説明

ガスケット

【課題】補強環を埋設したガスケット本体の軸方向両端にそれぞれシールビードを設けてなるガスケットにおいて、油圧がガスケットに作用したときにガスケット本体が装着溝内で軸方向一方へ変位しても、締め代が低下する側のシール性を維持することができるガスケットを提供する。
【解決手段】補強環を埋設したガスケット本体と、ガスケット本体の軸方向一方の端部に設けられるとともに装着時に装着溝の一方の側面に密接する第1シールビードと、ガスケット本体の軸方向他方の端部に設けられるとともに装着時に装着溝の他方の側面に密接する第2シールビードとを有する。油圧がガスケットに作用したときにガスケット本体が装着溝内で軸方向一方へ変位する。ガスケット本体の変位に伴う第2シールビードの締め代低下によるシール性低下を補うべく第2シールビードと並んで第3シールビードが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置の一種であるガスケットに関するものである。本発明のガスケットは例えば、自動車関連分野で用いられ、または一般の産業機械の分野などで用いられる。
【背景技術】
【0002】
油圧経路に用いられ内圧を受けてシールするガスケットは一般的に図3に示すように、補強環14を埋設したガスケット本体12の軸方向両端にそれぞれシールビード15,16を有し、当該ガスケット11を装着溝23に装着したときに両シールビード15,16がそれぞれ内側(径方向内方)へ倒れ込む構造(内圧を受けてセルフシールする構造)となっている。両シールビード15,16はそれぞれ圧力を受けて軸方向の反力をガスケット本体12に加えるが、圧力が高圧の場合、両ビード15,16の微小な剛性差によって、ガスケット本体12の軸方向セット位置が軸方向一方へずれる挙動を示すことがある。その場合、締め代を失う側のビード16は圧力に負けてオイルが吹き抜けたり、隙間が増えてゴムの変形領域が増加することでゴムの歪みが大きくなって耐久割れを生じたりする問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−32834号公報
【特許文献2】特開平1−261564公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上の点に鑑みて、補強環を埋設したガスケット本体の軸方向両端にそれぞれシールビードを設けてなるガスケットにおいて、油圧が当該ガスケットに作用したときにガスケット本体が装着溝内で軸方向一方へ変位しても、締め代が低下する側のシール性を維持することができるガスケットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるガスケットは、油圧の経路を備えるハウジングの内部に設けたガスケット装着溝に装着されて前記油圧をシールするガスケットであって、補強環を埋設したガスケット本体と、前記ガスケット本体の軸方向一方の端部に設けられるとともに装着時に前記装着溝の一方の側面に密接する第1シールビードと、前記ガスケット本体の軸方向他方の端部に設けられるとともに装着時に前記装着溝の他方の側面に密接する第2シールビードとを有し、前記第2シールビードの剛性が前記第1シールビードよりも高く設定されていることまたは前記補強環が前記ガスケット本体内で軸方向一方へ片寄って配置されていることにより前記油圧が当該ガスケットに作用したときに前記ガスケット本体が前記装着溝内で軸方向一方へ変位する構造を有し、前記ガスケット本体の軸方向一方への変位に伴う前記第2シールビードの締め代低下によるシール性低下を補うべく前記第2シールビードと並んで第3シールビードが設けられていることを特徴とする。
【0006】
また、本発明の請求項2によるガスケットは、上記した請求項1記載のガスケットにおいて、前記第1および第2シールビードはそれぞれ前記装着溝に装着されたときに前記油圧が存する径方向内方へ倒れ込む構造とされ、これに対し前記第3シールビードは径方向外方へ倒れ込んで前記装着溝の他方の側面および底面の双方に対し密接する構造とされていることを特徴とする。
【0007】
上記構成を備える本発明のガスケットにおいては、ガスケット本体の軸方向一方への変位に伴う第2シールビードの締め代低下によるシール性低下を補うべく第2シールビードと並んで第3シールビードが設けられているために、第2シールビードによるシール性の低下分ないし不足分を新たに設けた第3シールビードによって補うことが可能とされている。
【0008】
油圧がガスケットに作用したときにガスケット本体が装着溝内で軸方向一方へ変位する現象は、以下の態様にて起こりやすい。
【0009】
(1)第1態様・・・
