説明

ガスケット

【課題】過酷な使用環境に耐えられる耐久性と高いシール性を備えた低反力のガスケットを提供する。
【解決手段】相互に締結一体とされる2部材間に介装され、該2部材間をシールする環状弾性材製ガスケット7であって、主シール部70と、該主シール部の両側部に設けられる補助シール部71とを備え、前記補助シール部は、前記2部材の締結時に前記一方の部材の被シール面に弾接する第1の弾接部710と、他方の部材の被シール面に弾接する第2の弾接部711とを備え、前記第1の弾接部と前記第2の弾接部とが、径方向にずれて弾接するよう形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相互に締結一体とされる2部材間に介装され、該2部材間をシールする弾性材製ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、2部材間をシールするガスケットとして、自動車用エンジン等におけるシリンダヘッドとヘッドカバーとの間に介在させ両者をシールするものや、シリンダヘッドとインテークマニホールドとの連接部をシールするもの等が知られている。
近年は上述のような2部材間をシールするガスケットの使用環境における温度が高くなっており、ガスケットの使用環境は従来よりもより一層過酷な環境になっている。また、自動車の部品については、軽量化をして低燃費化を図るため、ガスケットが取り付けられる部品の樹脂化が進められている。このような場合にガスケットの反力が大きいと、樹脂化された部品がその反力を受けて変形し、ガスケットのシール性が低下するおそれがある。
そこで、ガスケットには、過酷な使用環境でも高いシール性が維持できる耐久性の向上が求められる。
【0003】
下記特許文献1〜下記特許文献3には、シール性を確保しながら、耐久性を向上させるために断面を逆T字型とし、主シール部と該主シール部の両側部に設けられた補助シール部とを備えたガスケットの例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−2336号公報
【特許文献2】特開2003−240122号公報
【特許文献3】特開2003−269613号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載のガスケットは、いずれも被シール面に凹設されたガスケット溝に嵌装されるガスケットの主シール部のシール性を向上させるために主シール部の倒れを防止したり、主シール部の接触面圧を確保できるよう構造上の工夫を凝らしたものである。よって、主シール部の両側部に設けられた補助シール部の構造に着目したものではない。
【0006】
補助シール部がオイル或いは熱せられた空気などの侵入を遮断できる構造となっていれば、主シール部の劣化を防ぐことができ、これにより耐熱性が向上する。よって、過酷な使用環境でも高いシール性を維持できる耐久性を備えたものとすることができると考えられる。しかし、補助シール部によるシール性を高める構造として単に補助シール部の厚みを厚くしただけでは、ガスケットの反力が大きくなってしまう。
【0007】
上記特許文献1に開示されている補助シール部は厚みのある補助シール部に突起部が形成されているため、突起部と接触するフランジ部への反力が大きくなってしまうことが考えられる。また突起部が設けられている箇所の補助シール部によるシール性は高まるとしても、この突起部は、主シール部を境として外側或いは内側に点在して設けられているものであるから、突起部が設けられていない箇所は主シール部のみがシール機能を発揮するものと考えられる。
上記特許文献2及び上記特許文献3については、補助シール部にシール機能がなく、もっぱら補助シール部は表裏を容易に認識するためのものとして記載されており、この例も主シール部のみがシール機能を発揮するものと考えられる。
そこで補助シール部にもシール機能を持たせ、低圧縮力で弾性変形し、主シール部へのオイル等の侵入を防止できる構造としたガスケットが求められる。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、過酷な使用環境に耐えられる耐久性と高いシール性を備えた低反力のガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明に係るガスケットは、相互に締結一体とされる2部材間に介装され、該2部材間をシールする環状弾性材製ガスケットであって、主シール部と、該主シール部の両側部に設けられる補助シール部とを備え、前記補助シール部は、前記2部材の締結時に前記一方の部材の被シール面に弾接する第1の弾接部と、他方の部材の被シール面に弾接する第2の弾接部とを備え、前記第1の弾接部と前記第2の弾接部とが、径方向にずれて弾接するよう形成されていることを特徴とする。
