説明

ガスセンサの制御装置

【課題】ガスセンサの異常判定の精度を向上させることができるガスセンサの制御装置を提供する。
【解決手段】同一構成の常用検知素子回路50Aと基準検知素子回路50Bを有する検出部50と接続され、定期的に基準検知素子回路50Bを起動して常用検知素子回路50Aと基準検知素子回路50Bの双方の出力値を比較して、常用検知素子回路50Aが正常に出力しているかどうかを判定する異常判定部21aを有するガスセンサの制御装置100において、基準検知素子回路50Bの起動時に当該基準検知素子回路50Bに印加される電圧によって基準検知素子52が所定の検知可能温度に到達するまでの温度変化が、常用検知素子回路50Aの起動時に当該常用検知素子回路50Aに印加される電圧によって常用検知素子51が所定の検知可能温度に到達するまでの温度変化よりもゆるやかになるように基準検知素子回路50Bに印加される電圧を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサの異常手法を備えたガスセンサの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスセンサの劣化判定に関して、常用検知素子と基準検知素子とを互いに近傍に配置して、常用検知素子回路からの出力値と基準検知素子回路からの出力値との差異が所定値以内か否かによって劣化判定する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−251862号公報(段落0062,0063、図7)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の劣化判定は、常用検知素子回路と基準検知素子回路の各出力を比較して、その出力差で常用検知素子の劣化を検知するものであるため、基準検知素子と常用検知素子とが同じ推移で劣化すると、劣化判定の精度が落ちるという問題があった。
【0005】
また、ガスセンサには、センサ通電時にセンサ素子に対して通電時の熱による応力が発生する問題がある。さらに、ガスセンサが加湿環境下に設置されると、通電時においてセンサ素子が水蒸気を含んだ状態で通電され、水蒸気応力が発生するという問題もある。
【0006】
本発明は、前記従来の問題を解決するものであり、ガスセンサの異常判定の精度を向上させることができるガスセンサの制御装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、同一構成の常用検知素子回路と基準検知素子回路を有する検出部と接続され、定期的に前記基準検知素子回路を起動して前記常用検知素子回路と前記基準検知素子回路の双方の出力値を比較して、前記常用検知素子回路が正常に出力しているかどうかを判定する判定手段を有するガスセンサの制御装置において、前記基準検知素子回路の起動時に当該基準検知素子回路に印加される電圧によって基準検知素子が所定の検知可能温度に到達するまでの温度変化が、前記常用検知素子回路の起動時に当該常用検知素子回路に印加される電圧によって常用検知素子が前記所定の検知可能温度に到達するまでの温度変化よりもゆるやかになるように前記基準検知素子回路に印加される電圧を制御する電圧制御手段を備えることを特徴とする。
【0008】
これによれば、基準検知素子が所定の検知可能温度に到達するまでの時間を、常用検知素子が前記所定の検知可能温度に到達するまでの時間よりも遅らせることで、基準検知素子回路の起動時における通電熱の応力による劣化を低減して、常用検知素子より基準検知素子の劣化速度を遅らせることができ、常用検知素子が正常に出力しているかどうかを精度よく判定することが可能になる。
【0009】
また、前記ガスセンサは、燃料電池のカソードオフガス流路に設置され、前記電圧制御手段は、前記基準検知素子回路が前記判定手段による判定を行わない待機状態である場合、前記基準検知素子の温度が、前記カソードオフガス流路から排出されるカソードオフガスの温度以上、前記所定の検知可能温度未満となるように前記基準検知素子回路に印加される電圧を制御することを特徴とする。
【0010】
これによれば、基準検知素子回路が判定手段による判定を行わない待機状態である場合、基準検知素子の素子温度をカソードオフガスの温度以上にすることで、結露による劣化や応力(水蒸気応力)による劣化を抑制できる。その結果、基準検知素子の劣化が抑制され、常用検知素子より基準検知素子の劣化速度を遅らせることができ、常用検知素子が正常に出力しているかどうかを高精度に判定することが可能になる。
【0011】
また、前記電圧制御手段は、前記基準検知素子回路の起動時に印加される電圧を、駆動電圧となるまで段階的に上昇させることを特徴とする。なお、段階的とは、所定時間経過毎に所定の電圧値を増加させる状態を意味している。この構成は、後記する実施形態における図5に対応する。
【0012】
これによれば、電圧制御手段は、印加電圧を駆動電圧となるまで段階的に上昇させることで、簡単な回路構成で基準検知素子回路の印加電圧を上昇させることが可能になる。
【0013】
また、前記電圧制御手段は、前記基準検知素子回路の起動時に印加される電圧を、駆動電圧となるまで連続的に上昇させることを特徴とする。なお、連続的とは、同一時間において電圧の急激な変化が生じないような状態を意味している。この構成は、後記する実施形態における図6に対応する。
【0014】
これによれば、電圧制御手段は、印加電圧を駆動電圧となるまで連続的に上昇させることで、印加電圧の急変を極力抑えることができるため、基準検知素子の劣化速度をより遅くすることが可能になる。
【0015】
また、前記電圧制御手段は、前記基準検知素子回路の起動時に印加される電圧を、駆動電圧と、前記基準検知素子回路を待機状態とする待機電圧とが交互に、かつ、前記駆動電圧が印加される時間間隔が所定値となるように制御することを特徴とする。なお、この構成は、後記する実施形態における図7に対応する。
【0016】
これによれば、電圧制御手段は、駆動電圧と待機電圧の2種類の電圧値を出力するだけでよいので、その回路構成を簡素化できる。
【0017】
