説明

ガスストーブ用プレート式バーナ

【課題】多数の炎孔51を有する燃焼プレート5を備え、ガスストーブに燃焼プレートが前方を向くように起立した姿勢で設置されるガスストーブ用のプレート式バーナであって、燃焼プレートの前面に菱形形状の凸部52と凸部を囲う凹部53とが多数形成され、各凸部と各凹部とに複数の炎孔が開設されているものにおいて、燃焼プレートの左右各側の側部でのCOの発生を抑制できるようにする。
【解決手段】燃焼プレート5の前面の炎孔形成領域の左右各側の側部に、上下方向に真直にのびる、凹部53より深さが浅い凹溝54を形成する。凹溝54に隣接する各凸部52は、凹溝54により菱形の一部が削り取られた形状に形成される。そして、凹溝54に、凹溝54により削り取られた各凸部52の部分の上下方向中間とその上下とに位置するように複数の炎孔51を開設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の炎孔を有する燃焼プレートを備え、ガスストーブに燃焼プレートが前方を向くように起立した姿勢で設置されるガスストーブ用のプレート式バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のプレート式バーナでは、燃焼プレートの前面に菱形形状の凸部と凸部を囲う凹部とを多数形成し、各凸部と各凹部とに複数の炎孔を開設している。これによれば、各凸部がこれに開設する炎孔の火炎により加熱されるだけでなく、その周囲の凹部に開設する炎孔の火炎によっても加熱されて、効率良く赤熱し、燃焼プレートからの赤外線の輻射効率が向上する。
【0003】
ところで、起立姿勢で設置するガスストーブ用のプレート式バーナにおいては、燃焼プレートの前面の下側部や左右各側の側部の炎孔での燃焼状態が、周囲への放熱や周りの空気で冷却される等して、不安定になり、COが発生し易くなる。尚、燃焼プレートの前面下側部でCOが発生しても、このCOは燃焼プレートの前面に沿って上昇する過程で加熱酸化されてCOに変換されるが、燃焼プレートの前面の左右各側の側部で発生したCOはそのまま室内に排出されてしまい、問題になる。
【0004】
ここで、グリルの天井部に燃焼プレートが下方を向くように設置するグリル用のプレート式バーナにおいて、特許文献1により、燃焼プレートの下面の炎孔形成領域のグリル幅方向両側の側部に、燃焼プレートの下面に形成する菱形形状の凸部を囲う凹部より深い第2の凹部を形成し、この凹部に炎孔を開設したものが知られている。このものでは、第2の凹部に隣接する凸部が第2の凹部の炎孔の火炎により深部から加熱保温され、側部近傍からのCOの発生が防止されるとしている。尚、特許文献1に記載のものでは、第2の凹部の横方向内側の辺を隣接する凸部の菱形の輪郭に沿うジグザグ形状に形成している。
【0005】
上記ガスストーブ用プレート式バーナにおける燃焼プレートの前面の左右各側の側部近傍からのCOの発生を防止するため、特許文献1記載の技術を適用し、燃焼プレートの前面の左右各側の側部に、菱形形状の凸部を囲う凹部より深い第2の凹部を隣接する凸部の輪郭に沿うようにジグザグ形状に形成し、第2の凹部に炎孔を開設することが考えられる。
【0006】
然し、燃焼プレートの前面の左右各側の側部に、このような深い第2の凹部を形成すると、燃焼プレートの強度が低下してしまう。
【特許文献1】特開平8−135930号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、燃焼プレートの強度をできるだけ低下させずに、燃焼プレートの前面の左右各側の側部近傍からのCOの発生を抑制できるようにしたガスストーブ用プレート式バーナを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、多数の炎孔を有する燃焼プレートを備え、ガスストーブに燃焼プレートが前方を向くように起立した姿勢で設置されるガスストーブ用のプレート式バーナであって、燃焼プレートの前面に菱形形状の凸部と凸部を囲う凹部とが多数形成され、各凸部と各凹部とに複数の炎孔が開設されているものにおいて、燃焼プレートの前面の炎孔形成領域の左右各側の側部に上下方向に真直にのびる凹溝が形成され、凹溝に隣接する各凸部は、凹溝により菱形の一部が削り取られた形状に形成され、凹溝に、凹溝により削り取られた各凸部の部分の上下方向中間とその上下とに位置するように複数の炎孔が開設されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、凹溝に隣接する各凸部の凹溝に合致する部分が削り取られるため、これら凸部の熱容量が減少する。更に、凹溝に開設する炎孔は、凹溝により削り取られた各凸部の部分の上下方向中間とその上下とに位置するため、凹溝に隣接する各凸部は、その熱容量の減少と相俟って、これら炎孔の火炎により効率良く加熱される。従って、燃焼プレートの強度ができるだけ低下しないように、凹溝の深さを凹部の深さより浅くしても、凹溝に隣接する各凸部を高温に加熱して、燃焼プレートの前面の左右各側の側部近傍からのCOの発生を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1を参照して、1はガスストーブを示している。ガスストーブ1は、前方及び上方に開口する反射ケース2を備えており、反射ケース2の後側に、反射ケース2の後板部に開設した窓部2aに臨ませて、プレート式バーナ3が設置されている。尚、反射ケース2はガード網2bにより上方から前方に亘って覆われている。
