説明

ガスタービン燃焼器

【課題】
水素含有燃料の燃焼であっても、バーナへの火炎付着を防止することで、環境負荷を低減しつつ圧力変動を抑制し、燃焼器の信頼性が確保できること。
【解決手段】
本発明のガスタービン燃焼器は、上記課題を解決するために、燃料と空気が供給される燃焼室と、該燃焼室の上流側壁面に位置し、複数の空気孔が同心円の列状に形成されている空気孔プレートと、該空気孔プレートのそれぞれの空気孔に上流側に配置された燃料ノズルとを備えたガスタービン燃焼器において、前記空気孔プレートの前記燃焼室側の表面における各空気孔列間で形成される空気孔間隙が、前記燃焼室側に凸形状に突出していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガスタービン燃焼器に係り、特に、燃料と空気を複数の同軸噴流として燃焼室内に供給するものに好適なガスタービン燃焼器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、発電コスト低減、資源有効利用、地球温暖化防止の観点から、製鉄所で副生するコークス炉ガスや製油所で副生するオフガスなどの水素を含む水素含有燃料を燃料として有効利用することが検討されている。
【0003】
水素含有燃料は、燃焼の際に地球温暖化の原因となる二酸化炭素(CO2)の排出量が少ないため、地球温暖化防止策として有効である。また、豊富な資源である石炭をガス化して発電する石炭ガス化複合発電プラント(IGCC:Integrated coal Gasification Combined Cycle)では、ガスタービンに供給される水素含有燃料中の炭素分を回収・貯留するシステム(CCS:Carbon Capture and Storage:)により、CO2排出量を削減する方策も検討されている。
【0004】
上記のような副生ガスは、水素を30〜60%含み、IGCCプラントの燃料である石炭ガス化ガスは、水素を25〜90%含む。従って、ガスタービン発電プラントにおいては、このような水素含有燃料を利用する機運が高まっている。また、上記のような燃料に含有される水素は、可燃範囲が広く燃焼速度が速いため、燃焼室内の壁面近傍で高温の火炎が形成され、燃焼器の信頼性を損なうことが懸念される。
【0005】
そこで、高温の火炎が局所的に形成されることを防止する手段として、空気孔プレートに複数の孔を設けることで燃料を分散させ、燃焼室内で均一に燃焼させる方法が有効である。
【0006】
燃料の分散性を高めて高温の火炎の形成を防止し、NOx排出量を低減する方法として、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1には、複数の燃料ノズルと複数の空気孔を備え、燃料流及び燃料流の周囲に形成された空気流を燃焼室に噴射するバーナを複数個配置して、燃料の分散性を高めて高温の火炎の形成を防止する燃焼器が記載されている。また、非特許文献1には、特許文献1に記載されたバーナで水素含有燃料を燃焼させた際に発生する可能性のある圧力変動について記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−148734号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Asai,T., Koizumi,H., Dodo,S., Takahashi,H., Yoshida,S. and Inoue,H., 2010, “Applicability of a Multiple-Injection Burner to Dry Low-NOx Combustion of Hydrogen-Rich Fuels,” GT2010-22286, Proceedings of ASME Turbo Expo 2010, Glasgow, UK.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載されたバーナで水素含有燃料を燃焼させると、バーナ構造物の背後に形成される後流に火炎が付着することで、NOx排出量が増加し、バーナのメタル温度が上昇する可能性がある。また、非特許文献1に記載されているように、バーナ構造物の背後に流入した可燃混合気が着火源となって圧力変動が発生する可能性が懸念される。
【0010】
つまり、NOx排出量の増加は環境負荷を増加させ、バーナのメタル温度の上昇と圧力変動の発生は燃焼器の信頼性を低下させる可能性がある。
【0011】