また、前記電圧制御手段は、前記基準検知素子回路の起動時に印加される電圧を、駆動電圧と、前記基準検知素子回路を待機状態とする待機電圧とが交互に、かつ、前記駆動電圧が印加される時間間隔が徐々に拡大するように制御することを特徴とする。なお、この構成は、後記する実施形態における図8に対応する。
【0018】
これによれば、電圧制御手段は、駆動電圧と待機電圧の2種類の電圧値を出力するだけでよいので、その回路構成を簡素化できる。
【0019】
また、前記ガスセンサは加湿環境下に置かれるシステムに設けられ、前記電圧制御手段は、システム起動時において前記基準検知素子が前記所定の検知可能温度に到達するまでの温度変化が、定常時の前記基準検知素子回路の起動時において前記基準検知素子が前記所定の検知可能温度に到達するまでの温度変化よりもゆるやかになるように前記基準検出素子回路に印加される電圧を制御することを特徴とする。
【0020】
ところで、システム起動時は結露した水分が基準検知素子内に残留していることが多いと考えられる。これによれば、システム起動時において基準検知素子が所定の検知可能温度に到達するまでの温度変化が、定常時において基準検知素子が前記所定の検知可能温度に到達するまでの温度変化よりもゆるやかになるように基準検知素子回路に印加される電圧を制御することで、急激な温度変化によって基準検知素子に発生する熱応力と水応力(水蒸気応力)を低減できる。その結果、定常時の基準検知素子回路を良好に起動でき、常用検知素子の正常性を迅速に判定できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、劣化判定の精度を向上させることができるガスセンサの制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】第1実施形態に係るガスセンサの制御装置を燃料電池システムに適用した構成図である。
【図2】第1実施形態に係る水素センサを示す断面図である。
【図3】第1実施形態に係るガスセンサの制御装置を示す回路構成図である。
【図4】第1実施形態に係るガスセンサの制御装置の劣化判定の処理を示すフローチャートである。
【図5】第1実施形態に係るガスセンサの制御装置の動作を示すタイムチャートである。
【図6】第2実施形態に係るガスセンサの制御装置の動作を示すタイムチャートである。
【図7】第3実施形態に係るガスセンサの制御装置の動作を示すタイムチャートである。
【図8】第4実施形態に係るガスセンサの制御装置の動作を示すタイムチャートである。
【図9】第5実施形態に係るガスセンサの制御装置の動作を示すタイムチャートである。
【図10】本実施形態に係る水素センサの変形例を示す断面図である。
【図11】図10の変形例に係る水素センサをガス取込部側から見たときの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係るガスセンサの制御装置(ガスセンサの劣化判定装置)を燃料電池システムSに適用した場合について図面を参照して説明する。なお、以下では、ガスセンサの制御装置を燃料電池自動車に適用した場合を例に挙げて説明するが、これに限定されず、船舶用や航空機用、または家庭用や業務用の定置式の燃料電池システムなど様々なものに適用することができる。また、水素を直接に燃焼して動力を取り出す内燃機関を備えた自動車などにも適用できる。また、検出対象ガス(被検出ガス)としては、水素に限定されるものではなく、メタン、プロパンなどの他の種類の可燃性ガスに適用できる。
【0024】
(第1実施形態)
図1に示すように、燃料電池システムSは、例えば、燃料電池自動車(車両)に搭載され、燃料電池2と、燃料極(アノード)側の入口側配管3および出口側配管5と、酸素極(カソード)側の入口側配管4および出口側配管(カソードオフガス流路)6と、水素センサ10と、ECU(Electronic Control Unit、電子制御装置)20とを含んで構成されている。
【0025】
燃料電池2は、例えば陽イオン交換膜等からなる固体高分子電解質膜を燃料極と酸素極で挟持した膜電極接合体を、更に一対のセパレータで挟持してなる単セル(図示しない)を多数組積層して構成されたスタックからなる。
【0026】
燃料電池2には、例えば高圧の水素タンク等を備える水素供給装置(図示しない)から燃料極側の入口側配管3を介して燃料として水素が燃料極に供給されるとともに、コンプレッサ11により酸素極側の入口側配管4を介して酸化剤として空気が酸素極に供給される。燃料極の触媒電極上では、触媒反応により水素がイオン化され、生成された水素イオンが適度に加湿された固体高分子電解質膜を拡散・通過して酸素極まで移動する。そして、この水素イオンが移動する間に、電子が走行モータなどを含む外部回路(外部負荷)に取り出され、直流の電気エネルギ(電力)として利用される。また、酸素極には酸素を含む空気が供給されているために、この酸素極において、水素イオン、電子および酸素が、酸素極の触媒の作用により化学反応して水が生成される。
【0027】
なお、コンプレッサ11は、ECU20により発電要求(アクセルの踏込み量など)に対応してモータの回転速度が適宜制御される。そして、燃料極側の出口側配管5および酸素極側の出口側配管6から未反応の反応ガス(例えば、水素や空気等)を含むいわゆるオフガスが排出される。また、出口側配管6からは、反応ガスに同伴して凝縮水が排出され、出口側配管5からも、固体高分子電解質膜を透過した水分(凝縮水、水蒸気)が排出される。
【0028】
ここで、未反応の水素を含む水素オフガス(アノードオフガス)は、燃料電池2の燃料極側の出口側配管5から水素循環配管12に排出され、エゼクタ13を介して燃料極側の入口側配管3に戻され、再び燃料電池2の燃料極に供給されるようになっている。一方、反応済みの空気中に水分を多量に含んだ空気オフガス(カソードオフガス)は、希釈器16および出口側配管6を介して大気中へ排出される。したがって、燃料電池システムSにおいて、燃料電池2の酸素極の出口に接続される出口側配管6は水分を多く含んだ加湿環境下であり、この加湿環境下に水素センサ10が設置されている。
【0029】
