適用した例について説明する。
【0018】
図1は、実施形態に係るガスケットを模式的に示す平面図、図2は、図1のガスケットの可撓部を示す断面図、図3は、図1のガスケットの高剛性部を示す断面図である。図4は、図1のガスケットの成形時の状態を模式的に示す平面図である。図2、図3では、ガスケットの装着時(圧縮前)の状態を模式的に示している。
【0019】
図1〜図3に示すガスケット10は、自動車用エンジンのシリンダヘッド40とヘッドカバー50との間の隙間をシールするもので、例えば、アクリル系ゴム、ニトリル系ゴム、フッ素系ゴムなどのゴム材料によって成形されている。
【0020】
ガスケット10は、図1に示すように、平面形状が直線状に延びる直線部分と円弧状に湾曲する曲線部分とが混在した環状の部材として形成されている。この実施形態では、ガスケット10の平面形状が略矩形とされている。具体的に、ガスケット10には、4辺L1,L2,L3,L4と、4角C1,C2,C3,C4とが備えられている。
【0021】
ガスケット10の少なくとも2箇所には、比較的剛性が低く可撓性を有する可撓部20が設けられている。可撓部20の断面形状は、図2に示すように、略I字状とされており、幅方向の長さに比べて高さ方向の長さが大きくなっている。このI型断面の可撓部20においては、ガスケット10を容易に折り曲げたり、伸ばしたりすることが可能となっている。ガスケット10における可撓部20の配置箇所の詳細については後述する。
【0022】
ガスケット10の可撓部20以外の部分は、圧縮されたときたわみにくい高剛性部30となっている。ガスケット10の高剛性部30の断面形状は、図3に示すように、略T字状とされている。具体的には、高剛性部30は、略I字状に形成された基部31の高さ方向の一端部(図3では下端部)に幅方向の両側に向けて突出するフランジ部32が一体的に設けられた構成となっている。基部31の断面形状は、上述した可撓部20の断面形状と同じ形状となっている。このT型断面の高剛性部30においては、フランジ部32が設けられている分、I型断面の可撓部20に比べて、ガスケット10が圧縮されたときにたわみにくくなっている。
【0023】
上述のように構成されたガスケット10は、シリンダヘッド40とヘッドカバー50との間に装着される。この際、ガスケット10の可撓部20の高さ方向の他端部(図2では上端部)21、および、高剛性部30の基部31の高さ方向の他端部(図3では上端部)33が、ヘッドカバー50に形成された装着溝51に挿入される。また、高剛性部30に設けられたフランジ部32がシリンダヘッド40とヘッドカバー50との間に挟まれる。そして、ヘッドカバー取付用ボルトを締め付けることで、ガスケット10の可撓部20および高剛性部30がシリンダヘッド40とヘッドカバー50とによって圧縮される。
【0024】
これにより、ガスケット10の可撓部20および高剛性部30が変形してシリンダヘッド40とヘッドカバー50とに密着することで、シリンダヘッド40とヘッドカバー50の間の隙間がシールされる。このとき、高剛性部30では、フランジ部32がシリンダヘッド40およびヘッドカバー50と密着する面(シール面)を拡大するように変形するため、ガスケット10が幅方向のいずれか一方へ傾きにくくなっている。つまり、ガスケット10の倒れが発生しにくくなっている。
【0025】
この実施形態では、ガスケット10の少なくとも対向する2箇所に可撓部20が設けられていることを特徴としている。より具体的には、可撓部20は、ガスケット10の対向する2辺L1,L3および4角C1〜C4に設けられている。以下では、ガスケット10の一方の対向2辺L1,L3が縦方向に延びており、もう一方の対向2辺L2,L4が横方向に延びていることとする。
【0026】
ガスケット10の対向する2辺L1,L3に設けられる可撓部20の平面形状は、円弧状に湾曲した形状となっている。つまり、これらの可撓部20は、ガスケット10の曲線部分となっている。各可撓部20は、各辺L1,L3の略中央に設けられている。したがって、ガスケット10の各辺L1,L3は、2つ直線部分と、これらの直線部分に挟まれた曲線部分とによって構成されている。一方、ガスケット10の対向する2辺L2,L4には、可撓部20は設けられておらず、各辺L2,L4は、直線部分のみによって構成されている。