図4(A)に示すように、軸方向一方(図では上方)の第1シールビード15および軸方向他方(図では下方)の第2シールビード16が軸方向(図では上下方向)に非対称な断面形状とされて第1シールビード15よりも第2シールビード16の剛性が高く設定されている場合。
この場合、図4(B)に示すように高圧の油圧Pがガスケット11に作用するとガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位しやすく(変位方向を矢印Hにて示す)、また、図4(C)に示すようにガスケット11が軸方向に強く圧縮Pされたときにもガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位しやすい(変位方向を矢印Hにて示す)。
【0010】
(2)第2態様・・・
図5(A)に示すように、補強環14がガスケット本体12内で軸方向一方に片寄って配置されている場合。
この場合、図5(B)に示すように高圧の油圧Pがガスケット11に作用するとガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位しやすい(変位方向を矢印Hにて示す)。尚、この場合は、上記第1態様と異なり、図5(C)に示すようにガスケット11が軸方向に強く圧縮Pされたときにガスケット本体12は装着溝23内で軸方向一方へ変位することはない。
【0011】
(3)第3態様・・・
図6(A)に示すように、軸方向一方(図では上方)の第1シールビード15および軸方向他方(図では下方)の第2シールビード16が軸方向(図では上下方向)に非対称な断面形状とされて第1シールビード15よりも第2シールビード16の剛性が高く設定され、かつ補強環14がガスケット本体12内で軸方向一方に片寄って配置されている場合。
この場合、図6(B)に示すように高圧の油圧Pがガスケット11に作用するとガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位しやすく(変位方向を矢印Hにて示す)、また、図6(C)に示すようにガスケット11が軸方向に強く圧縮Pされたときにもガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位しやすい(変位方向を矢印Hにて示す)。
【0012】
したがって、上記(1)ないし(3)の態様において、補強環14を埋設したガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方に変位すると、第2シールビード16の装着溝23側面に対する締め代が低下し、これにより第2シールビード16によるシール性が低下することがある。
【0013】
そこで、本発明では、第2シールビードと並んで第3シールビードをガスケット本体における軸方向他方の端部に設け、この第3シールビードを第2シールビードと同様に装着溝側面に密接させ、これにより第2シールビードによるシール性の低下分ないし不足分を第3シールビードによって補うことにしたものである。
【0014】
第3シールビードとしては、上記したように装着溝の側面に密接するが、同時に装着溝の底面に密接するようにしても良く、この場合には、更なるシール性の向上を期待することが可能となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0016】
すなわち、本発明のガスケットにおいては上記したように、補強環を埋設したガスケット本体の軸方向両端にそれぞれシールビードを設けてなるガスケットにおいて、油圧が当該ガスケットに作用したときにガスケット本体が装着溝内で軸方向一方へ変位する構造であっても、締め代が低下する側のシール性を第3シールビードによって補うようにしたために、ガスケット全体としてのシール性を維持向上させることができる。また、第3シールビードとして装着溝の側面および底面の双方に対し密接させる場合には、更なるシール性の向上を期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係るガスケットの半裁断面図
【図2】同ガスケットを異なるハウジング構造に装着する場合の半裁断面図
【図3】従来例に係るガスケットの半裁断面図
【図4】ガスケット本体が装着溝内で軸方向一方へ変位する現象を示す第1態様の説明図
【図5】ガスケット本体が装着溝内で軸方向一方へ変位する現象を示す第2態様の説明図
【図6】ガスケット本体が装着溝内で軸方向一方へ変位する現象を示す第3態様の説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
(a)