さらに、燃料電池2の燃料極側の出口側配管5にはパージ弁14を介して水素排出配管15が接続され、この水素排出配管15には希釈器16が接続されている。そして、水素オフガスは、パージ弁14を介して水素排出配管15に排出可能とされ、さらに、水素排出配管15を通って希釈器16に導入可能とされている。
【0030】
希釈器16は、水素排出配管15から取り込んだ水素オフガスを、酸素極側の出口側配管6から排出された空気オフガスによって規定の水素濃度を超えないように希釈し、希釈ガスとして排出することができるように構成されている。なお、パージ弁14は、ECU20によって開閉制御される。
【0031】
そして、この希釈器16の下流側の出口側配管6には、水素を検出するガス接触燃焼式の水素センサ10が配置されており、これによりオフガス(希釈ガス)中の水素濃度が監視される。水素センサ10は、オフガスの流通方向が水平方向となるように配置された出口側配管6の鉛直方向上部に配置されている。また、水素センサ10は、燃料電池システムSの運転を制御するECU20と電気的に接続されている。
【0032】
なお、図示していないが、入口側配管4には、コンプレッサ11によって導入された乾燥空気(低湿度なガス)を加湿する加湿器が設けられている。この加湿器は、例えば、複数本の水透過性を有する中空糸膜を束ねた中空糸膜束を備えて構成され、燃料電池2の酸素極側の出口から排出される水分を利用して前記乾燥ガスを加湿するように構成されている。
【0033】
ECU20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェイス、電子回路などを含んで構成され、異常判定部21a(図3参照)と、電圧設定部21b(図3参照)とを主に備えている。また、ECU20は、コンプレッサ11およびパージ弁14と電気的に接続され、コンプレッサ11のモータ(不図示)の回転速度、パージ弁14の開閉動作を制御するようになっている。
【0034】
また、ECU20は、車室内に設けられた警報装置22と、イグニッション(IG)23と電気的に接続されている。警報装置22は、水素センサ10の劣化(異常)を運転者に対して警告するものであり、光や音などを発する警告手段を有して構成されている。IG23は、燃料電池自動車(燃料電池システムS)の起動スイッチであり、ECU20がオン信号を取得することにより燃料電池システムSの運転(燃料電池2の発電)が開始され、オフ信号を取得することにより燃料電池システムSの運転(燃料電池2の発電)が停止される。
【0035】
図2に示すように、水素センサ10は、出口側配管6(カソードオフガス流路)内を流れるオフガス(希釈ガス)中の水素を検出し、検出した水素の濃度に対応した出力をECU20に出力する機能を有している。
【0036】
また、水素センサ10は、制御基板41を収容した直方体形状のケース30と、このケース30の下面30aに一対の筒状部34,34とを備え、酸素極側の出口側配管6に図示しないボルト等によって締結されて構成されている。
【0037】
筒状部34の先端(下面)は開口しており、水素を含むオフガスを取り込むガス取込部36となっている。筒状部34の内部は、ガス検出室35として機能しており、一方の筒状部34に常用検知素子51が設けられ、他方の筒状部34に基準検知素子52が設けられている。
【0038】
常用検知素子51は、検知用素子S1と温度補償素子R1とで構成され、それぞれ金属などで形成された導電性のステー(電極ピン)33a,33aを介して、ガス検出室35の天井部を構成するベース37に固定されている。
【0039】
基準検知素子52は、常用検知素子51と同一構成であり、検知用素子S2と温度補償素子R2とで構成され、それぞれ金属などで形成された導電性のステー(電極ピン)33a,33aを介して、ガス検出室35の天井部を構成するベース37に固定されている。
【0040】
また、筒状部34のガス取込部36には、例えば、防爆フィルタ38と撥水フィルタ39とを積層したものが設けられている。防爆フィルタ38は、防爆性を確保するためのフィルタであり、液体状の水を通すことが可能な程度の金属製のメッシュや多孔質体などから構成されている。撥水フィルタ39は、例えばテトラフルオロエチレン膜から構成され、気体状のオフガス(水素、空気、水蒸気)をガス検出室35に取り込みつつ、オフガスに同伴される液体の水分が撥水フィルタ39ではじかれ、ガス検出室35内に侵入しないようになっている。
【0041】
また、水素センサ10にはヒータ40A,40A,40Bが設けられている。ヒータ40Aは、筒状部34の天井部を構成するベース37の上部に設けられている。ヒータ40Aは、常用検知素子51、基準検知素子52、防爆フィルタ38、撥水フィルタ39を加熱する電気ヒータであり、例えば、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ、焼結体ヒータ、薄いステンレス板(SUS板)で構成されたヒータ、ニクロム線によって構成される。なお、ヒータ40Aの位置は、筒状部34の外周面側などに設けられていてもよく、適宜変更できる。一方、ヒータ40Bは、制御基板41に設けられ、該制御基板41が結露するのを防止するようになっている。
【0042】
図3に示すように、常用検知素子回路50Aと基準検知素子回路50Bは、いずれも検知用素子S1(S2)と温度補償素子R1(R2)を備えて、互いに同一の構成からなるブリッジ回路となっている。検知用素子S1(S2)は、電気抵抗に対する温度係数が高い白金等を含む金属線のコイルaが、触媒を坦持したアルミナ等の坦体bで被覆されて形成されている。触媒は、水素などの被検出ガスに対して活性な貴金属などからなる。温度補償素子R1(R2)は、被検出ガスに対して不活性とされ、例えば検知用素子S1(S2)と同等のコイルaの表面が、アルミナ等の坦体cで被覆されて形成されている。
【0043】
そして、水素ガスが担体bの触媒に接触した際に生じる反応熱により検知用素子S1(S2)が高温になると、検知用素子S1(S2)と温度補償素子R1(R2)の抵抗値に差が生じるので、この差から水素濃度を検出することができるようになっている。なお、雰囲気温度による電気抵抗値の変化は、温度補償素子R1(R2)を利用することにより相殺されるようになっている。
