説明

ガスタービンエンジン用のセラミック複合材料製エアフォイル及びベーン並びにセラミック複合材料製エアフォイル形成方法

【課題】ガスタービンエンジン用セラミック複合材料製エアフォイルを提供する。
【解決手段】セラミック複合材料からなるCMCエアフォイル66は、前縁70と後縁72の間に画定されるエアフォイル部68と、エアフォイル部68の各側に内側及び外側プラットフォームセグメント78,80への移行部をもたらすフィレット74,76と、を有する。CMCエアフォイル66の製造に用いられるCMC層88がI字形の繊維構造を形成し、正圧側82、負圧側84及びプラットフォームセグメント78,80が連続的かつ一体的に形成される。CMC層88の第1の部分は、エアフォイル部68、正圧側82及び負圧側84を画定し、CMC層88の横断部分はプラットフォームセクション78,80を画定する。プラットフォームセクション78,80は、隣接するプラットフォームセグメントに対して相補的な形状をもたらす山形をなす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスタービンエンジンに関し、特にセラミック複合材料(CMC:Ceramic Matrix Composites)からなるガスタービンエンジンの構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンのタービンセクションは、複数のエアフォイルを含み、該エアフォイルは、著しく酸化状態にあるガス流環境において高温下で作動するものであり、通常、高温超合金から製造される。セラミック複合材料(以下、単にCMCともいう)は、金属合金に比べて耐熱性がより高く、強度重量比が高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、セラミック複合材料には、主に繊維の配向が強度特性を決定するため特有の製造方法が要求される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の例示的な態様によると、ガスタービンエンジン用セラミック複合材料(CMC)製エアフォイルは、連続的なI字形状の繊維構造を含み、負圧側、外側プラットフォーム、正圧側及び内側プラットフォームを画定する、セラミック複合材料(CMC)からなる少なくとも1つのCMC層を備える。
【0005】
本発明の例示的な態様によると、ガスタービンエンジンのセラミック複合材料(CMC)製ベーンは、セラミック複合材料からなるCMC外側リングと、セラミック複合材料からなるCMC内側リングと、CMC外側リングとCMC内側リングとの間で一体化された、セラミック複合材料からなる複数のCMCエアフォイル部と、備え、各CMCエアフォイル部は、セラミック複合材料からなる少なくとも1つのCMC層から形成され、該CMC層は、連続的なI字形状の繊維構造を含み、負圧側、外側プラットフォーム、正圧側及び内側プラットフォームを画定する。
【0006】
本発明の例示的な態様によると、セラミック複合材料製エアフォイル形成方法は、負圧側、外側プラットフォーム、正圧側及び内側プラットフォームを画定するように、セラミック複合材料からなる少なくとも1つのCMC層を連続的なI字形状の繊維構造とすることを含む。
【0007】
以下に開示する例示的な実施例についての詳細な説明を参照することによって、当業者であれば本発明の種々の特徴を理解されるであろう。以下に記載する発明を実施するための形態に伴う図面について簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】ガスタービンエンジンの概略的な断面図。
【図2】ガスタービンエンジンの低圧タービンの拡大断面図。
【図3】低圧タービンセクションの例示的なロータディスクの拡大概略図。
【図4】低圧タービンセクションの例示的なステータベーンの拡大概略図。
【図5】CMCエアフォイルの概略図。
【図6】繊維構造を示すCMCエアフォイルの概略的な正面図。
【図7】繊維構造を示すCMCエアフォイルの概略的な斜視図。
【図8】内側及び外側リング内で接続されたCMCエアフォイルの拡大正面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1にガスタービンエンジン20を概略的に図示する。本明細書においては、二重スプールターボファンエンジンとしてガスタービンエンジン20を図示している。該エンジンは、ファンセクション22、圧縮セクション24、燃焼セクション26及びタービンセクション28を有する。別の実施例のエンジンは、他のシステムや特徴部に加えてオグメンタセクション(図示せず)を有する。ファンセクション22は、バイパス流路に沿って空気を送る。次いで、圧縮セクション24は、圧縮のためコア流路に沿って空気を送る。空気は燃焼セクション26を通過した後、タービンセクション28を通って膨張する。例示的な実施例ではターボガスタービンエンジンを例示しているが、本発明はターボガスタービンエンジンに限定されることなく、他の形式のタービンエンジンにも適用可能である。
【0010】
ガスタービンエンジン20は、通常、低速スプール30及び高速スプール32を有する。低速スプール30及び高速スプール32は、ベアリングシステム38を介してエンジンの固定構造体36に対してエンジンの長手方向の中心軸Aを中心に回転するように取付けられる。付加的に又は別の実施例として、種々のベアリングシステム38を種々の位置に設けてもよいことを理解されたい。