図1に示すように、第1ビード15のビード角をα、ビード幅をw1とするとともに第2ビード16のビード角をβ、ビード幅をw2として、ビード角0°<α<β<90°とすること、および幅w1<w2とすることで、内圧を受けた際のガスケット11の位置を安定して上面側に持ってくることができる。また、内圧を受けて第2ビード16が歪み大とならないよう、外周側に第3ビード17を設ける。第2ビード16は第3ビード17が存在することによって、変形量を抑制することができ、安定したシール性を発揮できる。一方、第3ビード17は第2ビード16が内圧を受けて外周側に押されることで、ハウジング21内径面との締め代が発生し、シール機能を発揮する。尚、第3ビード17はガスケット11を上下に潰したときに、外周側に広がるように変形するようなテーパー部17eを有する。また、図2に示すように相手ハウジング21a,21bの上下に溝23を掘ることで、ガスケット11の挿入方向がなくなる。
【0019】
(b)
上記ビード角0°<α<β<90°とすること、および幅w1<w2とすることは、これに代えて、補強環14の位置を軸方向非対称とすること(補強環14の片側端面(軸方向他方の端面)のみに変形体(ゴム13)があること、もしくは補強環14の片側端面(軸方向他方の端面)に存在するゴム13の軸方向厚みが反対側端面(軸方向一方の端面)に存在するゴム13の軸方向厚みよりも大きいこと)や、ビード剛性(ビード肉厚)に差を付けること(第1ビード15の剛性よりも第2ビード16の剛性を大きくすること)や、環の片側端面にゴムがある方のビード剛性を強くすること(補強環14の片側端面にゴム13がある方のビード16の剛性を強くすること)などとしても良い。
【実施例】
【0020】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施例に係るガスケット11の半裁断面を示している。当該実施例に係るガスケット11は、自動車等車両におけるオートマチックトランスミッション(AT)内の継ぎ手シールなど、油圧経路22を備えるハウジング21の内部に設けたガスケット装着溝23に装着されて前記油圧をシールするものであって、以下のように構成されている。
【0022】
すなわち、所定のゴム状弾性体よりなる環状体(ゴム環状体)13の内部に金属等剛材製の補強環14が埋設されることにより当該ガスケット11におけるガスケット本体12が設けられており、このガスケット本体12の軸方向一方(図では上方)の端部に、装着時に装着溝23の一方の側面23aに密接する第1シールビード15が前記ゴム状弾性体により一体成形されるとともに、ガスケット本体12の軸方向他方(図では下方)の端部に、装着時に装着溝23の他方の側面23bに密接する第2シールビード16が同じく前記ゴム状弾性体により一体成形されている。装着溝23は矩形断面であって、径方向内方へ向けて開口している。ガスケット本体12の軸方向幅は、装着溝23の軸方向幅よりも若干小さく設定されている。ガスケット本体12の外径寸法は、装着溝23の底面23cの径寸法よりも若干小さく設定されている。
【0023】
第1および第2シールビード15,16はそれぞれ、装着時、装着溝23の側面23a,23bに密接したとき、締め代によって径方向内方へ倒れ込むように構成されている。
【0024】
このため、第1シールビード15は、全体としてガスケット本体12から径方向斜め内方へ向けて突出するように形成され、これによりガスケット本体12の内径面12aよりも径方向内方へ所定幅突出する内径突出部15aと、ガスケット本体12の一方の端面12bよりも軸方向一方へ所定幅突出する端面突出部15bとを備えている。図では内径突出部15aの径方向突出幅をw1で示している。前者の内径突出部15aは、その内径面におけるビード基端側(軸方向他方側)にテーパー面15cを備え、ビード先端側(軸方向一方側)に円筒面15dを備えている。テーパー面15cの傾斜は軸方向他方から軸方向一方へかけてビード内径寸法が徐々に縮小する向きとされている。図ではテーパー面15cの傾斜角度をαで示している。後者の端面突出部15bは、その端面におけるビード基端側(径方向外方側)にテーパー面15eを備え、ビード先端側(径方向内方側)に軸直角平面15fを備えている。テーパー面15eの傾斜は軸方向他方から軸方向一方へかけてビード外径寸法が徐々に縮小する向きとされている。
【0025】
一方、第2シールビード16は、これも全体としてガスケット本体12から径方向斜め内方へ向けて突出するように形成され、これによりガスケット本体12の内径面12aよりも径方向内方へ所定幅突出する内径突出部16aと、ガスケット本体12の他方の端面12cよりも軸方向他方へ所定幅突出する端面突出部16bとを備えている。図では内径突出部16aの径方向突出幅をw2で示している。前者の内径突出部16aは、その内径面におけるビード基端側(軸方向一方側)にテーパー面16cを備え、ビード先端側(軸方向他方側)に円筒面16dを備えている。テーパー面16cの傾斜は軸方向一方から軸方向他方へかけてビード内径寸法が徐々に縮小する向きとされている。図ではテーパー面16cの傾斜角度をβで示している。後者の端面突出部16bは、その端面におけるビード基端側(径方向外方側)にテーパー面16eを備え、ビード先端側(径方向内方側)に軸直角平面16fを備えている。テーパー面16eの傾斜は軸方向一方から軸方向他方へかけてビード外径寸法が徐々に縮小する向きとされている。
