説明

ガスセンサユニット

【課題】通気量を確保することができるガスセンサユニットを提供する。
【解決手段】フィルタ配置孔231の繋ぎ面233に第1突起部239を設けた。フィルタ配置孔231に配置されるフィルタ部材250の内側面252は、突起部239の先端部とのみ接触する。内側面252と繋ぎ面233との間には、間隙257が形成されて、両者の密着が防止される。このとき、内側面252においては、第1突起部239との接触部分を除く部分が、全て間隙257に面することになる。よって、従来のように、内側面252と繋ぎ面233とが密着してしまう場合に比べて、内側面252における通気面積を向上させることができる。よって、フィルタ部材250における通気量を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気ガス中の酸素の濃度を検出する検出素子を備えたガスセンサユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車の排気ガスに含まれる酸素の濃度を検出する検出素子を内蔵し、内燃機関の排気経路等に取り付けられる酸素センサが知られている。酸素センサの検出素子には、排気ガスに晒される検知電極と、大気に晒される基準電極とが設けられている。そして、この酸素センサには、基準電極に接続し、検出素子の出力を取り出すキャップ端子を備えたセンサキャップが着脱可能に取り付けられる。酸素センサとセンサキャップとにより、ガスセンサユニットが形成される。
【0003】
センサキャップは、さらに、キャップ端子を保持し、且つ酸素センサに装着される包囲部材を備えている。そして、センサキャップを酸素センサに取り付けた状態において、基準電極に大気を晒すために、包囲部材と酸素センサとの間には内部空間が形成されると共に、包囲部材には、内部空間と自身の外部とを連通させる連通孔が形成されている。なお、この連通孔には、通気性及び撥水性を有するフィルタ部材が配置されており、内部空間への異物の混入が防止できる。
【0004】
ところで、連通孔に対してフィルタ部材が位置決めできるように、連通孔は、外部と連通するとともに上記のフィルタ部材が配置されるフィルタ配置面と、フィルタ配置面の開口面積よりも小さく形成された通気面と、フィルタ配置面と通気面とを繋ぐ繋ぎ面とを備えている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−162597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のガスセンサユニットでは、フィルタ部材をフィルタ配置面に配置する際に、包囲部材の外側からフィルタ部材を押し込むため、フィルタ部材の内側面が、フィルタ配置面と通気面とを繋ぐ繋ぎ面に接触してしまう場合があった。フィルタ部材の内側面が繋ぎ面に接触すると、フィルタ部材の通気面積が、内側面の面積分(つまり、フィルタ配置面の開口面積)を確保できず、実質的に通気面の開口面積と同等になってしまう。すると、フィルタ部材における通気量が減少してしまい、内部空間と外部との間での通気がスムーズに行われなくなってしまう虞があった。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、内部空間と外部との間での通気をスムーズに行うことができるガスセンサユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施の態様によれば、被測定ガスに晒されるガス検出素子、および前記ガス検出素子に形成した電極と接続して前記ガス検出素子からの出力信号を伝えるセンサ端子を有するガスセンサと、前記ガスセンサに装着されて前記出力信号を外部装置に伝送するセンサキャップであって、前記センサ端子と電気的に接続するキャップ端子と、前記センサキャップの前記ガスセンサへの装着時に自身と前記ガスセンサとの間で内部空間を形成すると共に、該内部空間と外部とを気体が流通可能に連通する連通孔が形成された包囲部材と、前記連通孔内に配置され、通気性および撥水性を有するフィルタ部材と、を有するセンサキャップとを備えたガスセンサユニットにおいて、前記連通孔は、前記フィルタ部材が配置されるフィルタ配置面と、前記フィルタ配置面よりも開口面積が小さい通気面と、該フィルタ配置面と該通気面とを繋ぐ繋ぎ面と、を含み、前記フィルタ配置面内にフィルタ部材が配置され、前記繋ぎ面と前記フィルタ部材の前記繋ぎ面側に対向する内側面とによって形成される気体流路であって、前記フィルタ部材を通過した気体を前記通気面に対応する部位まで流通させる気体流路を確保するスペーサが、前記連通孔自身、前記フィルタ自身、又は前記繋ぎ面と前記フィルタ部材の前記内側面との間に設けられていることを特徴とするガスセンサユニットが提供される。
【0009】
本実施の態様のガスセンサユニットでは、スペーサが、繋ぎ面とフィルタ部材の内側面との間に設けられるため、フィルタ部材の内側面と繋ぎ面とが直接接触することなく、繋ぎ面とフィルタ部材の内側面との間に気体流路を確保できる。よって、フィルタ部材の通気面積を、通気面の開口面積よりも大きくすることができる。フィルタ部材における気体の移動速度は、フィルタ部材の内側面における通気面積に依存するため、フィルタ部材における通気量を維持でき、内部空間と外部との間での通気をスムーズに行うことができる。
【0010】
なお、スペーサは、繋ぎ面とフィルタ部材の内側面との間に設けられ、フィルタ部材の内側面と繋ぎ面とが直接接触させない構造であればよく、連通孔自身、フィルタ自身に形成されていても良いし、繋ぎ面とフィルタ部材の内側面との間に設けられていてもよい。
【0011】
さらに、本実施形態において、前記スペーサは、前記連通孔自身に設けられており、前記フィルタ部材の前記内側面へ向けて前記繋ぎ面から突出する第1突起部であってもよい。第1突起部を繋ぎ面に形成することにより、スペーサと包囲部材とを一体成型することができる。この場合には、スペーサを別に準備する必要がなく、また、スペーサを成型するための製造工程をわざわざ設けることなく、スペーサを成型できるため、簡単かつ安価にガスセンサユニットを製造できる。また、この場合、第1突起部が繋ぎ面に固定されているため、第1突起部とフィルタ部材との接触位置がずれにくい。よって、第1突起部によって確保される気体流路はばらつかない。よって、内部空間と外部との間での通気をスムーズに行うことができるとともに、通気量の製品ごとのばらつきを抑えることができる。
【0012】