本発明は上述の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、水素含有燃料の燃焼であっても、バーナへの火炎付着を防止することで、環境負荷を低減しつつ圧力変動を抑制し、燃焼器の信頼性が確保できるガスタービン燃焼器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のガスタービン燃焼器は、上記目的を達成するために、燃料と空気が供給される燃焼室と、該燃焼室の上流側壁面に位置し、複数の空気孔が同心円の列状に形成されている空気孔プレートと、該空気孔プレートのそれぞれの空気孔に上流側に配置された燃料ノズルとを備えたガスタービン燃焼器において、前記空気孔プレートの前記燃焼室側の表面における空気孔列間で形成される空気孔間隙が、前記燃焼室側に凸形状に突出しているか、
若しくは、前記空気孔プレートは、複数の前記空気孔の前記燃焼室側が前記燃焼室に向かうに従い拡大するように、前記燃焼室側に凸形状に突出して形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、水素含有燃料の燃焼であっても、バーナへの火炎付着を防止することで、環境負荷を低減しつつ圧力変動を抑制し、ガスタービン燃焼器の信頼性が確保できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のガスタービン燃焼器を備えたガスタービンプラントの概略を示す構成図である。
【図2(A)】本発明のガスタービン燃焼器の実施例1におけるバーナ部分を示す縦断面図である。
【図2(B)】図1(A)の正面図である。
【図3】従来技術(比較例)におけるバーナ部分を、その下流に形成される混合気の流動及び火炎と共に示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施例1におけるバーナ部分を、その下流に形成される流動及び火炎と共に示す縦断面図である。
【図5】本発明の実施例2におけるバーナ部分を、その下流に形成される流動及び火炎と共に示す縦断面図である。
【図6】本発明の実施例3におけるバーナ部分を、その下流に形成される流動及び火炎と共に示す縦断面図である。
【図7】本発明の実施例4におけるバーナ部分を、その下流に形成される流動及び火炎と共に示す縦断面図である。
【図8】本発明の実施例5におけるバーナ部分を示す縦断面図である。
【図9】本発明の実施例5におけるバーナ部分を、その下流に形成される混合気の流動及び火炎と共に示す縦断面図である。
【図10】本発明の実施例5におけるバーナ部分を示す縦断面図である。
【図11(A)】本発明の実施例7におけるバーナ部分を示す縦断面図である。
【図11(B)】図11(A)の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明のガスタービン燃焼器の実施例について、図面を用いて説明する。尚、各実施例において、同一部品については同符号を使用する。
【実施例1】
【0016】
まず、ガスタービン燃焼器を備えたガスタービンプラントの構成要素を、図1を用いて説明する。
【0017】
図1に示す如く、ガスタービンプラント1は、大気より空気101を吸入し圧縮する空気圧縮機2と、空気圧縮機2により圧縮した圧縮空気102とガス燃料200を燃焼させ、燃焼ガス110を生成する燃焼器3と、燃焼器3で発生した燃焼ガス110により駆動されるガスタービン4と、ガスタービン4の回転動力を利用して発電する発電機6と、ガスタービン4を起動するガスタービン起動用モータ7とから概略構成されている。尚、10は外筒、12は主室ライナ、13は燃焼器エンドカバー、103は冷却空気、111は排気ガスをそれぞれ示す。
【0018】
燃焼器3はバーナ8を備えており、このバーナ8は、燃焼室5に空気圧縮機2で圧縮された圧縮空気102aを導くための空気孔21を複数個設けた空気孔プレート20と、ガス燃料200を空気孔21内に向けて噴射する複数の燃料ノズル22とから成り、複数の空気孔21と複数の燃料ノズル22は、1つの空気孔21に1つの燃料ノズル22を対応させて配置されている。
【0019】
複数の燃料ノズル22は燃料分配器23と連結しており、この燃料分配器23により、燃料ノズル22に供給するガス燃料200の系統を分配できるようになっている。
【0020】
また、ガス燃料200は、燃料遮断弁60の下流で2つに分岐され、それぞれの系統で燃料圧力調整弁61a、62a及び燃料流量調整弁61b、62bを通過し、ガス燃料201、202として燃料ノズル22に供給される。尚、本実施例では、燃料を2系統に分配したが、それ以上の数の系統に分配してもよい。このように燃料系統を複数に分割すれば、系統数の増加により運転の自由度を拡大できる。
【0021】
本実施例の燃焼器は、ガス燃料200として、コークス炉ガスや製油所オフガス、或いは石炭ガス化ガスなどの水素含有燃料にも使用でき、液化天然ガス(LNG:Liquefied Natural Gas)をはじめとする全てのガス燃料にも適用できる。