【0011】
低速スプール30は、通常、ファン42、低圧圧縮機44及び低圧タービン46を相互に接続する内側シャフト40を有する。内側シャフト40は、低速スプール30よりも低速でファン42を駆動させるようにギア付き構造体48を通してファン42に接続される。高速スプール32は、高圧圧縮機52及び高圧タービン54を相互に接続する外側シャフト50を有する。燃焼器56は、高圧圧縮機52と高圧タービン54との間に配される。内側シャフト40及び外側シャフト50は、同心をなし、各々の長手方向軸と同一線上にある長手方向の中心軸Aを中心に回転する。
【0012】
コア空気流は、低圧圧縮機44、次いで高圧圧縮機52により圧縮され、燃焼器56において燃料と混合されて燃焼され、高圧タービン54及び低圧タービン(LPT)46において膨張する。タービン54,46は、膨張により低速スプール30及び高速スプール32をそれぞれ回転駆動する。
【0013】
図2を参照すると、低圧タービン46は、通常、複数の低圧タービン段の列を含む低圧タービンケース60を有する。段(ステージ)は、ベーン64A,64Bと交互に配される複数のロータ構造体62A,62B,62Cを含む。各ロータ構造体62A,62B,62C及び各ベーン64A,64Bは、完全に環状のリング支柱リング構造(full hoop ring−strut ring construction)において(図3,4)、セラミック複合材料(CMC)からなるエアフォイル66を含む。本明細書において、「完全に環状」とは、中断されず連続した部材を意味し、該部材は該部材の開口をベーンが貫通しないような構成となっている。本明細書に開示する例示的な構成要素に用いられるセラミック複合材料は、例えば、S200及びSiC/SiCを含むが、これに限定されない。本明細書に開示する例示的な構成要素に用いられる金属超合金は、例えば、INCO718及びWaspaloyを含むが、これに限定されない。開示した実施例では、低圧タービンを図示しているが、本発明は低圧タービンに限定されず、高圧タービン、高圧圧縮機、低圧圧縮機、中圧タービン、又は三重スプール構造のガスタービンエンジンの中圧タービンなど他のセクションに適用され得る。
【0014】
図5を参照すると、完全に環状のリング支柱リング構造とともに利用し得るセラミック複合材料(CMC)からなるエアフォイル66(以下、CMCエアフォイルという)が図示されている。以下に基本的なエアフォイル66について説明するが、低圧タービン46内におけるロータエアフォイルつまりロータブレード及び静止エアフォイルつまりステータベーン(静翼)等についても以下に説明する製造方法を適用することができることを理解されたい。
【0015】
CMCエアフォイル66は、通常、前縁70と後縁72の間に画定されるエアフォイル部68を有する。エアフォイル部68は、通常、正圧側82を形成する凹形状部分と、負圧側84を形成する凸形状部分と、を有する。各CMCエアフォイル66は、エアフォイル部68の各側にプラットフォームセグメント78,80への移行部分をもたらすフィレット(隅肉)74,76を有する。プラットフォームセグメント78,80は、コアガス流路の内径及び外径を形成する。
【0016】
例示的な実施例におけるCMCエアフォイル66の製造においては、I字形状の繊維構造(図6,7に概略的に図示)を用いる。I字形状の繊維構造により、個々の繊維の結合性(integrity)が促進され、エアフォイル部68が内側及び外側プラットフォームセグメント78,80に対して強固に一体的に接続され得る。エアフォイル部68及びプラットフォームセグメントが連続的に形成されるため、「I」字形の構造により、CMC構造繊維を支持する内部応力に連続性がもたらされ、最大の強度重量比を実現する。種々のCMCの製造性を用いてもよいことを理解されたい。
【0017】
図6を参照すると、少なくとも1つのCMCからなる層(プライ)88(以下、CMC層という)がI字形に構成されて、I字形の繊維構造(図7)が形成され、正圧側82、プラットフォームセグメント78、負圧側84及びプラットフォームセグメント80が連続的に形成される。CMC層88の第1の部分は、エアフォイル部68を画定し、CMC層88の横断部分はプラットフォームセクション78,80を画定する。前記第1の部分は、エアフォイル部68の正圧側82及び負圧側84を画定する。前記第1の部分における最も内側のCMC層88は、中実又は中空のエアフォイル部68を形成するように、中心エアフォイル軸Bに直接的に隣接するか又は該軸Bから離間している。
【0018】
例示的な実施例において、プラットフォームセクション78,80は、内側及び外側コアガス流路(図3)を画定するように隣接するプラットフォームセグメントと当接する縁部の係合のため相補的な形状をもたらす山形(つまりV字形:chevron−shape)をなしている。すなわち、CMCエアフォイル66は、隣接するエアフォイルと相補的な関係で互いに組み付けられ、エアフォイルのリングを形成する。該エアフォイルのリングは、さらに、隣接する複数のプラットフォームセクション78,80の周囲に沿って、CMCからなるCMC外側リング100及びCMC内側リング102によってさらに覆われて、完全に環状となる。図7,8では図示していないが、エアフォイル等に適切なねじれ(ツイスト)等を施してもよいことを理解されたい。