【0026】
上記構成の第1および第2シールビード15,16において、第2シールビード16における内径突出部16aのテーパー面16cの傾斜角度βは、第1シールビード15における内径突出部15aのテーパー面15cの傾斜角度αよりも大きく設定され(0°<α<β<90°)、また第2シールビード16における内径突出部16aの径方向突出幅w2は第1シールビード15における内径突出部15aの径方向突出幅w1よりも大きく設定されている(w1<w2)。したがって両シールビード15,16は、軸方向(図では上下方向)に非対称な断面形状とされるとともに第1シールビード15よりも第2シールビード16のほうが剛性が高く軸方向に潰れにくい形状とされており、これは、上記したところの「(1)第1態様」に相当し、「(3)第3態様」前半部に相当する。
【0027】
また、上記構成のガスケット本体12において、補強環14は図示するようにガスケット本体12内で軸方向一方に片寄って配置されており、これは、上記したところの「(2)第2態様」に相当し、「(3)第3態様」後半部に相当する。
【0028】
したがって、上記構成のガスケット11は、上記したところの「(1)第1態様」「(2)第2態様」および「(3)第3態様」に相当するので、当該ガスケット11に対しその径方向内方から高圧の油圧が作用すると、ガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位しやすく、このようにガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位すると、装着溝23の他方の側面23bに対する第2シールビード16の締め代が低下し、これにより第2シールビード16によるシール性が低下することがある。
【0029】
そこで、これを防止すべく当該ガスケット11では、第2シールビード16と並んでその外径側に第3シールビード17が併設されており、この第3シールビード17が第2シールビード16と同様、装着溝23の他方の側面23bに密接することにより、第2シールビード16によるシール性の低下分ないし不足分を第3シールビード17が補うように構成されている。
【0030】
第3シールビード17は、全体としてガスケット本体12から径方向斜め外方へ向けて突出するように形成され、これによりガスケット本体12の外径面12dよりも径方向外方へ所定幅突出する外径突出部17aと、ガスケット本体12の他方の端面12cよりも軸方向他方へ所定幅突出する端面突出部17bとを備えている。前者の外径突出部17aは、その外径面におけるビード基端側(軸方向一方側)にテーパー面17cを備え、ビード先端側(軸方向他方側)に円筒面17dを備えている。テーパー面17cの傾斜は軸方向一方から軸方向他方へかけてビード外径寸法が徐々に拡大する向きとされている。また後者の端面突出部17bは、その端面におけるビード基端側(径方向内方側)にテーパー面17eを備え、ビード先端側(径方向外方側)に軸直角平面17fを備えている。テーパー面17eの傾斜は軸方向一方から軸方向他方へかけてビード内径寸法が徐々に拡大する向きとされている。
【0031】
この第3シールビード17は、装着時、装着溝23の他方の側面23bに密接し、このとき締め代によって径方向外方へ倒れるように構成されており、このように径方向外方へ倒れたときに、装着溝23の底面23cに対しても同時に密接する。したがって、優れたシール性を発揮することが可能とされている。
【0032】
以上説明したように当該実施例に係るガスケット11は、補強環14を埋設したガスケット本体12の軸方向両端にそれぞれシールビード15,16を設けてなるガスケット11において、油圧が当該ガスケット11に作用したときにガスケット本体12が装着溝23内で軸方向一方へ変位する構造であっても、締め代が低下する側のシール性を第3シールビード17によって補うようにしたために、ガスケット11全体としてのシール性を維持向上させることが可能とされている。また、第3シールビード17として装着溝23の側面23bおよび底面23cの双方に対し密接させる構造としたため、更なるシール性の向上を期待することができる。
【0033】