【0010】
また本発明において、第1の弾接部或いは前記第2の弾接部が、屈曲して形成されているものとしてもよい。
或いは、本発明において、第1の弾接部及び前記第2の弾接部が、前記主シール部の両側部から前記被シール面に対して平行に突出して形成された延出部の先側に形成されているものとしてもよい。
【0011】
そして本発明は、前記2部材が、シリンダヘッドとヘッドカバーであって、前記ヘッドカバーの被シール面に前記主シール部が嵌装し得るよう凹設された環状ガスケット溝が形成されているものに適用可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るガスケットの補助シール部は、前記2部材の締結時に前記一方の部材の被シール面に弾接する第1の弾接部と、他方の部材の被シール面に弾接する第2の弾接部とを備え、前記第1の弾接部と前記第2の弾接部とが、径方向にずれて弾接するよう形成されている。
これによれば、2部材を締結した際に、被シール面に弾接するシールポイントが径方向にずれるので、補助シール部にかかる2部材による締結力及びこれに対する補助シール部の反力の逃げ場ができることとなる。よって、小さな力でガスケットの補助シール部を圧縮し弾性変形させることができる。このように小さな力で補助シール部を圧縮させることができるので、主に反力が生じるのは主シール部となり、補助シール部を備えていても、ガスケット全体として低反力のものを構成することができる。
例えば、シール対象となる部材が樹脂材からなるものであっても、その部材がガスケットの反力によって変形してしまうことを防ぐことができ、シール性を損なうことがない。
また圧縮された補助シール部により、被シール面間に侵入しようとするオイルや空気などを遮断することができ、主シール部の劣化を防ぐことで耐熱性を向上させることができる。よって過酷な使用環境に耐えられる耐久性と高いシール性を備えたものとすることができる。
【0013】
本発明において、前記第1の弾接部或いは前記第2の弾接部が、屈曲して形成されているものとした場合は、補助シール部への第1の弾接部或いは第2の弾接部の形成が容易に行える。
【0014】
また本発明において、第1の弾接部及び第2の弾接部が、主シール部の両側部から前記被シール面に対して平行に突出して形成された延出部の先側に形成されているものとした場合も、上述の場合と同様に2部材を締結した際に、被シール面に弾接するシールポイントが径方向にずれるので、2部材の小さな締結力で補助シール部を圧縮し弾性変形させることができ、同様の効果を奏するものとすることができる。また延出部を介して第1の弾接部及び第2の弾接部が形成されているので、2部材を締結し補助シール部が圧縮され弾性変形する際の影響を主シール部70に与えにくいものとすることができる。
【0015】
更に本発明のガスケットが介装される2部材が、シリンダヘッドとヘッドカバーであって、前記ヘッドカバーの被シール面に前記主シール部が嵌装し得るよう凹設された環状ガスケット溝が形成されているものとすることができる。よってこれによれば、シリンダヘッドが設けられる高温の過酷な環境下においても、ヘッドカバーとの被シール面間を強固にシールすることができ、補助シール部によって主シール部の劣化を防ぐことができるので、長期に亘って耐久性のあるヘッドカバー用のガスケットとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態のガスケットが採用されたエンジンの部分切欠正面図である。
【図2】同実施形態のガスケットを示す図であり、(a)は組付け前のガスケットの一部破断斜視図、(b)は図1におけるX部の拡大図である。
【図3】図2に示す実施形態の変形例を示す図であり、(a)は組付け前のガスケットの一部破断斜視図、(b)は図2(b)と同様図である。
【図4】図2に示す実施形態の別の変形例を示す図であり、(a)は組付け前のガスケットの一部破断斜視図、(b)は図2(b)と同様図である。
【図5】本発明の第2の実施形態を示す図であり、(a)は組付け前のガスケットの一部破断斜視図、(b)及び(c)は図2(b)と同様図である。
【図6】図5に示す実施形態の変形例を示す図であり、(a)は組付け前のガスケットの一部破断斜視図、(b)は図2(b)と同様図である。
【図7】本発明の第3の実施形態を示す図であり、(a)は組付け前のガスケットの一部破断斜視図、(b)は図2(b)と同様図である。