【0044】
検知用素子S1(S2)と温度補償素子R1(R2)は、互いに近接して配置され、常用検知素子51と基準検知素子52も互いに近接して配置されている。また、検知用素子S1(S2)および温度補償素子R1(R2)は、ステー33a(図2参照)を介してベース37から所定距離離間して設置され、ベース37(図2参照)に対し同じ高さに位置している。なお、ここでいう近接とは、雰囲気が同じ領域内であることをいい、例えば、被検出ガスである水素の濃度や温度が実質的に同一な領域であることをいう。常用検知素子51と基準検知素子52により検出された水素濃度でいえば、各濃度検出値間の偏差が各濃度検出値に対して所定割合以内、例えば±20%以内とされ、より好ましくは、例えば±10%以内とされ、さらに好ましくは、例えば±5%以内なるようにして各素子が配置されている。
【0045】
水素センサ10は、常用検知素子回路50Aおよび基準検知素子回路50Bを含む検出部50と、検出部50の出力から水素濃度を算出してECU20に出力する回路部(センサECU)60と、を備えている。回路部60は、基準電圧発生回路61、電圧コントローラ62A,62B、常用検出部63A、基準検出部63B、濃度出力部64を含んで構成されている。
【0046】
常用検知素子回路50Aからなるブリッジ回路は、検知用素子S1(抵抗値r4)と温度補償素子R1(抵抗値r3)とが直列接続されてなる第1直列辺の両端と、固定抵抗d(抵抗値r1)と固定抵抗e(抵抗値r2)とが直列接続されてなる第2直列辺の両端とが、それぞれ接続されて、電圧コントローラ62Aを介して基準電圧発生回路61に接続されている。基準電圧発生回路61には、水素センサ10の外部の電源E(12Vバッテリなど)から供給される。
【0047】
基準検知素子回路50Bからなるブリッジ回路は、定期的に起動されるものであり、検知用素子S2(抵抗値r4)と温度補償素子R2(抵抗値r3)とが直列接続されてなる第1直列辺の両端と、固定抵抗d(抵抗値r1)と固定抵抗e(抵抗値r2)とが直列接続されてなる第2直列辺の両端とが、それぞれ接続されて、電圧コントローラ62Bを介して基準電圧発生回路61に接続されている。
【0048】
各ブリッジ回路において、検知用素子S1(S2)と温度補償素子R1(R2)の接続点PSと、固定抵抗dと固定抵抗eの接続点PRとの間に、これらの接続点PS、PR間の電圧を検出する常用検出部63A(基準検出部63B)が接続されている。
【0049】
ここで、ガス検出室35(図2参照)内に導入された検査対象ガス中に水素(被検出ガス)が存在しないときには、前記各ブリッジ回路はバランスしてr1×r4=r2×r3の平衡状態にあり、常用検出部63Aおよび基準検出部63Bの出力がともにゼロとなる。一方、水素が存在すると、検知用素子S1(S2)の担体bの触媒において水素が燃焼することでコイルaの温度が上昇し、抵抗値r4が増大する。これに対して温度補償素子R1(R2)においては水素が燃焼せず、抵抗値r3は変化しない。これにより、ブリッジ回路の平衡が破れ、常用検出部63A(基準検出部63B)に、水素濃度の増大変化に応じた電圧が印加されるようになっている。
【0050】
常用検出部63Aおよび基準検出部63Bは、前記ブリッジ回路に印加されて得られた電圧の検出値(出力値)を、濃度出力部64に出力する。濃度出力部64は、常用検出部63Aと基準検出部63Bから送られる検出値(出力値)に対応した水素濃度を、図示しない記憶部に記憶された水素濃度マップに基づいて算出し、算出した水素濃度をECU20の異常判定部21a(判定手段)に出力するようになっている。なお、水素濃度マップとは、常用検出部63A、基準検出部63Bから送られる出力値と、水素濃度とが関連付けられたデータである。また、水素濃度の算出は、マップに限定されるものではなく、テーブルや関数を用いて算出するようにしてもよい。
【0051】
異常判定部21aは、常用検知素子回路50Aの検出値(出力値)と、基準検知素子回路50Bの検出値(出力値)とを、互いに独立に、その内部に記憶された所定閾値と比較する絶対診断によって(後記する図4のS111参照)、常用検知素子51の異常判定(検知用素子S1の劣化判定、回路の断線等)を行うようになっている。
【0052】
なお、常用検知素子回路50Aが異常状態であるとは、例えば、常用検知素子回路50Aからの検出値と、基準検知素子回路50Bからの検出値との差が所定閾値より大きく、常用検知素子51が劣化していると推定される状態である。一方、常用検知素子回路50Aが異常でない、つまり正常な状態であるとは、常用検知素子回路50Aからの検出値と、基準検知素子回路50Bからの検出値との差が所定閾値以下であり、常用検知素子回路50Aが正常に作動していると推定される状態である。
【0053】
電圧コントローラ62Aは、後記する電圧設定部21bから常用検知素子回路50Aに印加する電圧を制御する制御指令が送られるようになっており、この制御指令に従って、常用検知素子回路50Aの印加電圧を制御する。
【0054】
電圧コントローラ62Bは、電圧設定部21bから基準検知素子回路50Bに印加する電圧を制御する制御指令が送られるようになっており、この制御指令に従って、基準検知素子回路50Bの印加電圧を制御する。
【0055】
電圧設定部21bは、所定のタイミングに基づいて、各電圧コントローラ62A、62Bの動作を指示するようになっている。また、電圧設定部21bは、IG23(図1参照)のオン信号に基づいて、電圧コントローラ62Aを制御して、常用検知素子回路50Aに駆動電圧(V1)を印加する。駆動電圧(V1)とは、水素センサ10による水素濃度の検出に必要な電圧である。これにより、所定時間(後記するT0)経過後に、常用検知素子51(検知用素子S1および温度補償素子R1)が所定の検知可能温度まで上昇する。所定の検知可能温度とは、水素濃度を検出できる状態の温度(素子が活性化される温度)である。
【0056】
