説明

ガスタービンとその製造方法

【課題】圧縮空気を生成する圧縮機と、前記圧縮機からの圧縮空気とともに燃料を燃焼して燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器からの燃焼ガスにより回転駆動するタービンとを備えたガスタービンにおいて、金型設計工数の低減、溶接工数の低減、及び分割工数の低減を図ることができる燃焼器部品を有するガスタービンを提供する。
【解決手段】燃焼器部品の内側表面形状をオフセットさせた表面を有するマンドレル102と、燃焼器部品の外側表面形状をオフセットさせた表面を有する外型103a、103bを同心にて配置した1組の金型の隙間に、板材を円弧状に丸めた素材101bを、前記金型の軸方向にプッシャ104で押込んで製造するトランジションピース101dを備えたガスタービン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気を圧縮して圧縮空気を作る圧縮機、圧縮空気に燃料を投入して燃焼させ、高温・高圧の燃焼ガスを生み出す燃焼器と、燃焼ガスをタービン翼で受けて回転するタービンで構成されるガスタービンにおいて、製造工数低減とコスト低減を実現するための前記ガスタービンを構成する燃焼器部品とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスタービンの燃焼器を構成する内筒のトランジションピースと外筒のフロースリーブのうち、内筒のトランジションピース20は、図9に示すように、上下分割構造であり、出口18の断面形状の短辺の分割線14,15を有するような背側11と腹側12のそれぞれをプレス成形した後前記背側11及び腹側12を、端部14、15を合せるように組み合わせて、図10に示すように、該分割線14,15の位置を溶接線13により一体構造化して、燃焼器部品20を製作し、トランジションピースがフロースリーブ内に配置された構造の燃焼器を形成している。
【0003】
このように従来の燃焼器部品20は形状が全く異なる背側11と腹側12をそれぞれプレス成形したものであり、該背側11と該腹側12に応じた金型設計が必要であり、溶接線13も三次元ラインとなっている。
【0004】
従来例の燃焼器部品20の断面周長は各断面で一定ではないため、溶接線が三次元形状となる。このため、組合せの工数が大きくなり、また、溶接線が三次元なため、自動化が困難であり、溶接工数も増大し、さらには、組合せ後の形状精度が悪いために修正工数が必要となり、製造コスト製造リードタイムが大きくなる。
【0005】
さらに、背側と腹側は形状が全く異なるため、それぞれの金型設計に多大なる時間を要す。また、溶接の自動化を図るために、前記背側と腹側の溶接線を直線にして、自由度を1つ拘束した構造もみられるが、前記背側あるいは腹側のプレス成形において、局所的な減肉や端部にしわが発生するという不良現象が発生したり、プレス成形後に組合せ部の端部をそろえる追加工が必要となり、製造工数増加が生じていた。
【0006】
また、さらに、外筒であるフロースリーブは、背側と腹側を溶接して一体化した後に、稜線で再度左右に分割して開閉可能とする構造となっている。
【0007】
そこで、分割位置を背側と腹側でなく、左側と右側にすることで稜線に対して面対称構造として、金型設計工数の低減を図ると同時に、溶接線の自由度を1つ拘束することで自動化の実現を可能とすることが望ましい。
【0008】
特許文献1には、上記に説明した従来例の燃焼器部品が開示されており、特許文献2には、車体パネルの製造方法が開示されており、特許文献3には、ガスタービン燃焼器の尾筒外筒を複数個に分割し、外筒分割片を固定部材と結合部材で一体化する技術が開示され、特許文献4には、対称形のものを溶接して異形断面をもつ多角形環状体部品を形成する技術が開示されている。特許文献5には、湾曲成形後のパイプをこの湾曲成形後のパイプと同一半径・同一曲率半径を有する湾曲円柱状のノックアウトパンチで押し出すようにしたことが開示されている。特許文献6には、一枚の金属板からその両側縁が上面側の中央部で突き合わされるように折り曲げて形成し、前記金属板の突合せ部分を上面の中央部で長さ方向に沿う一本の溶接線で接続した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許公開2002/0073788号
【特許文献2】特開2002−102979号公報
【特許文献3】特開2004−245460号公報
【特許文献4】特開2004−202544号公報
【特許文献5】特公平6−71630号公報