【0022】
次に、図2(A)及び図2(B)に、本発明のガスタービン燃焼器の実施例1におけるバーナ8の詳細を示す。
【0023】
該図に示す如く、空気孔プレート20に形成される空気孔21は、燃焼器3の軸を中心とする複数の同心円上に配置されており、本実施例では、バーナ中心から外側に向けて1列目空気孔51、2列目空気孔52、3列目空気孔53の3列の空気孔群から成る。また、燃料ノズルは、1つの空気孔に対応して1つの燃料ノズルが配置されており、1列目燃料ノズル71にはガス燃料201が供給され、2列目燃料ノズル72及び3列目燃料ノズル73にはガス燃料202が供給されている。
【0024】
そして、本実施例での空気孔プレート20は、その燃焼室側表面301において、1列目空気孔51と2列目空気孔52間の空気孔プレート20に形成される空気孔間隙130、2列目空気孔52と3列目空気孔53間の空気孔プレート20に形成される空気孔間隙131、3列目空気孔53とバーナ外周間の空気孔プレート20に形成される空気孔間隙132が、その先端が凸形状に燃焼室5側に突出して形成されている。
【0025】
即ち、本実施例での空気孔プレート20は、各空気孔間隙130、131、132の先端が先細(鋭角)となるように、その凸形状部分は、先端に向かうに従い先細となるように傾斜して形成されている。言い換えると、1列目空気孔51、2列目空気孔52及び3列目空気孔53の燃焼室5側が、燃焼室5に向かって広がるように(拡大するように)、空気孔プレート20が燃焼室5側に凸形状に突出し、その先端が先細(鋭角)となるように、先端に向かうに従い細くなるように傾斜して形成されていることでもある。
【0026】
次に、実施例1における作用、効果について、従来技術と比較して説明する。
【0027】
まず、図3に従来技術のバーナの下流に形成される混合気の流動と火炎の概略図を示す。該図に示す如く、従来技術では、空気孔プレート20の燃焼室側表面301における各空気孔21間の空気孔プレート20に形成される空気孔間隙130、131、132の形状は、平板状となっている。
【0028】
このような従来技術のバーナで、例えば水素含有燃料を燃焼させた場合に発生する現象を、以下に説明する。
【0029】
一般に、火炎は火炎面の伝播速度である燃焼速度と火炎面に向かう混合気の流速が釣り合う位置で保持される。従って、混合気の流速が燃焼速度より遅いと火炎は上流に伝播する。
【0030】
従来技術のバーナでは、空気孔間隙130、131、132が平板状となっているため、空気孔21を通ってきた混合気が、平板状の空気孔間隙130、131、132に沿って急拡大し、空気孔プレート20の燃焼室側表面301のすぐ下流から混合気の流路が急拡大してしまう。
【0031】
そのため、空気孔21から燃焼室5に噴出した混合気は、壁面に沿って流れることができずに流れが剥離し、空気孔間隙130、131、132の下流に後流90と呼ばれる低流速の循環渦が形成される。後流90は、その内部で流れが循環する再循環領域であり、この領域の流速は遅い。従って、特に、燃焼速度が速い水素含有燃料の火炎は、後流90に容易に侵入し、空気孔プレート20の燃焼室側表面301の空気孔間隙130、131、132に付着する。このように、それぞれの空気孔間隙に付着火炎121が発生する。
【0032】
この付着火炎121が発生することにより引き起こされる課題について、以下に説明する。
【0033】
まず第1に、空気孔間隙130、131、132に付着火炎121が発生しなければ、図3に破線で示すように、バーナ中央部間隙133から倒立円錐状に円錐火炎120が形成される。このような円錐火炎120では、特に2、3列目の空気孔21において、空気孔プレート20の出口から火炎面までの燃料と空気の混合距離が増加するため、局所的な高温の火炎が形成されず、NOx排出量を低減できる。
【0034】
ところが、従来技術のバーナでは、付着火炎121が形成されるために、燃料と空気の混合距離が短くなり、NOx排出量が増加してしまう。
【0035】
第2に、付着火炎121は、上述のように混合が不十分となり局所燃焼ガス温度が高く、しかも、構造物の直近にあるため、空気孔プレート20を過熱してしまう。その結果、空気孔プレート20のメタル温度が上昇する。
【0036】
第3に、非特許文献1で述べられているように、付着火炎121の位置が変動することで圧力変動を引き起こす可能性がある。何らかの外乱により付着火炎121が空気孔プレート20に接近すると、燃料ノズル22の出口での圧力が瞬間的に上昇する。燃料ノズル22の出口圧力が上昇すると、燃料供給差圧が低下し火炎面における燃空比が減少して火炎面が下流に変位する。次の瞬間、燃料ノズル22の出口圧力が低下するので、火炎面における燃空比が増加し火炎面が上流に変位する。