【0027】
ガスケット10の4角C1〜C4に設けられる可撓部20は、円弧状に湾曲した形状となっている。つまり、これらの可撓部20は、ガスケット10の曲線部分となっている。
【0028】
そして、この実施形態によれば、可撓部20において、ガスケット10を折り曲げたり伸ばしたりすることを容易に行うことができるので、ガスケット10の成形型のサイズを縮小することができる。詳細には、ガスケット10の製造時、例えば、図4に示すように、ガスケット10を折り畳んだ状態で成形することが可能になる。具体的には、ガスケット10の対向する2辺L1,L3を折り畳み、折り畳んだ部分を対向する2辺L2,L4の間に収めるように変形させている。
【0029】
この場合、各辺L1,L3の可撓部20においてガスケット10を凹状に折り曲げ、4角C1〜C4の可撓部20においてガスケット10を凸状に折り曲げている。こうすると、各辺L1,L3の2つの直線部分が縦方向から横方向に向くことで、2つの直線部分が互いに接近し、縦方向で重なるように変形する。また、各辺L1,L3の直線部分が対向する2辺L2,L4にも接近し、縦方向で重なるように変形する。このようにして、ガスケット10の対向する2辺L1,L3を折り畳むことで、対向する2辺L2,L4間の距離が、A1からA2に短縮する。そして、ガスケット10を折り畳んだ状態で成形することで、2辺L2,L4間の短縮した距離[A1−A2]に応じて、ガスケット10の成形型のサイズを縮小することができる。これにより、ガスケット10の生産性を向上させることができ、製造後のガスケット10の保管等のスペースも小さく抑えることができる。
【0030】
また、装着時には、上述のように、折り畳んだ状態で成形されたガスケット10を、図3に示す状態まで開いて(拡げて)使用する。この場合、各辺L1,L3の2つの直線部分が横方向から縦方向に向くように、各辺L1,L3の可撓部20および4角C1〜C4の可撓部20においてガスケット10を伸ばす。このように、可撓部20においてガスケット10を変形させるので、ガスケット10を無理に伸ばしたりすることなく、装着部分の形状に合わせて容易に変形させることができる。これにより、ガスケット10の無理な変形に起因するシール性の低下を抑制することができる。しかも、可撓部20以外の部分を高剛性部30としているので、装着時にガスケット10の倒れを抑制することができ、シール性の向上を図ることができる。
【0031】
さらに、可撓部20の平面形状が円弧状とされるため、可撓部20においても、ガスケット10の剛性が高くなり、装着時にガスケット10の倒れを抑制することができる。これにより、シール性をいっそう向上させることができる。この場合、可撓部20の曲率半径を小さくするほど、可撓部20におけるガスケット10の剛性を高くすることができ、シール性を効率的に向上させることができる。
【0032】
−他の実施形態−
以上、本発明の実施形態について説明したが、ここに示した実施形態は一例であり、さまざまに変形することが可能である。
【0033】
(1)ガスケットにおける可撓部の配置箇所や、数は、上記実施形態の場合だけに限定されず、適宜変更することが可能である。要するに、可撓部は、ガスケットの少なくとも対向する2箇所に設けられていればよい。
【0034】
上記実施形態では、ガスケット10の対向する2辺L1,L3の略中央に可撓部20が設けられたが、可撓部20を各辺L1,L3の略中央以外の箇所に設ける構成としてもよい。なお、各辺L1,L3で可撓部20を設ける箇所を異ならせてもよい。また、可撓部20をガスケット10のもう一方の対向する2辺L2,L4にも設ける構成としてもよい。
【0035】
上記実施形態では、ガスケット10の対向する2辺L1,L3および4角C1〜C4に可撓部20が設けられたが、例えば、図5や、図7に示すように、可撓部20を4角C1〜C4には設けない構成としてもよい。
【0036】
ここで、図5に示す他の実施形態1に係るガスケット10Aでは、可撓部20は、ガスケット10Aの対向する2辺L1,L3に設けられているが、4角C1〜C4には可撓部20は設けられていない。そして、ガスケット10Aの可撓部20以外の部分が高剛性部30となっている。したがって、ガスケット10Aの4角C1〜C4は高剛性部30となっている。