【特許文献6】実用新案登録第3137973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、前記ガスタービンを構成するトランジションピース及びフロースリーブの構造は単純に略真円の入口断面形状を押出して略矩形の出口断面形状にしたものではなく、入口断面形状の中心と出口断面形状の中心は一致しておらず、さらに背側部分は稜線を有しており、かつ該稜線に沿った各断面の周長が一定ではない。そのため、通常の雄型及び雌型を用いて、素板をプレス成形しようとした場合は、雄型と雌型が干渉してしまい、成形が成り立たないという課題がある。
【0011】
また、前記干渉を避ける方法として、可動金型が考えられる。該可動金型としては、アンダーカットを形成するためにプレス方向とは90°異なる横方向に油圧シリンダを配置して、プレス機の主油圧シリンダによる成形後に成形端部を内側に曲げ成形する1プレス2工程成形があるが、加圧軸(油圧シリンダ)を縦、横それぞれに配置する必要があり、成形設備として大形化してしまう。
【0012】
前記特許文献5のパイプ曲げ加工法では、パイプ横断面の寸法や形状を変化させることができない。このようなパイプの曲げ加工法では、例えば、部分的にパイプの直径を大きくさせたり、細くさせたりすることができない。また、このようなパイプの曲げ加工法では、例えば、部分的に断面形状を丸形状から四角形状へ加工することができない。
【0013】
前記特許文献6のガスタービンのトランジションピースでは、金型を用いたプレス加工により折り曲げて成形しているため、生産効率が悪いという課題がある。具体的には、複数回のプレス加工が必要であるとともに、複雑な三次元曲面を成形するために、プレス成形時にしわが発生し、形状を修正する作業が必要である。
【0014】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ガスタービン部品において、金型設計工数を低減し、溶接工数並びにフロースリーブの分割工数を低減することで製造リードタイム並びに製造コスト低減を実現できるガスタービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明のガスタービンは、燃焼器を構成する内筒のトランジションピースと外筒のフロースリーブのうち、内筒のトランジションピースの入口断面形状が略真円であり、その反対側の出口断面形状は長辺が円弧で短辺が直線の略矩形形状であり、該トランジションピースの稜線及び該稜線の180°部にそれぞれ溶接線を有し、かつ該溶接線を境に面対称形状の2部品で構成されていることを特徴とする。
【0016】
さらに、前記トランジションピースの入口断面形状が略真円であり、その反対側の出口断面形状は長辺が円弧で短辺が直線の略矩形形状であり、該記トランジションピースを稜線及び該稜線の180°部を対称面として、面対称形状の2部品をプレス成形でそれぞれ製造した後、前記稜線及び該稜線の180°部で溶接して製造することを特徴とする。
【0017】
また、前記トランジションピースを稜線及び該稜線の180°部を対称面として、面対称形状の2部品を内面部をパンチで、外面部をダイにより板材をプレス成形し、前記ダイが前記パンチの下降に伴い幅方向へ移動して、形状転写して製造することを特徴とする。
【0018】
またさらに、前記トランジションピースを稜線及び該稜線の180°部を対称面として、面対称形状の2部品を内面部をパンチで、外面部をダイにより板材をプレス成形し、前記パンチが下降に伴い幅方向へ広がり、形状転写して製造することを特徴とする。
【0019】
またさらに、パンチ先端部に弾性体を取り付け、パンチに荷重を負荷することで該弾性体に変形を与えて、板材をダイに転写して製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、燃焼器の主要部品であるトランジションピースの稜線及び該稜線の180°部にそれぞれ溶接線を有し、かつ該溶接線を境に面対称形状の2部品で構成されており、該稜線及び該稜線の180°部を対称面として、面対称形状の2部品をプレス成形でそれぞれ製造した後、前記稜線及び該稜線の180°部で溶接することで、金型設計工数の低減、溶接工数の低減、並びにフロースリーブの分割工数低減を図ることで、製造時間短縮と製造コストの低減を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明の実施例1の稜線を対称面として分割した状態の燃焼器部品である。
【図2】図2は本発明の実施例1の稜線を対称面として組み合わせて溶接した燃焼器部品である。
【図3】図3は本発明の燃焼器部品を適用するガスタービンの概要図である。
【図4】図4は本発明の燃焼器部品を適用するガスタービンの燃焼器部分の拡大図である。
