説明

ガススプリングを用いたカバー開閉支持機構および自動取引装置

【課題】ガススプリング1のシリンダ部1cとガススプリングストッパ2のストッパ部2aによりガススプリング1を確実にロックできるようにするとともに、ストッパ部2aによりガススプリング1のロッド部1dを傷つけないようにする。
【解決手段】両端部に支点を備え、シリンダ部1cとロッド部を具備したガススプリングと、前記一方端部の支点により回動自在に設け、ガススプリング1が伸びきったときにシリンダ部1cと当接してガススプリング1をロックさせるストッパ部2aと、ストッパ部2aがロッド部1dと当接する前にシリンダ部1cと当接するリミッタ部2bを具備したガススプリングストッパ2と、を備えたカバー開閉支持機構であって、ガススプリングストッパ2のストッパ部2aと略反対側に前記ロックを解除する解除取っ手部2cを設け、解除取っ手部2cの重さによりガススプリングストッパ2がストッパ部2aと略反対側に回動するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金自動預払機等の自動取引装置などにおけるガススプリングを用いたカバー開閉支持機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、現金自動預払機等の自動取引装置では、図5に示したように、後扉102を開錠して開き、後方よりネジ止めを外すことにより操作パネル等が備えられた開閉カバー101を開けて、内部ユニットなどを保守できるようになっている。
【0003】
そして、保守を行う際に、重い開閉カバー101を開きやすいようにカバー開閉支持機構を備え、図5(b)に示したガススプリング91により開閉カバー101の上昇を補助し、後述するガススプリングストッパ92によりガススプリング91をロックし、開閉カバー101が閉まらないようにしている。
【0004】
そして、保守が終了し、開閉カバー101を閉じるときは、ガススプリングストッパ92を押してストッパを外すことによりゆっくり閉じるようになっている。
【0005】
この従来の自動取引装置100のカバー開閉支持機構は、図4に示したように、ガススプリング91と、ガススプリングストッパ92とからなる。
【0006】
そして、ガススプリング91は、シリンダ部91cとロッド部91dとからなり、開閉カバー101側となるシリンダ部91c上端にガススプリング支点91aを備え、自動取引装置100のキャビネット固定側となるロッド部91dの下端にガススプリング支点91bを備えている。
【0007】
一方、ガススプリングストッパ92は、ガススプリング91をロックするストッパ部92aと、ストッパ部92aがガススプリング91のロッド部91dに接してロッド部91dを傷つけないようにするためのリミッタ部92bと、ガススプリングストッパ92を矢印Aのようにガススプリング91へ寄せて破線a部のようにストッパ部92aをガススプリング91に当接させるための付勢部材としてのスプリング93とから構成されている。
【0008】
このように特に重力等に対抗して開閉する開閉カバーに取り付けられるガススプリングでは、ガススプリング91の経年変化のためにガス圧による反力が低下し開閉カバー101が垂れ下がることを防止するためにガススプリングストッパ92を備えており、ガススプリング91のシリンダ部91cとロッド部91dの外形差を利用したストッパ形状を設けている。
【0009】
そして、付勢部材としては、図4のように引張コイルスプリングを用いたものや、圧縮コイルスプリングにてガススプリングストッパ92を同様に矢印A方向に押し付けるものや、トーションスプリングをガススプリング支点91aなどに取付けて矢印A方向に寄せるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−115340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来のカバー開閉支持機構では、ガススプリングが伸びきったときにガススプリングのシリンダ部とガススプリングストッパのストッパ部を確実に当接させるためには、ガススプリングストッパをガススプリングのロッド部側に付勢するスプリングを設ける必要があった。一方、このスプリングが強すぎると、ストッパ部がガススプリングのロッド部に接してロッド部を傷つけてしまう場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前述の課題を解決するため次の構成を採用する。すなわち、両端部に支点を備えシリンダ部とロッド部を具備したガススプリングと、前記一方端部の支点により回動自在に設け、前記ガススプリングが伸びきったときに前記シリンダ部と当接してガススプリングをロックさせるストッパ部と、当該ストッパ部が前記ロッド部と当接する前に前記シリンダ部と当接するリミッタ部を具備したガススプリングストッパと、を備えたカバー開閉支持機構であって、前記ガススプリングストッパのストッパ部と略反対側に前記ロックを解除する解除取っ手部を設け、前記解除取っ手部の重さにより前記ガススプリングストッパが前記ストッパ部と略反対側に回動するようにした。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカバー開閉支持機構によれば、両端部に支点を備えシリンダ部とロッド部を具備したガススプリングと、前記一方端部の支点により回動自在に設け、前記ガススプリングが伸びきったときに前記シリンダ部と当接してガススプリングをロックさせるストッパ部と、当該ストッパ部が前記ロッド部と当接する前に前記シリンダ部と当接するリミッタ部を具備したガススプリングストッパと、を備えたカバー開閉支持機構であって、前記ガススプリングストッパのストッパ部と略反対側に前記ロックを解除する解除取っ手部を設け、前記解除取っ手部の重さにより前記ガススプリングストッパが前記ストッパ部と略反対側に回動するようにしたので、スプリングなどの部材を設けることなく確実にガススプリングをロックさせることができ、ストッパ部がガススプリングのロッド部に接してロッド部を傷つけることもない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施例1のカバー開閉支持機構の構成図である。