また、電圧設定部21bは、IG23(図1参照)のオン信号に基づいて、電圧コントローラ62Bを制御して、基準検知素子回路50Bに対して、例えば待機電圧V2(システム起動時は0V)から段階的に上昇させて最終的に駆動電圧V1とする制御を行う。なお、待機電圧V2とは、基準検知素子52が起動していないときの印加電圧であり、例えば、0(V)以上、かつ、駆動電圧(V1)未満に設定される。また、段階的とは、所定時間経過毎に所定の増加幅(増加量)で印加電圧を増加させることをいう。このように、待機電圧V2を駆動電圧V1未満に設定することにより、基準検知素子52に対して通電熱による熱応力が作用するのを低減することができ、基準検知素子52の劣化を抑制できる。
【0057】
また、基準検知素子52が待機電圧V2から駆動電圧V1となるまでの時間(後記する所定時間T1)は、常用検知素子51がIG−ONから前記所定の検知可能温度となるまでの所定時間(T0)よりも長く設定される。つまり、基準検知素子52が起動したときに該基準検知素子52が検知可能温度に昇温するまでの時間が、常用検知素子51が起動したときに該常用検知素子51が検知可能温度になるまでの時間よりも遅れるように(長くなるように)印加電圧が制御される。
【0058】
警報装置22は、異常判定部21aが異常である(常用検知素子51が劣化した)と判定したときに運転者に対して異常であることを警告する装置である。
【0059】
なお、第1実施形態では、電圧設定部21b、基準電圧発生回路61および電圧コントローラ62A,62Bによって電圧制御手段が構成されている。また、第1実施形態では、ECU20(異常判定部21a、電圧設定部21b)および回路部60によってガスセンサの制御装置(以下、制御装置100と略記する)が構成されている。以下に示す第2実施形態ないし第5実施形態についても同様である。
【0060】
なお、本実施形態では、水素センサ10に搭載された回路部60(センサECU)で水素濃度を算出(出力)する構成としたが、これに限定されるものではなく、ECU20側で水素濃度を算出(出力)、すなわち濃度出力部64が異常判定部21aおよび電圧設定部21bとともにECU20に備えられていてもよい。また逆に、異常判定部21aおよび電圧設定部21bが回路部60に備えられていてもよい。
【0061】
次に、第1実施形態に係る制御装置100の劣化判定の処理について図4および図5を参照(適宜、図1ないし図3を参照)して説明する。図4は第1実施形態に係るガスセンサの制御装置の劣化判定の処理を示すフローチャート、図5は第1実施形態に係るガスセンサの制御装置の動作を示すタイムチャートである。
【0062】
図4に示すように、制御装置100は、ステップS101において、IG23のONによる燃料電池自動車(燃料電池システムS)の起動信号を取得したか否かを判断し、起動信号を取得していないと判断した場合には(No)、リターンし、起動信号を取得した場合には(Yes)、ステップS102に進む。
【0063】
ステップS102において、制御装置100は、電圧制御手段(電圧設定部21b、基準電圧発生回路61および電圧コントローラ62A,62B)を介して、常用検知素子51に対して駆動電圧V1を印加するとともに、基準検知素子52に対して待機電圧V2(初回は、システム起動時なので0V)から駆動電圧V1となるまで段階的に電圧を印加する。これにより、基準検知素子52の温度変化が、常用検知素子51の温度変化よりもゆるやかに上昇する。
【0064】
そして、ステップS103において、制御装置100は、IG−ONしてから所定時間T0が経過したか否かを判断し、所定時間T0が経過していないと判断した場合には(No)、ステップS102に戻り、所定時間T0が経過したと判断した場合には(Yes)、ステップS104に進む。なお、所定時間T0は、常用検知素子51が検知可能温度(所定の検知可能温度)となるまでに必要な時間、換言すると常用検知素子51の検知用素子S1が活性化する温度になるまでに必要な時間である。
【0065】
ステップS104において、制御装置100は、常用検知素子回路50Aを介して水素濃度の検出を開始する。すなわち、制御装置100は、常用検知素子回路50Aの電圧(出力値)を常用検出部63Aによって検出し、前記出力値を濃度出力部64において水素濃度マップに基づいて水素濃度を算出し、ECU20に送る。
【0066】
そして、ステップS105に進み、制御装置100は、IG−ONから所定時間T1が経過したか否かを判断する。なお、所定時間T1は、前記した所定時間T0よりも長い時間に設定され、基準検知素子52の昇温に要する時間(所定の検知可能温度に要する時間、検知用素子S2が活性化する温度)である。制御装置100は、所定時間T1が経過していないと判断した場合には(S105、No)、ステップS102に戻り、所定時間T1が経過したと判断した場合には(S105、Yes)、ステップS106に進む。
【0067】
ステップS106において、制御装置100は、常用検知素子51および基準検知素子52が正常であるか否かを判断する。正常であるか否かの判断は、前記したように、常用検知素子回路50Aと基準検知素子回路50Bから得られる出力値が所定閾値以内か否かによって行う。制御装置100は、所定閾値以内であり、素子が正常であると判断した場合には(正常:S106、No)、ステップS107に進み、所定閾値以内でなく、素子が正常ではないと判断した場合には(異常:S106、Yes)、ステップS112に進む。なお、素子が異常である場合には、制御装置100は、異常信号を出力して、警報装置22を介して運転者に水素センサ10の異常を警告する。
【0068】
ステップS107において、制御装置100は、現在、常用検知素子51によって水素濃度を検出する検出モードであるか否かを判断する。検出モードとは、基準検知素子回路50Bが起動状態ではなく、常用検知素子回路50Aによって水素濃度を検出している状態(通常モード)を意味している。また、検出モードを行う時間は、図示しないタイマにより設定することができ、基準検知素子回路50Bの起動間隔に応じて適宜変更することができる。
【0069】
ステップS107において、制御装置100は、検出モードであると判断した場合には(Yes)、ステップS113に進み、電圧制御手段を介して、基準検知素子52を駆動電圧V1から待機電圧V2に降圧する。なお、常用検知素子51に対しては駆動電圧V1を維持して、常用検知素子回路50Aにて水素濃度の検出を継続する。