【図5】図5は本発明の実施例2の稜線を対称面として分割した燃焼器部品のプレス成形品である。
【図6】図6は稜線を対称面として分割した燃焼器部品のプレス成形金型(成形不可)の参考例である。
【図7】図7は本発明の実施例3の稜線を対称面として分割した燃焼器部品のプレス成形金型(可動金型)である。
【図8】図8は本発明の実施例3の可動金型構造の断面図である。
【図9】図9は従来例の水平分割した状態の背側並びに腹側の燃焼器部品である。
【図10】図10は従来例の水平分割した状態の背側並びに腹側の燃焼器部品を組み合わせて溶接した燃焼器部品である。
【図11】図11は生産効率の高いガスタービン燃焼器部品の製造方法とその流れの例であり、(a)は素板から素材1aを切り抜く工程、(b)は素材101aを円弧状に丸めた素材101bに加工する工程、(c)は円弧状に丸めた素材101bを外型103a、103bおよびマンドレル102の間にプッシャ104で押込み、押込み加工中の素材101cを経て三次元複雑形状に加工された素材101dを加工する工程、(d)は三次元複雑形状に加工された素材101dから外型103a、103bおよびマンドレル102を取り外す工程、(e)は三次元複雑形状に加工された素材101dの周方向端面111を接続し、管状の三次元複雑形状に加工された素材101eを加工する工程の例である。
【図12】図12は素板から切り抜いた素材101aの形状の例である。
【図13】図13は素材101aを円弧状に丸める加工の例であり、(a)は3つのローラ、(b)は4つのローラ、(c)は2つのローラを用いた例である。
【図14】図14は円弧状に丸めた素材101bの形状の例であり、(a)は周方向端面111同士が向かい合った状態、(b)は周方向端面111近傍が長手方向全体にわたって半径方向に重なった状態、(c)は周方向端面111近傍が長手方向の一部分で半径方向に重なった状態の例である。
【図15】図15は円弧状に丸めた素材101bを外型103a、103b、103c、103dおよびマンドレル102、102bの間にプッシャ104で押込み、押込み加工中の素材101cを経て三次元複雑形状に加工された素材101dを加工する工程の例である。
【図16】図16は図15記載の断面Aの例である。
【図17】図17は図15記載の断面Bの例である。
【図18】図18はマンドレル2の構造の例であり、(a)はマンドレル102全体を表す斜視図、(b)はマンドレル102の長手方向断面、(c)は(b)記載の断面Cの例である。
【図19】図19は三次元複雑形状に加工された素材101dの周方向端面111を接続し、管状の三次元複雑形状に加工された素材101eを加工する例である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係るガスタービンの実施の形態を図に基づいて説明する。
【0023】
図3は本発明の燃焼器部品を適用するガスタービンの概要図である。図3において、吸気37により空気を取り込み、圧縮機32により、前記空気を圧縮して圧縮空気を作る。前記圧縮空気に燃焼器31により燃料を投入して燃焼させて高温、高圧の燃焼ガスを生み出す。前記燃焼ガスをタービン30のタービン翼で受けて軸を回転させ、ガスは排気36される。前記軸の回転を減速機34、起動装置35を介して、発電機38を稼働させる。
【0024】
図4は本発明の燃焼器部品を適用するガスタービンの燃焼器部分の拡大図である。図4において、予混合燃焼ノズル46、予混合器45、拡散燃焼ノズル44により、圧縮空気に燃料を投入して、燃焼器ライナ43にて高温高圧の燃焼ガスを生み出し、トランジションピース41にて前記燃焼ガスをタービン30へ送り込む。前記燃焼器ライナ43及びトランジションピース41はフロースリーブ42に包まれる構造となっている。前記燃焼器31は圧縮機32並びにタービン30の軸の周方向に対して複数個配置される。
【0025】
したがって、トランジションピース41及びフロースリーブ42のタービン側断面形状は略矩形であるが、複数個配置したときに円弧に倣うように、前記矩形の長辺は曲率を有しており、軸から遠い方の辺は曲率半径が大きくなる。また、短辺もお互いが並行ではなく、軸に対して放射状をなすように、傾きを有している。
【0026】
従来のトランジションピース41並びにフロースリーブ42は、図2に示すように上下分割構造であり、背側11と腹側12をそれぞれプレス成形により成形した後、前記背側11及び腹側12を、端部14、15を合せるように組み合わせて、図4に示すように溶接線13により一体構造化して、燃焼器部品20を製作し、トランジションピース41並びにフロースリーブ42としている。