【0011】
プレート式バーナ3は、箱形のバーナ本体4の開口面に装着したセラミック製の燃焼プレート5を備えている。そして、該バーナ3を燃焼プレート5が前方を向くように起立した姿勢で設置している。尚、本実施形態では、プレート式バーナ3を上下一対に配置している。
【0012】
図2、図3を参照して、燃焼プレート5には、バーナ本体4内に供給される燃料ガスと一次空気との混合気を噴出する多数の炎孔51が形成されている。また、燃焼プレート5の前面には、横長の菱形形状の凸部52と凸部52を囲う凹部53とが多数形成され、各凸部52に4個の炎孔51が開設される共に、各凹部に等ピッチで複数の炎孔51が開設されている。そのため、各凸部52がこれに開設する炎孔51の火炎により加熱されるだけでなく、その周囲の凹部53に開設する炎孔51の火炎によっても加熱されて、効率良く赤熱し、燃焼プレート5からの赤外線の輻射効率が向上する。
【0013】
ところで、燃焼プレート5の前面の下側部や左右各側の側部の炎孔51での燃焼状態は、周囲への放熱や周りの空気で冷却される等して、不安定になり勝ちであり、燃焼プレート5の前面の下側部や左右各側の側部でCOが発生し易くなる。ここで、燃焼プレート5の前面下側部でCOが発生しても、このCOは燃焼プレート5の前面に沿って上昇する過程で加熱酸化されてCOに変換されるが、燃焼プレート5の前面の左右各側の側部で発生したCOはそのまま室内に排出されてしまう。
【0014】
そこで、本実施形態では、図3(a)(b)に明示する如く、燃焼プレート5の前面の炎孔形成領域の左右各側の側部に、上下方向に真直にのびる凹溝54を形成している。凹溝54は、その深さD2が凹部53の深さD1より浅くなるように形成されている。また、凹溝54に隣接する各凸部52は、凹溝54により菱形の一部が削り取られた形状に形成されている。そして、凹溝54に、凹溝54により削り取られた各凸部52の部分の上下方向中間とその上下とに位置するように、炎孔51が上下方向に等ピッチで複数開設されている。
【0015】
尚、本実施形態では、図2に示す如く、燃焼プレート5の前面の炎孔形成領域の下側部と上側部にも凹溝54a,54bを形成しているが、これら凹溝54a,54bは省略しても良い。
【0016】
上記の構成によれば、凹溝54に隣接する各凸部52の凹溝54に合致する部分が削り取られるため、これら凸部54の熱容量が減少する。更に、凹溝54に開設する炎孔51は、凹溝54により削り取られた各凸部51の部分の上下方向中間とその上下とに位置するため、凹溝54に隣接する各凸部51は、その熱容量の減少と相俟って、これら炎孔51の火炎により効率良く加熱される。従って、凹溝54の深さD2を凹部53の深さD1より浅くしても、凹溝54に隣接する各凸部52を高温に加熱して、燃焼プレート5の前面の左右各側の側部近傍からのCOの発生を抑制できる。
【0017】
以上の効果を確かめるため、凹部53の深さD1が1.9mm、凹溝54の深さD2が1.2mmの上記実施形態の燃焼プレート5と、凹溝54の無い燃焼プレートとを用い、全燃焼ガス中のCO濃度の理論値を測定する試験を行った。CO濃度の理論値は、凹溝54の無い燃焼プレート5では0.018%であったのに対し、実施形態の燃焼プレート5では0.014%に低下した。尚、理論値は、次式、
CO=COa×Ot÷(Ot−Oa)
により算出される。ここで、COは過剰酸素のない理論燃焼状態における乾燥燃焼ガス中のCO濃度(理論値)、COaは乾燥燃焼ガス中のCO濃度測定値、Otは給気口雰囲気中(乾燥状態)の酸素濃度測定値、Oaは乾燥燃焼ガス中の酸素濃度測定値である。
【0018】
このように、凹溝54の深さD2を凹部53の深さD1より浅くしても、燃焼プレート5の前面の左右各側の側部近傍からのCOの発生を抑制できるため、燃焼プレート5の強度低下を可及的に回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態のプレート式バーナを具備するガスストーブの断面図。
【図2】実施形態のプレート式バーナの燃焼プレートを示す正面図。
【図3】(a)図2の丸Xの部分の拡大図、(b)図3(a)のY−Y線で切断した断面図。
【符号の説明】
【0020】
1…ガスストーブ、3…プレート式バーナ、5…燃焼プレート、51…炎孔、52…凸部、53…凹部、54…凹溝。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の炎孔を有する燃焼プレートを備え、ガスストーブに燃焼プレートが前方を向くように起立した姿勢で設置されるガスストーブ用のプレート式バーナであって、燃焼プレートの前面に菱形形状の凸部と凸部を囲う凹部とが多数形成され、各凸部と各凹部とに複数の炎孔が開設されているものにおいて、
燃焼プレートの前面の炎孔形成領域の左右各側の側部に、上下方向に真直にのびる凹溝が形成され、凹溝に隣接する各凸部は、凹溝により菱形の一部が削り取られた形状に形成され、
凹溝に、凹溝により削り取られた各凸部の部分の上下方向中間とその上下とに位置するように複数の炎孔が開設されていることを特徴とするガスストーブ用プレート式バーナ。
【請求項2】
前記凹溝の深さは前記凹部の深さより浅いことを特徴とする請求項1記載のガスストーブ用プレート式バーナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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