【0070】
なお、待機電圧V2は、本実施形態のように、燃料電池2の出口側配管6(カソードオフガス流路)に設置された場合、出口側配管6から排出されるカソードオフガスの温度以上、かつ、検知可能温度未満となるように電圧制御手段によって印加電圧が制御される。例えば、カソードオフガスの温度が50℃、検知可能温度が200℃であれば、待機電圧V2は、50℃以上、かつ200℃未満となるように印加電圧が制御される。
【0071】
そして、ステップS114に進み、制御装置100は、IG23がオフ(IG−OFF)されたか否かを判断し、IG−OFFされていないと判断した場合には(No)、ステップS107に戻り、IG−OFFされたと判断した場合には(Yes)、リターンする。
【0072】
一方、ステップS107において、制御装置100は、検出モードではないと判断した場合には(No)、ステップS108に進み、基準検知素子回路50Bを起動して、ステップS102と同様にして、基準検知素子52が駆動電圧V1となるまで段階的に電圧を印加する。なお、このとき常用検知素子51は駆動電圧V1を維持する。
【0073】
そして、ステップS109に進み、制御装置100は、基準検知素子52の電圧を昇圧し始めてから所定時間T1が経過したか否かを判断する。制御装置100は、所定時間T1が経過していないと判断した場合には(S109、No)、ステップS108に戻り、所定時間T1が経過したと判断した場合には(S109、Yes)、ステップS110に進む。所定時間T1は、ステップS105にて判断される所定時間と同様であり、基準検知素子52を昇温するのに必要な時間(基準検知素子52を活性化させるのに必要な時間)である。
【0074】
ステップS110において、制御装置100は、常用検知素子回路50Aおよび基準検知素子回路50Bを介して水素濃度を検出する。
【0075】
そして、ステップS111に進み、制御装置100は、常用検知素子51が異常であるか否かを判定する。常用検知素子51が異常であるか否かは、前記したステップS106における異常判定と同様に、常用検知素子回路50Aから得られる水素濃度と、基準検知素子回路50Bから得られる水素濃度との差異(差分)が所定値以内であるかどうかによって判定することができる。なお、常用検知素子51が異常であるとは、例えば、常用検知素子51が劣化し過ぎて、これ以上水素濃度を検出することができない状態、または、制御装置100の回路に断線が生じて濃度検出ができなくなった状態である。制御装置100は、差異が所定値以内であると判断した場合には(正常:S111、No)、ステップS114に進み、差異が所定値以内ではないと判断した場合には(異常:S111、Yes)、ステップS112に進む。異常と判断された場合、制御装置100は、異常信号を出力し(S112)、警報装置22を介して運転者に水素センサ10が異常であることを警告する。
【0076】
さらに、図5を参照して説明すると、IG−ONされ(S101、Yes)、常用検知素子51に駆動電圧V1が印加されると(S102)、常用検知素子51の温度が上昇し、所定時間T0経過時に(S103、Yes)、常用検知素子51の温度が検知可能温度Tmpに到達する。また、基準検知素子52に対しては、最終的に駆動電圧V1となるように段階的に昇圧する(S102)。これにより、基準検知素子52の温度が検知可能温度Tmpに到達するまでの時間(所定時間T1)を、常用検知素子51の場合よりも遅らせることができ、基準検知素子52の温度変化を、常用検知素子51の温度変化よりもゆるやかにできる。なお、段階的に昇圧とは、所定時間経過毎に、所定電圧を加算しながら昇圧することを意味している。
【0077】
また、水素センサ10が検出モードである場合には(S107、Yes)、常用検知素子51を駆動電圧V1とし、基準検知素子52を待機電圧V2とする(S113)。なお、前記したように、水素センサ10が出口側配管6に設置された場合には、基準検知素子52における待機電圧V2を、カソードオフガス温度以上、かつ、検知可能温度Tmp未満とすることが好ましい。また、待機電圧V2は、0ボルトよりも大きい電圧に限定されるものではなく、0ボルトに設定するものであってもよい。
【0078】
また、水素センサ10が監視モード(異常判定モード)である場合には(S107、No)、基準検知素子52の電圧を駆動電圧V1となるまで段階的に上昇するように制御する(S108)。これにより、基準検知素子52が検知可能温度Tmpとなるまでの時間を常用検知素子51の場合よりも遅らせることができ、基準検知素子52の温度変化を、常用検知素子51の温度変化よりもゆるやかにできる。
【0079】
そして、所定時間T1が経過して基準検知素子52の昇温が完了した後に(S109、Yes)、回路部60を介して常用検知素子回路50Aと基準検知素子回路50Bからそれぞれ水素濃度を算出し(S110)、異常判定部21aによって、常用検知素子回路50Aが異常であるか否かが判定される(S111)。このように、検出モードと監視モードとを繰り返し、検出モードでは、常用検知素子回路50Aを介して水素濃度を検出し、監視モードでは、常用検知素子51の異常判定(劣化判定など)を行う。
【0080】
以上説明したように、本実施形態に係る制御装置100(ガスセンサの制御装置)では、基準検知素子回路50Bの起動時に当該基準検知素子回路50Bに印加される電圧によって基準検知素子52が検知可能温度Tmpに到達するまでの温度変化が、常用検知素子回路50Aの起動時に当該常用検知素子回路50Aに印加される電圧によって常用検知素子51が検知可能温度Tmpに到達するまでの温度変化よりもゆるやかに上昇するように基準検知素子回路50Bに印加される電圧を、電圧制御手段を介して制御する。これにより、基準検知素子回路50Bの起動時における基準検知素子52の通電熱の応力による劣化(熱応力による劣化)を低減でき、常用検知素子51よりも基準検知素子52の劣化速度を確実に遅らせることができる。基準検知素子52の劣化速度が遅くなることにより、常用検知素子が正常に出力しているかどうかを精度よく判定することが可能になる。