【0027】
このように従来の燃焼器部品20は形状が全く異なる背側11と腹側12をそれぞれプレス成形したものであり、該背側11と該腹側12に応じた金型設計が必要であり、溶接線13も三次元ラインとなっている。
【実施例1】
【0028】
図1及び図2に、本発明の実施例1の稜線分割構造の概要を示す。従来の燃焼器部品20とは分割位置が90°位相した構造であり、稜線を対称面として、稜線対称半割成形品(右側)1と前記稜線対称半割成形品(右側)と対になる稜線対称半割成形品(左側)2をそれぞれプレス成形により成形した後、前記稜線対称半割成形品(右側)1及び前記稜線対称半割成形品(右側)と対になる稜線対称半割成形品(左側)2を端部4、5を合せるように組み合わせて、図2に示すように溶接線3により一体構造化して、燃焼器部品10を製作し、トランジションピース10としている。
【0029】
このように本発明の燃焼器のトランジションピース10では、稜線対称半割成形品(右側)1と前記稜線対称半割成形品(右側)と対になる稜線対称半割成形品(左側)2が形状としては同じであるため、金型設計は1つでよく、また、稜線に対して対称なため、溶接線3は高さ方向さえ制御できればよいので、自動化も容易である。
【実施例2】
【0030】
図5に稜線対称半割成形品(右側)1と対になる稜線対称半割成形品(左側)2のプレス成形品を示す。このように入口(燃焼器)側形状9は略半円であるが、出口(タービン)側8は略角形状であるが、ほぼ曲げ変形により成形可能であるため、素材形状、寸法を適正化することで、組合せ端部4、5の精度を確保する。
【0031】
また、ここでは、稜線対称半割成形品(右側)1と対になる稜線対称半割成形品(左側)2を示しているが、稜線対称半割成形品(右側)1も同様である。
【0032】
図6に従来の雄型と雌型を用いて前記稜線対称半割成形品(右側)1と対になる稜線対称半割成形品(左側)2をプレス成形するときの金型構造の参考例を示す。
【0033】
図6において、雄型51と雌型55に素板50を転写させて成形するものであるが、入口(燃焼器)側形状54及び59は略半円であり、問題はないが、出口(タービン)側形状52及び58は、図中60の箇所で雄型51と雌型55が干渉してしまい、成形不可である。
【実施例3】
【0034】
図7に稜線対称半割成形品(右側)1と対になる稜線対称半割成形品(左側)2をプレス成形時の可動金型の概要を示す。雌型を分割線73に対して、左雌型71と右雌型72に分割する。プレス成形初期は、左雌型71と右雌型72を離しておき、雄型チ51の下降にともない、左雌型71と右雌型72を幅方向に移動させて、最終的な成形終了時点では、図6の雌型55と同じにする。
【0035】
図8に稜線対称半割成形品(右側)1と対になる稜線対称半割成形品(左側)2をプレス成形における可動タイプの雄型及び雌型を用いたプレス金型構想断面図を示す。
【0036】
成形品80は燃焼器部品の出口(タービン)側断面形状を模擬している。雄型はスライド取り付け金型81に対して、テーパ雄型85が直接取り付き、上型バネを介して可動右雄型82と可動左雄型83が取り付く。
【0037】
該可動右雄型82と該可動左雄型83は、テーパ雄型85と接する面がテーパ状になっており、該テーパの対面は成形品80の内面形状と同じである。前記テーパ雄型85と前記可動右雄型82と前記可動左雄型83のテーパ部により、スライド面下降により前記可動右雄型82と前記可動左雄型83が幅方向に広がる機構となる。
【0038】
一方、雌型は、ボルスタ取り付け金型91に対して、テーパ左雌型95とテーパ右雌型96が固定されている。また、下型バネ94を介して、可動右雌型92と可動左雌型93が取り付く。該可動右雌型92と該可動左雌型93は、前記テーパ左雌型95と前記テーパ右雌型96のテーパ部と接する面がテーパ状になっており、該テーパの対面は成形品80の外面形状と同じである。
【0039】
プレススライド面の下降にともない、前記テーパ左雌型95と前記テーパ右雌型96のテーパ部により、前記テーパ左雌型95と前記テーパ右雌型96幅方向に狭ばる機構となる。これにより、プレス成形にともない、燃焼器部品の出口(タービン)側断面形状を成形する。また、上型バネ84、下型バネ94並びに各金型のテーパ構造により、プレススライド上昇にともない、容易に成形品80を取り出すことができる。
【0040】
このほかに、図8における上型バネを介して可動右雄型82と可動左雄型83の代わりに弾性体(ゴムなど)を用いることで、プレス下降にともない、該弾性体を圧縮変形させ、成形品80の内面から前記テーパ左雌型95と前記テーパ右雌型96の形状に転写することができる。
【実施例4】
