説明

ガスセンサ

【構成】
半導体チップの一面に感ガス部を有する絶縁膜が設けられ、感ガス部の裏面で半導体チップにキャビティが設けられている。半導体チップは、一面から反対面へと貫通し、感ガス部に電気的に接続される導電性のビアと、反対面に設けられかつビアに接続される配線とを備え、感ガス部は半導体チップに固着された通気性のカバーで覆われている。
【効果】
パッケージへのダイボンドもワイヤボンドも無しに、ガスセンサをプリント基板に実装できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は半導体チップのキャビティに感ガス部を設けたガスセンサに関し、特にガスセンサの実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用い、半導体チップのキャビティ上に感ガス部を設けたガスセンサが研究されている。しかしこのようなガスセンサの実装構造については、余り検討されていない。そしてMEMS型のガスセンサを単純に実装すると、パッケージにガスセンサの半導体チップをダイボンドし、電極のパッドをワイヤボンドし、更にチップをカバーで保護することになる。しかしこれでは実装構造が複雑である。
【0003】
ここで関連する先行技術を示すと、特許文献1:JP2001-337063A、特許文献2:JP2002-174608Aは、パッケージに固定したリードにガスセンサの基板をフリップチップ接続することを開示している。なおガスセンサはMEMS型ではなく、基板に感ガス部を厚膜印刷で設けたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】JP2001-337063A
【特許文献2】JP2002-174608A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、パッケージへのダイボンドもワイヤボンドも無しに、ガスセンサをプリント基板に実装できるようにすることにある。
この発明の追加の課題は、ガスセンサにガスフィルタを設けることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、半導体チップの一面に感ガス部を有する絶縁膜が設けられ、感ガス部の裏面で半導体チップにキャビティが設けられたガスセンサにおいて、半導体チップは、一面から反対面へと貫通し感ガス部に電気的に接続される導電性のビアと、反対面に設けられかつビアに接続される配線、とを備え、かつ感ガス部が半導体チップに固着された通気性のカバーで覆われていることを特徴とする。
【0007】
この発明では、半導体チップをプリント基板等に直接接続でき、パッケージが不要で、ダイボンドもワイヤボンドも不要である。また感ガス部を覆うカバーを半導体チップに固着し、パッケージ無しでカバーを取り付ける。
【0008】
好ましくは、カバーはセラミックまたはガラスから成り、かつ半導体チップへ至るカバー内の通気路にガスフィルタが設けられている。このようにすると、ガスフィルタをMEMS型のガスセンサに設けることができる。
より好ましくは、感ガス部から見て反対側の位置で、カバーにガスフィルタを収容する凹部が設けられている。このようにすると、簡単な構造のカバーでガスフィルタを設けることができる。
【0009】
特に好ましくは、凹部を覆い孔がある金属のリッドがカバーに固着されている。このようにすると、ガスフィルタの脱落を簡単に防止できる。またカバーに凹部を覆う蓋を設けても、ガスフィルタの脱落を防止できる。