【0081】
また、本実施形態に係る制御装置100によれば、水素センサ10が燃料電池2の出口側配管6(カソードオフガス流路)に設置され、基準検知素子回路50Bが待機状態である場合、基準検知素子52の温度を出口側配管6から排出されるカソードオフガスの温度以上、かつ、検知可能温度未満となるように電圧を制御し、これを待機電圧V2とすることで、結露を抑制できる。その結果、素子に水が付着することによる劣化や水蒸気応力による劣化を抑制することができ、常用検知素子51が正常に出力しているかどうかを高精度に判定することが可能になる。
【0082】
すなわち、基準検知素子52の温度をカソードオフガスの温度以上にすることで、カソードオフガスが結露して基準検知素子52に結露水が付着するのを抑制することができ、結露水によって素子に水が付着することによる劣化や応力(水応力、水蒸気応力)によって素子が劣化することを抑制できる。
【0083】
また、本実施形態の制御装置100によれば、基準検知素子回路50Bの起動時に印加される電圧を駆動電圧V1となるまで段階的に上昇させることで、簡単な回路構成で基準検知素子回路50Bの印加電圧を待機電圧V2から駆動電圧V1まで上昇させることができる。
【0084】
(第2実施形態)
図6は第2実施形態に係るガスセンサの制御装置の動作を示すタイムチャートである。この第2実施形態に係る制御装置100は、基準検知素子52に印加する電圧を段階的に制御する構成に替えて、印加電圧を連続的に制御する構成としたものであり(符号E参照)、その他の構成は図1ないし図4に示す第1実施形態と同様である。なお、図4に示すフローチャートのステップS102およびステップS108においては、括弧書きで記載したように、基準検知素子52に対して連続的に電圧を印加する処理が行われる。
【0085】
図6に示すように、制御装置100は、電圧制御手段を介して、基準検知素子回路50Bの起動時に、基準検知素子52を待機電圧V2から駆動電圧V1に昇圧する際に、電圧が連続的に変化するように制御する。なお、連続的とは、同一時間において電圧の急激な変化が生じないような状態をいう。この場合にも、基準検知素子52が検知可能温度Tmpに到達するまでの時間(所定時間T1)を、常用検知素子51が検知可能温度Tmpに到達するまでの時間(所定時間T0)よりも遅らせることができる。
【0086】
第2実施形態に係る制御装置100によれば、印加電圧を連続的に上昇させることで、印加電圧の急変を極力抑えることができ、基準検知素子52に対する急激な熱による応力を低減でき、基準検知素子52の劣化速度をより遅くすることが可能になる。
【0087】
(第3実施形態)
図7は第3実施形態に係るガスセンサの制御装置の動作を示すタイムチャートである。この第3実施形態に係る制御装置100は、基準検知素子52に印加する電圧を間欠的に制御する構成としたものであり(符号F参照)、その他の構成は図1ないし図4に示す第1実施形態と同様である。なお、図4に示すフローのステップS102およびステップS108においては、括弧書きで記載したように、間欠的に電圧を印加する処理が行われる。
【0088】
図7に示すように、制御装置100は、電圧制御手段を介して、基準検知素子回路50Bの起動時に、基準検知素子52を待機電圧V2から駆動電圧V1に昇圧する際、駆動電圧V1と待機電圧V2とが交互に繰り返され、かつ、駆動電圧V1の印加時間が等しくなるように制御する。この場合にも、基準検知素子52が検知可能温度Tmpに到達するまでの時間(所定時間T1)を、常用検知素子51が検知可能温度Tmpに到達するまでの時間(所定時間T0)よりも遅らせることができる。
【0089】
第3実施形態に係る制御装置100によれば、印加電圧を、駆動電圧V1と待機電圧V2とが交互に、かつ、駆動電圧V1の印加時間が等しくなるように間欠的に制御することで、駆動電圧V1と待機電圧V2の2種類の電圧値を出力するだけでよいので、電圧制御手段の回路構成を簡素化することが可能になる。
【0090】
なお、駆動電圧V1と駆動電圧V1との間の待機電圧V2の時間Rは、駆動電圧V1の印加時間と等しくなるように設定してもよく、駆動電圧V1の印加時間よりも短くてもよく、長くてもよい。
【0091】
(第4実施形態)
図8は第4実施形態に係るガスセンサの制御装置の動作を示すタイムチャートである。この第4実施形態に係る制御装置100は、基準検知素子52に印加する電圧を間欠的に制御する別の構成としたものであり(符号G参照)、その他の構成は図1ないし図4に示す第1実施形態と同様である。
【0092】
図8に示すように、制御装置100は、電圧制御手段を介して、基準検知素子回路50Bの起動時に、基準検知素子52を待機電圧V2から駆動電圧V1に昇圧する際、駆動電圧V1が印加される時間が、時間経過とともに長くなるように制御する。この場合にも、基準検知素子52が検知可能温度Tmpに到達するまでの時間(所定時間T1)を、常用検知素子51が検知可能温度Tmpに到達するまでの時間(所定時間T0)よりも遅らせることができる。
【0093】
第4実施形態に係る制御装置100によれば、第3実施形態と同様に、駆動電圧V1と待機電圧V2の2種類の電圧値を出力するだけでよいので、電圧制御手段の回路構成を簡素化することが可能になる。
【0094】
(第5実施形態)
図9は第5実施形態に係るガスセンサの制御装置の動作を示すタイムチャートである。この第5実施形態に係る制御装置100は、水素センサ10が加湿環境下に設けられた燃料電池システムS(図1参照)において、システム起動時(IG−ON時)に基準検知素子52が検知可能温度Tmpに到達するまでの時間(所定時間T10)を、定常時(システム起動時以外)に基準検知素子52が検知可能温度Tmpに到達するまでの時間(所定時間T1)よりも長くなるように制御する。
【0095】
ところで、システム起動時は結露した水分が基準検知素子52内に残留していることが多い。そこで、第5実施形態では、システム起動時(IG−ON時)に基準検知素子52が検知可能温度Tmpに到達するまでの温度変化が、定常時に基準検知素子が検知可能温度Tmpに到達するまでの温度変化よりもゆるやかになるように基準検知素子回路50Bに印加される電圧が制御される。これにより、システム起動時における基準検知素子52の急激な温度変化が抑制され、基準検知素子52に発生する水応力(水蒸気応力)を低減できる。その結果、定常時には基準検知素子回路50Bを良好に起動することができ、常用検知素子51の正常性を迅速に判定できる。