【0037】
このような現象が繰り返されて火炎面は、空気孔プレート20のごく近傍で変動し、圧力変動が発生する。
【0038】
以上のように、付着火炎121は、NOx排出量増加、空気孔プレート20のメタル温度上昇、及び圧力変動発生という3つの問題を引き起こす可能性がある。
【0039】
そこで、本発明では、上記3つの問題の原因である付着火炎121の発生を防止するものである。以下、これについて説明する。
【0040】
図4に実施例1のバーナの下流に形成される混合気の流動と火炎の概略図を示す。該図に示す如く、本実施例では、各空気孔間隙130、131、132の先端が先細(鋭角)となるように、空気孔間隙130、131、132が、その先端が凸形状に燃焼室5側に突出して形成されており、混合気の流路は、各空気孔間隙130、131、132の先細の先端に向かって傾斜し緩やかに拡大する。このため、空気孔20から燃焼室5に噴出した混合気は、燃焼室5側に先端が先細となるように突出した空気孔プレート20の燃焼室側表面301の傾斜部分に沿って流れる。その結果、空気孔間隙130、131、132の下流に、後流90が形成されることはない。尚、122はプレート壁面に沿う流れである。
【0041】
従って、空気孔プレート20の下流に後流90のような低速領域が存在しないため、火炎は空気孔プレート20に接近することはなく、付着火炎121の発生を防止することができる。
【0042】
このように本実施例は、付着火炎121の発生を防ぐことで、円錐火炎120を形成させることができ、2及び3列目の空気孔52及び53から噴出した混合気が火炎面に到達する距離(以下、混合気が火炎面に到達する距離を混合距離と呼ぶ)が増加するため、燃焼室5内で燃料と空気の混合が促進され、NOx排出量を低減できる。また、円錐火炎120を安定に形成させることにより、空気孔プレート20と火炎面の距離を確保できるため、空気孔プレート20のメタル温度の上昇を防止できる。更に、安定した円錐火炎120の形成により、圧力変動発生を防止できるため、燃焼器3を構成する部品の圧力変動に対する信頼性を確保でき、部品の寿命を延ばすことができる。
【0043】
即ち、本実施例によれば、水素含有燃料の燃焼においてバーナへの火炎付着を防止することにより、環境負荷を低減しつつ、燃焼器の信頼性が確保できる効果がある。
【0044】
本実施例では、空気孔プレート20の中央部に形成されるバーナ中央部間隙133は平板状となっており、そこに後流90が形成されるため、バーナ中央部間隙133に円錐火炎120が付着してしまう。しかし、円錐火炎120を、バーナ中央部間隙133に積極的に付着させることによって、そこに、火炎の基点をつくり火炎を安定化できる。
【0045】
また、バーナの材料に関して、バーナは耐熱合金で製作される場合もあるが、本実施例のように、バーナ中央部にのみ火炎を付着させることから、中央部のみを耐熱合金製とし、その周囲の領域は安価な材料で製作することができるため、製作コストを低減できる。それに加えて、一般に耐熱合金は加工性が悪いため、異なる材料を用いることで加工性も向上できる。
【0046】
従来技術のバーナでは、空気孔間隙130、131、132に付着火炎121が発生し、メタル温度が上昇するため、通常は、空気孔間隙130、131、132のすべてを空気などで冷却する必要がある。
【0047】
しかし、本実施例では、円錐火炎120が付着するバーナ中央部間隙133のみ冷却すればよい。そのため、従来技術のバーナで冷却用に使用していた空気を燃焼用空気として使用できるため、希薄燃焼を実現でき、その結果、NOx排出量が低減できる。
【実施例2】
【0048】
図5に、本発明のガスタービン燃焼器の実施例2におけるバーナの詳細を示す。
【0049】
該図に示す実施例2の特徴は、空気孔プレート20の燃焼室側表面301における各空気孔列の間隙のうち、2列目空気孔52と3列目空気孔53間の空気孔プレート20に形成される空気孔間隙131、及び3列目空気孔53とバーナ外周間の空気孔プレート20に形成される空気孔間隙132が、その先端が先細となるように凸形状に燃焼室5側に突出して形成されていることである。
【0050】
1列目空気孔51と2列目空気孔52間の空気孔プレート20に形成される空気孔間隙130とバーナ中央部間隙133の形状は、平板状に形成されている。尚、空気孔プレート20の形状や燃料系統などその他の構成は、実施例1と同様である。
【0051】
このような構成の実施例2では、空気孔間隙130に後流90が形成されるため火炎が付着するが、この付着火炎により、空気孔プレート20の中央領域に安定に火炎を保持できるため、火炎安定性の向上に有効である。一方、空気孔間隙131、132の下流には、後流90が形成されず火炎が付着しないため、空気孔間隙131、132に対して、NOx排出量の増加、空気孔プレート20のメタル温度上昇、圧力変動発生のそれぞれの防止に効果がある。