【0041】
本実施例では、生産効率の高いガスタービンの燃焼器部品の製造方法の例を説明する。
【0042】
図11は、生産効率の高いガスタービン燃焼器部品の製造方法とその流れの例である。素板から素材101aを切り抜く工程(図11(a))と、素材101aを円弧状に丸めた素材101bに加工する工程(図11(b))と、円弧状に丸めた素材101bを外型103a、103bおよびマンドレル102の間にプッシャ104で押込み、押込み加工中の素材101cを経て三次元複雑形状に加工された素材101dを加工する工程(図101(c))と、三次元複雑形状に加工された素材101dから外型103a、103bおよびマンドレル102を取り外す工程(図11(d))と、三次元複雑形状に加工された素材101dの周方向端面111を接続し、管状の三次元複雑形状に加工された素材101eを加工する工程(図11(e))、からなる。
【0043】
図12は、素板から切り抜いた素材101aの形状の例である。本図では長手方向端面112を直線とし、周方向端面111を曲線としているが、長手方向端面112が曲線で構成されても、周方向端面111が直線で構成されても構わない。三次元複雑形状に加工された素材101dにおいて、周方向端面111近傍で半径方向に重なる場合、管状の三次元複雑形状に加工する工程の前に、三次元複雑形状に加工された素材101dの端面111を切断し、周方向端面111同士が向かい合い、ほぼ一致するようにする加工を行う。また、周方向端面111同士が向かい合い、ほぼ一致するような素材101aの形状とすることによって、三次元複雑形状に加工された素材101dの端面111を切断する工程を省略することができるとともに、材料の歩留まりを向上させることができる。
【0044】
素板の材質は耐熱合金で、例えば、ステンレス鋼、ニッケル基合金、コバルト基合金、からなる。素板から素材101aを切り抜く工程では、例えば、せん断加工、ワイヤーカット、レーザ切断、ウォータージェット、あるいは機械加工などによって所望の形状に切抜く。
【0045】
図13は、素材101aを円弧状に丸める加工の例である。上ローラ122と下ローラ123は各ローラ122、123の中心に対して回転自在であり、上ローラ122と下ローラ123は紙面上下方向に相対的に移動自在である。上ローラ122あるいは下ローラ123の少なくとも1つのローラを強制的に回転させて素材101aを周方向に送るとともに、上ローラ122と下ローラ123の相対的な位置を紙面上下方向に縮めることで素材101aに曲げモーメントを付与し、連続的に素材101aを円弧状に加工する。ローラの構成は、例えば、上ローラ122が1つで下ローラ123が2つの合計3つ(図13(a))であったり、上ローラが1つで下ローラ123が2つと押さえローラ124が1つの合計4つ(図13(b))であったり、上ローラが1つで下ローラ123が1つの合計2つ(図13(c))であったりする。ただし、上ローラが1つで下ローラが123が1つの合計2つのローラで加工する場合、下ローラ123の表面は例えばゴムなどの弾性体として、曲げモーメントを付与する必要がある。
【0046】
図14は、円弧状に丸めた素材101bの形状の例である。円弧状に丸めた素材101bの形状は、周方向端面111同士が向かい合った状態(図14(a))であっても、周方向端面111近傍が長手方向全体にわたって半径方向に重なった状態(図14(b))であっても、周方向端面111近傍が長手方向の一部分で半径方向に重なった状態(図14(c))などであっても良い。
【0047】
図15は、円弧状に丸めた素材101bを外型103a、103b、103c、103dおよびマンドレル102、102bの間にプッシャ104で押込み、押込み加工中の素材101cを経て三次元複雑形状に加工された素材101dを加工する工程の例である。例えば、押込み加工中の素材101cの半径方向の変形量が大きかったり、外型103a、103bとマンドレル102の間のクリアランスが小さかったりして、プッシャ104によって押込む力が大きい場合、押込み加工中の素材101cの未成形部を外型103c、103dおよびマンドレル102bで拘束することにより、押込み加工中の素材101cの座屈を防ぐことができる。外型103aと外型103c、外型103bと外型103d、マンドレル102とマンドレル102b、がそれぞれ長手方向に2分割されているが、必ずしも2分割でなくても良く、それぞれ長手方向に一体であったり、長手方向に3分割以上であったりしても良い。
【0048】