また、前記第1突起部の突出方向と直交する前記第1突起部の断面の面積は、前記フィルタ部材側の面積が、前記繋ぎ面側の面積よりも小さくてもよい。この場合には、フィルタ部材の一面と第1突起部との接触面積を小さくすることができる。これにより、第1突起部によりフィルタ部材の通気面積を減らすことを抑制でき、フィルタ部材の内側面の通気面積を確実に確保できる。よって、内部空間と外部との間での通気をいっそうスムーズに行うことができる。なお、第1突起部の突出方向と直交する方向の断面の面積は、繋ぎ面からフィルタ部材の内側面に向かって段階的に小さくなっても良いし、漸近的に小さくなっても良い。
【0013】
また、前記繋ぎ面を周方向に120度ずつ区画分けしたときに、前記第1突起部は、各区画それぞれに少なくとも1つ以上形成されていてもよい。第1突起部が各区画それぞれに少なくとも1つ以上配置されていることにより、繋ぎ面に対してフィルタ部材の内側面が傾いて配置されることを抑制できる。よって、気体流路を確実に確保して、フィルタ部材の内側面における通気面積を確保できる。よって、内部空間と外部との間での通気をいっそうスムーズに行うことができる。
【0014】
また、前記スペーサは、前記連通孔自身に設けられており、前記フィルタ配置面から突出する第2突起部であってもよい。第2突起部をフィルタ配置面に形成することにより、スペーサと包囲部材とを一体成型することができる。この場合には、スペーサを別に準備する必要がなく、また、スペーサを成型するための製造工程をわざわざ設けることなく、スペーサを成型できるため、簡単かつ安価にガスセンサユニットを製造できる。また、この場合、第2突起部が繋ぎ面に固定されているため、第2突起部とフィルタ部材との接触位置がずれにくい。よって、第2突起部によって確保される気体流路はばらつかない。よって、内部空間と外部との間での通気をスムーズに行うことができるとともに、通気量の製品ごとのばらつきを抑えることができる。
【0015】
ところで、スペーサが気体流路の途中に配置されていると、スペーサ自身が気体の流れる抵抗となる。これに対し、第2突起部をフィルタ配置面に設けることにより、第2突起部が気体流路の途中に配置されることがなく、気体の流れる抵抗とならない。これにより、センサキャップの通気性をいっそう向上させることができる。よって、内部空間と外部との間での通気をいっそうスムーズに行うことができる。
【0016】
また、前記フィルタ配置面を周方向に120度ずつ区画分けしたときに、前記第2突起部は、各区画それぞれに少なくとも1つ以上形成されていてもよい。突起部が各区画それぞれに少なくとも1つ以上配置されていることにより、繋ぎ面に対してフィルタ部材の内側面が傾いて配置されることを抑制できる。よって、気体流路を確実に確保して、フィルタ部材の内側面における通気面積を確保できる。よって、内部空間と外部との間での通気をいっそうスムーズに行うことができる。
【0017】
また、前記スペーサは、前記前記繋ぎ面と前記フィルタ部材の前記内側面との間に設けられており、前記フィルタ部材よりも硬度が高くてもよい。スペーサを包囲部材やフィルタ部材と一体成型することなく別途製造することにより、既存の包囲部材やフィルタ部材による影響を受けることなく様々なスペーサの形状を形成することができる。また、スペーサの硬度をフィルタ部材よりも高くすることにより、フィルタ部材を連通孔内に配置した場合に、スペーサがフィルタ部材によって押しつぶされることがない。スペーサの形状が確保できるので、気体流路を確実に確保できる。よって、内部空間と外部との間での通気をスムーズに行うことができる。
【0018】
また、前記スペーサは、前記繋ぎ面における前記前記通気面側の縁よりも、前記フィルタ配置面側に配置されていてもよい。上述のように、スペーサも、気体流路の途中に位置されていると、スペーサ自身が気体の流れる抵抗となる。これに対し、スペーサを繋ぎ面における通気面側の縁よりもフィルタ配置面側に配置することにより、スペーサにより気体の流れる抵抗を小さくすることができる。これにより、センサキャップの通気性をいっそう向上させることができる。よって、内部空間と外部との間での通気をいっそうスムーズに行うことができる。
【0019】
また、前記前記繋ぎ面に平行な方向における前記スペーサの断面の面積は、前記フィルタ部材側の面積が、前記繋ぎ面側の面積よりも小さくてもよい。この場合には、フィルタ部材の内側面とスペーサとの接触面積を小さくすることができる。これにより、フィルタ部材の内側面における通気面積を確実に確保できる。よって、内部空間と外部との間での通気をいっそうスムーズに行うことができる。なお、スペーサの繋ぎ面に平行な方向における段面積は、繋ぎ面からフィルタ部材の内側面に向かって段階的に小さくなっても良いし、漸近的に小さくなっても良い。
【0020】
また、前記繋ぎ面を周方向に120度ずつ区画分けしたときに、前記スペーサは、各区画それぞれに少なくとも1つ以上配置されていてもよい。スペーサが各区画それぞれに少なくとも1つ以上配置されていることにより、繋ぎ面に対してフィルタ部材の内側面が傾いて配置されることを抑制できる。よって、気体流路を確実に確保して、フィルタ部材の内側面における通気面積を確保できる。よって、内部空間と外部との間での通気をいっそうスムーズに行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】ガスセンサユニット1の構造を示す縦断面図である。
【図2】酸素センサ100の構造を示す縦断面図である。
【図3】センサキャップ200の構造を示す縦断面図である。
【図4】センサキャップ200の部分断面図である。
【図5】センサキャップ200の通気量低下率を示すグラフである。
【図6】センサキャップ300の部分断面図である。
【図7】センサキャップ400の部分断面図である。
【図8】スペーサ部材450の斜視図である。
【図9】スペーサ部材550の斜視図である。
【図10】センサキャップ500の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化したガスセンサユニット1の第一実施形態について、図面を参照して説明する。ガスセンサユニット1は自動車の排気経路Hに取り付けられて使用されるものである。以下、軸線O方向において、ガスセンサユニット1の排気経路H内に挿入される側(図1中、下側)を、ガスセンサユニット1の先端側とし、これと反対方向に向かう側(図1中、上側)を後端側として説明する。
【0023】