【0052】
NOx排出量に関しては、特に、2及び3列目空気孔52及び53において、長い混合距離を確保できるため、NOx排出量の低減に効果的である。
【0053】
本実施例では、実施例1で述べたように、1列目燃料ノズル71にはガス燃料201が供給され、2列目燃料ノズル72及び3列目燃料ノズル73にはガス燃料202が供給され、燃料系統が中央部のガス燃料201と外周部のガス燃料202とに分けられており、それぞれの供給流量の割合を制御して低NOx燃焼を実現できる。
【0054】
中央部で安定に燃焼しない場合、中央部のガス燃料201の供給量を増加させ、火炎温度を上昇させて中央部の火炎を安定させるが、NOx排出量が増加するという問題が生じる。
【0055】
そこで、本実施例のように、中央部の火炎を安定に燃焼させることによって、バーナ全体で希薄燃焼が可能なため、実施例1で述べた効果に加え、より低NOx燃焼が可能となる。
【0056】
このように、本実施例によれば、実施例1の効果に加え、空気孔間隙の位置によって間隙の形状を変えることで、NOx排出量を低減し、空気孔プレート20のメタル温度上昇と圧力変動発生を防止すると共に、火炎安定性を制御できる効果がある。
【実施例3】
【0057】
図6に、本発明のガスタービン燃焼器の実施例3におけるバーナの詳細を示す。
【0058】
該図に示す実施例3の特徴は、実施例1の構成に加え、バーナ中央部のバーナ中央部間隙133が、燃焼室5とは反対側に窪んでいる凹型に形成されている点である。尚、空気孔プレート20の形状や燃料系統など、その他の構成は実施例1と同様である。
【0059】
このような構成の実施例3では、バーナ中央部間隙133が、燃焼室5とは反対側に窪んでいる凹型に形成されているため、バーナ中央部間隙133の下流には、実施例1より安定な循環流をもつ後流90が形成される。従って、バーナ中央部間隙133に付着した安定な円錐火炎120が形成されるため、NOx排出量が低減され、空気孔プレート20のメタル温度上昇と圧力変動発生を防止すると共に、火炎の安定性を向上できる。
【0060】
上述した実施例2では、低NOx安定燃焼できる効果はあるが、バーナ8の半径方向に火炎が広がり、2及び3列目空気孔52及び53から噴出した混合気の混合距離が短くなる可能性があった。
【0061】
しかし、本実施例では、バーナ中央部間隙133が、燃焼室5とは反対側に窪んだ凹型形状をしているため、より安定燃焼が可能となり、実施例1及び実施例2に比べて、より軸方向に伸長した細身の火炎を形成させることができる。その結果、2及び3列目空気孔52及び53からの混合気の混合距離が長くなるため、低NOx燃焼を実現でき、更に、メタル温度も低減できる効果がある。
【実施例4】
【0062】
図7に、本発明のガスタービン燃焼器の実施例4におけるバーナの詳細を示す。
【0063】
該図に示す実施例4の特徴は、実施例1の構成に加え、空気孔間隙130、131、132の凸形状のそれぞれの先端に、空気孔プレート20のエンドカバー側表面300から空気孔プレート20の燃焼室側表面301に向けて、冷却空気124が流通する空気冷却孔123を設けた点である。尚、空気孔プレート20の形状や燃料系統など、その他の構成は実施例1と同様である。
【0064】
このような構成の実施例4では、空気孔間隙130、131、132が、先端が先細となるように凸形状に燃焼室5側に突出して形成されているため、その凸形状の先細の先端が火炎で過熱され、そこに熱応力が集中する可能性がある。この熱応力の集中は、構造信頼性を低下させる原因となる。
【0065】
そこで、本実施例では、空気孔間隙130、131、132の凸形状の先端に空気冷却孔123を設け、この空気冷却孔123に、空気孔プレート20のエンドカバー側表面300から空気孔プレート20の燃焼室側表面301に向けて冷却空気124を流通させることにより、凸形状の先端を冷却して熱応力の集中の度合いを低減できる。その結果、構造信頼性を確保すると共に、NOx排出量を低減し、空気孔プレート20のメタル温度上昇と圧力変動発生を防止できる。
【0066】
このような本実施例のように、空気孔間隙130、131、132の凸形状の先端に空気冷却孔123を設けることにより、実施例1と同様な効果が得られることは勿論、更に水素濃度の高い燃料に対しても付着火炎の発生を防止し、細身の円錐火炎を形成させることができる。その結果、2及び3列目空気孔52及び53から噴出した混合気が、火炎面に到達する距離が長くなるため、その到達するまでの間に、空気冷却孔123から噴出した冷却空気124も燃焼用空気として燃焼に寄与し、希薄燃焼により低NOx化が可能である。