【0037】
ガスケット10Aの可撓部20の平面形状は、2次曲線状に湾曲した形状となっている。また、ガスケット10Aの可撓部20の断面形状は、上記実施形態と同様の略I字状となっており(図2参照)、高剛性部30の断面形状は、上記実施形態と同様の略T字状となっている(図3参照)。
【0038】
このガスケット10Aによっても、上記実施形態の場合と同様の効果が得られる。この場合、ガスケット10Aは、図6に示すように、折り畳んだ状態で成形することが可能である。具体的には、各辺L1,L3の可撓部20においてガスケット10Aを凹状に折り畳み、折り畳んだ部分を対向する2辺L2,L4の間に収めるように変形させている。このようにして、ガスケット10Aの可撓部20を折り畳むことで、対向する2辺L2,L4間の距離が、A3からA4に短縮する。そして、ガスケット10Aを折り畳んだ状態で成形することで、2辺L2,L4間の短縮した距離[A3−A4]に応じて、ガスケット10Aの成形型のサイズを縮小することができ、ガスケット10Aの生産性を向上させることができる。
【0039】
また、図7に示す他の実施形態2に係るガスケット10Bでは、可撓部20は、ガスケット10Bの対向する2辺L1,L3およびもう一方の対向する2辺L2,L4に設けられているが、4角C1〜C4には可撓部20は設けられていない。そして、ガスケット10Bの可撓部20以外の部分が高剛性部30となっている。したがって、ガスケット10Bの4角C1〜C4は高剛性部30となっている。
【0040】
ガスケット10Bの可撓部20の平面形状は、2次曲線状に湾曲した形状となっている。また、ガスケット10Bの可撓部20の断面形状は、上記実施形態と同様の略I字状となっており(図2参照)、高剛性部30の断面形状は、上記実施形態と同様の略T字状となっている(図3参照)。
【0041】
このガスケット10Bによっても、上記実施形態の場合と同様の効果が得られる。この場合、ガスケット10Bは、図8に示すように、折り畳んだ状態で成形することが可能である。具体的には、各辺L1,L3の可撓部20においてガスケット10Bを凹状に折り畳み、折り畳んだ部分を対向する2辺L2,L4の間に収めるように変形させている。同様に、各辺L2,L4の可撓部20においてガスケット10Bを凹状に折り畳み、その折り畳んだ部分を対向する2辺L1,L3の間に収めるように変形させている。このようにして、ガスケット10Bの可撓部20を折り畳むことで、対向する2辺L2,L4間の距離が、A5からA7に短縮する。また、対向する2辺L1,L3間の距離が、A6からA8に短縮する。そして、ガスケット10Bを折り畳んだ状態で成形することで、2辺L2,L4間の短縮した距離[A5−A7]および2辺L1,L3間の短縮した距離[A6−A8]に応じて、ガスケット10Bの成形型のサイズを縮小することができ、ガスケット10Bの生産性を向上させることができる。
【0042】
(2)ガスケットの可撓部の平面形状や断面形状は、上記実施形態の場合だけに限定されず、適宜変更することが可能である。
【0043】
上記実施形態では、可撓部20の平面形状が円弧状であったが、可撓部20の平面形状は曲線状であれば特に限定されない。例えば、可撓部20の平面形状を、楕円弧状や、2次曲線状に湾曲した形状としてもよい。なお、上述したように、可撓部20の曲率半径を小さくすることで、可撓部20におけるガスケット10の剛性が高くなるので、シール性を向上させる観点からは効果的である。
【0044】
また、上記実施形態では、可撓部20の断面形状が略I字状であったが、可撓性を有する形状であって、折り曲げたり伸ばしたりすることを容易に行うことができる形状であれば、可撓部20の断面形状は略I字状以外であってもよい。
【0045】
なお、略I字状には、図9に示すように、可撓部20の高さ方向の端部にリブ(突起)22が形成された形状も含まれる。リブ22は、シール性を高める観点から設けられ、その数は特に限定されない。この場合、リブ22を可撓部20の高さ方向の一方の端部だけに設けてもよいし、図9に示すように、高さ方向の両方の端部に設けてもよい。
【0046】
(3)ガスケットの高剛性部の断面形状は、上記実施形態の場合だけに限定されず、適宜変更することが可能である。
【0047】