図1に示すように、ガスセンサユニット1は、酸素センサ100と、酸素センサ100の後端側に酸素センサ100に着脱可能に装着されるセンサキャップ200とからなる。酸素センサ100は、排気ガスに晒されて、排気ガス中の酸素濃度に応じた検出信号を出力する検出素子10を内蔵する。センサキャップ200は、酸素センサ100に取り付けられ、自身の備えるキャップ端子210が検出素子10に電気的に接続されて、検出素子10から出力された出力信号を、外部装置(例えば、エンジンコントロールユニット(ECU))に伝送する。
【0024】
はじめに、酸素センサ100の構造について、図2を参照して説明する。酸素センサ100は、先端側が閉じられた筒状の検出素子10をハウジング2内に配置した構造を有する。検出素子10の後端の内側には、この検出素子10の出力する信号を取り出すための接続端子71がはめ込まれている。そして、接続端子71の外周部を取り囲むように、円筒状のセラミック包囲体4が設けられている。セラミック包囲体4は、検出素子10の後端側の外周部ごと接続端子71を取り囲んでいる。接続端子71には、後述するキャップ端子210(図1参照)が接続される。
【0025】
ハウジング2は、主体金具21、及びプロテクタ22を有している。主体金具21は、SUS430からなり、略円筒状に形成されている。この主体金具21の先端部の外周面には、酸素センサ100を排気経路Hに取り付けるためのねじ部24が形成されている。ねじ部24の後端側には、ねじ部24を排気経路Hに螺合するための取付工具を係合させる取付部29が設けられている。
【0026】
また、主体金具21の筒孔は、3段の段違い形状をなしており、先端側の部位が、最小の内径を有する先端筒孔28として形成されている。そして、筒孔の後端側の部位は、最大の内径を有する後端筒孔25として形成され、先端筒孔28と後端筒孔25との間に、両者の中間の内径を有する中間筒孔27が形成されている。
【0027】
後端筒孔25は、セラミック包囲体4の先端部41の外周を取り囲む位置に配置されている。また、後端筒孔25と中間筒孔27との間の段部は、充填材受け部26として構成され、この充填材受け部26と後端筒孔25にかけての筒孔の内周と、検出素子10の外周との間隙に、充填材102が充填される。
【0028】
中間筒孔27は、検出素子10の後述する鍔部12が配置される位置に形成されている。そして、中間筒孔27と先端筒孔28との間の段部は、鍔受け部23として構成されている。この鍔受け部23によって、検出素子10の鍔部12が支持される。また、先端筒孔28は、検出素子10を囲う位置に形成されている。
【0029】
主体金具21の先端には、プロテクタ22が取り付けられている。プロテクタ22は、有底筒状を有し、主体金具21から露出する検出素子10の後述する検出部11の先端側を覆って保護している。プロテクタ22は、排気経路H内の排気ガスをハウジング2の内部に導入させ、検出素子10と接触させるための通気孔54を複数備えている。
【0030】
ハウジング2の内部に保持されている検出素子10は、前述したように、先端が閉じられた有底筒状をなしており、ジルコニアを主成分とする固体電解質を基体13とする。この検出素子10の外周には、径方向外向きに突出した鍔部12が設けられている。検出素子10は、この鍔部12の先端側を向く面(以下、「先端向き面」という)と、主体金具21の鍔受け部23との間に、金属製のパッキン101を介した状態で、主体金具21内に配置されている。
【0031】
検出素子10の鍔部12よりも先端側には検出部11が配置され、鍔部よりも後端側は後端部15として構成されている。検出部11は、上述のように主体金具21から露出し、排気ガスに晒されて、排気ガス中の酸素濃度を検出する。後端部15は、略同一の外径で筒状に延びている。検出部11の外周面には、Pt、あるいはPt合金をメッキすることにより形成された検知電極51が設けられている。検知電極51は、鍔部12の先端向き面に電気的に接続しており、さらに、パッキン101を介して、主体金具21に電気的に接続される。よって、検知電極51の電位は、主体金具21から取り出すことができる。検出部11の表面は、耐熱性セラミックスからなる多孔質状の電極保護層(図示省略)で覆われている。
【0032】
基体13の内周側には、内周面を被覆するように基準電極55が設けられている。基準電極55は、検出素子10の内周面全体を、Pt、あるいはPt合金でメッキすることによって形成されている。この基準電極55と検知電極51とは、固体電解質体である基体13を挟んで互いに対応する位置に配置されており、この部分が、排気ガス中の酸素濃度を検知するガス検知部として機能する。
【0033】
検出素子10の鍔部12の後端側を向く面(以下、「後端向き面」という)には、パッキン103が配置される。そして、パッキン103よりも後端側には、セラミック粉末からなる充填材102が、検出素子10の後端部15の外周面と、主体金具21の、充填材受け部26から後端筒孔25にかけての内周面との間に充填されている。
【0034】
そして、その充填材102の後端側には、前述したセラミック包囲体4が配置されている。セラミック包囲体4は、絶縁性のセラミックから筒状に形成されたものであり、セラミック包囲体4の先端部41は、径方向外側に突出している。先端部41は、検出素子10の後端部15の外周面と、後端筒孔25の内周面との間で、充填材102の後端の位置に介在するように配置されている。先端部41の後端向き面には、パッキン104が配置され、主体金具21の後端に形成された加締部31が先端に向かって加締められることにより、パッキン104を介して先端部41が充填材102に対し押し付けられる。これにより、主体金具21の内周面と、検出素子10の外周面との間隙が、充填材102によって、気密に埋められている。このようにして、検出素子10は、鍔受け部23と加締部31との間に挟まれた各部材を介し、主体金具21の内部に保持されている。
【0035】
また、検出素子10の筒孔内の後端側には、接続端子71が挿入されている。接続端子71は、略筒状をなし、先端側に基準電極55と接続する電極接触部72が設けられ、後端側にキャップ端子210(後述)と接続するキャップ接続部73が形成されている。
【0036】
次に、センサキャップ200の構造について、図3を参照して説明する。センサキャップ200は、酸素センサ100(図2参照)の後端側を包囲する包囲部材220と、酸素センサ100に電気的に接続されるキャップ端子210と、キャップ端子210にかしめ固定されるリード線260と、フィルタ部材250とを備える。
【0037】
まず、包囲部材220について説明する。図3に示すように、包囲部材220は、絶縁性のフッ素系ゴムを中空状に形成したものである。包囲部材220は、後端側(図中、上側)が閉じられた有底筒状のセンサ包囲部221と、センサ包囲部221の後端側から径方向に突出するフィルタ包囲部222と、センサ包囲部221の後端側からフィルタ包囲部222とは反対側に突出するリード線包囲部223とを有する。