一方、三次元複雑形状に加工された素材101dが比較的単純な場合は、図11(c)に示すように、外型103c、103dの長手方向長さを短くすることができ、金型の使用材料の低減を図ることができる。また、プッシャ104における円弧状に丸めた素材101bの長手方向端面112と接する位置において、円弧状に丸めた素材101bの形状に対応させた溝125をつけておくことにより、円弧状に丸めた素材101bの端部の剛性を増加させ、座屈の発生を低減させることができる。
【0049】
図16は、図15記載の断面Aの例である。プッシャ104の横断面形状を例えば、図16に示すように、部分的な半径方向の厚さ増加部121を設けることにより断面2次モーメント大きくし、プッシャ104aの座屈を防ぐことができる。なお、部分的な半径方向の厚さ増加部121の形状と数は任意で良いが、外型103c、103dに部分的な半径方向の厚さ増加部121の形状と数に対応した溝125を設ける必要がある。外型103c、103dを紙面上下方向に2分割されているが、必ずしも2分割でなくても良く、3分割以上であっても良い。
【0050】
図17は、図15記載の断面Bの例である。押込み加工中の素材101cの端面111の近傍となる外型103bの一部にニゲ126を設けることで、三次元複雑形状に加工された素材101dの板厚変化を抑えることができる。ここで、ニゲ126とは素材101bの重なりによる変形を抑制するための逃げ部を意味する。図17では、その紙面に垂直な方向に設けられた台形状の溝であり、その形状に限定されるものではない。円弧状に丸めた素材101bの端面111がつながっている状態、つまり、円筒状の素管を用いた場合では、三次元複雑形状に加工された素材101dの形状に依存して周長が長手方向で変わるため、それに応じて板厚も変化する。使用用途を考えると、板厚が増加する方向は安全側であるため問題とならないが、板厚が減少する方向はできるだけ小さくしたいという課題がある。
【0051】
円弧状に丸めた素材101bの端面111がつながっていないことによって、周方向に張力が発生せず、板厚の減少を抑制できる。板厚の減少率は10%以下が望ましい。押込み加工中の素材101cの押込み先端側の長手方向端面112の周長が、押込みに従い短くなる場合、周長の減少に応じて板厚が増加するため外型103bの一部にニゲ126を設けることは不要である。
【0052】
しかし、押込み加工中の素材101cの押込み先端側の長手方向端面112の周長が、押込みに従い部分的にでも長くなる場合、外型103bの一部にニゲ126を設けていないと、周方向に張力が作用しないため、短くなった周長のままであり、部分的に隙間が生じてしまう。外型103bの一部にニゲ126を設け、周方向の圧縮を抑制することで、部分的な隙間の発生を抑制することができる。また、周方向圧縮力を低減させることによりプッシャ104によって押込む力を小さくすることができ、押込み加工中の素材101cの座屈を抑制することができる。
【0053】
図15では、外型103bにニゲ126を設けているが、外型103aにニゲ126を設けても良く、あるいは、マンドレル102にニゲ126を設けても良く、ニゲ126の位置は、外型103a、103bあるいはマンドレル102の周方向任意の位置で良い。
【0054】
外型103a、103bについては、三次元複雑形状に加工された素材101dを取り外すため、横断面において少なくとも2分割とする必要がある。さらに、2分割とする場合、三次元複雑形状に加工された素材101dの形状によっては、任意の分割位置では、三次元複雑形状に加工された素材101dの形状が引っかかり、外型103a、103bを外すことができないため、三次元複雑形状に加工された素材101dの横断面最大幅の部分を長手方向につないだ線で分割する必要がある。なお、マンドレル102の分割構造については後述する。
【0055】
図18は、マンドレル102の構造の例である。三次元複雑形状に加工された素材101dの形状によっては、三次元複雑形状に加工された素材101dとマンドレル102が幾何学的に干渉し、一体構造のままのマンドレル102を引き抜くことはできない。
【0056】
そこで、例えば図18に示すように、マンドレル102を中空構造とし、周方向に4分割したマンドレル周方向構成部材102e、102f、102g、102hをマンドレル保持部材102c、102dで締結した状態で三次元複雑形状に加工し、その後、マンドレル周方向構成部材102e、102f、102g、102hとマンドレル保持部材102c、102dとの締結状態を解除し、マンドレル保持部材102c、102dの少なくとも一方を取り外し、マンドレル周方向構成部材102eを外した後マンドレル周方向構成部材102hを外すか、マンドレル周方向構成部材102hを外した後マンドレル周方向構成部材102eを外すかし、マンドレル周方向構成部材102f、102gを外すことで、マンドレル102を引き抜くことができる。