【図2】実施例1のカバー開閉支持機構の構成図である。
【図3】実施例2のカバー開閉支持機構の構成図である。
【図4】従来のカバー開閉支持機構の構成図である。
【図5】カバー開閉支持機構を備えた自動取引装置の外観斜視図および動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係わる実施の形態例を、図面を用いて説明する。なお、図面に共通する要素には同一の符号を付す。
【実施例1】
【0016】
(構成)
図1は、実施例1のカバー開閉支持機構の構成を示す側面図あり、図2はその上面図である。同図に示したように、実施例1のカバー開閉支持機構は、ガススプリング1と、ガススプリングストッパ2とからなる。
【0017】
そして、ガススプリング1は、シリンダ部1cとロッド部1dとからなり、開閉カバー101側となるシリンダ部1c上端にガススプリング支点1aを備え、自動取引装置100のキャビネット固定側となるロッド部1dの下端にガススプリング支点1bを備えている。
【0018】
一方、ガススプリングストッパ2は、ガススプリング1をロックするストッパ部2aと、ストッパ部2aがガススプリング1のロッド部1dに接してロッド部1dを傷つけないようにするためのリミッタ部2bと、ストッパ解除のための解除取っ手部2cとからなる。
【0019】
このように実施例1のカバー開閉支持機構では、解除取っ手部2cを設けているので、図1に示したようにガススプリングストッパ2の重心位置が解除取っ手部2c側の2gの位置となり、解除取っ手部2cの自重により矢印A方向のモーメントが発生するようになっている。
【0020】
そして、ストッパ部2aとリミッタ部2bの位置関係は、図2(b)の開閉カバーを開いたときの状態として示したように、ストッパ部2aがロッド部1dに接する前にリミッタ部2bがガススプリング1のシリンダ部1cに当接する位置関係となっている。
【0021】
(動作)
以上の構成により実施例1のカバー開閉支持機構は、以下のように動作する。この動作を前述の図1、図2のカバー開閉支持機構の構成図および図5の自動取引装置の外観斜視図および動作説明図を用いて以下詳細に説明する。
【0022】
自動取引装置100の内部ユニットの点検等を行う場合、後扉102を開錠して開き、後方よりネジ止めを外し操作パネルが備えられた開閉カバー101を図5のように開けると、ガススプリング1が徐々に伸長する。このとき、ガススプリング1の落下を止めるストッパ部2aは図2(a)の上面図のようにガススプリング1と平行の状態となっている。
【0023】
そして、ガススプリング1が伸びきった位置、すなわち、ガススプリング1を止めるストッパ部2aがガススプリング1のシリンダ部1cを抜けた位置で、解除取っ手部2cの重さにより発生する前述の矢印A方向のモーメントにより、図2矢印Cのようにガススプリングストッパ2がガススプリング1のロッド部1dに寄り、その結果、図1の破線a部のようにガススプリング1の収縮をストッパ部2aにより止めるロック状態となる。
【0024】
なお、このとき、従来のように付勢手段により強くガススプリングストッパ2を回動しないので、リミッタ部2bがガススプリング1のシンリダ部1cに当接して、ストッパ部2aがガススプリング1のロッド部1dに接することはなく、図2(b)に示したようになる。
【0025】
このロック状態になることにより、開閉カバー101は自重で開放位置から垂れ下がったり、不用意に閉められたりしなくなる。
【0026】
そして、内部ユニット等の保守を終了し開閉カバー101閉める場合は、矢印A方向とは逆方向に解除取っ手部2cを押してストッパ部2aとガススプリング1のシリンダ部1cの当接を外し、ロック状態を解除することにより開閉カバー101を閉め、後方よりネジ止めし、後扉102の鍵をかけて保守作業を終了する。
【0027】
(実施例1の効果)
以上のように実施例1の自動取引装置のカバー開閉支持機構によれば、ガススプリングストッパのストッパ部と略反対側に解除取っ手部を設け、ガススプリングストッパの重心をガススプリングの中心軸よりずらして自重によりススプリングストッパがストッパ部と略反対側に回動するようにしたので、スプリングなどの付勢部材を設けることなく確実にガススプリングをロックさせることができ、ストッパ部がガススプリングのロッド部に接してロッド部を傷つけることもない。
【実施例2】
【0028】
(構成)
図3は、実施例2のカバー開閉支持機構の上面部を示す。同図に示したように、実施例2のカバー開閉支持機構では、ガススプリング1のロッド部1dが入り込める空間12fを設け、当該空間12fを挟んで対向してストッパ部12aを両側2ヶ所設けるようにしている。その他の構成は実施例1の構成と同様であるので、簡略化のためにその詳細な説明は省略する。なお、実施例2のカバー開閉支持機構の側面図は図1とほぼ同様となっている。
【0029】
(動作)
以上の構成により実施例2のカバー開閉支持機構は、以下のように動作する。この動作を前述の図3のカバー開閉支持機構を用いて詳細に説明する。