【0038】
センサ包囲部221は、センサキャップ200が酸素センサ100(図2参照)に取り付けられた状態において、酸素センサ100の後端側を包囲する。図3に示すように、センサ包囲部221は略筒状に形成される。センサ包囲部221の内壁227には、センサキャップ200を酸素センサ100に取り付ける際に、酸素センサ100の後端を自身の筒孔の中央に案内するためのテーパ状の段差が設けられている。
【0039】
また、センサ包囲部221内には、酸素センサ100の接続端子71(図2参照)を介して検出素子10の基準電極55との導通を図るキャップ端子210が配置されている。キャップ端子210は、センサ包囲部221内で、センサ包囲部221の筒孔の底部側(図中、上側)から開放部側(図中、下側)へ向けて突出するセンサ接続部256を有する。このセンサ接続部256が、接続端子71のキャップ接続部73(図2参照)内に挿入され、接続端子71との間で電気的な接続をなす。センサ接続部256は筒状に形成されており、センサ包囲部221内において、自身の筒孔216を介した通気が可能となっている。
【0040】
また、キャップ端子210には、自身をセンサ包囲部221の内壁227に位置決め保持させるための位置決め部255が、センサ接続部256の根本付近に設けられている。位置決め部255は、センサ接続部256の根本から内壁227に向けて環状に形成された環状部211と、環状部211の外縁から、センサ接続部256と同じ側に向けて突出する円筒状に形成された把持部212とを有する。内壁227には凹部状の係合部225が設けられており、この係合部225に把持部212の下端部が係合されて、キャップ端子210のセンサ包囲部221内からの抜けが防止されている。なお、センサ包囲部221の底部(図中、上側)には、キャップ端子210をセンサ包囲部221に装着した状態で、センサ接続部256の筒孔216と後述するフィルタ包囲部222との間で通気が行えるように、溝部99が形成されている。したがって、フィルタ包囲部222(より詳細には、後述する連通孔230)から溝部99およびキャップ端子210の筒孔216内を介してセンサ包囲部221の開放部側へ通気可能となっている。
【0041】
さらに、キャップ端子210からは、リード線260に接続されるリード線固定部219が、センサ接続部256の後端側付近からリード線包囲部223内へ向けて径方向に延びており、リード線包囲部223内で、リード線260と接続されている。リード線260は、リード線包囲部223に開口されたリード線挿通孔261からセンサキャップ200の外部に引き出されている。なお、リード線挿通孔261の開口径は、リード線260の径よりも若干小さく形成されている。これにより、リード線挿通孔261とリード線260とが密着し、リード線挿通孔261から空気や水が導入されることを防止できる。
【0042】
フィルタ包囲部222について説明する。フィルタ包囲部222は、センサ包囲部221の後端側から径方向外側に突出し、略円筒状に形成されている。フィルタ包囲部222は、連通孔230を内部に備える。連通孔230は、センサ包囲部221と包囲部材220の外部とを連通させる。連通孔230は、フィルタ包囲部222の外壁に開口部259を有するフィルタ配置孔231と、フィルタ配置孔231とセンサ包囲部221とを通気可能に連通させる通気孔232とから構成される。
【0043】
フィルタ配置孔231は、図4に示すように、断面形状円形の筒孔として形成されている。フィルタ配置孔231は、周方向の面を形成するフィルタ配置面234と、フィルタ配置面234のセンサ包囲部221側の端部に位置する環状の繋ぎ面233とによって囲まれている。フィルタ配置面234の開口部259側の端部には、径方向内側に向かって突出し、周方向に環状につながるフィルタ押え部235が形成されている。フィルタ押え部235は、後述するフィルタ部材250がフィルタ配置孔231から外部に抜け落ちることを防止する。また、フィルタ配置面234には、径方向内側に向かって突出し、周方向に環状につながる2つのフィルタ保持部236が形成されている。フィルタ保持部236の突出高さは、フィルタ押え部235の突出高さよりも低い。
【0044】
繋ぎ面233は、図4に示すように、環状をなし、中央に通気孔232につながる開口部238を有する。繋ぎ面233には、繋ぎ面233から開口部259側へ向けて突出する第1突起部239が形成されている。第1突起部239は、繋ぎ面233を開口部259の側から見た時に、開口部238の中央にあたる位置を中心として、周方向に90度間隔で4つ配置されている。第1突起部239は、突出先端がそれぞれ半球状に形成されている。第1突起部239の突出高さは、一例として0.5mmである。第1突起部239の繋ぎ面233側の端部における直径は、一例として0.7mmである。
【0045】
次に、通気孔232は、フィルタ配置孔231よりも小径の筒孔として形成され、上述のようにフィルタ配置孔231とセンサ包囲部221の内部とを連通させる。通気孔232のフィルタ配置孔231側の端部には開口部238が位置する。通気孔232は、通気面237によって形成されている。
【0046】
次に、包囲部材220のフィルタ配置孔231内に配置されるフィルタ部材250について、図4を参照して説明する。フィルタ部材250は、微細気孔が連続する多孔質構造のPTFEからなり、水密性及び通気性を有する。フィルタ部材250は、円柱状に形成されており、開口部259側に配置される外側面251と、繋ぎ面233側に配置される内側面252と、外側面251と内側面252との間に位置する横面253とを備えている。
【0047】
フィルタ部材250の配置構造について、図4を参照して説明する。フィルタ配置孔231にフィルタ部材250を配置する場合、フィルタ配置孔231の開口部259から、フィルタ部材250をフィルタ配置孔231に押し込む。フィルタ押え部235が弾性変形しながら、フィルタ部材250がフィルタ配置孔231に押し込まれて、フィルタ配置孔231に配置される。
【0048】
フィルタ部材250がフィルタ配置孔231に配置された状態では、フィルタ押え部235が、変形から復帰してフィルタ部材250の外側面251に当接し、フィルタ部材250がフィルタ配置孔231から外部に抜け落ちることを防止する。また、フィルタ保持部236が、フィルタ部材250の横面253を径方向内側に押えつけて、フィルタ部材250を保持するとともに、フィルタ配置面234と横面253との間隙を封止する。これにより、フィルタ保持部236とフィルタ部材250の密着性を高め、センサキャップ200の水密性を向上させることができる。