尚、上記実施例では、第2シールビード16における内径テーパー面16cの傾斜角度βが第1シールビード15における内径テーパー面15cの傾斜角度αよりも大きく設定(0°<α<β<90°)されるとともに第2シールビード16における径方向突出幅w2が第1シールビード15における径方向突出幅w1よりも大きく設定(w1<w2)されることにより、第2シールビード16が第1シールビード15よりも剛性が高く潰れにくい形状とされているが、これに代えて、第2シールビード16の肉厚が第1シールビード15の肉厚よりも大きく設定されることにより、第2シールビード16が第1シールビード15よりも剛性が高く潰れにくい形状とされるものであっても良い。
【0034】
また、上記実施例では、ハウジング21が装着溝23の底面23cにおける軸方向一方の端部で軸方向2つ割りとされる構造であるため、ガスケット11の装着の向きに関して制約を受ける可能性がある。すなわち上記実施例では、図示するようにハウジング21が半体21a,21b同士の組み合わせで装着溝23の底面23cにおける軸方向一方の端部で軸方向2つ割りとされる一方、ガスケット11の第3シールビード17は装着溝23の底面23cにおける軸方向他方の端部に配置されているため、ハウジング2つ割りによる隙間部21cに第3シールビード17がはみ出すことはない。しかしながら仮にガスケット11を軸方向反対向きに装着しようとするとハウジング2つ割りによる隙間部21cに第3シールビード17がはみ出し、これにより破損する虞があるので、このようにガスケット11を軸方向反対向きに装着することができない。したがってこれに対処するには、図2に示すようにハウジング21を装着溝23の底面23cにおける軸方向中央部で軸方向2つ割りする構造とすれば良く、このような2つ割り構造であればガスケット11を何れの向きに装着することにしても上記はみ出しの問題を未然に解消することができる。尚、図2におけるガスケット11の構成は図1のガスケット11の構成とまったく同じとなっている。
【0035】
更にまた、上記実施例では、補強環14の形状が最も単純な円筒形とされているが、補強環14の形状はとくに限定されず、例えば円筒の端部に径方向フランジを一体に設けたものなどであっても良い。
【符号の説明】
【0036】
11 ガスケット
12 ガスケット本体
12a 内径面
12b,12c 端面
12d 外径面
13 ゴム環状体
14 補強環
15 第1シールビード
15a,16a 内径突出部
15b,16b,17b 端面突出部
15c,15e,16c,16e,17c,17e テーパー面
15d,16d,17d 円筒面
15f,16f,17f 軸直角平面
16 第2シールビード
17 第3シールビード
17a 外径突出部
21 ハウジング
21c 隙間部
22 油圧経路
23 装着溝
23a,23b 側面
23c 底面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧の経路を備えるハウジングの内部に設けたガスケット装着溝に装着されて前記油圧をシールするガスケットであって、
補強環を埋設したガスケット本体と、前記ガスケット本体の軸方向一方の端部に設けられるとともに装着時に前記装着溝の一方の側面に密接する第1シールビードと、前記ガスケット本体の軸方向他方の端部に設けられるとともに装着時に前記装着溝の他方の側面に密接する第2シールビードとを有し、
前記第2シールビードの剛性が前記第1シールビードよりも高く設定されていることまたは前記補強環が前記ガスケット本体内で軸方向一方へ片寄って配置されていることにより前記油圧が当該ガスケットに作用したときに前記ガスケット本体が前記装着溝内で軸方向一方へ変位する構造を有し、
前記ガスケット本体の軸方向一方への変位に伴う前記第2シールビードの締め代低下によるシール性低下を補うべく前記第2シールビードと並んで第3シールビードが設けられていることを特徴とするガスケット。
【請求項2】
請求項1記載のガスケットにおいて、
前記第1および第2シールビードはそれぞれ前記装着溝に装着されたときに前記油圧が存する径方向内方へ倒れ込む構造とされ、これに対し前記第3シールビードは径方向外方へ倒れ込んで前記装着溝の他方の側面および底面の双方に対し密接する構造とされていることを特徴とするガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−67790(P2012−67790A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−210736(P2010−210736)
【出願日】平成22年9月21日(2010.9.21)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】