【0019】
本発明の開示した製造方法により、連続的なI字形状に基づく1つまたは複数のエアフォイルを容易に製造することが可能となる。図6,7に示すように、「連続(的)」という用語は、強度を最大にする中断されず連続したCMC層を意味する。
【0020】
図面において同様の部品については同様の参照数字を付している。図示した実施例では、特定の配置について開示しているが、他の配置や構成であってもよいことを理解されたい。
【0021】
特定の手順について図示、開示しているが、当該手順については、他の順番であってもよいし、独立又は組み合わせてもよいことを理解されたい。
【0022】
上記の説明は例示的なものであって、限定的なものではない。当業者であれば、以下の特許請求の範囲の範囲から逸脱することなく、種々の変更や修正がなされることを理解されるであろう。
【符号の説明】
【0023】
30 低速スプール
32 高速スプール
38 ベアリングシステム
40 内側シャフト
42 ファン
44 低圧圧縮機
46 低圧タービン
48 ギア付き構造体
50 外側シャフト
52 高圧圧縮機
54 高圧タービン
56 燃焼器
60 低圧タービンケース
62A,62B,62C ロータ構造体
64A,64B ベーン
66 エアフォイル
68 エアフォイル部
70 前縁
72 後縁
78,80 プラットフォームセグメント
82 正圧側
84 負圧側
88 CMC層
100 CMC外側リング
102 CMC内側リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的なI字形状の繊維構造を含み、負圧側、外側プラットフォーム、正圧側及び内側プラットフォームを画定する、セラミック複合材料(CMC)からなる少なくとも1つのCMC層を備えることを特徴とするガスタービンエンジン用セラミック複合材料製エアフォイル。
【請求項2】
最も内側に位置するCMC層の少なくとも一部は、中空のエアフォイルを形成するように、負圧側及び正圧側を画定するエアフォイル部内において離間していることを特徴とする請求項1に記載のセラミック複合材料製エアフォイル。
【請求項3】
最も内側に位置するCMC層の少なくとも一部は、中実のエアフォイルを形成するように、負圧側及び正圧側を画定するエアフォイル部内において直接的に隣接していることを特徴とする請求項1に記載のセラミック複合材料製エアフォイル。
【請求項4】
外側プラットフォームは山形をなすことを特徴とする請求項1に記載のセラミック複合材料製エアフォイル。
【請求項5】
内側プラットフォームは山形をなすことを特徴とする請求項1に記載のセラミック複合材料製エアフォイル。
【請求項6】
外側プラットフォーム及び内側プラットフォームは山形をなすことを特徴とする請求項1に記載のセラミック複合材料製エアフォイル。
【請求項7】
ガスタービンエンジンのセラミック複合材料(CMC)製ベーンであって、
セラミック複合材料からなるCMC外側リングと、
セラミック複合材料からなるCMC内側リングと、
CMC外側リングとCMC内側リングとの間で一体化された、セラミック複合材料からなる複数のCMCエアフォイル部と、
備え、
各CMCエアフォイル部は、セラミック複合材料からなる少なくとも1つのCMC層から形成され、該CMC層は、連続的なI字形状の繊維構造を含み、負圧側、外側プラットフォーム、正圧側及び内側プラットフォームを画定することを特徴とする記載のガスタービンエンジン用セラミック複合材料製ベーン。
【請求項8】
複数のCMCエアフォイル部は、低圧タービン内に配設されることを特徴とする請求項7に記載のセラミック複合材料製ベーン。
【請求項9】
複数のCMCエアフォイル部は、高圧圧縮機内に配設されることを特徴とする請求項7に記載のセラミック複合材料製ベーン。
【請求項10】
外側プラットフォームは山形をなすことを特徴とする請求項7に記載のセラミック複合材料製ベーン。
【請求項11】
内側プラットフォームは山形をなすことを特徴とする請求項7に記載のセラミック複合材料製ベーン。
【請求項12】
外側プラットフォーム及び内側プラットフォームは山形をなすことを特徴とする請求項7に記載のセラミック複合材料製ベーン。
【請求項13】
負圧側、外側プラットフォーム、正圧側及び内側プラットフォームを画定するように、セラミック複合材料からなる少なくとも1つのCMC層を連続的なI字形状の繊維構造とすることを含むセラミック複合材料製エアフォイル形成方法。
【請求項14】
中空のエアフォイルを形成するように、エアフォイル部内において、最も内側に位置するCMC層を離間させることをさらに含む請求項13に記載のセラミック複合材料製エアフォイル形成方法。
【請求項15】
中実のエアフォイルを形成するように、エアフォイル部内において、最も内側に位置するCMC層を配置することをさらに含む請求項13に記載のセラミック複合材料製エアフォイル形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−246919(P2012−246919A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−105607(P2012−105607)
【出願日】平成24年5月7日(2012.5.7)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】