【0049】
フィルタ部材250内側面252は、第1突起部239の先端に当接する。よって、内側面252と繋ぎ面233との間には間隙257が形成され、両者の密着が防止される。このとき、フィルタ部材250の内側面252においては、第1突起部239との接触部分を除く部分が、全て間隙257に面することになる。これにより、内側面252と繋ぎ面233とが密接する場合と比べて、内側面252における通気面積を大きくすることができる。
【0050】
次に、このように構成されたセンサキャップ200の酸素センサ100への取り付け構造について説明する。図1に示すように、センサキャップ200を酸素センサ100に取り付けた状態では、キャップ端子210のセンサ接続部256が接続端子71の内側に挿入され、接続端子71に当接して、キャップ端子210と接続端子71とが電気的に導通する。
【0051】
また、把持部212とセンサ接続部256との間の隙間に、セラミック包囲体4の後端側が挿入され、セラミック包囲体4の後端面が環状部211に当接する。そして、包囲部材220の内壁227が、セラミック包囲体4の外周面に密着して、セラミック包囲体4を保持する。内壁227とセラミック包囲体4の外周面とが密着することにより、センサキャップ200の下方からセンサキャップ200の内部に大気が導入されることが防止される。これにより、基準電極55は、連通孔230を介して外部から導入された空気とのみ接触する。
【0052】
次に、基準電極55に接触する大気の流れについて説明する。大気は、ガスセンサユニット1の外部から基準電極55に向かって流れる場合と、基準電極55から外部に向かって流れる場合とがあるが、ここでは外部から基準電極55に向かって流れる場合を例に挙げて説明する。
【0053】
図4に示すように、外部の大気は、包囲部材220の外壁に設けられた開口部259からフィルタ部材250を経由して間隙257に到達する。間隙257に到達した大気は、開口部238から通気孔232を経由して、キャップ端子210の後端側(図中上側)に形成された溝部99に到達する。そして、図1に示すように、キャップ端子210の筒孔216を介し、接続端子71の内部に形成された筒孔を経由して、検出素子10の内部に到達し、基準電極55に接触する。
【0054】
ここで、フィルタ部材250における大気の移動速度は、大気の流通方向におけるフィルタ部材250の断面積(通気面積)に依存する。本実施形態では、図4に示すように、繋ぎ面233に第1突起部239を設けたため、内側面252は、第1突起部239の先端部とのみ接触する。よって、従来のように、内側面252と繋ぎ面233とが直接接触してしまい、内側面252における通気面積が開口部238と略同一になってしまう場合に比べて、内側面252における通気面積を増加させることができる。よって、フィルタ部材250における通気量を向上させることができる。
【0055】
さらに、第1突起部239を繋ぎ面233に一体成型することにより、スペーサを別に準備する必要がなく、また、スペーサを成型するための製造工程をわざわざ設けることなく、第1突起部239を成型できるため、簡単かつ安価にガスセンサユニットを製造できる。また、第1突起部239が繋ぎ面233に固定されているため、第1突起部239とフィルタ部材250との接触位置がずれにくい。よって、第1突起部239によって確保される気体流路がばらつかない。よって、製品ごとのばらつきを抑えることができる。
【0056】
また、第1突起部239の突出方向(図4の左右方向)と直交する第1突起部239の断面積が、繋ぎ面233から内側面252に向かうにつれて小さくなっている。これにより、フィルタ部材250の内側面252と第1突起部239との接触面積を小さくすることができ、第1突起部239によりフィルタ部材250の通気面積が減少することを抑制できる。
【0057】
また、繋ぎ面233を周方向に120度ずつ区画分けしたときに、第1突起部239は、各区画それぞれに少なくとも1つ以上形成されている(本実施形態では、上述のように、90度間隔に4つ)ので、繋ぎ面233に対してフィルタ部材250の内側面252が傾いて配置されることを抑制できる。
【0058】
繋ぎ面233に第1突起部239を設けた本実施形態のガスセンサユニット1について、通気量に関する評価を行った。評価の方法および評価の結果について、図5を参照して説明する。なお、比較のために、繋ぎ面233に第1突起部239を備えない従来品についても通気量を測定し、評価した。
【0059】
はじめに、評価の方法について説明する。評価は、フィルタ部材250をシリコンチューブの内部に配置した状態のフィルタ部材250の通気量(以下、基準通気量という)に対する、フィルタ部材250を包囲部材220の内部に配置した状態のフィルタ部材250の通気量の低下率を評価することにより行った。
【0060】
基準通気量は以下のように測定した。まず、フィルタ部材250をシリコンチューブに挿入する。そして、シリコンチューブの一端側に50kPaの空気を加圧する。そして、シリコンチューブの他端側から一分間に流出する空気の量を水中捕獲する。捕獲された空気の量を基準通気量とした。
【0061】
フィルタ部材250を包囲部材220に配置した状態のフィルタ部材250の通気量は、以下のように測定した。まず、フィルタ部材250を包囲部材220のフィルタ配置孔231に配置する。そして、包囲部材220のリード線包囲部223に開口されたリード線挿通孔261を閉塞する。そして、包囲部材220のセンサ包囲部221側の開口に50kPaの空気を加圧する。この条件において、フィルタ包囲部222に形成された開口部259から一分間に流出する空気の量を水中捕獲する。捕獲された空気の量を、フィルタ部材250を包囲部材220に配置した状態のフィルタ部材250の通気量とした。
【0062】
なお、フィルタ部材250の包囲部材220内への配置方法は、以下の2通りとし、それぞれについて評価を行った。具体的には、フィルタ部材250の外側面251の中央を開口部259の側から通気孔232に向かって押し込む方法と、フィルタ部材250の外側面251の縁部近傍を押し込む方法との二通りの方法によって、フィルタ配置孔231にフィルタ部材250を配置し、それぞれ評価した。なお、前者の方法でフィルタ部材250を配置した場合、フィルタ部材250は、図1に示すように、内側面252が、4つの第1突起部239の全てに当接しており、柱軸がフィルタ配置孔231の孔軸と同一となるように配置される。また、後者の方法でフィルタ部材250を配置した場合には、フィルタ部材250は、内側面252が、4つの第1突起部239のうちの少なくとも一つに当接した状態で、柱軸がフィルタ配置孔231の孔軸に対して傾きを生じているように配置される。