【実施例5】
【0067】
図8に、本発明のガスタービン燃焼器の実施例5におけるバーナの詳細を示す。
【0068】
該図に示す実施例5の特徴は、実施例1の構成に加え、各列の空気孔間隙130、131、132において、空気孔プレート20の燃焼室側表面301での空気孔間距離が、空気孔プレート20のエンドカバー側表面300での空気孔間距離よりも小さくなっている点、即ち、各列の空気孔プレート20の燃焼室側表面301での空気孔間距離をDexi(i:列番号、i=1、2、3)、空気孔プレート20のエンドカバー側表面300での空気孔間距離をDeni(i:列番号、i=1、2、3)とすると、Dexi<Deni(i=1、2、3)となっている点、更に、空気孔間隙130、131、132の先細となる凸形状の先端が、燃焼器5の軸中心を向いている点である。尚、燃料ノズルや燃料系統などその他の構成は、実施例1と同様である。
【0069】
このような構成の実施例5では、空気孔プレート20から浮上した浮上円錐火炎83を形成させ、実施例1よりも空気孔プレート20から下流に火炎を遠ざけることができ、NOx排出量の低減、及び空気孔プレート20のメタル温度上昇と圧力変動発生の防止に対して、更なる効果が期待できる。
【0070】
浮上円錐火炎83が形成される機構を、図9に示したバーナ下流に形成される混合気の流動と火炎の概略図で説明する。
【0071】
該図に示す如く、各列の空気孔51、52、53において、空気孔プレート20の燃焼室側表面301での空気孔間距離が、空気孔プレート20のエンドカバー側表面300での空気孔間距離よりも小さくなっているため、バーナ下流には流線80(燃焼器5の横断面における旋回流の軸方向速度の流線)で示す旋回流が形成される。この旋回流は、図中に示す点Pまで徐々に旋回半径を小さくしながら噴出し、点Pからは旋回半径が拡大する。
【0072】
このような縮小、拡大旋回流の形成により、浮上円錐火炎83が形成される。旋回流の旋回半径が小さくなる空気孔プレート20から点Pまでの領域では、角運動量保存則より旋回方向速度成分が増加するため、旋回軸付近には流れ方向に圧力が低下する順方向圧力勾配が生じる。
【0073】
一方、旋回流の旋回半径が大きくなる点Pより下流の領域では、旋回方向速度成分が減少するため、旋回軸付近には流れ方向に圧力が上昇する逆方向圧力勾配が生じる。その結果、燃焼室5の軸付近には、図9に示すような圧力分布が形成される。
【0074】
このような圧力分布により、バーナ下流側にある燃焼ガスの一部は、循環流82として上流に逆流するが、上記の順圧力勾配が存在するため、燃焼ガスは、点Pを越えて空気孔プレート20には接近できない。従って、保炎点81を基点に浮上円錐火炎83が形成され、実施例1よりも下流に空気孔プレート20から火炎を遠ざけることができる。
【0075】
実施例5では、各列の空気孔51、52、53から燃焼室5に噴出した混合気が、縮小、拡大旋回流と共に、空気孔プレート20の燃焼室側表面301に沿って流れるように、空気孔間隙130、131、132の凸形状の先端が燃焼器軸中心を向いている。その結果、空気孔間隙130、131、132の下流に後流は形成されず、付着火炎の発生を防止できる。
【0076】
また、実施例5では、実施例1よりも火炎が下流に位置しているため、燃料と空気の混合距離が増加し、NOx排出量をさらに低減できる。それに加えて、空気孔プレート20のメタル温度上昇と圧力変動発生の防止に対しても、更なる効果が期待できる。
【実施例6】
【0077】
図10に、本発明のガスタービン燃焼器の実施例6におけるバーナの詳細を示す。
【0078】
該図に示す実施例6の特徴は、実施例1の構成に加え、各列の空気孔間隙130、131、132において、空気孔プレート20の燃焼室側表面301での空気孔間距離が、空気孔プレート20のエンドカバー側表面300での空気孔間距離よりも大きくなっている点、即ち、各列の空気孔プレート20の燃焼室側表面301での空気孔間距離をDexi(i:列番号、i=1、2、3)、空気孔プレート20のエンドカバー側表面300での空気孔間距離をDeni(i:列番号、i=1、2、3)とすると、Dexi>Deni(i=1、2、3)となっている点、更に、空気孔間隙130、131、132の先細となる凸形状の先端が、燃焼室5の外周側を向いている点である。尚、燃料ノズルや燃料系統などその他の構成は、実施例1と同様である。
【0079】
このような構成の実施例6では、空気孔間隙130、131、132の先細の凸形状の先端が燃焼室5の外周側を向いているため、各列の空気孔51、52、53から燃焼室5に噴出した混合気は拡大旋回流と共に、燃焼室5側に突出した空気孔プレート20の燃焼室側表面301に沿って流れるため、先端が先細の凸形状に形成される空気孔間隙130、131、132に後流が形成されることはなく、付着火炎の発生を防止できる。その結果、本実施例においても実施例1と同様の効果を得ることができる。