【図8】図7に示す実施形態の変形例を示す図であり、(a)は組付け前のガスケットの一部破断斜視図、(b)は図2(b)と同様図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1の実施形態)
まずは本発明の第1の実施形態について、図1〜図4を参照しながら説明する。
ここでは、本発明に係るガスケットを自動車に搭載されるエンジンのシリンダヘッド2とヘッドカバー4との間に介装したヘッドカバーガスケットに適用した例を説明する。
図1において、1はエンジンのシリンダブロックであり、このシリンダブロック1の上面にはシリンダヘッドガスケット20を介してシリンダヘッド2が締付一体とされている。このシリンダヘッド2上には2本の給排気バルブ駆動用カムシャフト3、3が横設され、このカムシャフト3、3の駆動伝達側一端部は、シリンダヘッド2の外側(紙面手前側)に延出されている。この延出部分は、不図示のクランクシャフトとチェーン連結され、クランクシャフトの回転動力が伝達され、夫々が軸回転するようメタル30、30を介しシリンダヘッド2上に保持される。
【0018】
ヘッドカバー4は、上記カムシャフト3、3の保持部も抱持するようシリンダヘッド2の上面に締付覆蓋されるものであり、その一端側部には、カムシャフト3、3の駆動伝達側をシリンダヘッド2の上面との間で貫装状態で抱持し得るカムアーチ部分40が刳り抜くように形成されている。このカムアーチ部分40を含むヘッドカバー4の周縁部分にはフランジ部41が形成されている。カムアーチ部分40とシリンダヘッド2上のカムシャフト3、3の保持部との間には、アルミニウム等の金属材からなるカムアーチブラケット5が介在し、このカムアーチブラケット5も一括してヘッドカバー4が、フランジ部41をしてシリンダヘッド2上にボルト42により締付一体とされる。
【0019】
上記フランジ部41の下面であって、シリンダヘッド2上面の被シール面(カムアーチブラケット5の上辺部も含む)21に対合する被シール面43には、平面視して略方形の環状のガスケット溝6が図2(b)に示すように掘設されている。このガスケット溝6には、該ガスケット溝6の形状に沿うよう成型され、ゴムなど弾性材からなる環状のヘッドカバーガスケット7が半嵌装状態で装着される。
そしてヘッドカバー4をシリンダヘッド2にボルト42にて締付一体とした時には、締付圧縮に伴うヘッドカバーガスケット7の弾性変形により、上記両被シール面21、43がシールされる。
【0020】
図2(a)は、ヘッドカバーガスケット7がガスケット溝6に嵌装される前の状態を示している。
ここに示すようにヘッドカバーガスケット7は、環状のガスケット溝6に嵌装し得る主シール部70と、該主シール部70の両側部に設けられる補助シール部71とを備えている。ヘッドカバーガスケット7は、NBR、H−NBR、ACM、AEM、FKM等を中心とするゴム等の弾性材を用いて形成することができる。
主シール部70は、ヘッドカバー4に凹設されたガスケット溝6に嵌め入れられるように山型形状に形成されている。
主シール部70は、ガスケット溝6に組付け時にガスケット溝6の底面部60に弾接する頂部700と、ヘッドカバー4をシリンダヘッド2に締め付け一体とする際にシリンダヘッド2側の被シール面21に弾接する底面部701とを備えている。
【0021】
補助シール部71は、ヘッドカバー4がシリンダヘッド2に締結一体とされた際にヘッドカバー4側の被シール面43に弾接する第1の弾接部710と、シリンダヘッド2側の被シール面21に弾接する第2の弾接部711とを備えている。
補助シール部71の第1の弾接部710と第2の弾接部711とは、径方向にずれて弾接するよう形成されている。補助シール部71は、主シール部70の底面部701の両側部に内外に沿って形成されたくぼみ部702を経て一旦シリンダヘッド2側に弾接した後、斜め上方に向かって立上げ形成される。このとき、シリンダヘッド2に弾接する部分が第2の弾接部711となる。そして補助シール部71は、この第2の弾接部711の弾接ポイントから斜め上方に向かって立上げ形成され、ガスケット溝6への装着状態で、ヘッドカバー4側の被シール面43に弾接する位置で屈曲して形成されている。この屈曲形成された部分が第1の弾接部710となる。そして屈曲部分を経て斜め下方に延出形成された補助シール部71の先端は被シール面21に弾接し、ここが第2の弾接部711となる。
【0022】
次にヘッドカバーガスケット7の組付け手順について説明する。
まずヘッドカバー4をシリンダヘッド2の上に載置する際とは天地逆にした状態にし、ガスケット溝6にヘッドカバーガスケット7を半嵌装状態に組付ける。このとき、主シール部70の頂部700がガスケット溝6の底面部60に押し当てられるよう嵌め入れていく。