【0057】
マンドレル周方向構成部材102e、102f、102g、102hとマンドレル保持部材102c、102dの締結は、例えば、ボルト締結などの着脱容易な締結が望ましい。マンドレルを中空構造にすることにより、使用素材量の低減と、マンドレルの重量を軽くすることによる作業性の向上を図ることができる。
【0058】
また、図15では、マンドレル周方向構成部材102e、102hの幅を長手方向に一様としているが、幅を徐々に広くあるいは狭くしてもよい。このことにより、マンドレル周方向構成部材102e、102hとマンドレル周方向構成部材102f、102g間の面圧が高い場合でも、マンドレル周方向構成部材102e、102hの長手方向への引き抜きが容易となる。
【0059】
図19は、三次元複雑形状に加工された素材101dの周方向端面111を接続し、管状の三次元複雑形状に加工された素材101eを加工する例である。三次元複雑形状に加工された素材101dの周方向端面111同士をつき合わせた状態で接続する。接続する方法としては、例えば、レーザ溶接、アーク溶接、ガス溶接、抵抗溶接、摩擦攪拌接合などがある。
【0060】
接合線111bの位置は、必ずしも図19に示す位置でなくて良く、接合の容易な位置、例えば、長手断面の凹凸の少ない位置とするのが良い。また、接合線111bは接合の容易な位置であれば、必ずしも長手方向に直線でなくても良く、らせん状のような曲線であっても良い。
【0061】
接合線111bの位置は、素材101aの形状や、円弧状に丸めた素材101bを外型103a、103b、103c、103dおよびマンドレル102、102bの間にプッシャ104で押込む際の周方向端面111の周方向の位置を変えることで、任意に設定することができる。
【0062】
本発明は、断面形状がオーバーハングしているような構造に対して、プレス加工を可能として、製造リードタイム短縮を実現できる。
【0063】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 稜線対称半割成形品(右側)
2 稜線対称半割成形品(左側)
3 溶接線
4 稜線と180°反対部の端部
5 稜線端部
8 入口(燃焼器側)端部
9 出口(タービン側)端部
10 稜線分割形トランジションピース
20 上下分割形トランジションピース
30 タービン
31 燃焼器
32 圧縮機
34 減速機
35 起動装置
36 排気
37 吸気
38 発電機
41 トランジションピース
42 フロースリーブ
43 燃焼器ライナ
44 拡散燃焼ノズル
45 予混合器
46 予混合燃焼ノズル
50 素板
51 雄型
52 出口(タービン)側形状
54 入口(燃焼器)側形状
55 雌型
58 出口(タービン)側形状
59 入口(燃焼器)側形状
60 干渉箇所
71 左雌型
72 右雌型
73 分割線
80 成形品
81 スライド取り付け金型
82 可動右雄型
83 可動左雄型
85 テーパ雄型
91 ボルスタ取り付け金型
92 可動右雌型
93 可動左雌型
94 下型バネ
95 テーパ左雌型
96 テーパ右雌型
101a 素材
101b 円弧状に丸めた素材
101c 押込み加工中の素材
101d 三次元複雑形状に加工された素材
101e 管状の三次元複雑形状に加工された素材
102、102b マンドレル
102c、102d マンドレル保持部材
102e、102f、102g、102h マンドレル周方向構成部材
103a、103b、103c、103d 外型
104 プッシャ
111 周方向端面
111b 接合線
112 長手方向端面
121 部分的な半径方向の厚さ増加部
122 上ローラ
123 下ローラ
124 押さえローラ
125 溝
126 ニゲ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気を生成する圧縮機と、前記圧縮機からの圧縮空気とともに燃料を燃焼して燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器からの燃焼ガスにより回転駆動するタービンとを備えたガスタービンにおいて、前記ガスタービンの燃焼器を構成する内筒のトランジションピースと外筒のフロースリーブのうち、内筒のトランジションピースの入口断面形状が略真円であり、その反対側の出口断面形状は長辺が円弧で短辺が直線の略矩形形状であり、該燃焼器の稜線及び該稜線の180°部にそれぞれ溶接線を有し、かつ該溶接線を境に面対称形状の2部品で構成されているトランジションピースを備えたことを特徴とするガスタービン。
【請求項2】