【0063】
以下、フィルタ部材250の外側面251の中央を押し込んで、フィルタ配置孔231に配置したフィルタ部材250の通気量をサンプル1の通気量、フィルタ部材250の外側面251の縁部近傍を押し込んで配置したフィルタ部材250の通気量をサンプル2の通気量、従来の包囲部材にフィルタ部材250を配置した状態の通気量をサンプル3の通気量として説明する。
【0064】
基準通気量に対するサンプル1、サンプル2、サンプル3の通気量の低下率は、下記の式により算出した。
・ (サンプル1の通気量の低下率)=(1−(サンプル1の通気量)/(基準通気量))×100
・ (サンプル2の通気量の低下率)=(1−(サンプル2の通気量)/(基準通気量))×100
・ (サンプル3の通気量の低下率)=(1−(サンプル3の通気量)/(基準通気量))×100
【0065】
評価の結果について説明する。図5に示すように、サンプル1については、基準通気量に対する通気量の低下率は、6%〜18%であった。サンプル2については、基準通気量に対する通気量の低下率は、8%〜18%であった。一方、サンプル3については、基準通気量に対する通気量の低下率は、39%〜60%であった。
【0066】
これにより、サンプル1、サンプル2の通気量は、サンプル3の通気量よりも多いことが示された。この理由は、以下のように考えられる。サンプル1、サンプル2においては、フィルタ配置孔231の繋ぎ面233とフィルタ部材250の内側面252との間に間隙257が形成されているため、内側面252のほぼ全面に50kPaの空気圧がかかる。加圧された空気は、内側面252のほぼ全面からフィルタ部材250の内部に導入され、外側面251から流出する。一方、サンプル3においては、フィルタ部材250の内側面252は、フィルタ配置孔231の繋ぎ面233に接触している。内側面252のうちの繋ぎ面233に接触している部分には、空気圧がかからない。よって、加圧された空気は、内側面252のうちの繋ぎ面233に接触している部分からはフィルタ部材250の内部に導入されず、開口部238に面する部分からのみ導入される。これにより、サンプル1、サンプル2では、サンプル3よりも通気量が多くなったものと考えられる。
【0067】
また、サンプル1、サンプル2の通気量のばらつきは、サンプル3の通気量のばらつきよりも少ないことが示された。この理由は、以下のように考えられる。上述のように、通気量は、フィルタ部材250の内側面252の通気面積に依存する。サンプル1、サンプル2においては、フィルタ部材250の内側面252は、第1突起部239の先端に接触する。よって、内側面252における通気面積は、内側面252の面積とほぼ等しいものとして近似できる。一方、サンプル3においては、内側面252と繋ぎ面233とが接触する。内側面252と繋ぎ面233との接触面積は、内側面252および繋ぎ面233に製造上形成されうる凹凸などにより、ばらつきが生じる。これにより、内側面252における通気面積にばらつきが生じる。よって、サンプル1、サンプル2では、サンプル3よりもばらつきが少なくなったものと考えられる。
【0068】
以上より、本実施形態においては、従来品にくらべて通気量を多くできると共に、通気量のばらつきを少なくできることが示唆された。
【0069】
なお、第一実施形態における検出素子10が、本発明の特許請求の範囲の「ガス検出素子」に相当し、基準電極55が「電極」に相当し、接続端子71が「センサ端子」に相当し、酸素センサ100が「ガスセンサ」に相当し、間隙257が「気体流路」に相当し、第1突起部239が、「スペーサ」及び「第1突起部」に相当する。
【0070】
次に、本発明の第二実施形態のセンサキャップ300について、図6を参照して説明する。第二実施形態のセンサキャップ300では、包囲部材320のフィルタ包囲部322に形成されるフィルタ配置孔331の形状が第一実施形態とは異なる。以下では、第一実施形態とは異なるフィルタ配置孔331について重点的に説明し、第一実施形態と同一部分については、同一符号を付し、説明を省略、または簡略化するものとする。
【0071】
図6に示すように、フィルタ包囲部322には、連通孔330が形成されている。連通孔330は、フィルタ配置孔331と、第一実施形態と同一形状の通気孔232とからなる。フィルタ配置孔331は断面形状円形の筒孔として形成されている。第一実施形態と同様に、フィルタ配置孔331は、フィルタ配置孔331の周方向の面を形成するフィルタ配置面334と、フィルタ配置面334のセンサ包囲部221側の端部に位置する環状の繋ぎ面333とによって取り囲まれている。フィルタ配置面334には、第一実施形態と同様に形成されたフィルタ押え部235およびフィルタ保持部236の他に、径方向内側に向かって突出する略円柱状に形成された4つの第2突起部339が設けられている。
【0072】
4つの第2突起部339は、フィルタ配置面334において、同一円周上に形成されている。第2突起部339は、繋ぎ面333を開口部259の側から見た時に、周方向に90度間隔でフィルタ配置面334に配置されている。第2突起部339は、突出先端がそれぞれ半球状に形成されている。
【0073】
繋ぎ面333は、環状をなし、中央に通気孔232につながる開口部338を有する。第一実施形態とは異なり、繋ぎ面333には突起部が形成されていない。
【0074】
フィルタ配置孔331に配置されるフィルタ部材250は、第一実施形態と同様の形状および材質である。フィルタ部材250がフィルタ配置孔331に配置された状態では、フィルタ部材250の内側面252は、第2突起部339の側面に当接する。よって、内側面252と繋ぎ面333との間には間隙357が形成され、両者の密着が防止される。このとき、フィルタ部材250の内側面252においては、第2突起部339との接触部分を除く部分が、全て間隙357に面することになる。これにより、内側面252と繋ぎ面333とが密接する場合と比べて、内側面252における通気面積を大きくすることができる。
【0075】
しかも、第2突起部339は、フィルタ配置面334から突出している。これにより、第2突起部339が間隙357の途中に配置されることなく、気体の流れる抵抗にならない。以上より、第二実施形態のセンサキャップにおいても、通気量を確実に確保できる。
【0076】