そしてヘッドカバーガスケット7をガスケット溝6に半嵌装に組付けた状態で、天地逆になっているヘッドカバー4を表側に返して、カムアーチブラケット5及びシリンダヘッド2の上に載置する。
【0023】
ヘッドカバー4とシリンダヘッド2とは、ヘッドカバー4が適正に載置されれば、シリンダヘッド2の被シール面21に設けられた雌ねじ穴22と、ヘッドカバー4のフランジ部41に設けられたボルト挿通孔44とが位置合わせされるように構成されている。よって、ヘッドカバー4をシリンダヘッド2の上の適正な位置に載置した後、この状態でボルト挿通孔44にボルト42を挿入し、雌ねじ穴22にボルト42を螺入していく。このボルト42の螺入によってヘッドカバー4がシリンダヘッド2側に締付けられていく(図2(b)のY部拡大図参照。Y部拡大図の白抜矢印は締付け方向を示している)。そしてヘッドカバーガスケット7の底面部701が被シール面21に強く弾接し、ガスケット溝6の底面部60と被シール面21との間に主シール部70が挟まれ、ガスケット溝6の側面部61方向に膨らんで弾性変形する。
【0024】
また同じようにヘッドカバー4がシリンダヘッド2側に締付けられることによって、補助シール部71の第1の弾接部710及び第2の弾接部711が被シール面43、21のそれぞれに弾接した状態でシールラインの内方或いは外方へ押しつぶされていく(図2(b)のY部拡大図参照)。このとき、第1の弾接部710にはヘッドカバー4による押圧力がかかる(図2(b)のY部拡大図の下向き矢印参照)。その押圧力は第1の弾接部710の下方とシリンダヘッド2側の被シール面21との間に形成されている空間或いは補助シール部71の先端側へと分散される。第2の弾接部711は上述したように、ヘッドカバー4の押圧を受けながら主シール部70からみて外方或いは内方へとシリンダヘッド2側の被シール面21に弾接した状態で移動する。こうしてボルト42の締付けにより、ヘッドカバー4とシリンダヘッド2とが締結され、このときの締付圧縮力によりヘッドカバーガスケット7が弾性変形し、両被シール面21、43がシールされる。
【0025】
このヘッドカバーガスケット7によれば、ヘッドカバー4とシリンダヘッド2とを締結した際に、被シール面43、21に弾接するシールポイントが径方向にずれるので、補助シール部71にかかる上述の2部材4、2による締結力及びこれに対する補助シール部71の反力の逃げ場ができることとなる。よって、小さな力で補助シール部71を圧縮し、弾性変形させることができる。このように小さな力で補助シール部71を弾性変形させることができるので、主に反力が生じるのは主シール部70となり、補助シール部71を備えていても、ヘッドカバーガスケット7全体として低反力のものを構成することができる。
また補助シール部71の第1の弾接部710及び第2の弾接部711が、被シール面43、21に圧縮された状態で弾接されるので、被シール面43、21間に侵入しようとするオイルや熱い空気などを遮断することができる。すなわち、主シール部70の底面部701或いは主シール部70が嵌装されているガスケット溝6内に、オイルや熱い空気などが侵入することを補助シール部71で阻止し、主シール部70の劣化を防ぐことでヘッドカバーガスケット7の耐熱性を向上させることができる。よって過酷な使用環境に耐えられる耐久性と高いシール性を備えたものとすることができる。
【0026】
また補助シール部71のシールポイントが径方向にずれた状態となるので、上述したように小さな力で補助シール部71を圧縮変形させることができ、シール対象となるヘッドカバー4が例えば樹脂材製であっても、ヘッドカバー4がヘッドカバーガスケット7の反力によって変形してしまうことがない。
よって、自動車などのエンジンまわりの部品を樹脂化して軽量化を図ることができ、車両の低燃費化に貢献することができる。
特に以上のように図2に示すヘッドカバーガスケット7には、ヘッドカバー4側に弾接する第1の弾接部710が片側に1ヶ所、シリンダヘッド2側に弾接する第2の弾接部711が片側に2ヶ所備えていることになる。よって、補助シール部71にシールポイントが複数設けられることになるので、シール性が向上する。またこのように補助シール部71の屈曲幅が長くとれるので、補助シール部71は圧縮力を受けると、この力に追従して、補助シール部71は、内方或いは外方に向けて変形しやすいものとすることができる。この観点からも図2に示したヘッドカバーガスケット7の形状はシール性のよいものといえる。
【0027】
なお、第1の弾接部710及び第2の弾接部711の形状、構成は図例に限定されるものではなく、要は主シール部70の両側部に設けられた第1の弾接部710と第2の弾接部711とが、径方向にずれて弾接するよう形成されたものであればよい。その他の形状、構成の例を以下に説明する。