上記実施形態では、高剛性部30の断面形状が略T字状であったが、圧縮されたときにたわみにくく、ガスケット10の倒れが生じにくい形状であれば、高剛性部30の断面形状は略T字状以外であってもよい。
【0048】
なお、略T字状には、図10に示すように、高剛性部30の高さ方向の端部にリブ(突起)34が形成された形状も含まれる。リブ34は、上記可撓部20のリブ22と同様に、シール性を高める観点から設けられ、その数は特に限定されない。この場合、リブ34を高剛性部30の高さ方向の一方の端部だけに設けてもよいし、図10に示すように、高さ方向の両方の端部に設けてもよい。また、複数のリブ34を設ける構成としてもよい。
【0049】
(4)ガスケットの全体的な平面形状は、ガスケットの装着部分の形状に応じてさまざまに変更することが可能であり、例えば、直線部分と曲線部分とが混在した形状とすることが可能である。
【0050】
(5)ガスケットの適用対象として挙げた自動車用エンジンのシリンダヘッドとヘッドカバーは一例であって、それ以外のさまざまなものに、本発明のガスケットは適用することが可能である。つまり、本発明は、2つの部材のうちの一方の部材に設けられた装着溝に挿入されるとともに、2つの部材により圧縮されて、これら2つの部材間の隙間をシールするガスケットであれば、自動車用エンジンのヘッドカバーガスケット以外にも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施形態に係るガスケットを模式的に示す平面図である。
【図2】図1のガスケットの可撓部を示す断面図である。
【図3】図1のガスケットの高剛性部を示す断面図である。
【図4】図1のガスケットの成形時の状態を模式的に示す平面図である。
【図5】他の実施形態1に係るガスケットを模式的に示す平面図である。
【図6】図5のガスケットの成形時の状態を模式的に示す平面図である。
【図7】他の実施形態2に係るガスケットを模式的に示す平面図である。
【図8】図7のガスケットの成形時の状態を模式的に示す平面図である。
【図9】ガスケットの可撓部の変形例を示す断面図である。
【図10】ガスケットの高剛性部の変形例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0052】
10 ガスケット
20 可撓部
30 高剛性部
32 フランジ部
40 シリンダヘッド
50 ヘッドカバー
51 装着溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの部材のうちの一方の部材に設けられた装着溝に挿入されるとともに、2つの部材により圧縮されて、これら2つの部材間の隙間をシールするガスケットであって、
少なくとも対向する2箇所に可撓部が設けられ、上記可撓部以外の部分が、圧縮されたときにたわみにくい高剛性部とされていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1に記載のガスケットにおいて、
上記可撓部の断面形状が略I字状とされ、上記高剛性部の断面形状が略T字状とされていることを特徴とするガスケット。
【請求項3】
請求項1または2に記載のガスケットにおいて、
平面形状が略矩形とされていることを特徴とするガスケット。
【請求項4】
請求項3に記載のガスケットにおいて、
上記可撓部が、対向する2辺に設けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項5】
請求項3に記載のガスケットにおいて、
上記可撓部が、対向する2辺および4角に設けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載のガスケットにおいて、
上記可撓部の平面形状が曲線状とされていることを特徴とするガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−106988(P2010−106988A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−281052(P2008−281052)
【出願日】平成20年10月31日(2008.10.31)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】