【実施例7】
【0080】
図11(A)及び図11(B)に、本発明のガスタービン燃焼器の実施例6におけるバーナの詳細を示す。
【0081】
該図に示す実施例7の特徴は、実施例1で説明した構成のバーナを複数個配置した点である。即ち、本実施例のガスタービン燃焼器は、空気孔プレート20の中央部に、実施例1で説明した構成の中央バーナ32を1個、空気孔プレート20の外周部に、実施例1で説明した構成の外周バーナ33を6個配置して構成されている。各バーナの構造や燃料ノズルなどその他の構成は、実施例1と同様である。尚、外周バーナ33は、3個以上配置するのが望ましい。
【0082】
このような構成の本実施例では、中央バーナ32及び外周バーナ33のそれぞれの空気孔間隙130、131、132が、その先端が先細の凸形状をしているため、実施例1と同様の効果を得ることができる。更に、本実施例は、比較的大きな負荷に対応するガスタービンに有効である。また、配置する外周バーナ33の個数を調整することにより、ガスタービン負荷の広い範囲での低NOx燃焼の実現が可能であり、ガスタービン燃焼器の信頼性を確保できる。
【符号の説明】
【0083】
1…ガスタービンプラント、2…空気圧縮機、3…燃焼器、4…ガスタービン、5…燃焼室、6…発電機、7…ガスタービン起動用モータ、8…バーナ、10…外筒、12…主室ライナ、13…燃焼器エンドカバー、20…空気孔プレート、21…空気孔、22…燃料ノズル、23…燃料分配器、32…中央バーナ、33…外周バーナ、51…1列目空気孔、52…2列目空気孔、53…3列目空気孔、60…燃料遮断弁、61a、62a…燃料圧力調整弁、61b、62b…燃料流量調整弁、71…1列目燃料ノズル、72…2列目燃料ノズル、73…3列目燃料ノズル、80…燃焼器の横断面における旋回流の軸方向速度の流線、81…保炎点、82…循環流、83…浮上円錐火炎、90…後流、101…空気、102、102a…圧縮空気、103…冷却空気、110…燃焼ガス、111…排気ガス、120…円錐火炎、121…付着火炎、122…プレート壁面に沿う流れ、123…冷却空気孔、124…冷却空気、130、131、132…空気孔間隙、133…バーナ中央部間隙、200、201、202…ガス燃料、300…空気孔プレートのエンドカバー側表面、301…空気孔プレートの燃焼室側表面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と空気が供給される燃焼室と、該燃焼室の上流側壁面に位置し、複数の空気孔が同心円の列状に形成されている空気孔プレートと、該空気孔プレートのそれぞれの空気孔に上流側に配置された燃料ノズルとを備えたガスタービン燃焼器において、
前記空気孔プレートの前記燃焼室側の表面における各空気孔列間で形成される空気孔間隙が、前記燃焼室側に凸形状に突出していることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項2】
請求項1に記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気孔間隙は、その先端が鋭角な先細となるように、前記凸形状部分が先端に向かうに従い細くなるように傾斜して形成されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項3】
燃料と空気が供給される燃焼室と、該燃焼室の上流側壁面に位置し、複数の空気孔が同心円の列状に形成されている空気孔プレートと、該空気孔プレートのそれぞれの空気孔に上流側に配置された燃料ノズルとを備えたガスタービン燃焼器において、
前記空気孔プレートは、複数の前記空気孔の前記燃焼室側が、前記燃焼室に向かうに従い拡大するように、前記燃焼室側に凸形状に突出して形成されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項4】
請求項3に記載のガスタービン燃焼器において、
前記燃焼室側に凸形状に突出している前記空気孔プレートは、その先端が鋭角な先細となるように、先端に向かうに従い細くなるように傾斜して形成されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気孔プレートのバーナ中央部が、平板状に形成されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気孔プレートに形成される空気孔間隙は、各空気孔列間で形成される一部の形状が、前記燃焼室側に凸形状に突出していることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項7】