【0028】
図3(a)及び(b)に示す例は、図1及び図2に示した第1の実施形態の変形例である。図3(a)は組付け前のヘッドカバーガスケットの一部破断斜視図、図3(b)は図2(b)と同様図である。
ここに示すヘッドカバーガスケット7Aは、補助シール部71に延出部712が設けられている点で異なるものである。延出部712は、主シール部70の底面部701寄りの両側部から第1の弾接部710への立上り部分に、被シール面21、43に対して平行に突出して形成されている。
これによっても、上述の例と同様に補助シール部71のシールポイントが径方向にずれた状態となるので、小さな力で補助シール部71を圧縮し弾性変形させることができる。また延出部712を介して第1の弾接部710及び第2の弾接部711が形成されているので、ヘッドカバー4とシリンダヘッド2とを締結し、補助シール部71が圧縮され弾性変形する際の影響を主シール部70に与えにくいものとすることができる。
その他の構成及び効果は上述の例と同様であるので、共通部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0029】
次に図4(a)及び(b)に示す例も、図1及び図2に示した第1の実施形態の変形例である。図4(a)は組付け前のヘッドカバーガスケットの一部破断斜視図、図4(b)は図2(b)と同様図である。
ここに示すヘッドカバーガスケット7Bは、補助シール部71に、主シール部70の両側部の略中央部分から第1の弾接部710へ被シール面21、43に対して平行に突出して形成された延出部712が設けられ、その延出部712からシリンダヘッド2側へ屈曲した部分を第1の弾接部710としている点で異なるものである。そしてこの屈曲部分を経て斜め下方(シリンダヘッド2側)に延出形成された補助シール部71の先端は、図4(b)に示すようにシリンダヘッド2側の被シール面21に弾接する第2の弾接部711になる。
これによっても、上述の例と同様に補助シール部71のシールポイントが径方向にずれた状態となるので、小さな力で補助シール部71を圧縮し弾性変形させることができる。またヘッドカバー4とシリンダヘッド2とを締結した際に、圧縮され弾性変形する補助シール部71の横方向への広がりが少ない(図2に示すものと比べて屈曲幅が狭い。)ので、ヘッドカバーガスケット7の設置スペースが横方向に狭い場合でも有効にシール性を発揮できる。
その他の構成及び効果は上述の例と同様であるので、共通部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0030】
(第2の実施形態)
続いて本発明の第2の実施形態について、図5、図6を参照しながら説明する。
まず図5(a)〜(c)に示す例について説明する。図5(a)は組付け前のヘッドカバーガスケットの一部破断斜視図、図5(b)及び(c)は図2(b)と同様図である。上述の図1、図2に示す例と共通する部分は同じ符号を付し、その説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
ここに示すヘッドカバーガスケット7Cは、補助シール部71の形状が上述の例とは異なり、主シール部70の底面部701寄りの両側部から補助シール部71が湾曲して立上る形状となっており、湾曲部分がシリンダヘッド2側に弾接する第2の弾接部711となっている。そしてこの湾曲部分を経て斜め上方に延出形成された補助シール部71の先端は、図5(b)に示すようにヘッドカバー4側の被シール面43に弾接する第1の弾接部710になる。
【0031】
ここで被シール面43に弾接する第1の弾接部710は、補助シール部71の先端に限定されず、図5(c)に示すように補助シール部71の立上り部分の途中であってもよい。図5(c)に示す例では、ヘッドカバー4の周縁部分の角部430に補助シール部71の第1の弾接部710が弾接するよう形成されている。
以上によっても、上述の例と同様に補助シール部71のシールポイントが径方向にずれた状態となるので、小さな力で補助シール部71を圧縮し弾性変形させることができる。またヘッドカバーガスケット7Cの補助シール部71の形状は、主シール部70の底面部701寄りの両側部から補助シール部71が湾曲して立上る形状となっており、補助シール部71の先側が第1の弾接部710になっている。よって例えばシリンダヘッド2とヘッドカバー4との間が狭い場合でも、シリンダヘッド2の上から下への圧縮力を受けながら、第1の弾接部710は内方或いは外方(横方向)へと広がっていくので、補助シール部71が十分に圧縮され弾性変形させることができ、シール性を向上させることができる。