【0096】
なお、図9では、基準検知素子52に印加する電圧を段階的に昇圧して基準検知素子52を昇温する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、第2実施形態に示したように連続的に昇圧して基準検知素子52を昇温する構成にしてもよく、あるいは第3実施形態および第4実施形態に示したように間欠的に昇圧して基準検知素子52を昇温する構成にしてもよい。また、段階的な昇圧、連続的な昇圧、間欠的に昇圧を適宜組み合わせて、基準検知素子52を昇温するようにしてもよい。
【0097】
なお、本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、図2に示す水素センサ10に替えて図10および図11に示す水素センサ10Aとしてもよい。図10および図11に示す水素センサ10Aは、検知用素子S1および温度補償素子R1を備えた常用検知素子51と、検知用素子S2および温度補償素子R2を備えた基準検知素子52とがひとつの筒状部34に収容された構成である。この水素センサ10Aの他の構成については、図2と同様であるので同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0098】
また、本実施形態に係るガスセンサは、接触燃焼式に限定されるものではなく、半導体式、熱伝導式、プロトン導電体式、FET式など、素子を大気温度よりも高温に熱する方式であれば、本発明を適用可能である。
【符号の説明】
【0099】
2 燃料電池
6 出口側配管(カソードオフガス流路)
10,10A 水素センサ(ガスセンサ)
20 ECU
21a 異常判定部(判定手段)
21b 電圧設定部(電圧制御手段)
50 検出部
50A 常用検知素子回路
50B 基準検知素子回路
51 常用検知素子
52 基準検知素子
60 回路部
61 基準電圧発生回路(電圧制御手段)
62A,62B 電圧コントローラ(電圧制御手段)
63A 常用検出部
63B 基準検出部
64 濃度出力部
100 ガスセンサの制御装置
S 燃料電池システム(システム)
S1,S2 検知用素子
R1,R2 温度補償素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一構成の常用検知素子回路と基準検知素子回路を有する検出部と接続され、定期的に前記基準検知素子回路を起動して前記常用検知素子回路と前記基準検知素子回路の双方の出力値を比較して、前記常用検知素子回路が正常に出力しているかどうかを判定する判定手段を有するガスセンサの制御装置において、
前記基準検知素子回路の起動時に当該基準検知素子回路に印加される電圧によって基準検知素子が所定の検知可能温度に到達するまでの温度変化が、前記常用検知素子回路の起動時に当該常用検知素子回路に印加される電圧によって常用検知素子が前記所定の検知可能温度に到達するまでの温度変化よりもゆるやかになるように前記基準検知素子回路に印加される電圧を制御する電圧制御手段を備えることを特徴とするガスセンサの制御装置。
【請求項2】
前記ガスセンサは、燃料電池のカソードオフガス流路に設置され、
前記電圧制御手段は、前記基準検知素子回路が前記判定手段による判定を行わない待機状態である場合、前記基準検知素子の温度が、前記カソードオフガス流路から排出されるカソードオフガスの温度以上、前記所定の検知可能温度未満となるように前記基準検知素子回路に印加される電圧を制御することを特徴とする請求項1に記載のガスセンサの制御装置。
【請求項3】
前記電圧制御手段は、前記基準検知素子回路の起動時に印加される電圧を、駆動電圧となるまで段階的に上昇させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサの制御装置。
【請求項4】
前記電圧制御手段は、前記基準検知素子回路の起動時に印加される電圧を、駆動電圧となるまで連続的に上昇させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサの制御装置。
【請求項5】
前記電圧制御手段は、前記基準検知素子回路の起動時に印加される電圧を、駆動電圧と、前記基準検知素子回路を待機状態とする待機電圧とが交互に、かつ、前記駆動電圧の印加時間が等しくなるように制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサの制御装置。
【請求項6】
前記電圧制御手段は、前記基準検知素子回路の起動時に印加される電圧を、駆動電圧と、前記基準検知素子回路を待機状態とする待機電圧とが交互に、かつ、前記駆動電圧の印加時間が徐々に長くなるように制御することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスセンサの制御装置。
【請求項7】
前記ガスセンサは加湿環境下に置かれるシステムに設けられ、
前記電圧制御手段は、システム起動時において前記基準検知素子が前記所定の検知可能温度に到達するまでの温度変化が、定常時の前記基準検知素子回路の起動時において前記基準検知素子が前記所定の検知可能温度に到達するまでの温度変化よりもゆるやかになるように前記基準検出素子回路に印加される電圧を制御することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のガスセンサの制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−149894(P2012−149894A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6633(P2011−6633)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】