【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例のガスセンサとプリント基板との断面図
【図2】実施例での半導体チップの平面図
【図3】実施例でのカバーの平面図
【図4】変形例のガスセンサの断面図
【図5】第2の実施例のガスセンサの断面図
【図6】第2の実施例でのカバーの平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明を実施するための最適実施例を示す。
【実施例】
【0012】
図1〜図5に、実施例とその変形とを示す。図1〜図3に最初の実施例を示し、図において2はガスセンサ、4はガスセンサ2をハンダ付けしたプリント基板である。ガスセンサ2は半導体チップ6とカバー8とから成り、半導体チップ6はシリコンあるいはGaAsなどから構成され、その一面にシリカあるいは酸化タンタルなどの絶縁膜12が設けられ、絶縁膜12の裏面側にキャビティ10が設けられている。なおキャビティ10は絶縁膜12側からエッチングにより設けても、あるいはチップ6の反対面側から設けてもよい。
【0013】
絶縁膜12中のキャビティ10上で例えば方形の部分をベース14とし、ベース14は脚15により、キャビティ10の外部の絶縁膜12に接続されている。ベース14上に、金属酸化物半導体ガスセンサもしくは接触燃焼式ガスセンサなどの感ガス部16を設ける。感ガス部16に例えば4本の配線17を接続し、他端を図2に示す導電性でチップ6を貫通するビア18に接続する。ビア18は、チップ6への反応性イオンエッチングなどにより設けられ、Cuなどの導電体が充填されている。感ガス部16から見てチップ6の反対面側にパッド20を設けてビア18に接続し、パッドは配線の例であり、ハンダバンプ22を介してプリント基板4の配線24にハンダ付けする。なおMEMS型のガスセンサでは、半導体チップ6の構成として種々のものが知られており、感ガス部16の構成、絶縁膜12の構成などは適宜に変更できる。またハンダバンプ22はプリント基板4の一部である。
【0014】
半導体チップ6の、感ガス部16側の面に、チップ6の四周を取り囲むように金属層26が設けられている。カバー8は例えばセラミックもしくはガラスから成り、30,34はキャビティで、キャビティ30,34間には多孔質層32が設けられている。なおカバー8をガラスとする場合、多孔質層32の代わりに貫通孔を設ける。35は金属のリッドで、孔36が設けられ、カバー8の上端の金属層37に溶接、ハンダ付けなどで固定されている。リッド35はキャビティ34の蓋となり、キャビティ34にはシート状の活性炭、シート状のゼオライトなどから成るガスフィルタ38が収容されている。そしてカバー8の底面に金属層39が設けられ、バンプ40を介してチップの金属層26に固着されている。カバー8からリッド35とガスフィルタ38を除いた状態を図3に示す。
【0015】
図1〜図3のガスセンサ2を製造するには、半導体チップに例えば最初にビア18とパッド20とを形成する。次いで通常のMEMS型ガスセンサのように、キャビティ10,ベース14,感ガス部16等を形成する。またカバー8をセラミックで形成する場合、例えば3層のセラミックとし、最下層のセラミックシートに孔を設けてキャビティ30とし、最上層のセラミックシートにも同様に孔を設けてキャビティ34とする。また中間層のセラミックシートでは多孔質層32の部分に孔を設け、焼結後も多孔性を維持する材料を充填する。次いで3層を積層し焼成し、ガスフィルタ38をキャビティ34にセットし、リッド35を金属層37に結合する。そしてバンプ40を用いて、金属層26,39を接合すると、感ガス部16の周囲四周を封止できる。このようにしてガスセンサ2が完成し、プリント基板4にハンダ付けで取り付ける。なおカバー8をガラスとする場合、エッチングあるいは機械加工などによりキャビティ30,34を設け、多孔質層32の部分にも同様に孔を設ける。またバンプ40、金属層26,39に代えて、樹脂接着剤などでカバー8とチップ6の隙間を封止してもよく、あるいは封止を省略してもよい。同様にリッド35も、樹脂などでカバー8に固着してもよい。さらにバンプ40として背の高いバンプ、例えば感ガス部16の厚さよりも背の高いバンプを用いると、キャビティ30は設けなくてもよい。
【0016】
好ましくは、チップ6を多数含むウェハーもしくはチップ6を多数含むサブウェハーに、カバー8を多数含む板をバンプ40でフリップチップ接続する。ここで好ましくは多数の未切断のリッド35から成る金属板を、板に金属層37で取り付けておく。次いで、多数のカバー8から成る板を取り付けたウェハーもしくはサブウェハーを、個々のガスセンサ2へとダイシングする。このようにすると、チップ6へのカバー8の取り付けを、ウェハーもしくはサブウェハーの段階で一括して行える。またリッド35の取り付けも容易になる。
【0017】
図4に変形例を示し、図1〜図3と同じ符号は同じものを表す。図4の変形例では、半導体チップ6は実施例と同じで、カバー48はキャビティ34とガスフィルタ38,リッド35を備えていない。カバー48は例えばセラミックカバーで、キャビティ30を備え、多孔質層32の部分で通気性を備えている。なおセラミックに代えて、ガラスカバーとして、多孔質層32に代えて透孔を設けても良い。また多孔質層32の部分を、焼結性の低いガスフィルタ材料、例えばγ−アルミナ、不定形アルミナ、ゼオライト等で構成しても良い。この場合、カバー48をキャビティ30を設けた層と、孔内にガスフィルタ材料を充填した層の2層で構成する。
【0018】
図5,図6に第2の実施例のガスセンサ52を示し、図1〜図3と同じ符号は同じものを表す。58はセラミック等の新たなカバーで、キャビティ34の上面を覆う蓋53と、キャビティ34の周囲3方を覆う側壁54を備え、キャビティ34の残る一方の側面に開口55が設けられ、シート状のガスフィルタ38の挿入口とする。そして孔50もしくは多孔質層などを介し、キャビティ30,34間の通気路を形成する。図5,図6の実施例では、開口55からシート状のガスフィルタ38などをキャビティ34内にセットできる。
【0019】
実施例では以下の効果が得られる。
(1) ガスセンサ2,52をプリント基板4に直接実装できる。そしてパッケージもワイヤボンドもダイボンドも不要である。
(2) 感ガス部16をカバー8などで保護できる。カバー8とチップ6との隙間はバンプ40などで封止でき、また樹脂接着剤でも封止できる。
(3) キャビティ34にガスフィルタ38を収容することにより、被毒性のガスを除去し、あるいは不要なガスを除去できる。なおガスフィルタ38はシート状に限らず、粒状として、そのままあるいは適宜の接着剤と共に、キャビティ34に収容しても良い。

【符号の説明】
【0020】
2,42 ガスセンサ
4 プリント基板
6 半導体チップ
8 カバー
10 キャビティ
12 絶縁膜
14 ベース
15 脚
16 感ガス部
17 配線
18 ビア
20 パッド
22 ハンダバンプ
24 配線
26 金属層
30,34 キャビティ
32 多孔質層
35 リッド
36 孔
37 金属層
38 ガスフィルタ
39 金属層
40 バンプ
48,58 カバー
50 孔
52 ガスセンサ
53 蓋
54 側壁
55 開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップの一面に感ガス部を有する絶縁膜が設けられ、前記感ガス部の裏面で半導体チップにキャビティが設けられたガスセンサにおいて、
前記半導体チップは、前記一面から反対面へと貫通し前記感ガス部に電気的に接続される導電性のビアと、前記反対面に設けられかつ前記ビアに接続される配線、とを備え、
かつ前記感ガス部が半導体チップに固着された通気性のカバーで覆われていることを特徴とする、ガスセンサ。
【請求項2】
前記カバーはセラミックまたはガラスから成り、かつ半導体チップへ至るカバー内の通気路にガスフィルタが設けられていることを特徴とする、請求項1のガスセンサ。
【請求項3】
前記感ガス部から見て反対側の位置で、前記カバーに前記ガスフィルタを収容する凹部が設けられていることを特徴とする、請求項2のガスセンサ。
【請求項4】
前記凹部を覆い孔がある金属のリッドが前記カバーに固着されていることを特徴とする、請求項3のガスセンサ。
【請求項5】
前記カバーは前記凹部を覆う蓋を備えていることを特徴とする、請求項3のガスセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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