なお、第1の弾接部710は角部430に弾接して圧縮変形されやすいように突条部を備えたものとしてもよい。
【0032】
図6(a)及び(b)に示す例は、図5(a)〜(c)に示した第2の実施形態の変形例である。図6(a)は組付け前のヘッドカバーガスケットの一部破断斜視図、図6(b)は図2(b)と同様図である。
ここに示すヘッドカバーガスケット7Dは、補助シール部71に、主シール部70の両側部の略中央から被シール面21、43に対して平行に突出して形成された延出部712が設けられる点で図5(a)〜(c)に示す例とは、異なるものである。また図5(a)〜(c)に示す例とは、補助シール部7が湾曲して形成されるのではなく、シリンダヘッド2側に屈曲して形成されている点でも異なる。
ここに示すヘッドカバーガスケット7Dは、主シール部70の両側部の略中央から延出部712を介して斜め下方、すなわちシリンダヘッド2側に向かって延出され、屈曲した後、立上る形状となっており、屈曲部分がシリンダヘッド2側に弾接する第2の弾接部711となっている。そしてこの屈曲部分を経て斜め上方に延出形成された補助シール部71の先端は、図6(b)に示すようにヘッドカバー4側の被シール面43に弾接する第1の弾接部710になる。
これによっても、上述の例と同様に補助シール部71のシールポイントが径方向にずれた状態となるので、小さな力で補助シール部71を圧縮し弾性変形させることができる。また図3の例と同様に延出部712を介して第1の弾接部710及び第2の弾接部711が形成されているので、ヘッドカバー4とシリンダヘッド2とを締結し、補助シール部71が圧縮され弾性変形する際の影響を主シール部70に与えにくい。よって主シール部70のシール性をよくすることができる。
なおこの変形例においても図5(c)に示すようにヘッドカバー4の周縁部分の角部430に補助シール部71の第1の弾接部710が弾接するようにしてもよい。
その他の構成及び効果は上述の例と同様であるので、共通部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
(第3の実施形態)
続いて本発明の第3の実施形態について、図7、図8を参照しながら説明する。
まず図7(a)、(b)に示す例について説明する。図7(a)は組付け前のヘッドカバーガスケットの一部破断斜視図、図7(b)は図2(b)と同様図である。上述の図1、図2に示す例と共通する部分は同じ符号を付し、その説明を省略し、異なる部分のみ説明する。
ここに示すヘッドカバーガスケット7Eは、補助シール部71の形状が上述の例とは異なり、第1の弾接部710及び第2の弾接部711が、主シール部70の両側部から被シール面21、43に対して平行に突出して形成された延出部712の先側に形成されている。
【0034】
延出部712の先側は、シリンダヘッド2側及びヘッドカバー4側のそれぞれ延出された一対の片となっており、この片の先側が装着状態においてシリンダヘッド2及びヘッドカバー4の被シール面21、43に弾接し、第1の弾接部710及び第2の弾接部711となる。第1の弾接部710及び第2の弾接部711が径方向にずれた状態でそれぞれの被シール面21、43に弾接するように、ここに示す例では、第1の弾接部710のシールポイントが第2の弾接部711のシールポイントより主シール部70側になるよう形成されている。すなわち、上述の延出部712から延出した一対の片は、ヘッドカバー4側に配置される先側が主シール部70側に近づくように傾斜するテーパー状(ハの字状)に形成されている。
これによっても、上述の例と同様に補助シール部71のシールポイントが径方向にずれた状態となり、第1の弾接部710が受けるヘッドカバー4からの押圧力は、延出部712や延出部712の下方に形成されるシリンダヘッド2の被シール面との間にできる空間、第2の弾接部711側へと分散され、小さな力で補助シール部71を圧縮し弾性変形させることができる。また図3及び図6の例と同様に延出部712を介して第1の弾接部710及び第2の弾接部711が形成されているので、ヘッドカバー4とシリンダヘッド2とを締結し、補助シール部71が圧縮され弾性変形する際の影響を主シール部70に与えにくい。よって主シール部70のシール性をよくすることができる。さらに補助シール部71の形成範囲を大きくとったり、設置場所に応じて延出部712の長さを変えれば期待するシール効果を発揮できるなど、設計変更がしやすい形状といえる。
【0035】
図8(a)及び(b)に示す例は、図7(a)及び(b)に示した第3の実施形態の変形例である。図8(a)は組付け前のヘッドカバーガスケットの一部破断斜視図、図8(b)は図2(b)と同様図である。