請求項6に記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気孔プレートに形成される前記空気孔間隙は、前記空気孔プレートの中央部の1列目空気孔と2列目空気孔の間で形成される空気孔間隙を除く他の空気孔間隙が、前記燃焼室側に凸形状に突出していることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項8】
請求項1又は2に記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気孔プレートのバーナ中央部の前記空気孔間隙が、前記燃焼室の反対側に窪んでいる凹型形状に形成されていることを特徴とする燃焼器。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気孔プレートに形成される前記空気孔間隙は、前記空気孔プレートのエンドプレート側から前記燃焼室側に向けて冷却空気が流通する空気冷却孔を備えていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項10】
請求項1又は2に記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気孔プレートに形成される各列の前記空気孔間隙は、前記空気孔プレートの前記燃焼室側表面での前記空気孔間の距離が、前記空気孔プレートのエンドカバー側表面での前記空気孔間の距離よりも小さく、かつ、前記空気孔間隙の凸形状に前記燃焼室側に突出している先端が、前記燃焼器の軸中心を向いていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項11】
請求項1又は2に記載のガスタービン燃焼器において、
前記空気孔プレートに形成される各列の前記空気孔間隙は、前記空気孔プレートの前記燃焼室側表面での前記空気孔間の距離が、前記空気孔プレートのエンドカバー側表面での前記空気孔間の距離よりも大きく、かつ、前記空気孔間隙の凸形状に前記燃焼室側に突出している先端が、前記燃焼器の外周側を向いていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項12】
燃料と空気が供給される燃焼室と、該燃焼室の上流側壁面に位置し、複数の空気孔が同心円の列状に形成されている空気孔プレートと、該空気孔プレートのそれぞれの空気孔に上流側に配置された燃料ノズルとを備えたガスタービン燃焼器において、
前記空気孔プレートの中央部に、前記燃焼室側の表面における各空気孔列間で形成される空気孔間隙が前記燃焼室側に凸形状に突出しているか、若しくは複数の前記空気孔の前記燃焼室側が前記燃焼室に向かうに従い拡大するように前記燃焼室側に凸形状に突出している中央バーナが配置され、該中央バーナの外周に、該中央バーナと同一構造の外周バーナが複数個配置されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。
【請求項13】
請求項12に記載のガスタービン燃焼器において、
前記中央バーナは1個、前記外周バーナは少なくとも3個配置されていることを特徴とするガスタービン燃焼器。

【図1】
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【図2(A)】
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【図2(B)】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11(A)】
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【図11(B)】
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【公開番号】特開2013−108667(P2013−108667A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253406(P2011−253406)
【出願日】平成23年11月21日(2011.11.21)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ゼロエミッション石炭火力技術開発プロジェクト/ゼロエミッション石炭火力基盤技術開発 革新的ガス化技術に関する基盤研究事業 石炭ガス化発電用高水素濃度対応低NOx技術開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)