圧縮空気を生成する圧縮機と、前記圧縮機からの圧縮空気とともに燃料を燃焼して燃焼ガスを生成する燃焼器と、前記燃焼器からの燃焼ガスにより回転駆動するタービンとを備えたガスタービンにおいて、前記燃焼器からの燃焼ガスにより回転駆動するタービンとを備えたガスタービンにおいて、前記ガスタービンの燃焼器を構成する内筒のトランジションピースと外筒のフロースリーブのうち、内筒のトランジションピースの入口断面形状が略真円であり、その反対側の出口断面形状は長辺が円弧で短辺が直線の略矩形形状であり、該記燃焼器を構成するトランジションピース並びにフロースリーブを稜線及び該稜線の180°部を対称面として、面対称形状の2部品をプレス成形でそれぞれ製造した後、前記稜線及び該稜線の180°部で溶接することを特徴とするガスタービンの製造方法。
【請求項3】
請求項2記載のガスタービンの製造方法において、前記燃焼器を構成するトランジションピースを稜線及び該稜線の180°部を対称面として、面対称形状の2部品を内面部をパンチで、外面部をダイにより板材をプレス成形し、前記ダイが前記パンチの下降に伴い幅方向へ移動して、形状転写することを特徴とするガスタービンの製造方法。
【請求項4】
請求項2記載のガスタービンの製造方法において、前記燃焼器を構成するトランジションピースを稜線及び該稜線の180°部を対称面として、面対称形状の2部品を内面部をパンチで、外面部をダイにより板材をプレス成形し、前記パンチが下降に伴い幅方向へ広がり、形状転写することを特徴とするガスタービンの製造方法。
【請求項5】
請求項4記載のガスタービンの製造方法において、パンチ先端部に弾性体を取り付け、パンチに荷重を負荷することで該弾性体に変形を与えて、板材をダイに転写させることを特徴とするガスタービンの製造方法。
【請求項6】
ガスタービンの製造方法であって、燃焼器部品の内側表面形状をオフセットさせた表面を有するマンドレルと、前記燃焼器部品の外側表面形状をオフセットさせた表面を有する外型を同心にて配置した1組の金型の隙間に、板材を円弧状に丸めた素材を前記金型の軸方向に押込むことを特徴とするガスタービンの製造方法。
【請求項7】
請求項6記載のガスタービンの製造方法において、素板から素材を切り抜く工程と、前記素材を前記円弧状に丸めた素材に加工する工程と、前記円弧状に丸めた素材を前記外型および前記マンドレルの間にプッシャで押込み、押込み加工中の素材を経て三次元複雑形状に加工された素材を加工する工程と、前記三次元複雑形状に加工された素材から前記外型および前記マンドレルを取り外す工程と、前記三次元複雑形状に加工された素材の周方向端面を接続し、管状の三次元複雑形状に加工された素材を加工する工程からなることを特徴とするガスタービンの製造方法。
【請求項8】
請求項6記載のガスタービンの製造方法において、前記込み加工中の素材の未成形部を前記外型および前記マンドレルで拘束することを特徴とするガスタービンの製造方法。
【請求項9】
請求項6記載のガスタービンの製造方法において、部分的な半径方向の厚さ増加部を有するプッシャを用いることを特徴とするガスタービンの製造方法。
【請求項10】
請求項6記載のガスタービンの製造方法において、前記外型あるいは前記マンドレルの少なくとも一方の、周方向の任意の位置にニゲを設けることを特徴とするガスタービンの製造方法。
【請求項11】
請求項6記載のガスタービンの製造方法において、前記円弧状に丸めた素材を前記外型および前記マンドレルの間に前記プッシャで押込み、前記押込み加工中の素材を経て前記三次元複雑形状に加工された素材を加工する工程では、前記マンドレルが一体構造であり、前記三次元複雑形状に加工された素材から前記外型および前記マンドレルを取り外す工程では、前記マンドレルを分割した状態で前記マンドレルを取り出すことを特徴とするガスタービンの製造方法。
【請求項12】
請求項11記載のガスタービンの製造方法において、前記マンドレルが中空構造で、周方向に少なくとも4分割されたマンドレル周方向構成部材が、マンドレル保持部材により締結され、締結状態を解除することにより分割可能であることを特徴とするガスタービンの製造方法。
【請求項13】
接合線が1本であり、最大板厚減少率が10%以下であるガスタービン燃焼器部品備えていることを特徴とするガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−242115(P2011−242115A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250416(P2010−250416)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】