なお、第二実施形態における間隙357が、本発明の特許請求の範囲の「気体流路」に相当し、第2突起部339が、「スペーサ」及び「第2突起部」に相当する。
【0077】
次に、本発明の第三実施形態のセンサキャップ400について、図7及び図8を参照して説明する。第三実施形態のセンサキャップ400では、包囲部材420のフィルタ包囲部422に形成されるフィルタ配置孔431の形状が第一実施形態とは異なる。また、フィルタ配置孔431に、スペーサ部材450が配置される点で、第一実施形態とは異なる。以下では、第一実施形態とは異なるフィルタ配置孔431及びスペーサ部材450について重点的に説明し、第一実施形態と同一部分については、同一符号を付し、説明を省略、または簡略化するものとする。
【0078】
図7に示すように、フィルタ包囲部422には、連通孔430が形成されている。連通孔430は、フィルタ配置孔431と、第一実施形態と同一形状の通気孔232とからなる。フィルタ配置孔431は断面形状円形の筒孔として形成されている。フィルタ配置孔431の周方向の面を形成するフィルタ配置面434には、第一実施形態と同様に形成されたフィルタ押え部235、フィルタ保持部236が設けられている。
【0079】
繋ぎ面433は、第一実施形態と同様に環状をなし、中央に通気孔232につながる開口部438を有する。第一実施形態とは異なり、繋ぎ面433には突起部が形成されていない。
【0080】
フィルタ配置孔431に配置されるスペーサ部材450について、図8を参照して説明する。スペーサ部材450の説明では、図8の上方をスペーサ部材450の上方として説明する。スペーサ部材450は、フィルタ部材250よりも硬度の高いプラスチック材料もしくは無機材料によって形成されている。
【0081】
スペーサ部材450は、平面視環状に形成された環状部451と、環状部451の上面452から上方に突出する突起部439とを備える。環状部451の外径は、繋ぎ面433の外周径と同一である。環状部451の内径は、開口部238の開口径よりも大きい。4つの突起部439は、環状部451を平面視した時に、周方向に90度間隔で配置されている。突起部439は、突出先端がそれぞれ半球状に形成されている。
【0082】
スペーサ部材450及びフィルタ部材250のフィルタ配置孔431への配置方法について、図7を参照して説明する。フィルタ配置孔431には、はじめに、スペーサ部材450を配置し、その後、フィルタ部材250を配置する。スペーサ部材450をフィルタ配置孔431に配置する場合には、まず、スペーサ部材450の下面453に予め接着剤を塗布する。そして、開口部259からスペーサ部材450を挿入し、スペーサ部材450の下面453と繋ぎ面433とを接着させる。この状態において、突起部439は、繋ぎ面433の内周側の縁よりも外周側の縁に近い位置に配置されている。
【0083】
そして、開口部259から、フィルタ部材250を挿入する。フィルタ配置孔431に配置されるフィルタ部材250は、第一実施形態と同様の形状および材質である。フィルタ部材250がフィルタ配置孔331に配置された状態では、フィルタ部材250の内側面252は、突起部439の先端に当接する。よって、内側面252と上面452、内側面252と繋ぎ面433との間には間隙457が形成される。このとき、フィルタ部材250の内側面252においては、突起部439との接触部分を除く部分が、全て間隙457に面することになる。よって、第一実施形態と同様に、内側面252における通気面積を大きくすることができる。
【0084】
しかも、突起部439は、スペーサ部材450に設けられており、包囲部材420やフィルタ部材250に配置されたものではない。そのため、既存の包囲部材420のフィルタ配置孔431に、別途作成したスペーサ部材450を配置するだけで、フィルタ部材250の内側面252における通気面積を確保することができる。
【0085】
なお、第三実施形態における間隙457が、本発明の特許請求の範囲の「気体流路」に相当し、スペーサ部材450が「スペーサ」に相当する。
【0086】
以上説明したスペーサ部材450の形状は、突起部439を備えるものに限定されない。変形例のスペーサ部材550を備えるセンサキャップ500について、図9及び図10を参照して説明する。以下では、第三実施形態と異なる部分についてのみ重点的に説明し、同一部分については、同一符号を付し、説明を省略、または簡略化するものとする。
【0087】
まず、変形例のスペーサ部材550について、図9を参照して説明する。なお、スペーサ部材550の説明においては、図9の上方をスペーサ部材550の上方として説明する。変形例のスペーサ部材550は、平面視C形状をなしており、切れ目552を備える。スペーサ部材550は、上面551と下面553(図10参照)とを有している。上面551および下面553の外径は、フィルタ部材250(図10参照)の内側面252の径よりも小さい。上面551および下面553の内径は、開口部438(図10参照)の開口径よりも大きい。よって、上面551および下面553の面積は、繋ぎ面433の面積よりも小さい。
【0088】
スペーサ部材550の配置構造について、図10を参照して説明する。スペーサ部材550をフィルタ配置孔431に配置する場合には、スペーサ部材550の下面553に予め接着剤を塗布する。そして、開口部259からスペーサ部材550を挿入し、スペーサ部材450の下面553と繋ぎ面433とを接着させる。フィルタ配置孔431に配置されるフィルタ部材250は、第三実施形態と同様の形状および材質である。
【0089】
フィルタ部材250がフィルタ配置孔331に配置された状態では、フィルタ部材250内側面252は、スペーサ部材550の上面551に接触する。よって、フィルタ部材250の内側面252と繋ぎ面433との間に形成された間隙557は、スペーサ部材550によって、スペーサ部材550の径方向外側と内側とに仕切られる。スペーサ部材550の径方向外側に形成された間隙557と径方向内側に形成された間隙557とは、切れ目552を介して連通している。よって、スペーサ部材550の径方向外側に形成された間隙557と通気孔232とは、切れ目552を介して通気可能である。よって、フィルタ部材250の内側面252の実質的な通気面積の減少分は、上面551の面積分である。
【0090】
以上説明した変形例では、フィルタ部材250の内側面252においては、スペーサ部材550の上面551との接触部分を除く部分が、全て間隙557に面することになる。よって、変形例においても、フィルタ部材250の内側面252と繋ぎ面433とが接触する場合と比較して、内側面252における通気面積を大きくすることができる。