【0030】
自動取引装置100の内部ユニットの点検等を行う場合、実施例1と同様、後扉102を開錠して開き、後方よりネジ止めを外し操作パネルが備えられた開閉カバー101を図5のように開けると、ガススプリング1が徐々に伸長する。このとき、ガススプリング1の落下を止めるストッパ部12aは、図3(a)に示したようにガススプリング1と平行の状態となっている。
【0031】
そして、ガススプリング1が伸びきった位置、すなわち、ガススプリング1を止めるストッパ部12aがガススプリング1のシリンダ部1cを抜けた位置で、解除取っ手部2cの重さにより発生する前述図1の矢印A方向のモーメントによりガススプリング1がガススプリング支点1bを支点として回動する。
【0032】
すると、図3矢印Cのようにガススプリングストッパ2がガススプリング1のロッド部1dに寄り、ロッド部1dが空間12fを通過し、図3(b)に示したように、ガススプリング1の収縮をストッパ部12aにより止めるロック状態となる。
【0033】
このとき、従来のように付勢手段により強くガススプリングストッパ2を回動させず、さらに、空間12fを設け、ストッパ部12aを広くしてリミッタ部2bとストッパ部12aとの位置関係の精度を低くしてもよいようにしているので、リミッタ部2bがガススプリング1のシンリダ部1cに必ず先に当接してストッパ部12aがガススプリング1のロッド部1dに接することをなくすことができる。
【0034】
このロック状態になることにより、開閉カバー101は自重で開放位置から垂れ下がったり、不用意に閉められたりしなくなる。
【0035】
そして、内部ユニット等の保守を終了し開閉カバー101閉める場合は、矢印C方向とは逆方向に解除取っ手部2cを押してストッパ部12aとガススプリング1のシリンダ部1cの当接を外し、ロック状態を解除することにより開閉カバー101を閉め、後方よりネジ止めし、後扉102の鍵をしめて保守作業を終了する。
【0036】
(実施例2の効果)
以上のように実施例2のカバー開閉支持機構によれば、ガススプリングのロッド部が入り込める空間を設け、当該空間を挟んで対向してストッパ部を設ける構成としシリンダ部と当接するストッパ部の範囲を広くするようにしたので、実施例1の効果に加え、さらに確実にガススプリングをロックさせることができるとともに、ストッパ部とリミッタ部の位置精度にバラツキがあってもストッパ部とロッド部との接触を確実に防止することができる。
【0037】
《その他の変形例》
以上の実施例の説明では、カバー開閉支持機構を上下方向に開閉する開閉カバーに備えた例を説明したが、斜め上下方向や略水平方向に開閉するカバーにカバー開閉支持機構を備えた場合にも本発明を適用することができる。
【0038】
例えば、水平方向に開閉するカバーにカバー開閉支持機構を備えた場合では、図1に示した解除取っ手部2c側を下側にして取り付ければ、カバーを水平方向に開いてシリンダ1が伸びきったときに、ガススプリングストッパ2または12の自重によるガススプリング支点1bを支点としたモーメントにより、ストッパ部2aまたは12aとガススプリング1のシリンダ部1cが当接しロック状態とすることができる。
【0039】
また、以上の説明では、図5のように自動取引装置100の右側のみにカバー開閉支持機構を備えた例を説明したが、左側に設ける場合や左右両方に設ける場合でも、本発明を容易に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上述べたように、本発明は、ガススプリングを用いたカバー開閉支持機構を備える現金自動預払機等の自動取引装置に広く用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1 ガススプリング
1a、1b ガススプリング支点
1c シリンダ部
1d ロッド部
2、12 ガススプリングストッパ
2a、12a ストッパ部
2b リミッタ部
2c 解除取っ手部
2g 重心
12f 空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部に支点を備えシリンダ部とロッド部を具備したガススプリングと、前記一方端部の支点により回動自在に設け、前記ガススプリングが伸びきったときに前記シリンダ部と当接してガススプリングをロックさせるストッパ部と、当該ストッパ部が前記ロッド部と当接する前に前記シリンダ部と当接するリミッタ部を具備したガススプリングストッパと、を備えたカバー開閉支持機構であって、
前記ガススプリングストッパのストッパ部と略反対側に前記ロックを解除する解除取っ手部を設け、前記解除取手部の重さにより前記ガススプリングストッパが前記ストッパ部と略反対側に回動するようにしたことを特徴とするカバー開閉支持機構。
【請求項2】
前記ストッパ部は、前記ガススプリングのロッド部が入り込める空間を備え、当該空間を挟んで対向して設けるようにしたことを特徴とするカバー開閉支持機構。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のカバー開閉支持機構を備えたことを特徴とする自動取引装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−179602(P2011−179602A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44927(P2010−44927)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(591089556)株式会社 沖情報システムズ (276)
【Fターム(参考)】