ここに示すヘッドカバーガスケット7Fは、図7(a)、(b)に示した例とは延出部712から延出した一対の片の傾き方向が異なり、シリンダヘッド2側に配置される先側が主シール部70側に近づくように傾斜するテーパー状(逆ハの字状)に形成されている。
これによっても、上述の例と同様に補助シール部71のシールポイントが径方向にずれた状態となるので、小さな力で補助シール部71を圧縮し弾性変形させることができる。また図3、図6及び図7の例と同様に、延出部712を介して第1の弾接部710及び第2の弾接部711が形成されているので、ヘッドカバー4とシリンダヘッド2とを締結し、補助シール部71が圧縮され弾性変形する際の影響を主シール部70に与えにくい。よって主シール部70のシール性をよくすることができる。さらに図7の例と同様に、補助シール部71の形成範囲を大きくとったり、設置場所に応じて延出部712の長さを変えれば期待するシール効果を発揮できるなど、設計変更がしやすい形状といえる。
その他の構成及び効果は上述の例と同様であるので、共通部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0036】
なお、ヘッドカバーガスケット7(7A〜7F)における主シール部70の形状は、図例のものに限定されず、例えば主シール部70の補助シール部71に対する突出高さをもっと低いものとしてもよい。また補助シール部71の形状も、図例のものに限定されず、第1の弾接部710と第2の弾接部711とが、径方向にずれて弾接するよう形成されていれば、第1の弾接部710及び第2の弾接部711を複数備えたものでもよく、例えば波形状が繰り返し形成されたものであってもよい。
上記実施形態では、ヘッドカバー4がカムアーチ部40のような凹曲部を備えた例について述べたが、プラグセミサーキュラー部のような凸曲部を備えている場合にも本発明のヘッドカバーガスケット7が適用可能である。また上記実施形態では、エンジンのシリンダヘッド2とヘッドカバー4との間をシールするヘッドカバーガスケット7とした例について説明したが、これに限定されるものではない。
さらに補助シール部71が主シール部70の両側部にある例について説明したが、例えば設置環境が主シール部70を挟んで内外で異なる場合は、設置環境が厳しい方にのみ補助シール部71を設け、主シール部70の劣化を防ぐように構成したものとすることもできる。
【符号の説明】
【0037】
2 シリンダヘッド(2部材の他方)
21 被シール面
4 ヘッドカバー(2部材の一方)
43 被シール面
6 ガスケット溝
7(7A〜7F) ヘッドカバーガスケット(ガスケット)
70 主シール部
71 補助シール部
710 第1の弾接部
711 第2の弾接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に締結一体とされる2部材間に介装され、該2部材間をシールする環状弾性材製ガスケットであって、
主シール部と、該主シール部の両側部に設けられる補助シール部とを備え、
前記補助シール部は、前記2部材の締結時に前記一方の部材の被シール面に弾接する第1の弾接部と、他方の部材の被シール面に弾接する第2の弾接部とを備え、前記第1の弾接部と前記第2の弾接部とが、径方向にずれて弾接するよう形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1に記載のガスケットにおいて、
前記第1の弾接部或いは前記第2の弾接部が、屈曲して形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項3】
請求項1に記載のガスケットにおいて、
前記第1の弾接部及び前記第2の弾接部が、前記主シール部の両側部から前記被シール面に対して平行に突出して形成された延出部の先側に形成されていることを特徴とするガスケット。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載のガスケットにおいて、
前記2部材が、シリンダヘッドとヘッドカバーであって、前記ヘッドカバーの被シール面に前記主シール部が嵌装し得るよう凹設された環状ガスケット溝が形成されていることを特徴とするガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−281421(P2010−281421A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−136839(P2009−136839)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000225359)内山工業株式会社 (204)
【Fターム(参考)】