【0091】
尚、上記実施形態に示される構成は例示であり、各種の変更が可能であることは言うまでもない。例えば、フィルタ部材250の内側面252と、繋ぎ面233との間に気体流路を確保するためのスペーサの形状や配置位置は、実施形態に限定されない。
【0092】
例えば、第一実施形態では、第1突起部239をフィルタ配置孔431の繋ぎ面233に形成したが、繋ぎ面233には第1突起部239を形成せずに、フィルタ部材250の内側面252に、内側面252から突出する突起部を形成しても良い。この場合であっても、内側面252と繋ぎ面233との接触を防止して、内側面252における通気面積を確保できる。
【0093】
また、第1突起部239、第2突起部339の形状は上述した実施形態に限定されない。たとえば、第1突起部239、第2突起部339を円柱状に形成しても良いし、円錐状、柱状に形成しても良い。
【0094】
また、第二実施形態においては、フィルタ配置面334から径方向内側に向かって突出する略円柱状の第2突起部339が形成されていたが、第2突起部339は略円柱状でなくてもよい。たとえば、円柱状に形成された第2突起部339を設けずに、代わりに、フィルタ配置面334から径方向内側に突出し、周方向に環状につながる突起部を設けても良い。
【0095】
また、第1突起部239、第2突起部339の数も4つに限定されないし、配置間隔も一定でなくてもよい。例えば、第一実施形態においては、繋ぎ面233を開口部259の側から見て周方向に120度ずつ区画分けしたときに、第1突起部239が各区間にそれぞれに1つ以上形成されていれば、フィルタ部材250が傾いて配置されることを防止する上で好適である。また、第1突起部239が1つである場合であっても、フィルタ部材250の内側面252と繋ぎ面233との間に間隙を形成させることができるため、内側面252における通気面積を増加させることができる。
【符号の説明】
【0096】
1 ガスセンサユニット
10 検出素子
71 接続端子
72 電極接触部
73 キャップ接続部
99 溝部
100 酸素センサ
200、300、400 センサキャップ
210 キャップ端子
220 包囲部材
230 連通孔
231、331、431 フィルタ配置孔
232 通気孔
233、333、433 繋ぎ面
234、334、434 フィルタ配置面
237 通気面
239 第1突起部
250 フィルタ部材
339 第2突起部
450、550 スペーサ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定ガスに晒されるガス検出素子、および前記ガス検出素子に形成した電極と接続して前記ガス検出素子からの出力信号を伝えるセンサ端子を有するガスセンサと、
前記ガスセンサに装着されて前記出力信号を外部装置に伝送するセンサキャップであって、前記センサ端子と電気的に接続するキャップ端子と、前記センサキャップの前記ガスセンサへの装着時に自身と前記ガスセンサとの間で内部空間を形成すると共に、該内部空間と外部とを気体が流通可能に連通する連通孔が形成された包囲部材と、前記連通孔内に配置され、通気性および撥水性を有するフィルタ部材と、を有するセンサキャップと、
を備えたガスセンサユニットにおいて、
前記連通孔は、前記フィルタ部材が配置されるフィルタ配置面と、前記フィルタ配置面よりも開口面積が小さい通気面と、該フィルタ配置面と該通気面とを繋ぐ繋ぎ面と、を含み、
前記フィルタ配置面内にフィルタ部材が配置され、
前記繋ぎ面と前記フィルタ部材の前記繋ぎ面に対向する内側面とによって形成される気体流路であって、前記フィルタ部材を通過した気体を前記通気面内まで流通させる気体流路を確保するスペーサが、前記連通孔自身、前記フィルタ部材自身、又は前記繋ぎ面と前記フィルタ部材の前記内側面との間に設けられていることを特徴とするガスセンサユニット。
【請求項2】
前記スペーサは、前記連通孔自身に設けられており、前記フィルタ部材の前記内側へ向けて前記繋ぎ面から突出する第1突起部であることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサユニット。
【請求項3】
前記第1突起部の突出方向と直交する前記第1突起部の断面の面積は、前記フィルタ部材側の面積が、前記繋ぎ面側の面積よりも小さいことを特徴とする請求項2に記載のガスセンサユニット。
【請求項4】
前記繋ぎ面を周方向に120度ずつ区画分けしたときに、前記第1突起部は、各区画それぞれに少なくとも1つ以上形成されていることを特徴とする請求項2または3に記載のガスセンサユニット。
【請求項5】
前記スペーサは、前記連通孔自身に設けられており、前記フィルタ配置面から突出する第2突起部であることを特徴とする請求項1に記載のガスセンサユニット。
【請求項6】
前記フィルタ配置面を周方向に120度ずつ区画分けしたときに、前記第2突起部は、各区画それぞれに少なくとも1つ以上形成されていることを特徴とする請求項5に記載のガスセンサユニット。
【請求項7】
前記スペーサは、前記繋ぎ面と前記フィルタ部材の前記内側との間に設けられており、前記フィルタ部材よりも硬度が高いことを特徴とする請求項1に記載のガスセンサユニット。
【請求項8】
前記スペーサは、前記繋ぎ面における前記前記通気面側の縁よりも、前記フィルタ配置面側に配置されていることを特徴とする請求項7に記載のガスセンサユニット。
【請求項9】
前記前記繋ぎ面に平行な方向における前記スペーサの断面の面積は、前記フィルタ部材側の面積が、前記繋ぎ面側の面積よりも小さいことを特徴とする請求項7または8に記載のガスセンサユニット。
【請求項10】
前記繋ぎ面を周方向に120度ずつ区画分けしたときに、前記スペーサは、各区画それぞれに少なくとも1つ以上配置されていることを特徴とする請求項7ないし9のいずれか一項に記載のガスセンサユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−18191(P2012−18191A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234489(P2011−234489)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【分割の表示】特願2009−114204(P2009−114204)の分割
【原出願日】平成21年5月11日(2009.5.11)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】